特許第5665948号(P5665948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5665948
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】携帯型電子機器の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20150115BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20150115BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20150115BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H05K7/20 R
   H05K7/20 F
   H05K9/00 G
   H05K9/00 U
   H04M1/02 C
   G06F1/00 360C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-236033(P2013-236033)
(22)【出願日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年6月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [ウェブサイトの掲載日] 平成25年5月15日 [ウェブサイトのアドレス]http://www.n−keitai.com/n−06e/highspec.htm/#sub02 [ウェブサイトの掲載日] 平成25年6月12日 [ウェブサイトのアドレス]http://k−tai.impress.co.jp/interview/20130612_603258.html
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐士
(72)【発明者】
【氏名】アハメド モハマド シャヘッド
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
(72)【発明者】
【氏名】高宮 明弘
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−119474(JP,A)
【文献】 特開2011−003604(JP,A)
【文献】 特開2011−047593(JP,A)
【文献】 特開2001−135966(JP,A)
【文献】 特開平11−294981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
G06F 1/20
H04M 1/02
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作することにより発熱する発熱部品が実装されている基板が密閉構造のケースの内部に収容され、その発熱部品の熱をその発熱部品から離れた箇所に放散させる放熱板が設けられた携帯型電子機器の冷却構造において、
前記放熱板が前記ケースの表蓋に相当する部分の内面もしくは裏蓋に相当する部分の内面に一体化され、
前記ケースの厚さ方向に押し潰されて扁平化された扁平型ヒートパイプが、その一端部を前記発熱部品から受熱する位置に配置され、かつ他端部を前記放熱板に密着させて配置された状態に設けられ、さらに
前記発熱部品の上面側を覆うシールドプレートが設けられ、
そのシールドプレートは、前記発熱部品を該発熱部品の幅方向もしくは長さ方向に外れた箇所で前記発熱部品の厚さより低くなるように前記基板側に屈曲した段差部を有し、その段差部と前記放熱板との間に前記扁平型ヒートパイプの一端部が挟み込まれている
ことを特徴とする携帯型電子機器の冷却構造。
【請求項2】
前記放熱板の前記扁平型ヒートパイプが接合されている箇所の板厚が、前記扁平型ヒートパイプが接合されていない箇所より薄いことを特徴とする請求項に記載の携帯型電子機器の冷却構造。
【請求項3】
