【実施例】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0026】
[装置構成]
図1は、本実施例に係る画像表示装置1の構成を示す。
図1に示すように、画像表示装置1は、主に、画像信号入力部2と、ビデオASIC3と、フレームメモリ4と、ROM5と、RAM6と、レーザドライバASIC7と、MEMSミラー制御部8と、レーザ光源ユニット9と、を備える。
【0027】
例えば、画像表示装置1は、ユーザの目の位置(アイポイント)から虚像として画像を視認させるヘッドアップディスプレイや、ユーザの頭部などに装着可能に構成され、ユーザの網膜上に画像を描画するヘッドマウントディスプレイに適用される。この他にも、画像表示装置1は、例えばレーザ光を用いたプロジェクタに適用することができる。なお、
図1中のレーザ光源ユニット9は、光の進行方向に沿った面にて切断した図を示している。
【0028】
画像信号入力部2は、外部から入力される画像信号を受信してビデオASIC3に出力する。ビデオASIC3は、画像信号入力部2から入力される画像信号及びMEMSミラー10から入力される走査位置情報に基づいてレーザドライバASIC7やMEMSミラー制御部8を制御するブロックであり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されている。ビデオASIC3は、同期/画像分離部31と、ビットデータ変換部32と、発光パターン変換部33と、タイミングコントローラ34と、を備える。
【0029】
同期/画像分離部31は、画像信号入力部2から入力された画像信号から、画像表示部に表示される画像データと同期信号とを分離し、画像データをフレームメモリ4へ書き込む。ビットデータ変換部32は、フレームメモリ4に書き込まれた画像データを読み出してビットデータに変換する。発光パターン変換部33は、ビットデータ変換部32で変換されたビットデータを、各レーザの発光パターンを表す信号に変換する。タイミングコントローラ34は、同期/画像分離部31、ビットデータ変換部32の動作タイミングを制御する。また、タイミングコントローラ34は、後述するMEMSミラー制御部8の動作タイミングも制御する。
【0030】
フレームメモリ4には、同期/画像分離部31により分離された画像データが書き込まれる。ROM5は、ビデオASIC3が動作するための制御プログラムやデータなどを記憶している。RAM6には、ビデオASIC3が動作する際のワークメモリとして、各種データが逐次読み書きされる。
【0031】
レーザドライバASIC7は、後述するレーザ光源ユニット9に設けられるレーザダイオード(LD)を駆動する信号を生成するブロックであり、ASICとして構成されている。レーザドライバASIC7は、赤色レーザ駆動回路71と、青色レーザ駆動回路72と、緑色レーザ駆動回路73と、を備える。赤色レーザ駆動回路71は、発光パターン変換部33が出力する信号に基づき、赤色レーザLD1を駆動する。青色レーザ駆動回路72は、発光パターン変換部33が出力する信号に基づき、青色レーザLD2を駆動する。緑色レーザ駆動回路73は、発光パターン変換部33が出力する信号に基づき、緑色レーザLD3を駆動する。
【0032】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー制御部8は、タイミングコントローラ34が出力する信号に基づきMEMSミラー10を制御する。MEMSミラー制御部8は、サーボ回路81と、ドライバ回路82と、を備える。サーボ回路81は、タイミングコントローラからの信号に基づき、MEMSミラー10の動作を制御する。ドライバ回路82は、サーボ回路81が出力するMEMSミラー10の制御信号を所定レベルに増幅して出力する。
【0033】
レーザ光源ユニット9は、主に、レーザドライバASIC7から出力される駆動信号に基づいて、レーザ光を出射するように機能する。具体的には、レーザ光源ユニット9は、赤色レーザLD1と、青色レーザLD2と、緑色レーザLD3と、コリメータレンズ91a、91b、91cと、ダイクロイックミラー92a、92bと、ビームスプリッタ93と、MEMSミラー10と、ピンホール部12と、受光部13と、を備える。
【0034】
赤色レーザLD1は赤色レーザ光を出射し、青色レーザLD2は青色レーザ光を出射し、緑色レーザLD3は緑色レーザ光を出射する。なお、以下では、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3を区別しないで用いる場合には、単に「レーザLD」と表記し、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光を区別しないで用いる場合には、単に「レーザ光」又は「ビーム」と表記する。
【0035】
