特許第5666025号(P5666025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許5666025電子整流型のサーボ駆動装置を有する位置決めシステムを較正するための方法および装置
<>
  • 特許5666025-電子整流型のサーボ駆動装置を有する位置決めシステムを較正するための方法および装置 図000002
  • 特許5666025-電子整流型のサーボ駆動装置を有する位置決めシステムを較正するための方法および装置 図000003
  • 特許5666025-電子整流型のサーボ駆動装置を有する位置決めシステムを較正するための方法および装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666025
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】電子整流型のサーボ駆動装置を有する位置決めシステムを較正するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/12 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   H02P6/02 351P
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-558326(P2013-558326)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公表番号】特表2014-508504(P2014-508504A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2012050279
(87)【国際公開番号】WO2012123133
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年9月17日
(31)【優先権主張番号】102011005566.5
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アレックス グロースマン
(72)【発明者】
【氏名】ウド ジーバー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ビューアレ
(72)【発明者】
【氏名】ゼイネプ トサン
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−148405(JP,A)
【文献】 特開2001−193496(JP,A)
【文献】 特開平10−009026(JP,A)
【文献】 特開平08−084493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子整流型のサーボ駆動装置(4)と、当該サーボ駆動装置(4)に結合され抗力が加わる位置決め要素(6)とを有する位置決めシステム(1)の較正方法であって、
前記位置決め要素(6)の位置を検出することにより位置指示量が得られ、
前記位置指示量を用いて求められた可動子位置に基づいて、モータ磁界を生成するために前記サーボ駆動装置(4)の転流を行う較正方法において、
・第1の強度の第1のモータ磁界が生成されるように前記サーボ駆動装置(4)を駆動制御し、当該第1のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素(6)の位置を示す第1の位置指示量を求めるステップと、
・前記第1のモータ磁界と方向が同じである、第2の強度の第2のモータ磁界が生成されるように、前記サーボ駆動装置(4)を駆動制御し、当該第2のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素(6)の位置を示す第2の位置指示量を求めるステップと、
・前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量とに基づき、前記位置決め要素(6)に抗力が加わっていないと仮定した場合の当該位置決め要素(6)の位置を示す第3の位置指示量を求めるステップと、
・前記第3の位置指示量と、前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向に対応する可動子位置とを対応付けるステップと、
を有することを特徴とする、較正方法。
【請求項2】
前記位置決め要素(6)に抗力が加わっていないと仮定した場合の当該位置決め要素(6)の位置を示す前記第3の位置指示量を求めるステップは、前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量との外挿により、当該位置決め要素(6)に抗力が無い場合の当該位置決め要素(6)の位置を求める、
請求項1記載の較正方法。
【請求項3】
前記外挿は、線形外挿である、
請求項2記載の較正方法。
【請求項4】
前記モータ磁界の強度が0に相当する点で、前記外挿を行う、
請求項2または3記載の較正方法。
【請求項5】
