(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666078
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】アンチヒューズ素子及びこれを有する半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/82 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
H01L21/82 F
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2007-195979(P2007-195979)
(22)【出願日】2007年7月27日
(65)【公開番号】特開2009-32941(P2009-32941A)
(43)【公開日】2009年2月12日
【審査請求日】2010年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】513192281
【氏名又は名称】ピーエスフォー ルクスコ エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】PS4 Luxco S.a.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100127199
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小川 澄男
【審査官】
須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−082641(JP,A)
【文献】
特開2003−168734(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0292754(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82
H01L 27/10
G11C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と、下部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に設けられた絶縁膜と、前記下部電極に隣接して設けられた引き出し電極とを備え、前記絶縁膜を絶縁破壊することにより前記下部電極を介して前記上部電極と前記引き出し電極とを電気的に接続可能なアンチヒューズ素子であって、
前記上部電極の所定の端部は、前記下部電極と前記引き出し電極の境界と平面視において実質的に一致しており、且つ、前記所定の端部の少なくとも一辺に沿った長さが直線距離よりも長い非直線形状を有していることを特徴とするアンチヒューズ素子。
【請求項2】
前記上部電極の前記端部がジグザグ形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項3】
前記上部電極は第1の上層配線に接続されたゲート電極であり、前記引き出し電極は第2の上層配線に接続された拡散層領域であり、前記下部電極は前記拡散層領域と接合するデプレッション型のチャネル領域であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項4】
前記ゲート電極から見て前記拡散層領域とは反対側の領域には、上層配線に接続された他の拡散層領域を介することなく素子分離領域が存在することを特徴とする請求項3に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項5】
前記上部電極の一部が素子分離領域上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項6】
前記ゲート電極と前記第1の上層配線とを接続するコンタクトは、前記チャネル領域の真上に配置されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載のアンチヒューズ素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアンチヒューズ素子と、前記上部電極に高電圧を印加することにより前記絶縁膜を絶縁破壊する書き込み回路と、前記上部電極と前記引き出し電極との間の抵抗値を検出する読み出し回路とを備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンチヒューズ素子及びこれを有する半導体装置に関し、特に、絶縁破壊によって電気的に導通させることが可能なアンチヒューズ素子及びこれを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体装置においては、正常に動作しない不良セルを冗長セルに置換することによって、不良アドレスの救済が行われる。不良アドレスの記憶には、通常、ヒューズ素子が用いられる。つまり、レーザービームの照射によってヒューズ素子を不可逆的に切断することにより、不良アドレスが記憶される。このように、通常のヒューズ素子は、導通状態から絶縁状態に変化させることによって情報を不揮発的に記憶する素子である。
【0003】
