(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665792
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】イヤーチップ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
H04R1/10 104B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-101018(P2012-101018)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-229790(P2013-229790A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】598000378
【氏名又は名称】イメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141081
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 庸良
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】下山 秀一
【審査官】
大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−010885(JP,A)
【文献】
特開2010−130517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カナル型イヤホンの音導管に着脱可能に装着されるイヤーチップであって、
音導管に装着される音導管装着部と、
音導管装着部の耳側の端部から反耳側端部に向けて半径方向外側に広がりながら折り返されている環状部と、
環状部の反耳側端部の外周縁からさらに反耳側へ半径方向外側に曲面を有して張り出す一対の鍔部と、を有し、
前記一対の鍔部が、耳孔の開口端近傍の上下方向の内面に当接すべく互いに180度異なる上下の2方向のみに形成され、その一方が他方より大きく形成されていることを特徴とするイヤーチップ。
【請求項2】
環状部の反耳側端部が音導管装着部の反耳側端部とほぼ同じ位置にあることを特徴とする請求項1に記載のイヤーチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに装着され、耳孔に挿入されて使用されるイヤーチップに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯音楽プレーヤー、ラジオ、テレビ等の音響機器に接続して使用されるイヤホンとして、インナーイヤー型イヤホンやカナル型イヤホンが知られている。インナーイヤー型イヤホンは、一般に、イヤホン本体の円盤状部分の稜線を耳孔の開口端部近傍に引っかけるようにして装着され、一方、カナル型イヤホンは、イヤホンの略円筒状に形成された筒状の音導管に取り付けられたイヤーチップが耳孔に挿入されることにより装着される。ここで、カナル型イヤホンに装着される軟質のイヤーチップは、イヤーキャップ、イヤーピース、イヤーパッドなど、種々の名前で呼ばれることもあるが、本明細書ではイヤーチップと呼ぶことにする。
【0003】
インナーイヤー型イヤホンは、その構造上、耳への装着が容易であるが、外れやすく、また耳孔の外へ音が漏れやすいという問題がある。これに対して、カナル型イヤホンは、耳孔への装着性が良いことに加え、外れ難く、また、低音域の音質が良いという利点がある。音質が良いのは、イヤーチップの外面と耳孔の内面との密着性に関係し、外部からの音を遮断する性能、すなわち遮音性が高まるためであるとされている。
【0004】
従来のカナル型イヤホンに使用されるイヤーチップを示す一例として、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1には、イヤホンの音導管に装着される筒状部の前端部から略パラボラ状に広がる第1環状フランジ部と、第1環状フランジ部の後端縁からさらに後方へ向けて略パラボラ状に広がる第2環状フランジ部とを備えたイヤーチップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−10885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カナル型イヤホンでは、シリコンゴムなどの軟質材料で作られたイヤーチップを使用し、それを耳孔に挿入して使用するために、イヤーチップの大きさや形状が、使用者の耳孔の大きさや形状に合わないものであれば、耳孔から外れやすくなったり、音漏れしたりすることがある。