特許第5665985号(P5665985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5665985車両の車輪運動および車体運動の決定方法および決定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665985
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】車両の車輪運動および車体運動の決定方法および決定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/04 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   G01M17/04
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-522180(P2013-522180)
(86)(22)【出願日】2011年7月18日
(65)【公表番号】特表2013-537630(P2013-537630A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】EP2011062247
(87)【国際公開番号】WO2012016813
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2013年1月31日
(31)【優先権主張番号】102010038905.6
(32)【優先日】2010年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート ツィームリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クラー
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ヴェント
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0312966(US,A1)
【文献】 特開2002−306483(JP,A)
【文献】 特開昭47−002651(JP,A)
【文献】 特開昭56−006135(JP,A)
【文献】 特開昭57−118124(JP,A)
【文献】 特開平03−017502(JP,A)
【文献】 特開平09−152389(JP,A)
【文献】 特開平11−152060(JP,A)
【文献】 特開平11−211625(JP,A)
【文献】 特開2000−339473(JP,A)
【文献】 特開2003−097915(JP,A)
【文献】 特開2010−107393(JP,A)
【文献】 特表2002−500342(JP,A)
【文献】 特表2003−505681(JP,A)
【文献】 特表2003−512610(JP,A)
【文献】 特表2003−515157(JP,A)
【文献】 特表2007−525682(JP,A)
【文献】 実開昭54−031601(JP,U)
【文献】 実開昭63−082901(JP,U)
【文献】 国際公開第01/031310(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/023015(WO,A1)
【文献】 米国特許第05767382(US,A)
【文献】 米国特許第06161419(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0043096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(3)と複数の車輪(5)とを備える車両(4)の車輪運動および車体運動を決定するための方法であって、
・前記車両(4)の運動を励振するステップと、
・運動する前記車両(4)の画像の画像シーケンス(A)を記録するステップと、
・前記画像シーケンス(A)の記録画像からオプティカルフローを決定するステップと、
・前記オプティカルフローから、少なくとも1つの車輪センタ(22)の位置、前記車体(3)の運動、および/または前記車両(4)の減衰尺度(Θ)を決定するステップと、
を有し、
前記オプティカルフローの決定は、フローフィールドのセグメント化を含み、
前記セグメント化は、車輪(5)におけるフローベクトル(D2)と、車体(3)におけるフローベクトル(D1)と、車輪(5)にも車体(3)にもないフローベクトル(D3)とに前記フローフィールドをセグメント化することを含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの車輪センタ(22)の位置、車体(3)の運動、および減衰尺度(Θ)が同時に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記録画像中の幾何学的歪みを除去するステップをさらに有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価は、最小二乗法によるガウス・マルコフモデルの使用を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