前記ケースは合成樹脂によって形成され、かつ前記放熱板は金属によって形成され、その放熱板が前記ケースの一部に埋め込まれてケースに一体化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯型電子機器の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多機能携帯電話(スマホ)やタブレット型パソコンなどの携帯型の電子機器の放熱を促進して冷却するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器では、処理能力の増大に伴って発熱量が増大しており、性能の低下や損傷などを防ぐためにホットスポットの温度を低下させる必要性が増している。一方、携帯性を向上させるために、薄型化あるいは小型化さらには軽量化が求められている。このような要請に応える放熱板として、例えば特許文献1には、熱抵抗が小さく、また組立精度を向上させることができ、さらには設置空間を節約できる放熱板が記載されている。その放熱板は、本体部分に相当する板材に凹部を形成し、その凹部の内部から外部に亘って溝を設け、その溝にヒートパイプを嵌め込むとともに、凹部にその板片状の熱伝導部材を嵌め込み、その熱伝導部材の表面と本体部分に相当する板材の表面とを面一に一致するように加工した構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−3604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された放熱板における本体部分に相当する板材は、熱伝導部材を嵌め込むための前記凹部を形成できる厚さと、その凹部のいわゆる底面に相当する部分にヒートパイプを嵌め込むことのできる溝を形成できる厚さと、その溝のいわゆる底部側の所定強度の残余の厚さとを合算した厚さとする必要がある。そのため、放熱板の全体としての厚さが厚くならざるを得ず、しかも溝には断面円形のヒートパイプを嵌め込む構造になっているから、厚さが更に厚くなってしまう。例えば多機能携帯電話ではケース内部での熱の伝達にグラファイトシートが用いられるように、各部品が可及的に薄いことが求められていることからすれば、特許文献1に記載された放熱板は、携帯型電子機器に採用することは困難である。
【0005】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、熱伝達特性もしくは放熱特性を従来になく向上させてホットスポットの低温化に有効に機能する冷却構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、動作することにより発熱する発熱部品が実装されている基板が密閉構造のケースの内部に収容され、その発熱部品の熱をその発熱部品から離れた箇所に放散させる放熱板が設けられた携帯型電子機器の冷却構造において、前記放熱板が前記ケースの表蓋に相当する部分の内面もしくは裏蓋に相当する部分の内面に一体化され、前記ケースの厚さ方向に押し潰されて扁平化された扁平型ヒートパイプが、その一端部が前記発熱部品と前記放熱板との間に挟み付けられ、かつ他端部が前記放熱板に密着させられた状態に設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
これにより、発熱部品から放熱板にヒートパイプによって熱を輸送し、その放熱板から表蓋もしくは裏蓋を介して外部に放熱するから、放熱板に対して多量の熱を輸送して発熱部品を冷却でき、したがって発熱部品の近辺に熱が溜まって温度が幾分高くなるとしてもその温度の上昇を抑制してホットスポットを解消でき、あるいはホットスポットの温度を低くすることができる。また、このヒートパイプはケースの厚さ方向に扁平化されたものであるから、携帯型電子機器の薄型化および小型化を図ることができる。特に、上記のヒートパイプの一端部を発熱部品と放熱板との間に挟み付けた構成であることにより、発熱部品とヒートパイプとの間の熱抵抗が小さくなるので、発熱部品から放熱板までの間、特に発熱部品から放熱が生じる箇所までの間の熱抵抗が小さくなって、発熱部品化の熱の拡散を促進してホットスポットの温度を低下させることができる。
【0008】
また、この発明は、動作することにより発熱する発熱部品が実装されている基板が密閉構造のケースの内部に収容され、その発熱部品の熱をその発熱部品から離れた箇所に放散させる放熱板が設けられた携帯型電子機器の冷却構造において、前記放熱板が前記ケースの表蓋に相当する部分の内面もしくは裏蓋に相当する部分の内面に一体化され、前記ケースの厚さ方向に押し潰されて扁平化された扁平型ヒートパイプの一端部の一方の扁平部が、前記放熱板と前記発熱部品とに密着している伝熱シートによって前記発熱部品に連結され、かつ他方の扁平部が前記放熱板に密着させられた状態に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