サイズが異なる複数のイヤーチップが提供されているが、必ずしも適切なサイズのものが見つかるとは限らない。カナル型イヤホンでは、イヤーチップと耳孔とが密着性良くフィットする範囲はイヤーチップの環状部が弾性変形する範囲に制限されており、一定の許容範囲であれば、インナーイヤー型イヤホンに比べて、耳孔に対する密着性が良く、耳孔からも外れにくく、その他種々の優れた効果が発揮されるものの、一定の許容範囲を外れると、上記優れた効果を発揮できないという問題がある。
【0007】
特許文献1のイヤーチップは、第1環状フランジ部の後端縁から後方へ向けて広がる第2環状フランジ部が第1環状フランジ部の後端縁の全周に沿って環状に形成されているため、イヤーチップを耳孔に挿入する際の挿入抵抗が大きくなり、装着性が低下する心配がある。また、第2環状フランジ部の弾性復元力が大きいため、耳孔の中に確実に押し込まないと、大きな弾性復元力によってイヤーチップが挿入方向反対側に押し戻されて、外れやすくなる心配がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、特許請求の範囲の請求項1の特徴記載部分に規定される特徴によって達成される。
すなわち、本発明によれば、カナル型イヤホンの音導管に着脱可能に装着されるイヤーチップであって、音導管に装着される音導管装着部と、音導管装着部の耳側の端部から反耳側端部に向けて半径方向外側に広がりながら折り返されている環状部と、環状部の反耳側端部の外周縁からさらに反耳側へ半径方向外側に曲面を有して張り出す
一対の鍔部と、を有し、
前記一対の鍔部が、
耳孔の開口端近傍の上下方向の内面に当接すべく互いに180度異なる
上下の2方向
のみに形成され、その一方が他方より大きく形成されていることを特徴とするイヤーチップが提供される。
【0009】
本発明によるイヤーチップの追加の技術的事項は従属請求項に規定されている。
すなわち、環状部の反耳側端部が音導管装着部の反耳側端部とほぼ同じ位置にあるイヤーチップが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のイヤーチップによれば、環状部に続いて半径方向外側に曲面を有して張り出す鍔部を備えたことにより、イヤーチップは環状部の外面と鍔部の外面の軸方向に前後する2箇所で耳孔の内面に密着するため、耳孔の内面に対するイヤーチップの挿入方向(軸方向)の接触長さを長くとることができ、イヤーチップの装着安定性が高まり、イヤーチップが不用意に耳孔から外れることを防止することができる。また、鍔部が環状部より半径方向外側に張り出すため、イヤーチップが耳孔に密着性良くフィットする範囲が拡大し、これにより、イヤーチップが耳孔に広い範囲で適合できるようになり、イヤーチップの汎用性を高めることができる。また、鍔部が、互いに180度異なる一対の2方向に部分的に形成されており、他の方向には鍔部が形成されていないため、イヤーチップを耳孔に挿入する際に挿入抵抗が大きくなることを抑制でき、イヤーチップの装着性が低下することを防止できる。また、一対の鍔部は対称位置に設けられているため、イヤーチップを耳孔にバランス良く取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係わるイヤーチップをカナル型イヤホンに対向させた状態で示す断面図である。
【
図2】
図1に示すイヤーチップをイヤホンに組み付けた状態を示す図である。
【
図4】同じく
図1に示すイヤーチップの背面図である。
【
図5】同じく
図1に示すイヤーチップの平面図である。
【
図6】同じく
図1に示すイヤーチップの下面図である。
【
図7】
図3のイヤーチップをA−A線に沿って切断した断面図である。
【
図8】本発明に係わるイヤーチップの変形例を示す正面図である。
【
図13】
図8のイヤーチップをB−B線に沿って切断した断面図である。
【
図14】
図8のイヤーチップをC−C線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1〜7には、本発明のイヤーチップの一実施形態が示され、
図8〜14には、本発明のイヤーチップの変形例が示されている。
【0013】