前記サーボ駆動装置(4)は、複数の相電圧を用いて駆動制御可能であるように構成されており、
前記モータ磁界の強度は、前記サーボ駆動装置(4)に印加される相電圧のデューティ比によって決定され、および/または、前記モータ磁界の方向は前記相電圧の比によって決定される、
請求項1から4までのいずれか1項記載の較正方法。
【請求項6】
前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向は周方向であり、
各時点で求められた前記第3の位置指示量と、前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向に対応する前記可動子位置との対応付けを複数回行う、
請求項1から5までのいずれか1項記載の較正方法。
【請求項7】
電子整流型のサーボ駆動装置(4)と、当該サーボ駆動装置(4)に結合され抗力が加わる位置決め要素(6)とを有する位置決めシステム(1)の較正装置であって、
前記位置決め要素(6)の位置を検出することにより位置指示量が得られ、
前記位置指示量を用いて求められた可動子位置に基づいて、モータ磁界を生成するための前記サーボ駆動装置(4)の転流が行われ、
前記較正装置は、
・第1の強度の第1のモータ磁界が生成されるように前記サーボ駆動装置(4)を駆動制御し、当該第1のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素(6)の位置を示す第1の位置指示量を求め、
・前記第1のモータ磁界と方向が同じである、第2の強度の第2のモータ磁界が生成されるように、前記サーボ駆動装置(4)を駆動制御し、当該第2のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素(6)の位置を示す第2の位置指示量を求め、
・前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量とに基づき、前記位置決め要素(6)に抗力が加わっていないと仮定した場合の当該位置決め要素(6)の位置を示す第3の位置指示量を求め、
・前記第3の位置指示量と、前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向に対応する可動子位置とを対応付ける
ように構成されていることを特徴とする較正装置。
【請求項8】
・電子整流型のサーボ駆動装置(4)と、
・前記サーボ駆動装置(4)に結合された、抗力が加わる位置決め要素(6)と、
・前記位置決め要素(6)の位置を検出して、当該位置決め要素(6)の位置を示す位置指示量を出力する位置検出器(7)と、
・前記位置指示量を用いて求められた可動子位置に基づいてモータ磁界を生成するように前記サーボ駆動装置(4)の転流を行うための制御装置(3)と
を有する位置決めシステム(1)であって、
前記位置決めシステム(1)はさらに、
・当該位置決めシステム(1)の較正装置
も有し、
前記較正装置は前記制御装置(3)に、
・第1の強度の第1のモータ磁界を生成するように前記サーボ駆動装置(4)を駆動制御させ、前記第1のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素(6)の位置を示す第1の位置指示量を求めさせ、
・前記第1のモータ磁界と方向が同じである第2の強度の第2のモータ磁界を生成するように前記サーボ駆動装置(4)を駆動制御させ、前記第2のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素(6)の位置を示す第2の位置指示量を求めさせる
ように構成されており、
前記較正装置は、
・前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量とに基づいて、前記位置決め要素(6)に抗力が加わっていないと仮定したときの当該位置決め要素(6)の位置を示す第3の位置指示量を求め、
・前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向に対応する可動子位置に、前記第3の位置指示量を対応付ける
ように構成されていることを特徴とする、位置決めシステム(1)。
【請求項9】
データ処理ユニット上で実行されるときに請求項1から6までのいずれか1項記載の較正方法を実施するプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決めされる位置決め要素の位置が位置検出器によって読み取られて戻されるように構成された、電子整流型のサーボ駆動装置を備えた位置決めシステムに関する。
【0002】
従来技術
自動車では数多くの位置決め装置が用いられ、これらの位置決め装置には通常、電動サーボ駆動装置と、変速機または機械装置と、前記サーボ駆動装置によって前記変速機を介して位置が調整される位置決め要素とが含まれる。たとえばこの位置決め装置は、スロットルバルブ制御装置や排ガス再循環バルブとして使用したり、給気移動機構(Ladungsbewegungsklappe)や数多くの同様の部品に対して使用することができる。
【0003】
