(54)【発明の名称】ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、その製造方法、当該ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物から得られるポリイミド及びその利用
【文献】
SEINO,H. et al.,Synthesis of fully aliphatic polyimides,High Performance Polymers,1999年,Vol.11, No.3,p.255-262
【文献】
SEINO,H. et al.,Synthesis of aliphatic polyimides containing adamantyl units,Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry,1999年,Vol.37, No.18,p.3584-3590
【文献】
MATSUMOTO,T. et al.,Soluble and Colorless Polyimides from Bicyclo[2.2.2]octane-2,3,5,6-tetracarboxylic 2,3:5,6-Dianhydrides,Macromolecules,1997年,Vol.30, No.4,p.993-1000
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレーにはガラス基板が用いられているが、近年の大画面化の動向に伴い、軽量化及び生産性向上の問題が深刻化している。その解決策として重いガラス基板の代わりに、より軽量で、より成型加工が容易な、プラスチック基板の採用が考えられる。もしガラス並に高透明性でしかも十分靭性の高いプラスチック基板があれば、曲げたり丸めたりして収納可能なフレキシブルフィルム液晶パネルを提供することが可能になる。
【0003】
プラスチック基板をフルカラーTFT型液晶パネルに適用する場合、その製造工程上プラスチック基板は200〜220℃の高温に耐えなければならない。しかし、プラスチック基板は、ガラス基板に比べて耐熱性に劣るという欠点を持つ。例えば、ポリメタクリル酸メチルに代表されるビニルポリマーやポリカーボネートは、極めて高い透明性を有するものの、ガラス転移温度が、それぞれ100℃前後、150℃であり、200〜220℃の高温に耐えることができない。また、ポリエーテルスルホンは透明性及び靭性に優れているが、ガラス転移温度は220℃であり、十分な耐熱性とはいえない。つまり、耐熱性、透明性及び靭性を併せ持つ、フレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板としての要求特性を満足する材料は未だ知られていないのが現状である。
【0004】
ポリイミド樹脂は耐熱性に優れており、ディスプレー用プラスチック基板の候補として考えられる。一般にポリイミド樹脂は、ピロメリット酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンとを、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒中で等モル反応させることで容易に得られる高重合度のポリイミド前駆体を、膜等に成形して、これを加熱硬化して得られる。
【0005】
このような全芳香族ポリイミド樹脂は優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、機械的性質等の特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
【0006】
しかし、一般に使用される全芳香族ポリイミド樹脂は、紫外から可視域にかけて強い電子吸収遷移を有するため、フィルムの透明性が極端に低いという欠点を持つ。これはポリイミド鎖における芳香族基を通じた分子内共役及び、分子内・分子間電荷移動相互作用によるものである(例えば非特許文献1参照)。
【0007】
ポリイミド樹脂フィルムの透明化には、酸二無水物とジアミンのどちらか一方あるいは両方に脂肪族モノマーを使用することが効果的であるとされている。これによりポリイミド鎖の分子内共役や電荷移動相互作用が妨げられ、得られるポリイミド膜及びその前駆体膜の紫外・可視全域での透明性が飛躍的に高まる。化学的、物理的耐熱性の観点から、線状構造のものより環状構造(脂環式)の脂肪族モノマーがしばしば用いられる。
【0008】
しかし、上記脂肪族モノマーとして脂環式ジアミンを用いる場合、脂環式ジアミンと各種テトラカルボン酸二無水物とからポリイミド前駆体を重合する重合反応初期で生成する低分子量のアミド酸中では、カルボキシル基と未反応のアミノ基との間で架橋的な塩形成が起こる。これにより生じる塩は通常、重合溶媒に対して溶解度が低く、沈殿として反応系から除外されるため、塩が全く溶解しない場合は重合が停止することになる。極端な場合、例えばピロメリット酸二無水物とトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンとの組み合わせでは、極めて強固な塩が形成されるため、重合反応が全く進行しないという重大な問題が生じる。ピロメリット酸二無水物の代わりに1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、「CBDA」と称する)を用いた場合も同様である。これは、通常用いられる芳香族ジアミンに比べて、脂肪族ジアミンの塩基性がはるかに高いことに由来している。
【0009】
上記塩形成を回避する方法として界面重合法が提案されている(例えば非特許文献2参照)。この方法は、まずテトラカルボン酸二無水物とアルコールとを反応させて、テトラカルボン酸のジアルキルエステルを合成し、次いでこれを塩素化して油層に溶解し、これとアルカリ水溶液に溶解した脂肪族ジアミンとを油/水界面で重合させてポリアミド酸のアルキルエステルを得るものである。このアルキルエステルを熱イミド化することで脂環式ポリイミドを得ることができる。
【0010】
また、ポリイミドを透明化する方法として、テトラカルボン酸二無水物成分に、脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いる方法が知られている。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4,2,3−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0011】
従来、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の製造方法としては、フタル酸を電解還元して3,5−シクロヘキサジエン−trans−1,2−ジカルボン酸とし、得られたジカルボン酸をエステル化後、これとマレイン酸ジメチルとのDiels−Alder反応によりビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸テトラメチルを得、次いで水素化、加水分解、無水化して製造する方法(特許文献1、特許文献2参照)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7‐エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物をγ−ブチロラクトン中でパラジウム/カーボンを触媒に水素化し、ろ過、晶析することで得る方法(特許文献3参照)、が知られている。なお、特許文献1では、上述したビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の製造方法及びこれと芳香族ジアミンより得られるポリイミドが開示されている。
【0012】
一方、近年、特にマイクロプロセッサーの演算速度の高速化やクロック信号の立ち上がり時間の短縮化が情報処理・通信分野で重要な課題になってきているが、そのためには絶縁膜として使用されるポリイミド膜の誘電率を下げることが必要となる。また電気配線長の短縮のための高密度配線及び多層基板化にとっても、絶縁膜の誘電率が低いほど絶縁層を薄くできる等の点で有利である。
【0013】
ポリイミドの低誘電率化には芳香族単位を脂環族単位に置き換えてπ電子を減少することが有効であり(例えば非特許文献3参照)、含有金属量を低減することが必須である。そのために金属含有量が低い脂環式モノマー、特に脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用が望まれる。
【特許文献1】特開平7-304870(1995年11月21日公開)
【特許文献2】特開平7-304868(1995年11月21日公開)
【特許文献3】特開2004−339177(2004年12月2日公開)
【非特許文献1】M. Hasegawa, and K. Horie, Photophysics, photochemistry, and optical properties of polyimides, Progress in Polymer Science, 2001, 26(2), 259-335.
【非特許文献2】M. Hasegawa, H. Miura, N. Haga, A. Hayakawa, K. Saito, Preparation and Properties of High Molecular Weight Polyamic Ester Having a Cyclobutane Moiety in the Main Chain, High Performance Polymers, 1998, 10(1), 11-21.
【非特許文献3】T. Matsumoto, Nonaromatic Polyimides Derived from Cycloaliphatic Monomers1, Macromolecules, 1999, 32(15), 4933 -4939.
