(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665892
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子および相応の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01P 15/12 20060101AFI20150115BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20150115BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20150115BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
G01P15/12 D
G01P15/08 P
H01L29/84 B
B81B3/00
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-557457(P2012-557457)
(86)(22)【出願日】2011年1月19日
(65)【公表番号】特表2013-525747(P2013-525747A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011050641
(87)【国際公開番号】WO2011113625
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2012年9月18日
(31)【優先権主張番号】102010002994.7
(32)【優先日】2010年3月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート ノイル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン レティヒ
(72)【発明者】
【氏名】アヒム トラウトマン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル クリストフ マイゼル
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ブーマン
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル エンゲサー
(72)【発明者】
【氏名】アンド フェイ
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−262973(JP,A)
【文献】
特公平02−060271(JP,B2)
【文献】
特開平04−361165(JP,A)
【文献】
特開平10−267779(JP,A)
【文献】
特開2007−003211(JP,A)
【文献】
特開平03−202777(JP,A)
【文献】
特開平04−302175(JP,A)
【文献】
特開平09−311138(JP,A)
【文献】
特開平01−222489(JP,A)
【文献】
特開平09−318655(JP,A)
【文献】
特開昭62−124777(JP,A)
【文献】
特開2004−069619(JP,A)
【文献】
特開平04−284644(JP,A)
【文献】
特開2003−042870(JP,A)
【文献】
特開平05−075468(JP,A)
【文献】
特開2003−249825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/12
B81B 3/00
G01P 15/08
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)と、前記基板(1)に変位可能に懸架されたサイズモ質量体(3)と、前記基板(1)と前記サイズモ質量体(3)の間に設けられた少なくとも1つのピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)と、測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)とを有するピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子であって、
前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、前記サイズモ質量体(3)の変位時に抵抗変化し、
前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、側面および/または表面および/または裏面の導体路(2a,2b;2a’,2b’)を有しており、
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を少なくとも部分的に覆っており、前記基板(1)の領域の中まで延在しており、
前記測定装置(M1;M2;M1’,M1’’)は、前記基板(1)および前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)に電気的に接続されており、
前記測定装置(M1;M2;M1’,M1’’)は、前記抵抗変化を測定するために、前記基板(1)から前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通って延在し、かつ、該ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)から側面および/または表面および/または裏面の前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)を通って延在する回路経路によって構成されている、センサ構成素子において、
前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、1つまたは複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化を、電流ミラー回路(M1’’)にてシグマデルタ変調によって評価するよう構成されている、
ことを特徴とするセンサ構成素子。
