(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)が、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
架橋剤(B)が、アミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤である請求項1に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
防錆顔料(C)が、(1)五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、メタバナジン酸アンモニウム及びバナジン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム化合物、(2)珪素含有化合物及び(3)リン酸系金属塩である請求項1に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
リン酸系金属塩(3)が、リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム及び、金属元素がマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、又はカルシウムであるトリポリリン酸金属塩からなる群より選択される少なくとも1種である請求項6に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
樹脂(Db)を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に対して、1質量部添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜7である請求項1に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
化合物(Da)を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に対して、1質量部添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが10〜13である請求項1に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
塗料組成物(II)が、さらに、化合物(Da)以外の防錆顔料、二酸化チタン及び体質顔料からなる群より選択される少なくとも1種の顔料を含有する請求項1に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
表面(外向きに使用される面)の最下層に塗料組成物(I)による塗膜層が形成され、反対側の裏面の最上層に塗料組成物(II)による塗膜層が形成される請求項6に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
表裏両面の最下層に塗料組成物(I)による塗膜層が形成され、裏面(内向きに使用される面)の最上層に塗料組成物(II)による塗膜層が形成される請求項14に記載の塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は、表面に複層塗膜、裏面に1層以上の塗膜が形成されており、表裏面の少なくとも一方の最下層に水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)及び防錆顔料(C)を含有する塗料組成物(I)による塗膜層が形成され、表裏面の少なくとも一方の最上層に水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)ならびに金属珪酸塩及び/もしくは金属イオン交換シリカ(Da)、リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/もしくはリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)ならびに/又はアゾール化合物(Dc)を含有する塗料組成物(II)による塗膜層が形成されてなる塗膜形成亜鉛めっき鋼板である。
【0035】
以下、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板(以下、「本発明のめっき鋼板」ということがある。)について詳細に説明する。
【0036】
塗料組成物(I)
塗料組成物(I)は、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)及び防錆顔料(C)を含有する塗料組成物である。
【0037】
水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)
塗料組成物(I)に用いられる水酸基含有塗膜形成性樹脂としては、塗料分野で通常使用できる塗膜形成能を有する水酸基含有樹脂である限り特に制限なく使用することができ、代表例として、水酸基を含有する、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂等の1種又は2種以上の混合樹脂を挙げることができる。塗膜形成性樹脂としては、なかでも、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の有機樹脂を好適に使用することができる。
【0038】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等が包含される。上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、数平均分子量1500〜35000、好ましくは2000〜25000、ガラス転移温度(Tg)10〜100℃、好ましくは20℃〜80℃、水酸基価2〜100mgKOH/g、好ましくは5〜80mgKOH/gを有するものが好適である。
【0039】
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
【0040】
具体的には、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」を1本、「TSKgel G3000HXL」を2本、及び「TSKgel G2000HXL」を1本(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
また、本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DSC)によるものである。
【0041】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物である。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸等から選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸等の一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸等の3価以上の多塩基酸等が併用される。これらの多塩基酸は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。
【0042】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸等を挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0043】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等が挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30重量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0044】
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂とを反応させて得られる反応生成物;ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物等の、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフト等の反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であることが好適である。
【0045】
アクリル変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基又は水酸基にこれらの基と反応性を有する基、例えばカルボキシル基、水酸基又はエポキシ基を含有するアクリル樹脂とを反応させて得られる反応生成物;ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等を、重合開始剤を使用してグラフト重合してなる反応生成物等を挙げることができる。かかるアクリル変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、アクリル樹脂の量がアクリル変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜50重量%となる量であることが好適である。
【0046】
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、なかでもオイルフリーポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂が、加工性、耐食性等のバランスの点から好適である。
【0047】
前記水酸基含有塗膜形成性樹脂として好適なエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂;これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。変性エポキシ樹脂の製造において、その変性剤による変性時期は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂製造の途中段階に変性してもエポキシ樹脂製造の最終段階に変性してもよい。
【0048】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノール化合物とを、必要に応じて塩基性触媒等の触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じて塩基性触媒等の触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
【0049】
上記ビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン等を挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0050】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン製の、エピコート828、同812、同815、同820、同834、同1001、同1004、同1007、同1009、同1010;旭チバ社製の、アラルダイトAER6099;及び三井化学(株)製の、エポミックR−309等を挙げることができる。
【0051】
また、水酸基含有塗膜形成性樹脂として好適なエポキシ樹脂である前記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂等、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0052】
