(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665852
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】双方向的な縫合糸挿通器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-508620(P2012-508620)
(86)(22)【出願日】2010年4月28日
(65)【公表番号】特表2012-525224(P2012-525224A)
(43)【公表日】2012年10月22日
(86)【国際出願番号】US2010032672
(87)【国際公開番号】WO2010129312
(87)【国際公開日】20101111
【審査請求日】2013年4月25日
(31)【優先権主張番号】61/173,372
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505377463
【氏名又は名称】ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】オフェレス トム
(72)【発明者】
【氏名】フリッグ ロバート
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−500318(JP,A)
【文献】
特表2007−508053(JP,A)
【文献】
特表平09−504966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸挿通器具であって、
第1のカニューレと、第1のカニューレに連通してなる第2のカニューレとを有するハウジングであって、第1及び第2のカニューレの間には組織受入れ隙間が配置され、第2のカニューレは曲線状部分を備えている上記ハウジングと、
本体と、本体から延びる第1の組織貫通端部と、本体から延びる第2の反対側にある組織貫通端部と、を具備するプッシャであって、このプッシャは、ハウジングの第1及び第2のカニューレの内部を並進可能である上記プッシャと、
組織受入れ隙間を横切って、縫合糸のストランドを支持するように構成された杼要素であって、この杼要素は、杼要素が第1及び第2の組織貫通端部の間において本体に沿って摺動可能であるように第1及び第2の組織貫通端部の間にてプッシャの本体に摺動可能に結合されている上記杼要素と、
を有することを特徴とする縫合糸挿通器具。
【請求項2】
プッシャの本体は、可撓性材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項3】
第1及び第2の組織貫通端部は、反対側に接触面を具備し、それぞれ、杼要素によって形成された接触面に接触するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項4】
杼要素は、第1の方向の第1の組織貫通端部によって、組織受入れ隙間を横切って第1の方向へ引っ張られ、杼要素は、第2の組織貫通端部によって、組織受入れ隙間を横切って第2の方向へ引っ張られることを特徴とする請求項3に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項5】
プッシャの本体は、形状記憶材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項6】
形状記憶材料は、ニチノールであることを特徴とする請求項5に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項7】
プッシャ本体は、組織受入れ隙間の長さに比べて長い長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項8】
杼要素は、ボアを形成している本体を具備し、プッシャ本体は、ボア内に受け入れられることを特徴とする請求項1に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項9】
杼要素はさらに、縫合糸ホルダを具備していることを特徴とする請求項8に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項10】
縫合糸ホルダは、縫合糸のストランドが通されるように構成されたアイレットであることを特徴とする請求項9に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項11】
縫合糸挿通器具であって、
第1のカニューレと、第1のカニューレに連通してなる第2のカニューレとを有するハウジングであって、第1及び第2のカニューレの間には組織受入れ隙間が配置され、第2のカニューレは曲線状部分を有している上記ハウジングと、
本体と、本体から延びる第1の組織貫通端部と、第1の組織貫通端部と反対側に本体から延びる第2の組織貫通端部と、を具備したプッシャであって、第1の組織貫通端部は本体の断面寸法よりも大きい断面寸法を有している肩部を形成し、プッシャは、ハウジングの第1及び第2のカニューレの内部を並進可能である上記プッシャと、
縫合糸のストランドを支持するように構成された杼要素と、を備え、
肩部は、プッシャが第1及び第2のカニューレの内部を並進するとき、杼要素を押して組織受入れ隙間を横切らせるように、杼要素に当接するように構成されている、ことを特徴とする縫合糸挿通器具。