これにより、発熱部品とヒートパイプの一端部とをグラファイトや金属などの伝熱シートで連結した構成とすることにより、発熱部品と放熱板のうち放熱の生じる箇所との間の熱抵抗を低減することができることに加えて、発熱部品とヒートパイプとを重ねて配置する必要がないので、携帯型電子機器の薄型化を図ることができる。
【0010】
さらに、この発明は、動作することにより発熱する発熱部品が実装されている基板が密閉構造のケースの内部に収容され、その発熱部品の熱をその発熱部品から離れた箇所に放散させる放熱板が設けられた携帯型電子機器の冷却構造において、前記放熱板が前記ケースの表蓋に相当する部分の内面もしくは裏蓋に相当する部分の内面に一体化されるとともに前記発熱部品の上面に熱伝達可能に接触させられ、前記ケースの厚さ方向に押し潰されて扁平化された扁平型ヒートパイプが、その一端部が前記放熱板のうち前記発熱部品に接触している箇所側に位置させられるとともに前記放熱板を介して前記発熱部品から受熱するように前記放熱板に接合され、かつ他端部が前記放熱板のうち前記発熱部品に接触している箇所から前記一端部よりも離れた箇所に密着させられた状態に設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
これにより、ヒートパイプの一方の端部を、発熱部品との間でその放熱板を介して熱伝達するように放熱板に接合した構成とすることにより、必要部品点数を少なくして携帯型電子機器の小型軽量化を図ることができると同時に、薄型化を図ることができる。
【0012】
またさらに、この発明は、動作することにより発熱する発熱部品が実装されている基板が密閉構造のケースの内部に収容され、その発熱部品の熱をその発熱部品から離れた箇所に放散させる放熱板が設けられた携帯型電子機器の冷却構造において、前記放熱板が前記ケースの表蓋に相当する部分の内面もしくは裏蓋に相当する部分の内面に一体化され、前記ケースの厚さ方向に押し潰されて扁平化された扁平型ヒートパイプが、その一端部を前記発熱部品から受熱する位置に配置され、かつ他端部を前記放熱板に密着させて配置された状態に設けられ、さらに前記発熱部品の上面側を覆うシールドプレートが設けられ、そのシールドプレートは、前記発熱部品を該発熱部品の幅方向もしくは長さ方向に外れた箇所で前記発熱部品の厚さより低くなるように前記基板側に屈曲した段差部を有し、その段差部と前記放熱板との間に前記扁平型ヒートパイプの一端部が挟み込まれていることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、発熱部品についてのシールドプレートに段差部を設けてその段差部と放熱板との間にヒートパイプの一方の端部を挟み込んだ構成とすることにより、既存のシールドプレートを利用して発熱部品とヒートパイプとの間の熱伝達を行うことができるので、必要部品点数を少なくして携帯型電子機器の小型軽量化を図ることができると同時に、薄型化を図ることができる。
【0014】
また、一方、この発明においては、前記放熱板の前記扁平型ヒートパイプが接合されている箇所の板厚が、前記扁平型ヒートパイプが接合されていない箇所より薄くてよい。
【0015】
これにより、ヒートパイプが接合される放熱板の板厚を一定にせずに、ヒートパイプが接合される箇所の板厚を他の部分より薄くした構成では、放熱板とヒートパイプとが重なっている箇所の全体としての厚さの増大を抑制できるから、携帯型電子機器の薄型化を図ることができる。
【0016】
そして、この発明では、上述したいずれかの構成に加えて、前記ケースは合成樹脂によって形成され、かつ前記放熱板は金属によって形成され、その放熱板が前記ケースの一部に埋め込まれてケースに一体化された構成とすることができる。
【0017】
さらに、放熱板が合成樹脂製のケースの一部にインサート成形などによって一体化された構成では、携帯型電子機器の厚さ方向に重なる部品数を少なくできるので、携帯型電子機器の薄型化を図ることができ、同時に放熱板を外部に露出させることができるので、放熱効果あるいは冷却効果を増大させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多機能携帯電話(スマホ)やタブレット型パソコンなどの携帯型の電子機器の熱伝達特性もしくは放熱特性を従来になく向上させて放熱を促進し、ホットスポットの低温化に有効に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明に係る冷却構造を備えた携帯型電子機器の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図2】そのヒートパイプの配置の一例を示す模式図である。
図3】そのヒートパイプの他の例を示す模式図である。
