特許第5665868号(P5665868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5665868可撓性または摺動可能なフランジを有するシリンジ組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665868
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】可撓性または摺動可能なフランジを有するシリンジ組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   A61M5/31
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-525719(P2012-525719)
(86)(22)【出願日】2010年8月20日
(65)【公表番号】特表2013-502289(P2013-502289A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】US2010046123
(87)【国際公開番号】WO2011022621
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2012年4月17日
(31)【優先権主張番号】61/235,792
(32)【優先日】2009年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チー レオン ラム
(72)【発明者】
【氏名】エリック シラー
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第89/004681(WO,A1)
【文献】 米国特許第04790828(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0267206(US,A1)
【文献】 特表2009−526575(JP,A)
【文献】 特表2008−503296(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0159709(US,A1)
【文献】 特表2005−530597(JP,A)
【文献】 米国特許第04314556(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178− 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ組立体と共に使用するための可撓性フランジであって、該可撓性フランジは、
シリンジバレルの周りに配置されるように形成された一対の環状部材であって、該環状部材は、上記シリンジバレルの長さに沿って、互いに所定距離を置いて位置付けられている、上記一対の環状部材、および、
一つの曲げ個所を有し、上記一対の環状部材の間に延びて、上記一対の環状部材を結合する、少なくとも一つの可撓性フィンガーであって、該少なくとも一つの可撓性フィンガーは、上記少なくとも一つの可撓性フィンガーおよび上記環状部材の少なくとも一つのうちの一つに摺動力を適用することで、自身が折り畳まれて潜在エネルギーを蓄積し、曲げ個所が、予め定められた曲げ位置に至ると、上記可撓性フィンガーに蓄積されたエネルギーが解放して、上記可撓性フィンガーの曲げを自動的に完了させ、シリンジバレルにフランジを形成するように形成されている上記少なくとも一つの可撓性フィンガー、
を含むことを特徴とする可撓性フランジ。
【請求項2】
請求項1のフランジであって、上記少なくとも一つの曲げ個所は、リビングヒンジを含むことを特徴とするフランジ。
【請求項3】
シリンジ組立体であって、
近位端および遠位端を有するシリンジバレルであって、上記遠位端は出口部分を含む、上記シリンジバレル、および、
上記シリンジバレルの周りに位置付けられる可撓性フランジであって、該可撓性フランジは、
上記シリンジバレルの周りに配置されるように形成された少なくとも一対の環状部材であって、上記環状部材の少なくとも一つは、上記シリンジバレルの近位端に隣接して位置付けられ、少なくとも第二の環状部材は、上記シリンジバレルの近位端に配置された上記環状部材の少なくとも一つから、上記シリンジバレルの長さに沿って、所定距離を置いて位置付けられている、上記少なくとも一対の環状部材、および、上記一対の環状部材の間に延び、上記一対の環状部材を結合する少なくとも一つの可撓性フィンガーであって、該少なくとも一つの可撓性フィンガーは、上記少なくとも一つの可撓性フィンガーおよび上記環状部材の少なくとも一つのうちの一つに、近位への摺動力を適用することで、自身が折り畳まれ、上記シリンジバレルの近位端にフランジを形成するように形作られており、使用前位置から使用位置向かう上記可撓性フィンガーの移行が、上記可撓性フィンガーの一部に潜在エネルギーを蓄積し、上記可撓性フィンガーが、使用前位置から所定距離偏位すると、上記蓄積されたエネルギーが解放して、上記可撓性フィンガーの曲げを自動的に完了させ、上記可撓性フランジを形成する、上記少なくとも一つの可撓性フィンガーを含む、上記可撓性フランジ、
