【実施例】
【0045】
実験
種々の異なる(組換え)タンパク質を産生するために、本発明に係る哺乳動物ベクターが使用可能でありかつ使用した。以下の実施例は、多量体タンパク質および単量体タンパク質各々の組換え発現の一般的な実験設定を説明する。特に、本発明で後述するデータは、本発明に係る哺乳動物ベクターを使用して発現可能な例示的なタンパク質として、CD20に対するモノクローナル抗体とホルモン(赤血球造血因子)であるダルベポエチンαとを用いることにより、収集された。
【0046】
実施例1:多量体タンパク質(モノクローナル抗CD20抗体)の発現
発現ベクターの設計および作製
この試験で用いたベクターは、ベクターNTI 9.0評価ソフトウエアを用いてインシリコ(in silico)で設計した。pDGPベクターおよび対照ベクター(
図2)等のベクターの構築に必要な断片はGeneart AG、レーゲンスブルク、ドイツにおいて調製した。本発明の教示に従って複数のベクター組み立てが実行可能であることは、当業者により理解される。本発明に係るベクターの個々のエレメントは当技術分野において公知であるので、基本的な遺伝子エレメントおよび発現カセットの配列決定または増幅および適当なクローニングにより、適切なベクターを組み立てることができる。したがって、各ベクターを得るためのいくつかの他の態様および様式が適切であり且つ容易に利用可能であることが理解されよう。
【0047】
各発現ベクターにおいて4種類の発現カセットの発現を駆動する調節遺伝子エレメントを、表1に列挙する。
【0048】
(表1)pDGP/対照ベクターに含まれる調節遺伝子エレメントの一覧
【0049】
トランスフェクション用のベクター調製
シングルカットの制限エンドヌクレアーゼSwaI(ATTT AAAT、ロッシュ、カタログ番号11 371 525 001)を使用して、両方の発現ベクターを直線化した。反応当たり最大100μgのベクターDNAを、5U/μg DNAのSwaIを使用して消化した。適切な量の10x反応緩衝液およびH2Oを、反応混合物に加えた。反応混合物を25℃で4時間〜一晩にわたりインキュベートした。消化後、層流チャンバー中で下記のようにDNA沈降を実行した。
・1容量のイソプロパノールを加える。
・徹底的にボルテックスする。
・4℃で21000 x gにて30分間遠心分離する。
・上清を捨てる。
・1容量の滅菌氷冷70%エタノールを慎重に加える。
・4℃で最大速度にて1分間遠心分離する。
・上清を捨てる。
・RTで5〜30分間(層流にて)、ペレットを空気乾燥する。
・100μlの滅菌水中にDNAを再懸濁する。
【0050】
消化後に、直線化DNAの純度(OD 260/280)および濃度を、NanoDrop ND-1000を使用して測定した。消化したDNAのゲル電気泳動(0.8% agarose e-gel、インビトロジェン)を実行して、直線化を調節した。
【0051】
宿主細胞
CHO K1PD細胞、COS1細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞を使用した。
【0052】
CHO K1PD細胞株は、ATCC(カタログ番号CCL-61.3)を起源とするCHO K1細胞株の亜集団である。元の細胞株を、DM122培地中で無血清の浮遊培養に適応させた。CHO K1PD細胞を用いる全ての実験に関して、DM122増殖培地を使用した。
【0053】
トランスフェクション
細胞トランスフェクションにAmaxaシステムを使用した(NucleofectorキットV、カタログ番号VCA-1003)。全ての必要な細胞操作にとって十分な時間を可能にするため、5つ以下のプールを一度にトランスフェクトした。詳細なプロトコルは、以下である。
1. トランスフェクション時、細胞は、生存率≧90%で最大2 x 106個/mlにすべきである。
2. トランスフェクション当たり5 x 106個の細胞を用いる。
3. 細胞を計数して、50mlの遠心管にて、90 x gで10分間、RTで遠心分離する。
4. 慎重に培地を除去し、細胞ペレットを、100μlの溶液V(Amaxaキットに含まれる)中に再懸濁する。
5. DNA(3μg)を加え、穏やかに混合する。
6. 工程5からの混合物をトランスフェクションキュベットに加えて、これをAmaxa Nucleofector装置に配置する。
7. AmaxaプログラムU23を使用して細胞のトランスフェクトを行う。
8. 振とうフラスコにて増殖している細胞(例えば、CHO K1PD)に関しては、キュベット中に幾分かの増殖培地を加え、20mlの増殖培地を用いて125ml振とうフラスコへ慎重に細胞を移す。一度か二度キュベットを新鮮な増殖培地を用いて濯ぎ、前記振とうフラスコへ加える。細胞を、シェーカー(110rpm)中で37℃、10%CO2にて24〜48時間インキュベートする。
【0054】
増殖培地およびG418/MTX選択
細胞(例えば、CHO K1PD細胞、COS1細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞)を、哺乳動物細胞の培養に適した培地中、例えば、実験にCHO K1PDを用いる場合には8mM L-グルタミン(シグマ、カタログ番号G7513)を添加したDM122増殖培地中で、培養した。
