(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665876
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】自動車用の多電圧式車載電力供給装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20150115BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20150115BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20150115BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20150115BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/14 H
H02J15/00 D
H02J7/34 B
H02J7/00 P
H02J7/00 301C
H02J7/00ZHV
B60L11/18 A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-538208(P2012-538208)
(86)(22)【出願日】2010年10月9日
(65)【公表番号】特表2013-511246(P2013-511246A)
(43)【公表日】2013年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2010006174
(87)【国際公開番号】WO2011057699
(87)【国際公開日】20110519
【審査請求日】2013年9月26日
(31)【優先権主張番号】102009052769.9
(32)【優先日】2009年11月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391009671
【氏名又は名称】バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フレッシュル ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンケ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ライター トーマス
【審査官】
関口 明紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−224901(JP,A)
【文献】
特開2005−278256(JP,A)
【文献】
特開2002−010508(JP,A)
【文献】
特開2008−273253(JP,A)
【文献】
特表2007−535282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12、 7/00−13/00、
15/00−15/42、
H02J 7/00− 7/36、15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド駆動システムまたは電気駆動システムを備えた自動車用の多電圧式車載電力供給装置であって、
直流電圧変換器(DCDC)を有し、この直流電圧変換器(DCDC)を介して、アース電位とは異なる一段と高い直流電圧を有し、かつ少なくとも一つの第1エネルギ貯蔵器(ES1)を備えた高ボルトレベルが、アース電圧とは異なる一段と低い電圧を有し、かつ少なくとも一つの第2エネルギ貯蔵器(ES2)を備えた低ボルトレベルに接続されている、多電圧式車載電力供給装置において、
この多電圧式車載電力供給装置が、外部装置を充電するための充電インタフェース(S)を有すること、
前記直流電圧変換器(DCDC)の少なくとも一つの変換相を前記低ボルトレベルから分離可能であり、代わりに前記充電インタフェース(S)に接続可能であること、
前記充電インタフェース(S)に第3エネルギ貯蔵器(ES3)を接続可能であり、それにより前記第3エネルギ貯蔵器(ES3)に接続状態にて前記低電圧を供給し、前記第1エネルギ貯蔵器(ES1)から前記第3エネルギ貯蔵器(ES3)に流れるエネルギ流により前記第3エネルギ貯蔵器(ES3)の充電を可能にすること、及び
前記直流電圧変換器が、並列接続される複数の変換相(P1,P2)を有しており、少なくとも第1および第2の動作モードで動作可能であること、
その際、前記第1の動作モード(M1)においては、前記直流電圧変換器(DCDC)の全変換相が前記第2エネルギ貯蔵器に接続されて、前記充電インタフェース(S)に接続される変換相は皆無であること、および、
前記第2の動作モード(M3)においては、前記直流電圧変換器(DCDC)の少なくとも一つの変換相(P1)が前記第2エネルギ貯蔵器(ES2)に接続されて、前記直流電圧変換器(DCDC)の少なくとも一つの別の変換相(P2)が前記充電インタフェース(S)に接続されていること、
