特許第5665796号(P5665796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665796
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20150115BHJP
   F02B 37/22 20060101ALI20150115BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   E02F9/20 N
   F02B37/12 301N
   E02F9/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-117637(P2012-117637)
(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公開番号】特開2013-245437(P2013-245437A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 象平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 崇
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−151085(JP,A)
【文献】 特開2008−128107(JP,A)
【文献】 特開2008−106725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/18
E02F 9/24−9/28
F02B 33/00−41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたエンジンと、このエンジンに供給する空気を過給するターボチャージャとを備え、このターボチャージャは、前記エンジンから排出される排気ガスが流通することで回転するタービンと、このタービンを流通する排気ガスの流路を絞る絞り部とを有し、この絞り部の位置に応じて前記ターボチャージャの容量を可変させる建設機械において、
前記絞り部の位置を検出する絞り位置検出手段と、
大気の温度を計測する大気温度計測手段と、
前記絞り位置検出手段によって検出された前記絞り部の位置が所定の範囲になく、前記大気温度計測手段によって検出された大気の温度が所定の第1温度以下であるとき、前記エンジンの始動直後に前記車体の動作を制限する制限手段と
前記車体に設けられ、前記エンジンによって駆動する油圧ポンプと、
この油圧ポンプから吐出される圧油を制御して前記車体を操作する操作レバーと、
この操作レバーの操作をロックするゲートロックとを備え、
前記制限手段は、
前記ゲートロックによって前記操作レバーの操作がロックされていないとき、前記車体の動作の制限として、前記エンジンの回転数、前記油圧ポンプの吐出量、及び前記油圧ポンプの吐出圧のうち少なくとも一つを所定値に制限することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
車体に設けられたエンジンと、このエンジンに供給する空気を過給するターボチャージャとを備え、このターボチャージャは、前記エンジンから排出される排気ガスが流通することで回転するタービンと、このタービンを流通する排気ガスの流路を絞る絞り部とを有し、この絞り部の位置に応じて前記ターボチャージャの容量を可変させる建設機械において、
前記絞り部の位置を検出する絞り位置検出手段と、
大気の温度を計測する大気温度計測手段と、
前記絞り位置検出手段によって検出された前記絞り部の位置が所定の範囲になく、前記大気温度計測手段によって検出された大気の温度が所定の第1温度以下であるとき、前記エンジンの始動直後に前記車体の動作を制限する制限手段と、
前記車体に設けられ、前記エンジンによって駆動する油圧ポンプと、
この油圧ポンプから吐出される圧油を制御して前記車体を操作する操作レバーと、
この操作レバーの操作をロックするゲートロックとを備え、
前記制限手段は、
前記ゲートロックによって前記操作レバーの操作がロックされているとき、前記車体の動作の制限として、前記エンジンの回転数、前記油圧ポンプの吐出量、及び前記油圧ポンプの吐出圧のうち少なくとも一つを所定値まで上昇させた状態で維持することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械において、
前記エンジンから排出される排気ガスの下流に設けられ、この排気ガスの温度を計測する排気ガス温度計測手段と、
この排気ガス温度計測手段によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達したときに、前記制限手段による制限を解除する排気ガス温度解除手段とを備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記絞り部の位置を調整する絞りアクチュエータを備え、