【請求項12】
杼要素は、第1及び第2の組織貫通端部の間にてプッシャの本体に摺動可能に結合されていることを特徴とする請求項11に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項13】
プッシャの本体は、可撓性材料から作られていることを特徴とする請求項11に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項14】
プッシャはさらに、本体から延在してなる第2の反対側の組織貫通端部を具備していることを特徴とする請求項11に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項15】
第1及び第2の組織貫通端部は、反対側に接触面を具備し、それぞれ、杼要素によって形成された接触面に接触するように構成されていることを特徴とする請求項14に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項16】
杼要素は、第1の方向の第1の組織貫通端部によって、組織受入れ隙間を横切って第1の方向へ押され、杼要素は、第2の組織貫通端部によって、組織受入れ隙間を横切って第2の方向へ押されることを特徴とする請求項14に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項17】
プッシャの本体は、形状記憶材料から作られていることを特徴とする請求項11に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項18】
形状記憶材料は、ニチノールであることを特徴とする請求項17に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項19】
プッシャ本体は、組織受入れ隙間の長さに比べて長い長さを有していることを特徴とする請求項11に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項20】
杼要素は、ボアを形成している本体を具備し、プッシャ本体は、ボア内に受け入れられることを特徴とする請求項11に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項21】
杼要素はさらに、縫合糸ホルダを具備していることを特徴とする請求項20に記載の縫合糸挿通器具。
【請求項22】
縫合糸ホルダは、縫合糸のストランドが通されるように構成されているアイレットであることを特徴とする請求項21に記載の縫合糸挿通器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
本願は、2009年4月28日に出願された、米国仮特許出願第61/173,372号を基礎とする優先権を主張し、同出願の内容をここで参照によって完全に引用する。
本発明は、双方向的な縫合糸挿通器具に関する。
【背景技術】
【0002】
腰部椎間板切除術、すなわち、神経の減圧を達成するために、ヘルニアの髄核を外科的に除去することで、神経根障害を治療する処置は、一般的な脊柱手術である。従来の椎間板切除術の技術は、椎間板のヘルニアに起因する異常か、又は外科医の手術かのいずれかによって環帯に形成された、孔や裂傷など、環帯の欠陥を適切に修復することがなく、外科医にジレンマを与えていた。外科医は、神経を圧迫しているヘルニア化した髄核におけるヘルニア化部分だけを除去して、神経根障害を治療することを決めるけれども、椎間板の内部に残された髄核の術後の再ヘルニア化のリスクは高くなる。代わりに、外科医は、術後の再ヘルニア化のリスクを最小限にするために、ヘルニア化部分に加えて、ほとんどの残りの髄核物質を除去する、広範囲な減量を実行することを決めることもあるけれども、術後には椎間板の高さが潰れて、下背の疼痛をもたらすリスクが、代表的に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の開示の1つの観点によれば、従来の椎間板切除術の処置と、それに関連する術後の潜在的な合併症とによる、技術的な難題は、環帯修繕システムによって解消される。例えば、環帯修繕システムは、環帯の欠陥を閉じて乃至は修繕することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
軟質組織の欠陥を接合して修繕するように構成されてなる、縫合糸挿通器具が開示される。1つの実施形態においては、縫合糸挿通器具は、ハウジングを具備し、これは、第1のカニューレと、第1のカニューレから組織を受け入れる隙間だけ間隔を隔てている第2のカニューレとを有している。また、器具は、第1及び第2のカニューレの間の組織受入れ隙間を横切って移動できる杼要素を具備している。杼要素は、縫合糸のストランドを支持するように構成されている。第1のカニューレ内に配置された第1のプッシャは、杼要素を第1のカニューレから第2のカニューレへ向けて押すように構成され、第2のカニューレ内に配置された第2のプッシャは、杼要素を第2のカニューレから第1のカニューレへ向けて押すように構成される。
【0005】
