特許第5665859号(P5665859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665859
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】電気車制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/50 20060101AFI20150115BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H02P5/50 D
   B60L9/18 L
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-512635(P2012-512635)
(86)(22)【出願日】2011年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2011001999
(87)【国際公開番号】WO2011135777
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-105877(P2010-105877)
(32)【優先日】2010年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅憲
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−018209(JP,A)
【文献】 特開平02−023097(JP,A)
【文献】 特開平10−066204(JP,A)
【文献】 特開平04−251502(JP,A)
【文献】 特開昭60−113603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/50
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台のVVVFインバータと、複数の同期電動機とを備える電気車制御装置であって、
前記各同期電動機は、
前記VVVFインバータから給電され、回転磁界を生成する固定子と、
前記固定子の回転磁界に同期して回転する回転子と、
前記回転子を交流励磁する交流励磁インバータと、
前記回転子に接続される車輪の径差により生ずる回転子の回転数差を検出する位置検出器とを備え、
前記交流励磁インバータは、前記回転数差からすべりを算出するとともに、当該同期電動機の負荷角を算出し、該算出したすべり及び負荷角から前記回転子の励磁電流の周波数及び位相を決定することを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】
記複数の同期電動機のうちの1台以上の同期電動機の回転子を直流励磁する直流励磁インバータを更に備え、
前記交流励磁インバータは、残りの同期電動機の回転子を各車輪の径差による回転数差に従って交流励磁することを特徴とする、請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
記複数の同期電動機うち、前記回転子の回転数が、各回転子の回転数の平均値に近いものから順に選択した1台以上の同期電動機の回転子を直流励磁する直流励磁インバータを更に備え、
前記交流励磁インバータは、残りの同期電動機の回転子を各車輪の径差による回転数差に従って交流励磁することを特徴とする、請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記直流励磁される同期電動機は、1台であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両用の主電動機に同期電動機を使用する電気車制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用の主電動機には現在誘導電動機が多数採用されており、制御方式は複数の誘導電動機を1台の主VVVFインバータ(variable voltage variable frequency inverter:可変電圧・可変周波数型インバータ)で駆動する1インバータ多電動機駆動方式である。電気車の車輪の直径は各誘導電動機の回転数に差が出ないように管理されているものの、実際には電気車の車輪の直径の誤差(以下、「径差」という)がある。そのため、ある程度の回転数差が生じており、その回転数差はおおよそ各車輪の発生トルク差になる。この発生トルクに顕著な差が出ると特性上好ましくないので、一般には回転数の差に対してトルク差が生じないように誘導電動機の定格すべりは若干大きめに設計していることが多い。定格すべりは電動機の効率に大きく影響するため、高効率を目指すには低すべり電動機とすることが望まれるが、前述の車輪径差の関係から実現できないのが現状である。なお、各車輪の直径差を厳しく管理すれば、理論上高効率の低すべり電動機を実現できるが、保守に手間がかかり、現実的ではない。