【請求項2】
前記サイズモ質量体(3)は、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を介して前記基板(1)に懸架されている、
ことを特徴とする請求項1記載のセンサ構成素子。
【請求項3】
前記サイズモ質量体(3)は、接続梁(7)を介して前記基板(1)に懸架されており、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b)は、前記接続梁(7)と前記基板(1)との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のセンサ構成素子。
【請求項4】
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)のうち、前記基板(1)の領域に延在する領域と前記基板(1)との間に、電気絶縁層(I)が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項5】
前記基板(1)と前記サイズモ質量体(3)との間に、複数のピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)が設けられており、
複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、それぞれ1つの表面の導体路(2a,2b;2a’,2b’)を有しており、
表面の前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、対応する前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を少なくとも部分的に覆っており、前記基板(1)の領域の中まで延在しており、
前記基板(1)および前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)に電気的に接続されている前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、前記抵抗変化を測定するために、前記基板(1)からそれぞれの前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通って延在し、かつ、それぞれの該ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)から対応する表面の前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)を通って延在するそれぞれの回路経路によって構成されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項6】
前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化をそれぞれ別個に評価するよう構成されている、
ことを特徴とする請求項5記載のセンサ構成素子。
【請求項7】
前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化を、ハーフブリッジ回路またはフルブリッジ回路(M1’)にて合わせて評価するよう構成されている、
ことを特徴とする請求項5記載のセンサ構成素子。
【請求項8】
前記基板(1)は、2つの隣り合う前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通る前記回路経路を電気的に分離するためのトレンチ(11a)を有する、
ことを特徴とする請求項5記載のセンサ構成素子。
【請求項9】
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、金属被覆層から構造化された金属製導体路である、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項10】
複数の結合されたサイズモ質量体(3)が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項11】
基板(1)と、前記基板(1)に変位可能に懸架されたサイズモ質量体(3)と、前記基板(1)と前記サイズモ質量体(3)の間に設けられた複数のピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)と、測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)とを有するピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子であって、
前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、前記サイズモ質量体(3)の変位時に抵抗変化し、
前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、側面および/または表面および/または裏面の導体路(2a,2b;2a’,2b’)を有しており、
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を少なくとも部分的に覆っており、前記基板(1)の領域の中まで延在しており、
前記測定装置(M1;M2;M1’,M1’’)は、前記基板(1)および前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)に電気的に接続されており、
前記測定装置(M1;M2;M1’,M1’’)は、前記抵抗変化を測定するために、前記基板(1)から前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通って延在し、かつ、該ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)から側面および/または表面および/または裏面の前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)を通って延在する回路経路によって構成されている、センサ構成素子において、
