(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施例について説明する。
【0015】
図1は本発明が適用されるハイブリッド型作業機械の一例であるハイブリッド型油圧ショベルの側面図である。本発明が適用されるハイブリッド型作業機械としては、ハイブリッド型油圧ショベルに限られず、油圧ポンプをエンジンで駆動するものであれば、他のハイブリッド型作業機械にも本発明を適用することができる。
【0016】
図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0017】
図2は、
図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは
太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は
細い実線でそれぞれ示されている。
【0018】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。油圧ポンプ
(メインポンプ)14は可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。以下、可変容量式油圧ポンプ14を単に油圧ポンプ14と称することもある。
【0019】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。また、旋回機構2を駆動するための旋
回油圧モータ2Aもコントロールバルブ17に接続される。
【0020】
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器を含む蓄電系120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0021】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータを駆動制御することによる蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。コントローラ30は、蓄電器(キャパシタ)の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)に基づいて、昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これにより蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。
【0022】
昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバスに設けられたDCバス電圧検出部によって検出されるDCバス電圧値、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値、及び蓄電器電流検出部によって検出される蓄電器電流値に基づいて行われる。
【0023】
さらに、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ)のSOCが算出される。
【0024】
また、上述の説明では蓄電器としてキャパシタを例として示したが、キャパシタの代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
【0025】
図2に示すハイブリッド型油圧ショベルは旋回機構を電動にしたもので、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回
減速機24が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回
減速機24とで負荷駆動系が構成される。
【0026】
さらに、上述の構成に加え、ブーム回生を行なうために、ブームシリンダ7への油圧配管7Aの途中に油圧モータ310が設けても良い。この場合、油圧モータ310は発電機300に機械的に接続され、油圧モータ310が駆動されると、その回転力で発電機300が駆動される。発電機300はインバータ18Bを介して蓄電系
120に電気的に接続されている。
【0027】
上述のブーム回生機構において、ブーム4が下降すると、ブームシリンダ7から作動油がコントロールバルブ17に戻る。この戻り作動油により油圧モータ310が駆動され回転力(トルク)が発生する。この回転力は発電機300に伝達され、発電機300が駆動されて電力が発生する。発電機300で発生した電力はインバータ18Bを介して蓄電系120のDCバスに供給される。
【0028】
本発明は、上述のような構成のハイブリッド型油圧
ショベルにおいて、可変容量式油圧ポンプ14の傾転角比X(傾斜板の傾きを表すパラメータ)がなるべく大きくなるように、エンジン11の回転数を可変制御することを特徴とする。可変容量式油圧ポンプ14の傾転角比Xをなるべく大きくするには、エンジン11の回転数がなるべく低くなるように制御する。
【0029】
次に、本発明の第1実施例によるハイブリッド型作業機械における回転数可変制御アルゴリズムについて説明する。
図3は本発明の第1実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。この回転数可変制御アルゴリズムによる制御はコントローラ30により行なわれる。
【0030】
まず、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1において、油圧ポンプ14の吐出圧力Piとポンプ制限電流Iとを用いてポンプ馬力制御PQ線図からポンプ吐出量Vが求められる。求められたポンプ吐出量Vにポンプ回転速度(回転数)を乗じることで油圧ポンプ14の目標吐出流量Qが算出される。すなわち、要求されている油圧負荷から、油圧ポンプ14が出力すべき目標吐出流量Qが求められる。油圧ポンプ14の吐出圧力Piとポンプ制限電流Iとポンプ回転速度(回転数)とが、油圧負荷を表す値として用いられる。油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1において求められた目標吐出流量Qは、回転数演算ブロック40−2に供給される。
