(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルカリ金属塩素酸塩の製造方法であって、少なくとも1つのアノードと少なくとも1つのカソードが配置された非分離型電解セル中で、アルカリ金属塩化物を含む電解質を電気分解することを含み、前記カソードはカソードの総重量を基準にして5重量%までの鉄または鉄化合物を含有していてもよく、チタン、亜酸化チタンまたはM(n+1)AXn(Mは元素周期表の第IIIB、IVB、VB、VIBまたはVIII族金属またはこれらの組み合わせであり、Aは元素周期表の第IIIA、IVA、VAまたはVIA族元素またはこれらの組み合わせであり、Xは炭素、窒素またはこれらの組み合わせであり、nは1、2または3である)またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含むカソード基板を少なくとも含み、
a)上記電解質には、クロムが任意の形態で0.01×10−6〜100×10−6mol/dm3の範囲の量で含まれ、
b)上記電解質には、モリブデン、タングステンおよび/またはこれらの混合物が任意の形態で0.1×10−5mol/dm3〜0.1×10−3mol/dm3の範囲の総量で含まれ、
前記アノードでの電流密度が0.6〜4kA/m2の範囲であり、前記カソードでの電流密度が0.05〜4kA/m2の範囲である、
前記方法。
アルカリ金属塩素酸塩を製造するための非分離型電解セルにおけるカソードの活性化方法であって、少なくとも1つのアノードと少なくとも1つのカソードが配置された非分離型電解セル中で、アルカリ金属塩化物を含む電解質を電気分解することを含み、前記カソードはカソードの総重量を基準にして5重量%までの鉄または鉄化合物を含有していてもよく、チタン、亜酸化チタンまたはM(n+1)AXn(Mは元素周期表の第IIIB、IVB、VB、VIBまたはVIII族金属またはこれらの組み合わせであり、Aは元素周期表の第IIIA、IVA、VAまたはVIA族元素またはこれらの組み合わせであり、Xは炭素、窒素またはこれらの組み合わせであり、nは1、2または3である)またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含むカソード基板を少なくとも含み、
a)上記電解質には、クロムが任意の形態で0.01×10−6〜100×10−6mol/dm3の範囲の量で含まれ、
b)上記電解質には、モリブデン、タングステンおよび/またはこれらの混合物が任意の形態で0.1×10−5mol/dm3〜0.1×10−3mol/dm3の範囲の総量で含まれ、
前記アノードでの電流密度が0.6〜4kA/m2の範囲であり、前記カソードでの電流密度が0.05〜4kA/m2の範囲である、
前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
金属のモリブデン、タングステン、バナジウム、マンガンおよび/またはこれらの混合物は、本明細書中では「活性化金属(activating metal)」と称し、任意の形態(例えば、元素、イオンおよび/または化合物として)用いることが可能である。一つの実施態様によれば、活性化金属の混合物を用いるのであれば、その総量を請求項に記載の範囲内にしなければならない。
【0011】
一つの実施態様によれば、電解質溶液には、クロムが任意の形態、典型的にはイオン形態、例えば、ジクロメートやその他六価クロムの形態、さらには三価クロム等の形態で含まれ、適切には六価クロム化合物、例えば、Na
2CrO
4、Na
2CrO
7、CrO
3またはこれらの混合物として添加されている。
【0012】
一つの実施態様によれば、電解質溶液には、クロムが任意の形態で約0.01×10
−6〜約100×10
−6、例えば、約0.1×10
−6〜約50×10
−6または約5×10
−6〜約30×10
−6mol/dm
3の量で含まれる。
【0013】
一つの実施態様によれば、電解質には、モリブデン、タングステン、バナジウム、マンガンおよび/またはこれらの混合物が任意の形態で(例えば、モリブデンが任意の形態で)含まれ、総量は約0.001×10
−3〜約0.1×10
−3または約0.01×10