車体(3)と複数の車輪(5)とを有する車両(4)の車輪運動と車体運動を決定する測定装置であって、
前記車両(4)の画像の画像シーケンス(A)を記録するように構成された少なくとも1つのカメラ(11)と、
前記記録された画像シーケンス(A)からオプティカルフローを計算するように構成された計算装置(9)と、
少なくとも1つの車輪センタ(22)の位置、車体(3)の運動、および/または減衰尺度(Θ)を前記オプティカルフローから決定するように構成された評価装置(9)と、
を有し、
前記オプティカルフローの決定は、フローフィールドのセグメント化を含み、
前記セグメント化は、車輪(5)におけるフローベクトル(D2)と、車体(3)におけるフローベクトル(D1)と、車輪(5)にも車体(3)にもないフローベクトル(D3)とに前記フローフィールドをセグメント化することを含む、測定装置。
【請求項6】
前記カメラ(11)は、モノカメラ、立体カメラまたはマルチカメラシステムである、請求項に記載の装置。
【請求項7】
当該測定装置は、前記車両(4)の運動を励振するように構成された手段(8)を有する、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
複数のカメラ(11)による画像記録が同時に行われ、記録された画像シーケンス(A)の評価のために拡張された車両モデルが使用される、請求項5から7までのいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪運動および車体運動の決定方法および決定装置、とりわけ先行車両のビデオ画像シーケンスを用いたショックアブソーバ検査方法およびショックアブソーバ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、自動車のバイブレーションダンパの検査方法が記載されている。この方法では、車輪接地面上に起立する自動車車輪が脚点励起振動によって励振される。自動車の車輪懸架部にあるバイブレーションダンパの減衰特性は、車輪の運動振幅および運動速度と、車体の運動振幅および運動速度とを車輪の加速度または動的接地力によって関連付けることにより決定することができる。バイブレーションダンパの品質を検査するために、推定された減衰係数が基準値と比較され、基準値の偏差が公差範囲内にあるか否かが確定される。
【0003】
特許文献3および特許文献4には、たとえばシングルマス振動子モデル(EMS)を用いて振動している先行車両のデータからショックアブソーバを特徴付ける減衰尺度を決定するために、車輪センタと車体運動を光学的に測定し、それらを評価することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0611960号
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第4305048号
【特許文献3】欧州特許第1224449号
【特許文献4】ドイツ特許出願公開第102008002484号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Thomas Luhmann著, Nahbereichsphotogrammetrie, Grundlagen - Methoden -Anwendungen, 第2版, 586頁, 2003
【非特許文献2】W. Niemeier著: Ausgleichungsrechnung, de Gruyter, Berlin - New York 2002, ISBN 3-11-014080-2"
【非特許文献3】Berthold K. P. Hoernおよび Brian G. Schunck著"Determining Optical Flow", Artificial Intelligence, vol. 17, no. 1-3, pp. 185-203, 1981
【非特許文献4】Zhaoyi Wei, Dah-Jye Leeおよび Brent E. Nelson著 FPGA-based Real-time Optical Flow Algorithm Design and Implementation, Journal of Multimedia, Vol. 2, No. 5, 9月 2007, 38-44頁
【非特許文献5】W. Niemeier著 Ausgleichungsrechnung, de Gruyter, Berlin - New York 2002, ISBN 3-11-014080-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、車両の車輪運動および車体運動を測定する改善された方法およびその方法を実施するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項1に記載の方法および独立請求項7に記載の測定装置によって解決される。
【0008】