前記変性エポキシ樹脂としては、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は上記ノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸等を含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂又は上記各種変性エポキシ樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入してなるアミン変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0053】
架橋剤(B)
架橋剤(B)は、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と反応し、硬化塗膜を形成するものであり、加熱等により前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と反応して硬化させることができるものであれば特に制限なく使用することができるが、なかでもアミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物が好適である。これらの架橋剤は、1種で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0054】
上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグラナミン、ステログタナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものもアミノ樹脂として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0055】
上記架橋剤として使用できるフェノール樹脂は、上記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と架橋反応するものであり、フェノール成分とホルムアルデヒド類とを触媒の存在下で加熱して縮合反応させてメチロール基を導入して得られるメチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部又は全てをアルコールでアルキルエーテル化してなるレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。
【0056】
レゾール型フェノール樹脂の製造においては、出発原料である上記フェノール成分として、2官能性フェノール化合物、3官能性フェノール化合物、4官能性以上のフェノール化合物等を使用することができる。
【0057】
上記フェノール化合物として、例えば、2官能性フェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール等を挙げることができ、3官能性フェノール化合物としては、石炭酸、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール等が挙げられ、4官能性フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等を挙げることができる。中でも耐スクラッチ性の向上の観点から3官能性以上のフェノール化合物、特に石炭酸及び/又はm−クレゾールを用いることが好ましい。これらのフェノール化合物は1種で、又は2種以上組合せて使用することができる。
【0058】
フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサン等が挙げられ、1種で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0059】
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。 好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等を挙げることができる。
【0060】
フェノール樹脂は、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)との反応性等の点からベンゼン核1核当りアルコキシメチル基を平均して0.5個以上、好ましくは0.6〜3.0個有するものが適している。
【0061】
上記架橋剤として使用できるブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物におけるブロック化されていないポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートもしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDIの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0062】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化したものである。上記ブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系ブロック化剤;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等ラクタム系ブロック化剤;メタノール、エタノール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系ブロック化剤;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック化剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック化剤等のブロック化剤を好適に使用することができる。上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
【0063】
前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と上記架橋剤(B)との配合割合は、(A)及び(B)成分の合計固形分100質量部に基づいて、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)が55〜95質量部、さらには60〜95質量部であって、架橋剤(B)が5〜45質量部、さらには5〜40質量部の範囲内であることが耐食性、耐沸騰水性、加工性、硬化性等の点から好適である。
【0064】
塗料組成物(I)の硬化性向上のため必要に応じて硬化触媒を配合することができる。架橋剤(B)がアミノ樹脂、特に低分子量の、メチルエーテル化又はメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂を含有する場合には、硬化触媒としてスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等を挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性等の点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
【0065】
架橋剤(B)がフェノール樹脂である場合、硬化触媒として、上記スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。
【0066】
架橋剤(B)がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、ブロック剤の解離を促進する硬化触媒が好適であり、好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒等を挙げることができる。
【0067】
架橋剤(B)が2種以上の架橋剤の組合せである場合には、各架橋剤に有効な硬化触媒を組合せて使用することができる。
【0068】
防錆顔料(C)
防錆顔料(C)としては、防錆性を有する顔料であれば、クロム系顔料、非クロム系顔料のいずれも使用することができるが、人体への健康面、環境保護の観点から非クロム防錆顔料であることが好適である。
【0069】
クロム防錆顔料としては、クロム酸ストロンチウム、クロム酸亜鉛、クロム酸亜鉛カリウム、クロム酸バリウム、無水クロム酸、クロム酸クロム、リン酸クロム等を挙げることができる。
【0070】
非クロム防錆顔料としては、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、メタバナジン酸アンモニウム、バナジン酸リン等のバナジウム化合物;金属珪酸塩、シリカ微粒子等の珪素含有化合物;燐酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、第2リン酸マグネシウム、トリポリ燐酸アルミニウム等のリン酸系金属塩;モリブデン酸亜鉛、酸化マンガンと酸化バナジウムとの焼成物、リン酸カルシウムと酸化バナジウムとの焼成物等を挙げることができる。これらの防錆顔料は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0071】
塗料組成物(I)において、防錆顔料(C)としては、なかでも下記(1)バナジウム化合物、(2)珪素含有化合物及び(3)リン酸系金属塩の組合せを好適に用いることができる。
【0072】
バナジウム化合物(1)
バナジウム化合物(1)は、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、メタバナジン酸アンモニウム及びバナジン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種のバナジウム化合物である。五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、メタバナジン酸アンモニウム及びバナジン酸マグネシウムは5価バナジウムイオンの水への溶出性に優れており、バナジウム化合物(1)から放出される5価バナジウムイオンが、素材金属と反応したり、他の防錆顔料からのイオンと反応することにより耐食性向上に効果的に働く。
【0073】
珪素含有化合物(2)
珪素含有化合物(2)は、金属珪酸塩及びシリカ微粒子からなる群より選択される少なくとも1種である。金属珪酸塩は、二酸化珪素と金属酸化物とからなる塩であり、オルト珪酸塩、ポリ珪酸塩等のいずれであってもよい。珪酸塩としては、例えば、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸亜鉛、珪酸アルミニウム、オルト珪酸アルミニウム、水化珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムベリリウム、珪酸ナトリウム、オルト珪酸カルシウム、メタ珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ジルコニウム、オルト珪酸マグネシウム、メタ珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカルシウム、珪酸マンガン、珪酸バリウム、カンラン石、ザクロ石、トルトバイタイト、イキョク鉱、ベニトアイト、ネプチュナイト、リョクチュウ石、トウキ石、ケイカイ石、バラキ石、トウセン石、ゾノトラ石、タルク、ギョガン石、アルミノ珪酸塩、ホウ珪酸塩、ベリロ珪酸塩、チョウ石、フッ石等を挙げることができる。金属珪酸塩としては、なかでも珪酸カルシウム、オルト珪酸カルシウム、メタ珪酸カルシウムが好適である。
【0074】
シリカ微粒子としては、シリカ微粒子である限り特に制限なく使用でき、例えば、表面が無処理のシリカ微粉末、表面が有機物で処理されたシリカ微粉末、カルシウムイオン交換シリカ微粒子、有機溶剤分散性コロイダルシリカ等を挙げることができる。
【0075】
表面が無処理又は有機物で処理されたシリカ微粒子としては、平均粒子径0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmを有するシリカ微粉末、有機溶剤分散性コロイダルシリカが挙げられる。シリカ微粉末としては、吸油量が30〜350ml/100g、好ましくは30〜150ml/100gの範囲内にあるものを好適に使用することができ、市販品として、サイリシア710、サイリシア740、サイリシア550、アエロジルR972(以上、いずれも富士シリシア化学(株)製)、ミズカシルP−73(水澤化学工業(株)製)、ガシル200DF(クロスフィールド社製)等を挙げることができる。