を含むことを特徴とするシリンジ組立体。
【請求項4】
請求項3のシリンジ組立体であって、上記少なくとも一つの可撓性フィンガーは、少なくとも一つの曲げ個所を含み、上記可撓性フィンガー自身が、摺動力の適用によって折り畳まれることを可能とすることを特徴とするシリンジ組立体。
【請求項5】
シリンジ組立体と共に使用するための摺動可能フランジであって、該摺動可能フランジは、
曲げ個所を含み、第一端および第二端を有するフランジ部材、
上記フランジ部材を通して延びる孔であって、上記孔は、シリンジバレルの周りに上記フランジ部材を配置するために形成されており、上記フランジ部材の上記第一端は、上記シリンジバレルの近位端に隣接して位置付けられ、上記フランジ部材の上記第二端は、使用前の位置において、上記シリンジバレルの遠位端に向って延びており、上記フランジ部材への力の適用は、上記フランジ部材の第二端が上記シリンジバレルの近位端に向って上記シリンジバレルに沿って摺動することをもたらす、上記孔、および、
上記シリンジバレルの上記近位端に設けられた錠止部材であって、上記フランジ部材の一部は、上記錠止部材の所定の位置にスナップ止めされることができる、上記錠止部材、を含み、
潜在エネルギーが上記フランジ部材の曲げ個所に蓄積され、上記フランジ部材の上記第二端が、予め定められた位置に至ると、上記フランジ部材の曲げ個所に蓄積されたエネルギーが自動的に上記フランジ部材の上記第二端の近位の移動を完了させ、上記シリンジバレルの長手方向軸に対して垂直の方向に延びるフランジを生成することを特徴とする摺動可能フランジ。
【請求項6】
請求項5のフランジであって、上記フランジ部材が、使用前の位置において、上記シリンジバレルの上記遠位端に向かって傾斜して延びており、上記錠止部材への固定後には、上記シリンジ部材に対して垂直方向に延びることを特徴とするフランジ。
【請求項7】
シリンジ組立体であって、該シリンジ組立体は、
近位端および遠位端を有するシリンジバレルであって、上記遠位端が出口部分を含む、上記シリンジバレル、および、
上記シリンジバレルの周りに位置付けられた摺動フランジであって、
第一端および第二端およびそれらの間の曲げ個所を有する摺動可能フランジ部材、
上記フランジ部材を通して延びる孔であって、上記孔は、上記シリンジバレルの周りに上記フランジ部材を配置するために形成されており、上記フランジ部材の第一端は、上記シリンジバレルの近位端に隣接して位置付けられ、上記フランジ部材の第二端は、使用前の位置において、上記シリンジバレルの遠位端に向って延びており、上記孔は、上記フランジ部材の第二端が、そこへの力の適用により、上記バレルの長さに沿って、上記近位端に向って摺動することを可能にする、上記孔、および、
上記フランジ部材を所定位置に錠止するために上記シリンジバレルの近位端に設けられた錠止部材を含む、上記摺動フランジを含み、
潜在エネルギーが上記フランジ部材の曲げ個所に蓄積され、上記フランジ部材の上記第二端が、予め定められた位置に至ると、上記フランジ部材の曲げ個所に蓄積されたエネルギーが自動的に上記フランジ部材の上記第二端の近位の移動を完了させ、上記シリンジバレルに対して垂直方向に延びるフランジを創設することをもたらすことを特徴とするシリンジ組立体。
【請求項8】
請求項7のシリンジ組立体であって、上記フランジ部材は、上記第一および第二端を接続する側壁部分を有する細長い形状とされ、上記孔は、楕円形状とされ、所定位置における、上記フランジ部材の少なくとも側壁部分の錠止は、上記第一および第二部分が、上記シリンジバレルに対して垂直の方向で向い合う方向に延びて、上記フランジを創設することをもたらすことを特徴とするシリンジ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、「可撓性または摺動可能なフランジを有するシリンジ組立体」との名称で、2009年8月21日に出願された、米国仮特許出願第61/235,792号の優先権を主張し、その全開示は、参照としてここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、可撓性、および/または、摺動可能なフランジを有するシリンジ組立体、より特別には、減少した貯蔵スペースをもたらす、より小さな占有面積を有する、可撓性、および/または、摺動可能なフランジを有するシリンジ組立体を対象とする。
