特許第5665798号(P5665798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5665798-建設機械 図000002
  • 特許5665798-建設機械 図000003
  • 特許5665798-建設機械 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665798
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20150115BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   E02F9/00 Q
   F01N3/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-121057(P2012-121057)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-245504(P2013-245504A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 謙輔
(72)【発明者】
【氏名】筒井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】東 宏行
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285950(JP,A)
【文献】 特開2010−236208(JP,A)
【文献】 特開平10−035299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/00−9/18
E02D 9/24−9/28
F01N 3/04−3/38
B60K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、この車体に取り付けられる作業装置と、上記車体に設けられ、エンジンの排気ガス中のNOxを低減するNOx浄化装置と、このNOx浄化装置に尿素水を噴射する尿素水噴射装置と、この尿素水噴射装置に尿素水を供給する尿素水ポンプと、この尿素水ポンプに吸い込まれる尿素水を蓄える尿素水タンクとを備え、
上記尿素水タンクが複数のタンクから成り、これらのタンクを連通する連通管を有する建設機械において、
上記複数のタンクは、給水口を有するタンクと給水口を有さないタンクとを含み、
上記給水口を有するタンク及び給水口を有さないタンクの一方を他方よりも高い位置に配置し、低い位置に配置されるタンクの尿素水を上記尿素水ポンプに吸い込ませるようにし、
上記給水口を有するタンクに尿素水が給水される状態にあることを検出する第1検出手段と、
上記給水口を有さないタンクに尿素水が予め設定される上限量収容されていることを検出する第2検出手段と、
上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を可能にするように作動する作動手段と、
上記第1検出手段で上記給水口を有するタンクに尿素水が給水される状態にあることが検出され、しかも上記第2検出手段で給水口を有さないタンクの尿素水が上記上限量収容されていないことが検出されたとき、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を可能に作動するように上記作動手段を制御し、上記第2検出手段で給水口を有さないタンクの尿素水が上記上限量収容されていることが検出されたとき、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を阻止するように上記作動手段を制御する制御手段とを備え
上記給水口を有さないタンクを上記給水口を有するタンクよりも高い位置に配置し、
上記作動手段が、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへ尿素水を導く上記連通管とは異なる供給管路に設けられ、上記給水口を有するタンクの尿素水を汲み上げる汲み上げポンプと、上記連通管に設けられ、この連通管を開く開位置と閉じる閉位置とを有する切換弁とから成り、
上記給水口を有するタンクの尿素水が予め設定される所定量以下となったことを検出する第3検出手段を備え、
上記制御手段は、
上記第1検出手段で上記給水口を有するタンクに尿素水が給水される状態にあることが検出され、しかも上記第2検出手段で給水口を有さないタンクに上記上限量の尿素水が収容されていないことが検出されたとき、上記切換弁を上記閉位置に切り換え制御し、かつ、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへ尿素水を供給するように上記汲み上げポンプを駆動制御し、