他の実施形態においては、縫合糸挿通器具は、第2のカニューレに連通している第1のカニューレを有しているハウジングと、第1及び第2のカニューレの間に配置された組織受入れ隙間とを具備している。また、器具は、針を具備し、これは、縫合糸のストランドを、第1のカニューレから第2のカニューレへ向けた第1の方向へ、及び第2のカニューレから第1のカニューレへ向けて戻る第2の方向へ、運ぶように構成されている。針は、第1及び第2の組織貫通端部を形成し、針が第1の方向へ動くとき、第1の組織貫通端部が組織に貫通し、針が第2の方向へ動くとき、第2の組織貫通端部が組織に貫通する。
【0006】
他の実施形態においては、縫合糸挿通器具は、曲線状部分をもった第2のカニューレに連通している第1のカニューレを有しているハウジングと、第1及び第2のカニューレの間に配置された組織受入れ隙間とを具備している。器具はまた、第1のカニューレと第2のカニューレとの間において、縫合糸のストランドを運ぶように構成された、可撓性の杼要素を具備している。また、杼要素は、屈曲して、第2のカニューレにおける曲線状部分に従うように構成されている。
【0007】
異なる実施形態の縫合糸挿通器具を操作する方法も開示される。例えば、1つの実施形態においては、針は、第1のカニューレから第2のカニューレへ向けた第1の方向に押される。針が第1の方向へ押されると、針の第1の端部は、組織片を貫通する。次に、針は、第2のカニューレから第1のカニューレへ向けた第2の方向へ引っ張られる。針が第2の方向へ押されると、針の第2の端部は、組織片を貫通する。
【0008】
上述した要旨並びに以下の本願の好ましい実施形態についての詳細な説明は、添付図面と関連させて読むことで、より良く理解されるだろう。本願による双方向的な縫合糸挿通器具を例証する目的のために、図面には関連する実施形態が示されている。しかしながら、本願は、図示された正確な構成及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1つの実施形態に従って構築された、縫合糸挿通器具を、一部を破断して示した斜視図である。
【
図2】
図1の縫合糸挿通器具を示した拡大斜視図であって、縫合糸挿通器具の遠位端の構造を示し、第1及び第2のプッシャは、縫合糸挿通器具のハウジングにおける第1及び第2のカニューレのそれぞれの内部に完全に引っ込んでいる。
【
図3】
図2と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが途中まで遠位側へ前進して、ハウジングの第1のカニューレの内部に位置した状態について、遠位端の構造を示している。
【
図4】
図3と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャがさらに遠位側へ前進して、ハウジングの第1のカニューレの内部に位置した状態について、遠位端の構造を示している。
【
図5】
図4と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが完全に遠位側へ前進して、第1のカニューレの内部に位置し、杼要素が、ハウジングの第2のカニューレにおける曲線状部分の内部に保持された状態について、遠位端の構造を示している。
【
図6】
図5と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが途中まで引っ込んで、第1のカニューレの内部に入り、杼要素が、第2のカニューレの曲線状部分の内部に保持された状態について、遠位端の構造を示している。
【
図7】
図6と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部に入り、杼要素が、第2のカニューレの曲線状部分の内部に保持され、第2のプッシャが途中まで遠位側へ前進して、第2のカニューレの内部に入った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図8】
図7と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部に入り、杼要素が、第2のカニューレの曲線状部分の内部に保持されて、第2のプッシャが途中までさらに遠位側へ前進して、第2のカニューレの内部に入った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図9】
図7と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部へ入り、杼要素が、隙間を横切って戻され、第2のプッシャは途中までさらに第2のカニューレの内部へ遠位側に前進して、第2のカニューレの曲線状部分に入った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図10】
図9と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部へ入り、杼要素が、完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部へ入り、第2のプッシャが完全に前進して、第2のカニューレの内部に入った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図11】
図10と同様な拡大斜視図であるが、第1のプッシャが完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部へ入り、杼要素が、完全に引っ込んで、第1のカニューレの内部へ入り、第2のプッシャが近位側へ引っ込んで、第2のカニューレの内部に入った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図12】