を特徴とする、多電圧式車載電力供給装置。
【請求項2】
前記第2の動作モードにおいては、前記各変換相のオンオフ制御が時間をずらして行われることを特徴とする、請求項1に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【請求項3】
前記低電圧が、自動車に代表的な約12ボルトの車載電力供給装置電圧であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【請求項4】
前記高ボルトレベルが、自動車の走行用バッテリに接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【請求項5】
前記低ボルトレベルからの分離および前記充電インタフェース(S)への接続を、唯一の電子制御式スイッチング素子(SW)だけにより実行可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【請求項6】
前記充電インタフェース(S)が、差込み式接点またはスイッチとして実施されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【請求項7】
前記第3エネルギ貯蔵器(ES3)の前記充電インタフェース(S)への接続を検出可能であり、検出結果に従属して、前記低ボルトレベルからの分離および前記充電インタフェース(S)との接続を自動的に制御可能であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【請求項8】
前記直流電圧変換器(DCDC)、ならびに、前記低ボルトレベルから分離して前記充電インタフェース(S)に接続するために必要な切換え手段(SW)、ならびに場合により前記直流電圧変換器(DCDC)の前記各変換相(P1,P2)の入出力に配置される複数のコンデンサ(C1,C2,C3)が、共通ケース(DCDC)内に統合されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多電圧式車載電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド駆動システムまたは電気駆動システムを搭載した広義の自動車(モータビークル、原動機付き車両)用の多電圧式車載電力供給装置であって、直流電圧変換器を有しており、これを介して、アース電位とは異なる一段と高い直流電圧を有し、かつ少なくとも一つの第1のエネルギ貯蔵器を備えた高ボルトレベルが、アース電圧とは異なる一段と低い電圧を有し、かつ少なくとも一つの第2のエネルギ貯蔵器を備えた低ボルトレベルに接続されている、多電圧式車載電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような直流電圧変換器(DC−DCコンバータ)を具備した多電圧式車載電力供給装置は、従来技術から多種多様なものが知られている。直流電圧変換器により、電圧を異にする複数の車載エネルギ供給網を、エネルギのやりとりが行われるように接続することができる。直流電圧変換器の出力密度を増大するとともに、その電流容量を増大するために、直流電圧変換器は多くは多相式仕様とされている。これは主として複数の変換段を並列に接続した回路から成っている(以下の説明ではこのタイプの変換器を前提としている)。パワースイッチのオンオフ制御が(360度を変換相の数で除した分ずつ)時間をずらして行われる場合は、電流波形がそれぞれの出力端子およびバスコンデンサのところで重なり合うことになり、それにより特にバスコンデンサにおいては分応力を低減することができる。
【0003】
多電圧式車載電力供給装置は、従来技術においては何よりも特にピーク出力を増大するために使用されている(例:ハイブリッド駆動システム、補機類の電化)。これらの車載電力供給装置部分は、類型的には多相式仕様となっている高出力型直流電圧変換器により接続されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、多電圧式車載電力供給装置の機能性を低コストで拡張することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載される多電圧式車載電力供給装置により解決される。本発明の有利な実施形態および展開構成例は、従属請求項から明らかにされる。
【0006】
別体の充電装置が―直流電圧変換器にさらに追加して―備えられる場合と比べ、本発明により重くて嵩張る高価なコンポーネントの点数が削減される。このため総コストを低減できると同時に、必要取付け空間を最小限化することができる。さらにその上に重量を減らし、その結果燃料も節減することができる。
【0007】