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に限定されない。
【0070】
<BTA−Hの合成>
まず、本発明に係るビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(上記式(7)で表される脂環式カルボン酸無水物)の製造方法について説明する。なお、以下、本発明に係る製造方法で得られるビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を、「BTA−H」と称する。
【0071】
(a;ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(以下、「BTA」と称する)を、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩のうち、少なくとも一つの塩とする工程)
本発明に係るBTA−Hの製造方法で用いるBTAは、従来公知の方法で得ればよい。例えば、BTAはマレイン酸と1,2−ジヒドロフタル酸のDiels−Alder反応を行い無水化することで得られる。なお、一般にDiels−Alder反応を行なうと、BTAは、2-endo−3−endo−5−endo−6−endo体、2-endo−3−endo−5−exo−6−exo体、2-exo−3−exo−5−exo−6−exo体の混合物として得られる。しかし、本発明に使用するBTAは上記立体異性体比がどのようなものであっても利用することができる。
【0072】
BTAのアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ塩又はアルカリ金属塩の形成は、水中で行なえばよい。また、形成するBTAのアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ塩又はアルカリ金属塩が溶解する限り、水には、水溶性の有機溶剤が含まれていてもよい。
【0073】
アンモニウム塩又はアミン塩を形成する場合は、BTAをあらかじめ加水分解してビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸を得るとよい。加水分解は水中で加熱することで行なえるが、触媒を添加して行なってもよい。この場合使用される触媒は一般的に使用される加水分解触媒であれば特に限定されないが、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、4-ジメチルアミノピリジン等のアミン類が用いることができる。触媒の使用量は特に限定されないが、BTAに対して0.01〜10%が好ましく、0.05〜1%がより好ましい。
【0074】
使用するアンモニア又はアミンは特に限定されないが、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミンが好ましく、アンモニア、モノメチルアミンがより好ましい。
【0075】
使用するアルカリ金属又はアルカリ土類金属は特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムが好ましく、ナトリウム、カリウムがより好ましい。
【0076】
使用するアンモニア、アミン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の量は、アンモニア、アミン又はアルカリ金属の場合、BTAの量に対して3.0〜5.0モル倍が好ましく、3.5〜4.5モル倍がより好ましい。アルカリ土類金属の場合、BTAの量に対して1.5〜2.5モル倍が好ましく、1.8〜2.3モル倍がより好ましい。
【0077】
(b;BTAのアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を水素化及び異性化する工程)
水素化で用いる水素化反応触媒は、炭素−炭素間二重結合を水素化することができる触媒であればよく、特に限定されるものではないが、金属元素を含む水素化反応触媒であることが好ましい。上記金属元素は、特に限定されるものではないが、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウムが好ましい。また、これらは当該分野で通常用いられる担体に担持されているものを用いればよい。すなわち、本発明に係る水素化反応触媒は、スポンジニッケル触媒、安定化ニッケル触媒、パラジウム系触媒、白金系触媒、ルテニウム系触媒、イリジウム系触媒、ロジウム系触媒が好ましい。これらは、単独で用いても良く、適宜2種以上を混合して用いても良い。また、触媒の使用量は、反応条件に応じて適宜設定すればよく限定されるものではないが、上記アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩100重量%に対して、0.1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜30重量%である。
【0078】
また、水素化を行なうときの反応温度は、適宜設定すればよく、限定されるものではないが、20〜300℃であることが好ましく、さらに好ましくは40〜160℃である。
【0079】
水素化で用いる水素の、水素圧力は、適宜設定すればよく、限定されるものではないが、0.1〜30MPaが好ましく、さらに好ましくは0.1〜10MPaである。
【0080】
また、水素化を行なうときの反応溶媒は、上記アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を溶解するものであれば限定されるものではないが、水が好ましい。また、その使用量は、使用する溶媒や反応条件に応じて適宜設定すればよく限定されるものではないが、上記アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩100重量%に対して、100〜2000重量%が好ましく、さらに好ましくは100〜1000重量%である。
【0081】
水素化反応終了後に、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等の常法により水素化反応触媒を分離することで、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸(以下、「BTC−H」と称する)のアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む生成物が得られる。
【0082】
(c;当該生成物を酸析して、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるBTC−Hを得る工程)
BTC−Hのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の酸析に用いる酸は、一般に当該目的で使用されるものであれば限定されるものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸を用いることが好ましい。また、使用量は、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、限定されるものではないが、例えば、BTC−Hのアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩に対して、硫酸を用いる場合は、使用したアンモニア、アミン、アルカリ金属に対して、0.5〜1倍モルが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜0.6倍モルである。また、BTC−Hのアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩に対して、硫酸以外の酸を用いる場合は、使用したアンモニア、アミン、アルカリ金属に対して1〜2倍モルが好ましく、さらに好ましくは1〜1.1倍モルである。BTC−Hのアルカリ土類金属塩に対して、硫酸を用いる場合は、使用したアルカリ土類金属に対して、1〜2倍モルが好ましく、さらに好ましくは1〜1.1倍モルである。BTC−Hのアルカリ土類金属塩に対して、硫酸以外の酸を用いる場合は、使用したアルカリ土類金属に対して、2〜4倍モルが好ましく、さらに好ましくは、2〜2.1倍モルである。
【0083】
また、本工程における反応条件は適宜設定すればよく、限定されるものではないが、反応温度は10〜100℃が好ましく、さらに好ましくは10〜50℃であり、反応時間は0.1〜8時間が好ましく、さらに好ましくは0.5〜4時間である。
【0084】
また、上記方法で得られたBTC−Hを、さらに、アンモニウム塩又はアミン塩として再度酸析することで、より高純度なBTC−Hを得ることもできる。アンモニア又はアミン存在下で酸析することで析出する結晶がより細かくなるため、高純度な結晶を得やすくなる。使用するアンモニア、又は、アミンとしては、上記工程(c)で用いたものを用いればよい。本工程で、使用するアンモニア又はアミンの量は、適宜設定すればよく限定されるものではないが、BTC−Hに対して3〜10倍モルが好ましく、3.5〜5倍モルがより好ましい。
【0085】
酸析により析出したBTC−Hの白色結晶は減圧ろ過、加圧ろ過又は遠心ろ過等の常法により得ることができる。得られたBTC-Hは、BTC−Hが不溶若しくは難溶の溶剤での洗浄や晶析、熱抽出等の常法を単独もしくは組み合わせることで、より高純度な結晶を得ることができる。
【0086】
得られたBTC−Hは含水状態でも、一旦乾燥機等により乾燥させた状態でも使用することができる。
【0087】
(d;BTC−Hを無水化してBTA−Hを得る工程)
BTC−Hの無水化は、脱水剤の存在下で行なえばよい。当該脱水剤としては、有機酸無水物を用いればよく、例えば、無水酢酸や無水プロピオン酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。脱水剤の使用量は、特に限定されないが、BTC−Hに対して2〜10倍モルが好ましく、2〜6倍モルがより好ましい。反応は無溶媒で行なうこともできるが無水化反応に不活性な溶媒を使用しても構わない。使用できる溶媒としてはトルエン、キシレン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の炭化水素類、ジオキサン、ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類が上げられる。反応温度は無水化が進行する温度であれば特に限定されるものではないが、80〜150℃が好ましい。反応温度に達したら無水化が完結するまで1分〜8時間その温度を保持し攪拌することが好ましく、0.5〜5時間その温度を保持し攪拌することがより好ましい。