−3〜約0.05×10
−3mol/dm
3の範囲である。
【0014】
一つの実施態様によれば、電解質には、ビカーボネート(例えば、NaHCO
3)等の緩衝剤がさらに含まれていてもよい。
【0015】
一つの実施態様によれば、電解質には、鉄が元素、イオンまたは鉄化合物のいずれの形態でも実質的に含まれない。ここで云う「実質的に含まれない」とは、電解質中の鉄の量が0.5×10
−3mol/dm
3未満または0.01×10
−3mol/dm
3未満であることを意味する。
【0016】
一つの実施態様によれば、アノードおよび/またはカソードは基板を含み、当該基板には、例えば、チタン、モリブデン、タングステン、亜酸化チタン、窒化チタン(TiN
x)、MAX相、炭化珪素、炭化チタン、グラファイト、ガラス状炭素またはこれらの混合物のうちの少なくとも1種が含まれる。一つの実施態様によれば、カソードは鉄または鉄化合物を本質的に含まない。一つの実施態様によれば、カソードは、カソードの総重量を基準にして5重量%まで、例えば1重量%まで、または、0.1重量%までの鉄を含んでいてもよい。しかしながら、カソードは鉄または鉄化合物を含まないのが好ましい。
【0017】
一つの実施態様によれば、カソードは鉄製のコアを含むが、カソードの表面は耐蝕性材料で被覆されており、カソードまたはカソード基板の表面に鉄または鉄化合物が本質的に含まれないようになっている。
【0018】
一つの実施態様によれば、基板は、M
(n+1)AX
nを含むMax相から構成される(式中、Mは元素周期表の第IIIB、IVB、VB、VIBもしくはVIII族金属またはこれらの組み合わせであり、Aは元素周期表の第IIIA、IVA、VAもしくはVIA族元素またはこれらの組み合わせであり、Xは炭素、窒素またはこれらの組み合わせであり、nは1、2または3である)。
【0019】
一つの実施態様によれば、Mはスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル、または、これらの組み合わせであり、例えばチタンまたはタンタルである。一つの実施態様によれば、Aはアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、硫黄、または、これらの組み合わせであり、例えばケイ素である。
【0020】
一つの実施態様によれば、電極基板は、Ti
2AlC、Nb
2AlC、Ti
2GeC、Zr
2SnC、Hf
2SnC、Ti
2SnC、Nb
2SnC、Zr
2PbC、Ti
2AlN、(Nb,Ti)
2AlC、Cr
2AlC、Ta
2AlC、V
2AlC、V
2PC、Nb
2PC、Nb
2PC、Ti
2PbC、Hf
2PbC、Ti
2AlN
0.5C
0.5、Zr
2SC、Ti
2SC、Nb
2SC、Hf
2Sc、Ti
2GaC、V
2GaC、Cr
2GaC、Nb
2GaC、Mo
2GaC、Ta
2GaC、Ti
2GaN、Cr
2GaN、V
2GaN、V
2GeC、V
2AsC、Nb
2AsC、Ti
2CdC、Sc
2InC、Ti
2InC、Zr
2InC、Nb
2InC、Hf
2InC、Ti
2InN、Zr
2InN、Hf
2InN、Hf
2SnN、Ti
2TlC、Zr
2TlC、Hf
2TlC、Zr
2TlN、Ti
3AlC
2、Ti
3GeC
2、Ti
3SiC
2、Ti
4AlN
3、または、これらの組み合わせのいずれかから選択される。一つの実施態様によれば、電極基板は、Ti
3SiC
2、Ti
2AlC、Ti
2AlN、Cr
2AlC、Ti
3AlC
2、または、これらの組み合わせのいずれかである。例示したような、本発明において電極基板として使用可能な材料の調製方法は、The MaxPhases: Unique New Carbide and Nitride Materials, American Scientist, Volume 89, p.334-343, 2001から公知である。
【0021】
一つの実施態様によれば、アノードおよび/またはカソード基板は、TiO
x(亜酸化チタン)から選択されるチタン系材料からなる(式中、xは約1.55〜約1.99、例えば約1.55〜約1.95、例えば約1.55〜約1.9、例えば約1.6〜約1.85または約1.7〜約1.8の範囲の数である)。酸化チタンは主にTi