図4】ヒートパイプの一端部を発熱部品の上面に密着させた例を説明するための部分図である。
図5】ヒートパイプの一端部を伝熱シートで発熱部品に連結した例を示す部分図である。
図6】ヒートパイプの一端部を発熱部品の近傍に配置した例を示す部分図である。
図7】ヒートパイプの一端部をシールドプレートと放熱板とで挟み込んだ例を示す部分図である。
図8】放熱板に形成した溝にヒートパイプを配置した例を示す部分断面図である。
図9】分割板によって形成された溝にヒートパイプを配置した例を示す部分断面図である。
図10】放熱板を裏蓋にインサート成形して一体化させた例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る冷却装置は、携帯型の電子機器に用いられ、CPUなどの発熱部品で生じた熱を拡散させ、また外部に放熱させてホットスポットを解消し、もしくはホットスポットの最高温度を低下させるように構成されている。その携帯型電子機器は多機能携帯電話(いわゆるスマートフォンもしくはスマホ)やタブレット型パソコンなどがその例であり、図1に多機能携帯電話の一例を模式的に示してある。ケース1は表蓋を一体化させてある本体部2とその背面側に嵌め込む裏蓋3とを備え、これら本体部2と裏蓋3とによって内部を密閉するように構成されている。本体部2における表蓋に相当する部分は液晶パネル(図示せず)によって構成され、ディスプレーとなっている。その表蓋に相当する部分の内面には放熱板4が密着した状態(一体化した状態)で配置される。この放熱板4は、ケース1の内部で熱を拡散させるとともに、その熱をケース1を介して外部に放散させるためのものであり、ステンレスや銅あるいはアルミニウムなどの金属によって薄板状に形成されている。
【0021】
放熱板4の一方の面(表蓋側の面とは反対側の面)に扁平型ヒートパイプ5が密着して配置されている。扁平型ヒートパイプ5は、厚さが1mm以下(例えば0.7mm程度)の薄い扁平パイプの内部に、蒸発潜熱として熱を輸送する水などの作動流体と、液相の作動流体が浸透することにより毛管圧力を発生するウイック(それぞれ図示せず)を封入した熱伝導素子である。なお、その厚さは全体に亘って一定である必要はなく、一方の端部側と他方の端部側との厚さが異なっていてもよい。この扁平型ヒートパイプ5によれば、その一方の端部と他方の端部との間に温度差が生じることにより、作動流体が蒸発し、その蒸気が低温側に流動したのちに放熱して凝縮することにより蒸発潜熱として熱を輸送する。そのヒートパイプ5を構成しているパイプ(コンテナ)は、銅などの金属製であり、このヒートパイプ5は放熱板4に対してハンダや接着剤あるいは両面テープなどによって貼着されている。また、放熱板4の一部をかしめてヒートパイプ5を放熱板4に固定してもよい。
【0022】
ケース1の内部には基板6が内蔵される。基板6には、CPUや各種の記憶素子などの電子部品7が実装され、それらのうち、特にCPUは演算を行うことに伴って発熱し、この発明における発熱部品に相当している。図1に示す例では、基板6にコネクタなどの他の電子部品8およびバッテリ9が取り付けられている。この基板6は、上記の放熱板4に対して前記ヒートパイプ5が取り付けられている面側に配置される。配置状態で前記ヒートパイプ5は、その一方の端部がCPUなどの電子部品7に接触し、もしくは接近して位置し、かつ他方の端部が発熱することがなく、あるいは発熱量が少ない電子部品8側に位置し、もしくはバッテリ9側に位置するように配置される。
【0023】
放熱板4や基板6が上記のように本体部2に収容され、その状態で裏蓋3を本体部2に取り付けてケース1が密閉される。そして、スイッチ(図示せず)をオンにして動作させると、CPUでの演算量の増大に伴って発熱量が増大する。その熱は、熱伝導や熱輻射などによって周囲に拡散し、また放熱板4によって発熱部品から離れた箇所あるいはケース1の内部の全体に拡散させられる。その放熱板4には、ヒートパイプ5が密着して取り付けられており、このヒートパイプ5の一端部が発熱部品に接触し、もしくはその近傍(放熱板4のうち発熱部品に接触している箇所側)に配置され、かつ他方の端部が発熱部品から離れた箇所に延びているから、発熱部品で生じた熱がヒートパイプ5によっても発熱部品から離れた温度の低い部分に運ばれる。ヒートパイプ5は前述したように作動流体の蒸発潜熱として熱輸送を行うので、これが取り付けられている放熱板4の見かけ上の熱伝導率が向上し、発熱部品の近傍の温度と発熱部品から離れた箇所の温度との差が小さくなる。その結果、発熱部品の近傍におけるホットスポットを解消することができ、あるいはホットスポットの温度を従来になく低くすることができる。そのため、CPUなどの電子部品の機能の低下を回避もしくは抑制でき、あるいはより高性能化することができる。また、ヒートパイプ5は厚さが1mm程度もしくはそれ以下の薄い形状になっているから、ケース1の内部における余剰のスペースに配置することができる。そのため、この発明によれば、携帯型電子機器の性能の向上と併せて薄型化を図ることができる。