充電装置を機能上もまた構造上も自動車の内部に統合すること自体は、従来技術から知られている。適切な充電装置を組み込むことにより、将来の自動車、特に市街地用の車両において、外部装置、例えば小型電動スクータを功利的に充電することができる。自動車の車載エネルギ供給網で外部装置を充電する可能性は、顧客にとってはこの上なく価値ある機能となる。従来技術から知られる充電装置の多くは、自動車の車載エネルギ供給網からそれぞれの外部装置に充電できるようにするために利用される専用の直流電圧変換器を有している。
【0008】
本発明においては、いずれにせよ多電圧式車載電力供給装置の異なる電圧レベルに対応できるように設えた直流電圧変換器の少なくとも一つの変換相が、外部装置の充電に使用される。
【0009】
そのためにこの多電圧式電力供給装置には、外部装置を充電するための充電インタフェースが用意される。またその際には、直流電圧変換器の少なくとも一つの変換相を高ボルトレベルから分離可能であり、その代わりにこの充電インタフェースに接続可能であるように、この多電圧式電力供給装置および特に直流電圧変換器ならびにその回路が実施されるようになっている。それに加えてさらに第3の―充電式―エネルギ貯蔵器が用意されるが、これは好適には外部装置の構成部品であって、この充電インタフェースに接続できるようになっている。充電インタフェースに接続された状態にあるときに、この第3エネルギ貯蔵器には、多電圧式電力供給装置の低い方の電圧が供給されるが、それにより第1エネルギ貯蔵器から第3エネルギ貯蔵器に流れるエネルギにより第3エネルギ貯蔵器を充電できるようにしている。
【0010】
多電圧式車載電力供給装置は特に、一つの高ボルトレベルと一つの低ボルトレベルとだけを有する二電圧式車載電力供給装置として実施されたものであるとよい。
直流電圧変換器は、最も簡単なケースにおいては単相式に実施される。その場合は直流電圧変換器のこの唯一の変換相を低ボルトレベルから分離可能であり、その代わりに充電インタフェースに接続可能としている。
【0011】
しかしながら直流電圧変換器は、本発明の別の好ましい実施形態においては、並列に接続される複数の変換相を有している。その場合は直流電圧変換器を、好適にも少なくとも第1および第2の動作モードで動作させることができる。第1の動作モードにおいては、直流電圧変換器の全ての変換相が第2エネルギ貯蔵器に接続されて、充電インタフェースに接続される変換相は皆無となる。このときに直流電圧変換器は、電圧を高ボルトレベルと低ボルトレベルとの間で変化させるためだけに使用に供されることになる。これに対して第2の動作モードにおいては、直流電圧変換器の少なくとも一つの変換相が第2エネルギ貯蔵器に接続され、直流電圧変換器の少なくとも一つの別の変換相が充電インタフェースに接続されている。すなわち直流電圧変換器のそれぞれの変換相は、一部が第3エネルギ貯蔵器の充電に利用される一方で、電圧を高ボルトレベルと低ボルトレベルとの間で変化させるためにも、引き続いて一部が使用に供されることになる。
【0012】
特にオプションとして高ボルトレベル側に第1エネルギ貯蔵器に対して並列に接続されるバスコンデンサに関して、分応力を低減するために、第2の動作モードにおいては、それぞれの変換相のオンオフ制御が時間をずらして行われるようにするとよい。
【0013】
低い方の電圧(低ボルトレベル)は、自動車の車載電力供給装置の類型的な電圧である約12ボルトであると好適である。高ボルトレベルは、自動車の走行用バッテリ、すなわち車載ハイブリッド駆動システムまたは電気駆動システムの走行用バッテリに接続されていると好適である。
【0014】
上述の少なくとも一つの変換相を低ボルトレベルから分離して充電インタフェースに接続する工程は、好適にも一つの電子制御式スイッチング素子だけにより実行できるようになっている。それにより動作モードを非常に簡単に変更できると同時に、切換えを同期で行うことが可能となる。
【0015】
直流電圧変換器が三つ以上の変換相を有する場合は、適切な切換え手段により、直流電圧変換器の全出力を、直流電圧変換と外部装置の充電の「タスク」間で可変式に分割することができる。例えばN個の変換相が存在する場合は、選択により一つの変換相、または二つの変換相、または最大で(N−1)個までの変換相を外部装置の充電に回すことができる一方で、残りの変換相については、引き続き直流電圧を変換するために使用に供されることになる。
【0016】
少なくとも一つの変換相を低ボルトレベルから分離して充電インタフェースに接続する(場合によっては単独の電子制御式スイッチング素子として実施される)切換え手段は、直流電圧変換器のそれぞれの変換相と一緒に一つの装置コンポーネントの内部もしくは一つのケースの内部に統合されると好適である。バスコンデンサが備えられる場合は、それらもまたこの装置コンポーネントの内部もしくはこのケースの内部に統合されると好適である。