上述の位置決め装置には、使用領域に応じてしばしば、位置決め要素の実際の瞬時位置を読み取って戻すための位置検出器が設けられていることが多い。この位置検出器は、位置決め要素が正確な位置にあるか否かをチェックするために使用することができる。このようなチェックにより、位置決め装置の制御位置が、位置決め要素の実際の位置にも相当するか否かを監視することができる。また、位置検出器によって検出された瞬時位置を用いて、測定されたこの瞬時位置を所定の目標位置と比較して制御することにより、位置決め要素の位置制御を行うこともできる。
【0004】
通常、上述のような位置決め装置用のサーボ駆動装置としては、ブラシ整流型のモータが使用される。しかしこのブラシ整流型のモータは、ブラシ火花が発生することによりEMC特性が劣化してしまうという欠点を有する。さらにたとえば、整流器におけるブラシの摩擦に起因して、ブラシ整流型のモータの消費エネルギーが多くなり、また、ブラシの摩耗に起因して、ブラシ整流型のモータの寿命が短縮してしまう。
【0005】
上述の欠点は、サーボ駆動装置として電子整流型モータを使用する場合には当てはまらない。しかし、電子整流形サーボ駆動装置は外部の整流装置を必要とし、最適な整流を保証するためには、この外部整流には可動子の位置についての情報を必要とする。可動子の位置を検出するための通常の方法では、モータに追加的に設けられる可動子位置センサを使用するが、この可動子位置センサにより、サーボ駆動装置全体の製造がより面倒になる。さらに、前記サーボ駆動装置と、対応する制御装置との間のケーブル配線にかかるコストも増大する。
【0006】
ステータ巻線に誘導される電圧の測定を利用するセンサレス方式、たとえば逆起電力方式もまた、制御装置において面倒な配線接続を行う必要があり、このようなセンサレス方式は、位置決め装置に関して通常は過度に高コストとなる。このセンサレス方式に代わる、可動子位置に依存するインダクタンスを測定することにより可動子位置を求める、択一的なセンサレス手法でもまた、制御装置において面倒な配線接続を行う必要があり、その上、ロータ位置を測定する上述のセンサ方式と同等のロバスト性および信頼性を有さない。
【0007】
位置決め要素または当該位置決め要素を駆動する変速機に取り付けられた位置検出器をブラシレスモータの整流に直接使用する位置決めシステムが公知である。この位置決めシステムでは、転流を行えるようにするため、位置検出器から出力される位置指示量を可動子位置に変換する。
【0008】
電子整流型のサーボ駆動装置の駆動制御では、サーボ駆動装置の可動子によって生成される励磁界(電気的な可動子位置)に対してモータ磁界が90°進角すると、トルクに関して最良の効率が実現される。しかし、たとえば、経時変化がドリフトとなって位置検出器に及ぼす影響や、位置決め要素とサーボ駆動装置とを結合する減速機に起因する精度低下等の種々の影響や、上述の部品の公差により、位置指示量から求められる可動子位置の精度は低下してしまう。このような可動子位置の精度低下により、誤差のある可動子位置に基づいてサーボ駆動装置の転流を行うことになってしまい、位置決めのために使用できるトルクが低下してしまう。
【0009】
通常、位置決めシステムの始動時には、位置検出器によって求められる位置指示量と実際の可動子位置との対応関係は定まっていないので、較正を行わなければならない。この較正はたとえば、予め定められた方向のモータ磁界を生成する転流パターンを用いて、開ループ制御モードでサーボ駆動装置を駆動制御することによって行うことができる。この開ループ制御モードでは、可動子の位置がモータ磁界の方向に相当するように、可動子の励磁界の向きがモータ磁界の向きに整合していなければならない。このようにして求められた可動子位置に、位置決め要素の位置を対応付けることができる。
【0010】
この較正プロセス中に位置決め要素が動くと、通常、一定でない抗力が生じ、この抗力はたとえば摩擦等に起因して、または、位置決め要素に加わる復元力に起因して生じる。この抗力が較正プロセスを困難にする。というのもこの抗力により、抗力が加わらない位置決め要素に対して可動子位置に未知の偏差が生じるからである。
【0011】
したがって本発明の課題は、外部の位置検出器を用いたときに、一定でない抗力が位置決め要素および/または可動子に及ぼす影響を補償する転流を行えるように、位置決めシステムの較正方法および較正装置を実現することである。
【0012】
発明の開示
前記課題は、請求項1に記載の位置決めシステムの較正方法と、その他の独立請求項に記載の装置および位置決めシステムとによって解決される。
【0013】
従属請求項に、本発明の他の有利な実施形態が記載されている。
【0014】
本発明の第1の対象は、電子整流型のサーボ駆動装置と、当該サーボ駆動装置に結合され抗力が加わる位置決め要素とを有する位置決めシステムの較正方法であり、前記位置決め要素の位置を検出することにより位置指示量が得られ、前記位置指示量を用いて求められた可動子位置に基づいて、モータ磁界を生成するために前記サーボ駆動装置の転流を行う。この較正方法は、以下のステップを有する:
