特許第5665874号(P5665874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5665874ハイブリッド型作業機械及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665874
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ハイブリッド型作業機械及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20150115BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20150115BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20150115BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   E02F9/20 Z
   F02D29/00 B
   F02D29/04 H
   F02D29/06 E
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-537749(P2012-537749)
(86)(22)【出願日】2011年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2011073021
(87)【国際公開番号】WO2012046788
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2013年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2010-226912(P2010-226912)
(32)【優先日】2010年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 宏治
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−116708(JP,A)
【文献】 特開平07−119506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
F02D 29/00
F02D 29/04
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
該エンジンに連結された電動発電機と、
前記エンジンの出力により回転駆動される可変容量式油圧ポンプと、
前記エンジンの回転数及び前記可変容量式油圧ポンプを制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記可変容量式油圧ポンプの油圧負荷に基づいて前記可変容量式油圧ポンプの目標回転数を求め、該目標回転数を用いて前記エンジンを回転数制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記制御部は、
前記目標回転数に基づいて前記エンジンの目標出力を求め、
前記エンジンを回転数制御するとともに、前記エンジンの出力と前記油圧負荷とから前記電動発電機の出力を求めることを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記制御部は、前記可変容量式油圧ポンプの傾転角比が最大となる条件下で、前記可変容量式油圧ポンプの吐出流量が目標流量となるように、前記目標回転数を算出することを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項4】
請求項3記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記制御部は、前記可変容量式油圧ポンプの前記目標回転数と、要求エンジン出力より求められる前記可変容量式油圧ポンプの最小回転数とを比較し、いずれか大きいほうを用いてエンジン制御を行なうことを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項5】
請求項4記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記要求エンジン出力は、前記油圧負荷と電気負荷より算出されるハイブリッド型作業機械。
【請求項6】
請求項1又は2記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記制御部は、前記可変容量式油圧ポンプの最大容積に基づいて、前記可変容量式油圧ポンプの吐出流量が目標流量となるように、前記目標回転数を算出することを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項7】
請求項1又は2記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記目標回転数には前記可変容量式油圧ポンプが回転する際に生じる損失が含まれていることを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項8】
請求項1記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記油圧負荷は推定演算により求められることを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項9】
エンジンと、
該エンジンに連結された電動発電機と、
前記エンジンの出力により回転駆動される可変容量式油圧ポンプと、
前記エンジンの回転数及び前記可変容量式油圧ポンプを制御する制御部と
を有し、
記制御部は、
前記エンジンの出力と前記可変容量式油圧ポンプの油圧負荷とから前記電動発電機のエンジン補償アシスト出力を算出し、