充電インタフェースは、差込み式接点またはスイッチとして実施されると好適である。差込み式接点には、外部装置を非常に簡単に接続することができる。差込み式接点にする場合は特に、外部装置で使用される充電用接続プラグ規格品に適合している充電用接続ソケット規格品がこれに備えられると好適である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態の一例においては、第3のエネルギ貯蔵器の充電インタフェースへの接続を検出できるようになっており、この検出結果に従属して、低ボルトレベルからの分離と充電インタフェースへの接続を自動的に制御できるようにしている。特に上述の切換え手段を(特にこれが単独の電子制御式スイッチング素子として実施される場合には)この検出結果に従属して制御できるようにすると好適である。その場合は充電対象である外部装置が充電インタフェースに接続されると直ちに、動作モードの変更を自動的に行うことができる。
【0018】
以下では添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を説明する。以下の説明からは、本発明のその他の細部、好ましい実施形態、および展開構成例が明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】多相式直流電圧変換器をベースとして本発明を実行した例を示す図である。
【
図2】単相式直流電圧変換器をベースとして本発明を実行した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に説明する自動車は、ハイブリッドカーまたは電気自動車として構成され、高ボルトレベル(走行用バッテリ)と低ボルトレベル(12ボルト)の二電圧式車載電力供給装置を搭載しており、高ボルトレベルと12ボルト車載電源供給部との間に直流電圧変換器(以下ではDC−DCコンバータと呼ぶ)を有している。
【0021】
このDC−DCコンバータは、様々な動作モードで動作できるようになっている。
第1の動作モード(M1)は、走行用バッテリから、すなわち高ボルトシステムから車載電力供給装置に給電するための、高ボルトから12ボルトへのDC−DC変換を意味している。
【0022】
第2の動作モード(M2)は、DC−DCコンバータが充電動作方式に切り換えられることにより、オンボード装置が(自動車の停止中または走行の間に)充電されることを意味している。
【0023】
ここに説明されるDC−DCコンバータでは、有利なことにも第3の動作モード(M3)として、上述の第1の動作モードと第2の動作モードとを組み合わせられるようになっている。その前提としてDC−DCコンバータは、(特に第1の動作モードM1において)高ボルトレベルと低ボルトレベル間での直流電圧の変換をもたらすために利用される複数の変換相を有していなければならない。そこではDC−DCコンバータの上述の充電動作モードへの切換えが、これらの変換相の内の個々の相への切換えに限定されている。このときには、これらの変換相の内、第1の部分により引き続いてM1モードで直流電圧変換が実行され、これらの変換相の内、残りの部分によりM2モードで充電が実行されることになる。またその際には、充電出力にとり有利となるように、DC−DC出力が「純」M1モードにおける出力よりも低下されるようになっている。
【0024】
切換え手段を相応に構成することによって、M3モードにおいて充電動作のために投入される変換相の数を可変とすることができる。M3モードにおいて、充電出力にとり有利となるように低下されるDC−DC出力の低下幅については、それぞれの変換相間で適宜分割を行うことにより、もしくは上述の相数の設定を通じて、制御することができる。N個の変換相が存在する場合は、M3モードにおいて、1個から(N−1)個までの変換相が外部装置を充電するために使用されることになる。
【0025】
基本的には、DC−DCコンバータ(すなわち、全ての変換相)の純充電動作(M2モード)への全面的な切換えがさらに引き続いて可能な状態に維持されるように、切換え手段を構成することもできる。
【0026】
一方では、個々の変換相を低ボルトレベルから分離して充電インタフェースに接続するための適切な切換え手段が備えられるように、他方では、上述の各動作モード(少なくともM1およびM3、場合によってはM2も含む)に基づく切換え/切離し若しくは分離機能をソフトウェアに組み込むことで切換え手段の動作制御が相応に行われるように、従来型の多相式DC−DCコンバータを変更することによって、組み合わせモードM3を実現するために必要な装置が得られることになる。
【0027】
そのような装置では、二つの別々の装置(従来型の車載電力供給装置用DC−DCコンバータと別体の充電装置)を同じ一つのケースまたは二つのケースに収容して備える場合に対して、直流電圧の変換と外部装置の充電という二つの「タスク」を並行して、すなわち両方とも同時に履行するためにハードウェアに要するコストが格段と低下する。
【0028】
それにより、充電動作が要求されないときには12ボルト車載電力供給装置のアシストを行うことが可能となり、その結果DC−DCコンバータの負担を軽減することができる。
必要時には充電装置の相を、12ボルトを上回るさらに高い電圧向きの特殊な構成とすることも考えられる。
【0029】