本発明による車両の車輪運動および車体運動を決定する方法は、車両の運動を励振するステップと運動する車両の、複数の画像を含む画像シーケンスを記録するステップと、前記記録した画像シーケンスの画像からオプティカルフローを決定するステップと、前記オプティカルフローから、少なくとも1つの車輪センタの位置、車体の運動および/または車両の減衰尺度を決定するステップと、を有する。
【0009】
本発明は車両の車輪運動および車体運動を決定する測定装置も含む。この測定装置は、車両の画像シーケンスを記録するように構成された少なくとも1つのカメラと、当該記録された画像シーケンスからオプティカルフローを計算するように構成された計算装置と、前記オプティカルフローから、少なくとも1つの車輪センタの位置、車体の運動および/または車両の減衰尺度を決定するように構成された評価装置と、を有する。
【0010】
オプティカルフローを本発明により評価することによって、画像特徴部分の運動だけを用いて評価することができ、たとえば円形のリム縁部または車輪の回転対称形状の画像内容をそれぞれモデル化することを省略することができる。本発明は頑強であり、多数の異なる車両形式に対して使用することができる。したがって本発明は、検査すべき車両のバリエーションが多数であることが予想される工場で実際的に使用するのにとくに適する。
【0011】
実施形態では、少なくとも1つの車輪センタの位置、車体の運動および減衰尺度が同時に決定される。車輪運動と車体運動と減衰尺度とを同時に決定することにより、この方法は「最小二乗法」の観点からは、ビデカメラのデータからの最善の減衰決定であると言うことができる。なぜなら中間量が導出されることはなく、観察(ここではオプティカルフロー)が未知数(ここでは振動モデル、たとえばワンマス振動システムEMS)と関数関係になるからである。レギュラリゼーションを行うので、この方法は画像シーケンスにおける測定誤差に対して頑強であり、本方法における減衰尺度の決定の際のシステマティックなエラーが十分に回避される。
【0012】
実施形態では本方法は、記録された画像における幾何学的歪みを除去するステップ(幾何学的歪み補正)を有する。幾何学的歪み補正の利点は、オプティカルフローを評価する方法のための数学的モデリングを強力に簡素化できることである。幾何学的歪み補正は、たとえば写真測量で公知のファサード歪み補正に比肩する。たとえば非特許文献1を参照。
【0013】
本発明の実施形態では、オプティカルフローの決定されたフローフィールドがセグメント化される。このようなセグメント化は、フローフィールドの後の評価を簡素化する。
【0014】
本方法の実施形態では、セグメント化は、車輪におけるフローベクトルと、車体におけるフローベクトルと、車輪にも車体にもないフローベクトルとにフローフィールドをセグメント化することを含む。フローフィールドのこのようなセグメント化は、以降の評価に対してとくに有利であることが判明している。
【0015】
本方法の実施形態では、フローフィールドの評価が、最小二乗法によるガウス・マルコフモデルを使用する(非特許文献2参照)。ガウス・マルコフモデルによって、フローフィールドを効率的かつ正確に評価することができる。
【0016】
実施形態で装置は、少なくとも1つのモノカメラ、立体カメラまたはマルチカメラシステムを有する。モノカメラを備える装置はとくに安価である。立体カメラまたはマルチカメラシステムを備える装置によって、パラメータのとくに正確な決定が可能である。
【0017】
実施形態で測定装置は、車両の運動を励振する手段を少なくとも1つ有する。このような励振手段によって、本発明の方法を実施するのに必要な車両の運動をとくに簡単かつ再現可能に励振することができる。
【0018】
実施形態で測定装置は、画像記録が複数のカメラにより同時に行われ、拡張された車両モデルが記録された画像シーケンスの評価に使用されるよう構成されている。これによりパラメータ検出の精度をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明を以下、図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両と本発明の測定装置の概略図である。
図2】振動モデルの原理図である。
図3】本発明の方法で測定カメラにより記録されたビデオ画像データの処理を示すフローチャートである。
図4】フローベクトルのセグメント化を示す図である。
図5】車輪センタと車体運動を同時に決定するための評価モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、車両4と本発明の測定システム2を概略的に示す図であり、車両のバイブレーションダンパが本発明により検査される。
【0022】
測定システム2は、所定の高さの長い敷居8を有し、その主伸長方向は車両4の運動方向6に対して実質的に横方向または実質的に直角である。敷居8の長さは少なくとも車両4の幅に対応し、したがって敷居8を乗り越える際に、車両4の同じ車軸のそれぞれ2つの車輪5が敷居8により所定の垂直方向励振を受け、垂直方向に振動させられる。
【0023】
