(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666031
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ピストン・シリンダユニット及びピストン・シリンダユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
F15B15/14 365
F15B15/14 340
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-26441(P2014-26441)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156932(P2014-156932A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2014年2月14日
(31)【優先権主張番号】10 2013 101 558.1
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503219640
【氏名又は名称】シュタビルス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】STABILUS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ステファン アッカーマン ヘル
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド シュルツ ヘル
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−170444(JP,A)
【文献】
実開昭59−171238(JP,U)
【文献】
実開昭61−007638(JP,U)
【文献】
特開2004−156783(JP,A)
【文献】
米国特許第5791445(US,A)
【文献】
米国特許第4167991(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0213655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側に表面保護層を有する円筒状の圧力チューブ(1)と、該圧力チューブ(1)内で軸線方向に変位可能であると共にピストンロッド(8)を有するピストン(7)とを備えるピストン・シリンダユニットであって、前記ピストンロッド(8)は、前記圧力チューブ(1)の端部(5)においてシールされた状態で端部開口(13)を通して前記圧力チューブ(1)内から突出し、また、ピストンロッド側の前記端部(5)を起点とする前記圧力チューブ(1)の端部領域(6)は、表面保護層が施されておらず、更に、防食手段(16)が設けられると共に、前記端部領域(6)を包囲する保護キャップ(15)で被覆され、該保護キャップ(15)が、前記圧力チューブ(1)のピストンロッド側における端部(5)と対向する前記端部領域の内側で、周方向に連続する半径方向のシール(17)を有するピストン・シリンダユニットにおいて、
前記シール(17)は、前記圧力チューブ(1)における円筒状の表面(4)に密に当接するよう変形可能であり、また、前記保護キャップ(15)の内側には、前記圧力チューブ(1)の前記表面(4)まで達する層厚とした液状又はペースト状の前記防食手段(16)が塗布されていることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記変形可能なシール(17)は、弾性変形可能であることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記変形可能なシールは、周方向に連続する少なくとも1本のシールリップで構成されていることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記保護キャップ(15)は、前記変形可能なシール(17)とは反対側の端部において、底部(18)と、該底部(18)に対して同軸状の貫通開口(19)とを有し、該貫通開口(19)を通して前記ピストンロッド(8)が変位可能に突出していることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記貫通開口(19)の内壁は、前記ピストンロッド(8)を密に包囲していることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項6】
請求項4に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記貫通開口(19)の内壁には、周方向に連続すると共に半径方向で変形可能な第2シール(20)が配置されていることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記保護キャップ(15)及び/又は前記第1シール(17)及び/又は前記第2シール(20)は、プラスチックで構成されていることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記保護キャップ(15)は、弾性材料で構成されていることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記保護キャップは、少なくとも大部分が剛性材料で構成されていることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載のピストン・シリンダユニットであって、前記表面保護層は、パウダーコーティング又はスプレーコーティング又はディップコーティングであることを特徴とする、ピストン・シリンダユニット。
【請求項11】
