(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒が、ジフルオロメタン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項2に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る冷凍機油は、下記一般式(1):
【化4】
[式中、R
1、R
2及びR
3は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭化水素基を示し、R
4は二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
5は炭化水素基を示し、mは0以上の整数を示す。mが2以上である場合には、複数のR
4は互いに同一でも異なっていてもよい。]
で表される構造単位を有し、数平均分子量Mnが500〜2000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.10〜1.25であるポリビニルエーテルを含有する。なお、R
1〜R
5及びmは、それぞれポリビニルエーテルを構成する構造単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、上記一般式(1)で表される構造単位を有し、数平均分子量Mnが500〜2000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.10〜1.25であるポリビニルエーテルを含有する冷凍機油と、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有するものである。なお、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物には、本実施形態に係る冷凍機油と、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有する態様が包含される。
【0015】
一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3で示される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜7、更に好ましくは3〜6である。また、一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3は、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。
【0016】
一般式(1)におけるR
4で示される二価の炭化水素基及びエーテル結合酸素含有炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜8、更に好ましくは3〜6である。また、一般式(1)におけるR
4で示される二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基は、例えばエーテル結合を形成する酸素を側鎖に有する炭化水素基であってもよい。
【0017】
一般式(1)におけるR
5は、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
【0018】
一般式(1)におけるmは、0〜20であることが好ましく、1〜18であることがより好ましく、2〜16であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルを構成する全構造単位におけるmの平均値が、0〜10となることが好ましい。
【0019】
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、一般式(1)で表される構造単位から選ばれる1種で構成される単独重合体であってもよく、一般式(1)で表される構造単位から選ばれる2種以上で構成される共重合体であってもよく、一般式(1)で表される構造単位と他の構造単位とで構成される共重合体であってもよい。ポリビニルエーテルを共重合体とすることにより、冷凍機油の冷媒との相溶性を満足しつつ、潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類、共重合体における構造単位の比率等を適宜選択することにより、上記の冷凍機油の諸特性を所望のものとすることが可能となる。したがって、冷凍システム又は空調システムにおけるコンプレッサーの型式、潤滑部の材質、冷凍能力、冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた冷凍機油を自在に得ることができる。共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0020】
本実施形態に係るポリビニルエーテルが共重合体である場合、当該共重合体は、上記一般式(1)で表され且つR
5が炭素数1〜3のアルキル基である構造単位(1−1)と、上記一般式(1)で表され且つR
5が炭素数3〜20、好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8のアルキル基である構造単位(1−2)と、を含むことが好ましい。構造単位(1−1)におけるR
5としてはエチル基が特に好ましく、また、構造単位(1−2)におけるR
5としてはイソブチル基が特に好ましい。さらに、本実施形態に係るポリビニルエーテルが上記の構造単位(1−1)及び(1−2)を含む共重合体である場合、構造単位(1−1)と構造単位(1−2)とのモル比は、5:95〜95:5であることが好ましく、20:80〜90:10であることがより好ましく、70:30〜90:10であることが更に好ましい。当該モル比が上記範囲内であると、冷媒との相溶性をより向上させることができ、また、吸湿性を低くすることができる傾向にある。
【0021】
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位を更に含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体又はランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0022】
【化5】
[式中、R
6〜R
9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0023】
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、一般式(1)に対応するビニルエーテル系モノマーの重合、又は、一般式(1)に対応するビニルエーテル系モノマーと一般式(2)に対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合により製造することができる。一般式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)で表されるモノマーが好適である。
【0024】
【化6】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びmは、それぞれ一般式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びmと同一の定義内容を示す。]
【0025】
本実施形態に係るポリビニルエーテルとしては、以下の末端構造(A)又は(B)を有するものが好適である。
【0026】
(A)一方の末端が、一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)又は(7)で表される構造を有するもの。
【0027】
【化7】
[式中、R
11、R
21及びR
31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは一般式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR
41は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0028】
【化8】
[式中、R
61、R
71、R
81及びR
91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0029】
【化9】
[式中、R
12,R
22及びR