【0088】
以上により、立体異性体を含むBTAをアンモニウム塩、アミン塩、アルカリ塩又はアルカリ土類金属塩として水素化する工程を経ることで水素化時の副反応を抑制でき、また異性化反応が同時に起こり、純度が高く立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるBTA−Hを好適に得ることができる。なお、本発明に係るBTA−Hの製造方法によれば、上述した反応条件等にもよるが、得られるBTA−Hの純度は99%以上と高純度であり、かつ、当該BTA−H中には、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるBTA−Hを90〜100%の割合と、他の異性体に比べて極めて優位な含有量で含む。
【0089】
また、本発明に係るBTA−Hの製造方法によれば、残存するアルカリ金属及びアルカリ土類金属の総量が10ppm以下と低金属含有量である。例えば、本実施例では、600ppbや270ppbという低含有量のBTA−Hを得た。また、12重量%NaOH水溶液5.4gに1.0gを溶解したときにおける400nmの光透過率が、85%以上であるBTA−Hを良好に得ることができる。例えば、本実施例では、94.5%や94.1%という極めて透明度の高いBTA−Hを得ることができた。
【0090】
つまり、極めて高純度かつ低金属含有量で、透明性の高いBTA−Hを得ることができる。なお、当該光透過率は、従来公知の方法で測定すればよいが、BTA−Hの水への溶解度が低いため、開環させたBTC−Hのアルカリ塩として測定することができる。例えば、後述する実施例に記載の日本分光社製紫外可視分光光度計(V−520)を用いて、厚さ1cmの石英セルを用いて測定すればよい。
【0091】
<ポリイミド前駆体の重合方法>
本発明に係るポリイミド前駆体は、重合溶媒に、ジアミン及び上述の方法で得たBTA−Hを混合させることで、BTA−Hを重合させればよい。なお、予め、ジアミンを重合溶媒に溶解し、これにBTA−Hの粉末を徐々に添加して攪拌することが好ましい。当該攪拌は、メカニカルスターラーを用いればよく、室温で1〜72時間攪拌することが好ましい。
【0092】
重合反応系全体に対する、ジアミンとBTA−Hとの総量の濃度は、上記ジアミンとして芳香族ジアミンを用いる場合、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%であり、上記ジアミンとして脂肪族ジアミンを用いる場合、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは7〜20重量%の範囲である。この範囲であれば、均一、かつ、高重合度のポリイミド前駆体溶液を得ることができる。なお、芳香族ジアミン系において、上記範囲より低濃度で重合を行なうと、ポリイミド前駆体の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド膜が脆弱になる恐れがあり、上記濃度範囲より高濃度で重合を行なうとモノマーが十分溶解しない場合や反応溶液が不均一になりゲル化する場合があり好ましくない。一方脂肪族ジアミン系では、上記範囲より低濃度で重合すると、重合度低下の恐れがあり、上記範囲より高濃度では強固な塩が形成され、塩が完全に溶解するまでに長い重合反応時間を必要とし、生産性の低下を招く恐れがある。
【0093】
本発明に係るポリイミド前駆体の製造に用いるジアミンとしては、脂肪族ジアミン及びフッ素原子を有する芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも一つのジアミンを用いればよい。
【0094】
ジアミン成分として、脂環式ジアミンを選択した場合、得られるポリイミドには芳香族基が全く含まれないため、紫外域まで透明で且つ極めて低い誘電率示すポリイミドを得ることができる。ポリイミド前駆体の重合の際にBTA−Hを用いた場合においても若干塩形成が起こるが、塩はそれほど強固ではなく、室温で長時間攪拌を続けることで徐々に塩が溶解し、透明・均一で粘性の高いポリイミド前駆体溶液を容易に得ることが可能である。
【0095】
脂肪族ジアミンを使用した際に起こる塩形成の強さは、モノマーの立体構造に依存する。モノマーの立体構造が嵩高い場合あるいは嵩高い置換基を有する場合は、立体障害効果により塩の架橋密度か低下し、重合溶媒に対する塩の溶解度が増加し、結果として室温での長時間の攪拌により徐々に溶解して、重合反応を進行させることが可能となる。CBDAとは異なり、BTA−H分子中には嵩高いビシクロ環が存在し、これが塩の架橋密度低下に寄与するものと考えられる。
【0096】
また、フッ素原子を有する芳香族ジアミンを用いれば、光安定性に優れ、かつ低誘電率のポリイミドを得ることができる。
【0097】
本発明に係るポリイミド前駆体の製造に用いるジアミンとしては、フッ素原子を有さない芳香族ジアミンのみであってもよいが、この場合、ポリイミド前駆体の固有粘度が0.5dL/g以上であればよい。この場合、製膜性に優れたポリイミドを得ることができる。
【0098】
つまり、本発明に係るポリイミド前駆体は、一般式(1)
【0099】
【化13】
【0100】
及び一般式(2)
【0101】
【化14】
【0102】
(一般式(1)及び(2)において、Aは2価の脂肪族基及びフッ素元素を有する2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有していればよい。
【0103】
一方、本発明に係るポリイミド前駆体は、一般式(4)
【0104】
【化15】
【0105】
及び一般式(5)
【0106】
【化16】
【0107】
(一般式(4)及び(5)において、Bはフッ素元素を有さない2価の芳香族基を表す。)
で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有し、固有粘度が0.5dL/g以上のものであってもよい。
【0108】
本発明に係るポリイミド前駆体の製造に用いる上記脂肪族ジアミンとしては、BTA−Hに対する重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、適宜選択すればよいが、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−シクロヘキサンジアミン、シス−1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
【0109】
また、本発明に係るポリイミド前駆体の製造に用いる、上記フッ素原子を有する芳香族ジアミンとしては、BTA−Hに対する重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、適宜選択すればよいが、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が例として挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜2種類以上を併用してもよい。
【0110】
また、本発明に係るポリイミド前駆体の製造に用いる、上記フッ素原子を有さない芳香族ジアミンとしては、BTA−Hに対する重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、適宜選択すればよいが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(3−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、p−ターフェニレンジアミン、又は、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の下記構造式(19)
【0111】
【化17】
【0112】
で示される化合物、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン等の下記構造式(20)
【0113】
【化18】
【0114】
で示される化合物、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン等の下記構造式(21)
【0115】
【化19】
【0116】
で示される化合物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン等の下記構造式(22)
【0117】
【化20】
【0118】
で示される化合物等が例として挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜2種類以上を併用してもよい。これらは、本発明に係るフレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板等に好適に用いることができる。
【0119】
上述したジアミンの中でも、エーテル基を含有するジアミンを用いることが好ましい。エーテル基を含有するジアミンを用いて得られるポリイミドの破断伸びが向上するからである。エーテル基の数は特に限定されず、少なくとも1個含んでいればよい。
【0120】
エーテル基を含有するジアミンとしては、特に限定されないが、上記構造式(19)〜(22)で示される化合物が好ましく、中でも1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンが特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、両方共に用いてもよい。これらのジアミンを用いることで、破断伸びがより向上したポリイミドを得ることができる。
【0121】