本実施形態のイヤーチップ20は、携帯型の音響機器などに使用されるカナル型イヤホンに装着される付属品(アタッチメント)である。
図1は、本実施形態のイヤーチップ20がカナル型イヤホン1に装着される前の状態を示し、
図2は、本実施形態のイヤーチップ20がカナル型イヤホン1に装着された状態を示している。
【0014】
図示されているカナル型イヤホン1は、一例として図示したものであり、樹脂成形されたイヤホン本体3と、イヤホン本体3に収納される音を発生するスピーカユニットとしてのドライバユニット(不図示)と、イヤホン本体3に突出形成され、イヤホン本体3の内部空間に連通する音導孔を有する筒状の音導管5と、音導管5の位置する側の反対側でイヤホン本体3から下方に突設され、一端が携帯音楽プレーヤやラジオなどの音響機器に接続する電線ケーブル10の他端を保持するケーブル保持部9とを備えている。ケーブル保持部9に保持された電線ケーブル10の他端は、外被が剥離されることによって露出したリード線がドライバーユニットに電気的に接続している。これにより、音響機器からイヤホン本体3に入力された音声は、音導管5の音導孔(不図示)を通り、音導管5の端部の放音開口8より外部へ出力されるようになっている。
【0015】
上記カナル型イヤホン1に装着されるイヤーチップ20は、例えばシリコンゴム又はエラストマなどの軟質材料で一体的に射出成形されたものであり、耳孔に挿入されて固定され、イヤホン1の音導管5の端部から出力された音声のほとんどを外部へ漏らすことなく、音声を耳孔に直接的に導き入れるために使用される。本実施形態のイヤーチップ20は、イヤホン本体3から突出する音導管5に装着される筒状部22(音導管装着部)と、耳孔に挿入される筒状部22の挿入端(耳側端部)から後端(反耳側端部)近傍へ向けて半径方向外側に広がりながら折り返されている環状部26と、環状部26の端部(反耳側端部)の外周縁から筒状部22の端部を越えて反耳側へ延長形成され、半径方向外側に曲面を有して張り出す一対の鍔部28,29と、を備えている。
【0016】
図1(
図7)に示すように、筒状部22は、イヤホン本体3から突出する音導管5の大きさ及び形状に対応する大きさ及び形状に形成されている。筒状部22の孔22aの内径は、イヤホン本体3から突出する音導管5の外径よりも小さいため、音導管5は、筒状部22の孔22aの開口端から挿入され、孔22aを広げながら押し込まれる。また、筒状部22の後端側の内周面は、部分的に肉厚になっており、音導管5の環状係合部7に係合する段部23を有している。これにより、音導管5にイヤーチップ20の筒状部22を嵌合させると、音導管5の環状係合部7にイヤーチップ20の段部23が係合することで、イヤーチップ20がイヤホン1から不用意に外れないようになっている。
【0017】
環状部26は、筒状部22の挿入前端から半径方向に広がりながら折り返し、筒状部22とほぼ平行に筒状部22の後端近傍までほほ一様な肉厚で延びている。
図4の背面図に示すように、環状部26は円形状を成している。環状部26の内面と筒状部22の外面との間の空間S(
図1及び2)は、環状部26が弾性変形して縮径する際の撓み空間として機能する。言い換えると、環状部26の内面が筒状部22の外面に当接することにより、環状部26の弾性変形量が制限されている。したがって、耳孔に対するイヤーチップ20の適合性は、環状部26の弾性変形量によって制限を受けることになる。
【0018】
互いに180度異なる一対の2方向、すなわち上下方向に対向して形成された一対の鍔部28,29は、筒状部22の後端を越えて、環状部26より大きく半径方向外側に張り出して延出するため、鍔部28,29の内側はより大きな撓み空間Sとして機能するものとなる(
図1及び2)。
図3の正面図及び
図4の背面図においては、上下の一対の鍔部28,29は、環状部26に連続する略半円状の部分として示されている。鍔部28,29は環状部26に比べてより大きく半径方向内側に弾性変形できるようになっているが、
図2に示すように、イヤーチップ20がイヤホン1に装着されると、イヤホン本体3が鍔部28,29の内側の撓み空間Sに位置するため、鍔部28,29の弾性変形量は鍔部28,29の内面がイヤホン本体3に当接するまでの変形量に制限されるものとなる。このような本実施の形態では、イヤホン本体3の前端の稜線部分を鍔部28,29を介して耳介に引っかけたり、耳孔(外耳道)の開口端に当接させることが可能となる。これにより、本実施形態のイヤーチップ20は、耳孔に対するイヤーチップ20の挿入方向(軸方向)の前後2箇所の位置で、環状部26と上下一対の鍔部28,29とがそれぞれに、耳孔及び耳孔の開口端に当接し押圧することにより、イヤーチップ20の挿入方向における接触長さ(接触面積)が大きくなり、イヤホン1が耳孔から外れ難くなるという効果がある。