・第1の強度の第1のモータ磁界が生成されるように前記サーボ駆動装置を駆動させ、当該第1のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素の位置を示す第1の位置指示量を求めるステップ。
・前記第1のモータ磁界と方向が同じである、第2の強度の第2のモータ磁界が生成されるように、前記サーボ駆動装置を駆動させ、当該第2のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素の位置を示す第2の位置指示量を求めるステップ。
・前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量とに基づき、前記位置決め要素に抗力が加わっていないと仮定した場合の当該位置決め要素の位置を示す位置指示量を求めるステップ。
・前記求めた位置指示量と、前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向の位置に対応する可動子位置とを対応付けるステップ。
【0015】
上述の方法の思想は、モータ磁界の1つの方向に対して少なくとも2つの異なる強度のモータ磁界を生成し、これらにそれぞれ対応する、位置決め要素の位置に関する複数の位置指示量を検出することにより、位置決めシステムのサーボ駆動装置の1つまたは複数の可動子位置を較正することである。位置決め要素に抗力が生じない場合の位置からの当該位置決め要素の位置の偏差と、抗力との間には線形の依存関係があると仮定すると、モータ磁界の1つの特定の方向における複数の位置指示量に基づいて、抗力が生じていない位置決め要素の位置に関する位置指示量を求めることができる。この求められた位置指示量は、位置決め要素に抗力が生じていない場合の励磁界の方向に相当する、モータ磁界の方向に対応付けることができる。このようにして、同一方向かつ異なる強度の複数のモータ磁界を用いてサーボ駆動装置を2回駆動させることにより、可動子位置の位置指示量を較正することができ、また、較正プロセス中の抗力の影響を消去することも可能になる。
【0016】
さらに、位置決め要素に抗力が加わっていないと仮定したときの位置決め要素の位置を示す位置指示量は、第1の位置指示量と第2の位置指示量との外挿によって、とりわけ線形外挿によって求めることができる。
【0017】
1つの実施形態では、モータ磁界の強度が0またはほぼ0に相当する点で、上述の外挿を行うことができる。
【0018】
とりわけ、複数の相電圧を用いてサーボ駆動装置が駆動制御可能であるように構成することができる。その際にはモータ磁界の強度は、サーボ駆動装置に印加される相電圧のデューティ比によって決定され、および/または、モータ磁界の方向は相電圧の比によって決定される。
【0019】
本発明はさらに、電子整流型のサーボ駆動装置と、当該サーボ駆動装置に結合され抗力が加わる位置決め要素とを有する位置決めシステムの較正装置も対象としており、前記位置決め要素の位置を検出することにより位置指示量が得られ、前記位置指示量を用いて求められた可動子位置に基づいて、モータ磁界を生成するための前記サーボ駆動装置の転流を行う。この較正装置は、
・第1の強度の第1のモータ磁界が生成されるように前記サーボ駆動装置を駆動させ、当該第1のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素の位置を示す第1の位置指示量を求め、
・前記第1のモータ磁界と方向が同じである、第2の強度の第2のモータ磁界が生成されるように、前記サーボ駆動装置を駆動させ、当該第2のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素の位置を示す第2の位置指示量を求め、
・前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量とに基づき、前記位置決め要素に抗力が加わっていないと仮定した場合の当該位置決め要素の位置を示す位置指示量を求め、
・前記求めた位置指示量と、前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向の位置に対応する可動子位置とを対応付ける
ように構成されている。
【0020】
本発明はさらに、
・電子整流型のサーボ駆動装置と、
・前記サーボ駆動装置に結合された、抗力が加わる位置決め要素と、
・前記位置決め要素の位置を検出して、当該位置決め要素の位置を示す位置指示量を出力する位置検出器と、
・前記位置指示量を用いて求められた可動子位置に基づいてモータ磁界を生成するように前記サーボ駆動装置の転流を行うための制御装置と
を有する位置決めシステムも対象としており、前記位置決めシステムはさらに、
・当該位置決めシステムの較正装置
も有する。前記較正装置は前記制御装置に、
・第1の強度の第1のモータ磁界を生成するように前記サーボ駆動装置を駆動制御させ、前記第1のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素の位置を示す第1の位置指示量を求めさせ、