【0003】
一方、電動機の効率を向上させることは、地球温暖化防止などの観点からも強く望まれている。高効率化を目的として、永久磁石電動機を個別インバータで駆動する電動機制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この電動機制御装置には、制御装置の搭載性やコスト面、あるいは永久磁石による保守性の低下などの問題があった。また、永久磁石には一般に希土類磁石が使用されているが、永久磁石の使用は資源の枯渇や一国集中といった国際的な問題を有している。
【0004】
上記問題の改善策として、同期電動機の界磁巻線に交流を印加できる非同期化同期電動機を採用し、回転子のすべりに相当する周波数の励磁を行うことにより、各車輪の径差により回転数差を吸収し、1台の主VVVFインバータで複数の同期電動機を駆動する技術が知られている(例えば、非特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3961791号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】I. R. Smith et al「Theoretical and Experimental Study of an Asynchronized Synchronous Machine」IEEE Trans. IECI-22, 1975年11月
【非特許文献2】坪井和男、水田祐司、中村雅憲、「双対励磁同期電動機の非同期始動特性」、電気学会論文誌、99−B、1979年9月
【非特許文献3】電気学会技術報告(II部)第405号、1992年1月、p.50〜54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の電気車制御装置では、1台の主VVVFインバータで回転数の異なる多数の同期電動機を安定に制御することが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、同期電動機の界磁を交流励磁にすることにより、各車輪の径差を周波数により吸収し、各車輪の回転数が異なっていても1台の主VVVFインバータで複数の同期電動機を安定に制御でき、かつ、各車輪を同一トルク又は同一出力で制御できる電気車制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気車制御装置は、1台のVVVFインバータと、複数の同期電動機とを備える電気車制御装置であって、前記各同期電動機は、前記VVVFインバータから給電され、回転磁界を生成する固定子と、前記固定子の回転磁界に同期して回転する回転子と、前記回転子を交流励磁する交流励磁インバータと、前記回転子に接続される車輪の径差により生ずる回転子の回転数差を検出する位置検出器とを備え、前記交流励磁インバータは、前記回転数差からすべりを算出するとともに、当該同期電動機の負荷角を算出し、該算出したすべり及び負荷角から前記回転子の励磁電流の周波数及び位相を決定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電気車制御装置において、前記複数の同期電動機のうちの1台以上の同期電動機の回転子を直流励磁する直流励磁インバータを更に備え、前記交流励磁インバータは、残りの同期電動機の回転子を各車輪の径差による回転数差に従って交流励磁することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る電気車制御装置において、前記複数の同期電動機うち、前記回転子の回転数が、各回転子の回転数の平均値に近いものから順に選択した1台以上の同期電動機の回転子を直流励磁する直流励磁インバータを更に備え、前記交流励磁インバータは、残りの同期電動機の回転子を各車輪の径差による回転数差に従って交流励磁することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る電気車制御装置において、前記直流励磁される同期電動機は、1台であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気車制御装置によれば、1台の主VVVFインバータに対して、同期電動機の数だけ界磁調整用の励磁インバータを有し、各車輪の径差から生じる同期電動機の回転数差を励磁インバータで回転数とトルクを調整することにより、各車輪の回転数が異なっていても1台の主VVVFインバータで複数の同期電動機を安定に制御でき、かつ、各車輪を同一トルク又は同一出力で制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による一実施例の電気車制御装置の構成図である。