本発明に係る上記一般式(4)及び(5)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、固有粘度0.5dL/gであることが必要とされるが、例えば、本発明に係るBTA−Hの製造方法で得られる、高純度、低金属含有量で、さらに、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるBTA−Hを極めて優位に含有するBTA−Hを用いれば、固有粘度0.5dL/g以上のポリイミド前駆体を得ることができる。
【0122】
なお、本発明に係る上記一般式(1)及び(2)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有するポリイミド前駆体においても、固有粘度が0.5dL/g以上であることが好ましく、さらに、上述した本発明に係るポリイミド前駆体の固有粘度は、いずれも、1.0dL/g以上であることがより好ましい。0.5dL/gを下回ると、製膜性が著しく悪くなり、キャスト膜がひび割れる等の深刻な問題が生じる恐れがある。また、固有粘度は高いほどよいが、例えば0.6dL/g以上の固有粘度であれば、フレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板として好適に用いることができる。
【0123】
また、本発明に係るポリイミド前駆体の製造に用いるジアミンとして、主鎖中にエーテル結合やスルホニル基のような屈曲結合を含有するジアミンを用いれば、フレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板に要求される特性、特に膜靭性の高いプラスチック基板を得ることができる。主鎖中にエーテル結合やスルホニル基のような屈曲結合を含有するジアミンとしては、上記例示した脂肪属ジアミン、フッ素元素を有する芳香族ジアミン、及び、フッ素元素を有さない芳香族ジアミンの内、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の他、主鎖中にメチレン基やイソプロピリデン基を含有するジアミン、即ち、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレンビス(3−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−エチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,5−ジエチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン等が好適に使用される。
【0124】
また、本発明に係るポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲で、上記BTA−H以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分や脂肪族テトラカルボン酸二無水物であっても、上記ジアミン化合物と重合可能なものである限り、併せて用いてもよい。
【0125】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、特に限定されるものではないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、ハイドロキノンビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種類以上用いてもよい。
【0126】
上記脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分としては、本発明に係るポリイミド前駆体の重合反応性、ポリイミドの要求特性を著しく損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4,2,3−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。
【0127】
上記BTA−H以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分や脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量は、要求するポリイミドの性質に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは、全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜80モル%、より好ましくは1〜60モル%の範囲である。
【0128】
重合反応の際使用される溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒が好ましいが、原料モノマーと生成するポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく特にその構造には限定されない。具体的に例示するならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、プチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども添加して使用できる。
【0129】
本発明に係るポリイミド前駆体はその重合溶液を、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し、粉末として単離することもできる。
【0130】
ポリイミド等の重合の際、しばしば添加される高分子溶解促進剤即ちリチウムブロマイドやリチウムクロライドのような金属塩類は、本発明に係るポリイミド前駆体の重合反応では、用いなくてもよい。これにより、金属塩類に由来する金属イオンが、ポリイミド膜中に残留することによる、電子デバイスとしての信頼性の低下を防ぐことができる。
【0131】
なお、上述の方法で得た、高純度なBTA−Hであって、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoを優位な含有量で含む、低金属含有量のBTA−Hを含むポリイミド前駆体の原料組成物を用いれば、本発明に係るポリイミド前駆体を好適に得ることができる。当該原料組成物には、BTA−H以外のテトラカルボン酸二無水物を含んでもよく、当該BTA−H以外のテトラカルボン酸二無水物として、上述したBTA−H以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分や脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、テトラカルボン酸無水物成分中のBTA−H以外のテトラカルボン酸二無水物の含有量は、全テトラカルボン酸二無水物成分中の0〜80モル%、より好ましくは1〜60モル%の範囲である。また、当該原料組成物には、ジアミン等、他の材料を適宜混合しておいてもよい。
【0132】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に係るポリイミドの製造方法では、上述の方法で得た、本発明に係るポリイミド前駆体を加熱して、又は、脱水試薬を用いて、閉環反応(イミド化反応)することで行なえばよい。この際、ポリイミドの使用可能な形態は、フィルム、金属基板/ポリイミドフィルム積層体、粉末、成型体及び溶液が挙げられる。
【0133】
これにより、上記一般式(1)及び(2)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有するポリイミド前駆体を用いれば、一般式(3)
【0134】
【化21】
【0135】
(一般式(3)において、Aは2価の脂肪族基及びフッ素元素を有する2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するポリイミドを得ることができる。
【0136】
また、本発明に係るポリイミドの製造方法によれば、フッ素原子を有する芳香族ジアミンに限らず、様々な芳香族ジアミンを用いることで、一般式(6)
【0137】
【化22】
【0138】
(Xは、2価の脂肪族基及び2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するポリイミドを得ることができる。
【0139】
つまり、上述の方法で得た、純度が高く、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoである低金属含有量のBTA−Hを含むポリイミドの原料組成物を用いれば、本発明に係るポリイミド前駆体を好適に得ることができる。また、当該原料組成物には、ジアミン等、他の材料を適宜混合しておいてもよい。なお、当該原料組成物には、BTA−H以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分や脂肪族テトラカルボン酸二無水物であっても、上記ジアミン化合物と重合可能なものである限り、併せて含んでいてもよい。
【0140】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としては、特に限定されるものではないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、ハイドロキノンビス(トリメリテートアンハイドライド)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種類以上含んでいてもよい。
【0141】
上記脂肪族テトラカルボン酸二無水物成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4,2,3−二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また、これらを2種類以上含んでいてもよい。
【0142】
上記BTA−H以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分や脂肪族テトラカルボン酸二無水物の含有量は、要求するポリイミドの性質に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは、全テトラカルボン酸二無水物使用量の0〜80モル%、より好ましくは1〜60モル%の範囲である。