・前記第1のモータ磁界と方向が同じである第2の強度の第2のモータ磁界を生成するように前記サーボ駆動装置を駆動制御させ、前記第2のモータ磁界に合わせて向きが定まった前記位置決め要素の位置を示す第2の位置指示量を求めさせる
ように構成されており、
前記較正装置は、
・前記第1の位置指示量と前記第2の位置指示量とに基づいて、前記位置決め要素に抗力が加わっていないと仮定したときの当該位置決め要素の位置を示す位置指示量を求め、
・前記第1のモータ磁界および前記第2のモータ磁界の方向の位置に対応する可動子位置に、前記求めた位置指示量を対応付ける
ように構成されている。
【0021】
本発明はまた、コンピュータプログラム製品も対象としており、当該コンピュータプログラム製品は、データ処理ユニット上で実行されるときに上述の較正方法を実施するプログラムコードを含む。
【0022】
以下、添付の図面に基づいて本発明の有利な実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】サーボ駆動装置の転流を行うために外部の位置検出器を使用する位置決めシステムの概略図である。
図2】モータ電流が一定である場合の、モータ磁界と可動子によって生成された励磁界との間の角度差に依存するトルクを示すグラフである。
図3】モータ磁界と可動子の励磁界との間のシフト角に対する、位置決め要素にて作用する単位電流あたりのトルクの依存関係を示すグラフである。
【0024】
実施形態の説明
図1に、位置決め装置2を備えた位置決めシステム1を示す。この位置決め装置2は制御装置3によって駆動制御される。位置決め装置2はサーボ駆動装置4として、たとえば同期モータまたは非同期モータ等である電子整流型モータすなわちブラシレスモータを含む。前記サーボ駆動装置4は出力軸を有し、この出力軸は変速機5に結合されている。変速機5はさらに、位置決め要素6にも結合されている。この位置決め要素6は制御装置3によって駆動制御されて、所定の位置に動かすかないしは位置調整しなければならない。こうするために前記制御装置は、たとえばスロットルバルブ調整装置におけるドライバ要望トルク等である設定位置Sを受け取る。
【0025】
変速機5はとりわけ減速機5として構成されており、これにより、可動子の移動距離に対する、位置決め要素6の位置決め移動距離がより小さくなる。変速機5に代えて択一的に、結合機械装置を設けることも可能である。
【0026】
前記位置決め要素6に、または択一的に変速機5に、位置検出器7が設置されている。この位置検出器7を用いて、位置決め要素6の位置決めの動きないしは位置を検出することができる。位置決め要素6の検出された位置に関する位置指示量は、適切な手法で制御装置3へ伝送される。たとえば、前記位置検出器はGMRセンサ(GMR=Giant Magnetic Resistance)またはホールセンサ等を有することができる。これに代えて択一的に、光学的手法を用いることも可能である。位置指示量としてはたとえば、検出器電圧を制御装置へ出力することができる。制御装置はこの検出器電圧をさらに処理する前に、たとえばアナログ‐デジタル変換器を用いてデジタル変換する。
【0027】
このような位置決め装置2は、たとえば自動車において使用され、たとえばスロットルバルブ、排ガス再循環バルブ、給気移動機構や、数多くの同様の部品において使用される。とりわけ上述のような位置決め装置2は、位置決め装置2の位置決めの正確な動きが機能上重要であるため、位置決め要素6の位置を検査するために位置検出器7が位置決め要素6に元々設けられている場面において使用される。
【0028】
位置決め要素6が変位すると、変速機5およびサーボ駆動装置の双方と位置決め要素6とにおける摩擦に起因して、この位置決め要素6に、当該位置決め要素6の位置決め運動とは逆方向の抗力が加わる。さらに、位置決め要素6には使用分野に応じて、復元力が加わることもある。この復元力はたとえば戻しばね8によって、とりわけ付勢された戻しばね8によって位置決め要素6に加わるものであり、これにより、サーボ駆動装置4が通電されていない状態では、位置決め要素6は静止位置におかれている。
【0029】
電子整流型のサーボ駆動装置4を動作させるためには、当該サーボ駆動装置4に設けられた可動子41の可動子位置を知る必要がある。この駆動制御は通常、モータ磁界を生成するためにステータを磁化させる駆動制御信号ないしは転流信号によって行われる。このモータ磁界は、可動子41によって生成される励磁界と相互作用することにより、駆動トルクを生成する。ステータ巻線に流れるモータ電流が一定である場合、上述のようにして生成されるトルクは、モータ磁界の方向と励磁界の方向との間の角度に依存する。モータ電流が一定である場合、ステータ磁界に対してモータ磁界が90°進角しているときにトルクは最大値に達する。モータ電流が一定である場合、この進角から偏差するとトルクが減少する。図2に、モータ電流が一定である場合の、進角に対するトルクの変移を示す。
【0030】
上述の位置決めシステム1では、現在の可動子位置を求めるために、可動子位置センサを設置したり、可動子位置をセンサレスで検出するための手法を用いたりせず、その代わりに、位置決め要素6に固定的に結合された位置検出器7を用いる。