前記制限手段は、前記車体の動作を制限してから前記絞りアクチュエータが正常な稼働状態に至るまでの間、この絞りアクチュエータを前記絞り部の位置を調整するように動作させ続けることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに供給される空気を過給するターボチャージャを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ショベル等の建設機械は、車体に設けられたエンジンと、このエンジンに接続された油圧ポンプとを備えており、エンジンが始動して回転することにより、油圧ポンプが駆動して掘削や運搬等の各種の作業を行うようになっている。このように、建設機械の動力源となるエンジンは、外部の空気を燃焼室内に吸気する吸気管と、この吸気管から取り込んだ空気と燃料が混合して燃焼することによって発生した排気ガスを外部へ排出する排気管と、この排気管内を流通する排気ガスを利用して燃焼室内の燃料の燃焼効率を高めるターボチャージャとを有している。
【0003】
具体的には、このターボチャージャは、エンジンから排出される排気ガスが流通することで回転するタービンと、一端がこのタービンに連結された回転軸と、この回転軸の他端に連結されたコンプレッサとを有しており、タービンが排気管内に配置されると共に、コンプレッサが吸気管に配置されるようになっている。
【0004】
従って、エンジンが始動して回転すると、エンジンから排気ガスが排出される。排出された排気ガスは排気管内を流通してタービンを通過する。このとき、タービンは排気ガスを受けて回転することにより、回転軸を介してコンプレッサが回転するので、このコンプレッサの回転に応じて外部の空気が吸気管内に吸い込まれる。これにより、コンプレッサを通じて吸気管からより多くの空気をエンジンの燃焼室内に導くことができるので、エンジンの燃焼室内における空気の圧力、すなわちブースト圧を高めることができる。建設機械を操作する作業者は、このブースト圧を高めてエンジンの出力を増加させることにより、各種の作業を行うようにしている。
【0005】
このように、エンジンのブースト圧は、排気ガスがタービンを回転させる回転力から得られるので、目標とするブースト圧まで高めるには排気ガスがタービンを通過する流通面積を小さくして排気ガスの流速を高めることにより、排気ガスの運動エネルギーから得られるタービンの回転速度、回転力を増加させる必要がある。そのため、ターボチャージャには、タービンを流通する排気ガスの流路を絞る絞り部が設けられており、この絞り部の絞り位置に応じてブースト圧が制御されるようになっている。
【0006】
ここで、エンジンから排気管内へ排出される排気ガスには炭化水素が含まれているので、排気ガスがタービンを通過する際に排気ガス中の炭化水素が絞り部に付着する。特に、アイドル運転のときのようにエンジンから排気管内へ排出される排気ガスの温度が低い場合には、触媒の温度を維持するために排気ガス中へ炭化水素が供給されるので、これに伴って絞り部への炭化水素の付着量も多くなる。
【0007】
また、エンジンが始動してから時間が経過するにつれて、排気管内を流通する排気ガスの温度が上昇する。そのため、排気ガスがタービンを通過する際に排気ガスの熱が絞り部に伝達し、絞り部に付着した炭化水素がこの熱で固着することにより、絞り部の動作が妨げられるので、絞り部の絞り位置を調整してもブースト圧を上手く制御できないことが問題になっていた。
【0008】
そこで、このような炭化水素による絞り部の固着を防止するために、ターボチャージャのノズルベーン、すなわち絞り部が固着する時期を推定する固着推定手段と、この固着推定手段によって推定された絞り部の固着時期よりも前に絞り部の位置を強制的に変更して調整する絞り部強制変更手段とを備えたエンジンが従来技術の1つとして提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−49675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、エンジンから排気管内へ排出される排気ガスには炭化水素以外にも水蒸気が含まれているので、エンジンが低温下で稼働する場合には、排気ガスがタービンを通過する際に排気ガス中の水蒸気が絞り部で冷却されて凍結することによっても絞り部の固着が発生する。そのため、エンジンが十分に暖気される前に停止すると、排気ガスの熱で絞り部が暖められることもないので、エンジンが再び稼働するまで絞り部が固着したままになる。特に、寒冷地のように外気の温度が低い場所や冬場において建設機械が使用される場合には、エンジンの温度も低くなり易いので、排気ガス中に含まれる水蒸気の凍結による絞り部の固着がより一層顕著になる。
【0011】
特許文献1に開示された従来技術のエンジンは、絞り部が固着する前に絞り部強制変更手段で絞り部の位置を強制的に変更して調整することにより、絞り部に付着した炭化水素を除去することができるが、上述したようにエンジンが停止して絞り部が既に固着した状態では、水蒸気の凍結による固着によって絞り部の位置を十分に動かすこともできなくなる。従って、エンジンの始動直後に絞り部が既に固着した状態にあるにも拘わらず、適切な操作が行われなかった場合には、この操作に伴う車体の動作に応じてエンジンやターボチャージャに不必要な負荷が加わり、エンジンやターボチャージャ等に不具合が生じる虞がある。