【0024】
ところで、前述した基板6やバッテリ9の大きさや形状あるいはそれらの配置は、携帯型電子機器に要求される性能あるいは機能などによって種々異なっており、この発明における扁平型ヒートパイプ5の形状や位置はそれら基板6やバッテリ9などの配置に応じて適宜に変更することができる。例えば図2に示すようにCPUなどの発熱部品10が実装されている基板6が比較的小面積に形成され、これと並列にバッテリ9が配置される構成の場合には、バッテリ9を覆うように放熱板4を設け、ヒートパイプ5はその放熱板4に密着させるとともに、一方の端部を発熱部品10側に延ばして発熱部品10との間で熱伝達が生じるように配置する。
【0025】
また、ヒートパイプ5の形状は、ケース1内の余剰のスペースに合わせた形状、あるいは他の部品との干渉を避ける形状にすることができる。その形状の例を図3に示してあり、クランク形状やL字状などの適宜の形状とすることができる。これらいずれの形状であっても、ヒートパイプ5の一方の端部は、発熱部品10に接触する位置あるいは発熱部品10の近傍に配置される。
【0026】
この発明では、放熱板4の見かけ上の熱伝導率を増大するように扁平型ヒートパイプ5を使用してもよく、あるいは発熱部品10から放熱板4への熱伝達を促進するようにヒートパイプ5を使用してもよい。後者の場合、発熱部品10から放熱板4およびヒートパイプ5の両方に熱を伝達するように構成することになり、その場合、以下に述べる構成を採用することができる。図4に示す例は、発熱部品10の上面(基板6とは反対側の面)と放熱板4との間にヒートパイプ5の一方の端部を挟み込んだ例である。ヒートパイプ5は放熱板4に貼着しておくことができるから、そのヒートパイプ5の一端部が発熱部品10の上面に密着するように、放熱板4を発熱部品10の上面側に被せた構成と言うことができる。なお、ヒートパイプ5の一端部の幅に対して発熱部品10の幅もしくは長さが長いから、発熱部品10の上面と放熱板4との間には、ヒートパイプ5の一端部と併せて熱伝導材(サーマル インターフェース マテリアル:TMI)11が配置もしくは充填される。この熱伝導材11は、従来知られているサーマルグリースやサーマルパッドであってよい。この図4に示す構成であれば、ヒートパイプ5が発熱部品10に実質的に直接接触して両者の間の熱抵抗が小さくなるので、発熱部品10で生じた熱を、より効率よく放熱板4や温度の低い箇所に輸送することができ、その結果、ホットスポットの温度を更に低下させることができる。
【0027】
また、図5に示す例は、発熱部品10の上面と放熱板4との間にグラファイトなどからなる伝熱シート12を挟み込み、その伝熱シート12の少なくとも一方の端部を発熱部品10の側方に延ばし、その伝熱シート12の延長部分と放熱板4との間にヒートパイプ5の一端部を挟み込んだ例である。すなわち、ヒートパイプ5の一方の扁平部(図5では下側の平坦面)が伝熱シート12に密着し、かつ他方の扁平部(図5では上側の平坦面)が放熱板4に密着している。この図5に示す構成では、発熱部品10からヒートパイプ5に対して伝熱シート12で熱を伝達するので、両者の間の熱抵抗を小さくして、発熱部品10から効率よく放熱させて発熱部品10を冷却することができる。これに加えて、発熱部品10とヒートパイプ5とを、厚さ方向に重ねないので、携帯型電子機器の全体としての厚さを薄くすることができる。
【0028】
図6に示す例は、放熱板4に取り付けられているヒートパイプ5の一方の端部が、発熱部品10の近傍に位置するように構成した例である。なお、発熱部品10の上面と放熱板4との間には前述した熱伝導材11が配置もしくは充填されている。この図6に示す構成では、発熱部品10とヒートパイプ5の一端部とは直接接触せずに熱伝導材11および放熱板4を介して連結されているから、発熱部品10の熱はこれら熱伝導材11および放熱板4を介してヒートパイプ5に伝達される。また、ヒートパイプ5の一端部が発熱部品10に接近して配置されているから、熱輻射によって発熱部品10からヒートパイプ5に伝達される熱量が多くなる。したがって、図6に示す構成によれば、発熱部品10からの放熱あるいは発熱部品10の冷却の性能を特には低下させずに、携帯型電子機器の薄型化を図ることができる。