外側に表面保護層を有する円筒状の圧力チューブ(1)と、該圧力チューブ(1)内で軸線方向に変位可能であると共にピストンロッド(8)を有するピストン(7)とを備えるピストン・シリンダユニットの製造方法であって、前記ピストンロッド(8)は、前記圧力チューブ(1)の端部(5)においてシールされた状態で端部開口(13)を通して前記圧力チューブ(1)内から突出し、また、ピストンロッド側の前記端部(5)を起点とする前記圧力チューブ(1)の端部領域(6)は、表面保護層が施されておらず、防食手段(16)が設けられると共に、前記端部領域(6)を包囲する保護キャップ(15)で被覆され、該保護キャップ(15)が、前記圧力チューブ(1)のピストンロッド側における前記端部(5)の反対側に位置する前記端部領域の内側で、周方向に連続するシール(17)を有するピストン・シリンダユニットの製造方法において、
前記保護キャップ(15)の内側に液状又はペースト状の前記防食手段(16)を塗布し、その後に前記保護キャップ(15)を、前記表面保護層の施されない端部領域(6)に装着することを特徴とする、ピストン・シリンダユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側に表面保護層を有する円筒状の圧力チューブと、該圧力チューブ内で軸線方向に変位可能であると共にピストンロッドを有するピストンとを備えるピストン・シリンダユニットに関する。ピストンロッドは、圧力チューブの端部においてシールされた状態で端部開口を通して圧力チューブ内から突出する。ピストンロッド側の端部を起点とする圧力チューブの端部領域は、表面保護層が施されておらず、防食手段が設けられると共に保護キャップで被覆されている。保護キャップは、圧力チューブのピストンロッド側における端部と対向する端部領域の内側に、周方向に連続するシールを有する。
【背景技術】
【0002】
このようなピストン・シリンダユニットにおいては、液状の防食油を、表面保護層の施されていない圧力チューブの端部領域に塗布した後、圧力チューブの外径に対して内径がより小さな保護キャップを、端部領域に装着することが既知である。その装着に際しては、弾性材料より成る保護キャップを半径方向に拡げる。保護キャップは、圧力チューブを半径方向内向きに圧力負荷状態で包囲するため、保護キャップを圧力チューブに装着する際に、保護チューブ部分に塗布しておいた防食油が保護キャップによって少なくとも大幅に引き延ばされる。その結果、予め保護チューブ部分上に塗布しておいた防食油の少なくとも大部分は、本来的には油を塗布することで保護する必要のある、表面保護層の施されていない端部領域から除去されてしまう。
【0003】
これに加えて、保護キャップで引き延ばされた防食油により、表面保護層が施された圧力チューブの表面が汚染されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、表面保護層の施されていない圧力チューブの端部領域に高い防食性を持たせたピストン・シリンダユニット及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、冒頭に述べた形式のピストン・シリンダユニットにおいて、シールが圧力チューブにおける円筒状の表面に密に当接するよう変形可能であり、また保護キャップの内側には、圧力チューブの表面まで達する層厚とした液状又はペースト状の防食手段が塗布されることによって解決される。
【0006】
このような構成とすることにより、予め保護キャップ内に設けられ、かつ好適には保護キャップの内面に付着させた防食手段は、保護キャップを装着してからでなければ表面保護層が施されていない端部領域に接触することがなく、しかも保護キャップ内に確実に残留する。防食手段の量は、少なくとも圧力チューブ及び保護キャップの内壁間における環状スペースをほぼ充填するものとし、その充填に際して、防食手段が、表面保護層の施されていない圧力チューブの端部領域の表面に塗布される。
【0007】
これにより、保護キャップ及び圧力チューブ間において、例えば異なる層厚又は温度の変動によって生じるスペースの形成も回避され、従って湿気が保護キャップ下に侵入してコーティングの施されていない領域に付着することがない。
【0008】
防食手段の除去及び湿気の浸入の何れによっても、保護キャップ下における腐食がより短期間で生じる。
【0009】
上述したシールは、圧力チューブ表面のうち、表面保護層の施された領域まで防食手段が流出し、従って該領域が汚染されることも回避するものである。
【0010】
この柔軟なシールは、塑性変形可能な構成とすることもできるが、弾性変形可能な構成とすれば、圧力チューブ及び保護キャップ間に相対変位が生じた場合であっても常に圧力チューブに接触して適合する。シールは、この点に関連してエラストマ又は熱可塑性材料で構成することができる。
【0011】
単純な構成とする場合、変形可能なシールは、周方向に連続する少なくとも1本のシールリップとすることができる。
【0012】
圧力チューブの端部を外部の影響から保護するため、円筒状の保護キャップには、変形可能なシールの反対側の端部において、底部と、該底部に対して同軸状の貫通開口とを設けることができる。この場合、貫通開口を通してピストンロッドが変位可能に突出している。このピストンロッドをシール状態で突出させるため、貫通開口は、ピストンロッドを密に包囲するものとすることができる。そのため、貫通開口の内壁には、周方向に連続する変形可能な第2シールを配置しておくのが好適である。
【0013】
保護キャップ及び/又は第1シール及び/又は第2シールは、プラスチックで構成するのが簡単かつ安価である。この場合、保護キャップは、弾性材料又は少なくとも大部分が剛性材料より成るものとすることができる。
【0014】
これに関連して、保護キャップ並びに第1及び第2シールは、一体的に構成可能である。
【0015】
表面保護層は、パウダーコーティング又はスプレーコーティング又はディップコーティングとすることができる。
【0016】
前述した課題は、外側に表面保護層を有する円筒状の圧力チューブと、該圧力チューブ内で軸線方向に変位可能であると共にピストンロッドを有するピストンとを備えるピストン・シリンダユニットを製造するための本発明に係る方法によって解決される。この場合、ピストンロッドは、圧力チューブの端部においてシールされた状態で端部開口を通して圧力チューブ内から突出し、また、ピストンロッド側の端部を起点とする圧力チューブの端部領域は、表面保護層が施されておらず、防食手段が設けられると共に、端部領域を包囲する保護キャップで被覆され、該保護キャップが、圧力チューブのピストンロッド側における端部の反対側に位置する端部領域の内側で、周方向に連続するシールを有する。この場合において、本発明では、保護キャップの内側に液状又はペースト状の防食手段を塗布し、その後に保護キャップを、表面保護層が施されない端部領域に装着する。