上記第2検出手段で上記給水口を有さないタンクの尿素水が上記上限量であることが検出されたとき、上記汲み上げポンプの駆動を阻止する制御を行い、
上記第3検出手段で上記給水口を有するタンクの尿素水が上記所定量以下となったことが検出されたとき、上記切換弁を上記開位置に切り換え制御することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
上記給水口を有するタンクの尿素水が、上記所定量よりも低い予め設定される下限量にあることを検出する第4検出手段を備え、
上記制御手段は、上記第4検出手段で上記給水口を有するタンクの尿素水が上記下限量であることが検出されたとき、上記汲み上げポンプの駆動を阻止する制御を行うことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
上記汲み上げポンプが上記尿素水ポンプから成り、
上記供給管路が上記尿素水ポンプの戻り管路を含み、この戻り管路を上記給水口を有さないタンクに接続させたことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx浄化装置に供給される尿素水が蓄えられる尿素水タンクを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
走行体及び旋回体を含む車体と、旋回体に取り付けられる作業装置とを備えた油圧ショベル等の建設機械にあっては、エンジンの排気ガス浄化システムを備えたものがある。この排気ガス浄化システムは一般に、エンジンの排気ガス中のNOxを低減するNOx浄化装置と、このNOx浄化装置に尿素水を噴射する尿素水噴射装置と、この尿素水噴射装置に尿素水を供給する尿素水ポンプと、この尿素水ポンプに吸い込まれる尿素水が蓄えられる尿素水タンクとを備えている。
【0003】
特許文献1には、上述した尿素水タンクが複数のタンクから成り、これらのタンクを同じ高さ位置に設けた構成が開示されている。また、これらのタンクを連通させる連通管も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−132891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設機械においても、全体容量を大きく確保するために尿素水タンクを複数のタンクによって構成し、これらのタンクを連通管で連通させることが考えられる。しかし、建設機械にあっては、他の機器の設置に制約されて複数のタンクを同じ高さ位置に配置することができない場合が多い。このような建設機械では、複数のタンクのうちの一方を他方よりも高い位置に配置しデッドスペースを有効に活用して複数のタンクを配置することが考えられる。このように複数のタンクを互いに高さ位置を異ならせて配置する場合には、それぞれのタンクへの尿素水の給水を実現させるためには、タンク間を連通する連通管に開位置と閉位置を有する切換弁を設け、各タンクに尿素水の給水口を設けることが必要となる。
【0006】
しかしながら、このように各タンクに給水口を設けるようにすると、それぞれのタンク毎に尿素水の給水作業が必要になり、この給水作業が煩雑になる。また、各タンクのそれぞれに対する給水作業を行う作業スペースを確保しなければならない。したがって、建設作業の機種によっては、この作業スペースの確保が困難となり、所望の給水作業を実施できないことが起こり得る。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、給水口を有するタンクから給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を可能にする建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、車体と、この車体に取り付けられる作業装置と、上記車体に設けられ、エンジンの排気ガス中のNOxを低減するNOx浄化装置と、このNOx浄化装置に尿素水を噴射する尿素水噴射装置と、この尿素水噴射装置に尿素水を供給する尿素水ポンプと、この尿素水ポンプに吸い込まれる尿素水を蓄える尿素水タンクとを備え、上記尿素水タンクが複数のタンクから成り、これらのタンクを連通する連通管を有する建設機械において、上記複数のタンクは、給水口を有するタンクと給水口を有さないタンクとを含み、上記給水口を有するタンク及び給水口を有さないタンクの一方を他方よりも高い位置に配置し、低い位置に配置されるタンクの尿素水を上記尿素水ポンプに吸い込ませるようにし、上記給水口を有するタンクに尿素水が給水される状態にあることを検出する第1検出手段と、上記給水口を有さないタンクに尿素水が予め設定される上限量収容されていることを検出する第2検出手段と、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