【0143】
以下、上記一般式(6)で示すポリイミドを備えるポリイミドフィルムを製造する方法について述べる。ここで、以下の説明では、「ポリイミド前駆体」として、本発明に係るポリイミド前駆体のみならず、上記一般式(6)で示すポリイミドを製造する場合に必要なポリイミド前駆体もその意味に含めるものとする。
【0144】
まず、ポリイミド前駆体の重合溶液(ワニス)を基板上に流延して乾燥する。上記基板としては、例えば、ガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等が挙げられる。また、上記乾燥は、従来公知のオーブン等を用いればよく、また乾燥温度は、例えば40〜180℃、好ましくは50〜150℃で行なえばよい。
【0145】
次に、得られたポリイミド前駆体フィルムを基板上で加熱して閉環反応(イミド化反応)させることで、上記ポリイミドを含むフィルムを製造することができる。加熱温度は、好ましくは200〜400℃であり、さらに好ましくは250〜350℃である。200℃以上であれば、イミド化の閉環反応を十分に行なうことができ、400℃以下であれば、良好な熱安定性を有するポリイミドフィルムを得ることができる。またイミド化は真空中あるいは不活性ガス中で行なうことが好ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。
【0146】
また、イミド化反応は、加熱の代わりに、ポリイミド前駆体フィルムを、脱水試薬を含有する溶液に浸漬することによって行なってもよい。また、これらの脱水試薬をあらかじめポリイミド前駆体ワニス中に投入、攪拌し、それを上記基板上に流延・乾燥することで、部分的あるいは完全にイミド化したポリイミド前駆体フィルムを作製することもできる。これを更に上記のような温度範囲で熱処理しても差し支えない。
【0147】
上記脱水試薬としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜2種以上を混合して用いてもよい。なお、脱水試薬を用いる場合は、イミド化反応をピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下で行なうことが好ましい。
【0148】
製造するポリイミドが、ポリイミド前駆体を製造するときに用いた溶媒に溶解する場合、ポリイミド前駆体の重合溶液を、そのまま用いて、又は、当該重合溶液を同一の溶媒で適度に希釈した後に、150〜200℃に加熱すれば、上記ポリイミドの溶液(ワニス)を容易に製造することができる。ポリイミド前駆体を製造するときに用いた溶媒に不溶な場合は、結晶性のポリイミド粉末を沈殿物として得ることができる。この際、イミド化反応の副生成物である水等を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ−ピコリン等の塩基を添加することができる。イミド化後この反応溶液を大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリイミドを粉末として単離することもできる。またポリイミド粉末を上記重合溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることもできる。換言すれば、上述の方法で得たBTA−Hを含むポリイミドの原料組成物を用いれば、本発明に係るポリイミド好適に得ることができる。
【0149】
上記ポリイミドは、BTA−Hとジアミンとを重縮合反応させても得ることができる。つまり、上述したポリイミド前駆体を単離することなく、一段階で重合することができる。上記重縮合反応は、溶媒中で、高温で重縮合反応させることが好ましい。重縮合反応時の温度は、上記重縮合反応が進行する限り限定されるものではないが、好ましくは130〜250℃、さらに好ましくは150〜200℃の範囲で行なえばよい。この範囲であれば、上記重縮合反応は良好に進行する。
【0150】
また、用いた溶媒に、ポリイミドが不溶な場合、ポリイミドは沈殿として得られ、可溶な場合はポリイミドのワニスとして得られる。重合溶媒としては、特に限定さないが、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が挙げられ、より好ましくはm−クレゾール等のフェノール系溶媒やNMP等のアミド系溶媒が挙げられる。これらの溶媒に、イミド化反応の副生成物である水を共沸留去することを目的として、トルエンやキシレン等を添加してもよい。またイミド化触媒としてγ−ピコリン等の塩基を添加することができる。反応後、溶液を大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過しポリイミドを粉末として単離することができる。またポリイミドが溶媒に可溶である場合はその粉末を上記溶媒に再溶解してポリイミドワニスとすることができる。
【0151】
上述の方法で得られたポリイミドワニスを基板上に塗布して、40〜400℃、好ましくは100〜350℃で乾燥させても、脂環式ポリイミドフィルムを形成することができる。
【0152】
また、上述の方法で得られたポリイミド粉末を200〜450℃、好ましくは250〜430℃で加熱圧縮することで、ポリイミドの成型体を作製することができる。
【0153】
ポリイミド前駆体溶液中にN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドやトリフルオロ無水酢酸等の脱水試薬を添加・撹拌して0〜100℃、好ましくは0〜60℃で反応させることにより、ポリイミドの異性体であるポリイソイミドが生成する。イソイミド化反応は上記脱水試薬を含有する溶液中にポリイミド前駆体フィルムを浸漬することによっても可能である。ポリイソイミドワニスを上記と同様な手順で製膜した後、250〜450℃、好ましくは270〜400℃で熱処理することにより、ポリイミドへ容易に変換することができる。
【0154】
本発明のポリイミド及びその前駆体中に、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤等の添加物を加えることができる。
【0155】
以上の方法で、上述した一般式(3)や一般式(6)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを得ることができる。なお、本発明に係るポリイミドは、一般式(3)や一般式(6)で示される繰り返し単位を有するものである限り限定されない。
【0156】
つまり、下記一般式(9)
【0157】
【化23】
【0158】
(一般式(9)において、R
1は2価の脂肪族基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するポリイミドであっても、下記一般式(10)
【0159】
【化24】
【0160】
(一般式(10)において、R
2は2価の芳香族基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するポリイミドであってもよい。
【0161】
上述のように、本発明に係るポリイミドの製造において用いるジアミンとしては、エーテル基を含むジアミンを用いることが好ましい。そして、本発明に係るポリイミドにおいて、エーテル基を含むジアミンを用いて製造した場合、上記R
2は、エーテル基を含有する芳香族基となる。上記R
2が、エーテル基を含有する芳香族基であるポリイミドは、破断伸びに優れている。
【0162】
エーテル基を含むジアミンとして、好ましい例として上記構造式(19)〜(22)で示される化合物を用いることで、上述した上記R
2が、構造式(11)
【0163】
【化25】
【0164】
で示される芳香族基、
構造式(12)
【0165】
【化26】
【0166】
で示される芳香族基、
構造式(13)
【0167】
【化27】
【0168】
で示される芳香族基、
及び構造式(14)
【0169】
【化28】
【0170】
で示される芳香族基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香族基であるポリイミドを得ることができる。
【0171】
また、エーテル基を含むジアミンとして、好ましい例として上述した1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンのうち、少なくとも一つのジアミンを用いることで、上記R
2が、下記構造式(15)
【0172】
【化29】
【0173】
で示される芳香族基、
下記構造式(16)
【0174】
【化30】
【0175】
で示される芳香族基、
下記構造式(17)
【0176】
【化31】
【0177】
で示される芳香族基、
及び下記構造式(18)
【0178】
【化32】
【0179】
で示される芳香族基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香族基であるポリイミドを得ることができる。
【0180】
上記R
2が上記構造式(11)〜(14)のうち、少なくとも一つの芳香族基であるポリイミドは、破断伸びが優れているため好ましい。特に、上記R
2が上記構造式(15)〜(18)のうち、少なくとも一つの芳香族基であるポリイミドは、破断伸びが極めて優れているため好ましい。本発明にかかるポリイミドは、これらの芳香族基のうち、複数の種類の芳香族基が含まれていてもよく、いずれか一つが含まれていてもよい。
【0181】
上述の本発明に係るポリイミドの製造方法によれば、破断伸びが5%以上のポリイミドを好適に得ることができる。破断伸びは用途に応じて適宜調整すればよいが、30%以上が好ましい。中でも、上記R
2が上記構造式(15)〜(18)で示される芳香族基であるポリイミドは、極めて高い破断伸びを有する。
【0182】