コリメータレンズ91a、91b、91cは、それぞれ、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光を平行光にする。ダイクロイックミラー92aは、コリメータレンズ91aを経由した赤色レーザ光を反射させると共に、コリメータレンズ91cを経由した緑色レーザ光を透過させる。ダイクロイックミラー92bは、ダイクロイックミラー92aを経由した赤色レーザ光及び緑色レーザ光を透過させると共に、コリメータレンズ91bを経由した青色レーザ光を反射させる。ダイクロイックミラー92a、92bは、本発明における「合成素子」の一例である。ビームスプリッタ93は、このようにダイクロイックミラー92bから出射されたレーザ光を分割し、一部のレーザ光を反射させ、残りの一部のレーザ光を透過させる。ビームスプリッタ93で反射したレーザ光はMEMSミラー10に入射され、ビームスプリッタ93を透過したレーザ光はピンホール部12に入射される。
【0036】
MEMSミラー10は、ビームスプリッタ93で反射されたビーム(レーザ光)を、スクリーン11に向けて反射する。具体的には、MEMSミラー10は、画像信号入力部2に入力された画像を表示するために、MEMSミラー制御部8の制御により、ビームによってスクリーン11を走査するように動作し、また、その際の走査位置情報(例えばミラーの角度などの情報)をビデオASIC3へ出力する。MEMSミラー10は、本発明における「走査手段」の一例である。
【0037】
ピンホール部12は、ビームスプリッタ93を透過したビーム(レーザ光)を通過させ、受光部13に入射させる。ピンホール部12には、大きさの異なる2つのホール(第1ホール12a及び第2ホール12b)が形成されている。第1ホール12aのサイズは、第2ホール12bのサイズよりも小さい。言い換えると、第1ホール12aの径は、第2ホール12bの径よりも小さい。ビームスプリッタ93からのビームは、このような第1ホール12a及び第2ホール12bの両方を同時に通過し、受光部13に入射される。
【0038】
受光部13は、ピンホール部12を通過したビームが入射される。受光部13は、大きさの異なる2つの受光素子(第1受光素子13a及び第2受光素子13b)を有する。第1受光素子13aのサイズは、第2受光素子13bのサイズよりも小さい。上記のように第1ホール12a及び第2ホール12bを同時に通過したビームは、このような第1受光素子13a及び第2受光素子13bに入射される。具体的には、第1受光素子13aには、第1ホール12aを通過したビームが入射され、第2受光素子13bには、第2ホール12bを通過したビームが入射される。第1受光素子13a及び第2受光素子13bは、フォトディテクタなどの光電変換素子(例えば4分割受光素子)であり、それぞれ、ビームの受光位置に応じた受光信号Sd1、Sd2をビデオASIC3へ出力する。受光信号Sd1は本発明における「第1受光信号」の一例であり、受光信号Sd2は本発明における「第2受光信号」の一例である。
【0039】
上記したビデオASIC3は、第1受光素子13a及び第2受光素子13bからの受光信号Sd1、Sd2に基づいて、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3の光軸ずれを検出する。そして、ビデオASIC3は、検出した光軸ずれに基づいて、当該光軸ずれを補正するための処理を行う。例えば、ビデオASIC3は、ビームの発光タイミングを制御することで、光軸ずれを補正する。このように、ビデオASIC3は、本発明における「補正手段」の一例に相当する。なお、
図1では、ビデオASIC3とレーザ光源ユニット9とが別体に構成されているが、少なくともビデオASIC3とレーザ光源ユニット9とを有する構成を「光源ユニット」として扱っても良い。
【0040】
なお、
図1では、説明を分かり易くするために、ビームスプリッタ93を透過したビームが、第2ホール12bのみを通過し、第2受光素子13bのみに入射される図を示しているが、実際には(大きな光軸ずれが生じていない場合)、ビームスプリッタ93を透過したビームは、第1ホール12a及び第2ホール12bの両方を通過し、第1受光素子13a及び第2受光素子13bの両方に入射される。
【0041】
[ピンホール部及び受光部の構成]
次に、
図2を参照して、本実施例に係るピンホール部12及び受光部13の構成について具体的に説明する。
【0042】
図2(a)は、
図1中の矢印A1で示す方向からピンホール部12を観察した平面図である。
図2(a)に示すように、ピンホール部12には、第1ホール12aと、第1ホール12aよりも大きなサイズ(径)を有する第2ホール12bとが形成されている。また、ビームスプリッタ93からのビームによりピンホール部12上に形成されるスポットB1(破線で示す)の中に、第1ホール12a及び第2ホール12bの両方が位置するように、ピンホール部12に第1ホール12a及び第2ホール12bが形成されている。