を可能にするように作動する作動手段と、上記第1検出手段で上記給水口を有するタンクに尿素水が給水される状態にあることが検出され、しかも上記第2検出手段で給水口を有さないタンクの尿素水が上記上限量収容されていないことが検出されたとき、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を可能に作動するように上記作動手段を制御し、上記第2検出手段で給水口を有さないタンクの尿素水が上記上限量収容されていることが検出されたとき、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへの尿素水の供給を阻止するように上記作動手段を制御する制御手段とを備え、上記給水口を有さないタンクを上記給水口を有するタンクよりも高い位置に配置し、上記作動手段が、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへ尿素水を導く上記連通管とは異なる供給管路に設けられ、上記給水口を有するタンクの尿素水を汲み上げる汲み上げポンプと、上記連通管に設けられ、この連通管を開く開位置と閉じる閉位置とを有する切換弁とから成り、上記給水口を有するタンクの尿素水が予め設定される所定量以下となったことを検出する第3検出手段を備え、上記制御手段は、上記第1検出手段で上記給水口を有するタンクに尿素水が給水される状態にあることが検出され、しかも上記第2検出手段で給水口を有さないタンクに上記上限量の尿素水が収容されていないことが検出されたとき、上記切換弁を上記閉位置に切り換え制御し、かつ、上記給水口を有するタンクから上記給水口を有さないタンクへ尿素水を供給するように上記汲み上げポンプを駆動制御し、上記第2検出手段で上記給水口を有さないタンクの尿素水が上記上限量であることが検出されたとき、上記汲み上げポンプの駆動を阻止する制御を行い、上記第3検出手段で上記給水口を有するタンクの尿素水が上記所定量以下となったことが検出されたとき、上記切換弁を上記開位置に切り換え制御することを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、制御手段による作動手段の制御によって、給水口を有するタンクから給水口を有さないタンクへ、給水口を有するタンクに給水された尿素水を供給することができる。したがって本発明は、尿素水の給水作業は給水口を有するタンクにのみ行えばよく、給水口を有するタンクは1つ設ければ済む。また本発明は、制御手段による切換弁の閉位置への切り換え制御と、汲み上げポンプの駆動制御によって、給水口を有するタンクから給水口を有さないタンクへ尿素水を供給することができる。また、給水口を有するタンクを低い位置に配置できるので、給水口を有するタンクに対する尿素水の給水作業が簡単になる。また、汲み上げポンプの駆動阻止により、給水口を有さないタンクへの過剰な尿素水の給水を防止できる。また、給水口を有するタンクの尿素水が所定量以下となったときには、切換弁を開位置に切り換えることにより、給水口を有さないタンクの尿素水を給水口を有するタンクに補充することができる。これにより、給水口を有するタンク内に尿素水を十分に確保することが可能になり、この給水口を有するタンクの尿素水を尿素水ポンプの駆動によって尿素水噴射装置へ継続的に供給することができる。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、上記給水口を有するタンクの尿素水が、上記所定量よりも低い予め設定される下限量にあることを検出する第4検出手段を備え、上記制御手段は、上記第4検出手段で上記給水口を有するタンクの尿素水が上記下限量であることが検出されたとき、上記汲み上げポンプの駆動を阻止する制御を行うことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、給水口を有するタンクに収容される尿素水の下限量を、汲み上げポンプによって空気が吸い込まれない程度の量に設定することにより、給水口を有さないタンクに供給される尿素水への空気の混入を防ぐことができる。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、上記汲み上げポンプが上記尿素水ポンプから成り、上記供給管路が上記尿素水ポンプの戻り管路を含み、この戻り管路を上記給水口を有さないタンクに接続させたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、通常設けられるエンジンの排気ガス浄化システムに活用される尿素水ポンプ、及び尿素水ポンプの戻り管路を、給水口を有さないタンクへの尿素水の供給に兼用させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、制御手段によって作動手段を制御することにより、給水口を有するタンクから給水口を有さないタンクへ尿素水を供給することができる。