4O
7および/またはTi
5O
9であってよい。
【0022】
一つの実施態様によれば、アノードおよび/またはカソード基板には、チタン、窒化チタン(TiN
x)(式中、xは約0.1〜約1の範囲である)、炭化チタン(TiC)またはこれらの混合物が含まれる。
【0023】
一つの実施態様によれば、当該材料はモノリシックであってよく、その場合良好な強度をもたらすためxは1.67以上が可能である。これらの材料の調製方法は、P. C. S. Hayfield著「Development of a New Material - Monolithic Ti
4O
7 Ebonex(R) Ceramic」(ISBN0−85404−984−3)から公知であり、米国特許第4,422,917号にも記載されている。
【0024】
一つの実施態様によれば、カソード材料は、バリア性材料から電気触媒性(electrocatalytic)材料へと徐々に変えながら構成してもよい。例えば、内側の材料は例えばTiO
xであってよく、一方、表面の材料は例えばTiO
2/RuO
2系である。
【0025】
一つの実施態様によれば、アノードはタンタル、ニオブおよびジルコニウムで構成されていてもよい。典型的には、アノードは1層以上のアノードコーティングをアノード基板の表面に含む。さらに有用なアノードコーティングとしては、ルテニウム、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、白金、パラジウム、イリジウム、スズ、ロジウム、アンチモン、並びに、これらの適当な合金、組み合わせおよび/または酸化物を含むコーティングが挙げられる。一部の実施態様では、アノードコーティングは、ルテニウム−アンチモン酸化物アノードコーティングまたはその誘導体である。他の実施態様では、アノードコーティングは、ルテニウム−チタン酸化物アノードコーティングまたはその誘導体である。他の実施態様では、アノードコーティングは、ルテニウム−チタン−アンチモンアノード酸化物コーティングまたはその誘導体である。一部の実施態様では、アノードは寸法安定性アノード(DSA)である。
【0026】
一つの実施態様によれば、アノードおよび/またはカソードの密度は、互いに独立して、約3〜約20、例えば、約4〜約9または約4〜約5g/cm
3の範囲とすることができる。
【0027】
一つの実施態様によれば、アノードおよびカソードの厚みは、互いに独立して、約0.05〜約15、約0.05〜約10、例えば、約0.5〜約10、約0.5〜約5、約0.5〜約2.5または約1〜約2mmの範囲である。
【0028】
一つの実施態様によれば、カソードはチタンを含む基板を含み、当該基板と本明細書に開示の電気触媒性コーティングとの間に保護層を有していてもよい。保護層には、TiO
x(式中、xは約1.55〜約1.95の範囲の数である)が含まれていてもよい。酸化チタンは主にTi
4O
7および/またはTi
5O
9であってよい。一つの実施態様によれば、保護層はモノリシックであってよく、その場合強度の面からxは1.67以上が可能である。保護層にはTiN
x(式中、xは約0.1〜約1の範囲である)が含まれていてもよい。
【0029】
一つの実施態様によれば、アノードおよび/またはカソードは基板を含み、当該基板は、機械加工、サンドブラスト、グリットブラスト、化学エッチング等、または、エッチング粒子を用いたブラストの次にエッチングを行うといった組み合わせを利用して粗面処理を行うことのできるものである。化学エッチング剤の使用は周知であり、このようなエッチング剤としては、最も強い無機酸、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸の他、シュウ酸といった有機酸も挙げられる。一つの実施態様によれば、粗面処理、ブラスト処理および酸洗い処理を行った電極基板を、例えば、浸漬、塗布、ロール塗または吹付けを利用して電気触媒性のコーティングで被覆する。
【0030】
「カソード電着溶液」とは、カソード上に析出してカソードコーティングを形成する活性化金属を含有する電解質溶液の一部である。アノードがコーティングを含む場合、電解質は、アノードコーティングを分解する材料を含有してはならない。一つの実施態様によれば、過電圧を減らすため、カソードコーティングはカソード基板の一部または全体を被覆してもよい。