【背景技術】
【0003】
シリンジ組立体、および、特に皮下注射用シリンジは、医薬のような流体を分配するものとして、医療分野において周知である。従来のシリンジは、典型的には、一端に開口を備えたシリンジバレルおよび他端を通して配置されたプランジャー機構を含む。プランジャーは、典型的には、バレル内においてプランジャーロッドの一端部にプランジャーヘッドまたはストッパーを備え、バレルから延びるプランジャーロッドの他端部にフィンガーフランジを備える、バレルを通して延びるプランジャーロッドを含む。使用時、プランジャーロッドは、シリンジバレルの後端から伸びるプランジャーロッドを用いて、シリンジバレルを医薬のような流体で満たすため、シリンジバレルの中を通って後退させられる。患者に医薬を送達するために、シリンジバレルの開口は、例えば、シリンジバレルの前端に取り付けられた皮下注射針を介して、または、患者の流体ラインへの取り付けのためにシリンジバレルの前端から延びるルアー型の接続具を介して、患者との流体連通に適合させられる。プランジャーロッドの押圧により、プランジャーロッドおよびストッパーは、シリンジバレル中を通って進み、それにより、患者への送達のために、前端の開口を通して、シリンジの内容物を放出する。そのような操作は、医療分野においてよく知られており、医療従事者は、標準のシリンジを介した、そのような一般的な流体送達手法の使用に良く慣れてきた。
【0004】
従来のシリンジは、医薬のバイアル瓶と接続して用いられることが良く知られており、その場合、使用者は、患者への注射および流体の送達に先立って、速やかに、シリンジ内に流体を引き込む。しばしば、皮下注射用シリンジは、「事前充填」器具として包装され得、シリンジは、包装および末端使用者へ送達される前に医薬を充填される。この方法において、使用者が注射に先だって機器を充填する必要はなく、それにより、末端使用者のための時間を節約し、送達のための一貫した容量を維持する。
【0005】
事前充填されたシリンジおよび事前充填された定量シリンジは、しばしば、製造施設で麻酔薬または他の薬物を充填され、包装され、そして、それから、医療施設に運搬される。ひとたび、施設に置かれると、これらのシリンジは、しばしば、シリンジ自身の盗難、および/または、これらのシリンジの内容物の盗難を減少させるために、管理された収納庫および/または鍵のかけられた戸棚に置かれる。
【先行技術文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5348544号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの管理された貯蔵場所内のスペースはしばしば限定されており、したがって、このシリンジを収容するために必要とされる貯蔵スペースを減少するため、より小さな占有面積を有するシリンジ組立体のニーズが存在する。また、貯蔵キャビネット内でシリンジの積み重ねを可能にするために外表面形状に関して均一なシリンジを生産することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの具体例によれば、シリンジ組立体は、可撓性フランジを含む。可撓性フランジは、第一および第二部材を含み、各々の部材は、少なくとも部分的にシリンジバレルの周りに配置される。第一部材は、シリンジバレルの近位端に隣接して配置され、第二部材は、シリンジバレルに沿って第一部材から所定距離離れて、シリンジバレルの周りに配置される。少なくとも一つの可撓性フィンガーが、第一および第二部材の間に延びており、第一および第二接続個所で第一および第二部材を接続する。少なくとも一つの曲げ個所が、少なくとも一つの可撓性フィンガーに設けられる。この少なくとも一つの曲げ個所は、第一および第二の接続個所の間に位置付けられ、可撓性フィンガーおよび/または第二部材への力の適用は、可撓性フィンガーが折り畳まれ、シリンジバレルの近位端にフランジを形成することを可能とする。可撓性フランジの一設計によれば、少なくとも一つの可撓性フィンガーは、シリンジバレルの周りに位置付けられた複数の可撓性フィンガーを含む。代わりの設計によれば、少なくとも一つの可撓性フィンガーは、シリンジバレルの対向側部に位置付けられた一対の可撓性フィンガーを含む。可撓性フィンガーは、少なくとも一つの曲げ個所によって分離された第一および第二部分を含むことができ、近位への力の適用は、曲げ個所がバレルに対して外方に伸びることをもたらし、第一および第二部分は、互いに隣接して位置付けられてフランジを形成する。
【0009】