【0043】
上記のように第1ホール12a及び第2ホール12bを構成することで、ビームスプリッタ93からのビームが、第1ホール12a及び第2ホール12bの両方を同時に通過することとなる。この場合、第1ホール12aは第2ホール12bよりも径が小さいため、第1ホール12aを通過したビームの径は第2ホール12bを通過したビームの径よりも小さくなる、言い換えると第2ホール12bを通過したビームの径は第1ホール1aを通過したビームの径よりも大きくなる。即ち、ピンホール部12に第1ホール12a及び第2ホール12bを設けることで、第1ホール12aによって、比較的小さな径を有するビームを形成することができると共に、第2ホール12bによって、比較的大きな径を有するビームを形成することができる。
【0044】
図2(b)は、
図1中の矢印A1で示す方向から受光部13を観察した平面図である。
図2(b)に示すように、受光部13は、第1受光素子13aと、第1受光素子13aよりも大きなサイズを有する第2受光素子13bとを具備する。第1受光素子13a及び第2受光素子13bは、4分割受光素子として構成されている。例えば、第1受光素子13a及び第2受光素子13bは、図示しない一の部材の同一平面上に配置されている。具体的には、第1受光素子13aは、ピンホール部12の第1ホール12aに対応する位置に配置され、第2受光素子13bは、ピンホール部12の第2ホール12bに対応する位置に配置されている。例えば、第1ホール12aの中心点と第1受光素子13aの中心点とが概ね一致するように、第1受光素子13aが配置されていると共に、第2ホール12bの中心点と第2受光素子13bの中心点とが概ね一致するように、第2受光素子13bが配置されている。
【0045】
上記のように第1受光素子13a及び第2受光素子13bを配置することで、第1受光素子13aには、第1ホール12aを通過したビームが入射され、第2受光素子13bには、第2ホール12bを通過したビームが入射される。この場合、
図2(b)に示すように、第1受光素子13a上には、第1ホール12aを通過したビームによるスポットB2(破線で示す)が形成され、第2受光素子13b上には、第2ホール12bを通過したビームによるスポットB3(破線で示す)が形成される。前述したように、第1ホール12aを通過したビームの径は第2ホール12bを通過したビームの径よりも小さいため、第1受光素子13a上のスポットB2は第2受光素子13b上のスポットB3よりもサイズが小さくなる、言い換えると第2受光素子13b上のスポットB3は第1受光素子13a上のスポットB2よりもサイズが大きくなる。
【0046】
なお、第1受光素子13a上に形成されたスポットB2に基づいて光軸ずれを適切に検出できるように、スポットB2のサイズに応じて第1受光素子13aのサイズを設計することが望ましい。若しくは、スポットB2に基づいて光軸ずれを適切に検出できるように、第1受光素子13aのサイズに応じた適切なサイズのスポットB2が形成されるように第1ホール12aのサイズを設計することが望ましい。第2受光素子13b及び第2ホール12bについても同様である。
【0047】
[本実施例の作用効果]
次に、上記した本実施例に係るピンホール部12及び受光部13による作用効果について説明する。
【0048】
ここでは、理解を容易にするために、比較例に係る構成(前述した特許文献1に記載された構成に相当する)の問題点を説明してから、本実施例の作用効果について説明する。
【0049】
図3は、比較例に係る構成の問題点を説明するための図を示す。
図3(a)は、比較例に係る構成を概略的に示している。
図3(a)に示すように、比較例に係る構成では、1つのホール12xaのみが形成されたピンホール部12xと、1つの受光素子13xとを用いる。
【0050】
図3(b)は、光軸ずれの具体例を説明するための図を示している。
図3(b)に示すように、受光素子13xは、4分割受光素子として構成され、4つの受光素子13xa、13xb、13xc、13xdを有する。また、
図3(b)では、ビームによって受光素子13x上に形成されたスポットB5aを破線で示している。ここでは、図中の上方向にのみ、光軸がずれた場合を例示している。この場合には、光軸ずれ量yは、ピンホール部12xと受光素子13xとの距離dと、ピンホール部12xからのビームの出射角θとを用いて、「y=d・tanθ」によって得られる。このような光軸ずれ量y(つまり上下方向の光軸ずれ)は、受光素子13xaの出力値と受光素子13xbの出力値とを加算した値から、受光素子13xcの出力値と受光素子13xdの出力値とを加算した値を減算することで検出することができる。なお、左右方向の光軸ずれ量は、受光素子13xaの出力値と受光素子13xdの出力値とを加算した値から、受光素子13xbの出力値と受光素子13xcの出力値とを加算した値を減算することで検出することができる。このような4分割受光素子を用いた場合の光軸ずれの検出方法は、本実施例でも同様に適用されるものとする。