【0055】
G418(ジェネティシン、Gibco、カタログ番号10131-027;終濃度:0.8mg/ml)および/またはメトトレキサート(メトトレキサート水和物、シグマ、カタログ番号M8407150;終濃度:150もしくは250nM)をさらに添加した同一の培地中で、選択段階を実行した。
【0056】
トランスフェクション後の第1の選択段階はG418選択であった。細胞生存率が60%を超えた、トランスフェクションの2〜5日後に、G418を細胞に加えた。G418選択は通常2〜4週間要する。細胞生存率が少なくとも85%に達したら、MTX選択を実行した。
【0057】
1ml当たり生細胞2 x 105個の播種密度を用いて、G418で予め選択した細胞に対してMTX選択を開始した。2回の副選択段階を、上記したMTX濃度(150/250nM)を使用して実施した。MTX選択は、細胞生存率が85%超に達するまでに、通常2〜3週間要する。
【0058】
細胞の融解/凍結
細胞を37℃にて融解し、1ml当たり生細胞約105個の初期細胞密度で、予め温めた培地50mlを含む250ml振とうフラスコへ直接滴下接種した。細胞を、37℃、10%CO2、110rpmにて培養した。
【0059】
生存率>90%の指数増殖期にある細胞を凍結させた。1バイアル当たり5〜10 x 106個の生細胞を、7.5%DMSOを含む条件培地中で凍結させた。まず、細胞培養物を、180 x g、5分、RTにて遠心分離した。次に、上清を一部除去した。その後、DMSOを残余上清に加えて、7.5%の終濃度にした。細胞ペレットを穏やかに再懸濁した。クライオバイアルを各細胞懸濁物1mlで充填し、ミスターフロスティークライオボックスに入れて-80℃のディープフリーザーへ移した。1ヶ月以内に、クライオバイアルに入った凍結細胞を、液体窒素容器へ移した。
【0060】
細胞の培養および取り扱い
2〜3日ごとに、1ml当たり生細胞1〜1.5 x 105個の密度で細胞を分割し、適切な予め温めた増殖培地に加えて、指数増殖を維持した。
インキュベーション条件:37℃、(125および250mlの振とうフラスコの場合)90〜110rpm、(DM122培地の場合)10%CO2。
【0061】
mAb発現の試験
各選択段階(G418、MTX)の後、適切な添加培地(例えば、DM122)における10日間バッチ実験を実施して、mAbの発現を評価した。細胞を、125ml振とうフラスコ中で、生細胞1.5 x 105個/mlの最終密度で播種した。総培養容量は、25mlであった。細胞を、振とうインキュベーター(37℃、110rpm、10%CO2)にて培養した。10日目に、1mlの細胞培養上清試料を分取し、mAbの力価を測定した。mAb含量を、AC(プロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィー)により測定した。
【0062】
結果
異なる選択段階後の、pDGPベクターをトランスフェクトした細胞の10日目バッチ力価を、表2に示す。
【0063】
(表2)10日目バッチ力価;異なる選択段階後の、pDGPベクターをトランスフェクトした細胞
【0064】
異なる選択段階後の、対照ベクターをトランスフェクトした細胞の10日目バッチ力価を、表3に示す。
【0065】
(表3)10日目バッチ力価;異なる選択段階後の、対照ベクターをトランスフェクトした細胞
【0066】
pDGPをトランスフェクトした細胞では、対照ベクターをトランスフェクトした細胞と比較して4〜5倍高い力価が、G418選択後に測定された。平均すると、MTX選択後の両実験アプローチでは、同等の力価が測定された。しかしながら、pDGPをトランスフェクトした細胞(±10%)で得られた力価は、対照ベクターをトランスフェクトした細胞(±50%)よりもずっと再現性が高かった。
【0067】
実施例2:単量体タンパク質(ダルベポエチンα)の発現
発現ベクターの設計および構築
この試験で使用されるベクターおよび断片が、実施例1に記載されるように設計および調製した。ダルベポエチンαを用いる発現実験は、上記pDGPΔGOIベクターのさらなる誘導体であるpDGP-AΔGOIベクターを用いて実施した。pDGP-AΔGOIベクターは、前述のpDGPΔGOIベクター(および実施例1のpDGPベクター)と同じ、挿入されたらGOI発現を駆動する以下の調節エレメントの新規かつ進歩的な組み合わせを含む:シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域ならびにHbbイントロンII。本実施例では、例示的な関心対象のタンパク質として、ダルベポエチンαをpDGP-AΔGOIに挿入する。またこの試験は、対照ベクター1、対照ベクター2、およびNeoベクターを使用した(下記を参照されたい)。
【0068】