敷居8の両側にはそれぞれ1つの左測定ヘッド10と右測定ヘッド12とが、敷居8の高さで、または車両4の走行方向で敷居8の直後に配置されている。各測定ヘッドはそれぞれ内側に車両4に向いた方向に少なくとも1つの測定カメラ11、たとえばCCDセンサを有する。測定カメラ11は床の上の適切な高さに取りつけられ、車両4の車輪5および車体3を光学的に検出することができる。本発明の方法では、各測定カメラ11によって画像シーケンスを形成する複数の画像が、車両4が敷居8を乗り越える際に記録される。
【0024】
測定システム2はさらにデータ処理ユニット9を有し、このデータ処理ユニットは測定ヘッド10と12の測定カメラにより記録された画像シーケンスを受け取り、本発明の評価方法を実行するように構成されている。
【0025】
測定システム2は追加でデータ入力手段を有することができる。このデータ入力手段によって検査すべき車両4に対するデータを手動で入力することができる。または接続されたキーボードを介して、または他のコンピュータへのデータ入力を介して、または記憶媒体からの読み出しによって入力することができる。
【0026】
図2は振動モデル14の原理を示す。振動モデル14は励振されたワンマス振動系(EMS)であり、これにより車体3と車輪5との間の振動を記述することができる。振動モデル14は四分の一車両の観察である。すなわち関与する車体質量mAを備える車軸側である。
【0027】
車両質量または車体質量mAは参照符号20により示されており、概略的に矩形で図示されている。車輪軸22または車輪懸架部には参照符号22が付してある。バイブレーションダンパは、ばね剛性cAのばね16と減衰係数kAの並列減衰素子18とによって形成され、車体質量20はこのバイブレーションダンパによって車軸22上に支承されている。
【0028】
車輪5の運動方向または車輪運動sRの方向は上を向いた矢印により示されており、車体質量3の運動方向または車体運動sAの方向も上を向いた矢印により示されている。
【0029】
車体質量20は車輪5の運動とバイブレーションダンパによる伝達に基づき振動させられる。
【0030】
図3は、本発明の方法で測定カメラにより記録されたビデオ画像データの処理を示す。
【0031】
記録された画像シーケンスがモノビデオカメラ11から、画像歪み補正のために専用計算ハードウエアB1に伝送される。画像歪み補正は、関数モデルのモデル化を簡単にするために必要である。入力画像データが歪み補正されないと、記録光学系等が原因の光学的歪みが求められたフローフィールドに計算的に取り込まれてしまう。画像歪み補正は標準的方法であり、ステレオビデオ画像の計算の際にも使用される。
【0032】
続いて専用計算機ハードウエアB2で同様に歪み補正された画像データからオプティカルフローが決定される。オプティカルフローを計算するために基礎は、たとえは非特許文献3に記載されている。たとえばFPGAに基づくオプティカルフローのリアルタイム処理については、非特許文献4に記載されている。モノビデオ画像データから、それぞれ順次連続する2つの画像間のベクトルフィールドが計算される。これはポイント対応の決定に相当し、このポイントの運動方向と運動速度を与える。
【0033】
次のステップCではフローフィールドD1が、車体3上のフローベクトルD1、車輪5上のフローベクトルD2および車体3にも車輪5にもないフローベクトルD3にセグメント化される。2つの群D1とD2のベクトルは、車体3の運動が並進成分だけを有するのに対し、車輪5の運動は回転運動であるため、回転運動と並進成分との混合を含む点で異なる。
【0034】
ここでセグメント化は次の規則にしたがう:
・回転運動と最も高い確率でベクトルフィールドに発生する並進運動を含むすべてのベクトルは車輪ベクトルD2と分類される。
・最も高い確率でベクトルフィールドに発生する並進運動だけを含むすべてのベクトルは車体ベクトルD1と分類される。
【0035】
図4aから4cは、記録された画像シーケンスから決定されたフローベクトルD1,D2およびD3を備える車両4の側面を例として示す。ここでフローベクトルD1、D2およびD3は概略的に十字で示されている。図4aには、すべてのフローベクトルD1,D2,D3が示されている。図4bには車体3のセグメント化の際に車体3に割り当てられたフローベクトルD1だけが図示されており、図4cにはセグメント化の際に車輪5に割り当てられたフローベクトルD2だけが図示されている。
【0036】
励振される車両4から記録された画像シーケンスのすべての画像が処理されると、パラメータH、とりわけ求める減衰パラメータが評価モデルEで決定される。ここでは入力データとしてセグメント化されたフローフィールドD1,D2,D3が使用される。
【0037】
図5には、ビデオシーケンスで考慮すべきすべての時点の車輪センタと車体運動ならびに減衰尺度を同時に決定するための評価モデルが示されている。減衰尺度については以下に詳細に説明する。
【0038】
解は最小二乗法によるガウス・マルコフモデルで求められる。ステップE1で正規方程式系が構築される。車体3のフローベクトルD1に対しては関数モデルF1が適用され、車輪5のフローベクトルD2に対しては関数モデルF2が適用される。
【0039】
振動方程式F3が関数モデルF1,F2の未知のパラメータ間の条件方程式として導入される。振動方程式は正規化に作用し、求める減衰尺度が決定される。