【0031】
図4は回転数演算ブロック40−2で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。回転数演算ブロック40−2では、供給された目標吐出流量Qを、最大傾転角比時のポンプ容積Vmaxで除算することで、ポンプ最大傾転角比時のポンプ回転数が求められる。すなわち、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値(最大傾転角比)Xmaxに設定したときに油圧ポンプ14が目標吐出流量Qを出力するために必要なポンプ回転数
Npが求められる。そして、求められたポンプ回転数
Npに、エンジン11の回転数と油圧ポンプ14の回転数との比である減速比nを乗算することで、エンジン回転数Ne1が求められる。すなわち、求められたエンジン回転数Ne1は、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大にしたときに、目標吐出流量Qを出力するために必要なポンプ回転数で油圧ポンプ14を駆動するために必要なエンジン回転数である。そして、求められたエンジン回転数Ne1が、エンジン11の許容回転数の範囲内であるかが判定される。エンジン回転数Ne1が許容回転数範囲内であった場合は、エンジン回転数Ne1はそのままエンジン回転数指令Neとして出力される。エンジン回転数Ne1が許容最小回転数より低い場合は、許容最小回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。エンジン回転数Ne1が許容最大回転数より高い場合は、許容最大回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。
【0032】
例えば、油圧負荷が小さい場合には、目標吐出流量Qが小さくなり、その結果エンジン回転数Ne1が小さくなりすぎて、そのままではエンジンがストールするおそれがある。そこで、エンジン回転数Ne1が許容最小回転数より低い場合は、上述のように許容最小回転数をエンジン回転数指令Neとして出力することで、エンジン回転数が低くなり過ぎないようにリミットをかけている。
【0033】
なお、ピストンストローク長をなるべく大きくする意味で、傾転角比Xを最大値Xmax(X=100%)にしたときのエンジン回転数を求めているが、なるべく大きくすることが重要であって、必ずしも最大傾転角比Xmax(X=100%)とする必要はない。例えば、傾転角比Xを90%以上(90〜100%)にしてもピストンストローク長を大きくして効率を改善する効果は得られる。すなわち、従来の制御で用いられる傾転角比よりも大きい傾転角比に設定することで、より長いピストンストローク長で油圧ポンプを駆動して効率を改善することができる。さらに、本発明では、ポンプ馬力制御PQ線図を利用してポンプ目標吐出流量Qが算出される。そして、算出されたポンプ目標吐出流量Qに基づいてエンジン回転数指令Neが算出される。このように、本発明では、ポンプ特性を考慮してエンジン回転数指令Neが算出されているので、油圧式建設機械と同じ動きが実現でき、オペレータに違和感を与えることを抑制できる。
【0034】
回転数演算ブロック40−2から出力されたエンジン回転数指令Neは、エンジン11の駆動を制御するエンジンコントロールユニット(ECM)11Aに供給される。エンジンコントロールユニット(ECM)11Aは、供給されたエンジン回転数指令Neで示される回転数となるようにエンジン11に燃料を供給する。また、回転数演算ブロック40−2から出力されたエンジン回転数指令Neは、アシスト出力演算ブロック40−3にも供給される。
【0035】
アシスト出力演算ブロック40−3には、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1において求められた目標吐出流量Qも供給される。
図5はアシスト出力演算ブロック40−3で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。アシスト出力演算ブロック40−3では、目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppが求められる。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。
【0036】
また、アシスト出力演算ブロック40−3では、回転数演算ブロック40−2から供給されたエンジン回転数指令Neからエンジン目標出力Pen2が求められる。そして、上述のように求めた油圧負荷要求出力Ppからエンジン目標出力Pen2を減算することで、エンジン補償アシスト量Pa1が求められる。エンジン補償アシスト量Pa1は、油圧負荷要求出力Ppがエンジン目標出力Pen2より大きいときに正の値となり、これはアシストモータである電動発電機12のアシスト量に相当する。アシスト出力演算ブロック40−3から出力されたエンジン補償アシスト量Pa1は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0037】
ここで、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、旋回用電動機21の電気負荷要求出力Pelと、蓄電系120の蓄電器(キャパシタ)の充電率(SOC)とから、蓄電器補償アシスト量Pa2が求められる。
図6は要求アシスト出力演算ブロック40−4で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。蓄電系120の蓄電器(キャパシタ)の充電率(SOC)から、蓄電器が現在出力できる蓄電器目標出力Pcが求められる。そして、蓄電器目標出力Pcから電気負荷要求出力Pelを減算することで、蓄電器補償アシスト量Pa2が求められる。すなわち、蓄電器補償アシスト量Pa2は、蓄電器が現在出力できる電力から、電気負荷である旋回用電動機
21が必要としている電力を減算して求められた電力であり、アシストモータとしての電動発電機12に対して供給できる最大電力に相当する。要求アシスト出力演算ブロック40−4から出力された蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0038】