【0076】
カルシウムイオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によってカルシウムイオンが導入されたシリカ微粒子である。カルシウムイオン交換シリカの市販品としては、SHIELDEX(シールデックス、登録商標)C303、同AC−3、 同AC−5(以上、いずれもW.R.Grace & Co.社製)等を挙げることができる。カルシウムイオン交換シリカから放出されるカルシウムイオンは、電気化学的作用、種々の塩生成作用にかかわり、耐食性の向上に効果的に働く。また、塗膜中に固定化されるシリカは、腐食雰囲気下での塗膜の剥離抑制等に効果的に働く。
【0077】
有機溶剤分散性コロイダルシリカは、オルガノシリカゾルとも呼称され、アルコール類、グリコール類、エーテル類等の有機溶剤中に、粒子径が約5〜120nm程度のシリカ微粒子が安定に分散されたものであって、市販品としては、オスカル(OSCAL)シリーズ(日揮触媒化成(株)製)、オルガノゾル(日産化学(株)製)等を挙げることができる。これらのうち、なかでもカルシウムイオン交換シリカ微粒子が好適である。
【0078】
上記珪素含有化合物(2)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0079】
リン酸系金属塩(3)
リン酸系金属塩(3)は、リン酸金属塩、リン酸水素金属塩及びトリポリリン酸金属塩からなる群より選択される少なくとも1種である。リン酸系金属塩の金属は、特に制限されるものではなく、好適な金属として、Ca、Zn、Al又はMgを挙げることができ、なかでもCaが特に好適である。
【0080】
上記リン酸系金属塩としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムアンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸塩化フッ化カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、第二リン酸マグネシウム、リン酸水素亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素アルミニウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウムアンモニウム;トリポリ燐酸アルミニウム、トリポリリン酸ニ水素アルミニウム等の金属元素がマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、又はカルシウムであるトリポリリン酸金属塩を挙げることができる。これらのうち、リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、金属元素がマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、又はカルシウムであるトリポリリン酸金属塩が耐食性の面から特に好適である。リン酸系金属塩(3)から放出されるリン酸イオン、Ca、Zn、Al又はMg等の金属イオンが耐食性の向上に効果的に働く。
【0081】
塗料組成物(I)において、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、防錆顔料(C)の量が10〜150質量部、好ましくは15〜90質量部であることが耐食性の観点から好ましく、なかでも防錆顔料(C)として、上記バナジウム化合物(1)、珪素含有化合物(2)及びリン酸系金属塩(3)が下記範囲内にあることが耐食性向上の観点から好適である。
【0082】
バナジウム化合物(1):3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、
珪素含有化合物(2) :3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、
リン酸系金属塩(3) :3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部。
【0083】
塗料組成物(I)においては、防錆顔料(C)として、上記(1)、(2)及び(3)を所定量組合せることによって、相乗的に耐食性を向上させることができる。
【0084】
また、防錆顔料(C)として、上記(1)、(2)及び(3)を所定量組合せて使用する場合、上記(1)、(2)及び(3)の各量的範囲内の質量部量の混合物を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に対して、1質量部添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で48時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜10、好ましくは5〜9であることが、上記(1)、(2)及び(3)の水分による溶解性及び防錆顔料の溶解液と金属板との反応性の観点から好適であり、この範囲にあることが耐食性の点からより好適である。
【0085】
塗料組成物(I)には、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)、防錆顔料(C)、及び必要に応じて配合される硬化触媒以外に、塗料分野で使用できる着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機溶剤;沈降防止剤、消泡剤、塗面調整剤等の添加剤等を必要に応じて配合することができる。塗料組成物(I)の形態は、有機溶剤型塗料、水性塗料、粉体塗料のいずれであってもよい。
【0086】
上記着色顔料としては、例えばシアニンブルー、シアニングリーン、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料等の有機赤顔料等の有機着色顔料;チタン白、チタンエロー、ベンガラ、カーボンブラック、各種焼成顔料等の無機着色顔料を挙げることができ、なかでもチタン白を好適に使用することができる。
【0087】
上記体質顔料としては、例えばタルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0088】
上記紫外線吸収剤としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、イソオクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジン)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[ 2−ヒドロキシ−3−ジメチルベンジル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、メチル− 3 −[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート/ポリエチレングリコール300との縮合物等のベンゾトリアゾール化合物;2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2 −ヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)−(オキサリックアミド)、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(4−イソドデシルフェニル)−(オキサリックアミド)等の蓚酸アニリド化合物等を挙げることができる。
【0089】
上記紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン化合物、ヒンダードフェノール化合物;CHIMASORB944、TINUVIN144、TINUVIN292、TINUVIN770、IRGANOX1010、IRGANOX1098(以上、これらの商品名の製品は、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の製品である。)等を挙げることができる。
【0090】
紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を塗料中に配合することによって、上層塗膜を通過して塗料組成物(I)により形成された塗膜表面に到達した光による塗料組成物(I)により形成された塗膜表面の劣化を抑制することができるので、塗料組成物(I)により形成された塗膜と上層塗膜との層間剥離を防止でき、優れた耐食性を維持できる。
【0091】
塗料組成物(I)に配合できる前記有機溶剤は、塗料組成物(I)の塗装性改善等のために必要に応じて配合されるものであり、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油炭化水素等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール系溶剤等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0092】
塗料組成物(I)は、塗料組成物(I)から得られる硬化塗膜のガラス転移温度が40〜115℃、好ましくは50〜105℃であることが塗膜の耐食性、耐酸性及び加工性等の点から好適である。本明細書において、塗膜のガラス転移温度は、DINAMIC VISCOELASTOMETER MODEL VIBRON(ダイナミックビスコエラストメータ モデルバイブロン) DDV−IIEA型(東洋ボールドウィン社製、自動動的粘弾性測定機)を用いて周波数110Hzにおける温度分散測定によるtanδの変化から求めた極大値の温度である。
【0093】
塗料組成物(I)において、防錆顔料(C)が、上記(1)バナジウム化合物、(2)珪素含有化合物及び(3)リン酸系金属塩の組合せである場合、該塗料組成物(I)が亜鉛めっき鋼板上に塗装され、形成された塗膜は優れた耐食性を示す。その理由として本発明者らは、腐食環境下での塩化物イオン等による素材金属の溶解により生成される金属イオンと5価のバナジウムイオン(VO
3−、VO
43−等のバナジン酸イオン)との酸化還元反応を経ない直接的な沈殿性塩の生成、5価バナジウムイオンと素材金属との酸化還元反応により生成する3価バナジウムイオン及び素材金属イオンが、珪酸イオンと効果的に沈殿性の塩又は化合物を生成することで、素材露出面を効果的に被覆すること、更には、同時に溶出するリン酸イオンにより、腐食進行部位及びその周辺が、特に5価バナジウムイオンと素材金属との酸化還元反応が進行するのに好適なpH域に調整されるためであると考えている。特にアルミのような不導体化作用の強い金属の合金含有量の少ないタイプの亜鉛めっき鋼板では、エッジ部、深いカット部等の亜鉛と鉄の異種金属電池形成部において、防錆顔料より溶出する成分がいち早く皮膜形成により不導体化することが望ましく、この点において溶出した雰囲気pHを酸性側に強く安定化する成分としてのリン酸水素金属塩が重要な役割を果たすものと考えられる。また、防錆顔料(C)として、前記(1)、(2)及び(3)を併用することで、前記(1)、(2)及び(3)のそれぞれが有する耐酸性、耐アルカリ性及び耐水性の弱さを効果的に打ち消すことができる。これら防錆顔料に基く作用の相乗効果が大きく働き、優れた耐食性を達成できたものと考えている。
【0094】
塗料組成物(II)
塗料組成物(II)は、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)及び金属珪酸塩及び/もしくは金属イオン交換シリカ(Da);リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/もしくはリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db);ならびに/又はアゾール化合物(Dc)を、特定の割合で含有する塗料組成物である。
【0095】
水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)