また、上述の本発明に係るポリイミドの製造方法によれば、固有粘度の高いポリイミド前駆体を用いているので、極めて固有粘度の高いポリイミドを得ることができる。具体的には、一般式(9)又は(10)で示される繰り返し単位を有するポリイミドであって、固有粘度0.5dL/g以上のポリイミドを好適に製造することができる。ポリイミドの固有粘度は、その用途等に応じて適宜調製すればよいが、1.0dL/gであれば、ポリイミドの加工が容易になり、後述の集積回路の層間絶縁膜やディスプレー用プラスチック基板に好適に用いることができるため好ましい。なお、仮に固有粘度が0.5dL/g以下であっても、本発明のポリイミドをフィルムとした際にその破断伸びが30%以上であれば、本発明のポリイミドを集積回路の層間絶縁膜やディスプレー用プラスチック基板等の産業分野に支障なく適用できる。
【0183】
また、上述の本発明に係るポリイミドの製造方法によれば、ガラス転移温度が250℃以上のポリイミドを好適に得ることができる。ガラス転移温度は用途に応じて適宜調整すればよいが、350℃以上にすることが好ましい。
【0184】
また、上述の本発明に係るポリイミドの製造方法によれば、波長400nmでの光透過率が70%以上のポリイミドを好適に得ることができる。光透過率は用途に応じて適宜調整すればよいが、80%以上が好ましい。光透過率の上限値は特に限定されず、高ければ高いほどよい。
【0185】
また、上述の本発明に係るポリイミドの製造方法によれば、複屈折が0.01以下のポリイミドを好適に得ることができる。複屈折は用途に応じて適宜調整すればよいが、0.005以下が好ましい。複屈折の下限値は特に限定されるものではない。
【0186】
また、本発明に係るポリイミドは、有機溶剤(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、m−クレゾール、ジメチルスルホキシド等)に可溶である。そのため、本発明に係るポリイミドを材料として、後述の集積回路の層間絶縁膜やディスプレー用プラスチック基板を製造する際の、当該ポリイミドの加工が容易となる。
【0187】
なお、上述した本発明に係るBTA−Hの中でも、アルカリ金属とアルカリ土類金属との総量が10ppm以下であるBTA−H、さらには12重量%NaOH水溶液5.4gに1.0gを溶解したときにおける400nmの光透過率が、85%以上であるBTA−Hを原料として用いることで得られるポリイミドも、本発明に係るポリイミドの範疇に入るものである。当該原料を用いることで、ガラス転移温度が250℃以上、波長400nmでの光透過率が70%以上、複屈折が0.01以下、破断伸びが5%以上であるポリイミド、破断伸びが30%以上であるポリイミド、有機溶剤に可溶なポリイミドを好適に得ることができる。当該原料を用いたポリイミドの製造方法は、上述の通りであり、当該原料を重合させてポリイミド前駆体を製造して、当該ポリイミド前駆体を加熱により、又は脱水試薬を用いて閉環反応させればよい。
【0188】
<用途>
上述の方法で得たポリイミドは、液晶ディスプレー、有機ELディスプレー、フレキシブル液晶ディスプレー等の、ディスプレー用プラスチック基板、及び、集積回路の層間絶縁膜として好適に利用できる。
【0189】
上記ポリイミドを、ディスプレー用プラスチック基板に適用するために要求される特性として、ポリイミドのガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。また透明性の指標である波長400nmにおける光透過率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0190】
またポリイミド膜は、膜靭性の指標である180°折曲試験で破断されなければ、電子デバイス等の産業分野に適用可能であるが、引張試験において5%以上の破断伸びを有することがより好ましく、10%以上がさらに好ましい。複屈折は0.01以下であれば上記光学材料に適用するのに重大な問題はないが、0.005以下であることがより好ましい。
【0191】
上記ポリイミドを集積回路の層間絶縁膜に適用するために要求される特性として、ポリイミドのガラス転移温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。
【0192】
また、ポリイミド膜は膜靭性の指標として180°折曲試験により破断しなければ上記産業分野に十分適用可能である。また誘電率は2.7以下であることが好ましく、2.66以下であることがさらに好ましい。特に、本発明に係る集積回路の層間絶縁膜としては、上記一般式(3)で表せるポリイミドを含み、ガラス転移温度が250℃以上、誘電率が2.7以下であることが好ましい。
【0193】
本発明に係るポリイミドの製造方法によって得られるポリイミドは、脂環構造を有するため、ガラス転移温度は250℃以上であり、TFT型液晶ディスプレーや半導体チップの作製時に要求される短期耐熱性は十分高く、上記産業分野へ好適に応用できる。
【0194】
換言すれば、本発明に係るBTA−Hの製造方法により得られるBTA−Hは、上述のように、高純度、低金属含有量であり、透明性が高く、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoのBTA−Hを優位な含有量で含むため、当該BTA−Hを含む、集積回路の層間絶縁膜製造用原料組成物を用いれば、高密度配線及び多層基板化に寄与する集積回路の層間絶縁膜を得ることができる。当該原料組成物には、BTA−H以外のテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。当該BTA−H以外のテトラカルボン酸二無水物としては、上述の本発明に係るポリイミドの原料組成物に含んでもよいBTA−H以外の芳香族テトラカルボン酸二無水物成分や脂肪族テトラカルボン酸二無水物として例示した、テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、テトラカルボン酸無水物成分中の、BTA−H以外のテトラカルボン酸二無水物の含有量は、全テトラカルボン酸二無水物成分中の0〜80モル%が好ましく、より好ましくは1〜60モル%の範囲である。当該原料組成物には、ジアミン等、他の材料を適宜混合しておいてもよい。
【0195】
なお、本発明に係るディスプレー用プラスチック基板及び集積回路の層間絶縁膜に用いるポリイミドの、ガラス転移温度、光透過率及び破断伸びは高いほどよいが、本発明に係るポリイミドの製造方法では、例えば、ガラス転移温度306℃、光透過率87.2%、破断伸び27.2%のものを好適に得ることができる。また、複屈折及び誘電率は低いほどよいが、本発明に係るポリイミドの製造方法では、複屈折0.0015、誘電率2.64のものを好適に得ることができる。
【0196】
上述のように、本発明に係るポリイミドの製造方法によって得られるポリイミドは、高透明性、十分な膜靭性、低誘電率及び高ガラス転移温度を併せ持つため、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレーや、有機ELディスプレーに用いるディスプレー用プラスチック基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、フレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板及び集積回路の層間絶縁膜等の材料として有用である。
【0197】
なお、本発明は、以下に示すポリイミド前駆体等をも包含するものである。
【0198】
つまり、本発明に係るポリイミド前駆体は、一般式(1)
【0199】
【化33】
【0200】
及び一般式(2)
【0201】
【化34】
【0202】
(一般式(1)及び(2)において、Aは2価の脂肪族基及びフッ素元素を有する2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有していてもよい。
【0203】
さらに、本発明に係るポリイミド前駆体では、固有粘度が、0.5dL/g以上であることがより好ましい。
【0204】
また、本発明に係るポリイミドは、一般式(3)
【0205】
【化35】
【0206】
(一般式(3)において、Aは2価の脂肪族基及びフッ素元素を有する2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位を有していてもよい。
【0207】
また、本発明に係るポリイミド前駆体は、一般式(4)
【0208】
【化36】
【0209】
及び一般式(5)
【0210】
【化37】
【0211】
(一般式(4)及び(5)において、Bはフッ素元素を有さない2価の芳香族基を表す。)
で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有し、固有粘度が0.5dL/g以上であってもよい。
【0212】
また、本発明に係るディスプレー用プラスチック基板は、一般式(6)
【0213】
【化38】
【0214】
(Xは、2価の脂肪族基及び2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していてもよい。
【0215】
本発明に係るディスプレー用プラスチック基板では、上記ポリイミドの、ガラス転移温度が250℃以上、波長400nmでの光透過率が70%以上、複屈折が0.01以下、破断伸びが5%以上であることがより好ましい。
【0216】
また、本発明に係るポリイミドの製造方法は、ポリイミド前駆体を、加熱により、又は、脱水試薬を用いて、閉環反応させる方法であってもよい。
【0217】
本発明に係るポリイミドの製造方法は、一般式(6)
【0218】
【化39】
【0219】
(Xは、2価の脂肪族基及び2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、重縮合反応させる方法であってもよい。
【0220】
また、本発明に係る集積回路の層間絶縁膜は、一般式(6)
【0221】
【化40】
【0222】
(Xは、2価の脂肪族基及び2価の芳香族基のうち少なくとも一方の基を表す。)
で示される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していてもよい。
【0223】
本発明に係る集積回路の層間絶縁膜では、上記ポリイミドの、ガラス転移温度が250℃以上、誘電率が2.7以下であることが好ましい。
【0224】