図11と同様な拡大斜視図であるが、両方のプッシャが完全に引っ込んで、第1及び第2のカニューレの内部に入った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図13】
図12と同様な拡大斜視図であるが、第2のカニューレの曲線状部分から延びた拡張部分を有してなる、縫合糸挿通器具を示している。
【
図14】他の実施形態に従って構築された縫合糸挿通器具を示した上部斜視図であって、両端に近位側部分と遠位側部分とを形成しているハウジングと、ハウジングの内部にて杼要素を動かすように構成されたプッシャとを有してなる、縫合糸挿通器具の一部分を破断して示している。
【
図15】
図14の縫合糸挿通器具を示した拡大斜視図であって、プッシャが途中まで遠位側に前進して、縫合糸挿通器具のハウジングの内部に位置している、縫合糸挿通器具の遠位端の元来の構造を示している。
【
図16】
図15と同様な拡大斜視図であるが、プッシャが遠位側へ前進して、ハウジングの内部に入り、プッシャの第2の端部が杼要素に当接した状態について、遠位端の構造を示している。
【
図17】
図16と同様な拡大斜視図であるが、プッシャが、組織受入れ隙間を横切って、杼要素を押している状態について、遠位端の構造を示している。
【
図18】
図17と同様な拡大斜視図であるが、プッシャが完全に前進して、杼要素が、ハウジングによって形成された組織受入れ隙間の遠位端にある状態について、遠位端の構造を示している。
【
図19】
図18と同様な拡大斜視図であるが、プッシャが、その元来の位置へ戻るように途中まで前進した状態について、遠位端の構造を示している。
【
図20】
図19と同様な拡大斜視図であるが、プッシャが前進して、ハウジングの内部へ入り、プッシャの第1の端部が杼要素に当接した状態について、遠位端の構造を示している。
【
図21】
図20と同様な拡大斜視図であるが、プッシャが杼要素を引っ張って、その元来の位置へ向けて、組織受入れ隙間を横切った状態について、遠位端の構造を示している。
【
図22】
図21と同様な拡大斜視図であるが、遠位端の元来の構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ある種の用語は、以下の説明において、便利さのためだけに使用されて、制限的ではない。用語“右”、“左”、“上”、及び“底”は、参照がなされている図面内での方向を指示する。用語“内方”又は“遠位側”及び“外方”又は“近位側”は、双方向的な縫合糸挿通器具及びその関連する部分の幾何学的中心に向かう、及び遠のく方向をそれぞれ参照する。用語“前方”、“後方”、“上位”、“下位”、“側方”、“内側”及び関連語及び/又はフレーズは、参照がなされている人体に対して好ましい配置又は向きを指示し、限定を意味しない。用語は、上に列挙した用語と、それらの派生語、及び類義語を含む。
【0011】
図1を参照すると、双方向的な縫合糸挿通器具10は、長手方向Lに沿って細長く構成されており、縫合糸挿通器具10の近位端Pを、縫合糸挿通器具10における反対側の遠位端Dから隔てている。図示の通り、器具10は、長手方向に細長いハウジング14を具備し、これは、近位側部分18と、これとは反対側にある遠位側部分22とを有している。細長いハウジング14の近位側部分18は、長手方向Lに沿った細長い本体部材26と、本体部材26の近位端を横切って横断方向に延びる横断本体部材30とを具備している。横断本体部材30は、横断本体部材30の下側部分を長手方向に通って延在している第1の長手方向ボア34と、横断本体部材30の上側部分を長手方向に通って延在している第2の長手方向ボア38とを形成している。
【0012】
ハウジング14の遠位側部分22は、本体部材26の遠位端から遠位方向へ延びている本体42を具備している。図示の通り、本体42の下側部分を長手方向に延通してなる第1のカニューレ46と、本体42の上側部分を長手方向に延通してなる第2のカニューレ50とを具備している。第1のカニューレ46の近位端は、横断本体部材30を延通する第1のボア34に機能上整列され(及び、図示の実施形態においては整列され)、第2のカニューレ50の近位端は、横断本体部材30を延通する第2のボア38に機能上整列され(及び、図示の実施形態においては整列され)ている。
図1に示すように、第2のカニューレ50は、曲線状部分54を形成するために、遠位側へ延びる際に屈曲している。曲線状部分54は、U字形の軌道を形成し、これは、本体42のまわりに延在し、曲線状部分54の開端部58は、第1のカニューレ46に向けて延び、これと連通している。すなわち、開端部58は、第1のカニューレ46に対して機能上整列されている。組織受入れ隙間62は、第1のカニューレ46と、曲線状部分54における開端部58との間に配置されている。組織受入れ隙間62は、長手方向の長さTを有し、修繕を必要とする軟質組織のまわりに適用されるべく構成され、椎間板の環状線維輪の亀裂など、組織の欠陥に隣接している。
【0013】