他の具体例によると、シリンジ組立体は、シリンジバレルの周りへの配置のために形成された一対の環状部材を含み、環状部材は、シリンジバレルの長さに沿って互いに所定距離離れて位置付けられる。少なくとも一つの可撓性フィンガーが一対の環状部材の間に設けられ、一対の環状部材を連結する。少なくとも一つの可撓性部材は、少なくとも一つの可撓性フィンガーか、少なくとも一つの環状部材への摺動力の適用で、それ自身が折り畳まれ、シリンジバレルにフランジを形成するように形作られている。少なくとも一つの可撓性フィンガーは、摺動力の適用で可撓性フィンガー自身が折り畳まれることを可能にする、少なくとも一つの曲げ個所を含む。この少なくとも一つの曲げ個所は、リビングヒンジを含み得る。
【0010】
他の具体例によれば、シリンジ組立体は、近位端および遠位端を有するシリンジバレルを含み、遠位端は、出口部分を含む。可撓性フランジが、シリンジバレルの周りに位置付けられ、シリンジバレルの周りへの配置のために形作られた少なくとも一対の環状部材を含む。少なくとも一つの環状部材は、シリンジバレルの近位端に隣接して位置付けられ、少なくとも第二の環状部材は、シリンジバレルの近位端に位置付けられた少なくとも一つの環状部材からシリンジバレルの長さに沿って所定距離離れて位置付けられる。少なくとも一つの可撓性フィンガーが、一対の環状部材間に延び、一対の環状部材を連結する。少なくとも一つの可撓性フィンガーは、少なくとも一つの可撓性フィンガーおよび/または少なくとも一つの環状部材の一つに摺動力を適用することで、自身が折り畳まれシリンジバレルの近位端にフランジを形成するように形作られる。一つの具体例によれば、少なくとも一つの可撓性フィンガーは、少なくとも一つの曲げ個所を含み、そこへの摺動力の適用で、可撓性フィンガーが自身で折り畳まれることをもたらす。シリンジ組立体は、プランジャーロッドおよびシリンジバレル内に位置付けられたプランジャーを含み得る。プランジャーロッドは、その上に目印を含み、定量投薬を可能にさせる。他の具体例によれば、プランジャーロッドおよびプランジャーは、バレル内に収容され、可撓性フランジは包装のために折り畳まれる位置にとどまる。
【0011】
別の具体例によれば、シリンジ組立体は、第一端および第二端を有するフランジ部材を有する摺動フランジを含む。フランジ部材を通して延びる孔が設けられる。この孔は、シリンジバレルの周りへのフランジ部材の配置のために形成され、フランジ部材の第一端は、シリンジバレルの近位端に隣接して位置付けられ、フランジ部材の第二端は、使用前の位置において、シリンジバレルの遠位端に向って延びる。フランジ部材への力の適用は、フランジ部材の第二端が、シリンジバレルに沿ってシリンジバレルの近位端に向って摺動することをもたらす。錠止部材がシリンジバレルの近位端に設けられ、フランジ部材の一部は、錠止部材の所定の位置に嵌め込まれ得て、シリンジバレルの長手方向軸に対して垂直な方向に延びるフランジを創設する。錠止部材は、シリンジバレルの近位端のアンダーカット部分を含み得る。フランジ部材は、第一および第二端を接続する側壁部分によって画定される細長い部材を含み得、フランジ部材を通して延びる孔は、楕円形状であり得る。フランジ部材の側壁部分は、フランジ部材を所定の位置で錠止するため、錠止部材のアンダーカット部分内に適合するように形成され得る。一つの具体例によれば、フランジ部材は、使用前の位置において、シリンジバレルの遠位端に向かって、ほぼ30度の傾斜で延び、錠止部材への組立および固定により、シリンジバレルに対して垂直な方向に延びることができる。
【0012】
更に別の具体例によれば、シリンジ組立体は、摺動フランジを含む。シリンジ組立体は、近位端および遠位端を有するシリンジバレルを含む。遠位端は、出口部分を含む。摺動フランジは、シリンジバレルの周りに位置付けられ、第一端および第二端を有する摺動フランジ部材を含む。孔が、フランジ部材を通して延びて、シリンジバレルの周りへのフランジ部材の配置のために形作られており、フランジ部材の第一端は、シリンジバレルの近位端に隣接して位置付けられ、上記フランジ部材の第二端は、使用前の位置において、シリンジバレルの遠位端に向って延び、孔は、フランジ部材の第二端が、それへの力の適用により、バレルの近位端に向ってバレルの長さに沿って摺動することをもたらす。シリンジバレルに対して垂直方向に延びるフランジを創設するために、錠止部材が、フランジ部材を所定の位置に錠止するために、シリンジバレルの近位端に設けられる。一つの具体例によれば、錠止部材は、シリンジバレルの近位端に位置付けられたアンダーカット部である。好ましくは、フランジ部材は、第一および第二端を結合する側壁部分を有する形に細長くされており、孔は、楕円形状であって、その結果、フランジ部材の少なくとも側壁部分の所定位置への錠止は、第一および第二端部分が、フランジを創設するために、シリンジに対して垂直方向である、向かい合った方向に延びることを可能にする。