前記基板(1)は、2つの隣り合う前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通る前記回路経路を電気的に分離するためのトレンチ(11a)を有する、
ことを特徴とするセンサ構成素子。
【請求項12】
前記サイズモ質量体(3)は、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を介して前記基板(1)に懸架されている、
ことを特徴とする請求項11記載のセンサ構成素子。
【請求項13】
前記サイズモ質量体(3)は、接続梁(7)を介して前記基板(1)に懸架されており、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b)は、前記接続梁(7)と前記基板(1)との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項11記載のセンサ構成素子。
【請求項14】
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)のうち、前記基板(1)の領域に延在する領域と前記基板(1)との間に、電気絶縁層(I)が設けられている、
ことを特徴とする請求項11から13のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項15】
複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、それぞれ1つの表面の導体路(2a,2b;2a’,2b’)を有しており、
表面の前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、対応する前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を少なくとも部分的に覆っており、前記基板(1)の領域の中まで延在しており、
前記基板(1)および前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)に電気的に接続されている前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、前記抵抗変化を測定するために、前記基板(1)からそれぞれの前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通って延在し、かつ、それぞれの該ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)から対応する表面の前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)を通って延在するそれぞれの回路経路によって構成されている、
ことを特徴とする請求項11から14のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項16】
前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化をそれぞれ別個に評価するよう構成されている、
ことを特徴とする請求項11から15のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項17】
前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)は、複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化を、ハーフブリッジ回路またはフルブリッジ回路(M1’)にて合わせて評価するよう構成されている、
ことを特徴とする請求項11から15のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項18】
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、金属被覆層から構造化された金属製導体路である、
ことを特徴とする請求項11から17のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項19】
複数の結合されたサイズモ質量体(3)が設けられている、
ことを特徴とする請求項11から18のいずれか一項記載のセンサ構成素子。
【請求項20】
基板(1)に変位可能に懸架されたサイズモ質量体(3)の変位を、前記基板(1)と前記サイズモ質量体(3)との間に設けられた1つまたは複数のピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化によって検出するための測定方法であって、
前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)は、前記サイズモ質量体(3)の変位時に抵抗変化する、
測定方法において、
前記基板(1)から前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を通って延在し、かつ、該ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)から側面および/または表面および/または裏面の導体路(2a,2b;2a’,2b’)を通って延在する回路経路を形成するステップであって、
前記導体路(2a,2b;2a’,2b’)は、前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)を少なくとも部分的に覆っており、前記基板(1)の領域の中まで延在している、ステップと、
前記サイズモ質量体(3)の変位を検出するために、前記回路経路に接続された測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)によって前記抵抗変化を評価するステップと、
を有し、
ここで、1つまたは複数の前記ピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化を、前記測定装置(M1;M2;M1’,M1’’)によって電流ミラー回路(M1’’)にてシグマデルタ変調を用いて評価する、
ことを特徴とする測定方法。