すなわち本発明は、給水口を有するタンクは1つ設ければ済む。これにより本発明は、尿素水タンクに対する尿素水の給水作業を1箇所で実施でき、従来技術から考えられるものに比べて給水作業が簡単になる。また、給水のための作業スペースの確保が容易になる。これらのことから本発明は、尿素水タンクを複数のタンクによって構成した場合の給水作業の能率を向上させることができ、また、尿素水の給水作業スペースの確保に制約を受けやすい各種の建設機械にも適用させることができる。上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る建設機械の一実施形態を構成する油圧ショベルを示す側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルにおいて作業装置を省略して示した平面図である。
図3】本実施形態に備えられる尿素水供給系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る建設機械の一実施形態を構成する油圧ショベルを示す側面図、図2図1に示す油圧ショベルにおいて作業装置を省略して示した平面図である。
【0020】
本発明に係る建設機械の一実施形態は、例えば油圧ショベルである。図1,2に示すように、この油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2とを備えている。これらの走行体1と旋回体2は車体を構成している。また、この油圧ショベルは、旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置3を備えている。この作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられるバケット6とを備えている。図2に示す取り付け部13に作業装置3が取り付けられる。
【0021】
旋回体2の前側位置には運転室7が配置され、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウェイト8を配置してある。運転室7とカウンタウェイト8の間には、エンジン、油圧ポンプ等が収納されるエンジン室9を配置してある。
【0022】
図3は本実施形態に備えられる尿素水供給系統を示す図である。
【0023】
図3に示すように、本実施形態に係る油圧ショベルは、旋回体2に搭載され、エンジンの排気ガス中に含まれるNOxを低減するNOx浄化装置20と、このNOx浄化装置20に尿素水を噴射する尿素水噴射装置21と、この尿素水噴射装置21に尿素水を供給する尿素水ポンプ23とを備えている。尿素水ポンプ23は、この尿素水ポンプ23から噴射される尿素水の流れを制御する尿素水バルブ24とともに尿素水ポンプユニット22に含まれている。
【0024】
また本実施形態は、尿素水ポンプ23に吸い込まれる尿素水を蓄える尿素水タンクを備えている。この尿素水タンクは複数のタンク、例えばメインタンク10とサブタンク11とから成っている。これらのメインタンク10とサブタンク11とは連通管25によって連通可能に配置してある。
【0025】
また本実施形態に備えられる複数のタンクは、給水口を有するタンクと給水口を有さないタンクとを含んでいる。例えばメインタンク10は給水口10aを有するタンクを構成し、サブタンク11は給水口を有さないタンクを構成している。メインタンク10の給水口10aには蓋10bを着脱可能に取り付けてある。
【0026】
また本実施形態は、メインタンク10及びサブタンク11の一方を他方よりも高い位置に配置してある。例えば図1に示すように、サブタンク11をメインタンク10よりも高い位置に配置してある。低い位置に配置されるメインタンク10の尿素水を尿素水ポンプ23に吸い込ませるようにしてある。
【0027】
また本実施形態は、メインタンク10に尿素水が給水される状態にあることを検出する第1検出手段を備えている。図3に示すように、この第1検出手段は、例えばメインタンク10の給水口10aの蓋10bが開かれたことを検出するスイッチ12から成っている。
【0028】
また本実施形態は、サブタンク11に尿素水が予め設定される上限量収容されていることを検出する第2検出手段を備えている。この第2検出手段は、例えばレベルセンサ27から成っている。
【0029】
また本実施形態は、メインタンク10の尿素水が予め設定される所定量以下となったことを検出する第3検出手段を備えている。この第3検出手段は、例えばレベルセンサ28から成っている。また本実施形態は、給水口10aを有するメインタンク10の尿素水量が上述した所定量よりも低い予め設定される下限量にあることを検出する第4検出手段を備えている。この第4検出手段も、例えばレベルセンサ28から成っている。