【0013】
本発明の、これらの、および、他の態様および特徴、ならびに、作動方法、および、構造の関連要素および部分の組み合わせの機能、および、製造上の利点は、その全てがこの明細書の一部を形成し、同一参照番号は、種々の図面における対応する部分を示す、添付図面を参照して、以下の説明および添付の特許請求の範囲を考慮することでより明らかになるだろう。しかしながら、図面は、図示および説明のみの目的のためであり、本発明の限定の記述として意図されていないことが、明確に理解されるべきである。明細書および特許請求の範囲において用いられているように、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈が、明確に別のものを指示していなければ、複数の指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の具体例による、可撓性フランジを含むシリンジ組立体の斜視図である。
図2A】本発明の第一具体例の代替設計による、可撓性フランジを含む、使用前の位置にあるシリンジ組立体の斜視図である。
図2B図2B〜2Eは、図2Aの具体例による、可撓性フランジ配置のフランジ形成およびシリンジ作動の連続的な斜視図であって、図2Bは、部分的に折り畳まれたフランジフィンガーを示す図である。
図2C】完全に折り畳まれてフランジを形成するフランジフィンガーを示す図である。
図2D】引き出された位置にあるプランジャーを示す図である。
図2E】プランジャーが作動された後のシリンジ組立体を示す図である。
図3A】本発明の具体例による、当初位置にある、摺動フランジを有するシリンジ組立体の斜視図である。
図3B図3Aのシリンジ組立体の正面図である。
図3C図3Aのシリンジ組立体の左側面図である。
図4A】本発明の具体例による、使用準備位置にある摺動フランジを有する、図3Aのシリンジ組立体の斜視図である。
図4B図4Aのシリンジ組立体の正面図である。
図4C図4Aのシリンジ組立体の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明のために、用語「上方」、「下方」、「右方」、「左方」、「垂直」、「水平」、「上部」、「底部」、「側部」、「長手方向」、および、その派生語は、発明が図において方向付けられているとして、発明と関係するだろう。しかしながら、発明は、そうではないと明確に述べられている場合を除き、種々の代替変更例を前提とし得ることが理解されるべきである。また、添付図面に示され、以下の明細書において説明される特定の器具は、単純に本発明の例示的具体例であることが理解されるべきである。したがって、ここに開示される具体例に関する特定の寸法および他の物理的特徴は、限定的であるとして考慮されるべきではない。
【0016】
図1に示されるように、参照数字10として全体的に示されるシリンジ組立体は、本発明の具体例に従った可撓性フランジ12を含む。シリンジ組立体10は、近位端16および遠位端18を含み、その中に、麻酔薬、診断物質、または、薬物のような治療物質、または、疼痛処理物質のような流体を収容する。ここにおいて、充填された、または、予め充填されたシリンジという用語で説明されるが、シリンジ組立体10は、予め充填された状態で提供されるか、または、臨床医によって使用前にすみやかに充填するように意図されている空のシリンジであり得ることが考慮される。遠位端18は、シリンジバレル14内に貯蔵される流体をそこから排出するための、ルアーチップまたはルアー組立体のような、出口開口20を含む。この出口開口20は、針組立体、静脈結合システムまたは任意の種々の供給システムへの取り付けのために形状が定められ得る。
【0017】
可撓性フランジ12は、シリンジバレル14の周りに少なくとも部分的に配置された、少なくとも第一部材22および第二部材24を含み得る。一つの具体例において、第一部材22および第二部材24は、シリンジバレル14の外表面に少なくとも部分的に対応する外形を有し、第一部材22および第二部材24は、シリンジバレル14の外表面に沿って摺動し得る。他の形状において、第一部材22および第二部材24は、実質的に環状であり、シリンジバレル14の外表面の周りに適合させられる。一つの具体例において、第一部材22は、シリンジバレル14の近位端16に隣接した配置のために形状が定められる。シリンジ10の使用中にフランジ12がバレル14から滑り落ちることを防止するために、停止部材26が、シリンジバレル14の近位端16に設けられ得る。第二部材24は、シリンジバレル14の長さに沿って第一部材22から所定距離離れて、シリンジバレル14の周りへ配置するように形状が定められ得る。
【0018】