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、エンジンの始動直後にエンジンやターボチャージャ等に不具合が生じるのを抑制することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械は、車体に設けられたエンジンと、このエンジンに供給する空気を過給するターボチャージャとを備え、このターボチャージャは、前記エンジンから排出される排気ガスが流通することで回転するタービンと、このタービンを流通する排気ガスの流路を絞る絞り部とを有し、この絞り部の位置に応じて前記ターボチャージャの容量を可変させる建設機械において、前記絞り部の位置を検出する絞り位置検出手段と、大気の温度を計測する大気温度計測手段と、前記絞り位置検出手段によって検出された前記絞り部の位置が所定の範囲になく、前記大気温度計測手段によって検出された大気の温度が所定の第1温度以下であるとき、前記エンジンの始動直後に前記車体の動作を制限する制限手段と、前記車体に設けられ、前記エンジンによって駆動する油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油を制御して前記車体を操作する操作レバーと、この操作レバーの操作をロックするゲートロックとを備え、前記制限手段は、前記ゲートロックによって前記操作レバーの操作がロックされていないとき、前記車体の動作の制限として、前記エンジンの回転数、前記油圧ポンプの吐出量、及び前記油圧ポンプの吐出圧のうち少なくとも一つを所定値に制限することを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、絞り部の位置を調整しても絞り部の位置が所定の範囲になければ、ブースト圧を制御できない状態にあるので、絞り部が固着していることが分かる。このとき、大気の温度が第1の所定温度以下であれば、エンジンが低温下にあって水蒸気が凍結し易い状態にあるので、絞り部の固着が水蒸気の凍結によるものと判断することができる。従って、本発明は、絞り位置検出手段で絞り部の位置を検出すると共に、大気温度計測手段で大気の温度を計測しており、エンジンの始動直後に絞り部の固着が生じていると判断されるときに限り、制限手段で車体の動作を制限するようにしているので、エンジンの始動直後に仮に適切な操作が行われなかった場合でも、車体に過剰な負荷が加わることを抑えることができる。これにより、エンジンの始動直後にエンジンやターボチャージャ等に不具合が生じるのを抑制することができる。そして、ゲートロックによって操作レバーの操作がロックされていないときには、制限手段によってエンジンの回転数及び油圧ポンプの吐出量、及び油圧ポンプの吐出圧のうち少なくとも一つを制限することで、操作レバーが操作されてもエンジンおよび油圧ポンプに大きな負荷、急激な負荷を作用させることがないので、エンストの発生や油圧ポンプの故障等を確実に回避することができる。これにより、エンジンの始動後にエンジンや油圧ポンプを良好な状態に維持できるので、エンストの発生や油圧ポンプの故障等が原因で起こる作業ミスを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る建設機械は、車体に設けられたエンジンと、このエンジンに供給する空気を過給するターボチャージャとを備え、このターボチャージャは、前記エンジンから排出される排気ガスが流通することで回転するタービンと、このタービンを流通する排気ガスの流路を絞る絞り部とを有し、この絞り部の位置に応じて前記ターボチャージャの容量を可変させる建設機械において、前記絞り部の位置を検出する絞り位置検出手段と、大気の温度を計測する大気温度計測手段と、前記絞り位置検出手段によって検出された前記絞り部の位置が所定の範囲になく、前記大気温度計測手段によって検出された大気の温度が所定の第1温度以下であるとき、前記エンジンの始動直後に前記車体の動作を制限する制限手段と、前記車体に設けられ、前記エンジンによって駆動する油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油を制御して前記車体を操作する操作レバーと、この操作レバーの操作をロックするゲートロックとを備え、前記制限手段は、前記ゲートロックによって前記操作レバーの操作がロックされているとき、前記車体の動作の制限として、前記エンジンの回転数、前記油圧ポンプの吐出量、及び前記油圧ポンプの吐出圧のうち少なくとも一つを所定値まで上昇させた状態で維持することを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、絞り部の位置を調整しても絞り部の位置が所定の範囲になければ、ブースト圧を制御できない状態にあるので、絞り部が固着していることが分かる。このとき、大気の温度が第1の所定温度以下であれば、エンジンが低温下にあって水蒸気が凍結し易い状態にあるので、絞り部の固着が水蒸気の凍結によるものと判断することができる。従って、本発明は、絞り位置検出手段で絞り部の位置を検出すると共に、大気温度計測手段で大気の温度を計測しており、エンジンの始動直後に絞り部の固着が生じていると判断されるときに限り、制限手段で車体の動作を制限するようにしているので、エンジンの始動直後に仮に適切な操作が行われなかった場合でも、車体に過剰な負荷が加わることを抑えることができる。これにより、エンジンの始動直後にエンジンやターボチャージャ等に不具合が生じるのを抑制することができる。そして、ゲートロックによって操作レバーの操作がロックされているときには、操作レバーが操作されてもエンジンの回転数、油圧ポンプの吐出量、及び油圧ポンプの吐出圧が上昇しないが、制限手段は、エンジンの回転数、油圧ポンプの吐出量、及び油圧ポンプの吐出圧のうち少なくとも一つを所定値まで上昇させた状態で維持することにより、エンジンから排出される排気ガスの温度が上昇し易くなるので、排気ガスの熱で絞り部における凍結した水蒸気の解凍を早めることができる。これにより、制限手段による車体の動作の制限時間を短縮できるので、エンジンや油圧ショベルの本来の性能を早期に発揮することができる。