塗料組成物(II)に用いられる水酸基含有塗膜形成性樹脂としては、塗料組成物(I)と同様に、塗料分野で通常使用できる塗膜形成能を有する水酸基含有樹脂である限り特に制限なく使用することができ、代表例として、水酸基を含有する、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂等の1種又は2種以上の混合樹脂を挙げることができる。塗膜形成性樹脂としては、なかでも、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の有機樹脂を好適に使用することができる。
【0096】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等が包含される。上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、数平均分子量が2000〜20000、特に3000〜15000、ガラス転移温度(Tg)が0〜70℃、特に10℃〜50℃、水酸基価が5〜80mgKOH/g、特に10〜50mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
【0097】
上記オイルフリーポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂としては、塗料組成物(I)で例示したものを挙げることができる。これらポリエステル樹脂のうち、なかでもオイルフリーポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂が、加工性、耐食性等のバランスの点から好適である。
【0098】
前記水酸基含有塗膜形成性樹脂として好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂;これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。変性エポキシ樹脂の製造において、その変性剤による変性時期は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂製造の途中段階に変性してもエポキシ樹脂製造の最終段階に変性してもよい。
【0099】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂としては、塗料組成物(I)で例示したものを挙げることができる。
【0100】
架橋剤(B)
架橋剤(B)は、塗料組成物(I)と同様、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と反応し、硬化塗膜を形成するものであり、加熱等により前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と反応して硬化させることができるものであれば特に制限なく使用することができるが、なかでもアミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物が好適である。これらの架橋剤は、1種で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0101】
上記アミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物としては、塗料組成物(I)で例示したものを挙げることができる。
【0102】
前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と上記架橋剤(B)との配合割合は、(A)及び(B)成分の合計固形分100質量部に基づいて、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)が50〜95質量部、特に70〜90質量部であって、架橋剤(B)が5〜50質量部、特に10〜30質量部の範囲内であることが耐食性、耐沸騰水性、加工性、硬化性等の点から好適である。
【0103】
塗料組成物(II)の硬化性向上のため必要に応じて硬化触媒を配合することができる。硬化触媒としては、塗料組成物(I)で例示したものを同様に挙げることができる。
【0104】
架橋剤(B)が2種以上の架橋剤の組合せである場合には、各架橋剤に有効な硬化触媒を組合せて使用することができる。
【0105】
化合物(Da)
化合物(Da)は、金属珪酸塩及び金属イオン交換シリカからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0106】
金属珪酸塩
金属珪酸塩は、二酸化珪素と金属酸化物とからなる塩であり、オルト珪酸塩、ポリ珪酸塩等のいずれであってもよい。珪酸塩としては、例えば、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸亜鉛、珪酸アルミニウム、オルト珪酸アルミニウム、水化珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムベリリウム、珪酸ナトリウム、オルト珪酸カルシウム、メタ珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ジルコニウム、オルト珪酸マグネシウム、メタ珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカルシウム、珪酸マンガン、珪酸バリウム、カンラン石、ザクロ石、トルトバイタイト、イキョク鉱、ベニトアイト、ネプチュナイト、リョクチュウ石、トウキ石、ケイカイ石、バラキ石、トウセン石、ゾノトラ石、タルク、ギョガン石、アルミノ珪酸塩、ホウ珪酸塩、ベリロ珪酸塩、チョウ石、フッ石等を挙げることができる。金属珪酸塩としては、カルシウム或いはマグネシウムを含有するものが好適である。これら金属珪酸塩は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0107】
金属イオン交換シリカ
金属イオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によってカルシウムイオン等の金属陽イオンが導入されたシリカ微粒子である。金属イオン交換シリカとしては、カルシウムイオン交換シリカ、マグシウムイオン交換シリカ、コバルトイオン交換シリカ等を挙げることができる。
【0108】
金属イオン交換シリカとしては、平均粒子径0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmを有するシリカ微粉末、吸油量が30〜300ml/100g、好ましくは30〜150ml/100gの範囲内にあるものを好適に使用することができる。
【0109】
金属イオン交換シリカとしては、なかでもカルシウムイオン交換シリカを好適に使用することができる。カルシウムイオン交換シリカの市販品としては、SHIELDEX(シールデックス、登録商標)C303、同AC−3、 同AC−5(以上、いずれもW.R.Grace & Co.社製)等を挙げることができる。
【0110】
金属イオン交換シリカから放出されるカルシウムイオン等の金属陽イオンは、電気化学的作用、種々の塩生成作用にかかわり、耐食性の向上に効果的に働く。また、金属イオン交換シリカから放出される珪酸イオンは、複層塗膜の耐白さび性の向上及び剥離抑制等に効果的に働く。
【0111】
上記金属イオン交換シリカは、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0112】
塗料組成物(II)において、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、化合物(Da)の量が3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部であることが耐白さび性の観点から好ましい。化合物(Da)の量が50質量部を越えると耐白さび性が低下する傾向にあるが、これは化合物(Da)の量が過剰であると、塗膜の耐水性が低下するためであると考えられる。
【0113】
また、化合物(Da)を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に対して、1質量部添加して、25℃で6時間攪拌した後、24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが10〜13であることが化合物(Da)の水分による溶解性及び化合物(Da)の溶解液と金属板との反応性の観点から好適であり、この範囲にあることが耐白さび性の点からより好適である。
【0114】
リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)
リン酸(塩)基含有塗膜形成性樹脂(Db)のうち、リン酸基含有塗膜形成性樹脂は、リン酸基[−OPO(OH)(OR
1)](ここでR
1は水素原子、フェニル基又は炭素数1〜20のアルキル基であり、特に水素原子、2〜10のアルキル基が好ましい。)を含有するものであり、樹脂の種類については、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)に相溶するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0115】
上記リン酸基含有アクリル樹脂は、例えば、リン酸基含有不飽和単量体とその他の重合性不飽和単量体とを共重合することにより得ることが出来る。
【0116】
上記リン酸基含有不飽和単量体としては、(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2−メタクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、10−アクリロイルオキシデシルアシッドホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシルアシッドホスフェート等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2〜20)アシッドホスフェート;オルトリン酸又は酸性リン酸エステル(炭素数1〜20)にグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和単量体を等モル付加したもの;カヤマーPM−2、同PM−21(以上、日本化薬社製、商品名)等が挙げられる。ここで酸性リン酸エステルの例としては、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート及びフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0117】
上記リン酸基含有アクリル樹脂を構成する、リン酸基含有不飽和単量体と共重合するその他の重合性不飽和単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基含有不飽和単量体;アクリル酸、メタクリル酸;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、(n−、i−、t−)ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルエーテル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。本発明において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。
【0118】
また、リン酸基含有アクリル樹脂は、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基をもつ不飽和単量体と上記その他の重合性不飽和単量体との共重合樹脂に、リン酸化合物を付加する方法によっても得ることができる。付加するリン酸化合物としては、オルトリン酸、酸性リン酸エステル等が適しており、酸性リン酸エステルの例としては、前記酸性リン酸エステルとして例示したものを挙げることができる。
【0119】