少なくとも一つの可撓性フィンガー28が、第一および第二部材22、24間に延び、第一および第二接続個所32、34で、第一および第二部材22、24を結合する。図1に示されるように、複数の可撓性フィンガー28が、シリンジバレル14の周囲の周りに延びる第一および第二部材22、24間に設けられる。
【0019】
少なくとも一つの曲げ個所36が、少なくとも一つの可撓性フィンガー28に設けられる。この少なくとも一つの曲げ個所36は、第一および第二個所32、34間、好ましくは、第一および第二個所32、34間の中間の位置に配置される。可撓性フィンガー28は、別個のヒンジまたは他の相互連結部材を介して相互連結される二つ以上の分離片を表し得ることが、また考慮される。例えば、可撓性フィンガー28は、分離した第一部分37および第二部分38を含み、曲げ個所36で分離したヒンジ要素を介して互いに連結され得る。一つの特定の具体例において、分離した別個の第一および第二フィンガー部分37、38は、リビングヒンジを表す曲げ個所36を備えて、一体に形成される。曲げ個所36におけるリビングヒンジの使用は、可撓性フィンガー28、128が、フランジ40を創生するための準備位置に屈曲することを可能にする。このように、曲げ個所36は、少なくとも一つの可撓性フィンガー28、128を、第一部分37および第二部分38に分離し得る。
【0020】
曲げ個所36は、リビングヒンジ、オーバーセンターヒンジ、または、それ自身を折り畳み、圧縮し、または、積み重ねるように適合されている領域のような、どのタイプのヒンジ部材でもあり得る。別の具体例において、曲げ個所36は、第一および第二部材22、24が、曲げ個所36の周りを互いに向けて移動することを可能にするような、可撓性フィンガー28の制御された、または、自動的な進行のための機構を含み得る。例えば、可撓性フィンガー28は、そこに付勢を与えるように意図された機構を含み得、その結果、可撓性フィンガー28は、曲げ個所36で、曲げられた、または、折り畳まれた状態に付勢されることが考慮される。そのような具体例において、錠止機構が、可撓性フィンガー28を最初の伸長位置に維持するために備えられ、錠の解放により、可撓性フィンガー28は、曲げ個所36の周りで、曲げられた、または、折り畳まれた状態に向けて、および/または、その状態へと曲げられる。このことは、オーバーセンタータイプのヒンジとして曲げ個所36を提供することによって達成され、移動は、使用者が、矢印Aの方向に第一および第二部材22、24を互いに向けて移動させること、例えば、第二部材24を近位に移動させることによって開始され、移動は、曲げ個所36で一つ以上のヒンジに潜在エネルギーを蓄積し得る。曲げ個所36が、予め定められた曲げ位置に至ると、曲げ個所36内に蓄えられた潜在エネルギーが解放して、曲げ個所36で自動的に曲げを完了させ、それによって、使用のための完全に曲げられた位置に可撓性フィンガー28を移動させる。一つの具体例において、曲げ個所36におけるヒンジまたは複数のヒンジの自動化は、安全シールドの移動と関連する、特許文献1に示され、説明されるようなヒンジ腕の相互接続を介して達成され得、特許文献1の開示は参照としてここに組み入れられる。
【0021】
別の具体例において、一つ以上の伸長ばね部材(不図示)が、使用のための最終状態に曲げられた可撓性フィンガー28を備えた準備位置に向けて付勢された状態に、フィンガーフランジ12に予め負荷を加えるため、第一および第二部材22、24、例えば、隣接する可撓性フィンガー28を相互接続して用意され得る。そのような具体例において、適用される力の付勢は、可撓性フィンガー28を内方に折り畳むためであるが、シリンジバレル14の壁によって、そのことを防止されるので、メカニズムは、自動的または時期尚早に折れ曲がることを防止される。使用者は、矢印Aの方向に、第一および第二部材22、24を互いに向けて移動させることにより移動を開始させ、例えば、第二部材24を近位に移動させることで、可撓性フィンガー28を外方に曲げ、ばね部材(不図示)は、その後、使用準備位置に可撓性フランジ12を配置するために、可撓性フィンガー28の曲げを完了することができる。
【0022】
図2Aに示されように、代替具体例において、一対の可撓性フィンガー128が、可撓性フランジ112を形成するために、シリンジバレル14の対向する側部に位置付けられ得る。次いで、発明の可撓性フランジ12、112の連続作用を示す、図2A〜2Eへの参照がなされる。図2A〜2Eは、可撓性フランジ112の代替設計の機能を示すが、図1に示された設計によれば、可撓性フランジ12は、同じ態様で機能することが留意されるべきである。
【0023】