【0019】
イヤーチップ20を有するイヤホン1を耳に取付けると、上下一対の鍔部28,29は、耳孔のテーパ状をなす開口端近傍に当接し、上下方向でバランス良く固定されるように設けられている。すなわち、左右方向には鍔部が設けられていないため、左右方向でイヤーチップ20と耳孔との間に隙間できてイヤーチップ20の挿入抵抗が小さくなって装着性が良くなると共に、装着後は上下一対の鍔部28,29が耳孔の開口端近傍の上側及び下側を集中的に押すことができ、言い換えると、鍔部28,29が耳孔の開口端近傍を押す力が分散されず、それだけイヤーチップ20を耳に強く固定することができる。
【0020】
上述したように、一対の鍔部28,29は、略半円状をなし(
図3及び4参照)、環状部26の肉厚とほぼ等しい肉厚を有し(
図1参照)、上側の鍔部28が下側の鍔部29より長く形成されている。
図5の平面図には上側の鍔部28が示され、
図6の下面図には下側の鍔部29が示されている。上側の鍔部28を下側の鍔部29より長く形成したのは、耳孔の上側が下側より長くなっているためであり、耳孔に対する鍔部28,29の接触面積を大きくしてフィット性を高めるためである。一対の鍔部28,29は、上の鍔部28が筒状部22の後端より3〜9mm延出し、下の鍔部29が筒状部22の後端より1〜5mm延出することが好ましい。汎用的サイズのイヤーチップでは、上の鍔部28が筒状部22の後端より5〜7mm延出し、下の鍔部29が筒状部22の後端より2〜4mm延出することが好ましい。なお、一対の鍔部28,29の延出長さは任意であり、本実施形態に制限されるものではない。また、鍔部28,29の肉厚や半円形の大きさも任意であるが、汎用的サイズのイヤーチップでは、肉厚が0.3〜0.7mm、半円の大きさは約8〜13mmである。
【0021】
以上のように、本発明によれば、環状部26に続き半径方向外側に張り出す一対の鍔部28,29を設けたことにより、イヤーチップ20は環状部26の外面と鍔部28,29の外面の軸方向に前後する2箇所で耳孔の内面及び耳孔の開口端近傍に密着するため、耳孔に対するイヤーチップ20の挿入方向(軸方向)の接触長さを長くとることができ、これによりイヤーチップ20の装着安定性が高まり、イヤーチップ20が不用意に耳から外れることを防止することができる。また、環状部26より鍔部28,29が半径方向外側により大きく張り出すことにより、イヤーチップ20が耳に密着性良くフィットする範囲が拡大し、イヤーチップ20の汎用性が高まる。また、鍔部28,29が、互いに180度異なる一対の2方向に部分的に形成されているため、イヤーチップを耳孔に挿入する際に挿入抵抗が大きくなることを抑制でき、イヤーチップの装着性が低下することを防止できる。さらに、サイズが異なるイヤーチップを多数用意する必要がなくなることで、製造コストを抑えることができるという副次的効果もある。
【0022】
図8〜14には本発明のイヤーチップの変形例を示す。上述した
図1〜7に示すイヤーチップ20は汎用的サイズであるのに対し、変形例のイヤーチップ20Aはスモールサイズである点で相違し、変形例のイヤーチップ20Aは、
図8の平面視及び
図9の背面視において、山形状をなしている。スモールサイズのイヤーチップ20Aは、子供向け又は女性向けに提供されたものであり、鍔部28A,29Aの先端側を細くして、鍔部28A,29Aを山形状に形成することにより、鍔部28A,29Aと耳との不要な干渉をなくして、快適性を高めるためである。変形例のイヤーチップ20Aのその他の構成は、
図1〜7に示す汎用サイズのイヤーチップ20と共通するため、重複する説明を省略することとする。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、また、上下一対の鍔部を同様の仕様で形成し、上下の鍔部の長さを等しくすることもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 イヤホン
3 本体
5 音導管
20,20A イヤーチップ
22,22A 筒状部(音導管装着部)
26,26A 環状部
28,28A 上側の鍔部
29,29A 下側の鍔部
S 撓み空間