【請求項21】
前記基板(1)と前記サイズモ質量体(3)との間に設けられた複数のピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化を、前記測定装置(M1;M2;M1’;M1’’)によってそれぞれ別個に評価する、
こと特徴とする請求項20記載の測定方法。
【請求項22】
前記基板(1)と前記サイズモ質量体(3)との間に設けられた複数のピエゾ抵抗性の梁(1a,1b;1a’,1b’)の抵抗変化を、ハーフブリッジ回路またはフルブリッジ回路(M1’)にて合わせて評価する、
こと特徴とする請求項20記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子および相応の測定方法に関する。
【0002】
本発明ならびに本発明の基礎となる課題は、任意のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子に適用可能であるが、以下ではピエゾ抵抗型マイクロメカニカル加速度センサに関連させて説明する。
【0003】
今日の加速度センサは、通常は静電容量によって評価される。しかしながら同様にピエゾ抵抗による評価も実施されており、このようなピエゾ抵抗による評価は、一層の小型化が図られているという点からより大きな可能性を示している。本願ではピエゾ抵抗型加速度センサと呼んでいる、ピエゾ抵抗によって評価される加速度センサの場合には、原則的に以下の2つのバリエーションを区別することができる。
【0004】
一方のバリエーションは構造化されたドーピングであり、この場合にはピエゾ抵抗は、撓み梁上において変位時に最大機械的張力が生じる箇所にドーピングがなされる。
【0005】
他方のバリエーションは均一なドーピングであり、この場合には、均一にドーピングされた撓み梁全体が評価のために用いられる。このためには梁において均一に分布した機械的張力が必要である。均一なドーピングの場合には撓み梁全体が評価のために利用されるので、均一なドーピングは小型化の観点から有利である。
【0006】
刊行物『J. Micromech. Microeng. 15』(Schusen Huang et al.)2005年、993−1000頁から、均一にドーピングされた撓み梁を有するピエゾ抵抗型マイクロメカニカル加速度センサが公知である。
【0007】
図6は、上記公知のピエゾ抵抗型マイクロメカニカル加速度センサの斜視図である。
【0008】
図6では、参照符号1が基板を表しており、基板1の上には犠牲酸化物層S1とカバー層S2とが設けられている。カバー層S2からサイズモ質量体3が構造化されており、サイズモ質量体3は、ドーピングされていない撓み梁Bを介して基板1に係留されている。サイズモ質量体3の先端には、サイズモ質量体3を過大変位から保護するストッパー30が設けられている。サイズモ質量体3と撓み梁Bの下には、空洞部K
avが存在している。
【0009】
撓み梁Bの隣では、サイズモ質量体3が、均一にドーピングされた2つのピエゾ抵抗性の梁PR1,PR2を介して基板に接続されている。基板平面にてサイズモ質量体3が変位した時の、ピエゾ抵抗性の梁PR1,PR2の抵抗変化を検出するために、金属被覆領域M1,M2,M3,M4,M5が設けられている。これらの金属被覆領域は、ハーフブリッジ評価が可能となるよう、ピエゾ抵抗性の梁PR1,PR2に接続されている。
【0010】
当該構造では、サイズモ質量体3から基板1への信号フィードバックのために、ピエゾ抵抗性の梁PR1,PR2に加えて付加的に撓み梁Bが必要不可欠となっている。しかしながらその他に前提となる要求が同じ場合には、この付加的な撓み梁Bのせいで機械的感度が減少し、および/または、必要とされるトレンチに関する工程コストが増加してしまう。とりわけ梁PR1,梁B,梁PR2の間にはできるだけ狭いアイソレーショントレンチ(STI)が必要であり、これが工程コストの増加となっている。
【0011】
請求項1に記載の本発明のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子、および、請求項11に記載の本発明の相応の方法は、公知の解決アプローチに比べてより簡単かつ低コストの構造が可能になるという利点を有しており、この構造によって一層の小型化が可能となる。
【0012】
本発明の基礎となる技術思想は、1つまたは複数のピエゾ抵抗性の梁の表面における測定信号の電気的フィードバックのために、構造化された導体路層、例えば金属層を使用することにある。
【0013】
本発明のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子における電気的評価も、種々の利点と結びついている。ピエゾ抵抗性の梁の表面に設けられた導体路ないしフィードバック線路は、ドーピングされた梁におけるフィードバック線路に比べて寄生抵抗が少ない。抵抗変化を、それぞれのピエゾ抵抗性の梁において別個に評価することができる。これによって無電流の電圧測定(3点測定および4点測定)が可能となり、これによって線路の寄生抵抗が測定結果を阻害することがなくなる。電気的分離によって、電流ミラーに基づいた簡単な差分評価回路が可能となる。このような評価方法は、回路におけるパラメータ変化に対して非感受性である。
【0014】
技術的な利点として、感度が変わらない場合、梁と梁の間のアイソレーショントレンチをより広く形成することが可能となる。これによって均一なドーピングに基づいたピエゾ抵抗性加速度センサを、技術的により容易に実現することができる。
【0015】
従属請求項には、本発明の各対象に関する有利な実施形態と改善策とが示されている。
【0016】
1つの有利な実施形態によれば、サイズモ質量体が、1つないし複数のピエゾ抵抗性の梁を介して基板に懸架されている。これによって、機械的な懸架構造全体を検出ないし評価のために使用することができるという利点が得られる。可能な限り小型のサイズモ質量体に基づき、より高い機械的感度ないし面積利得が可能となる。
【0017】
別の1つの有利な実施形態によれば、サイズモ質量体が接続梁を介して基板に懸架されており、当該接続梁と基板の間にピエゾ抵抗性の梁が設けられている。これによってデザインの自由度が格段に増加する。