【0031】
位置決めシステム1において位置決め要素6の実際の位置を検査するために位置検出器7が必要である場合には、可動子位置センサを有さないようにブラシレスサーボ駆動装置4を構成することができる。というのも、可動子位置センサの代わりに位置検出器7の位置を用いて、位置決め要素6の位置から可動子位置を導出できるからである。変速機5ないしは機械装置の減速比ないしは変速比を考慮して、位置決め要素6をサーボ駆動装置4の可動子位置に対応付ける。この対応付けは制御装置3において、予め定められた対応付け関数またはルックアップテーブルを用いて行われる。
【0032】
一実施例では、サーボ駆動装置4のモータは、ロータ極対が2つである3相同期モータとすることができる。このような構成では、転流の最小分解能は、機械的な可動子位置で30°となる。このような最小分解能は、可動子位置検出の所要分解能にも相当する。このことにより、変速機5の減速比が1:30であるとすると、可動子位置を十分に判別できるようにするためは、位置検出器7の分解能が1°である必要がある。
【0033】
位置決めシステム1の始動時には、位置検出器7の位置指示量と、サーボ駆動装置4の可動子41の実際の可動子位置との間に対応関係が存在しない。それゆえ、位置指示量を本当の可動子位置に変換できるよう、較正プロセスを実施する。ブラシレスモータの従来の較正手法では、開ループ制御動作時の移動距離を呼び出し、印加されたモータ磁界の空間ベクトル角と、これに対応する可動子41の位置との対応関係を記録していた。このことは、開ループ制御動作時の励磁界の向きがそのまま、モータ磁界の方向に直接向いていることを前提として行われる。
【0034】
しかし実際には、たとえば変速機5または位置決め要素6等の摩擦力に起因して、または復元力に起因して抗力が作用し、この抗力は、開ループ制御モード時に励磁界の方向に対してモータ磁界の方向が偏差する原因となる。また、図中に示しているように、戻しばね8を用いて位置決め要素6が付勢されている場合もあり、この戻しばねは、励磁界の向きとモータ磁界の向きとが著しく偏差する原因になる。
【0035】
ここで、この抗力の影響を較正プロセスにおいて考慮し消失させるためには、相電圧相互間の所定の比に相当する、サーボ駆動装置4を駆動制御する転流パターンの1つの特定の空間ベクトル角に対し、2つの異なる電圧振幅を設定する。抗力が加わると、これら2つの異なる電圧振幅に応じて、位置決め要素6の位置が異なり、これに応じて位置検出器7の位置指示量も異なる。
【0036】
図3に示しているように、空間ベクトルが1つの特定の位置にある場合、または、モータ磁界が1つの特定の方向になっている場合の2つの異なる測定点(磁界の2つの異なる強度の場合)から、対応する位置指示量U,Uを求めるために、図2に示された曲線の線形部分を使用する。この位置指示量U,Uはたとえば、位置決めシステム1に復元力が生じていない場合の検出器電圧、すなわち、位置決め要素6に抗力が加わっていない場合の検出器電圧の形態で求められるものである。このことが可能であるのは、モータ電流が一定である場合、進角が0°の領域ではトルクの推移が実質的に線形であると見なすことが可能だからである。したがって、以下の関係式が成り立つ:
×I=M×I
×TV=M×TV
ここで、M,Mは単位電流あたりのトルクないしはデューティ比に対するトルクを表し、I,Iは、デューティ比TVないしはTVの場合のモータ電流を表す。
【0037】
デューティ比TVが小さくなると位置指示量U,Uは小さくなる。デューティ比TVが高くなるほど、抗力に対するサーボ駆動装置4の力は強くなる。差角Φ,Φの大きさと、測定された検出器電圧U,Uとの間の関係式を用いて、ある可動子位置の場合の補償位置指示量Uを計算する。その際には、複数の異なるモータ電流の場合に測定された複数の位置指示量U,Uから、補償位置指示量Uを外挿する。
【0038】
従来の位置決めシステムでは、単位モータ電流あたりないしは単位デューティ比あたりのトルクは、モータ磁界と励磁界との差角に比例すると仮定することがある。以下の数式が適用される:
〜Φ、M〜Φ
したがって、以下の式が成り立つ:
Φ×TV=Φ×TV
差角Φ,Φは、各時点で測定された検出器電圧U,Uと、位置決めシステム1に復元力が無い場合の検出器電圧Uとの間の検出器電圧差に相当するので、以下の数式が成り立つ:
(U−U)×TV=(U−U)×TV
したがって、以下の式が成り立つ:
=(U×TV−U×TV)/(TV−TV
このようにして、現在印加されているモータ磁界や、現在印加されているモータ磁界の方向等に、検出器電圧U等の形態の位置指示量を対応付けることができ、このことにより、モータ磁界の方向に対応する可動子位置と位置指示量との対応関係を求めることができる。
【0039】
位置決め要素の変位が変位領域全体に及ぶまで、空間ベクトルのクロスによりモータ磁界を生成することによって、複数の異なるモータ磁界方向の場合の、可動子位置と位置検出器7の位置指示量との対応関係を求めることができる。上記方法では、位置決めシステムに抗力が無い場合の可動子位置に基づいて外挿することにより、可動子位置が求められる。
図1
図2
図3