図1に示すように、縫合糸挿通器具10はまた、第1のプッシャ70と第2のプッシャ74とであって、ハウジング14に並進可能に結合されたものを具備している。特に、第1のプッシャ70は、横断本体部材30及び第1のカニューレ46の第1のボア34の内部に結合されて並進可能になっており、第2のプッシャ74は、横断本体部材30及び第2のカニューレ50の第2のボア38の内部に結合されて並進可能になっている。第1のプッシャは、第1のボア34及び第1のカニューレ46の内部を並進するように構成されているので、ボア34とカニューレ46とは、機能上整列されていると言える。同様に、第2のプッシャ74は、第2のボア38及び第2のカニューレ50の内部を並進するように構成されているので、ボア38とカニューレ50とは、機能上整列されていると言える。好ましくは、第2のプッシャ74は、第1のプッシャ70に対して平行に配置される。第1及び第2のプッシャ70,74は、別々の構造として図示したけれども、第1及び第2のプッシャ70及び74は、それらの近位端にて結合されて、それにより、単一の一元的なプッシャを構成しても良いことを理解されたい。そのような実施形態の例は、
図14乃至
図22に関連して説明される。
【0014】
第1及び第2のプッシャ70及び74はそれぞれ、近位端と遠位端とを有してなる、細長い本体を具備している。第1及び第2のプッシャ70,74の近位端は、好ましくは、ハンドル部分又は係合特徴80を具備し、プッシャ70及び74を近位側及び/又は遠位側へ付勢する押圧力を受けることができる。第1及び第2のプッシャ70及び74の遠位端は、第1のプッシャ端部84と、第2のプッシャ端部88とをそれぞれ具備している。好ましくは、第1及び第2のプッシャ70及び74は、それらのそれぞれの端部84及び88に、凹部又は中空部分をそれぞれ形成している。凹部は、円錐形の凹部として図示されるけれども、凹部は、他の形状でも良い。凹部84及び88は、杼要素92の反対側端部を受けるように構成されている。また、それぞれのプッシャ70及び74の本体76は、ハウジング14の近位側から遠位側の部分22に配置された、肩部94を具備している。肩部94は、第1及び第2のプッシャ70及び74の行程を制限するように構成されている。
【0015】
第2のプッシャ74の本体76の少なくとも一部分は、可撓性である。図示の実施形態によれば、本体76は、堅固な部分と、可撓性の部分とを具備している。堅固な部分と可撓性の部分とは、別々の部品を一緒に結合されるか、又は一元的な部品である。
図9乃至
図11に示すように、第2のプッシャ74の遠位端96は、可撓性を備え、ニチノールなど、形状記憶特性を有する弾性的又は超弾性的な材料から形成されており、第2のプッシャ74がハウジング14に対して遠位側へ並進した結果、第2のカニューレ50の曲線状部分54に沿って前進するときに、第2のプッシャ74の遠位側部分96が屈曲するのを許容する。第2のプッシャ74の可撓性の遠位側部分96は、ニチノールから作られることに限られず、充分な弾性特性を有するあらゆるその他の材料、例えば、一般的に、可撓性を有するポリマー材料などから形成できる。第2のプッシャ74の可撓性部分は、チタン、ステンレス鋼、様々な適当なプラスチックなど、堅固な材料から構築しても良い。第2のプッシャ端部88は、可撓性の遠位側部分96の一部分であるけれども、第2のプッシャ端部88は、第2のカニューレ50の曲線状部分54を通って前進できる限り、堅固な材料から構築しても良いことを理解されたい。
【0016】
他方において、第1のプッシャ70の本体76は、ずっと直線状態を維持するように意図されているので、チタン、ステンレス鋼、様々な適当なプラスチックなど、堅固な材料から構築することができる。しかし、第1のプッシャは、杼要素92を押すように構成された、適当な材料から作られることを理解されたい。
【0017】
縫合糸挿通器具10はさらに、杼要素92を具備し、これは、第1のカニューレ46から組織受入れ隙間62を横切って、第2のカニューレ50の曲線状部分54の中へ移動するように構成されている。
図6に最良に示されるように、杼要素92は、2つの先端部をもった可撓性の針を形成している、細長い本体100を具備している。これに関して、本体100は、第1の組織貫通端部104と、これとは反対側にある第2の組織貫通端部108とを具備している。それぞれの端部104及び108は、組織片を貫通して通り抜けるように構成された、尖った先端部を形成している。また、第1及び第2の尖った端部104及び108は、第1及び第2のプッシャ70,74における第1及び第2のプッシャ端部84,88の円錐形の凹部に係合すべく構成されている。従って、第1のプッシャ70が遠位側へ並進すると、第1のプッシャ端部84は、杼要素92の第1の端部104に係合し(又は、直接的又は間接的に力を加え)、それにより、杼要素92を遠位側へ押して、杼要素92の第2の端部108が、組織受入れ隙間62の内部に配置された組織片を貫通するようになっている。同様に、第2のプッシャ74が遠位側へ並進すると、第2のプッシャ端部88は、杼要素92の第2の端部108に係合し、それにより、杼要素92の第1の端部104が、組織受入れ隙間62の内部に配置された組織片を貫通するようになっている。杼要素が、隙間62を横切って移動するとき、組織受入れ隙間62から落下しないことを確実にするため、図示の実施形態における杼要素92は、隙間62の長さTに比べて長い長さSを有している。
【0018】