【0017】
また、本発明に係る建設機械は、前記発明において、前記エンジンから排出される排気ガスの下流に設けられ、この排気ガスの温度を計測する排気ガス温度計測手段と、この排気ガス温度計測手段によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達したときに、前記制限手段による制限を解除する排気ガス温度解除手段とを備えたことを特徴としている。
【0018】
このように構成した本発明は、エンジンが始動して時間が経過すると、エンジンから排出される排気ガスの温度が上昇して所定の第2温度よりも高くなる。そのため、絞り部を通過する排気ガスの熱によって凍結した水蒸気を再び蒸発させることができるので、絞り部が固着した状態から元の正常な状態に戻すことができる。従って、本発明は、排気ガスの下流に設けられた排気ガス温度計測手段によって排気ガスの温度を計測しており、排気ガスの温度が、絞り部で凍結した水蒸気を十分に蒸発させる温度になったとき、排気ガス温度解除手段で制限手段による制限を解除するようにしているので、エンジンの始動後に車体の動作が長時間制限されることなく、絞り部の位置を調整してブースト圧を確実に制御することができる。
【0021】
また、本発明に係る建設機械は、前記発明において、前記絞り部の位置を調整する絞りアクチュエータを備え、前記制限手段は、前記車体の動作を制限してから前記絞りアクチュエータが正常な稼働状態に至るまでの間、この絞りアクチュエータを前記絞り部の位置を調整するように動作させ続けることを特徴としている。
【0022】
このように構成した本発明は、エンジンが始動して排出された排気ガスが絞り部を通過するようになると、水蒸気が凍結して絞り部に張り付いた氷が排気ガスの熱で解け出し始めるので、絞り部の位置を徐々に動かせるようになる。そのため、制限手段は、水蒸気の凍結による絞り部の固着がまだ発生している状態にあっても、絞りアクチュエータを動作させて絞り部に張り付いた氷に絞り部の位置を動かそうとする力を加えることにより、この氷を剥ぎ取ることができるので、絞り部を迅速に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の建設機械によれば、制限手段は、絞り位置検出手段によって検出された絞り部の位置が所定の範囲になく、大気温度計測手段によって計測された大気の温度が所定の第1温度以下であるとき、エンジンの始動直後に車体の動作を制限することにより、水蒸気の凍結による絞り部の固着が発生している状態では、車体は制限された範囲内で動作するので、車体に過剰な負荷が加わることを抑えることができる。これにより、エンジンの始動直後にエンジンやターボチャージャ等に不具合が生じるのを抑制できるので、従来よりもエンジンやターボチャージャ等の安定性を向上させることができ、高い信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る建設機械の第1実施形態の構成を示す図である。
図2図1に示す旋回体の内部の構成を説明する図である。
図3】本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る建設機械を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0026】
[第1実施形態]
本発明に係る建設機械の第1実施形態は、例えば図1に示すように掘削や土砂の運搬等を行う油圧ショベル1から成っている。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とを備えている。
【0027】
また、旋回体3は、前方に配置され、作業者が乗車するキャブ7と、後方に配置され、車体のバランスを保つカウンタウェイト6と、これらのキャブ7及びカウンタウェイト6の間に配置され、後述するエンジンが搭載されるエンジンルーム5と、このエンジンルーム5の上部に設けられた車体カバー5aとを備えている。
【0028】
さらに、旋回体3は、図2に示すように後述する各種の手段の動作を制御するコントローラ8と、エンジンルーム5内に収納されたエンジン10と、このエンジン10に供給する空気を過給するターボチャージャ11と、外部の空気を室内に吸気する吸気管(図示せず)と、この吸気管の途中に設けられ、吸気管から吸気した空気を清浄するエアクリーナ12と、この吸気管から取り込んだ空気と燃料が混合して燃焼することによって発生した排気ガスを外部へ排出する排気管(図示せず)と、この排気管のうち排気ガスの下流に設けられ、エンジン10の動作中に発生する騒音を消音するマフラ13とを備えている。なお、エンジン10には、吸気管に接続され、吸気管から送出された空気を各気筒に均等に分配する吸気マニホールド(図示せず)と、排気管に接続され、排出される排気ガスを一つの管路に合流させて排気管へ送出する排気マニホールド(図示せず)とが設けられている。
【0029】
また、エンジン10は、図示されないが、燃料を噴射する燃料噴射ポンプと、エンジン10に接続され、燃料噴射ポンプから供給された燃料を高圧で蓄えるコモンレールと、エンジン10の各気筒に設けられ、コモンレールから高圧の燃料が供給されるインジェクタとを備え、このインジェクタからエンジン10の各気筒内へ燃料を噴射するようになっている。