32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基又は二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは一般式(1)中のmと同一の定義内容を示す。mが2以上の場合には、複数のR
41は同一でも異なっていてもよい。]
【0030】
【化10】
[式中、R
62、R
72、R
82及びR
92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0031】
(B)一方の末端が上記一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が下記一般式(8)で表される構造を有するもの。
【0032】
【化11】
[式中、R
13、R
23及びR
33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【0033】
このようなポリビニルエーテル系化合物の中で、以下に挙げる(a),(b),(c),(d)及び(e)のものが本実施形態に係る冷凍機油の主成分として特に好適である。
(a)一方の末端が一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)又は(7)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(b)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が一般式(4)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(c)一方の末端が一般式(4)又は(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(8)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(d)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が一般式(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(8)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3がいずれも水素原子、mが0〜4の整数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基、R
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(e)上記(a),(b),(c)及び(d)のいずれかであって、一般式(1)におけるR
5が炭素数1〜3の炭化水素基である構造単位と該R
5が炭素数3〜20の炭化水素基である構造単位とを有するもの。
【0034】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの数平均分子量(Mn)は、500〜2000であり、好ましくは700〜1900、より好ましくは1000〜1500である。ポリビニルエーテルの数平均分子量が500以上である場合には、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒共存下での潤滑性が向上する。一方、ポリビニルエーテルの数平均分子量が2000以下である場合には、低温条件下で微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0035】
また、本実施形態に係るポリビニルエーテルにおいては、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.10〜1.25であり、好ましくは1.15〜1.23、より好ましくは1.16〜1.22、更に好ましくは1.17〜1.21である。Mw/Mnが1.10以上であると、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなる。また、Mw/Mnが1.25以下であると、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。なお、本実施形態に係るポリビニルエーテルの重量平均分子量(Mw)は、Mn及びMw/Mnが上記の条件を満たすように適宜選定される。
【0036】
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)とは、GPC分析により得られるMw、Mn及びMw/Mn(ポリスチレン(標準試料)換算値)を意味する。Mw、Mn及びMw/Mnは、例えば以下のように測定することができる。
【0037】
溶剤としてクロロホルムを使用し、希釈して試料濃度を2質量%とした溶液を調製する。その試料溶液を、GPC装置(Waters Alliance2695)を用いて分析を行う。溶剤の流速は1ml/min、分析可能分子量100から10,000のカラムを使用し、屈折率を検出器として分析を実施する。なお、分子量が明確なポリスチレン標準を用いてカラム保持時間と分子量との関係を求め、検量線を別途作成した上で、得られた保持時間から分子量を決定する。
【0038】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの引火点は、195℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、205℃以上であることが更に好ましい。なお、本発明における引火点は、JIS K2265−4「引火点の求め方−第4部:クリーブランド開放法」に準拠して測定した引火点を意味する。
【0039】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの自然発火点は、335℃以上であることが好ましく、340℃以上であることがより好ましく、345℃以上であることが更に好ましい。なお、本発明における自然発火点は、ASTM E 659−1978に準拠した方法で測定した値を意味する。
【0040】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの100℃における動粘度は、好ましくは6.5〜9.5mm
2/s、より好ましくは7.0〜9.0mm
2/s、更に好ましくは7.5〜8.5mm
2/sである。100℃における動粘度が上記下限値以上であると、冷媒共存下での潤滑性が向上する。一方、100℃における動粘度が上記上限値以下であると、冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0041】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの40℃における動粘度は、好ましくは50〜80mm
2/s、より好ましくは55〜75mm
2/s、更に好ましくは60〜70mm
2/sである。40℃における動粘度が上記下限値以上であると、潤滑性や圧縮機の密閉性が向上するという傾向にある。一方、40℃における動粘度が上記上限値以下であると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が広くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害を抑制できる。
【0042】
なお、本発明における動粘度は、JIS K−2283−1993に規定される動粘度を意味する。
【0043】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの流動点は、−10℃以下であることが好ましく、−20〜−50℃であることがより好ましい。流動点が−10℃以下のポリビニルエーテルを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化するのを抑制できる傾向にある。なお、本発明における流動点は、JIS K2269に規定される流動点を意味する。
【0044】
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、前記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテルが得られる。
【0045】