【0030】
また本実施形態は、給水口10aを有するメインタンク10から給水口を有さないサブタンク11への尿素水の供給を可能にする作動手段と、この作動手段を制御する制御手段、すなわちコントローラ30とを備えている。
【0031】
上述した作動手段は、メインタンク10とサブタンク11とを連通する上述の連通管25とは異なる供給管路に設けられ、メインタンク10の尿素水を汲み上げる汲み上げポンプと、連通管25に設けられ、この連通管25を開く開位置26aと閉じる閉位置26bとを有する切換弁26とから成っている。上述した組み上げポンプは、例えば上述した尿素水ポンプ23から成っている。また、上述した供給管路は、尿素水ポンプ23の戻り管路29を含んでいる。この戻り管路29はサブタンク11に接続させてある。
【0032】
コントローラ30に、上述したスイッチ12、レベルセンサ27,28、及び尿素水ポンプユニット22等が接続されている。このコントローラ30は、スイッチ12でメインタンク10の給水口10aの蓋10bが開かれたことが検出され、しかもレベルセンサ27でサブタンク11の尿素水が上限量収容されていないことが検出されたとき、切換弁26を閉位置26bに切り換え制御し、かつ、メインタンク10からサブタンク11へ尿素水を供給するように尿素水ポンプ23を駆動制御する。なお、この尿素水ポンプ23の駆動制御は、上述したスイッチ12に応じた制御に限られない。スイッチ12による検出に代えて、メインタンク10への尿素水の補給によるタンク液面の変化をレベルセンサ28で検出した際、サブタンク11のレベルセンサ27によって尿素水が上限量収容されていないことが検出されたときに、尿素水ポンプ3を駆動するようにしてもよい。
【0033】
また、コントローラ30は、レベルセンサ27でサブタンク11の尿素水が上述した上限量であることが検出されたとき、尿素水ポンプ23の駆動を阻止する制御を行う。ここで阻止する制御とは、駆動状態にある尿素水ポンプ23の停止制御も含む。
【0034】
また、コントローラ30は、レベルセンサ28でメインタンク10の尿素水が上述した所定量以下となったことが検出されたとき、切換弁26を開位置26aに切り換え制御する。
【0035】
また、コントローラ30は、レベルセンサ28でメインタンク10の尿素水が上述した下限量であることが検出されたとき、尿素水ポンプ23の駆動を阻止する制御を行う。
【0036】
また、コントローラ30には、メインポンプ10の尿素水量及びサブタンク11の尿素水量に関する尿素水情報を表示可能なモニタ31を接続してある。このモニタ31は運転室7内に配置してある。上述した尿素水情報には、例えばメインタンク10の上限量となる尿素水量とサブタンク11の上限量となる尿素水量、すなわち満タン時尿素水量に対するレベルセンサ28で検出されるメインタンク10の尿素水量と、レベルセンサ27で検出されるサブタンク11の尿素水量の合計尿素水量の割合などが含まれている。
【0037】
このように構成した本実施形態にあっては、メインタンク10及びサブタンク11への尿素水の供給は、以下のようにして行われる。なお、今例えばメインタンク10もサブタンク11も尿素水が収容されていない空の状態であったとする。
【0038】
起動する前などのように当該油圧ショベルの停止時に、作業者によってメインタンク10の給水口10aの蓋10bが開かれ、給水口10aからメインタンク10に尿素水が給水される。このとき蓋10bが開かれたことによりスイッチ12がオンとなり、コントローラ30の制御により切換弁26は、閉位置26bに切り換えられる。このメインタンク10に供給される尿素水量が下限量よりも多い尿素水量となったことがレベルセンサ28で検出され、サブタンク11の尿素水量が上限量でないことがレベルセンサ27で検出されたとき、コントローラ30の制御により尿素水ポンプ23が駆動し、尿素水バルブ24が、戻り管路29へのメインタンク10の尿素水の供給を可能にするように切り換えられる。これにより、メインタンク10の尿素水が尿素水ポンプ23によって汲み上げられ、戻り管路29を介してサブタンク11に供給される。
【0039】
このような状態から、サブタンク11の尿素水が上限量に至ったことがレベルセンサ27で検出されたとき、コントローラ30の制御により尿素水ポンプ30の駆動が停止する。
【0040】
その後、引き続いて作業者によりメインタンク10の尿素水量が例えば上限量となるまで、このメインタンク10の給水口10aから尿素水が給水される。メインタンク10の尿素水が上限量となったことを目視確認したとき、作業者は尿素水の給水を止め、給水口10aに蓋10bを閉める。これによりスイッチ12はオフとなる。
【0041】
当該油圧ショベルの駆動による作業中は、尿素水ポンプ23によって吸い上げられたメインタンク10の尿素水が尿素水噴射装置21に供給される。また、この尿素水噴射装置21からNOx浄化装置20に尿素水が噴射される。これにより、エンジンの排気ガス中のNOxが低減される。