図2】本発明による一実施例の、各台車に2台の同期電動機を対向して配置した電気車制御装置の構成図である。
図3】本発明による一実施例の電気車制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による電気車制御装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明による一実施例の電気車制御装置の構成図である。ここでは、1台の主VVVFインバータで4台の同期電動機の駆動を行い、各同期電動機の固定子は3相巻線、回転子は2相巻線である場合を例に示している。なお、回転子を3相巻線とすることも可能であるが、直流から交流までの励磁範囲では、2相巻線とするのが実用的である。
【0017】
本実施例の電気車制御装置は、主VVVFインバータ20と、複数の同期電動機30とを備える。図1では、一例として、同期電動機30が4つ(30A〜30D)の場合について示している。同期電動機30(30A〜30D)は、3相固定子31(31A〜31D)と、2相回転子32(32A〜32D)と、スリップリング33(33A〜33D)と、ブラシ34(34A〜34D)と、位置検出器35(35A〜35D)と、励磁インバータ36(36A〜36D)とを備える。
【0018】
主VVVFインバータ20は、直流架線10とレール11との間に給電される直流電圧を3相の交流電圧に変換する。変換された3相の交流電圧は、各同期電動機30の3相固定子31の全てに並列接続される。並列接続された4台の同期電動機30は、通常の直流励磁を行えば、4台とも同一の回転数かつ同一の負荷角で運転することが理想である。4台の電動機の回転数に独立性があれば、負荷角は各電動機の負荷トルクにより変動するが、4台の電動機の回転数は同期速度が維持される。
【0019】
各電動機の回転数は、車輪径差により、ある速度に対して若干の誤差が生ずることになる。現在主流の誘導電動機はすべりに比例してトルクが大きくなるが、若干の差であれば、すべりにより各電動機のトルク差は生ずるが、実用上は支障がない。
【0020】
3相固定子31は、通常の誘導電動機と同様に、120度ずつずらした空間位置に配置された3相巻線にそれぞれ電気的に120度の位相差を持った3相電源を給電することにより、円形の回転磁界を生成する。
【0021】
2相回転子32は、90度ずらした空間位置に配置された2相巻線を有しており、2相(α相とβ相)及び中性点Nが、スリップリング33に接続されている。この2相巻線に電気的に90度の位相差を持った電源を給電することにより、2相回転子32は、3相固定子31と同様に、円形の回転磁界を生成する。
【0022】
したがって、2相回転子32の2相巻線の巻線仕様は同一であり、同じ電流で同じ起磁力を生ずることが必要である。2相巻線は3相固定子31と同様、分布巻が好ましく、異常トルク現象を軽減するためスキューを行うことも有益である。スキューは3相固定子31又は2相回転子32のいずれかで実施すればよいが、一般に高圧電動機では固定子コイルでスキューを行なうことは困難であるため、2相回転子32でスキューを行うのが好適である。
【0023】
励磁インバータ36は、スリップリング33及びブラシ34を介して2相回転子32に接続される。励磁インバータ36は、直流及び交流ともに発生できるものであり、直流及び2相交流を2相回転子32の2相巻線に給電する。主VVVFインバータ20は、3相固定子31に給電して回転磁界を生成するとともに、4台分の同期電動機30の合計トルクの1/4を、直流励磁する同期電動機が出力するトルクになるような電圧波形を生成するが、励磁インバータ36は、2相回転子32に給電して回転磁界を生成するとともに、個々のトルクを制御する。
【0024】
位置検出器35は、2相回転子32と接続され、2相回転子32の位相を検出し、各回転子の回転数差を検出する。また、位置検出器35は、2相回転子32の回転速度Nrを検出することもできる。なお、2相回転子32の回転速度Nrを検出するために、回転速度検出器を別途設けてもよいのは勿論である。
【0025】