図2Aは、使用前の位置にある、フランジ112付のシリンジ組立体を示す。それは、シリンジ組立体が最も小さい占有面積を有し、その管理された貯蔵のために包装されている位置である。この形態において、可撓性フランジ12、112は、当初位置におけるシリンジバレル14に沿って配置されて示される。流体がシリンジバレルの内部に配置され、それに結合されたプランジャーロッド42を有するプランジャー44が、また、全体のシリンジ組立体10の占有面積を減少させるために、シリンジバレル14の内部に配置される。図2Bに示されるように、矢印Bの方向に可撓性フィンガー128への力を適用することで、第二部材24は、シリンジバレル14の近位端16に向けて、シリンジバレル14の周囲に沿って摺動し、可撓性フィンガー128が、曲げ個所36の周りで曲がり、シリンジバレル14に対して、外方で、垂直方向に延びることを可能にする。この力は、この力が、曲げ個所36と第二環状部分24との間で、可撓性フィンガー128の第二部分38に向かうのであれば、第二環状部分24または可撓性フィンガー128の遠位部分に適用され得る。図2B〜2Cに示されるように、矢印B方向への引き続く力の適用は、可撓性フィンガー128が曲げ個所36の周りで折り畳めることをもたらし、可撓性フィンガー128の第一部分37および第二部分38が、互いに接触し、シリンジバレル14の近位端16でフランジ40を形成することをもたらす。図1および2Aは、シリンジバレル14の対向端で、一対のフランジ40を創出し得る可撓性フランジを示すが、可撓性フィンガー配置は、単一のフランジのみが、シリンジバレル14の一側に創出され、材料および製造コストの減少をもたらすように提供され得ることが理解される。
【0024】
図2Dを参照すると、フランジ40の創出により、シリンジは使用のための準備が整い、プランジャー44(図2A〜2Cに示される。)に取り付けられたプランジャーロッド42は、サムプレス50に力を適用することで、バレル14の内部から引かれ得る。代わりに、ばね負荷された押圧ボタン(不図示)が、シリンジバレル14の内部から近位方向に、プランジャーロッド42を自動的に進めるために採用され得る。一つの設計によれば、このプランジャー44は、例えば定量プランジャー組立体と共に使用するための、保持用刻み、または、目印を含み得る。停止部材26は、フランジ112が、それへの力の適用によって、シリンジ10の使用中に、シリンジバレル14から引き抜かれることを防止する。サムプレス50の使用で、プランジャー44および連結されたプランジャーロッド42は、流体内容物をそこから排出するために、シリンジバレル14の内部に、再び進められ得る。
【0025】
別の形態において、プランジャー44は、流体内容物を汚染のない状態に保つために、シリンジバレル14の内部の一部と、液体不浸透性のシールを形成する。本発明の可撓性フランジ12は、どのタイプのシリンジ組立体10と、特に、貯蔵スペースが限定される管理された貯蔵環境に配置されるものと一緒に使用され得ることが、理解される。これらのタイプのシリンジは、予め充填されたシリンジ組立体、折り畳まれるプランジャーロッド設計、定量シリンジ、および、それに類するものを含む。
【0026】
次に、本発明の他の具体例による、摺動フランジ212を含むシリンジ組立体200を示す、図3A〜3Cに参照がなされる。フランジ部材230は、第一および第二端部232、234を結合する側壁部分238によって画定される細長い部材236、および、そこに画定される孔236を含み得る。上述したように、シリンジ組立体200は、どの公知のタイプのシリンジをも含み得、好ましくは、その中の内容物、または、もっと言えばシリンジ組立体自身の窃盗を防止するために、典型的には鍵のかけられた戸棚に貯蔵されている、予め充填された種類のものである。典型的に、シリンジ200は、近位端216および遠位端218を有するシリンジバレル214を含む。遠位端218は、ここに述べられたルアー組立体のような、出口開口220を含む。包装目的のために、この出口開口220は、当該技術分野においてよく知られているように、蓋またはキャップ(不図示)によって典型的に閉鎖される。シリンジ200は、また、それに結合されたプランジャーロッド224を有する、プランジャー222、当該技術分野において、また、よく知られている、プランジャーロッド224に結合されたサムプレス部材226を含む。プランジャーロッド224は、使用前の包装状態において、シリンジバレル214内に配置されるかまたは部分的に含まれ得、また、そうでないようにもし得る。
【0027】