【0042】
このように尿素水噴射装置21から尿素水が噴射される間などに、メインタンク10の尿素水量が所定量以下に減少したことがレベルセンサ28によって検出されたときには、コントローラ30の制御によって切換弁26が開位置26aに切り換えられる。これにより、サブタンク11の尿素水が連通管25を介してメインタンク10に補充される。メインタンク10の尿素水量が所定量よりも多い予め設定される基準量になったことがレベルセンサ28によって検出されると、コントローラ30の制御によって切換弁26が閉位置26bに切り換えられる。以下、メインタンク10の尿素水量の減少に応じて上述と同様の動作によってサブタンク11の尿素水がメインタンク10に補充される。
【0043】
また、例えばサブタンク11の尿素水量がゼロとなり、メインタンク10の尿素水量が所定量以下となっていることがモニタ31において表示されているようなときには、作業者は当該油圧ショベルの起動前などに、上述と同様にしてサブタンク11及びメインタンク10への尿素水の給水を行う。
【0044】
このように構成した本実施形態によれば、コントローラ30による尿素水ポンプ23の駆動制御及び切換弁26の切り換え制御によって、メインタンク10からサブタンク11へ、メインタンク10に給水された尿素水を供給することができる。したがって本実施形態は、尿素水タンクを構成する複数のタンクのうちの給水口10aを有するタンクとして、メインタンク10を1つ設ければ済む。これにより本実施形態は、尿素水タンクに対する尿素水の給水作業を1箇所で実施でき、給水作業が簡単になる。また、給水のための作業スペースの確保が容易になる。これらのことから本実施形態は、尿素水タンクを複数のタンクによって構成した場合の給水作業の能率を向上させることができる。また、尿素水の給水作業スペースの確保に制約を受けやすい各種の建設機械にも、高さ方向に存在するデッドスペースを活用して適用させることができる。
【0045】
また本実施形態は、給水口10aを有するメインタンク10を低い位置に配置できるので、メインタンク10に対する尿素水の給水作業が簡単になる。また、レベルセンサ27によってサブタンク11の尿素水が上限量であることが検出されたときに行われる尿素水ポンプ23の駆動阻止により、サブタンク11への過剰な尿素水の給水を防止できる。また、レベルセンサ28によってメインタンク10の尿素水が所定量以下であることが検出されたときに行われる切換弁26の開位置26aへの切り換え制御により、サブタンク11の尿素水をメインタンク10に補充することができる。これにより、メインタンク10内に尿素水を十分に確保することが可能になり、このメインタンク10の尿素水を尿素水ポンプ23の駆動によって尿素水噴射装置21へ継続的に供給することができる。
【0046】
また本実施形態は、メインタンク10に収容される尿素水の下限量を、尿素水ポンプ23によって空気が吸い込まれない程度の量に設定することにより、サブタンク11に供給される尿素水への空気の混入を防ぐことができる。
【0047】
また本実施形態は、通常設けられるエンジンの排気ガス浄化装置システムに活用される尿素水ポンプ23、及び尿素水ポンプ23の戻り管路29を、給水口10aを有するメインタンク10から給水口を有さないサブタンク11への尿素水の供給に兼用させることができる。これにより、設備費用を抑えることができる。
【0048】
なお上記実施形態では、給水口を有さないサブタンク11を給水口10aを有するメインタンク10よりも高い位置に配置したが、これとは逆に、給水口10aを有するメインタンク10を給水口を有さないサブタンク11よりも高い位置に配置してもよい。
【0049】
この場合は、メインタンク10からサブタンク11への尿素水の供給を可能にするように作動する作動手段は、メインタンク10とサブタンク11を連通させる連通管25に設けられ、開位置26aと閉位置26bを有する切換弁26によって構成される。
【0050】
また、この場合には、給水口を有さないサブタンク11の尿素水量がレベルセンサ27によって検出される上限量よりも低い予め設定される所定量以下であることを検出する第5検出手段を備えるようにする。この第5検出手段は、例えばレベルセンサ27によって構成される。
【0051】
またこの場合、尿素水ポンプ23は、サブタンク11の尿素水を吸い込むようにし、また、尿素水ポンプ23の戻り管路29はサブタンク11に接続する。
【0052】
コントローラ30は、メインタンク10の給水口10aの蓋10bが開かれて第1検出手段であるスイッチ12がオンになり、しかも第2検出手段であるレベルセンサ27で給水口を有さないサブタンク11の上限量の尿素水が収容されていないことが検出されたとき、切換弁26を開位置26aに切り換え制御する。