前記リン酸基含有エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂にリン酸化合物を付加することにより得られる。リン酸化合物を付加するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂等を挙げることができる。付加するリン酸化合物の種類は、前記リン酸基含有アクリル樹脂の説明において、エポキシ基をもつ不飽和単量体とその他の重合性不飽和単量体との共重合樹脂に付加するリン酸化合物として挙げたものを同様に用いることができる。
【0120】
前記リン酸基含有ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂の水酸基にリン酸化合物を反応させることにより得られる。反応するリン酸化合物の種類は、リン酸基含有アクリル樹脂の説明において、リン酸化合物として挙げたものを同様に用いることができる。
【0121】
リン酸基含有塗膜形成性樹脂又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)のうち、リン酸塩基含有塗膜形成性樹脂は、上記リン酸基含有塗膜形成性樹脂中のリン酸基を金属化合物と反応させてリン酸塩とすることにより得ることが出来る。上記リン酸基と反応させる金属化合物としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ランタン等を挙げることができる。
【0122】
リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂は、数平均分子量が、1000〜20000、特に、3000〜15000、ガラス転移温度(Tg)が、0〜100℃、特に、20℃〜60℃、酸価が、20〜120mgKOH/g、特に、30〜100mgKOH/g、水酸基価が、0〜50mgKOH/g、特に、5〜30mgKOH/gを有するものを好適に使用することができる。
【0123】
リン酸基含有塗膜形成性樹脂又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)は、耐白さび性(亜鉛イオンの捕捉)及び得られる塗膜の耐水性等の塗膜性能の観点から、分子量分布において、分子量1000以下の成分の質量分率が、5〜30質量%、特に、5〜20質量%の範囲内であることが樹脂成分の溶出性と塗膜の耐水性との両立の観点から好ましい。
【0124】
リン酸(塩)基含有塗膜形成性樹脂(Db)のリン酸基又はリン酸塩基は、亜鉛イオンの捕捉のみならず、酸性雰囲気中での付着付与性向上及び耐食性の向上にも効果的に働く。
【0125】
塗料組成物(II)において、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)の固形分量が5〜30質量部であり、特に、10〜20質量部であることが塗膜の耐水性と耐白さび性の両立といった観点から好ましい。
【0126】
また、リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に対して、固形分量として、1質量部添加して、25℃で6時間攪拌した後、24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜7、特に、3〜6であることが、リン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)の水分による溶解性及び樹脂(Db)の溶解液と金属板との反応性の観点から好適であり、この範囲にあることが耐白さび性の点からより好適である。
【0127】
アゾール化合物(Dc)
アゾール化合物は窒素原子を1つ以上含む複素5員環を有する化合物である。
【0128】
アゾール化合物としては、例えば、チアゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、チアジアゾール基、テトラゾール基、ベンゾトリアゾール基、イミダゾール基、オキサゾール基、セレナゾール基、イソオキサゾール基、イソチアゾール基、オキサジアゾール基、オキサトリアゾール基、チアトリアゾール基、ベンダゾール基、インダゾール基、ベンズイミダゾール基等を有する化合物を挙げることができる。
【0129】
チアゾール基を有する化合物としては、例えば、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等を挙げることができる。
【0130】
ピラゾール基を有する化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾール等を挙げることができる。
【0131】
トリアゾール基を有する化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール等を挙げることができる。
【0132】
チアジアゾール基を有する化合物としては、例えば、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等を挙げることができる。
【0133】
テトラゾール基を有する化合物としては、例えば、5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール等を挙げることができる。
【0134】
ベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、例えば、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)等を挙げることができる。
【0135】
上記のうち、耐白さび性の観点から、特に、トリアゾール基、チアジアゾール基を有するアゾール化合物を好適に使用することができる。
【0136】
塗料組成物(II)において、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、アゾール化合物(Dc)の量は、2〜30質量部であり、特に、3〜20質量部であることが塗膜の耐水性と耐白さび性の両立といった観点から好ましい。
【0137】
また、上記アゾール化合物(Dc)は2種類以上を組合せて使用することも出来る。
【0138】
また、アゾール化合物(Dc)を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に対して、1質量部添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜8、特に、4〜7であることが、アゾール化合物(Dc)の水分による溶解性及びアゾール化合物(Dc)の溶解液と金属板との反応性の観点から好適であり、この範囲にあることが耐白さび性の点からより好適である。
【0139】
上記成分(Da)〜(Dc)は、一種単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。例えば、成分(Db)と成分(Dc)とを組合わせる、成分(Da)と成分(Dc)とを組合わせる等して用いることができる。
【0140】
塗料組成物(II)には、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)、上記成分(Da)〜(Dc)、及び必要に応じて配合される硬化触媒以外に、塗料分野で使用できる防錆顔料((Da)以外のもの)、着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機溶剤;沈降防止剤、消泡剤、塗面調整剤等の添加剤等を必要に応じて配合することができる。塗料組成物(II)の形態は、有機溶剤型塗料、水性塗料、粉体塗料のいずれであってもよい。
【0141】
上記着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤及び紫外線安定剤としては、塗料組成物(I)で例示したものを同様に挙げることができる。
【0142】
紫外線吸収剤及び/又は紫外線安定剤を塗料中に配合することによって、塗料組成物(II)により形成された塗膜表面に到達した光による塗料組成物(II)により形成された塗膜の劣化を抑制することができ、塗料組成物(II)により形成された塗膜と下層塗膜との層間剥離を防止でき、優れた耐食性を維持できる。
【0143】
塗料組成物(II)に配合できる前記有機溶剤は、塗料組成物(II)の塗装性改善等のために必要に応じて配合されるものであり、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)、ならびに成分(Da)(Db)及び/又は(Dc)を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、塗料組成物(I)で例示したものを同様に挙げることができ、それらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0144】
塗料組成物(II)は、塗料組成物(II)から得られる硬化塗膜のガラス転移温度が10〜80℃、特に20〜50℃であることが塗膜の耐食性、耐酸性及び加工性等の点から好適である。
【0145】
複層塗膜が形成されてなる塗膜形成亜鉛めっき鋼板において、最上層に塗料組成物(II)による塗膜層が形成されてなる塗膜形成亜鉛めっき鋼板は優れた耐白さび性を示す。その理由として本発明者らは、以下のように考えている。
【0146】
亜鉛めっき鋼板における白さびは、特に、加工部及び端面部において発生しやすく、亜鉛酸化物の生成によるものである。
【0147】
白さびの発生を防ぐには、亜鉛めっき中の亜鉛イオンが亜鉛酸化物となるのを抑制すればよい。成分(Da)を用いる場合、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は、珪酸イオンの発生源である金属珪酸塩及び金属イオン交換シリカからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する塗料組成物(II)により形成された塗膜層が表裏面の少なくとも一方の最上層に形成されていることから、珪酸イオンを複層塗膜からより効果的に発生させることができる。該珪酸イオンと亜鉛イオンとを反応させて珪酸亜鉛(ZnSiO
3、Zn
2SiO
4等)を生じさせることにより、亜鉛酸化物の生成を抑制することができることから、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は耐白さび性に非常に優れていると考えられる。
【0148】
成分(Db)を用いる場合、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は、リン酸イオンの発生源であるリン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/又はリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂を含有する塗料組成物(II)により形成された塗膜層が表裏面の少なくとも一方の最上層に形成されていることから、リン酸(塩)基をもつ樹脂成分を複層塗膜からより効果的に発生させることができる。該リン酸(塩)基含有樹脂成分と亜鉛イオンとを反応させて、リン酸亜鉛基を有する樹脂成分を生じさせることにより、亜鉛酸化物の生成を抑制することができることから、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は耐白さび性に非常に優れていると考えられる。
【0149】
成分(Dc)を用いる場合、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は、アゾール化合物を含有する塗料組成物(II)により形成された塗膜層が表裏面の少なくとも一方の最上層に形成されていることから、アゾール化合物を複層塗膜からより効果的に発生させることができる。該アゾール化合物と亜鉛イオンとを反応させて、キレート化合物を生じさせることにより、亜鉛酸化物の生成を抑制することができることから、本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は耐白さび性に非常に優れていると考えられる。
【0150】
本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板及び塗膜形成方法