励磁インバータ36は、励磁用直流電源40から給電される。励磁インバータ36は、位置検出器35が検出した回転数差からすべりを算出するとともに、位置検出器35から出力される回転子位置信号と、同期電動機30の各相の電流検出器(図示せず)から出力される電流信号と、主VVVFインバータ20の電流検出器(図示せず)から出力される電流信号とから、同期電動機30の負荷角を算出する。そして、励磁インバータ36は、算出したすべりと負荷角から励磁電流を求め、2相回転子32を励磁する。全ての励磁インバータ36を交流給電(交流励磁)として運転することも可能であるが、以下では一例として、励磁インバータ36Aを直流給電(直流励磁)とし、他の励磁インバータ36B〜36Dを交流給電(交流励磁)とした場合の動作について説明する。どの同期電動機30の回転子32を直流励磁とするかの選択は、再粘着制御との絡みで種々想定できるが、経験的に空転を起こしにくい位置の同期電動機30の回転子32を直流励磁とすることが好適である。
【0026】
励磁インバータ36Aを直流給電とすると、同期電動機30Aは主VVVFインバータ20の周波数に同期した速度で運転することになり、他の同期電動機30B〜30Dは車輪の径差により若干の回転数差を生じて運転している状態になる。励磁インバータ36Bに接続されている車輪が励磁インバータ36Aに接続されている車輪より、若干径が大きいとすると、2相回転子32Bの回転速度は2相回転子32Aの回転速度より若干遅くなっている。この状態は誘導電動機と同じ状態で、この回転数差を同期速度で除したものをすべりと称し、回転数が同期速度より低い状態を正のすべり、高い場合を負のすべりと規定することにする。すなわち、同期電動機30B〜30Dは、車輪径が同期電動機30Aの車輪径より大きい場合には正のすべり、小さい場合には負のすべりで運転することになる。
【0027】
各励磁インバータ36の出力周波数は、同期電動機30のすべりから算定できるが、同期電動機30のトルクは負荷角に依存するので、必要なトルクから負荷角に変換し、負荷角の調整を2相回転子32のα巻線(α相)とβ巻線(β相)に流す励磁電流で行う。同期電動機30の毎分の同期速度は次式(1)で表される。
【0028】
=120×f/P (1)
ここで、Nは同期速度、fは主VVVFインバータ20が出力する交流電圧の周波数、Pは極数である。
【0029】
また、すべりは次式(2)で表される。
s=(Ns−Nr)/Ns (2)
ここで、sはすべり、Nは2相回転子32の回転速度である。
【0030】
すべりsは、2相回転子32の回転速度Nが同期速度Nより遅い場合には正となり、高い場合には負となる。すなわち、すべりsが正の場合には、三相固定子31の回転磁界の回転方向と2相回転子32の回転方向が同一であり、すべりsが負の場合には、三相固定子31の回転磁界の回転方向と2相回転子32の回転方向が逆になる。すべりsが0の場合は、2相回転子32の回転速度は同期速度と等しい。
【0031】
次に、1両の車両に2台の台車があり、各台車に2台の上述の同期電動機30を対向して配置した電気車制御装置の構成図を図2に示す。それぞれの同期電動機30のトルクは、ピニオンギア51、大歯車52を介して、車輪53に伝達される。
【0032】
三相固定子31は3相であり、1台内で同期電動機30の回転方向が逆になるので、三相固定子31ではU相とW相を入れ替え、2相回転子32ではα相とβ相を入れ替えて配線することで、回転方向の同一化を図っている。
【0033】
次に、電気車制御装置の動作について説明する。図3は、本発明による一実施例の電気車制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0034】
まず、電気車制御装置は、同期電動機30のうち、基準となる基準電動機を1台決定する(ステップS101)。例えば、電気車制御装置は、経験的にすべりにくい箇所に配置される同期電動機30をあらかじめ決めておき、この同期電動機30を基準電動機と決定する。あるいは、電気車制御装置は、位置検出器35により各2相回転子32の回転数を求め、回転数の平均値を算出し、2相回転子32の回転数がこの平均値に最も近い同期電動機30を基準電動機と決定する。ここでは説明の便宜上、同期電動機30Aを基準電動機とする。
【0035】
基準電動機30Aを決定すると、電気車制御装置は、励磁インバータ36により、基準電動機30Aの2相回転子32Aを直流励磁し、他の同期電動機30B〜30Dの2相回転子32B〜32Dを交流励磁する(ステップS102)。
【0036】