【0051】
図3(c)及び(d)は、ビームにより受光素子13x上に形成されたスポットのサイズ(以下、適宜「ビームサイズ」と呼ぶ。)が、光軸ずれの検出精度及び検出範囲に与える影響を説明するための図である。
図3(c)は、ビームサイズを大きくした場合に、光軸ずれの検出精度及び検出範囲に与える影響を説明するための図である。ビームサイズは、ピンホール部12xのホール12xaを大きくすることで大きくなる。
図3(c)では、ビームによって受光素子13x上に形成されたスポットB5bを破線で示している。ここでは、図中の上方向にのみ、光軸がずれた場合を例示している。このようにビームサイズが大きいと、光軸ずれの検出範囲を確保することはできるが、光軸ずれの検出精度が低下する傾向にある。具体的には、
図3(c)に示すように、光軸ずれ量yがスポットB5bの半径Rに比べて小さい場合には、光軸ずれ量に対応する受光素子13xの受光信号の変化がかなり小さくなり、ノイズ等に埋もれて検出しにくくなる。
【0052】
図3(d)は、ビームサイズを小さくした場合に、光軸ずれの検出精度及び検出範囲に与える影響を説明するための図である。ビームサイズは、ピンホール部12xのホール12xaを小さくすることで小さくなる。
図3(d)では、ビームによって受光素子13x上に形成されたスポットB5cを破線で示している。ここでは、図中の上方向にのみ、光軸がずれた場合を例示している。このようにビームサイズが小さいと、光軸ずれの検出精度を確保することはできるが、光軸ずれの検出範囲が狭くなる傾向にある。具体的には、
図3(d)に示すように、光軸ずれ量yがスポットB5cの半径Rを超えていくと、受光素子13xの受光信号が概ね一定となるため、光軸ずれ量を適切に検出することができなくなる。
【0053】
ここで、
図4を参照して、光軸ずれ量の大きさが異なる場合に検出精度に与える影響について補足説明を行う。
図4(a)及び
図4(b)は、光軸ずれ量(横軸に示す)と受光素子13xの受光信号(縦軸に示す)との関係の一例を示している。縦軸に示す受光信号(%)は、受光素子13xの概ね中央にスポットが位置する場合に「0(%)」となる。また、受光信号(%)は、受光素子13xの上下方向における片側にのみスポットが位置する場合(つまり、受光素子13xa、13xbと受光素子13xc、13xdとのいずれか一方の側にスポットが位置する場合)、及び、受光素子13xの左右方向における片側にのみスポットが位置する場合(つまり、受光素子13xa、13xdと受光素子13xb、13xcとのいずれか一方の側にスポットが位置する場合)、「100(%)」となる。なお、このような4分割受光素子を用いた場合の受光信号の定義は、本実施例でも同様に適用されるものとする。
【0054】
図4(a)は、「−10(pixcel)」から「10(pixcel)」までの範囲のグラフを示しており、
図4(b)は、「−1(pixcel)」から「1(pixcel)」までの範囲のグラフを示している。
図4(b)は、
図4(a)のグラフにおける一部の範囲を抜き出したグラフである、つまりレンジを変えたグラフである。
図4(a)より、比較的大きな光軸ずれ量が生じた場合には、受光信号がそれに応じた変化をするため、受光信号に基づいて当該光軸ずれ量を適切に検出することができると言える。これに対して、
図4(b)より、比較的小さな光軸ずれ量が生じた場合には、受光信号の変化がかなり小さくなるため、受光信号に基づいて当該光軸ずれ量を適切に検出することが困難であると言える(例えば「±1/8(pixcel)」の範囲を参照)。このような問題は、前述した理由より、ビームサイズが大きい場合に生じ易い。
【0055】
以上述べたことから、比較例に係る構成では、光軸ずれの検出精度及び検出範囲の両方を適切に確保することが困難であると言える。
【0056】
一方で、
図1及び
図2に示したように、本実施例に係る構成では、大きさの異なる2つのホール(第1ホール12a及び第2ホール12b)を有するピンホール部12を用いると共に、第1ホール12a及び第2ホール12bのそれぞれを通過したビームを受光する2つの受光素子(第1受光素子13a及び第2受光素子13b)を有する受光部13を用いている。これにより、第1ホール12aによって比較的小さな径を有するビームを形成し、当該ビームを第1受光素子13aに受光させることができると共に、第2ホール12bによって比較的大きな径を有するビームを形成し、当該ビームを第2受光素子13bに受光させることができる。つまり、第1ホール12aによって、比較的小さなビームサイズのスポットを第1受光素子13a上に形成することができると共に、これと同時に、第2ホール12bによって、比較的大きなビームサイズのスポットを第2受光素子13b上に形成することができる。
【0057】