【0040】
ステップE2で正規方程式系が解かれる。ステップE2で決定されたパラメータによりE3で入力セグメント化が処理される。ここで改善され決定されたパラメータに基づいて、これまでは車体にも車輪にも割り当てられていなかったフローベクトルD3から、これらの領域の1つにあるベクトルが存在するか否か検査される。したがって現在D1またはD2として分類されたベクトルが正しく割り当てられているか否かも検査される。E1で処理されたセグメント化の結果が正規方程式系を作成するために反復的に使用される。このプロセスは、Gで調整プロセスの収束が確定されるまで繰り返される。最終的に決定されたパラメータHが求める結果である。
【0041】
評価のために前もって決定されたフローベクトル
・D1:uAi=車体ポイント(PAi)の[uAxiyi]と
・D2:uRi=車輪ポイント(PRi)のURi=[URxiRyi
が使用される。
【0042】
決定のためにパラメータ:
・減衰尺度Θ
・画像シーケンスの各時点iでの回転センタZ
・画像シーケンスでの車体TAi上の固定基準点の運動
が決定される。固定基準点は車輪のばね運動の決定に用いられる。
【0043】
関数モデル:
1.車体ポイントF1の測定式:
[uAxi,uAyi]=F(PAi−1,T,Ti−1) (1)
ここでPAi−1は画像i−1での車体ポイントであり、ここからフローuAxi,uAyiが得られ、T,Ti−1は時点iまたはi−1での車体上の基準点である。
2.車体ポイントF2の測定式:
[uRxiRyi]=F(Δα,PRi−1,D,Di−1) (2)
ここで
Ri−1 画像i−1での車輪ポイント
,Di−1 時点iとi−1での車輪の回転センタ、そして
Δα 車輪の回転角差である。
3.振動等式、ワンマス振動子(F3)
車両4が画像面に対して平行に運動する場合、車体運動ZAiと車輪運動Zriを、車体Tと回転センタDの基準点のz方向の運動として画像座標中に簡素化して近似することができる。これは、ばね装置は車両4の走行方向に対して垂直に作用することを前提にする。減衰定数は振動の減衰しか記述しないから、現実の世界[mm]と画像座標[ピクセル]との間に尺度的な関係を形成する必要はない。むしろ運動はピクセル座標で直接的に計算される。
【0044】
ワンマス振動子の微分方程式は次のとおりである:
Z’’Ai+2δ(Z’Ai−Z’Ri)+ω(ZAi−ZRi)=0 (3)
したがって関数F3に対しては次式が当てはまる:
F3(Z’’Ai,Z’Ri,Z’Ai,ZRi,ZAi,δ,ω)+ω(ZAi−ZRi) (4)
ここで
ω 車体の固有周波数
δ 減衰定数
Z’’Ai ピクセル/sでの車体の加速度、
Z’Ai ピクセル/sでの車体の速度、
Z’Ri ピクセル/sでの車輪の速度、
Ai ピクセルでの車体の位置、そして
Ri ピクセルでの車輪の位置、である。
【0045】
バイブレーションダンパを判定するために使用される学習減衰尺度は、減衰定数と車体固有周波数との商として定義される:
Θ=δ/ω
式(1)、(2)および(4)における関数モデルにより、フローベクトルが、減衰尺度(Θ)の決定のための求める未知数とどのような直接的関係にあるかが示される。さらに入力データとして、2つの画像間の関係だけを記述するフローベクトルで十分であることが明らかである。ビデオシーケンス全体にわたる特徴点の軌跡は必要なく、したがってこの方法は簡単に実現することができる。
【0046】
前記パラメータを決定するために、同時に観察された関数モデルF1,F2,F3の差が最小二乗法にしたがい最小にされる。解は平均計算の標準的方法にしたがって求められる。たとえば非特許文献5を参照。
【0047】
可能な変形実施例では、複数のカメラ4が各車両側で使用される。これにより相互に対向する測定ヘッド10、12の間の間隔を小さくすることができる。同じ視野を達成するためには、車両4の各側に複数のカメラまたは測定ヘッド10,12を走行方向に沿って横に設置しなければならない。利点は、車両幅よりも僅かだけ広い、非常に小さなシステム構造が実現可能なことである。各側で複数のカメラ画像を評価するために、共通の基準面への歪み補正が行われる。続いてオプティカルフローが計算され、すでに説明した評価手続が実行される。
【0048】
変形実施例では、この方法が、画像歪み補正のステップなしで実行される。オプティカルフローベクトルは歪んだオリジナルビデオカメラ画像から計算される。続いて幾何学的歪みの周囲のフローベクトルが補正されるか、または歪みが関数モデルで減衰尺度(Θ)の計算の際に考慮される。フローベクトルの密度またはフローベクトルの数に依存して、本方法を実施するために必要な計算時間の最適化が行われる。
【0049】
オプションとして関数モデルを、
a)画像面と車両運動面の傾斜
b)個々の車輪ポイントと車体ポイント間の深度変化、および/または
c)サスペンションの垂直方向運動からの偏差(斜めスプリング角)を記述するパラメータだけ拡張し、本方法の精度を改善することができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5