本発明に係るポリイミド原料組成物は、上記一般式(3)で表されるポリイミドを製造するための原料組成物であって、少なくとも、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を、含んでいてもよい。
【0225】
本発明に係るポリイミド原料組成物は、上記ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物に含まれる、アルカリ金属とアルカリ土類金属との総量が10ppm以下であることがより好ましい。
【0226】
本発明に係るポリイミド原料組成物は、上記ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の、12重量%NaOH水溶液5.4gに1.0gを溶解したときにおける400nmの光透過率が、85%以上であることがより好ましい。
【0227】
本発明に係るポリイミド前駆体原料組成物は、上記一般式(4)及び一般式(5)で示される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有し、固有粘度が0.5dL/g以上であるポリイミド前駆体を製造するための原料組成物であって、少なくとも、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を、含んでいてもよい。
【0228】
本発明に係るポリイミド前駆体原料組成物では、上記ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物に含まれる、アルカリ金属とアルカリ土類金属との総量が10ppm以下であることがより好ましい。
【0229】
本発明に係るポリイミド前駆体原料組成物では、上記ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の、12重量%NaOH水溶液5.4gに1.0gを溶解したときにおける400nmの光透過率が、85%以上であることがより好ましい。
【0230】
また、本発明に係る集積回路の層間絶縁膜製造用原料組成物は、上記の本発明に係る集積回路の層間絶縁膜を製造するための原料組成物であって、少なくとも、立体構造が2−exo−3−exo−5−exo−6−exoであるビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物を、含んでいてもよい。
【0231】
本発明に係る集積回路の層間絶縁膜製造用原料組成物は、上記ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物に含まれる、アルカリ金属とアルカリ土類金属との総量が10ppm以下であることがより好ましい。
【0232】
本発明に係る集積回路の層間絶縁膜製造用原料組成物は、上記ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の、12重量%NaOH水溶液5.4gに1.0gを溶解したときにおける400nmの光透過率が、85%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0233】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。
【0234】
<赤外吸収スペクトル>
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、透過法にてポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを測定した。また、合成した脂環式テトラカルボン酸二無水物の分子構造を確認するためにKBr法により赤外吸収スペクトルを測定した。
【0235】
<
1H−NMRスペクトル>
合成した脂環式テトラカルボン酸二無水物の分子構造を確認するために、日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用いて、重水素化アセトニトリル中で合成物の
1 H−NMRスペクトルを測定した。
【0236】
<固有粘度>
0.5重量%のポリイミド前駆体溶液(溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド)について、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0237】
<ガラス転移温度:Tg>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリイミド膜のガラス転移温度を求めた。
【0238】
<線熱膨張係数:CTE>
ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリイミド膜の線熱膨張係数を求めた。
【0239】
<5%重量減少温度:T
d5>
ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリイミド膜の初期重量が5%減少したときの温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。
【0240】
<カットオフ波長(透明性)>
日本分光社製紫外可視分光光度計(V−520)を用いて、200nmから900nmの可視・紫外線透過率を測定した。透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、ポリイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
【0241】
<光透過率(透明性)>
日本分光社製紫外可視分光光度計(V−520)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。透過率が高い程、ポリイミド膜の透明性が良好であることを意味する。
【0242】
<複屈折>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリイミド膜に平行な方向(n
in)と垂直な方向(n
out)の屈折率をアッベ屈折計(ナトリウムランプ使用、波長589nm)で測定し、これらの屈折率の差から複屈折(Δn=n
in−n
out)を求めた。
【0243】
<誘電率及び誘電損失>
アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ4T)を用いて、ポリイミド膜の平均屈折率〔n
av=(2n
in+n
out)/3〕に基づいて次式:ε
cal=1.1×n
av2により1MHzにおけるポリイミド膜の誘電率(ε
cal)を算出した。
【0244】
<吸水率>
50℃で24時間真空乾燥したポリイミド膜(膜厚20〜30μm)を25℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、質量増加分から吸水率(%)を求めた。
【0245】
<弾性率、破断伸び>
東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリイミド膜の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力−歪曲線の初期の勾配から弾性率を、膜が破断したときの応力及び伸び率から、破断強度及び破断伸び(%)を、それぞれ求めた。破断伸びが高いほど膜の靭性が高いことを意味する。
<溶解性試験>
ポリイミド粉末10mgを各種溶媒1mLに入れ、室温加熱時における溶解性を試験した。
【0246】
〔実施例1:BTA−Hの製造〕
200mLのSUS316製オートクレーブ(攪拌機付)にBTA20g、12%NaOH水溶液を107.4g及びスポンジニッケル触媒4.0gを仕込み、系内を窒素ガスで3回、次いで水素ガスで4回置換した。水素圧を2.0MPaに保ちながら昇温し、140℃で水素吸収が終了するまで反応させた。反応終了後、触媒を減圧濾過し、35%塩酸35.3g加え1時間攪拌後ろ過し白色固体22.5gを得た。得られた白色個体を蒸留水22.5gに懸濁させ、攪拌しながら25%アンモニア水22.2gを滴下し、BTC−Hをアンモニウム塩とした。得られた水溶液に35%塩酸35.7gを加え1時間攪拌後ろ過し、BTC−Hの白色固体を13.6g得た。得られたBTC−Hを無水酢酸68g中で4時間還流させた。冷却後ろ過し酢酸30gで洗浄後減圧乾燥することで、BTA−Hの白色結晶9.1gを得た。ガスクロマトグラフィで分析したところ、純度は99.9%であった。また加水分解して中和滴定により酸価を測定したところ896mgKOH/gであった。さらにICP/MSで金属含有量を測定した結果、Fe:290ppb、Ni:140ppb、Cr:84ppb、Na:600ppbであった。また、BTA−H1.0gを12重量%NaOH水溶液5.4gに溶解させた水溶液の400nmにおける光透過率を、厚さ1cmの石英セルを用いて測定したところ、光透過率は94.5%であった。本実施例において得られたBTA−Hの、
1H−NMRスペクトル、及び、赤外吸収スペクトル(KBr法)による測定結果を、それぞれ
図1及び
図2に示す。
【0247】
〔実施例2:BTA−Hの製造〕
200mLのガラス製フラスコにBTA10gと4−ジメチルアミノピリジン0.05gと蒸留水100gを仕込み、攪拌しながら1時間還流させた後冷却してビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸水溶液を得た。
【0248】
200mLのSUS316製オートクレーブ(攪拌機付)に得られた当該水溶液及びスポンジニッケル触媒2.0gを仕込み、系内を窒素ガスで3回、次いで水素ガスで4回置換した。次に、系内にアンモニア2.9gを導入し30分攪拌した後、水素圧を8.0MPaに保ちながら昇温し、80℃で水素吸収が終了するまで反応させた。反応終了後、触媒を減圧濾過し、35%塩酸18.1g加え1時間攪拌後ろ過して、白色固体を得た。得られた白色固体を60gの水から再結晶することでBTC−Hを4.6g得た。得られたBTC−Hを無水酢酸50g中で4時間還流させて、冷却してろ過した後、酢酸20gで洗浄した。洗浄後、減圧乾燥することで、BTA−Hの白色結晶2.9gを得た。ガスクロマトグラフィで分析したところ、純度は99.7%であった。また加水分解して中和滴定により酸価を測定したところ894mgKOH/gであった。さらにICP/MSで金属含有量を測定した結果、Fe:260ppb、Ni:160ppb、Cr:92ppb、Na:270ppbであった。また、BTA−H1.0gを12重量%NaOH水溶液5.4gに溶解させた水溶液の400nmにおける光透過率を、厚さ1cmの石英セルを用いて測定したところ、光透過率は94.1%であった。