基準電動機30Aの2相回転子32Aは直流励磁されているので、3相固定子30Aに供給される周波数に同期した回転数で回転する。その他の同期電動機30B〜30Dは、車輪径により2相回転子32B〜32Dの回転数が異なる。位置検出器35は、2相回転子32B〜32Dの回転数と、2相回転子32Aの回転数との差異を、パルス数(おおよそ2相回転子32の1回転で数百パルスを発生)として検出する。例えば、電気車制御装置は、2相回転子32Aより回転数が低い2相回転子に供給する電源の周波数を正(+)とし、2相回転子32Aより回転数が高い2相回転子に供給する電源の周波数を負(−)とする。2相回転子32が回転し始めると、位置検出器35は直ちにパルスを検出し、回転子位置信号を励磁インバータ36に出力する。
【0037】
次に、電気車制御装置は、励磁インバータ36により、3相固定子31及び2相回転子32の各相の電流検出器(図示せず)から出力される電流信号と、主VVVFインバータの電流検出器(図示せず)から出力される電流信号とにより、同期電動機30の直軸電流、横軸電流、直軸電圧及び横軸電圧を算出する(ステップS103)。同期電動機30のトルクは次式(3)で表される。
【0038】
【数1】
ここで、Tはトルク(Nm)、Pは極対数、Ψは鎖交磁束、Iは直軸電流、Iは横軸電流、Lは直軸インダクタンス、Lは横軸インダクタンスである。
【0039】
交流励磁を行う同期電動機30は一般には円筒形になるので、直軸インダクタンスL=横軸インダクタンスLとして差し支えない。この場合、式(3)の右辺第2項は0になるので、トルク指令値(指定トルク)を決めると直ちに横軸電流Iが算出される。すなわち、横軸電流Iは次式(4)で表される。
【0040】
【数2】
【0041】
なお、直軸インダクタンスLと横軸インダクタンスLとが等しくなくても、初期値としては直軸電流I=0として、式(4)により横軸電流Iを算出するのが一般的である。
【0042】
同期電動機30の入力電力は次式(5)、皮相電力は次式(6)から算出され、力率を1.0とすれば、次式(7)が成立する。
【0043】
【数3】
ここで、Vは直軸電圧、Vは横軸電圧である。これより、直軸電流Iは次式(8)により算出できる。
【0044】
【数4】
【0045】
ただし、式(8)の右辺第2項の√の中は負になる可能性があり、直軸電流Idの初期値算定としては第2項を無視して次式(9)により算出する。なお、式(8)の右辺第2項の√の中が負である場合、直軸電流Iを調整しても力率を1.0にはできないことを意味する。
【0046】
【数5】
同期電動機30の電圧方程式は、次式(10)、(11)で表される。
【0047】
【数6】
ここで、Rは電機子巻線の抵抗、ωは主VVVFインバータ20が出力する交流電圧の周波数fの角速度である。
【0048】
励磁インバータ36は、式(4)及び式(9)で算出された直軸電流I及び横軸電流Iを式(10)及び式(11)に代入し、直軸電圧V及び横軸電圧Vを算出する。励磁インバータ36は、この電圧を式(6)の右辺第1項に代入し、電圧式(12)を算出する。
【0049】
【数7】
この電圧は同期電動機30の端子電圧になるので、電圧Vはあらかじめ指令回転数から決めておく。式(12)から次式(13)が導かれる。
【0050】
【数8】
【0051】
励磁インバータ36は、式(11)を変形し、直軸電流Iを算出する。励磁インバータ36は、これを式(10)及び式(11)に代入し、式(12)以下を繰り返し、直軸電流Iが収束するまで繰り返す。これにより、直軸電圧V,横軸電圧V、直軸電流I及び横軸電流Iがすべて算出される。すなわち、励磁インバータ36は、トルク指令値Tを決め、それに必要な直軸電流I及び横軸電流Iを流すことができる直軸電圧V及び横軸電圧Vを算出し、算出した直軸電圧V及び横軸電圧Vを2相−3相変換して3相の電圧を出力する。励磁インバータ36は、これにより流れる電流を3相−2相変換した後フィードバックし、目標の直軸電流I及び横軸電流Iとなるように制御を行う。
【0052】
続いて、電気車制御装置は、励磁インバータ36により、負荷角δを算出する(ステップS104)。負荷角δは、次式(14)により算出される。
【0053】
【数9】
【0054】
ベクトル制御の場合、直軸電流Iと横軸電流Iの電流値を指令値とするのは直流励磁される基準電動機30Aであり、その他の交流励磁される同期電動機30B〜30Dは、基準電動機30Aの負荷角δから算定された励磁電流位相により該当の励磁軸が決定される。なお、固定子32Aの直流励磁はα相とβ相を使用して行うが、界磁巻線の温度分布を均一にするためには、2相とも同電流とすることが望ましい。この場合、いわゆるd軸(直軸)の方向はα軸とβ軸のベクトル和の方向を取ることになる。
【0055】