【0018】
本発明の実施例を図面に示し、以下の記述において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に基づく、マイクロメカニカル加速度センサ装置の形態のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の平面図を示す。
【
図2】
図2a−cは、マイクロメカニカル加速度センサ装置の形態の
図1のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の、線A−A’、B−B’、C−C’に沿った断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態に基づく、マイクロメカニカル加速度センサ装置の形態のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の平面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明によるピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子を使用した測定方法の第1の実施形態を説明するための第1の測定装置を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明によるピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子を使用した測定方法の第2の実施形態を説明するための第2の測定装置を示す。
【
図6】
図6は、マイクロメカニカル加速度センサ装置の形態の公知のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の斜視図を示す。
【実施例】
【0020】
図中における同一の参照番号は、同一の構成部材または機能的に等しい構成部材を表す。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に基づく、マイクロメカニカル加速度センサ装置の形態のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の平面図を示し、
図2a−cは、マイクロメカニカル加速度センサ装置の形態の
図1のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の、線A−A’、B−B’、C−C’に沿った断面図を示す。
【0022】
図1において参照符号5は、ピエゾ抵抗式マイクロメカニカル加速度センサを表す。基板1からサイズモ質量体3に向かって、均一にドーピングされた2つのピエゾ抵抗性の梁1a,1bが延在しており、サイズモ質量体3はこれらの梁1a,1bを介して基板1に接続されている。梁1a,1bおよびサイズモ質量体3の下には空洞部K
avが存在している。
【0023】
ピエゾ抵抗性の梁1aと1bの間にあるアイソレーショントレンチGは、シャローアイソレーショントレンチ(STI)として構成することもできる。これによって梁1a,1bを回転点のより近傍に取り付けることができ、これによってクランク作用が強化される。
【0024】
xy平面(基板平面)においてサイズモ質量体3の重心点6に作用する加速度は、梁1aの圧縮および梁1bの伸張を生じさせる、ないしは、梁1aの伸張および梁1bの圧縮を生じさせる。この際、梁1a,1bの均一なピエゾ抵抗性のドーピングにより、これらの梁の電気抵抗が変化する。この抵抗変化は測定装置M1、M2によって検出することができる。測定装置M1、M2は梁1a,1bのそれぞれの現在の抵抗値を検出し、この抵抗値はR1aないしR1bで表されている。したがって検出された抵抗変化は、サイズモ質量体の均衡点からの、該サイズモ質量体3の変位を示す尺度となる。
【0025】
この実施形態においては、上記の検出が双方のピエゾ抵抗性の梁1a,1bに対してそれぞれ別個に行われ、このために基板1には電気的分離用のアイソレーショントレンチ11aが設けられている。
【0026】
電気的に分離された基板1の2つの半分の部分は、その下に位置する基板1と機械的に接続する必要があるが、電気的には分離する必要がある(例えば、センサ全体の下に設けられる電気絶縁された犠牲層によって)ということにもさらに注意すべきである。エッチングの際にはサイズモ質量体と梁の下にある犠牲層は除去し、基板1の下にある犠牲層は残しておく必要がある。
【0027】
抵抗変化を検出するために、基板1は、それぞれの梁1a,1b、および、梁1a,1bの表面に設けられた各導体路2a,2bと、それぞれ直列接続されている。導体路2a,2bは、梁1a,1bの表面を部分的ないし完全に覆っており、この実施形態においては金属層から構造化されている。とりわけ各導体路2a,2bは、この実施形態においては、サイズモ質量体3から梁1a,1bの全体に亘って、基板1の領域の中まで延在している。基板1との短絡を阻止するために、基板1の領域にある導体路2a,2bの下には、導体路2a,2bと基板1とを電気的に絶縁させる絶縁層Iが設けられている。同様にして、導体路2a,2bと梁1a,1bの間にあるこの絶縁層Iは、導体路2a,2bと梁1a,1bとが電気的にコンタクトしている各コンタクト領域K
5,K6に至るまで設けられている。この絶縁層Iは、とりわけ
図2bおよび2cに詳細に図示している。
【0028】
測定装置M1ないしM2は、一方では、導線L1,L2とコンタクト部K1,K2とを介して基板1に接続されており、他方では、導線L3,L4とコンタクト部K3,K4とを介して導体路2a、2bに接続されている。
【0029】
この実施形態では、ピエゾ抵抗性の梁1a,1bの抵抗R1a,R1bの抵抗変化がそれぞれ別個に評価されるが、上に述べたように例えば
図6と同じようにハーフブリッジ回路において梁1aと1bを一緒に評価することも可能である。所要の安定基準を満たすことが可能であれば、ピエゾ抵抗性の梁を1つだけ設けることも可能である。
【0030】
さらには、個々の1つのピエゾ抵抗性の梁の上に複数のフィードバック線路を設けることができ、これらのフィードバック線路は別個に評価される。
【0031】