杼要素92は、杼要素92が第2のカニューレ50の曲線状部分54に従い得るような、可撓性材料から構築される。特に、杼要素92は、ニチノールなど、形状記憶特性を有する弾性又は超弾性の材料から形成でき、それにより、第1のプッシャ70が杼要素92をハウジング14に対して遠位側へ移動させる結果、第2のカニューレ50の曲線状部分54に沿って前進するときに、杼要素92が屈曲するのを許容する。杼要素92は、ニチノールから作られることに限られず、充分な弾性特性を有するあらゆるその他の材料、例えば、一般的に、可撓性を有するポリマー材料などから形成できることを理解されたい。
【0019】
また、杼要素92は、アイレット114などの縫合糸ホルダを具備し、詳しくは後述するように、欠陥を修繕するように構成された縫合糸のストランド118を通すように構成されている。図示の通り、アイレット114は、杼要素92の第1の端部104に隣接させて配置されているけれども、アイレット114は、代わりに、杼要素92に沿ったあらゆる位置に配置できることを理解されたい。
【0020】
動作に際しては、
図2乃至
図12に示すように、縫合糸のストランド118は、アイレット114に通され、杼要素92は、双方向的な縫合糸挿通器具10の中に装填される。すなわち、杼要素92は、縫合糸挿通器具10の中に挿入されて、第1のカニューレ46か、又は第2のカニューレ50かのいずれかに配置される。双方向的な縫合糸挿通器具10は、縫合糸のストランド118をアイレット114に通して、杼要素92を双方向的な縫合糸挿通器具10の中に装填することで事前に組み立てられていても良く、外科医や看護師は、縫合糸のストランド118を双方向的な縫合糸挿通器具10に組み付けることがなくなる。
【0021】
図2に示すように、第1及び第2のプッシャ70,74は、ハウジング14及び第1及び第2のカニューレ46及び50に対して完全に引っ込んで、隙間62が少なくとも部分的に開かれる。次に、修繕が必要とされる組織が、隙間62の中に導入される。例えば、亀裂を有する環状線維輪については、欠陥に隣接した環状線維輪の組織が、縫合糸挿通器具10の組織受入れ隙間62の中へ挿入される。次に、第1のプッシャ70は、付勢力によって、ハウジング14に対して遠位側へ前進し、第1のプッシャ70における第1のプッシャ端部84の凹部が、杼要素92の尖った第1の端部104に係合するようになる。
図3及び
図4に示すように、第1のプッシャ70が遠位側へ前進すると、杼要素92は、縫合糸のストランド118を含み、隙間62とそこに配置された軟質組織とを完全に横断するように押し込まれ、第2のカニューレ50の曲線状部分54の中へ入る。
図4に示すように、杼要素92は、曲線状部分54の中へ前進すると、屈曲して、曲線状部分54に従う。第1のプッシャ70が完全に前進すると、杼要素は、
図5に示すように、第2のカニューレ50の曲線状部分54内に完全に収められる。
【0022】
図6及び
図7に示すように、第1のプッシャ70は、次に、付勢力によって、ハウジング14に対して近位側へ引っ込められ、隙間62が完全に開き、一方、杼要素92と、縫合糸のストランド118とが、第2のカニューレ50の曲線状部分54に残されるようになる。次に、双方向的な縫合糸挿通器具10は、欠陥に対してわずかに回転又は移動させられて、杼要素92と、隙間62を通る縫合糸118との逆向き経路に適合する。次に、
図8乃至
図10に示すように、第2のプッシャ74が、付勢力によって、ハウジング14に対して完全に前進して、第2のプッシャ70における第2のプッシャ端部88の凹部が、杼要素92の尖った第2の端部108に係合し、杼要素92を隙間62を横切って近位側へ戻るように押し進め、第1のカニューレ46の中へ入るようにする。特に、第2のプッシャ端部88と、可撓性の遠位側部分96とは、第2のカニューレ50の曲線状部分54の中へ前進し、それにより、杼要素92を押して、隙間62を、又は少なくとも隙間に配置された軟質組織を横断させて、第1のプッシャ70における第1のプッシャ端部84の近くにある、第1のカニューレ46の中へと戻すように移動させる。杼要素92は、隙間62の内部に受け入れられた組織を横断しさえすれば、隙間を完全に横断する必要がないことを理解されたい。
【0023】
図11及び
図12に示すように、第2のプッシャ74は、次に、付勢力によって、ハウジング14に対して近位側へ引っ込められ、隙間62を完全に開き(但し、軟質組織は隙間内に保持される)、双方向的な縫合糸挿通器具10は、その当初の状態になる(ステップ1、
図2)。次に、双方向的な縫合糸挿通器具10は、軟質組織の欠陥に対して新たな位置へ向けられるが、そのためには、欠陥に対して双方向的な縫合糸挿通器具10を並進又は回転させ、欠陥に近い軟質組織の異なる部分を、隙間62内に位置決めする。この工程は、組織の欠陥が適切に接合されるまで、1回又は複数回繰り返される。
【0024】
図面では、第1及び第2のプッシャ70,74がハウジング14に対して手動で付勢されるように構成されたものを示したけれども、様々な動作機構を容易に利用できることが想定され、それらには、自動的に、液圧的に、空気圧的に、電気的に、磁気的になど、プッシャを付勢することが含まれる。さらに、双方向的な縫合糸挿通器具10は、第1及び第2のプッシャ70,74を動作させるためのトリガー機構を有するように構成することもできる。
【0025】