最後に、電気車制御装置は、励磁インバータ36により、位置検出器35から出力される回転子位置信号からすべりsを算出し、算出したすべりs及び負荷角δに基づいて、2相回転子32のα相の励磁電流Iα及びβ相の励磁電流Iβの周波数及び位相を決定する(ステップS105)。
【0056】
負荷角δは端子電圧と励磁軸との角度を示している。励磁インバータ36は、交流励磁される回転子32B〜32Dのα相の励磁電流Iα及びβ相の励磁電流Iβについて、位置検出器35から回転子32Aと回転子32B〜32Dとの回転数差(=周波数)及びd軸(直軸)情報を得て、α相及びβ相の電流検出器からフィードバック制御を行う。この制御は、同期電動機30ごとに個別に行なわれる。回転子32Aと回転子32B〜32Dとの回転数差がすべり周波数になるので、α相の励磁電流Iα及びβ相の励磁電流Iβは、式(2)から算出されるすべりsを用いて、次式(15)により求まる。ここで、説明の便宜のため、直流励磁する基準電動機30Aをマスターモータmとし、その他の交流励磁される同期電動機30B〜30Dをスレーブモータs(i=1,2,3)とする。負荷角δは式(14)から求まるが、例えばマスターモータmの負荷角の場合にはδと表す。スレーブモータsの負荷角δsiは、各励磁インバータ36への位置検出器信号又は3相電流信号などから各直軸電圧V及び横軸電圧Vを算出し、それらからそれぞれ算定される。
【0057】
【数10】
ここで、Iαsiはスレーブモータsの回転子32B〜32Dのα相の励磁電流、Iβsiはスレーブモータsの回転子32B〜32Dのβ相の励磁電流、Iは励磁電流、δはマスターモータmの負荷角、δsiはスレーブモータsの負荷角である。
【0058】
マスターモータmの回転子32Aのα相の励磁電流Iαmとβ相の励磁電流Iβmは、式(15)において、s=0、δsi=δとすることで、次式(16)により求まる。
【0059】
【数11】
すべりsを0とすれば、式(16)のように回転子32Aのα相の励磁電流Iαmとβ相の励磁電流Iβmは等しくなる。
【0060】
励磁インバータ36Aは、回転子32Aに対し、一例としてα相、β相同一の直流電流を流し、一定の起磁力を発生させる。VVVFインバータ20は、基準電動機30Aの指定トルクを発生する直軸電流Iと横軸電流Iを出力するように、電圧を発生させる。
【0061】
一方、励磁インバータ36B〜Dは、回転子32B〜32Dに対し、α相とβ相の電流検出器からのフィードバックでベクトル和としての励磁起磁力が一定となるように調整し、なおかつ指定のすべり周波数を発生する。また、励磁インバータ36B〜Dは、同期電動機30B〜30Dの発生トルクを、各同期電動機30B〜30Dの3相の電流検出器からのフィードバック電流を3相―2相変換した直軸電流Iと横軸電流Iにより算定し、誤差を励磁インバータ36B〜Dの負荷角δで補正する働きを行う。
【0062】
このように、本発明の電機車制御装置によれば、車輪の径差を、各同期電動機30に接続された励磁インバータ36でその回転数差を吸収して、1台の主VVVFインバータ20で運転できるので、車輪の直径の管理を大幅に軽減でき、運行費用を低減することができる。また、励磁インバータ36は、主VVVFインバータ20のように高圧受電する必要がなく、2相回転子32の巻線設計によっては低圧インバータで駆動可能なので、高キャリア周波数・高応答のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用でき、再粘着制御などの高応答制御が可能となる。
【0063】
上述の実施例は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、1台の主VVVFインバータ20で8台や16台など、VVVFの容量が許容できる範囲で多くの同期電動機30を駆動することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
このように、本発明によれば、1台の主VVVFインバータで回転数の異なる多数の同期電動機を安定に制御することができるので、電動機の回転数を制御する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 直流架線
11 レール
20 主VVVFインバータ
30 同期電動機
31A〜31D 3相固定子
32A〜32D 2相回転子
33A〜33D スリップリング
34A〜34D ブラシ
35A〜35D 位置検出器
36A〜36D 励磁インバータ
40 励磁用直流電源
51A〜51D ピニオンギア
52A〜52D 大歯車
53A〜53D 車輪
図1
図2
図3