図3は、本発明の第2の実施形態に基づく、マイクロメカニカル加速度センサ装置5’の形態のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子の平面図を示す。
【0032】
図3に図示する第2の実施形態では、ドーピングされていない撓み梁7が設けられており、この撓み梁7はサイズモ質量体3と基板1とを接続している。この場合、均一にドーピングされたピエゾ抵抗性の梁1a’,1b’は、基板1とサイズモ質量体3との間に設けられているのではなく、基板1と撓み梁7との間に設けられている。このように、ピエゾ抵抗性の梁1a’,1b’を撓み梁7に対して角度α(ここでは90°)で取り付ける形態によって、幾何形状の自由度がより高くなり、例えばサイズモ質量体3の重心点6と基板1の取り付け点との間の距離(クランクアーム長さ)が変わらない場合でも、梁1a,1bの長さを変更させることが可能となる。
【0033】
もちろんこの角度αは90°に限定されているわけではなく、自由に選択することができる。梁1a’,1b’は必ずしも同一の角度αを有する必要はない。
【0034】
ピエゾ抵抗性の梁1a’,1b’の上に設けられた導体路2a’,2b’は、
図1の第1の実施形態と同じように構成されており、
図1の関連において既に説明したように、ピエゾ抵抗性の梁1a’,1bの抵抗変化の評価を可能にしている。第1の実施形態と同じように、絶縁層Iは、導体路2a’,2b’と梁1a’,1bないし基板1との間にて、それぞれのコンタクト領域K
5’,K6’に至るまで設けられている。コンタクト領域K
5’,K6’では、導体路2a’,2bと梁1a’,1bとが電気的にコンタクトしている。
【0035】
図4は、本発明によるピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子を使用した測定方法の第1の実施形態を説明するための第1の測定装置を示す。
【0036】
図4に図示した測定装置M1’は、4つのピエゾ抵抗性の梁1a,1b,1c,1dのフルブリッジ接続に基づいている。これらの梁1a,1b,1c,1dは2つ1組で、接続ノードJ1,J2,J3,J4を介して、供給電位U
0と基準電位REFとの間に並列接続されている。抵抗変化を検出するために、接続ノードJ3,J4において、サイズモ質量体3の変位時の抵抗変化に対する直接的な尺度となる電圧値U
+およびU
−が取り出され、公知の方法で伝送される。
【0037】
4つのピエゾ抵抗性の梁1a,1b,1c,1dを、ただ1つのサイズモ質量体3に設けるか、または、隣接配置された2つの加速度センサに亘って実現させることができ、この際には場合によって、対応する2つのサイズモ質量体同士を機械的に結合することもできる。
【0038】
図5は、本発明によるピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子を使用した測定方法の第2の実施形態を説明するための第2の測定装置を示す。
【0039】
図5に図示された測定装置M’’は、シグマデルタ変調を用いた電流ミラー回路装置である。基準電圧V
Refが印加されている差分増幅器10は、ピエゾ抵抗性の梁1aを介して降下する電圧が、常に基準電圧V
Refと同じになるようにする。このことはトランジスタT1を相応に制御することによって行われる。トランジスタT1は別の1つのトランジスタT2と共に、ピエゾ抵抗性の梁1aに対して直列に接続されている。ピエゾ抵抗性の梁1aを通る電流Iは、供給電圧源V
DDから出発して、トランジスタT2とトランジスタT1とを介して、ピエゾ抵抗性の梁1aを通って、基準電圧源V
SS(通常はアース電位)へと流れるものである。当該枝路にて発生する電流は、ピエゾ抵抗性の梁1aに接続されたサイズモ質量体3の変位に基づく該ピエゾ抵抗性の梁1aの抵抗変化によって変化する。
【0040】
別の1つの分岐は、直列接続されたトランジスタT3およびT5と、直列接続されたトランジスタT4およびT6とからなる。これらはそれぞれ電流ミラーとして接続されており、したがってそれぞれ対応する制御可能なスイッチCが閉成されている場合には、ピエゾ抵抗性の梁1aを流れる正の電流値がトランジスタT4を流れ、スイッチC’が閉成されている場合には、ピエゾ抵抗性の梁1aを流れる負の電流値がトランジスタT6を流れる。
【0041】
ロジック装置LはスイッチC,C’の閉成を交番的に制御し、閉成時にはそれぞれの電流が積分器20において積分され、この電流の平均値はゼロである。スイッチC,C’のデューティ比はピエゾ抵抗性の梁を流れる電流Iを表しており、この電流Iは出力信号OUT(I)として測定装置M1’’から伝送される。
【0042】
以上、本発明を有利な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、多様に変更が可能である。
【0043】
これら2つの実施形態では、導体路1a,1bないし1a’,1b’は金属層から構造化されている。しかしながらこれらの梁を、高ドーピングされた半導体層またはその他の導体路層によって形成することも十分に可能である。
【0044】
これまで本発明をピエゾ抵抗型マイクロメカニカル加速度センサに関連させて説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば回転速度センサや圧力センサ等のような他のピエゾ抵抗型マイクロメカニカル構成素子のために使用することも可能である。
【0045】
本発明のピエゾ抵抗型マイクロメカニカルセンサ構成素子は、これまでに示したxy平面での検出方向を有する加速度センサの他に、z方向における検出のために使用することも可能である。この場合には、導体路2a,2bは非対称の補強部であり、これによってz方向の加速度が作用する際に梁1a,1bに均一な機械的張力が生じる。この場合には、梁1a,1bにおいて機械的張力が調整されている。こうすることによって、フィードバックのためにただ1つの梁と1つの金属製導体路とを有するz方向の加速度センサを実現することができる。
【0046】
原則的に、xyz方向のセンサ構成素子は、1つまたは複数の側面の導体路と、1つまたは複数の表面および/または裏面の導体路とによって実現することができる。