本実施形態に係るポリビニルエーテルの製造工程において、副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合があるが、ポリビニルエーテル自体の熱安定性の向上、重合物の生成によるスラッジの発生の抑制、抗酸化性(酸化防止性)の低下による過酸化物の生成の抑制といった観点から、本実施形態に係るポリビニルエーテルとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましい。ポリビニルエーテルの不飽和度は、0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルの過酸化物価は、10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルのカルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが更に好ましい。また、ポリビニルエーテルの水酸基価は、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
【0046】
なお、本発明における不飽和度、過酸化物価及びカルボニル価とは、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明における不飽和度とは、試料にウィス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいう。また、本発明における過酸化物価とは、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいう。また、本発明におけるカルボニル価とは、試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。
【0047】
本実施形態の冷凍機油は上記のポリビニルエーテルを含有するものであり、当該ポリビニルエーテルのみを単独で用いた場合であっても、冷凍機油及び該冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体組成物について、難燃性の観点から安全性を高めることができるものであるが、必要に応じて後述する上記ポリビニルエーテル以外の基油や添加剤を添加してもよい。
【0048】
本実施形態の冷凍機油中の上記ポリビニルエーテルの含有量は、上記の優れた特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。上記ポリビニルエーテルの含有量が50質量%以上であると、冷凍機油及び該冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体組成物の安全性をより高めることができる。
【0049】
本実施形態に係るポリビニルエーテル以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、及び、エステル系基油(モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル等)、ポリアルキレングリコール、本実施形態に係るポリビニルエーテル以外のポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油を用いることができる。酸素を含有する合成油としては、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0050】
また、本実施形態の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その性能を更に高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、酸化防止剤、酸捕捉剤、摩耗防止剤、極圧剤、油性剤、消泡剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0051】
本実施形態の冷凍機油の40℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは3〜1000mm
2/s、より好ましくは4〜500mm
2/s、更に好ましくは5〜400mm
2/sである。また、本実施形態の冷凍機油の100℃における動粘度は、特に限定されないが、好ましくは1〜100mm
2/s、より好ましくは2〜50mm
2/s、更に好ましくは3〜30mm
2/sである。
【0052】
また、本実施形態の冷凍機油の水分含有量は、特に限定されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0053】
また、本実施形態の冷凍機油の酸価は、特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止するため、及び本実施形態の冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するために、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下である。なお、本発明における酸価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0054】
また、本実施形態の冷凍機油の灰分は、特に限定されないが、冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するために、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。なお、本発明における灰分とは、JISK2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0055】
本実施形態の冷凍機油は、微燃性ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒とともに用いられるものであり、また、本実施形態の冷凍機用作動流体組成物は微燃性ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒を含有するものである。ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒には、飽和フッ化炭化水素冷媒(ハイドロフルオロアルカン冷媒ともいう)及び不飽和フッ化炭化水素冷媒(ハイドロフルオロアルケン冷媒、ハイドロフルオロオレフィン冷媒、又はHFO冷媒ともいう。)が包含される。なお、本発明における微燃性冷媒とは、ASHRAE(The American Society of Heating, Refrigerating and Air−conditioning Engineers)34の燃焼性区分におけるA2L区分に含まれる冷媒を意味する。
【0056】
飽和フッ化炭化水素冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2の飽和フッ化炭化水素が挙げられる。具体的には、例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は、用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。更に具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0057】
上記の飽和フッ化炭化水素の中でも、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることが好ましく、冷媒物性の観点から、HFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−152a、又はHFC−32とHFC−134aの混合物であることがより好ましい。
【0058】
不飽和フッ化炭化水素としては、フッ素数が3〜5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFC−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ye)、及び3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFC−1225ye、HFC−1234ze及びHFC−1234yfから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0059】
微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒としては、ジフルオロメタン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが特に好ましい。
【0060】