【0017】
この製造方法により、上述したピストン・シリンダユニットにおけると同様の利点を得ることができる。
【0018】
液状又はペースト状の防食手段を使用したコーティングは、防食手段を保護キャップの内側に付着させることにより、取り付け可能に準備した保護キャップをその後に貯蔵及び/又は搬送できるよう施すのが好適である。
【0019】
液状又はペースト状の防食手段を使用したコーティングは、保護キャップ内に接触するピンを用いた自動的な塗布によって施すことができる。
【0020】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ピストン・シリンダユニットの縦断面図である。
【
図2】
図1に示すピストン・シリンダユニットにおける保護キャップの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すピストン・シリンダユニットは、両端部が閉じられたシリンダ状の圧力チューブ1を備える。
【0023】
圧力チューブ1には、閉じられた一方の端部2にねじボルト3が設けられている。ねじボルト3上には、ピストン・シリンダユニットのための第1連結ピースがねじ固定されている。
【0024】
ピストン・シリンダユニットの製造にあたっては、圧力チューブ1を先に洗浄しておく。次いで、防食保護層としてのベースコーティングを圧力チューブの外表面4全体に施した後に乾燥させて固める。
【0025】
その後、他方の端部5を起点とする圧力チューブ1の端部領域6を保護キャップ15で被覆しておく。この段階において、圧力チューブ1上には、パウダーコーティング法によってパウダーコーティングとして構成した表面保護層を施し、温度処理ステップにて焼き付ける。その際、上述した端部領域6は、被覆されているために焼き付け処理が行われず、従ってパウダーコーティングが施されることがない。このように、圧力チューブ1の外表面は、第2端部5を起点とする端部領域6から外表面全体に亘って施されるベースコーティングと、端部領域6以外の領域におけるパウダーコーティングとで構成される。
【0026】
引き続き、特にピストン7、ピストンロッド8、ピストンロッドガイド9及びピストンロッドシール11を含む組み込み部品を、依然として開放されている第2端部5から圧力チューブ1内に導入する。更に、圧力流体(好適にはガス)を加圧状態で圧力チューブ1内に導入する。この段階において、組込部品や圧力流体の導入は安全に行うことができる。これは、例えば上述したパウダーコーティング法で行った圧力チューブ1は、加熱されることがないからである。従って、組込部品が後で損傷したり、圧力流体による不所望の膨張で圧力チューブ1が破壊したりする恐れはない。
【0027】
次に、パウダーコーティング法に際して処理が施されなかった端部領域6にて、半径方向内向き、即ち圧力チューブの中心軸線に向けて突出し、かつ該中心軸線を包囲するビード10を設ける。ビード10は、圧力チューブ1内に配置されたピストンロッドガイド9及び/又はピストンロッドシール11を軸線方向に支持するものである。
【0028】
更に、圧力チューブ1の第2端部5を、半径方向内向きにフランジ状に折り曲げる。これにより形成される端壁12によって、一方では、圧力チューブ1の端部が閉じられると共にピストンロッドガイド9及び/又はピストンロッドシール11が軸線方向に支持され、他方では、圧力チューブの中心軸線を指向するフランジ状折り曲げ部の縁部により圧力チューブ1の端部開口13が形成され、ピストンロッド8が圧力チューブ1内から突出可能になる。
【0029】
パウダーコーティング法に際して処理が施されなかった端部領域6にはパウダーコーティングが施されないため、ビード10の形成だけでなくフランジ状の折り曲げにおいても、圧力チューブ材料の流れにより、パウダーコーティングが特に剥離する恐れがない。
【0030】
その後、保護キャップ15の内側14にはペースト状の防食手段16を塗布すると共に、端部領域6を完全に包囲するまで、保護キャップ15を端部ピストンロッド側から圧力チューブ1の端部領域6上に装着する。保護キャップ15の内側14への防食手段16の塗布は、防食手段16を保護キャップ15の内側に付着させると共に、保護キャップを圧力チューブ1の端部領域6に装着した後に、少なくとも保護キャップ15の内側及び圧力チューブ1の端部領域6間における環状スペースがほぼ充填される層厚で行う。
【0031】
保護キャップ15の内側14は、圧力チューブ1の端部2に対向する側における端部において、周方向に連続すると共に、圧力チューブを附勢状態で包囲する柔軟な第1シール17を有する。そのため、保護キャップ15を圧力チューブ1上に装着する際に、防食手段16が保護キャップ15内から流出し、圧力チューブ1のパウダーコーティング領域を汚染することが回避される。
【0032】
保護キャップ15は、圧力チューブ1の端部2に対向する側において、底部18を有する状態で円筒状に形成されるだけでなく、底部18に対して同軸状の貫通開口19を該底部18に有する。
【0033】
貫通開口19の内壁には、周方向に連続する柔軟な第2シール20が配置されている。第2シール20を通してピストンロッド8が変位可能に突出し、また附勢状態でピストンロッド8を密に包囲するため、第2端部側においても防食手段が圧力チューブ1の保護キャップ15から流出することがない。
【0034】
ピストンロッド8の外側の遊端には、第2ねじボルト21が設けられている。ねじボルト21上には、ピストン・シリンダユニットのための第2連結ピースがねじ固定されている。
【符号の説明】
【0035】
1 圧力チューブ
2 第1端面
3 ねじボルト
4 表面
5 第2端面
6 端部領域
7 ピストン
8 ピストンロッド
9 ピストンロッドガイド
10 ビード
11 ピストンロッドシール
12 端壁
13 端部開
14 内側
15 保護キャップ
16 防食手段
17 第1シール
18 底部
19 貫通開口
20 第2シール
21 第2ねじボルト