【0029】
さらに、図7に示す例は、シールドプレート13を利用した例である。シールドプレート13は金属製の板状の部材であって、電磁気的な影響を避けるためにCPUなどの発熱部品10を覆った状態で基板6に取り付けられている。このシールドプレート13は、発熱部品10の上面に密着すると共に放熱板4によって発熱部品10の上面との間に挟み付けられた上面部13aと、基板6に連結されている脚部13bとを有しており、上面部13aから発熱部品10の幅方向もしくは長さ方向に延び出ている部分が、断面クランク状に屈曲させられ、その屈曲した部分に段差部13cが形成されている。そして、この段差部13cの上面と放熱板4との間にヒートパイプ5の一端部が挟み込まれている。この図7に示す構成では、発熱部品10で生じた熱がシールドプレート13を介して放熱板4およびヒートパイプ5に伝達されるので、熱伝導のための新たな部品を追加する必要がない。そのため、必要部品点数を少なくして構成の簡素化および軽量化を図ることができ、しかも発熱部品10とヒートパイプ5とを重ねることがないので、携帯型電子機器を薄型化することができる。
【0030】
前述したようにヒートパイプ5は放熱板4の見かけ上の熱伝導率を増大させるように機能するから、放熱板4のうちヒートパイプ5が取り付けられている箇所の断面積が他の部分より小さくても放熱板4の全体としての熱伝導が損なわれることはない。このような観点から図8に示すように、放熱板4に溝14を形成し、その溝14の内部にヒートパイプ5を配置することとしてもよい。放熱板4の厚さが0.2〜0.3mm程度で、扁平型ヒートパイプ5の厚さが0.5〜0.7mm程度であれば、その溝14の深さは0.1mm程度にすることができる。こうすることにより、放熱板4に扁平型ヒートパイプ5を貼着することに伴う厚さの増大を抑制でき、ひいては携帯型電子機器の全体としての厚さを薄くすることができる。
【0031】
なお、放熱板4が互いに隣接して並列に配置される複数の分割板4a,4bによって構成されている場合には、図9に示すように、それぞれの分割板4a,4bの側縁部に薄肉部を形成し、その薄肉部が所定の間隔を空けて隣接することによりそれらの薄肉部によって上述した溝14を形成してもよい。その分割板4a,4b同士の間の隙間は、ヒートパイプ5によって閉じられ、何らの支障となるものではない。
【0032】
上述した放熱板4は、発熱部品10で生じた熱を拡散させてホットスポットの温度を下げるように機能し、またケース1の表蓋もしくは裏蓋3を介して外部に放熱するように機能する部品である。その放熱機能を重視する場合には、放熱板4の一方の面をケース1の外部に露出させることが好ましい。このような構成の一例を図10に模式的に示してあり、ここに示す例は、裏蓋3を合成樹脂によって形成し、その一部に金属製の放熱板4をインサート形成して、裏蓋3と放熱板4とを一体化した例である。なお、ヒートパイプ5はその放熱板4に沿わせて配置され、その少なくとも一部が放熱板4に熱伝達できるように接合される。このような構成では、放熱板4から直接外部に熱を放散することができるので、冷却性能が更に向上し、ホットスポットを解消し、もしくはホットスポットの温度を下げることができる。また、放熱板4と裏蓋3とが重ならないので、携帯型電子機器の全体としての厚さを薄くすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1…ケース、 2…本体部、 3…裏蓋、 4…放熱板、 5…扁平型ヒートパイプ、 6…基板、 7,8…電子部品、 9…バッテリ、 10…発熱部品、 12…伝熱シート、 13…シールドプレート、 13c…段差部、 14…溝、 4a,4b…分割板。
【要約】
【課題】放熱性能もしくは冷却性能に優れ、しかも薄型化を図ることのできる携帯型電子機器用の冷却構造を提供する。
【解決手段】動作することにより発熱する発熱部品7が実装されている基板6が密閉構造のケース1の内部に収容され、その発熱部品7の熱をその発熱部品から離れた箇所に放散させる放熱板4が設けられた携帯型電子機器の冷却構造において、前記放熱板4が前記ケース1の表蓋に相当する部分の内面もしくは裏蓋3に相当する部分の内面に一体化され、前記ケース1の厚さ方向に押し潰されて扁平化された扁平型ヒートパイプ5が、その一端部が前記発熱部品7と前記放熱板4との間に挟み付けられ、かつ他端部が前記放熱板4に密着させて配置された状態に設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10