以上のように、アシスト指令決定ブロック40−5には、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とが供給される。アシスト指令決定ブロック40−5では、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とのうち大きいほうが選択される。選択されたエンジン補償アシスト量Pa1又は蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシストモータとしての電動発電機12への出力指令Paとして電動発電機12に出力される。
【0039】
なお、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合は、作業要素としての電気負荷は無く、電気負荷要求出力Pelはゼロとなる。したがって、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、蓄電器の充電率SOCから求められた蓄電器目標出力Pcがそのまま蓄電器補償アシスト量Pa2として出力される。また、ブーム回生を行なう場合には、電気負荷要求出力Pelには、ブーム回生用の発電機
300で発電される発電電力が含まれる。
【0040】
以上のように、本実施例による回転数可変制御アルゴリズムによれば、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値Xmaxとしたときのエンジン回転数Ne1に基づいてエンジン回転数指令Neが決定される。したがって、傾転角比Xが大きい状態で油圧ポンプ14を駆動することができ、油圧ポンプの効率がよい状態を維持することができる。そして、そのようにして決定されたエンジン回転数指令Neと蓄電器の充電率SOCとから、アシストモータとしての電動発電機12のアシスト量が決定されるので、電動発電機12が適切にエンジンアシストを行なうことができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
図7は本発明の第2実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。この回転数可変制御アルゴリズムによる制御はコントローラ30により行なわれる。
図7において、
図3に示す構成部分と同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0042】
本実施例による回転数可変制御アルゴリズムでは、エンジン11が出力すべき動力として要求エンジン出力Penを求めてから、要求エンジン出力Penから求められるエンジン回転数Ne2と、目標吐出流量Qから求められるエンジン回転数Ne1とのうちいずれか大きい方を選択し、選択したエンジン回転数をエンジン回転数指令Neに設定する。
【0043】
したがって、本実施例では、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1と回転
数演算ブロック40−2との間に、要求エンジン出力演算ブロック40−6が設けられる。
図8は要求エンジン出力演算ブロック40−6で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図8には、
要求アシスト出力演算ブロック40−4で行なわれる処理の演算アルゴリズムも示されているが、
要求アシスト出力演算ブロック40−4で行なわれる処理の演算アルゴリズムについては、上述の第1実施例で説明したものと同様であり、その説明は省略する。
【0044】
要求エンジン出力演算ブロック40−6では、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1から供給される目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppが求められる。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。ここで、求められた油圧負荷要求出力Ppから、要求アシスト出力演算ブロック
40−4で求められた蓄電器補償アシスト量Pa2が減算され、要求エンジン出力Penとして回転
数演算ブロック40−2に出力される。油圧負荷要求出力Ppから蓄電器補償アシスト量Pa2が減算されることで、エンジン11が出力すべき要求エンジン出力Penを精度よく求めることができる。
【0045】
回転数演算ブロック40−2での処理は、上述の第1実施例での処理とは異なる。本実施例では、要求エンジン出力Penは要求エンジン出力演算ブロック40−6で求められているので、回転数演算ブロック40−2では、要求エンジン出力Penからエンジン回転数指令Neを決定する処理が行なわれる。
【0046】
図9は第2実施例における回転数演算ブロック40−2で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。回転数演算ブロック40−2では、上述の第1実施例と同様に、目標吐出流量Qからエンジン回転
数Ne1が求められる。求められたエンジン回転
数Ne1は、最大値選択器に供給される。一方、要求エンジン出力演算ブロック40−6から供給された要求エンジン出力Penから、エンジン出力とエンジン最小回転数との関係に基づいて、エンジン回転数
Ne2が求められる。すなわち、要求エンジン出力Penを出力するために必要なエンジンの最小回転数がエンジン回転数Ne2となる。エンジン回転数Ne2は、最大値選択器に供給される。最大値選択器は、目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2のうち、大きいほうを選択する。
【0047】
目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2のうち、大きいほうを選択する理由は以下のとおりである。
【0048】