【0249】
〔実施例3〕
十分に乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に、ジアミンとして、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)5mmolを用い、これをN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と称する)18.5mLに溶解した。この溶液に、上記実施例1で得たBTA−Hの粉末5mmolを徐々に加えた。BTA−Hの粉末を加え終えた後、約24時間後に塩が溶解し、完全に均一・透明で溶液が得られた。
【0250】
さらに室温で24時間撹拌することで、透明で粘稠なポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液の溶質濃度は14.7重量%である。
【0251】
このポリイミド前駆体溶液は室温及び20℃で一ヶ月間放置しても沈澱、ゲル化は全く起こらず、極めて高い溶液貯蔵安定を示した。
【0252】
なお、N,N−ジメチルアセトアミド中、30℃で測定したポリイミド前駆体の固有粘度は1.86dL/gであり、高重合体であった。
【0253】
上記ポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布して、60℃、1時間で乾燥してポリイミド前駆体膜を得た。次に得られたポリイミド前駆体膜を、ガラス基板上で減圧下180℃、30分間加熱し、その後、350℃で2時間熱処理して、膜厚約20μmの透明で強靭なポリイミド膜を得た。イミド化の完結は赤外吸収スペクトルから確認した。180°折り曲げ試験によりこのポリイミド膜は破断せず、可撓性を示した。表1にポリイミドフィルムの物性値を示す。また表2に溶解性試験の結果を示す。
【0254】
【表1】
【0255】
【表2】
【0256】
ガラス転移温度306℃、カットオフ波長250nm、400nmでの透過率87.2%、破断伸び27.2%、複屈折Δn=0.0015とフレキシブル液晶ディスプレー用プラスチック基板としての要求特性を満足していた。また誘電率は2.64と極めて低く、集積回路の層間絶縁膜として優れた特性を示した。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図3及び
図4に示す。
【0257】
〔実施例4〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、4,4’−メチレンビス(3−メチルシクロヘキシルアミン)を用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。高いTg、高い透明性、十分な膜靭性、低い複屈折、極めて低い誘電率を示した。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図5及び
図6に示す。また、表2に溶解性試験結果を示す。
【0258】
〔
参考例5〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、4,4’−オキシジアニリンを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。高いTg、高い透明性、十分な膜靭性、低い複屈折及び比較的低い誘電率を示した。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図7及び
図8に示す。また、表2に溶解性試験の結果を示す。NMP、DMAc等の溶媒に対して溶解性を示した。
【0259】
〔実施例6〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)に加えて、さらに、イソホロンジアミンを併用した以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。共重合組成(モル比)は4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン):イソホロンジアミン=90:10である。物性値を表1に示す。非常に高いTg、高い透明性、十分な膜靭性、低い複屈折および極めて低い誘電率を示した。
【0260】
〔実施例7〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。非常に高いTg、高い透明性、極めて高い膜靭性、低い複屈折を示した。表2に溶解性試験結果を示す。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図9及び
図10に示す。
【0261】
〔
参考例8〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。高いTg、高い膜靭性、低い複屈折を示した。表2に溶解性試験結果を示す。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図11及び
図12に示す。
【0262】
〔
参考例9〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。高いTg、高い透明性、極めて高い膜靭性、低い複屈折を示した。表2に溶解性試験結果を示す。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図13及び
図14に示す。
【0263】
〔
参考例10〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォンを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。非常に高いTg、高い透明性、高い膜靭性、低い複屈折を示した。表2に溶解性試験結果を示す。NMPやDMAcに対して室温で高い溶解性を示した。ポリイミド前駆体及びポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図15及び
図16に示す。
【0264】
〔
参考例11〕
ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)の代わりに、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォンと1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを共に用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合した。得られたポリイミド前駆体ワニスに化学イミド化試薬(無水酢酸/ピリジン混合溶液、体積比7/3)を滴下して室温で3時間攪拌した。このとき用いた化学イミド化試薬中の無水酢酸量は、ポリイミド前駆体の繰り返し単位に対して10倍モル量である。その後窒素バブリングしながら150℃で2時間還流してイミド化を完結させた。得られたポリイミドワニスを大量のメタノール中に滴下・濾過・乾燥した。得られたポリイミド粉末をDMAcに28重量%の濃度で再溶解してワニスとし、これをガラス基板に塗付・乾燥後、250℃で1時間熱処理してポリイミド膜を作製し、膜物性を評価した。このポリイミドの共重合組成(モル比)はビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン:1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン=70:30である。物性値を表1に示す。非常に高いTg、高い透明性、高い膜靭性、低い複屈折を同時に達成した。表2に溶解性試験結果を示す。このポリイミドは上記のような優れた物性に加え、NMPやDMAcに対して室温で高い溶解性を示し、優れた溶液加工性を示した。ポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルを
図17に示す。
【0265】
〔比較例1〕
テトラカルボン酸二無水物として、BTA−Hの代わりにBTAを用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体の重合を行った。しかしながら、重合初期段階で強固な塩が生成し、攪拌を続けても塩は全く溶解せず、ポリイミド前駆体を得ることができなかった。重合溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドの代わりにN−メチル−2−ピロリドンを用いても同様であった。
【0266】
〔比較例2〕
テトラカルボン酸二無水物として、BTA−Hの代わりにBTAを用いた以外は、実施例4に記載した方法と同様に重合を行い、固有粘度0.38dL/gのポリイミド前駆体を得た。しかしながらそのキャスト膜は激しくひび割れていたため、良質なポリイミド膜を得ることができず、膜物性評価を実施することができなかった。これは用いたBTAの重合反応性が低く、膜形成に必要な十分高い分子量が得られなかったためである。重合溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドの代わりにN−メチル−2−ピロリドンを用いても同様であった。
【0267】
〔比較例3〕
テトラカルボン酸二無水物として、BTA−Hの代わりに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を用いた以外は、実施例3に記載した方法と同様にポリイミド前駆体を重合し、イミド化してポリイミド膜を作製し、物性を評価した。物性値を表1に示す。用いた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の重合反応性が低いために十分な分子量のポリイミド前駆体を得ることができず、イミド化により得られたポリイミド膜も脆弱であっため、機械的特性の評価は実施できなかった。