図1には、第1相P1と第2相P2とを持つ多相式コンバータとして実施された直流電圧変換器DCDCが示されるが、そこでは一つのスイッチSWを使用して、これらの相の接続状態を少なくとも片側で切断できるようになっている。この変換器は、各種車載エネルギ供給網に接続されているが、これらの車載エネルギ供給網には類型的にエネルギ貯蔵器が含まれている。図示の事例において、ES1は高ボルト車載電力供給装置のエネルギ貯蔵器であり、ES2は低ボルト車載電力供給装置のエネルギ貯蔵器である。第3のエネルギ貯蔵器ES3は、一つの差込み式接点またはスイッチSにより、直流電圧変換器から切り離すことができるようになっている。この第3エネルギ貯蔵器ES3は、外部装置(例えば電動スクーター)に付属するものであるが、これを直流電圧変換器DCDCのM3モードで充電するものとする。
【0030】
外部装置ES3が差込み式コネクタSを介して接続されると直ちに、多相式コンバータDCDCはスイッチSWにより切断される。これにより、二つの個別変換段P1およびP2の接続状態が切断される。ES1からES2へのエネルギ移動については、エネルギ量を低減して(なおもP1を使用して)継続できるようになっている。ES3の充電は、ES1から(P2を使用して)行うことができる。
【0031】
それぞれの変換相の入出力には、バスコンデンサが接続されている。ES1側には、ES1に対して並列にバスコンデンサC1が接続されている。バスコンデンサC2は(スイッチSWの切換え位置に関係なく)ES2に対して並列に接続されている。バスコンデンサC3は、ES2に対して並列に接続される(ES2がP2に接続される場合)か、またはES3に対して並列に接続される(ES3がSを介してP2に接続される場合)かのいずれかとなっている。
【0032】
それぞれの変換段のオンオフ制御が時間をずらして行われることにより、バスコンデンサC1の分応力を低減することができる。
装置ES3がSに接続されていないときには、変換器DCDCが、再び多相式コンバータとして機能するように接続される(M1モードを参照)と、すなわちES2が再びP2に接続されると好適である。その後には再び変換器の全出力を利用したES1からES2へのエネルギ移動が可能となる。それに加えてさらに、オンオフ制御が時間をずらして行われることにより、この動作状態にあるときには全てのバスコンデンサの分応力が低減されることになる。
【0033】
それ以外にもさらに上述の構成方式では、さらにもう一つのエネルギ貯蔵器ES3を利用して、車載電力供給装置部分ES1およびES2を保護することができる点で有利である。例えばES2から定電流でES1を充電することで、ES2に過渡的な負荷をかけないようにすることが考えられる。電力供給装置ES1内の(例えば過渡的に高電力を消費する電装品に起因して生じる)電圧変動を低減するためには、過渡的な電力需要の全量または一部がES3により賄われるようにするとよい。
【0034】
図2に、一つの相P1’だけを持つ単相式直流電圧変換器DCDC’を示す。この唯一の変換相P1’は、一つのスイッチSW’により、直流電圧の変換(ES2がP1’に接続される場合)か、または充電インタフェースSに接続されたエネルギ貯蔵器ES3の充電(ES2がSを介してP1’に接続される場合)のいずれかを選択により行うために使用できるようになっている。
【0035】
本発明により、空間の最適利用と重量の最小限化が可能となる。従来技術においては必要とされているように、二つの装置(従来型の車載電力供給装置用DC−DCコンバータと別体の充電装置)を使用した場合は、仮にこれらの装置が両方とも一つのケース内に統合されるとしても、コストがかかる上にスペースをかなり食ってしまうことになる。
【0036】
本発明により、従来技術の効率面での様々な不備が解消される。一方では、自動車に例え充電インタフェースが備えられていたとしても、これを利用して外部装置を充電するケースは比較的稀であるために、充電目的のためだけに備えられる変換器の利用は、ほんのごく僅かだけにとどまっているのが通例であり、また他方では、場合により多相式仕様とされる変換器の全出力性能が、最新の多電圧式車載電力供給装置のそれぞれの車載電力供給装置部分との接続に利用されるケースは滅多にない、という知見を根拠として、従来のものと比肩する複数のコンポーネントが、ただ単に適切に配置されて、二つの異なる目的のために共同で利用されるようになっている。それにより、費用対効果も向上する。
【符号の説明】
【0037】
C1 バスコンデンサ
C2 バスコンデンサ
C3 バスコンデンサ
DCDC 多相式直流電圧変換器
DCDC’ 単相式直流電圧変換器
ES1 高ボルト車載電力供給装置用の第1エネルギ貯蔵器/車載電力供給装置部分
ES2 低ボルト車載電力供給装置用の第2エネルギ貯蔵器/車載電力供給装置部分
ES3 外部装置用の第3エネルギ貯蔵器
P1 第1相/変換段
P1’ 相/変換段
P2 第2相/変換段
S スイッチ/差込み式コネクタ/充電インタフェース
SW スイッチ/スイッチング素子/切換え手段
SW’ スイッチ/スイッチング素子/切換え手段