すなわち、目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1は、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値(最大傾転角比)Xmaxとしたときに目標吐出流量Qを得ることのできるエンジン回転数であって、エンジン11の出力特性は考慮されていない。ある回転数のときの最大出力はエンジン11の出力特性により決まる。エンジン11の要求出力は油圧ポンプ14の吐出流量と吐出圧力の積に相当するから、要求出力が同じ場合であっても、圧力が低くて流量が大きい場合や圧力が高くて流量が小さい場合など様々な条件となる。したがって、傾転角比が同じ条件下では、圧力が低くて流量が大きい場合、要求出力を得るための回転数は高くなる。一方、圧力が高くて流量が小さい場合は、要求出力を得るための回転数は低くなる。
【0049】
要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2は、油圧ポンプ14の傾転角比Xは考慮されておらず、単にエンジン11に要求される出力を得ることのできる回転数であり、エンジン11がある回転数のときに出すことのできる最大出力となる。
【0050】
したがって、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2とは常に同じとなるわけではない。油圧ポンプ14の吐出流量と吐出圧力の関係から、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1のほうが、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2よりも低くなることがあり得る。このような場合に、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1をエンジン回転数指令Neとして設定してしまうと、エンジン回転数が低すぎてエンジン11が要求エンジン出力Penを出せないこととなる。
【0051】
そこで、本実施例では、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1と、
要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2とを比較し、大きいほうを採用することで、その回転数でエンジン11が必ず要求出力を出せるようにしている。
【0052】
以上のようにして選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2は、エンジン11の許容回転数の範囲内であるかが判定される。選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2が許容回転数範囲内であった場合は、選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2はそのままエンジン回転数指令Neとして出力される。選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2が許容最小回転数より低い場合は、許容最小回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2が許容最大回転数より高い場合は、許容最大回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。
【0053】
回転数演算ブロック40−2から出力されたエンジン回転数指令Neは、アシスト出力演算ブロック40−3に供給される。アシスト出力演算ブロック40−3では、第1実施例と同様に、目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppを求める。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。
【0054】
また、アシスト出力演算ブロック40−3では、回転数演算ブロック40−2から供給されたエンジン回転数指令Neからエンジン目標出力
Pen2が求められる。そして、上述のように求めた油圧負荷要求出力Ppからエンジン目標出力
Pen2を減算することで、エンジン補償アシスト量Pa1が求められる。エンジン補償アシスト量Pa1は、油圧負荷要求出力Ppがエンジン目標出力
Pen2より大きいときに正の値となり、これはアシストモータである電動発電機12のアシスト量に相当する。アシスト出力演算ブロック40−3から出力されたエンジン補償アシスト量Pa1は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0055】
ここで、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、上述の第1実施例と同様に、旋回用電動機21の電気負荷要求出力Pelと、蓄電系120の蓄電器(キャパシタ)の充電率(SOC)とから、蓄電器補償アシスト量Pa2が求められる。
要求アシスト出力演算ブロック40−4から出力された蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0056】
以上のように、アシスト指令決定ブロック40−5には、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とが供給される。アシスト指令決定ブロック40−5では、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とのうち大きいほうが選択される。選択されたエンジン補償アシスト量Pa1又は蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシストモータとしての電動発電機12への出力指令Paとして電動発電機12に出力される。
【0057】
なお、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合は、作業要素としての電気負荷は無く、電気負荷要求出力Pelはゼロとなる。したがって、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、蓄電器の充電率SOCから求められた蓄電器目標出力Pcがそのまま蓄電器補償アシスト量Pa2として出力される。