本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は、亜鉛めっき鋼板の表面に複層塗膜、裏面に1層以上の塗膜が形成されてなる塗膜形成亜鉛めっき鋼板であり、
表裏面の少なくとも一方の最下層に上記塗料組成物(I)による塗膜層を形成させ、表裏面の少なくとも一方の最上層に上記塗料組成物(II)による塗膜層を形成させることにより得ることができる。
【0151】
例えば、亜鉛めっき鋼板の表裏面の少なくとも一方の最下層に上記塗料組成物(I)を塗装する工程、
塗料組成物(I)の塗装により得られた塗膜を硬化させる工程、
表裏面の少なくとも一方の最上層に上記塗料組成物(II)を塗装する工程、及び
塗料組成物(II)の塗装により得られた塗膜を硬化させる工程、
を含む方法により、亜鉛めっき鋼板の表面に複層塗膜を形成し、裏面に1層又は複層塗膜を形成することができる。
【0152】
亜鉛めっき鋼板は、めっき層中の亜鉛含有量が10質量%以上である亜鉛めっき鋼板であり、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金中アルミニウムを約5%含有するアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(例えば、「ガルファン」(登録商標))、亜鉛めっき鋼製成型部品等の亜鉛めっき鋼材;鉄−亜鉛合金めっき鋼板(ガルバニル鋼板)、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(合金中アルミニウムを約55%含有する「ガルバリウム鋼板」、合金中アルミニウムを約5%含有する「ガルファン」等)、亜鉛合金めっき鋼製成型部品等の亜鉛合金めっき鋼材;が挙げられ、これらの表面には、化成処理がなされていてもよい。化成処理としては、例えば、リン酸亜鉛処理、リン酸鉄処理等のリン酸塩処理、ジルコニウム塩等からなる複合酸化膜処理、リン酸クロム処理、クロメート処理等を挙げることができる。
【0153】
本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板は、まず、上記亜鉛めっき鋼板の表裏面の少なくとも一方に、上記塗料組成物(I)を塗装して最下層の塗膜層を形成させる。表裏両面に上記塗料組成物(I)を塗装することもできる。一方にのみ塗料組成物(I)を塗装する場合、塗料組成物(I)は、表面(外向きに使用される面)に塗装するのが塗装鋼板の屋外耐久性等の観点から好ましい。
【0154】
一方にのみ塗料組成物(I)を塗装する場合、もう一方には、任意の(下塗)塗料を塗装することができる。塗料組成物(I)以外の(下塗)塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂系塗料組成物、アルキド樹脂系塗料組成物、アクリル樹脂系塗料組成物等の(下塗)塗料を挙げることができる。
【0155】
最下層の塗膜層形成後、最下層の塗膜層上に、最上層の塗膜層の他、必要に応じて1層以上の塗膜層を形成させることができる。この任意の塗膜層を形成させる塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂系塗料組成物、アルキド樹脂系塗料組成物、アクリル樹脂系塗料組成物等の任意の塗料を挙げることができる。
【0156】
最下層の塗膜層を形成させた(又は、さらに最下層の塗膜層上に、1層以上の塗膜層を形成させた)後、該塗膜層上に最上層の塗膜層を形成させる。裏面においては、最上層の塗膜層が1層のみとなる場合もある。
【0157】
塗料組成物(II)が、成分(Da)又は成分(Db)を含有する場合、亜鉛めっき鋼板の表裏両面に複層塗膜が形成されてなる塗膜形成亜鉛めっき鋼板が好ましい。従って、当該好ましい実施形態においては、表裏両面に最下層の塗膜層を形成させた(又は、さらに最下層の塗膜層上に、1層以上の塗膜層を形成させた)後、該両面の塗膜層上に最上層の塗膜層を形成させる。
【0158】
表裏面の少なくとも一方は、上記塗料組成物(II)により、最上層の塗膜層を形成させる。表裏両面を上記塗料組成物(II)により、最上層の塗膜層を形成させることもできる。一方にのみ、塗料組成物(II)により最上層の塗膜層を形成させる場合、塗料組成物(II)により形成される塗膜層は、裏面(内向きに使用される面)に形成されるのが塗装鋼板表面の耐候性の観点から好ましい。
【0159】
一方にのみ塗料組成物(II)を塗装する場合、もう一方には、任意の上塗塗料により塗膜層を形成させることができる。
【0160】
該上塗塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂系塗料組成物、アルキド樹脂系塗料組成物、アクリル樹脂系塗料組成物、シリコン変性ポリエステル樹脂系塗料組成物、シリコン変性アクリル樹脂系塗料組成物、フッ素樹脂系等の上塗塗料を挙げることができる。プレコート鋼板用途等加工性が特に重視される場合には高度加工用のポリエステル系上塗塗料を使用することによって加工性の特に優れた塗膜形成亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【0161】
上記各塗膜層の形成は、塗料組成物(I)及び塗料組成物(II)をはじめとする各塗料をロールコート法、カーテンフローコート法、スプレー法、刷毛塗り法、浸漬法等の公知の方法により塗装し、硬化させることによって行なうことができる。
【0162】
上記各塗膜層の形成において、片面のみ塗装し硬化させた後、もう一方の面に塗装し硬化させる方法、及び表裏両面に塗装した後、表裏両面を同時に硬化させる方法のいずれの方法で塗膜層を形成させてもよい。
【0163】
上記各塗膜層の硬化膜厚は、特に制限されるものではないが、塗料組成物(II)による塗膜層の硬化膜厚は、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜10μmの範囲であり、任意の下塗塗料による塗膜層の硬化膜厚は、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜7μmの範囲であり、任意の上塗塗料による塗膜層の硬化膜厚は、好ましくは8〜30μm、さらに好ましくは10〜25μmの範囲である。
【0164】
塗料組成物(I)による塗膜層の硬化膜厚は、塗料組成物(II)の原料として金属珪酸塩及び/もしくは金属イオン交換シリカ(Da)を用いる場合、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜7μmの範囲である。塗料組成物(II)の原料としてリン酸基含有塗膜形成性樹脂及び/もしくはリン酸塩基含有塗膜形成性樹脂(Db)又はアゾール化合物(Dc)を用いる場合、塗料組成物(I)による塗膜層の硬化膜厚は、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜7μmの範囲である。
【0165】
塗膜の硬化は、上記各塗料に使用されている樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよく、コイルコーティング法等によって塗装したものを連続的に焼付ける場合には、通常、素材到達最高温度が160〜250℃、好ましくは180〜230℃となる条件で15〜60秒間焼付けられる。バッチ式で焼付ける場合には、通常、80〜200℃で10〜30分間焼付けることによって行なうことができる。
【0166】
上記塗膜の硬化において、塗料に使用されている樹脂の種類等により、塗膜形成過程における架橋反応に特に加熱を必要としない場合には、常法に従い、常温乾燥にて硬化させることができる。
【0167】
本発明の塗膜形成亜鉛めっき鋼板において、好ましい塗膜構成の塗膜形成亜鉛めっき鋼板として、以下の2つを挙げることができる。
【0168】
1.表面(外向きに使用される面)の最下層に塗料組成物(I)による塗膜層が形成され、反対側の裏面の最上層に塗料組成物(II)による塗膜層が形成される塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
【0169】
上記1において、裏面(内向きに使用される面)の最下層には、任意の下塗塗料による塗膜層が形成される。必要に応じて、さらに、表裏両面の少なくとも一方に任意の塗料により、1層以上の塗膜層を形成させてもよい。
【0170】
両面に最下層の塗膜層を形成させた(さらに、表裏両面の少なくとも一方に任意の塗料により、1層以上の塗膜層を形成させた)後、裏面の最上層に塗料組成物(II)による塗膜層を形成させ、表面の最上層には、塗料組成物(II)を含む任意の上塗塗料による塗膜層を形成させる。
【0171】
上記1において、裏面は塗料組成物(II)による塗膜層のみであってもよい。
【0172】
2.表裏両面の最下層に塗料組成物(I)による塗膜層が形成され、裏面(内向きに使用される面)の最上層に塗料組成物(II)による塗膜層が形成される塗膜形成亜鉛めっき鋼板。
【0173】
上記2において、最下層の塗膜形成後、必要に応じて、さらに、表裏両面の少なくとも一方に任意の塗料により、1層以上の塗膜層を形成させてもよい。
【0174】
両面に最下層の塗膜層を形成させた(さらに、表裏両面の少なくとも一方に任意の塗料により、1層以上の塗膜層を形成させた)後、裏面の最上層に塗料組成物(II)による塗膜層を形成させ、表面の最上層には、塗料組成物(II)を含む任意の上塗塗料による塗膜層を形成させる。
【0175】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【実施例】
【0176】
ポリエステル樹脂の製造1
製造例a1 ポリエステル樹脂Aa1溶液の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器等の備わった反応槽に、下記の原料混合物を入れ、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させ、生成した水を精留塔を通して留去した。230℃で1時間保持後、キシレンを添加し、230℃でキシレンを還流させながら脱水し、エステル化反応を行った。
エチレングリコール 0.9モル
ネオペンチルグリコール 0.1モル
イソフタル酸 0.95モル
【0177】
酸価がほぼ0になった時点で140℃まで冷却し2時間保持し、冷却後、スワゾール1500(丸善石油化学(株)製、高沸点芳香族石油系溶剤)を加えて固形分35%のポリエステル樹脂Aa1溶液を得た。得られた樹脂は、数平均分子量3800、ガラス転移温度45℃、水酸基価30mgKOH/g、酸価約0mgKOH/gを有していた。
【0178】
フェノール樹脂の製造1
製造例a2 レゾール型フェノール樹脂Ba1溶液の製造
反応容器に、ビスフェノールA100部、37%ホルムアルデヒド水溶液178部及び水酸化ナトリウム1部を配合し、60℃で3時間反応させた後、減圧下、50℃で1時間脱水した。ついでn−ブタノール100部とリン酸3部を加え、110〜120℃で2時間反応を行った。反応終了後、得られた溶液を濾過して生成したリン酸ナトリウムを濾別し、固形分50%のレゾール型フェノール樹脂Ba1溶液を得た。得られた樹脂は、数平均分子量880で、ベンゼン核1核当たり平均メチロール基数が0.4個及び平均アルコキシメチル基数が1.0個であった。
【0179】
塗料組成物(I)の製造1
製造例a3
エピコート#1009(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂)90部を混合溶剤1[シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル/ソルベッソ150(エッソ石油社製、高沸点芳香族炭化水素系溶剤)=3/1/1(質量比)]135部に溶解したエポキシ樹脂溶液225部に、五酸化バナジウム20部、リン酸カルシウム20部、珪酸カルシウム20部、二酸化チタン20部、バリタ20部及び混合溶剤2[ソルベッソ150(エッソ石油社製、高沸点芳香族炭化水素系溶剤)/シクロヘキサノン=1/1(質量比)]の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20μm以下となるまで顔料分散を行った。次いで、この分散物にデスモジュールBL−3175(住化バイエルウレタン社製、メチルエチルケトオキシムでブロック化したHDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物溶液、固形分約75%)13.3部(固形分量で10部)及びタケネートTK−1(武田薬品社製、有機錫系ブロック剤解離触媒、固形分約10%)1部(固形分量で0.1部)を加えて均一に混合し、さらに上記混合溶剤2を加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整することにより塗料組成物(I−1a)を得た。