前記電動発電機の発電電力により動作する電気負荷より前記電動発電機の蓄電器補償アシスト出力を算出し、
前記エンジン補償アシスト出力と前記蓄電器補償アシスト出力とのうち大きいほうに基づいて前記電動発電機を制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項10】
請求項9記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記油圧負荷は推定演算により求められることを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項11】
請求項9記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記制御部は、
前記油圧負荷に基づいて前記可変容量式油圧ポンプの目標回転数を求め、
該目標回転数を用いて前記エンジンを回転数制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項12】
請求項11記載のハイブリッド型作業機械であって、
前記制御部は、前記可変容量式油圧ポンプの傾転角比が最大となる条件下で、前記可変容量式油圧ポンプの吐出流量が目標流量となるように、前記目標回転数を算出することを特徴とするハイブリッド型作業機械。
【請求項13】
エンジンと、
該エンジンに連結された電動発電機と、
前記エンジンの出力により回転駆動される可変容量式油圧ポンプと
を有するハイブリッド型作業機械の制御方法であって、
前記可変容量式油圧ポンプの油圧負荷に基づいて前記可変容量式油圧ポンプの目標回転数を求め、
該目標回転数を用いて前記エンジンを回転数制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械の制御方法。
【請求項14】
請求項13記載のハイブリッド型作業機械の制御方法であって、
前記目標回転数に基づいて前記エンジンの目標出力を求め、
前記エンジンを回転数制御するとともに、前記エンジンの出力と前記油圧負荷とから前記電動発電機の出力を求めることを特徴とするハイブリッド型作業機械の制御方法。
【請求項15】
エンジンと、
該エンジンに連結された電動発電機と、
前記エンジンの出力により回転駆動される可変容量式油圧ポンプと
を有するハイブリッド型作業機械の制御方法であって、
記エンジンの出力と前記可変容量式油圧ポンプの油圧負荷とから前記電動発電機のエンジン補償アシスト出力を算出し、
前記電動発電機の発電電力により動作する電気負荷より前記電動発電機の蓄電器補償アシスト出力を算出し、
前記エンジン補償アシスト出力と前記蓄電器補償アシスト出力とのうち大きいほうに基づいて前記電動発電機を制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械の制御方法。
【請求項16】
請求項15記載のハイブリッド型作業機械の制御方法であって、
前記油圧負荷を推定演算により求めることを特徴とするハイブリッド型作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド型作業機械及びその制御方法に係り、特にエンジンの出力で流量可変式油圧ポンプを駆動するハイブリッド型作業機械及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド型作業機械において、作業要素を駆動するための油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に供給する油圧は、エンジンを駆動源とする油圧ポンプにより発生することが多い。この場合、油圧アクチュエータの出力は主にエンジンの出力によって決まる。
【0003】
一般的なハイブリット型作業機械では、エンジンの回転数が常に一定となるようにエンジンの駆動が制御されている。例えばハイブリット型油圧ショベルでは、アームやバケット等を揺動駆動する際の低負荷モード(低負荷状態)での運転中は、エンジントルクは小さい。したがって、低負荷モードでは、エンジン回転数を一定にしたままでエンジントルクを上昇させて余剰トルクを発生させる。この余剰トルクで発電機を駆動して発電し、発電電力がバッテリに充電される。一方、油圧ポンプにおいて必要な駆動トルクがエンジンの定格出力よりも大きい高負荷モード(高負荷状態)では、エンジン回転数を一定にしたままでエンジントルクを上昇させ、且つバッテリからの電力で電動機を駆動してエンジンの出力に電動機の出力を加える(アシストする)ことにより必要な駆動トルクを得ている。
【0004】
上述のように、エンジン回転数を一定に維持しながらエンジン出力を変更すると、エンジン出力の変化に伴ってエンジン効率が変化するため、エンジンの燃料消費率も変化する。したがって、エンジン回転数を一定に維持しながらエンジン出力を変更する場合、常に燃料消費率の良い回転数でエンジンを運転しているとは言えない。
【0005】
そこで、エンジンの負荷状況によってエンジン回転数を可変にしてエンジンを効率的に駆動し、低負荷時でも高負荷時でも燃料消費率を向上することができるハイブリッド型作業機械が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2009/157511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に開示されたハイブリッド型油圧ショベルでは、エンジンの効率を考慮してエンジン回転数を可変にしているが、エンジンで駆動する油圧ポンプの効率は考慮されていない。
【0008】