実施例1で使用したpDGPベクターと対照的に、(Neoベクターを除く)上記発現ベクターの各々は、単一のGOI発現カセットを含み、いかなる真核生物選択マーカー遺伝子も含まない。したがって、ジェネティシン(G418)を含有する培地中での選択を可能にするために、すべての実験において、Neoベクター-ネオマイシン耐性遺伝子を含む-をコトランスフェクトした。実施例2は、したがって、本発明の第3局面に係るベクターシステムを表す。
【0069】
pDGP-Aベクターならびに対照ベクター1および2においてダルベポエチンαの発現を駆動する調節遺伝子エレメントを、表4に列挙する。同じく表4は、Neoベクターにおいてネオマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する調節遺伝子エレメントを示す。
【0070】
(表4)pDGP-Aベクター、対照ベクター1、対照ベクター2、およびNeoベクターに含まれる遺伝子調節エレメントの一覧
【0071】
宿主細胞
実施例1と同じ細胞株を使用した。
【0072】
トランスフェクション
実施例1と同じトランスフェクション方法およびシステムを使用した。
【0073】
増殖培地およびG418選択
細胞(例えば、CHO K1PD細胞、COS1細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞)を、哺乳動物細胞の培養に適した培地中、例えば実験にCHO K1PDを用いる場合には8mM L-グルタミン(シグマ、カタログ番号G7513)を添加した社内開発DM122増殖培地中で、培養した。
【0074】
選択段階は、G418(ジェネティシン、Gibco、カタログ番号10131-027;終濃度:0.8mg/ml)をさらに添加した同一培地中で実施した。
【0075】
細胞生存率が60%を超えた、トランスフェクションの2〜5日後に、G418を細胞に加えた。G418選択は通常2〜4週間要する。
【0076】
細胞の融解/凍結
細胞の融解/凍結は実施例1に記載したように実行した。
【0077】
細胞の培養および取り扱い
細胞の培養および取り扱いは実施例1に記載したように実行した。
【0078】
ダルベポエチンα発現に関する試験
G418選択段階後に、安定的なダルベポエチンαの発現に関して、プールを試験した。適切な添加培地(例えば、DM122)におけるバッチ実験を実行して、ダルベポエチンαの発現を評価した。細胞を、125mlの振とうフラスコ中で、生細胞1.5 x 105個/mlの最終密度で播種した。総培養容量は、25mlであった。細胞を、振とうインキュベーター(37℃、110rpm、10%CO2)にて培養した。5日目と9日目に、0,5mlの細胞培養上清試料を分取して、ダルベポエチンαの力価を測定した。ダルベポエチンα含量を、EPO特異的ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)試験(Epo-ELISA Quantikineキット、R&D Systems、カタログ番号:DEP00)により測定した。
【0079】
結果
pDGP-A、対照ベクター1、および対照ベクター2をトランスフェクトした細胞のバッチ培養物における5日目および9日目のダルベポエチンα含量を、表5に示す。
【0080】
(表5)pDGP-Aベクター、対照ベクター1、および対照ベクター2をそれぞれトランスフェクトした細胞のバッチ培養物における、5日目および9日目のダルベポエチンα含量
【0081】
pDGP-Aベクターをトランスフェクトした細胞からは、対照ベクター1をトランスフェクトした細胞と比較して5〜10倍高い力価が、G418選択後に得られた。pDGP-Aベクターの使用により、対照ベクター2をトランスフェクトした細胞と比較して最大14倍高い力価のダルベポエチンαが得られ、このことは、組換えタンパク質発現を駆動する調節エレメントとしての、シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域とHbbイントロンIIとの組み合わせの利点および優位性を示している。
【0082】
結論
本発明の発現ベクター(例えばpDGPおよびpDGP-A)は、当技術分野で現在使用される発現ベクター(前記対照ベクターなど)に対して以下の利点を提供する。
・高い再現性のために、本発明に係るベクターの例としてのpDGPおよびpDGP-Aを使用することは、産生及び試験すべき細胞試料(すなわち、トランスフェクト細胞のプール)の数を、わずか3〜5つへと著しく減少させ、それにより作業負荷を有意に削減する。現在は、低い再現性のために、高産生性の細胞試料を同定するためには多数の細胞試料(最大50個)を生成することが一般に必要である。
・pDGPおよびpDGP-A等のベクターを使用することにより、産物の特徴決定、前臨床試験、および第一相試験のために十分な力価をもつ関心対象の発現タンパク質が、たった1回のG418一段階選択後に提供される。細胞クローニングの前にタンパク質(例えば、抗体)力価を増加させるための追加のMTX選択段階は必要ない。
・選択段階の回数がG418段階1回のみに削減されるので、例えばpDGPまたはpDGP-Aを使用すると、細胞株を開発するのに必要な時間を著しく削減することができる。
【0083】
参考文献