したがって、本実施例によれば、第1受光素子13aの受光信号Sd1を用いることで、光軸ずれを高精度で検出することができると共に、第2受光素子13bの受光信号Sd2を用いることで、広い範囲の光軸ずれを検出することができる。つまり、本実施例によれば、第1受光素子13a及び第2受光素子13bを用いて光軸ずれを検出することで、光軸ずれの検出精度及び検出範囲の両方を適切に確保することが可能となる。また、本実施例に係る構成は、従来の装置に対して、ピンホール部に2つのホールを形成すると共に、これらを通過したビームを受光する2つの受光素子を適用するといった変更を加えれば実現できるので、装置の大型化やコストアップを最低限に抑えることができる。
【0058】
[ピンホール部の好適な構成例]
次に、上記したピンホール部12の好適な構成例について説明する。
【0059】
図5は、ピンホール部12の第1構成例を説明するための図を示す。第1構成例では、ビームスプリッタ93から出射されたビームにおけるビーム広がり角が広い方向に沿って、ピンホール部12に第1ホール12a及び第2ホール12bを並べて配置する。
【0060】
図5(a)は、ピンホール部12の平面図を示している。ここでは、第1ホール12aの中心と第2ホール12bの中心とを結んだ線分に対応する軸D1と、軸D1に直交し、且つビームスプリッタ93からのビームによるスポットB1の中心を通る軸D2とを例に挙げる。
図5(b)は、軸D1上でのビームの強度分布の例を示しており、
図5(c)は、軸D2上でのビームの強度分布の例を示している。これより、軸D1上のビームの方が軸D2上のビームよりも、ビーム広がり角が広いことがわかる。
【0061】
なお、「ビーム広がり角」は、ビームの強度が最大値となる位置から、ビームの強度が最大値の半分になる位置までの範囲に相当する。よって、「ビーム広がり角が広い」とは、ビームの強度が最大値となる位置から半分になる位置までの範囲が広いことを意味している。つまり、ビーム広がり角が広い場合には、ビーム広がり角が狭い場合に比して、比較的高い強度を有するビームの範囲が広くなる。
【0062】
第1構成例では、このようなビーム広がり角が広い軸D1を用いて、当該軸D1上に第1ホール12a及び第2ホール12bを並べて配置する。好ましくは、ビームスプリッタ93からのビームについて、ビーム広がり角が最も広い軸を求めて、求められた軸上に第1ホール12a及び第2ホール12bを並べて配置すると良い。このような第1構成例によれば、比較的高い強度を有するビームを、第1受光素子13a及び第2受光素子13bの両方に受光させることができ、ビーム広がり角を考慮しない場合と比較して、第1受光素子13a及び第2受光素子13bの検出精度を向上させることができる。
【0063】
次に、ピンホール部12の第2構成例について説明する。第2構成例では、環境変化又は経年変化によってビームの光軸のずれが生じる方向に沿って、ピンホール部12に第1ホール12a及び第2ホール12bを並べて配置する。つまり、第2構成例では、環境変化や経年変化などによって光軸のずれが生じる方向についての傾向を考慮して、そのような方向に沿って第1ホール12a及び第2ホール12bを並べて配置する。1つの例では、動作温度の変化に起因する光軸ずれには一定の傾向があるため、動作温度変化によって光軸ずれが生じる方向に沿って、ピンホール部12に第1ホール12a及び第2ホール12bを並べて配置する。この例によれば、動作温度の変化に起因する光軸ずれを、精度良く検出することが可能となる。
【0064】
[受光部の位置調整方法]
次に、レーザ光源ユニット9の製造方法について説明する。具体的には、レーザ光源ユニット9の製造工程の中の、レーザ光源ユニット9に各構成要素を配置した後の受光部13の位置を調整する工程について説明する。
【0065】
図6は、本実施例に係る受光部13の位置調整方法を実現するシステムの構成例を示している。
図6に示すように、受光部13は、アクチュエータ102を介して制御部101によって位置が調整される。制御部101は、第1受光素子13a及び第2受光素子13bの受光信号Sd1、Sd2を取得し、当該受光信号Sd1、Sd2に基づいて、アクチュエータ102を制御することで受光部13の位置を調整する(例えば矢印E1参照)。1つの例では、制御部101及びアクチュエータ102は、画像表示装置1を製造するための製造装置により構成される。
【0066】
図7は、受光部13の位置調整方法を示すフローチャートである。このフローは、ピンホール部12に対する受光部13の位置を調整するべく、制御部101によって実行される。
【0067】