【0180】
製造例a4〜a10
製造例a3において、水酸基含有樹脂、架橋剤、防錆顔料、その他顔料及び触媒を下記表1に示すとおりとする以外は、製造例a3と同様に行い、各塗料組成物(I−2a)〜(I−8a)を得た。表1における各成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。
【0181】
表1及び表2において、表中の(注)は、それぞれ下記の意味を有する。
【0182】
(注1)サイメル303:日本サイテックインダストリイズ(株)社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂;
(注2)K−White G105:テイカ社製、商品名、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物;
(注3)シールデックスC303:W.R.Grace&Co.社製、商品名、カルシウムイオン交換シリカ;
(注4)Coイオン交換シリカ:コバルトイオン交換シリカ、濃度5質量%の塩化コバルト水溶液10000質量部中で10質量部のサイリシア710(富士シリシア化学(株)製、商品名、シリカ微粒子、吸油量約105ml/100g)を5時間攪拌混合した後、ろ過して固形分を取り出し、固形分をよく水洗し乾燥してCoイオン交換シリカを得た;
(注5)Nacure5225:キングインダストリーズ社製、商品名、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物;
(注6)Mgイオン交換シリカ:マグネシウムイオン交換シリカ、濃度5質量%のフッ化マグネシウム水溶液10000質量部中で10質量部のサイリシア710(富士シリシア化学(株)製、商品名、シリカ微粒子、吸油量約105ml/100g)を5時間攪拌混合した後、ろ過して固形分を取り出し、固形分をよく水洗し乾燥してMgイオン交換シリカを得た。
【0183】
なお、塗料組成物(I−8a)は、従来のクロム系の防錆顔料を含有する塗料組成物であり、参考例用である。
【0184】
【表1】
【0185】
塗料組成物(II)の製造1
製造例a11
製造例a1で製造したポリエステル樹脂Aa1溶液214.3部(樹脂固形分75部)に、珪酸カルシウム15部、二酸化チタン30部、バリタ40部及び混合溶剤2(製造例a3と同じ)の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20μm以下となるまで顔料分散を行った。
【0186】
次いで、この分散物にサイメル303(注1)25部を加えて均一に混合し、Nacure5225(注6;上記参照)3部(固形分量で1部)及び上記混合溶剤2を加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整することにより塗料組成物(II−1a)を得た。
【0187】
製造例a12〜a20
製造例a11において、水酸基含有樹脂、架橋剤、化合物(Da)、防錆顔料、その他顔料及び触媒を下記表2に示すとおりとする以外は、製造例a11と同様に行い、各塗料組成物(II−2a)〜(II−10a)を得た。表2における各成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。
【0188】
表2に、各塗料組成物(II)の化合物(Da)1部を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpH(化合物(Da)溶解液のpH)も併せて示す。
【0189】
なお、塗料組成物(II−8a)及び(II−9a)は比較例用である。
【0190】
また、塗料組成物(II−10a)は、従来のクロム系の防錆顔料を含有する塗料組成物であり、参考例用である。
【0191】
【表2】
【0192】
塗料組成物(III)の製造1
製造例a21
製造例a1で製造したポリエステル樹脂Aa1溶液214.3部(樹脂固形分75部)に、二酸化チタン30部、バリタ40部及び混合溶剤2(製造例a3と同じ)の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20μm以下となるまで顔料分散を行った。
【0193】
次いで、この分散物にサイメル303(注1)25部を加えて均一に混合し、Nacure5225(注6;上記参照)3部(固形分量で1部)及び上記混合溶剤2を加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整することにより塗料組成物(III−1a)を得た。
【0194】
塗膜形成亜鉛めっき鋼板の製造1
実施例a1
化成処理が施されたガルバリウム鋼板(板厚0.4mm、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板、合金中アルミニウムを約55%含有、合金メッキ目付量150g/m
2)に、製造例a3で得た塗料組成物(I−1a)を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が180℃となるようにして30秒間焼付けて、下層裏面塗膜を形成した。この下層裏面塗膜を形成した塗装板の下層裏面塗膜と反対側の表面の鋼板面に、製造例a3で得た塗料組成物(I−1a)を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼付けて下層表面塗膜を形成した。
【0195】
その後、該下層裏面塗膜上に、製造例a10で得た塗料組成物(II−1a)を乾燥膜厚10μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が200℃となるようにして30秒間焼付けて、上層裏面塗膜を形成した。
【0196】
冷却後、該下層表面塗膜上に、KPカラー1580B40(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル系上塗塗料、青色、硬化塗膜のガラス転移温度約70℃)をバーコーターにて乾燥膜厚が約15μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼付けることにより、塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.1aを得た。
【0197】
実施例a2〜a17、比較例a1〜a2及び参考例a1
実施例a1において、表面と裏面に使用する塗料組成物を後記表3に示すとおりとする以外は実施例a1と同様の操作を行い、各塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.2a〜20aを得た。
【0198】
なお、表3において、表裏面各層において、○印の塗料組成物が塗装されていることを意味する。
【0199】
塗膜性能試験1
上記実施例a1〜a17、比較例a1〜a2及び参考例a1で得られた各塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.1a〜20aを試験板として、下記試験方法1に従って各塗膜性能試験を行った。試験結果を後記表3に示す。
【0200】
試験方法1
試験片の作成
各試験板を、その長辺側のエッジ部のバリが表面側塗膜面に向かって右側において表面側に向き、左側において裏面側に向くように、6cm×12cmの大きさに切断した。切断した各試験板の表面側中央部に、素地に達する狭角30度、線幅0.5mmのクロスカットをカッターナイフの背中を用いて入れることにより各試験片を得た。
【0201】
各試験片につき、複合腐食試験(CCT:JIS K5621)を200サイクル実施し、腐食の具合を下記基準にて評価した;
エッジさび外観:目視にて以下の基準により評価した;
A;白さびの発生が殆ど認められない
B;クロムを含有する参考例と同程度である
C;白さびの発生がやや認められる
D;白さびの発生が著しい、或いはやや認められる程度であるものの赤さびの発生も認められる。
【0202】
エッジふくれ評価:表裏左右のエッジから進行したフクレ幅の平均値から以下により判断した;
A;5mm未満
B;5mm以上10mm未満
C;10mm以上20mm未満
D;20mmを越える。
【0203】
カット部:0.5mmカット幅の素地露出部における白さび発生長さの割合、及びカット部を跨いで両側に広がったフクレ幅より以下の基準により評価した;
A;素地露出部における白さび発生長さ割合50%未満でかつフクレ幅3mm未満
B;素地露出部における白さび発生長さ割合50%以上でかつフクレ幅3mm未満、又は素地露出部における白さび発生長さ割合50%未満でかつフクレ幅3mm以上で5mm未満
C;素地露出部における白さび発生長さ割合50%以上でかつフクレ幅5mm以上で10mm未満
D;素地露出部における白さび発生長さ割合50%以上でかつフクレ幅10mm以上。
【0204】
耐湿試験(50℃、相対湿度98%、500時間)を実施し、腐食の具合を下記基準にて評価した;
エッジさび外観:目視にて以下の基準により評価した;
A;白さびの発生が殆ど認められない
B;クロムを含有する参考例と同程度である
C;白さびの発生がやや認められる
D;白さびの発生が著しい、或いはやや認められる程度であるものの赤さびの発生も認められる。
【0205】
エッジふくれ評価:表裏左右のエッジから進行したフクレ幅の最大値から以下の基準により評価した;
A;2mm未満
B;2mm以上4mm未満
C;4mm以上7mm未満
D;7mmを越える。
【0206】
総合評価:塗膜形成亜鉛めっき鋼板においては、加工部及び端面部の耐白さび性が全て高いことが重要である。従って、以下の基準にて総合評価を行った:
A;上記の複合腐食試験後のエッジ錆外観、エッジふくれ外観、及びカット部の評価、ならびに耐湿試験後のエッジ錆外観及びエッジふくれ外観の評価が全てA又はBであり、かつ少なくとも1つがAである
B;上記5項目が全てBである
C;上記5項目が全てA、B又はCであり、かつ少なくとも1つがCである
D;上記5項目のうち少なくとも1つがDである。
【0207】
【表3】
【0208】
ポリエステル樹脂の製造2
製造例b1 ポリエステル樹脂Ab1溶液の合成
製造例a1で得られたポリエステル樹脂Aa1を、以下の実施例において、ポリエステル樹脂Ab1として用いた。
【0209】
フェノール樹脂の製造2
製造例b2 レゾール型フェノール樹脂Bb1溶液の製造
製造例a2で得られたレゾール型フェノール樹脂Ba1を、以下の実施例において、レゾール型フェノール樹脂Bb1として用いた。
【0210】
リン酸(塩)基含有樹脂の製造1
製造例b3 リン酸基含有アクリル樹脂Db1の製造
反応容器に、ブタノール100部を仕込み、反応容器内温度を110℃に維持しながら、予めモノマー原料等を混合した下記組成の混合物を3時間かけて滴下した;
スチレン 50部
2−エチルヘキシルメタアクリレート 35部
グリシジルメタアクリレート 15部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 3部
その後、更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を添加し、さらに110℃で2時間反応を行った。次いで、反応容器内温度を80℃にし、濃度85%のオルトリン酸12.2部とブタノール10.4部を徐々に添加し、反応容器内の濁りがなくなるまで1時間反応を行い、固形分50%のリン酸基含有アクリル樹脂Db1溶液を得た。得られたリン酸基含有アクリル樹脂Db1は、酸価54mgKOH/g(リン酸基濃度は0.096当量/100g樹脂)、分子量分布において、分子量1000以下の成分の質量分率は20%であった(GPCチャートの面積比より算出した。 以下、同様)。