【0030】
上述したターボチャージャ11は、例えば図示されないが、排気管の上流側に設けられ、エンジン10から排出される排気ガスが流通することで回転するタービンと、一端がこのタービンに連結された回転軸と、この回転軸の他端に連結されると共に、吸気管に設けられ、エアクリーナ12を通過した空気を過給するコンプレッサと、タービンを流通する排気ガスの流路を絞る絞り部(図示せず)と、コントローラ8に接続され、絞り部の位置を調整する絞りアクチュエータ14とを有しており、絞り部の位置に応じてターボチャージャ11の容量を可変させるようになっている。
【0031】
すなわち、タービンは、コンプレッサと回転軸を介して一体に連結されており、排気管内を流通する排気ガスを受けて回転し、この回転力でコンプレッサを駆動することにより、外部の空気が吸気管を流通してエンジン10の室内に流れ込むようになっている。そして、絞りアクチュエータ14によって調整される絞り部の位置に応じてタービン内の排気ガスの流路が変更され、タービンが回転する速度と共に回転軸の回転力も変化するので、吸気管からエンジン10の室内へ送出する空気の圧力(ブースト圧)が制御されるようになっている。
【0032】
また、旋回体3は、エンジン10に接続され、エンジン10によって駆動する油圧ポンプ15と、コントローラ8に接続され、油圧ポンプ15から吐出される圧油の吐出量を調整する吐出量調整器16と、コントローラ8に接続され、油圧ポンプ15から吐出される圧油の吐出圧を調整する吐出圧調整器17と、エンジン10及び油圧ポンプ15に供給する燃料を貯蔵する燃料タンク(図示せず)と、この燃料タンクに隣接して配置され、油圧ポンプ15によってフロント作業機4の各アクチュエータに供給する作動油を貯蔵する作動油タンク(図示せず)とを備えている。なお、吐出圧調整器17は、走行体2、旋回体3およびフロント作業機4の駆動を制御するコントロールバルブ(制御弁)とすることもできる。
【0033】
さらに、旋回体3は、エンジン10の駆動力によって回転し、エンジンルーム5内に冷却風を生起させるファン18と、このファン18によって生起された冷却風を利用してエンジンルーム5内の機器の冷却を行う熱交換器とを備えている。この熱交換器は、例えばエンジン10の冷却水を冷却するラジエータ(図示せず)と、作動油を冷却するオイルクーラ(図示せず)と、吸気管に設けられ、ターボチャージャ11のコンプレッサによって過給された空気を冷却するインタクーラ19とを有している。そして、吸気管のうちこのインタクーラ19とエンジン10との間には、ブースト圧を検出するブースト圧検出手段20が設けられており、このブースト圧検出手段20はコントローラ8に接続されている。
【0034】
一方、キャブ7は、不図示の制御弁により油圧ポンプ15から吐出される圧油を制御して走行体2、旋回体3及びフロント作業機4を操作する操作レバー(図示せず)と、この操作レバーによる車体の操作を許可、禁止(ロック)するゲートロック25と、油圧ショベル1の動作に関する各種の情報を表示する表示装置としてのモニタ(図示せず)とを備えており、これらの操作レバー、ゲートロック25、及びモニタはコントローラ8に接続されている。
【0035】
上述したゲートロック25は、例えば、運転席への乗降経路に張り出す下方位置と、乗降経路に張り出さない上方位置との間で回動可能に設けられ、上方位置で操作レバーによる操作を禁止(ロック)するON状態となり、下方位置で操作を許容(ロック解除)するOFF状態となる。従って、キャブ7内に乗車した作業者がゲートロック25を上方位置から下方位置に切り替えて操作レバーを操作すると、操作レバーの操作信号が制御弁に伝達され、その操作信号に応じて制御弁が制御されて車体が駆動する。
【0036】
本発明の第1実施形態は、絞り部の位置を検出する絞り位置検出手段26と、大気の温度を計測する大気温度計測手段27とを備えている。絞り位置検出手段26は、例えばターボチャージャ11に取付けられており、大気温度計測手段27は、例えば吸気温度センサで、吸気管に取付けられている。そして、これらの絞り位置検出手段26及び大気温度計測手段27はコントローラ8に接続されている。
【0037】
また、本発明の第1実施形態は、絞り位置検出手段26によって検出された絞り部の位置が所定の範囲になく、大気温度計測手段27によって検出された大気の温度が所定の第1温度以下であるとき、エンジン10の始動直後に車体の動作を制限する制限手段(図示せず)を備えており、この制限手段はコントローラ8内に格納されている。なお、上述した所定の第1温度は、例えば大気の温度が低下したときに水蒸気の凍結による絞り部の固着が生じ始める温度として予め実験や経験等に基づいて決定される。
【0038】
本発明の第1実施形態では、制限手段は、ゲートロック25によって操作レバーによる操作が許容されロックされていないとき、車体の動作の制限として、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧のうち少なくとも一つを所定値に制限するようにしている。本発明の第1実施形態では、制限手段は、ゲートロック25によって操作レバーの操作がロックされていないとき、車体の動作の制限として、例えば、通常の作業が出来ない程度に車体の動作速度を遅くするように動作制限するようにエンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量をそれぞれアイドリング回転数、最小流量とする所定の第1設定値にそれぞれ制御するようにしている。