まず、制御部101は、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて、受光部13の位置を調整する(ステップS101)。例えば、制御部101は、受光信号Sd2(%)が小さくなるように、アクチュエータ102を制御することで受光部13を移動させる。そして、制御部101は、第2受光素子13bの受光信号Sd2が所定値以下となったか否かを判定する(ステップS102)。受光信号Sd2が所定値以下である場合(ステップS102:Yes)、工程はステップS103に進み、受光信号Sd2が所定値以下でない場合(ステップS102:No)、工程はステップS101に戻る。つまり、制御部101は、受光信号Sd2が所定値以下になるまで、受光部13の位置調整を繰り返し行う。ここで、ステップS102の判定で用いられる所定値は、第1ホール12aからのビームが第1受光素子13aに照射されるような位置に受光部13が調整された際に得られる、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて設定される。このような所定値を用いてステップS101、S102の工程を行うことは、第1ホール12aからのビームが第1受光素子13aに適切に照射されるまで、受光部13の位置を調整することに相当する。
【0068】
なお、上記では、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて、第1ホール12aからのビームが第1受光素子13aに照射されたか否かを判断していたが、この代わりに、第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて、当該判断を行っても良い。例えば、第1受光素子13aがビームを受光したことを示す出力を出した際に、第1ホール12aからのビームが第1受光素子13aに照射されたと判断することができる。
【0069】
次に、ステップS103では、制御部101は、第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて、受光部13の位置を調整する。例えば、制御部101は、受光信号Sd1(%)が小さくなるように、アクチュエータ102を制御することで受光部13を移動させる。そして、制御部101は、第1受光素子13aの受光信号Sd1が所定値以下となったか否かを判定する(ステップS104)。受光信号Sd1が所定値以下である場合(ステップS104:Yes)、受光部13の位置調整は終了され、受光信号Sd1が所定値以下でない場合(ステップS104:No)、工程はステップS103に戻る。つまり、制御部101は、受光信号Sd1が所定値以下になるまで、受光部13の位置調整を繰り返し行う。ここで、ステップS103の判定で用いられる所定値は、例えば「0(%)」付近の値が用いられる。
【0070】
以上説明したように、本実施例では、まず、広い範囲を検出可能な第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて位置調整を行い、この後に、高い精度で検出可能な第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて位置調整を行う。つまり、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて粗調整を行ってから、第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて微調整を行う。これにより、受光部13の位置調整を効率的に行うことができ、位置調整に要する時間を短縮することが可能となる。
【0071】
なお、上記した受光部13の位置調整は、1つの例では、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3のいずれか1つのみを発光させた際に得られた受光信号Sd1、Sd2に基づいて実施される。他の例では、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3を個々に発光させた際に得られた複数の受光信号Sd1、Sd2を平均した値に基づいて、受光部13の位置調整が実施される。
【0072】
なお、上記では、ピンホール部12を固定して、受光部13を移動させることで、ピンホール部12に対する受光部13の位置を調整する例を示した。この代わりに、受光部13を固定して、ピンホール部12を移動させることで、受光部13に対するピンホール部12の位置を調整しても良い。この場合にも、
図7に示したフローを同様に適用することができる。
【0073】
[光軸ずれ補正方法]
次に、
図8を参照して、本実施例に係る光軸ずれ補正方法について説明する。
【0074】
図8は、光軸ずれを補正するための処理を示すフローチャートである。このフローは、画像表示装置1の通常動作時に、ビデオASIC3によって実行される。なお、光軸ずれの補正は、赤色レーザLD1、青色レーザLD2及び緑色レーザLD3を個々に発光させた際に得られた、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光の各々による受光信号Sd1、Sd2に基づいて実施される。よって、以下のフローの説明で用いる受光信号Sd1、Sd2は、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光の各々についての受光信号であるものとする。