ここで、油圧ポンプの効率を考慮した場合、作動油を同じ流量で吐出するのであれば、可変容量式油圧ポンプの傾転角比を小さくして回転数を高くした場合のほうが、傾転角比を大きくして回転数を低くした場合よりも、油圧ポンプの効率は低くなる。すなわち、一般的にピストン式の油圧ポンプの場合、ピストンのストロークが小さくて高速で往復動する場合にピストンの摩擦損失及び動力伝達機構の各部の摩擦損失が大きくなり、その結果ポンプ効率が低くなる。したがって、傾転角比が小さいほうがポンプ効率が低くなる。
【0009】
そこで、同じ流量であればできるだけエンジン回転数を下げて傾転角比を大きくすることで、油圧ポンプの効率をより高い状態に維持することのできるハイブリッド型作業機械及びその制御方法の開発が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、エンジンと、該エンジンに連結された電動発電機と、
前記エンジンの出力により回転駆動される可変容量式油圧ポンプと、前記エンジンの回転数及び前記可変容量式油圧ポンプを制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記可変容量式油圧ポンプの油圧負荷に基づいて前記可変容量式油圧ポンプの目標回転数を求め、該目標回転数を用いて前記エンジンを回転数制御することを特徴とするハイブリッド型作業機械が提供される。
【発明の効果】
【0011】
上述の発明によれば、エンジン回転数を出来る限りを下げて傾転角比を大きくすることで、可変容量式油圧ポンプの効率をより高い状態に維持することができる。
【0012】
本発明の目的、利点及び効果は、添付の図を参照しながら以下の詳細な説明を読むことでより一層明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が適用されるハイブリッド型作業機械の一例であるハイブリッド型油圧ショベルの側面図である。
図2図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。
図4】回転数演算ブロックで行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図5】アシスト出力演算ブロックで行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図6要求アシスト出力演算ブロックで行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図7】本発明の第2実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。
図8】要求エンジン出力演算ブロックで行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図9】第2実施例における回転数演算ブロックで行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図10】第3実施例における回転数演算ブロックで行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。
図11図2に示すハイブリッド型油圧ショベルの旋回機構を油圧駆動式とした場合の駆動系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施例について説明する。
【0015】
図1は本発明が適用されるハイブリッド型作業機械の一例であるハイブリッド型油圧ショベルの側面図である。本発明が適用されるハイブリッド型作業機械としては、ハイブリッド型油圧ショベルに限られず、油圧ポンプをエンジンで駆動するものであれば、他のハイブリッド型作業機械にも本発明を適用することができる。
【0016】
図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端に、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にバケット6が取り付けられている。ブーム4,アーム5及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0017】
図2は、図1に示すハイブリッド型油圧ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
【0018】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。油圧ポンプ(メインポンプ)14は可変容量式油圧ポンプであり、斜板の角度(傾転角)を制御することでピストンのストローク長を調整し、吐出流量を制御することができる。以下、可変容量式油圧ポンプ14を単に油圧ポンプ14と称することもある。
【0019】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。また、旋回機構2を駆動するための旋回油圧モータ2Aもコントロールバルブ17に接続される。
【0020】
電動発電機12には、インバータ18Aを介して、蓄電器を含む蓄電系120が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0021】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータを駆動制御することによる蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。コントローラ30は、蓄電器(キャパシタ)の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)に基づいて、昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これにより蓄電器(キャパシタ)の充放電制御を行う。
【0022】
昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバスに設けられたDCバス電圧検出部によって検出されるDCバス電圧値、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値、及び蓄電器電流検出部によって検出される蓄電器電流値に基づいて行われる。
【0023】
さらに、蓄電器電圧検出部によって検出される蓄電器電圧値に基づいて、蓄電器(キャパシタ)のSOCが算出される。
【0024】
また、上述の説明では蓄電器としてキャパシタを例として示したが、キャパシタの代わりに、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
【0025】
図2に示すハイブリッド型油圧ショベルは旋回機構を電動にしたもので、旋回機構2を駆動するために旋回用電動機21が設けられている。電動作業要素としての旋回用電動機21は、インバータ20を介して蓄電系120に接続されている。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。旋回用電動機21と、インバータ20と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とで負荷駆動系が構成される。
【0026】
さらに、上述の構成に加え、ブーム回生を行なうために、ブームシリンダ7への油圧配管7Aの途中に油圧モータ310が設けても良い。この場合、油圧モータ310は発電機300に機械的に接続され、油圧モータ310が駆動されると、その回転力で発電機300が駆動される。発電機300はインバータ18Bを介して蓄電系120に電気的に接続されている。
【0027】
上述のブーム回生機構において、ブーム4が下降すると、ブームシリンダ7から作動油がコントロールバルブ17に戻る。この戻り作動油により油圧モータ310が駆動され回転力(トルク)が発生する。この回転力は発電機300に伝達され、発電機300が駆動されて電力が発生する。発電機300で発生した電力はインバータ18Bを介して蓄電系120のDCバスに供給される。
【0028】
本発明は、上述のような構成のハイブリッド型油圧ショベルにおいて、可変容量式油圧ポンプ14の傾転角比X(傾斜板の傾きを表すパラメータ)がなるべく大きくなるように、エンジン11の回転数を可変制御することを特徴とする。可変容量式油圧ポンプ14の傾転角比Xをなるべく大きくするには、エンジン11の回転数がなるべく低くなるように制御する。
【0029】
次に、本発明の第1実施例によるハイブリッド型作業機械における回転数可変制御アルゴリズムについて説明する。図3は本発明の第1実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。この回転数可変制御アルゴリズムによる制御はコントローラ30により行なわれる。
【0030】
まず、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1において、油圧ポンプ14の吐出圧力Piとポンプ制限電流Iとを用いてポンプ馬力制御PQ線図からポンプ吐出量Vが求められる。求められたポンプ吐出量Vにポンプ回転速度(回転数)を乗じることで油圧ポンプ14の目標吐出流量Qが算出される。すなわち、要求されている油圧負荷から、油圧ポンプ14が出力すべき目標吐出流量Qが求められる。油圧ポンプ14の吐出圧力Piとポンプ制限電流Iとポンプ回転速度(回転数)とが、油圧負荷を表す値として用いられる。油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1において求められた目標吐出流量Qは、回転数演算ブロック40−2に供給される。
【0031】
図4は回転数演算ブロック40−2で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。回転数演算ブロック40−2では、供給された目標吐出流量Qを、最大傾転角比時のポンプ容積Vmaxで除算することで、ポンプ最大傾転角比時のポンプ回転数が求められる。すなわち、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値(最大傾転角比)Xmaxに設定したときに油圧ポンプ14が目標吐出流量Qを出力するために必要なポンプ回転数Npが求められる。そして、求められたポンプ回転数Npに、エンジン11の回転数と油圧ポンプ14の回転数との比である減速比nを乗算することで、エンジン回転数Ne1が求められる。すなわち、求められたエンジン回転数Ne1は、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大にしたときに、目標吐出流量Qを出力するために必要なポンプ回転数で油圧ポンプ14を駆動するために必要なエンジン回転数である。そして、求められたエンジン回転数Ne1が、エンジン11の許容回転数の範囲内であるかが判定される。エンジン回転数Ne1が許容回転数範囲内であった場合は、エンジン回転数Ne1はそのままエンジン回転数指令Neとして出力される。エンジン回転数Ne1が許容最小回転数より低い場合は、許容最小回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。エンジン回転数Ne1が許容最大回転数より高い場合は、許容最大回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。
【0032】
例えば、油圧負荷が小さい場合には、目標吐出流量Qが小さくなり、その結果エンジン回転数Ne1が小さくなりすぎて、そのままではエンジンがストールするおそれがある。そこで、エンジン回転数Ne1が許容最小回転数より低い場合は、上述のように許容最小回転数をエンジン回転数指令Neとして出力することで、エンジン回転数が低くなり過ぎないようにリミットをかけている。
【0033】