【0039】
また、制限手段は、ゲートロック25によって操作レバーの操作がロックされているとき、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧のうち少なくとも一つを所定値まで上昇させた状態で維持するようにしている。本発明の第1実施形態では、制限手段は、ゲートロック25によって操作レバーによる操作が禁止(ロック)されているとき、つまり、車体の動作が禁止された状態では、例えばエンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧をそれぞれ、アイドリング回転数よりも高い回転数、最小流量よりも大きい所定流量、無負荷状態よりも大きい所定圧力とする所定の第2設定値まで上昇させた状態に維持するように制御して、エンジンに作用する負荷を上昇させることにより排気ガス温度を早く上昇させるようにしている。
【0040】
本発明の第1実施形態は、エンジン10から排出される排気ガスの下流に設けられ、この排気ガスの温度を計測する排気ガス温度計測手段28を備え、この排気ガス温度計測手段28はコントローラ8に接続されている。また、本発明の第1実施形態は、排気ガス温度計測手段28によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達したときに、制限手段による制限を解除する排気ガス温度解除手段(図示せず)を備えており、この排気ガス温度解除手段はコントローラ8内に格納されている。なお、上述した所定の第2温度は、例えば排気ガスの温度が上昇したときに水蒸気の凍結による絞り部の固着が生じなくなる温度として予め実験や経験等に基づいて決定される。
【0041】
さらに、本発明の第1実施形態では、制限手段は、車体の動作を制限してから絞りアクチュエータ14が正常な稼働状態に至るまでの間、この絞りアクチュエータ14を絞り部の位置を調整するように動作させ続けるようにしている。また、コントローラ8は、例えば絞りアクチュエータ14によって調整された絞り位置が上述した所定の範囲にないとき、すなわちブースト圧検出手段20によって検出されたブースト圧が目標とするブースト圧と異なるときに、車体エラーが発生している旨の車体エラー通知を表示するようにしている。その状態でさらに、コントローラ8は、例えば大気温度計測手段27によって検出された大気の温度が所定の第1温度以下でないとき、その旨を表示しつつ、エンジン出力を低下させるようにエンジン回転数等を制御する。
【0042】
さらに、コントローラ8は、例えば制限手段によって車体の動作が制限されたとき、操作レバーの操作の禁止を促す旨の禁止通知をモニタに表示し、排気ガス温度解除手段によって制限手段による制限が解除されたとき、車体エラー通知及び禁止通知をモニタから取り消して操作レバーの操作の禁止を解除する旨の解除通知をモニタに表示するようにしている。
【0043】
次に、本発明の第1実施形態の動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
図3は本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【0045】
本発明の第1実施形態では、図3に示すようにまず作業者が油圧ショベル1のキャブ7内に乗車した後、不図示のキースイッチをONしてコントローラ8の電源を入れると、絞り位置検出手段26が絞り部の位置を検出する。そして、コントローラ8は、絞り位置検出手段26によって検出された絞り部の位置が所定の範囲にあるかどうかを判断する(ステップ(以下、Sと記す)1)。
【0046】
このとき、コントローラ8は、絞り位置検出手段26によって検出された絞り部の位置が所定の範囲にあると判断した場合には、車体が通常通り動作するように制御する(S7)。一方、手順S1においてコントローラ8は、絞り位置検出手段26によって検出された絞り部の位置が所定の範囲にないと判断した場合には、車体エラーが発生している旨の車体エラー通知をモニタに表示する(S2)。
【0047】
次に、大気温度計測手段27が大気の温度を計測すると、コントローラ8は、大気温度計測手段27によって計測された大気の温度が所定の第1温度以下であるかどうかを判断する(S3)。このとき、コントローラ8は、大気温度検出手段27によって計測された大気の温度が所定の第1温度以下でないと判断した場合には、その旨をモニタに表示しつつ、エンジン出力を低下させるようにエンジン回転数等を制御する(S8)。
【0048】
一方、手順S3においてコントローラ8は、大気温度計測手段27によって計測された大気の温度が所定の第1温度以下であると判断した場合には、コントローラ8の制限手段は、エンジン10の始動直後に車体の動作を制限し、絞りアクチュエータ14を絞り部の位置を調整するように動作させる。
【0049】
そして、作業者がエンジン10を始動させると、ゲートロック25によって操作レバーの操作がロックされているので、制限手段は、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧をそれぞれ第2設定値にまで上昇させた状態で維持する。
【0050】