図13に示すように、第2のカニューレは、曲線状部分54から近位側へ延在してなる、拡張部分130を具備している。図示の通り、拡張部分130は、第1のカニューレ46に対して直列に、実質的に直線状になっている。拡張部分130を有する実施形態においては、杼要素92は、杼要素92が第1のカニューレ46から第2のカニューレ50へと移動するとき、拡張部分130の中に配置される。杼要素92は、曲線状部分54に従う必要がないので、杼要素は堅固な材料から作ることができる。
【0026】
図14乃至
図22は、他の実施形態による縫合糸挿通器具10を示しており、単一のプッシャが、第1のカニューレ46から縫合糸のストランドを並進させ、組織受入れ隙間62を横切って、ハウジング14の第2のカニューレ50の中へ入れるようになっている。図示の通り、縫合糸挿通器具10は、単一のプッシャ150を具備し、これは、組織受入れ隙間62を横切って、杼要素155を押すように構成されている。しかしながら、単一のプッシャ150だけしか無いため、最終的には、ユーザがプッシャ150を引っ張り始めることになり、従って、杼要素155は組織受入れ隙間62を横切って引っ張られると言うことができることを理解されたい。
【0027】
プッシャ150は、本体158と、プッシャ本体158の遠位端から延びている第1の組織貫通端部162と、プッシャ本体158の近位端から延びている、反対側の第2の組織貫通端部166とを具備している。本体158は、概略円筒形であり、長手方向Lに細長いものである。それぞれの組織貫通端部162,166は、針状先端部170と、内側肩部174とを具備している。それぞれの肩部174は、円筒形であり、プッシャ本体158の直径に比べて大きな直径を有している。組織貫通端部162,166の肩部174は、
図14及び
図15に最良に示されるように、対向する接触面178を形成している。
【0028】
プッシャ150は、第2のカニューレ50の曲線状部分54を含み、第1のカニューレ46と第2のカニューレ50との両方の内部を並進するように構成されている。従って、プッシャ150の本体158は、可撓性を有し、ニチノールなど、形状記憶特性を有する弾性又は超弾性の材料から形成されており、これにより、プッシャ150の本体158は、ハウジング14に対してプッシャの150が遠位側へ並進した結果、第2のカニューレ50の曲線状部分54に沿って前進するときに屈曲することができる。可撓性のプッシャ本体158は、ニチノールから作られることに限られず、充分な弾性特性を有するあらゆるその他の材料、例えば、一般的に、可撓性を有するポリマー材料などから形成できる。プッシャ150の組織貫通端部162,166は、チタン、ステンレス鋼、様々な適当なプラスチックなど、堅固な材料から構築しても良い。
【0029】
図14乃至
図22に示すように、縫合糸プッシャ10はさらに、杼要素155を具備し、これは、組織貫通端部162と166との間にて、プッシャ本体150に摺動可能に結合されている。杼要素155は、プッシャ150が並進すると、第1のカニューレ46から、組織受入れ隙間62を横切って、第2のカニューレ50へ入るべく移動するように構成されている。
【0030】
図示の通り、杼要素155は、長手方向Lに細長い、本体180を具備している。
図15に最良に示されるように、本体180は、本体180の全体にわたって延通してなる細長いボア184を形成している。ボア184は、プッシャ本体158の直径に比べて大きい直径を有している。従って、杼要素155は、プッシャ150が並進すると、プッシャ本体158に沿って摺動することができる。杼要素本体180はさらに、その遠位端及び近位端に、接触面188を形成している。杼要素155のそれぞれの接触面188は、プッシャの組織貫通端部162,166のそれぞれの接触面178に対応している。従って、プッシャ150が、第1のカニューレ46を通って、遠位側への第1の方向に並進して、第2のカニューレ50に入ると、杼要素の近位端の接触面188がプッシャ150の第2の組織貫通端部166の接触面178に接触するまで、杼要素155は静止して留まる。プッシャ150がさらに並進すると、杼要素155は、プッシャ150の第2の組織貫通端部166によって、組織受入れ隙間62を横切るように、引かれ/押される。同様に、プッシャ150が、第1の方向とは反対向きの第2の方向に遠位側へ並進すると、杼要素の遠位端の接触面188がプッシャ150の第1の組織貫通端部162の接触面178に接触するまで、杼要素155は再び静止して留まる。プッシャ150がさらに並進すると、杼要素155は、プッシャ150の第1の組織貫通端部162によって、組織受入れ隙間62を横切るように、引かれ/押される。
【0031】
また、杼要素155は、アイレット190などの縫合糸ホルダを具備し、詳しくは後述するように、欠陥を修繕するために縫合糸のストランドを通すように構成されている。しかしながら、縫合糸ホルダは、縫合糸のストランドがまわりに結ばれるような、杼要素155の本体180によって形成される外面でも良いことを理解されたい。
【0032】
動作に際しては、
図14乃至
図22に示すように、縫合糸のストランドは、アイレット190に通され、杼要素155は、縫合糸挿通器具10の本体158に装填される。双方向的な縫合糸挿通器具10は、縫合糸のストランドをアイレット190に通して、杼要素155をプッシャ150に装填することで事前に組み立てられていても良く、外科医や看護師は、縫合糸のストランドを双方向的な縫合糸挿通器具10に組み付ける必要がなくなるようにしても良い。