なお、ピストンストローク長をなるべく大きくする意味で、傾転角比Xを最大値Xmax(X=100%)にしたときのエンジン回転数を求めているが、なるべく大きくすることが重要であって、必ずしも最大傾転角比Xmax(X=100%)とする必要はない。例えば、傾転角比Xを90%以上(90〜100%)にしてもピストンストローク長を大きくして効率を改善する効果は得られる。すなわち、従来の制御で用いられる傾転角比よりも大きい傾転角比に設定することで、より長いピストンストローク長で油圧ポンプを駆動して効率を改善することができる。さらに、本発明では、ポンプ馬力制御PQ線図を利用してポンプ目標吐出流量Qが算出される。そして、算出されたポンプ目標吐出流量Qに基づいてエンジン回転数指令Neが算出される。このように、本発明では、ポンプ特性を考慮してエンジン回転数指令Neが算出されているので、油圧式建設機械と同じ動きが実現でき、オペレータに違和感を与えることを抑制できる。
【0034】
回転数演算ブロック40−2から出力されたエンジン回転数指令Neは、エンジン11の駆動を制御するエンジンコントロールユニット(ECM)11Aに供給される。エンジンコントロールユニット(ECM)11Aは、供給されたエンジン回転数指令Neで示される回転数となるようにエンジン11に燃料を供給する。また、回転数演算ブロック40−2から出力されたエンジン回転数指令Neは、アシスト出力演算ブロック40−3にも供給される。
【0035】
アシスト出力演算ブロック40−3には、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1において求められた目標吐出流量Qも供給される。図5はアシスト出力演算ブロック40−3で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。アシスト出力演算ブロック40−3では、目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppが求められる。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。
【0036】
また、アシスト出力演算ブロック40−3では、回転数演算ブロック40−2から供給されたエンジン回転数指令Neからエンジン目標出力Pen2が求められる。そして、上述のように求めた油圧負荷要求出力Ppからエンジン目標出力Pen2を減算することで、エンジン補償アシスト量Pa1が求められる。エンジン補償アシスト量Pa1は、油圧負荷要求出力Ppがエンジン目標出力Pen2より大きいときに正の値となり、これはアシストモータである電動発電機12のアシスト量に相当する。アシスト出力演算ブロック40−3から出力されたエンジン補償アシスト量Pa1は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0037】
ここで、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、旋回用電動機21の電気負荷要求出力Pelと、蓄電系120の蓄電器(キャパシタ)の充電率(SOC)とから、蓄電器補償アシスト量Pa2が求められる。図6は要求アシスト出力演算ブロック40−4で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。蓄電系120の蓄電器(キャパシタ)の充電率(SOC)から、蓄電器が現在出力できる蓄電器目標出力Pcが求められる。そして、蓄電器目標出力Pcから電気負荷要求出力Pelを減算することで、蓄電器補償アシスト量Pa2が求められる。すなわち、蓄電器補償アシスト量Pa2は、蓄電器が現在出力できる電力から、電気負荷である旋回用電動機21が必要としている電力を減算して求められた電力であり、アシストモータとしての電動発電機12に対して供給できる最大電力に相当する。要求アシスト出力演算ブロック40−4から出力された蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0038】
以上のように、アシスト指令決定ブロック40−5には、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とが供給される。アシスト指令決定ブロック40−5では、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とのうち大きいほうが選択される。選択されたエンジン補償アシスト量Pa1又は蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシストモータとしての電動発電機12への出力指令Paとして電動発電機12に出力される。
【0039】
なお、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合は、作業要素としての電気負荷は無く、電気負荷要求出力Pelはゼロとなる。したがって、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、蓄電器の充電率SOCから求められた蓄電器目標出力Pcがそのまま蓄電器補償アシスト量Pa2として出力される。また、ブーム回生を行なう場合には、電気負荷要求出力Pelには、ブーム回生用の発電機300で発電される発電電力が含まれる。
【0040】
以上のように、本実施例による回転数可変制御アルゴリズムによれば、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値Xmaxとしたときのエンジン回転数Ne1に基づいてエンジン回転数指令Neが決定される。したがって、傾転角比Xが大きい状態で油圧ポンプ14を駆動することができ、油圧ポンプの効率がよい状態を維持することができる。そして、そのようにして決定されたエンジン回転数指令Neと蓄電器の充電率SOCとから、アシストモータとしての電動発電機12のアシスト量が決定されるので、電動発電機12が適切にエンジンアシストを行なうことができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施例について説明する。図7は本発明の第2実施例による回転数可変制御アルゴリズムの制御機能ブロック図である。この回転数可変制御アルゴリズムによる制御はコントローラ30により行なわれる。図7において、図3に示す構成部分と同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0042】