一方、作業者がゲートロック25を上方位置から下方位置に切り替えて操作レバーの操作を可能にすると、制限手段は、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量をそれぞれ第1設定値に制限する。そして、コントローラ8は、操作レバーの操作の禁止を促す旨の禁止通知をモニタに表示して待機する(S4)。
【0051】
次に、排気ガス温度計測手段28がエンジン10から排出される排気ガスの温度を計測すると、コントローラ8は、排気ガス温度計測手段28によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達しているかどうかを判断する(S5)。このとき、コントローラ8は、排気ガス温度計測手段28によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達していないと判断すると、手順S4の動作に戻る。
【0052】
一方、手順S5においてコントローラ8は、排気ガス温度計測手段28によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達していると判断すると、コントローラ8の排気ガス温度解除手段が制限手段による制限を解除し、手順S2において表示した車体エラー通知及び手順S4において表示した禁止通知をモニタから取り消して操作レバーの操作の禁止を解除する旨の解除通知をモニタに表示する(S6)。そして、本発明の第1実施形態の動作を終了する。
【0053】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、手順S1においてコントローラ8は、絞り位置検出手段26によって検出された絞り部の位置が所定の範囲にないと判断した場合には、ブースト圧検出手段20によって検出されたブースト圧が目標とするブースト圧にならないので、絞り部が固着していることが分かる。また、手順S3においてコントローラ8は、大気温度計測手段27によって計測された大気の温度が所定の第1温度以下であると判断した場合には、水蒸気の凍結による絞り部の固着が生じ易くなっているので、絞り部の固着が水蒸気の凍結によるものと判断することができる。
【0054】
そして、制限手段は、このように絞り位置検出手段26で検出された絞り部の位置及び大気温度計測手段27で計測された大気の温度に基づいてエンジン10の始動直後に絞り部の固着が生じていると判断されるときに限り、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧を制限するようにしているので、エンジン10の始動直後に作業者が仮に操作レバー等を適切に操作しなくても、エンジン10、ターボチャージャ11、及び油圧ポンプ15等に過剰な負荷が加わることを抑えることができる。これにより、エンジン10の始動直後にエンジン10、ターボチャージャ11、及び油圧ポンプ15等に不具合が生じるのを抑制できるので、エンジン10、ターボチャージャ11、及び油圧ポンプ15等の安定性を向上させることができ、高い信頼性を得ることができる。
【0055】
また、本発明の第1実施形態は、エンジン10が始動して時間が経過すると、エンジン10から排出される排気ガスの温度が上昇するので、この排気ガスの温度が所定の第2温度に達したときには、絞り部を通過する排気ガスの熱によって凍結した水蒸気を十分に蒸発させることができる。そのため、水蒸気の凍結による絞り部の固着が生じなくなる。従って、排気ガス温度解除手段は、排気ガス温度計測手段28で計測した排気ガスの温度が所定の第2温度に達したときに制限手段による制限を解除することにより、エンジン10の始動後にエンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧が長時間制限されずに済む。これにより、絞りアクチュエータ14による絞り部の位置の調整が正確に行えるようになるので、目標とするブースト圧まで確実に上昇させることができる。このように、本発明の第1実施形態は、排気ガス温度計測手段28で制限手段による制限を解除するタイミングを適切に図った上で、排気ガス温度解除手段による解除を実行できるので、高い利便性を確保することができる。
【0056】
また、本発明の第1実施形態は、ゲートロック25によって操作レバーの操作がロックされていないとき、すなわちゲートロック25がOFF状態のときには、エンジン10の始動直後に作業者が操作レバー等を操作しても、制限手段による制限が機能しているので、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧が所定の第1回転数、所定の第1吐出量、及び所定の第1吐出圧までしかそれぞれ上昇しない。そのため、水蒸気の凍結による絞り部の固着が発生している状態では、操作レバーが操作可能であってもエンジン10及び油圧ポンプ15が急激に動作しないので、エンストの発生や油圧ポンプ15の故障等を確実に回避することができる。これにより、エンジン10の始動後にエンジン10や油圧ポンプ15を良好な状態に維持できるので、エンストの発生や油圧ポンプの故障等が原因で起こる作業ミスを防止することができる。
【0057】