【0033】
図14に示すように、プッシャ150は、ハウジング14及び第1及び第2のカニューレ46及び50に対して完全に引っ込んで、組織受入れ隙間62は少なくとも部分的に開かれる。次に、修繕が必要とされる組織が、隙間62の中に導入される。例えば、亀裂を有する環状線維輪については、欠陥に隣接した環状線維輪の組織が、縫合糸挿通器具10の隙間62の中へ挿入される。次に、プッシャ150は、ハウジング14に対して遠位方向へ前進させられる。プッシャ150が前進すると、プッシャ本体158は、第1のカニューレ46の内部を並進し、杼要素155のボア184を摺動して通り、第2のカニューレ50の中へ入る。プッシャ150が、隙間62を横切って前進すると、第1の組織貫通端部162は、組織受入れ隙間62の内部に受け入れられた組織を貫通する。
図15に示すように、第1の組織貫通端部162とプッシャ本体158とは、次に、ハウジング14の上側に沿って、第2のカニューレ50の曲線状部分54を通って並進する。プッシャ150が並進を続けると、第2の組織貫通端部166の接触面178は、最終的には、
図16に示すように、杼要素155の近位側接触面188に接触する。プッシャ150がさらに並進すると、第2の組織貫通端部166は、杼要素155及び縫合糸を、
図17に示すように、組織受入れ隙間62を横切るように、押し/引く。ひとたび杼要素155が組織受入れ隙間62の遠位端にまで押され/引かれると、プッシャ150は並進を停止する。
【0034】
ひとたび杼要素155が組織受入れ隙間の遠位端にまで押され/引かれると、組織受入れ隙間62は実質的に開かれ、次に、双方向的な縫合糸挿通器具10は、欠陥に対してわずかに回転又は移動させられて、隙間62を通る杼要素155と縫合糸との逆向き経路に適合する。
図18乃至
図22に示すように、プッシャ150は、次に、組織を通って戻るように進み、その元来の位置へと向かう。それに関して、プッシャ150が進むと、プッシャ本体158は、第2のカニューレ50の内部を並進し、杼要素155のボア184を通って摺動し、第1のカニューレ46の中へと戻る。ここで、プッシャ150が隙間62を横切って進むと、第2の組織貫通端部166は、組織受入れ隙間62の内部に受け入れられている組織を貫通する。
図19及び
図20に示すように、第1の組織貫通端部162とプッシャ本体158とは、第2のカニューレ50の曲線状部分54を通って並進して戻り、一方、第2の組織貫通端部66とプッシャ本体158とは、ハウジング14の下側に沿って並進する。プッシャ150が並進を続けると、第1の組織貫通端部162の接触面178は、最終的には、
図20に示すように、杼要素155の遠位側接触面188に接触する。プッシャ150がさらに並進すると、第1の組織貫通端部162は、杼要素155及び縫合糸を、
図20に最良に示されるように、組織受入れ隙間62を横切るように、押し/引く。ひとたび杼要素155が組織受入れ隙間62の近位端にまで押され/引かれると、杼要素155は、その元来の位置へと戻り、
図22に最良に示されるように、プッシャ150は並進を停止する。次に、双方向的な縫合糸挿通器具10は、軟質組織の欠陥に対して新たな位置へ向けられるが、そのためには、欠陥に対して双方向的な縫合糸挿通器具10を並進又は回転させ、欠陥に近い軟質組織の異なる部分を、隙間62内に位置決めする。この工程は、組織の欠陥が適切に接合されるまで、1回又は複数回繰り返される。
【0035】
図面では、プッシャ150がハウジング14に対して手動で並進されるように構成されたものを示したけれども、様々な動作機構を容易に利用できることが想定され、それらには、自動的に、液圧的に、空気圧的に、電気的に、磁気的になど、が含まれる。さらに、双方向的な縫合糸挿通器具10は、プッシャ150を動作させるためのトリガー機構を有するように構成することもできる。
【0036】
縫合糸挿通器具10は、軟質組織の欠陥を接合するために、様々なステッチの態様を提供し、それらには、単純なステッチ、マットレスのステッチ、水平な箱状のマットレスのステッチ、水平なマットレスのステッチ、垂直なマットレスのステッチ、逆向きの垂直なマットレスのステッチ、又はその他の当業者に知られている態様のステッチが含まれる。縫われた縫合糸は、次に、事前に結ばれた摺動する結び目を用いて、又は縫合糸ストランドの両端を結ぶことで、欠陥を横切って締められ又は緊張させる。
【0037】
当業者は認識するだろうが、上述した実施形態には、その広い発明的概念から逸脱せずに、変更を加えることができる。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本願で定義された本発明の精神及び範囲の中での変形例を包含することが意図されることを理解されたい。例えば、第1及び第2のプッシュロッド70,74は、ハウジング14の内側に、平行なカニューレに沿って配置されるように示されているけれども、第1及び第2のプッシュロッド70,74は、互いに斜めに又は鋭角に配置しても良い。さらに、杼要素92の第1及び第2の端部104,108は、第1及び第2のプッシャ70,74の遠位端に配置された凹部に係合可能である針状先端部にて終端していると説明したけれども、小さい直径の杼要素92によれば、杼要素92の第1及び第2の端部104,108を、針状先端部を備えず又は概略鈍い端部を有していても、軟質組織に穿刺及び挿通することができる。