【0211】
製造例b4 リン酸基含有アクリル樹脂Db2の製造
反応容器に、ブタノール100部を仕込み、反応容器内温度を110℃に維持ながら、予めモノマー原料等を混合した下記組成の混合物を3時間かけて滴下した;
スチレン 40部
2−エチルヘキシルメタアクリレート 30部
グリシジルメタアクリレート 30部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 3部
その後、更に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を添加し、110℃で2時間反応を行った。次いで、反応容器内温度を80℃にし、濃度85%のオルトリン酸25部とブタノール17部を徐々に添加し、反応容器内の濁りがなくなるまで1時間反応を行い、固形分50%のリン酸基含有アクリル樹脂Db2溶液を得た。得られたリン酸基含有アクリル樹脂Db2は、酸価98mgKOH/g(リン酸基濃度は0.17当量/100g樹脂)、分子量分布において、分子量1000以下の成分の質量分率は27%であった。
【0212】
製造例b5 リン酸塩基含有アクリル樹脂Db3の製造
頑丈なガラス容器に、製造例b3で得た固形分50%のリン酸基含有アクリル樹脂Db1溶液の100部(固形分量で50部)と、乳鉢ですりつぶした酸化カルシウム5部とを配合し、ガラスビーズを充填し、スキャンディックスにて樹脂溶液が透明になるまで分散を行った。次いで室温にて48時間放置した。その後、ガラスビーズを除去することにより、固形分53%のリン酸塩(カルシウム塩)基含有アクリル樹脂Db3溶液を得た。
【0213】
塗料組成物(I)の製造2
製造例b6
製造例a3で製造した塗料組成物(I−1a)を、以下の実施例において、塗料組成物(I−1b)として用いた。
【0214】
製造例b7〜b13
製造例b6において、水酸基含有樹脂、架橋剤、防錆顔料、その他顔料及び触媒を下記表4に示すとおりとする以外は、製造例b6と同様に行い、各塗料組成物(I−2b)〜(I−8b)を得た。表4における各成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。
【0215】
表4及び表5において、表中の(注)は、それぞれ前述の表1及び2について記載した通りである。
【0216】
なお、塗料組成物(I−8b)は、従来のクロム系の防錆顔料を含有する塗料組成物であり、参考例用である。
【0217】
【表4】
【0218】
塗料組成物(II)の製造2
製造例b14
製造例b1で製造したポリエステル樹脂Ab1溶液214.3部(樹脂固形分75部)及び製造例b3で製造したリン酸基含有アクリル樹脂Db1溶液20部(樹脂固形分10部)に、二酸化チタン30部、バリタ40部及び混合溶剤2(製造例b6と同じ)の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20μm以下となるまで顔料分散を行った。
【0219】
次いで、この分散物にサイメル303(注1)25部を加えて均一に混合し、さらにNacure5225(注6)3部(固形分量で1部)及び上記混合溶剤2を適当量加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整することにより塗料組成物(II−1b)を得た。
【0220】
製造例b15〜b23
製造例b14において、水酸基含有樹脂、リン酸(塩)基含有樹脂、架橋剤、防錆顔料、その他顔料及び触媒を下記表5に示すとおりとする以外は、製造例b14と同様に行い、各塗料組成物(II−2b)〜(II−10b)を得た。表5における各成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。
【0221】
表5に、各塗料組成物(II)のリン酸(塩)基含有樹脂(Db)1部を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpH(樹脂(Db)溶解液のpH)も併せて示す。
【0222】
なお、塗料組成物(II−8b)及び(II−9b)は比較例用である。
【0223】
また、塗料組成物(II−10b)は、従来のクロム系の防錆顔料を含有する塗料組成物であり、参考例用である。
【0224】
【表5】
【0225】
塗料組成物(III)の製造2
製造例b24
製造例a20で製造した塗料組成物(III−1a)を、以下の実施例において、塗料組成物(III−1b)として用いた。
【0226】
塗膜形成亜鉛めっき鋼板の製造2
実施例b1
塗料組成物(II−1a)の代わりに製造例b14で得た塗料組成物(II−1b)を用いる以外、実施例a1と同様の操作を行い、塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.1bを得た。
【0227】
実施例b2〜b17、比較例b1〜b2及び参考例b1
実施例b1において、表面と裏面に使用する塗料組成物を後記表6に示すとおりとする以外は実施例b1と同様の操作を行い、各塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.2b〜20bを得た。
【0228】
なお、表6において、表裏面各層において、○印の塗料組成物が塗装されていることを意味する。
【0229】
塗膜性能試験2
上記実施例b1〜b17、比較例b1〜b2及び参考例b1で得られた各塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.1b〜20bを試験板として用いる以外、前記試験方法1と同様にして、塗膜性能試験を行った。試験結果を後記表6に示す。
【0230】
【表6】
【0231】
ポリエステル樹脂の製造3
製造例c1 ポリエステル樹脂Ac1溶液の合成
製造例a1で得られたポリエステル樹脂Aa1を、以下の実施例において、ポリエステル樹脂Ac1として用いた。
【0232】
フェノール樹脂の製造3
製造例c2 レゾール型フェノール樹脂Bc1溶液の製造
製造例a2で得られたレゾール型フェノール樹脂Ba1を、以下の実施例において、レゾール型フェノール樹脂Bc1として用いた。
【0233】
リン酸基含有樹脂の製造2
製造例c3 リン酸基含有アクリル樹脂Db1の製造
リン酸基含有アクリル樹脂として、製造例b3で製造したリン酸基含有アクリル樹脂Db1を用いた。
【0234】
塗料組成物(I)の製造3
製造例c4
製造例a3で製造した塗料組成物(I−1a)を、以下の実施例において、塗料組成物(I−1c)として用いた。
【0235】
製造例c5〜c11
製造例c4において、水酸基含有樹脂、架橋剤、防錆顔料、その他顔料及び触媒を下記表7に示すとおりとする以外は、製造例c4と同様に行い、各塗料組成物(I−2c)〜(I−8c)を得た。表7における各成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。
【0236】
表7及び表8において、表中の(注)は、それぞれ前述の表1及び2について記載した通りである。
【0237】
なお、塗料組成物(I−8c)は、従来のクロム系の防錆顔料を含有する塗料組成物であり、参考例用である。
【0238】
【表7】
【0239】
塗料組成物(II)の製造3
製造例c12
製造例c1で製造したポリエステル樹脂Ac1溶液214.3部(樹脂固形分75部)に、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール10部、二酸化チタン30部、バリタ40部及び混合溶剤2(製造例c4と同じ)の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20μm以下となるまで顔料分散を行った。
【0240】
次いで、この分散物にサイメル303(注1)25部を加えて均一に混合し、さらにNacure5225(注6)3部(固形分量で1部)及び上記混合溶剤2を適当量加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整することにより塗料組成物(II−1c)を得た。
【0241】
製造例c13〜c23
製造例c12において、水酸基含有樹脂、アゾール化合物、架橋剤、防錆顔料、その他顔料及び触媒(さらに、必要に応じてリン酸基含有樹脂を配合)を下記表8に示すとおりとする以外は、製造例c12と同様に行い、各塗料組成物(II−2c)〜(II−12c)を得た。表8における各成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。
【0242】
表8に、各塗料組成物(II)のアゾール化合物(Dc)1部を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液100質量部に添加して、25℃で6時間攪拌した後、25℃で24時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpH(アゾール化合物(Dc)溶解液のpH)も併せて示す。
【0243】
なお、塗料組成物(II−10c)及び(II−11c)は比較例用である。
【0244】
また、塗料組成物(II−12c)は、従来のクロム系の防錆顔料を含有する塗料組成物であり、参考例用である。
【0245】
【表8】
【0246】
塗料組成物(III)の製造3
製造例c24
製造例a20で製造した塗料組成物(III−1a)を、以下の実施例において、塗料組成物(III−1c)として用いた。
【0247】
塗膜形成亜鉛めっき鋼板の製造3
実施例c1
化成処理が施されたガルバリウム鋼板(板厚0.4mm、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板、合金中アルミニウムを約55%含有、合金メッキ目付量150g/m
2)に、製造例c4で得た塗料組成物(I−1c)を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が180℃となるようにして30秒間焼付けて、下層裏面塗膜を形成した。この下層裏面塗膜を形成した塗装板の下層裏面塗膜と反対側の表面の鋼板面に、製造例c4で得た塗料組成物(I−1c)を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼付けて下層表面塗膜を形成した。
【0248】
その後、該下層裏面塗膜上に、製造例c12で得た塗料組成物(II−1c)を乾燥膜厚10μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が200℃となるようにして30秒間焼付けて、上層裏面塗膜を形成した。
【0249】
冷却後、該下層表面塗膜上に、KPカラー1580B40(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル系上塗塗料、青色、硬化塗膜のガラス転移温度約70℃)をバーコーターにて乾燥膜厚が約15μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼付けることにより、塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.1cを得た。
【0250】
実施例c2〜c20、比較例c1〜c3及び参考例c1
実施例c1において、表面と裏面に使用する塗料組成物を後記表9に示すとおりとする以外は実施例c1と同様の操作を行い、各塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.2c〜24cを得た。
【0251】
なお、表9において、表裏面各層において、○印の塗料組成物が塗装されていることを意味する。
【0252】
塗膜性能試験3
上記実施例c1〜c20、比較例c1〜c3及び参考例c1で得られた各塗膜形成亜鉛めっき鋼板No.1c〜24cを試験板として用いる以外、前記試験方法1と同様にして、塗膜性能試験を行った。試験結果を後記表9に示す。
【0253】
【表9】