また、本発明の第1実施形態は、ゲートロック25によって操作レバーの操作がロックされているとき、すなわちゲートロック25がON状態のときには、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧を所定の第2回転数、所定の第2吐出量、及び所定の第2吐出圧までそれぞれ上昇させた状態で維持することにより、エンジン10から排出される排気ガスの温度が上昇し易くなるので、排気ガスの熱で絞り部における凍結した水蒸気の解凍を早めることができる。これにより、排気ガス温度計測手段28で計測される排気ガスの温度が第2の所定温度により早く達するので、制限手段の制限時間を短縮でき、エンジン10や油圧ポンプ15の本来の性能を早期に発揮することができる。
【0058】
また、本発明の第1実施形態は、エンジン10が始動した後には、排気ガス温度計測手段28で計測された排気ガスの温度が第2の所定温度に達していなくても、水蒸気が凍結して絞り部に張り付いた氷が排気ガスの熱で解け出すので、絞り部の位置を徐々に動かせるようになる。そのため、制限手段は、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧の制限を開始してから排気ガス温度計測手段28で計測された排気ガスの温度が第2の所定温度に達するまで絞りアクチュエータ14を絞り部の位置を調整するように動作させ続けることにより、絞り部に張り付いた氷に絞り部の位置を動かそうとする力を加えることができる。これにより、絞り部に張り付いた氷を剥ぎ取ることができるので、絞り部を迅速に復帰させることができる。従って、エンジン10の始動後に作業者がエンジン10や油圧ポンプ15に対する負荷が大きい作業に早期に着手できるようになるので、作業者の待ち時間を削減することができる。
【0059】
また、本発明の第1実施形態は、水蒸気の凍結による絞り部の固着が発生している間は、車体エラー通知及び禁止通知がモニタに表示され続けるので、作業者はこのモニタを確認することにより、エンジン10の回転数、油圧ポンプ15の吐出量、及び油圧ポンプ15の吐出圧が増加するような操作ハンドル等の使用を控えることができる。これにより、不必要なエンストの発生や油圧ポンプ15の故障等を抑制することができる。
【0060】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、排気ガスの温度を計測する排気ガス温度計測手段28と、この排気ガス温度計測手段28によって計測された排気ガスの温度が所定の第2温度に達したときに、制限手段による制限を解除する排気ガス温度解除手段とを備えたのに対して、第2実施形態は、図示されないが、エンジン10が始動してからの時間を計測する計時手段と、この計時手段によって計測された時間が所定時間経過したときに、制限手段による制限を解除する計時解除手段とを備えたことである。なお、上述した所定時間は、例えばエンジン10が始動してから水蒸気の凍結による絞り部の固着が生じなくなるまでの経過時間として予め実験や経験等に基づいて決定される。
【0061】
また、コントローラ8は、例えば計時手段によって計測された時間、及び残りの制限手段の制限時間(上述の所定時間と計時手段によって計測された時間との差)をモニタに表示するようにしている。その他の構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と重複又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0062】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、エンジン10が始動して時間が経過すると、エンジン10から排出される排気ガスの温度が上昇するので、エンジン10が始動してから所定時間経過したときには、絞り部を通過する排気ガスの熱によって凍結した水蒸気を十分に蒸発させることができる。そのため、水蒸気の凍結による絞り部の固着が生じなくなる。従って、計時解除手段は、計時手段で計測した時間が所定時間経過したときに制限手段による制限を解除することにより、作業者はエンジン10が始動してから所定時間だけ待機すれば良いので、制限手段による制限を解除するのに余分な作業を行わなくて済み、作業者の負担を軽減することができる。
【0063】
また、本発明の第2実施形態は、計時手段によって計測された時間と残りの制限手段の制限時間がモニタに表示されるので、作業者はモニタを確認することにより、制限手段による制限が計時解除手段で解除されるまでの待ち時間を容易に知ることができる。これにより、作業者はこの待ち時間を有効に活用することができる。
【0064】
なお、上述した本発明の第1、第2実施形態は、制限手段によって車体の動作が制限されているときでも、作業者がゲートロック25をOFF状態にすれば、操作レバーが操作可能になる場合について説明したが、この場合に限らず、制限手段による制限が解除されるまでの間、ゲートロック25をON状態に固定して操作レバーの操作を禁止するようにしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 油圧ショベル
2 走行体
3 旋回体
4 フロント作業機
8 コントローラ
10 エンジン
11 ターボチャージャ
12 エアクリーナ
13 マフラ
14 絞りアクチュエータ
15 油圧ポンプ
16 吐出量調整器
17 吐出圧調整器
18 ファン
19 インタクーラ
20 ブースト圧検出手段
25 ゲートロック
26 絞り位置検出手段
27 大気温度計測手段
28 排気ガス温度計測手段
図1
図2
図3