本実施例による回転数可変制御アルゴリズムでは、エンジン11が出力すべき動力として要求エンジン出力Penを求めてから、要求エンジン出力Penから求められるエンジン回転数Ne2と、目標吐出流量Qから求められるエンジン回転数Ne1とのうちいずれか大きい方を選択し、選択したエンジン回転数をエンジン回転数指令Neに設定する。
【0043】
したがって、本実施例では、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1と回転数演算ブロック40−2との間に、要求エンジン出力演算ブロック40−6が設けられる。図8は要求エンジン出力演算ブロック40−6で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。図8には、要求アシスト出力演算ブロック40−4で行なわれる処理の演算アルゴリズムも示されているが、要求アシスト出力演算ブロック40−4で行なわれる処理の演算アルゴリズムについては、上述の第1実施例で説明したものと同様であり、その説明は省略する。
【0044】
要求エンジン出力演算ブロック40−6では、油圧ポンプ要求負荷推定ブロック40−1から供給される目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppが求められる。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。ここで、求められた油圧負荷要求出力Ppから、要求アシスト出力演算ブロック40−4で求められた蓄電器補償アシスト量Pa2が減算され、要求エンジン出力Penとして回転数演算ブロック40−2に出力される。油圧負荷要求出力Ppから蓄電器補償アシスト量Pa2が減算されることで、エンジン11が出力すべき要求エンジン出力Penを精度よく求めることができる。
【0045】
回転数演算ブロック40−2での処理は、上述の第1実施例での処理とは異なる。本実施例では、要求エンジン出力Penは要求エンジン出力演算ブロック40−6で求められているので、回転数演算ブロック40−2では、要求エンジン出力Penからエンジン回転数指令Neを決定する処理が行なわれる。
【0046】
図9は第2実施例における回転数演算ブロック40−2で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。回転数演算ブロック40−2では、上述の第1実施例と同様に、目標吐出流量Qからエンジン回転数Ne1が求められる。求められたエンジン回転数Ne1は、最大値選択器に供給される。一方、要求エンジン出力演算ブロック40−6から供給された要求エンジン出力Penから、エンジン出力とエンジン最小回転数との関係に基づいて、エンジン回転数Ne2が求められる。すなわち、要求エンジン出力Penを出力するために必要なエンジンの最小回転数がエンジン回転数Ne2となる。エンジン回転数Ne2は、最大値選択器に供給される。最大値選択器は、目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2のうち、大きいほうを選択する。
【0047】
目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2のうち、大きいほうを選択する理由は以下のとおりである。
【0048】
すなわち、目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1は、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値(最大傾転角比)Xmaxとしたときに目標吐出流量Qを得ることのできるエンジン回転数であって、エンジン11の出力特性は考慮されていない。ある回転数のときの最大出力はエンジン11の出力特性により決まる。エンジン11の要求出力は油圧ポンプ14の吐出流量と吐出圧力の積に相当するから、要求出力が同じ場合であっても、圧力が低くて流量が大きい場合や圧力が高くて流量が小さい場合など様々な条件となる。したがって、傾転角比が同じ条件下では、圧力が低くて流量が大きい場合、要求出力を得るための回転数は高くなる。一方、圧力が高くて流量が小さい場合は、要求出力を得るための回転数は低くなる。
【0049】
要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2は、油圧ポンプ14の傾転角比Xは考慮されておらず、単にエンジン11に要求される出力を得ることのできる回転数であり、エンジン11がある回転数のときに出すことのできる最大出力となる。
【0050】
したがって、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2とは常に同じとなるわけではない。油圧ポンプ14の吐出流量と吐出圧力の関係から、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1のほうが、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2よりも低くなることがあり得る。このような場合に、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1をエンジン回転数指令Neとして設定してしまうと、エンジン回転数が低すぎてエンジン11が要求エンジン出力Penを出せないこととなる。