摺動フランジ212は、第一端232および第二端234を有するフランジ部材230を含み得る。フランジ部材230を通して延びる孔236が、設けられる。この孔236は、シリンジ組立体200のシリンジバレル214が、そこを通して配置されることを可能にするように形成されている。一つの具体例において、孔236は、実質的に楕円であるが、矩形、円形、正方形、または、他のどの形状でもあり得る。図3A〜3Cに示されるように、孔236は、シリンジバレル214の周りにフランジ部材230を配置するために形成されており、その結果、使用前位置において、フランジ部材230の第一端232は、シリンジの近位端216に隣接して位置付けられ、および、フランジ部材230の第二端234は、シリンジ本体の遠位端218に向けて延びる。停止部材228が、シリンジバレル214の近位端216に設けられ得、近位方向において、摺動フランジ212がシリンジバレル214から分離されることを防止する。停止部材228は、いかなる好適な形状をも有し得、例えば、孔236の内部は、摺動フランジ212が停止部材228を超えて進められることのないように、停止部材228によって制限されるような大きさとされている。摺動フランジ212は、また、摺動フランジ212の第一端232の移動を制限する、同様な停止部材または他の制止機構によって、遠位方向で、シリンジバレル214から分離すること、または、突き出されることから制止され得る。例えば、寸法配列は、特に、シリンジバレル214の壁との締まり嵌めのための接触個所を提供する、孔236の楕円の短軸を備えて、摺動フランジ212の孔236とシリンジバレル214の壁との間の締まり嵌めを提供し得る。孔が矩形形状である具体例において、そのような干渉強制は、矩形開口の短軸を横切って提供され得る。ある具体例において、摺動フランジの第一端232は、シリンジバレル214に対して固定され、摺動フランジ212の第二端234は、制止されない。
【0028】
組立前の摺動フランジを示す図3A〜3Cおよび組立後の摺動フランジを示す図4A〜4Cの参照を継続すると、作動時に、力の適用は、フランジ部材230に近位方向に適用され、フランジ部材230の第二端234が、図3Cに矢印Cで示されるように、シリンジ200の近位端234に向けてシリンジバレル214に沿って摺動することをもたらす。アンダーカット部材の形状であるような錠止部材240が、シリンジバレル214の近位端216に設けられており、その結果、側壁部分238のようなフランジ部材230の一部が、錠止部材の所定の位置に嵌め込まれ、図4Cに示されるように、シリンジバレル214の長手方向軸Lに対して、実質的に垂直に延びるフランジ245を創出する。
【0029】
一つの具体例において、孔236は、使用準備位置において、側壁部分238が錠止部材240に適合することを可能にするために、また、当初位置において、摺動フランジ212がシリンジバレル214の周りに斜めに配置されることを可能にするために、実質的に楕円形の内部形状を有し得る。したがって、摺動フランジ212は、使用準備位置において、シリンジバレル214に対して実質的に垂直な方向に配置され得、当初位置において、シリンジバレル214に実質的に沿って配置され得、したがって、当初の包装位置においてシリンジ組立体200の占有面積を減少させる。別の具体例において、フランジにおける孔は、実質的に円形であり得、受容用のアンダーカットは実質的に楕円形であり得、その結果、アンダーカットの短軸は、フランジの円形孔との干渉点を提供し、フランジをシリンジバレルに対して所定の位置に錠止する。
【0030】
一つの形態によると、フランジ部材230および孔236は、フランジ部材230が、使用前の包装位置において、シリンジバレル214の遠位端218に向けて、ほぼ30度の角度で延び、錠止部材240による固定後は、シリンジバレル214に対して垂直の方向に延びるように設計され得る。フランジ部材230および孔236は、フランジ245の所望の最終形状に応じて、種々の形状および/または形態を有することができ、単一の端部材、複数の端部材を含み得ることが理解される。フランジ部材230は、どのよく知られた材料からも形成され得ることが、また、理解される。
【0031】
本発明の可撓性、および/または、摺動可能なフランジは、使用中に錠止され、それから、フランジがシリンジ本体に対して実質的に平行に延びて、針廃棄容器中における減少した占有面積をもたらす当初位置に解錠されるか解体され得ることが理解され得る。
【0032】
本発明の特定の具体例が詳細に説明されたが、それらの細部に対する種々の改良および変更が本開示の全体の教示を踏まえて発展させられ得ることが当業者によって理解されるであろう。したがって、説明された特定の配置は、添付された特許請求の範囲の、ならびに、その、いずれかの、および、全ての均等物の幅をも与えられるべき、本発明の範囲に関して、説明するだけであって、限定するものではないことが意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C