【0075】
まず、ビデオASIC3は、第1受光素子13aの受光信号Sd1を取得し(ステップS201)、受光信号Sd1が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS202)。このステップS202では、ビデオASIC3は、光軸ずれ量が第1受光素子13aにて検出可能な範囲を超えているか否かを判定している。例えば、ビデオASIC3は、所定値として「100(%)」を用いて、ステップS202の判定を行う。
【0076】
受光信号Sd1が所定値以上である場合(ステップS202:Yes)、処理はステップS204に進む。この場合には、光軸ずれ量が第1受光素子13aにて検出可能な範囲を超えており、第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて光軸ずれを補正することが困難であるため、ビデオASIC3は、ステップS204以降で、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて光軸ずれを補正する処理を行う。
【0077】
一方で、受光信号Sd1が所定値以上でない場合(ステップS202:No)、処理はステップS203に進む。この場合には、光軸ずれ量が第1受光素子13aにて検出可能な範囲内にあるため、ビデオASIC3は、第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて光軸ずれを補正する(ステップS203)。具体的には、ビデオASIC3は、第1受光素子13aの受光信号Sd1に応じた光軸ずれを求め、当該光軸ずれに基づいて、ビームの発光タイミングを制御する。1つの例では、ビデオASIC3は、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光のいずれか1つの光軸を基準とし、この基準に他のレーザ光の光軸を合わせるべく、該当するレーザ光の発光タイミングを遅くしたり速くしたりする。他の例では、ビデオASIC3は、光軸についての絶対的な基準位置を規定し、この基準位置に赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光のそれぞれの光軸を合わせるべく、該当するレーザ光の発光タイミングを遅くしたり速くしたりする。以上のステップS203の処理が終了すると、処理はステップS201に戻る。
【0078】
次に、ステップS204では、ビデオASIC3は、第2受光素子13bの受光信号Sd2を取得する。そして、ビデオASIC3は、受光信号Sd2が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS205)。このステップS205では、ビデオASIC3は、光軸ずれ量が第2受光素子13bにて検出可能な範囲を超えているか否かを判定している。例えば、ビデオASIC3は、所定値として「100(%)」を用いて、ステップS205の判定を行う。
【0079】
受光信号Sd2が所定値以上である場合(ステップS205:Yes)、光軸ずれ量が第2受光素子13bにて検出可能な範囲を超えており、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて光軸ずれを補正することが困難であるため、処理は終了する。この場合には、画像表示装置1は、例えば補正不可な光軸ずれが生じている旨を報知する。
【0080】
一方で、受光信号Sd2が所定値以上でない場合(ステップS205:No)、処理はステップS206に進む。この場合には、光軸ずれ量が第2受光素子13bにて検出可能な範囲内にあるため、ビデオASIC3は、第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて光軸ずれを補正する(ステップS206)。具体的には、ビデオASIC3は、第2受光素子13bの受光信号Sd2に応じた光軸ずれを求め、当該光軸ずれに基づいて、ビームの発光タイミングを制御する。発光タイミングの制御方法は、上記のステップS203にて例示した方法を同様に適用することができる。以上のステップS206の処理が終了すると、処理はステップS201に戻る。
【0081】
以上説明したように、本実施例では、基本的には、高い精度で検出可能な第1受光素子13aの受光信号Sd1に基づいて光軸ずれを補正することとし、光軸ずれ量が第1受光素子13bにて検出可能な範囲を超えた場合に限って、広い範囲を検出可能な第2受光素子13bの受光信号Sd2に基づいて光軸ずれを補正することとしている。これにより、光軸ずれの補正を効率的に行うことが可能となる。