【0051】
そこで、本実施例では、最大傾転角比Xmaxを前提として求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2とを比較し、大きいほうを採用することで、その回転数でエンジン11が必ず要求出力を出せるようにしている。
【0052】
以上のようにして選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2は、エンジン11の許容回転数の範囲内であるかが判定される。選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2が許容回転数範囲内であった場合は、選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2はそのままエンジン回転数指令Neとして出力される。選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2が許容最小回転数より低い場合は、許容最小回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。選択されたエンジン回転数Ne1又はNe2が許容最大回転数より高い場合は、許容最大回転数がエンジン回転数指令Neとして出力される。
【0053】
回転数演算ブロック40−2から出力されたエンジン回転数指令Neは、アシスト出力演算ブロック40−3に供給される。アシスト出力演算ブロック40−3では、第1実施例と同様に、目標吐出流量Qに油圧ポンプ吐出圧力Piが乗算され、油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutが求められる。そして、求められた油圧ポンプ出力(軸出力側)Woutをポンプ全効率η0で除算することで、油圧負荷要求出力Ppを求める。油圧負荷要求出力Ppは、油圧ポンプ出力(軸入力側)Winに相当する。
【0054】
また、アシスト出力演算ブロック40−3では、回転数演算ブロック40−2から供給されたエンジン回転数指令Neからエンジン目標出力Pen2が求められる。そして、上述のように求めた油圧負荷要求出力Ppからエンジン目標出力Pen2を減算することで、エンジン補償アシスト量Pa1が求められる。エンジン補償アシスト量Pa1は、油圧負荷要求出力Ppがエンジン目標出力Pen2より大きいときに正の値となり、これはアシストモータである電動発電機12のアシスト量に相当する。アシスト出力演算ブロック40−3から出力されたエンジン補償アシスト量Pa1は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0055】
ここで、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、上述の第1実施例と同様に、旋回用電動機21の電気負荷要求出力Pelと、蓄電系120の蓄電器(キャパシタ)の充電率(SOC)とから、蓄電器補償アシスト量Pa2が求められる。要求アシスト出力演算ブロック40−4から出力された蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシスト指令決定ブロック40−5に供給される。
【0056】
以上のように、アシスト指令決定ブロック40−5には、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とが供給される。アシスト指令決定ブロック40−5では、エンジン補償アシスト量Pa1と蓄電器補償アシスト量Pa2とのうち大きいほうが選択される。選択されたエンジン補償アシスト量Pa1又は蓄電器補償アシスト量Pa2は、アシストモータとしての電動発電機12への出力指令Paとして電動発電機12に出力される。
【0057】
なお、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合は、作業要素としての電気負荷は無く、電気負荷要求出力Pelはゼロとなる。したがって、要求アシスト出力演算ブロック40−4では、蓄電器の充電率SOCから求められた蓄電器目標出力Pcがそのまま蓄電器補償アシスト量Pa2として出力される。
【0058】
以上のように、本実施例による回転数可変制御アルゴリズムによれば、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値Xmaxとしたときのエンジン回転数Ne1に基づいてエンジン回転数指令Neが決定される。したがって、傾転角比Xが大きい状態で油圧ポンプ14を駆動することができ、油圧ポンプの効率がよい状態を維持することができる。そして、そのようにして決定されたエンジン回転数指令Neと蓄電器の充電率SOCとから、アシストモータとしての電動発電機12のアシスト量を決定するので、電動発電機12が適切にエンジンアシストを行なうことができる。また、エンジン回転数指令Neを決定する際に、要求エンジン出力Penを考慮するので、エンジン回転数指令Neをより適切に設定することができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施例について説明する。本発明の第3実施例による回転数可変制御アルゴリズムは基本的に図7に示す回転数可変制御アルゴリズムと同じであるが、回転数演算ブロック40−2における処理が異なる。
【0060】
本実施例による回転数可変制御アルゴリズムでは、エンジン11が出力すべき動力として要求エンジン出力Penを求めてから、要求エンジン出力Penから求められるエンジン回転数Ne2と、目標吐出流量Qから求められるエンジン回転数Ne1とのうちいずれか大きい方を選択し、選択したエンジン回転数をエンジン回転数指令Neに設定する。これは上述の第2実施例による回転数可変制御アルゴリズムの回転数演算ブロック40−2での処理と同じであるが、本実施例では、目標吐出流量Qからエンジン回転数Ne1を求める際に、油圧ポンプ14のポンプ損失を考慮する点が異なる。