【0031】
一つの実施態様によれば、電解質は、カソード上への析出に適した活性化金属を任意の形態で含有していればよく、例えば、モリブデン、タングステン、バナジウム、マンガン、および、これらの混合物を適切な形態、例えば、元素状態および/または化合物として電解質へ添加する。
【0032】
一つの実施態様によれば、電極(即ち、アノードおよび/またはカソード)の構造は、例えば、平シートや平プレート、曲面、螺旋面(convoluted surface)、穿孔プレート、金網スクリーン、メッシュシートを広げたもの、ロッド、チューブまたはシリンダーの形状であってよい。一つの実施態様によれば、円筒形の形状が好適である。
【0033】
用語「インサイチュ活性化」とは、例えば、アルカリ金属塩素酸塩の製造方法を電解塩素酸塩セル中で行いながら、カソードの活性化(例えば、コーティング、電着)を行うことを意味する。インサイチュ活性化では、例えば電着と塩素酸塩の製造との間に、電解セルを機械的に分解してカソード板から1枚以上のアノード板を隔離する必要が無い。
【0034】
一つの実施態様によれば、ここで云う「インサイチュ活性化」には、例えば、「活性化モード」、即ち、最適な活性化に特化した条件下でプラントを一時的に操作しながら行う活性化も含まれる。これには、生成物に活性化金属が混入しないよう、および/または、活性化金属の利用が進むよう、結晶化を避けながら行うことも含まれる。これには、例えば、一時的に高い電流密度で行って活性化金属の析出を早めることも含まれる。これには、わずかに異なる工程条件で(例えば、pHを修正して)アルカリ金属塩素酸塩の結晶を生成させながらセルを運転することも含まれる。一つの実施態様によれば、「インサイチュ活性化」には、例えば始動手順中の工程として、間欠的な充電や不定期の充電も含まれる。一つの実施態様によれば、インサイチュ活性化には、特別な電解質組成物を用いて一つのセルまたは複数のセルをオフラインで活性化することも含まれる。
【0035】
一つの実施態様によれば、電解セルは非分離型のセルである。「非分離型の電解塩素酸塩セル」は、アノードとカソードとの間に、電解質を分離するよう機能する物理的なバリア(例えば、膜または隔壁)を持たない電解塩素酸塩セルである。従って、カソードとアノードとは一つの区画に存在する。一つの実施態様によれば、電解セルは分離型セルであってもよい。
【0036】
一つの実施態様によれば、アルカリ金属塩素酸塩の製造方法は、アルカリ金属ハロゲン化物とアルカリ金属塩素酸塩とを含有する電解質溶液を、本明細書で云う電解セルへ導入し、電解質溶液を電気分解して電解処理された塩素酸塩溶液を生成し、電解処理された塩素酸塩溶液を塩素酸塩反応器へ移して電解処理された塩素酸塩溶液を反応させ、さらに濃縮されたアルカリ金属塩素酸塩電解質を生成することを含む。電気分解に伴って、アノードで形成された塩素が直ちに加水分解して次亜塩素酸塩を形成する一方、カソードでは水素ガスが形成される。
【0037】
一つの実施態様によれば、アノードでの電流密度は、約0.6〜約4、約0.8〜約4、約1〜約4、例えば、約1〜約3.5または約2〜約2.5kA/m
2の範囲であってよい。
【0038】
一つの実施態様によれば、カソードでの電流密度は、約0.05〜約4、例えば、約0.1〜約3、例えば、約0.6〜約3または約1〜約2.5kA/m
2の範囲である。
【0039】
一つの実施態様によれば、形成した塩素酸塩を結晶化で分離する一方、母液を再利用し、塩化物を強化してさらに電気分解を行って次亜塩素酸塩を形成する。
【0040】
一つの実施態様によれば、塩素酸塩を含有する電解質を別の反応器へ移して二酸化塩素へ変換し、これを気流として分離する。塩素酸塩が消費された電解質を、次いで塩素酸塩ユニットへ戻し、塩化物を強化してさらに電気分解を行って次亜塩素酸塩を形成する。
【0041】