本実施形態の冷凍機油とともに用いられる冷媒は、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ビス(トリフルオロメチル)サルファイド冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、及びジメチルエーテル、二酸化炭素、アンモニア、炭化水素等の自然系冷媒が挙げられる。
【0061】
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタン又はこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタン又はこれらの混合物が好ましい。
【0062】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
【0063】
また、本実施形態の冷媒が混合冷媒である場合、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒と他の冷媒との混合比(質量比、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒:他の冷媒)は、1:99〜99:1が好ましく、5:95〜95:5がより好ましい。
【0064】
本実施形態の冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒単独あるいは混合冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物の形で存在している。本実施形態の冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0065】
本実施形態の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型又は密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1〜
2、参考例1〜
3、比較例1〜5]
実施例1〜
2、参考例1〜
3及び比較例1〜5においては、それぞれ以下に示す基油1〜10を用いて冷凍機油を調製した。
【0068】
(基油)
基油1:
エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルとの共重合体[エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=8/2(モル比)、数平均分子量(Mn):500、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.25、40℃動粘度:50.2mm
2/s、100℃動粘度:6.90mm
2/s、粘度指数:91]
基油2:
エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルとの共重合体[エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=9/1(モル比)、数平均分子量(Mn):1200、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.23、40℃動粘度:67.8mm
2/s、100℃動粘度:8.20mm
2/s、粘度指数:86]
基油3:
エチルビニルエーテル重合体[数平均分子量(Mn):700、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.22、40℃動粘度:50.4mm
2/s、100℃動粘度:6.81mm
2/s、粘度指数:86]
基油4:
エチルビニルエーテル重合体[数平均分子量(Mn):1300、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.20、40℃動粘度:62.5mm
2/s、100℃動粘度:7.91mm
2/s、粘度指数:90]
基油5:
メチルビニルエーテルとエチルビニルエーテルとの共重合体[メチルビニルエーテル/エチルビニルエーテル=1/9(モル比)、数平均分子量(Mn):2000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.19、40℃動粘度:72.6mm
2/s、100℃動粘度:8.46mm
2/s、粘度指数:83]
基油6:
エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルとの共重合体[エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=8/2(モル比)、数平均分子量(Mn):400、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.23、40℃動粘度:42.3mm
2/s、100℃動粘度:6.18mm
2/s、粘度指数:89]
基油7:
エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルとの共重合体[エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=9/1(モル比)、数平均分子量(Mn):400、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.26、40℃動粘度:62.1mm
2/s、100℃動粘度:7.99mm
2/s、粘度指数:93]
基油8:
エチルビニルエーテル重合体[数平均分子量(Mn):1000、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.27、40℃動粘度:55.7mm
2/s、100℃動粘度:7.35mm
2/s、粘度指数:90]
基油9:
エチルビニルエーテル重合体[数平均分子量(Mn):1900、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.29、40℃動粘度:71.0mm
2/s、100℃動粘度:8.55mm
2/s、粘度指数:89]
基油10:
メチルビニルエーテルとエチルビニルエーテルとの共重合体[メチルビニルエーテル/エチルビニルエーテル=1/9(モル比)、数平均分子量(Mn):2200、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn):1.31、40℃動粘度:75.9mm
2/s、100℃動粘度:9.10mm
2/s、粘度指数:93]
【0069】
次に、実施例1〜3、参考例1〜2及び比較例1〜5の各冷凍機油について、以下に示す評価を実施した。用いた基油の性状と得られた結果とまとめて表1〜2に示す。なお、表中、「メチル比率」、「エチル比率」及び「ブチル比率」は、それぞれ上記一般式(1)におけるR
5がメチル基である構成単位、エチル基である構成単位及びブチル基である構成単位の含有比率(ポリビニルエーテル中の含有比率)を表す。
【0070】
(各種性状の評価)
冷凍機油の各種性状を以下に示す試験方法に準拠して評価した。
動粘度:JIS K−2283−1993
流動点:JIS K2269
引火点:JIS K2265−4
自然発火点:ASTM E 659−1978
【0071】
(冷媒相溶性の評価)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、ジフルオロメタン(R32)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234yf)、又は1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)10gに対して冷凍機油を10g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。なお、表中、「相溶」は冷媒と冷凍機油とが相互に溶解したことを意味し、「分離」は冷媒と冷凍機油とが2層に分離したことを意味する。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
で表される構造単位を有し、数平均分子量Mnが700〜1900であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.10〜1.25であるポリビニルエーテルを含有し、微燃性ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に用いられる、冷凍機油。