【0053】
また、コントローラ30は、レベルセンサ27でサブタンク11の尿素水が上限量であることが検出されたとき、切換弁26を閉位置26bに切り換え制御する。
【0054】
さらに、コントローラ30は、第5検出手段を構成するレベルセンサ27でサブタンク11の尿素水が所定量以下であることが検出されたとき、切換弁26を開位置26aに切り換え制御する。その他の構成については、上述した実施形態と同等である。
【0055】
このように構成した場合のメインタンク10及びサブタンク11への尿素水の供給は以下のようにして行われる。
【0056】
起動前のように当該油圧ショベルが停止状態にあるときに、作業者によって高い位置に配置されたメインタンク10の給水口10aの蓋10bが開かれ、給水口10aからメインタンク10へ尿素水が供給される。このときスイッチ12がオンとなる。また、この状態にあって給水口を有さないサブタンク11の尿素水が上限量にないことがレベルセンサ27で検出されると、コントローラ30の制御により切換弁26は開位置26aに切り換えられる。メインタンク10に注入された尿素水は、連通管25、及び切換弁26の開位置26aを介して下方に位置するサブタンク11に流下する。
【0057】
このような状態から、サブタンク11の尿素水が上限量に至ったことがレベルセンサ27で検出されたとき、コントローラ30の制御により切換弁26は閉位置26bに切り換えられる。
【0058】
その後、引き続き作業者によってメインタンク10の尿素水量が例えば上限量となるまで、このメインタンク10の給水口10aから尿素水が給水される。メインタンク10の尿素水が目視確認によって上限量となったとき、作業者は給水口10aの蓋10bを閉める。これによりスイッチ12はオフとなる。
【0059】
また、尿素水噴射装置21から尿素水が噴射される間などに、サブタンク11の尿素水量が所定量以下に減少したことがレベルセンサ27によって検出されたときには、コントローラ30の制御によって切換弁26が開位置26aに切り換えられる。これにより、メインタンク10の尿素水が連通管25を介してサブタンク11に補充される。サブタンク11の尿素水量が所定量よりも多い予め設定される基準量になったことがレベルセンサ27によって検出されると、コントローラ30の制御によって切換弁26が閉位置26bに切り換えられる。以下、サブタンク11の尿素水量の減少に応じて上述と同様の動作が繰り返される。
【0060】
また、例えばメインタンク10の尿素水量がゼロとなり、サブタンク10の尿素水量が所定量以下となっていることがモニタ31において表示されているようなときには、作業者は当該油圧ショベルの起動前などに、上述と同様にしてメインタンク10及びサブタンク11への尿素水の給水を行うようにする。
【0061】
このように構成した場合も、給水口10aを有するタンクとしてメインタンク10を1つ設ければ済み、上述した実施形態と同等の効果が得られる。
【0062】
また、このように構成した場合には、高い位置に配置した給水口10aを有するメインタンク10から低い位置に配置した給水口を有さないサブタンク11へ、切換弁26の開位置26aを介して尿素水を自然に流下させることができる。これにより、ポンプ駆動を要することなくサブタンク11へ尿素水を供給でき、給水に要するエネルギを節減できる。また、切換弁26を閉位置26bに切り換えることにより、給水口を有さないサブタンク11への過剰な尿素水の供給を防止できる。また、サブタンク11の尿素水が所定量以下となったときには、切換弁26を開位置26aに切り換えることにより、メインタンク10の尿素水をサブタンク11に補充することができる。これにより、給水口を有さないサブタンク11内に尿素水を十分に確保することが可能になり、このサブタンク11の尿素水を尿素水ポンプ23の駆動によって尿素水噴射装置21へ継続的に供給することができる。
【0063】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものには限定されない。
【符号の説明】
【0064】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
9 エンジン室
10 メインタンク(給水口を有するタンク)
10a 給水口
10b 蓋
11 サブタンク(給水口を有さないタンク)
12 スイッチ(第1検出手段)
20 NOx浄化装置
21 尿素水噴射装置
22 尿素水ポンプユニット
23 尿素水ポンプ(汲み上げポンプ)〔作動手段〕
24 尿素水バルブ
25 連通管
26 切換弁〔作動手段〕
26a 開位置
26b 閉位置
27 レベルセンサ(第2検出手段)(第5検出手段)
28 レベルセンサ(第3検出手段)(第4検出手段)
29 戻り管路(供給管路)
30 コントローラ(制御手段)
31 モニタ
図1
図2
図3