一つの実施態様によれば、pHを複数の位置で5.5〜12の範囲で調整し、それぞれのユニット操作の工程条件を最適化する。従って、電解装置と反応容器では弱酸性または中性のpHを使用して次亜塩素酸塩から塩素酸塩への反応を促進する一方、結晶化装置のpHはアルカリ性にしてガス状の次亜塩素酸塩および塩素が形成・放出されるのを抑制し、かつ、腐食の危険性を減らす。一つの実施態様によれば、セルへ供給される溶液のpHは約5〜約7、例えば約5.5〜約6.9、例えば約5.8〜約6.9の範囲である。
【0042】
一つの実施態様によれば、電解質溶液はアルカリ金属ハロゲン化物(例えば、塩化ナトリウム)を約80〜約180、例えば、約100〜約140または約106〜約125g/lの濃度で含有する。一つの実施態様によれば、電解質溶液はアルカリ金属塩素酸塩を約450〜約700、例えば、約500〜約650または約550〜約610g/lの濃度で含有する。
【0043】
一つの実施態様によれば、当該方法は塩素酸ナトリウムまたは塩素酸カリウムを製造するために用いるが、他のアルカリ金属塩素酸塩も製造可能である。塩素酸カリウムの製造は、精製した塩化カリウム溶液を、電解製造された塩素酸ナトリウムの一部をアルカリ化した部分流へ添加し、次いで、冷却および/または蒸発によって結晶を沈殿させることで行うことができる。塩素酸塩は、適切には連続法によって製造するが、バッチ法を用いることもできる。
【0044】
一つの実施態様によれば、工業用等級(technical-grade)の塩の形態のアルカリ金属塩化物と原水とを供給して塩スラリーを調製する。このような調製物は、例えばEP−A−0498484に開示されている。一つの実施態様によれば、塩素酸塩セルへの流量は、製造されるアルカリ金属塩素酸塩1メートルトン当たり、通常75〜200m
3の電解質である。
【0045】
一つの実施態様によれば、各塩素酸塩セルは、10バールまで可能なセルボックス内の超過圧力に応じて、約50〜約150、例えば約60〜約90℃の範囲の温度で操作する。一つの実施態様によれば、塩素酸塩電解質の一部を反応容器から塩スラリーへ再利用し、一部をアルカリ化、電解質濾過および最終pH調整を行って塩素酸塩結晶化装置へかける。このようにアルカリ化した電解質は結晶化装置へ少なくとも一部供給され、そこで水を蒸発させて塩素酸ナトリウムを結晶化し、フィルターまたは遠心分離機を介して回収する一方、追い出された水を凝結させる。
【0046】
一つの実施態様によれば、塩素酸塩が飽和状態であり、かつ、高含量の塩化ナトリウムを含有する母液は、セルのガススクラバーや反応器のガススクラバーを介して塩スラリーの調製へ直接再利用する。
【0047】
一つの実施態様によれば、セル内の圧力は、大気圧よりも約20〜30ミリバール高い。
【0048】
一つの実施態様によれば、セル電解質の(電気)伝導率は、約200〜約700、例えば約300〜約600mS/cmの範囲である。
【実施例】
【0049】
このように本発明を記載してきたが、多くの変更が可能であることは明らかであろう。以下の実施例により、発明の範囲を限定することなく、これまで記載してきた発明をどのように実施するのか、さらに説明する。
【0050】
特に記載がない限り、部および%は全て重量部および重量%を意味する。
【0051】
実施例1
電解セルと反応容器(ガス分離器としても作用)とを含む小型の塩素酸塩製造用パイロットプラントを使用した。ポンプを用いて電解質を循環させた。反応容器の頂部からガスを回収し、少量の塩素種を5モル濃度の水酸化ナトリウムへ吸収させ、水を乾燥剤に吸着させて完全に除去した。次いで、残存ガス中の酸素含量を体積%で連続的に測定した。カソード上のカソード電流効率(CCE)を算出するため、酸素流量(リットル/秒)も同じく測定した。総ガス流量から酸素の分を差し引いて水素流量を求めた。次いで、以下の式:CCE=(1秒当たりの通常リットルH
2/22.4)×(2F/I)(式中、Fはファラデー定数であり、Iはセル中を流れる電流をアンペアで表したもの)を用いて水素流量からCCEを算出した。
【0052】
出発電解質には、120g/LのNaClと580g/LのNaClO
3とを含有する水溶液を使用した。電解セルのアノードは、Permascandより入手可能なPSC120(DSA(登録商標)、TiO
2/RuO
2)とした。カソード材料としては、Kanthalより入手可能なMAXTHAL(登録商標)312(Ti
3SiC