【0058】
以上のように、本実施例による回転数可変制御アルゴリズムによれば、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値Xmaxとしたときのエンジン回転数Ne1に基づいてエンジン回転数指令Neが決定される。したがって、傾転角比Xが大きい状態で油圧ポンプ14を駆動することができ、油圧ポンプの効率がよい状態を維持することができる。そして、そのようにして決定されたエンジン回転数指令Neと蓄電器の充電率SOCとから、アシストモータとしての電動発電機12のアシスト量を決定するので、電動発電機12が適切にエンジンアシストを行なうことができる。また、エンジン回転数指令Neを決定する際に、要求エンジン出力
Penを考慮するので、エンジン回転数指令Neをより適切に設定することができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施例について説明する。本発明の第3実施例による回転数可変制御アルゴリズムは基本的に
図7に示す回転数可変制御アルゴリズムと同じであるが、回転数演算ブロック40−2における処理が異なる。
【0060】
本実施例による回転数可変制御アルゴリズムでは、エンジン11が出力すべき動力として要求エンジン出力Penを求めてから、要求エンジン出力Penから求められるエンジン回転数Ne2と、目標吐出流量Qから求められるエンジン回転数Ne1とのうちいずれか大きい方を選択し、選択したエンジン回転数をエンジン回転数指令Neに設定する。これは上述の第2実施例による回転数可変制御アルゴリズムの回転数演算ブロック40−2での処理と同じであるが、本実施例では、目標吐出流量Qからエンジン回転数Ne1を求める際に、油圧ポンプ14のポンプ損失を考慮する点が異なる。
【0061】
すなわち、上述の第2実施例において、ポンプ最大傾転角比時のポンプ回転数Npを求める際に、最大傾転角比時の容積Vmaxを用いているが、容積Vmaxは最大傾転角比Xmaxとしたときのピストンストローク長から得られる理論値であり、実際には作動油の圧縮性や漏れなどに起因した損失が発生する。したがって、最大傾転角比Xmaxとしたときに実際にシリンダから吐出される作動油の体積は、理論容積Vmaxからポンプ損失分を減算したものとなる。そこで、本実施例では、理論容積Vmaxから損失分を減算した値をポンプ容積Vとして用いることで、ポンプ損失分を考慮してより精度高くエンジン回転数指令Ne1を求めている。
【0062】
図10は第3実施例における回転数演算ブロック40−2で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。回転数演算ブロック40−2では、上述の第2実施例と同様に、目標吐出流量Qから求められたエンジン回転
数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2のうち、大きいほうが選択されてエンジン回転数
指令Neとして出力される。しかし、目標吐出流量Qからエンジン回転
数Ne1を求める際に、ポンプ損失分を引いたポンプ容積Vをポンプ損失特性演算(V=Vmax−W(X=1,P))により求め、目標吐出流量Qを、求めたポンプ容積Vで除算することで、ポンプ最大傾転角比時回転数Npを算出する。
【0063】
ポンプ損失は、吐出圧力Piと傾転角比X(すなわち、ピストンストローク長)とに依存するため、吐出圧力Piと傾転角比Xの関数として求められる。ここで、傾転角比Xは変数であるが、最大傾転角比Xmax=1に固定することとする。最大傾転角比
Xmaxの時にはピストンストローク長が最大であり、ピストンストローク長に依存する損失分も最大となるためであり、最大の損失分を見込んで損失を算出することとしている。上述のポンプ損失特性演算(V=Vmax−W(X=1,P))のうち、Wがポンプ損失であり、X=1が最大傾転角比
Xmaxに相当し、Pが吐出圧力Piに相当する。
【0064】
以上のように、本実施例による回転数可変制御アルゴリズムによれば、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値Xmaxとし、且つポンプ損失を考慮したときのエンジン回転数Ne1に基づいてエンジン回転数指令Neが決定される。したがって、傾転角比Xが大きい状態で油圧ポンプ14を駆動することができ、油圧ポンプ
14は効率よく運転している状態を維持することができる。そして、そのようにして決定されたエンジン回転数指令Neと蓄電器の充電率SOCとから、アシストモータとしての電動発電機12のアシスト量が決定されるので、電動発電機12が適切にエンジンアシストを行なうことができる。また、エンジン回転数指令Neを決定する際に、要求エンジン出力
Penが考慮されるので、エンジン回転数指令Neをより適切に設定することができる。
【0065】
なお、上述の実施例では旋回機構2が電動式であったが、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合がある。
図11は
図2に示すハイブリッド型油圧ショベルの旋回機構を油圧駆動式とした場合の駆動系の構成を示すブロック図である。
図11に示すハイブリッド型油圧ショベルでは、旋回用電動機21の代わりに、旋回油圧モータ2Aがコントロールバルブ17に接続され、旋回機構2は旋回油圧モータ2Aにより駆動される。このような、ハイブリッド型油圧ショベルであっても、上述のように、要求アシスト出力演算ブロック40−4において蓄電器の充電率SOCから求められた蓄電器目標出力Pcをそのまま蓄電器補償アシスト量Pa2として出力することで、上述の回転数可変制御アルゴリズムによりエンジン回転数及び電動発電機(アシストモータ)のアシスト量を制御することができる。
【0066】
本発明は具体的に開示された上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形例及び改良例がなされるであろう。
【0067】
本出願は、2010年10月6日出願の日本国特許出願第2010−226912号、に基づくものであり、その全内容は本出願に援用される。