【0061】
すなわち、上述の第2実施例において、ポンプ最大傾転角比時のポンプ回転数Npを求める際に、最大傾転角比時の容積Vmaxを用いているが、容積Vmaxは最大傾転角比Xmaxとしたときのピストンストローク長から得られる理論値であり、実際には作動油の圧縮性や漏れなどに起因した損失が発生する。したがって、最大傾転角比Xmaxとしたときに実際にシリンダから吐出される作動油の体積は、理論容積Vmaxからポンプ損失分を減算したものとなる。そこで、本実施例では、理論容積Vmaxから損失分を減算した値をポンプ容積Vとして用いることで、ポンプ損失分を考慮してより精度高くエンジン回転数指令Ne1を求めている。
【0062】
図10は第3実施例における回転数演算ブロック40−2で行なわれる処理の演算アルゴリズムを示す図である。回転数演算ブロック40−2では、上述の第2実施例と同様に、目標吐出流量Qから求められたエンジン回転数Ne1と、要求エンジン出力Penから求められたエンジン回転数Ne2のうち、大きいほうが選択されてエンジン回転数指令Neとして出力される。しかし、目標吐出流量Qからエンジン回転数Ne1を求める際に、ポンプ損失分を引いたポンプ容積Vをポンプ損失特性演算(V=Vmax−W(X=1,P))により求め、目標吐出流量Qを、求めたポンプ容積Vで除算することで、ポンプ最大傾転角比時回転数Npを算出する。
【0063】
ポンプ損失は、吐出圧力Piと傾転角比X(すなわち、ピストンストローク長)とに依存するため、吐出圧力Piと傾転角比Xの関数として求められる。ここで、傾転角比Xは変数であるが、最大傾転角比Xmax=1に固定することとする。最大傾転角比Xmaxの時にはピストンストローク長が最大であり、ピストンストローク長に依存する損失分も最大となるためであり、最大の損失分を見込んで損失を算出することとしている。上述のポンプ損失特性演算(V=Vmax−W(X=1,P))のうち、Wがポンプ損失であり、X=1が最大傾転角比Xmaxに相当し、Pが吐出圧力Piに相当する。
【0064】
以上のように、本実施例による回転数可変制御アルゴリズムによれば、油圧ポンプ14の傾転角比Xを最大値Xmaxとし、且つポンプ損失を考慮したときのエンジン回転数Ne1に基づいてエンジン回転数指令Neが決定される。したがって、傾転角比Xが大きい状態で油圧ポンプ14を駆動することができ、油圧ポンプ14は効率よく運転している状態を維持することができる。そして、そのようにして決定されたエンジン回転数指令Neと蓄電器の充電率SOCとから、アシストモータとしての電動発電機12のアシスト量が決定されるので、電動発電機12が適切にエンジンアシストを行なうことができる。また、エンジン回転数指令Neを決定する際に、要求エンジン出力Penが考慮されるので、エンジン回転数指令Neをより適切に設定することができる。
【0065】
なお、上述の実施例では旋回機構2が電動式であったが、旋回機構2が電動ではなく油圧駆動の場合がある。図11図2に示すハイブリッド型油圧ショベルの旋回機構を油圧駆動式とした場合の駆動系の構成を示すブロック図である。図11に示すハイブリッド型油圧ショベルでは、旋回用電動機21の代わりに、旋回油圧モータ2Aがコントロールバルブ17に接続され、旋回機構2は旋回油圧モータ2Aにより駆動される。このような、ハイブリッド型油圧ショベルであっても、上述のように、要求アシスト出力演算ブロック40−4において蓄電器の充電率SOCから求められた蓄電器目標出力Pcをそのまま蓄電器補償アシスト量Pa2として出力することで、上述の回転数可変制御アルゴリズムによりエンジン回転数及び電動発電機(アシストモータ)のアシスト量を制御することができる。
【0066】
本発明は具体的に開示された上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形例及び改良例がなされるであろう。
【0067】
本出願は、2010年10月6日出願の日本国特許出願第2010−226912号、に基づくものであり、その全内容は本出願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、エンジンの出力で流量可変式油圧ポンプを駆動するハイブリッド型作業機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 下部走行体
1A、1B 走行機構
2 旋回機構
2A 旋回油圧モータ
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アー
ブームシリンダ
7A 油圧配管
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
12 電動発電機
13 変速機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
18、18A、18B、20 インバータ
19 バッテリ
21 旋回用電動機
22 レゾルバ
23 メカニカルブレーキ
24 旋回減速機
25 パイロットライン
26 操作装置
26A、26B レバー
26C ペダル
27 油圧ライン
28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 コントローラ
40−1 油圧ポンプ要求負荷推定ブロック
40−2 回転数演算ブロック
40−3 アシスト出力演算ブロック
40−4 要求アシスト出力演算ブロック
40−5 アシスト指令決定ブロック
40−6 要求エンジン出力演算ブロック
120 蓄電系
300 発電機
310 油圧モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11