2)(4.1g/cm
3)の表面を機械加工したものを使用した。アノードとカソードとの距離は約4mmとした。電気分解のために露出させる幾何学的表面積は、アノードおよびカソードそれぞれで30cm
2とした。アノードおよびカソードの双方で3kA/m
2の電流密度を各実験で使用した。実験時の電解質温度は80±2℃とした。
【0053】
表1に示すようなMoO
3の添加によるカソードの活性化が明らかに見られ、少量のNa
2Cr
2O
7・2H
2O(〜9μM、Cr換算で18μMに相当)も電解質中に存在する。
【0054】
表1中、電解質に少量のMoO
3を使用した実験では、3.5〜3.8%の酸素が発生したことに注目されたい。電解質中のMoO
3量が非常に少ないにもかかわらず、表1からは顕著な活性化効果を認めることができる。表1の値は、各添加後に安定な状態に至ってから得た値である。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2
1mg/L(0.007mM)および100mg/L(0.7mM)のMoO
3をそれぞれ電解質へ添加して長期的な効果を検討した(表2)。実験設備は実施例1と同様にした(カソードとして新しいMAXTHAL(登録商標)312電極を使用)。
【0057】
【表2】
【0058】
100mg/LのMoO
3を用いた実験では、かなりの酸素レベルが生じることが明らかである。しかしながら、カソードはかなり活性化している。
【0059】
実施例3
カソード(新しいMAXTHAL(登録商標)312)の活性化にカソード電流密度がどのように影響するか検討する試験において、実施例1の実験設備および出発電解質を使用した。50mg/L(0.35mM)のMoO
3を電解質へ添加した後、セル電圧の3.05Vへの活性化を2kA/m
2で安定化させた。次いで、カソードの電流密度を3kA/m
2へ約1.5時間増加させ、次いで2kA/m
2へ戻した。電流密度を3分間増加させるだけで約20mV分カソードがさらに活性化した。
【0060】
実施例4
モリブデンを電解質へ添加した小規模実験を複数実施した。5MのNaCl水溶液を全ての電解質で使用した。本実験ではクロメートは存在させなかった。作用電極(working electrode)としてチタンディスクを使用し、3000rpm、70℃、pH6.5にて回転させた。作用電極の電位を5分間−1.5V(対Ag/AgCl)に維持した実験を6回行った。その後、電位を下げた。作用電極上である一定の電流密度(0.5kA/m
2)となった際に、表3(5MのNaCl)および表4(5MのNaCl、15mMのNaClO)に示すように、電位(対Ag/AgCl)の読取値をサンプリングした。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
少量のモリブデン種によってチタンカソード上の電圧が低下することが明らかである。
【0064】
実施例5
活性化剤としてタングステン種がモリブデン種にどの程度匹敵するかを見る試験として、3種類の実験を行った(ここでも回転ディスクを使用)。この場合、電極材料はMax相(Kanthalより入手可能なMaxthal 312(登録商標))とした。この実験では、ディスクを3000rpmで回転させ、2kA/m
2で分極させた。電解質溶液には、5MのNaCl水溶液を温度70℃、pH6.5で含有させた。表5に従って実験を行い、15分後に読取りを行った。
【0065】
【表5】
【0066】
実施例6
クロムの作用を検討するため、表6に示す電解質を用いて4種類の実験を行った。チタンディスクを作用電極として使用し、3000rpm、70℃、pH6.5にて回転させた。作用電極の電位を5分間−1.5V(対Ag/AgCl)に維持した。その後、50mV/秒の割合で電位を下げ、作用電極上の電流密度を監視した。実験では、電流密度をおよそ−0.8V(対Ag/AgCl)でサンプリングし、次亜塩素酸塩の還元がどの程度顕著であるかの測定値として使用した。この電位でのカソード電流が高いほど、次亜塩素酸塩の還元が進んでいること、従って水素発生に対する選択性が低いことを示し、実施例1および2で測定したように、最終的にはカソード電流効率がさらに低下する。
【0067】
【表6】