これに対し、近年、アンチヒューズ素子と呼ばれる素子が注目されている(特許文献1〜3参照)。アンチヒューズ素子とは、通常のヒューズ素子とは逆に、絶縁状態から導通状態に変化させることによって情報を記憶する素子である。アンチヒューズ素子は、デプレッション型のMOSトランジスタとほぼ同じ構造を有しており、ゲート電極とソース・ドレイン共通電極との間に高電圧を印加することによってゲート絶縁膜を絶縁破壊すると、絶縁状態から導通状態へ変化させることができる。
【0004】
このように、アンチヒューズ素子はデプレッション型のMOSトランジスタとほぼ同じ構造を有していることから、通常のヒューズ素子と比べて占有面積が小さく、しかも、レーザー照射によるパッシベーション膜の破壊も生じないという利点を有している。
【0005】
しかしながら、アンチヒューズ素子は、導通状態における抵抗値にばらつきが大きいという問題があった。以下、導通状態における抵抗値にばらつきが生じる理由について説明する。
【0006】
図9は、一般的なアンチヒューズ素子の構造を示す模式図である。
【0007】
図9に示すように、一般的なアンチヒューズ素子は、ゲート電極12、ソース領域14及びドレイン領域16を備えており、ソース領域14とドレイン領域16は、図示しない上層配線によって短絡されている。初期状態においては、ゲート絶縁膜18によってゲート電極12とチャネル領域20は絶縁されており、このため、ゲート電極12とソース領域14及びドレイン領域16は絶縁された状態になる。しかしながら、ゲート電極12に高電圧を印加することによってゲート絶縁膜18に絶縁破壊領域18aが形成されると、デプレッション型のチャネル領域20を介してゲート電極12とソース領域14及びドレイン領域16が短絡された状態となる。
【0008】
したがって、ゲート電極12に接続された端子Dと、ソース領域14及びドレイン領域16に接続された端子Eとの間に電流が流れるか否かを検出すれば、ゲート絶縁膜18に絶縁破壊領域18aが形成されているか否かを判断することが可能となる。
【0009】
図10は、絶縁破壊された状態におけるアンチヒューズ素子の等価回路図である。
【0010】
図10に示すように、アンチヒューズ素子が絶縁破壊されると、端子D,E間には、ゲート電極12及び絶縁破壊領域18aによる抵抗成分Rgと、ソース領域14側のチャネル抵抗成分Rs及びドレイン領域16側のチャネル抵抗成分Rdの並列回路とが接続された状態となる。このうち、抵抗成分Rs,Rdについては、絶縁破壊領域18aが形成される位置によって変化する。しかしながら、絶縁破壊領域18aが形成される位置は所定の確率分布に依存し、ソース領域14又はドレイン領域16の近傍に形成されることもあれば、ソース領域14とドレイン領域16のほぼ中間位置に形成されることもある。
【0011】
ここで、絶縁破壊領域18aがソース領域14又はドレイン領域16の近傍に形成された場合は、抵抗成分Rs,Rdのいずれか一方が非常に小さくなることから、端子D,E間の抵抗値は比較的小さくなる。これに対し、絶縁破壊領域18aがソース領域14とドレイン領域16のほぼ中間位置に形成された場合は、抵抗成分Rs,Rdがいずれも大きくなることから、端子D,E間の抵抗値は比較的大きくなる。
【0012】
つまり、Rs=Rdである場合、つまり絶縁破壊領域18aが中間位置に形成された場合、端子D,E間の抵抗値Rdeは、
Rde=Rg+Rs・Rd/(Rs+Rd)=Rg+Rd/2
となる。
【0013】
逆に、Rs>>Rdである場合、つまり絶縁破壊領域18aが端部位置(例えばドレイン領域16の近傍)に形成された場合、Rd≒0であることから、端子D,E間の抵抗値Rdeは、
Rde= Rg+Rs・Rd/(Rs+Rd)≒Rg
となる。
【0014】
ここで、一般的なシート抵抗は、ゲート抵抗層で百数十Ω/□、デプレッションチャネル抵抗層で数K〜数百MΩ/□であることから、抵抗値Rdeはほぼデプレッションチャネル抵抗層に依存すると言える。
【0015】
このように、アンチヒューズ素子を同じような電圧条件で絶縁破壊した場合であっても、端子D,E間の抵抗値には大きなばらつきが不可避的に生じる。このようなばらつきが存在すると、絶縁破壊領域18aが形成されているか否かの検出においてしきい値の設定が困難となり、場合によっては誤判定を生じる原因となっていた。また、絶縁破壊後も端子D,E間の抵抗値が比較的大きい可能性があることから、検出感度をある程度高く設定する必要が生じる。これにより、判定時間が増大することから、半導体装置の高速動作を妨げる原因にもなっていた。
【特許文献1】米国特許第6,902,958号明細書
【特許文献2】米国特許第6,700,176号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0258482号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、改良されたアンチヒューズ素子及びこれを用いた半導体装置を提供することである。
【0017】
また、本発明の他の目的は、絶縁破壊後における抵抗値のばらつきが抑制されたアンチヒューズ素子及びこれを用いた半導体装置を提供することである。
【0018】
また、本発明のさらに他の目的は、絶縁破壊後における抵抗値が比較的小さいアンチヒューズ素子及びこれを用いた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、アンチヒューズ素子を改良すべく鋭意研究を重ねた結果、ゲート絶縁膜の端部の方が、中央部分よりも絶縁破壊が生じる確率が高いことを見いだした。これは、ゲート絶縁膜が完全に均質な膜ではなく、ある程度の不均質さを有しており、最も耐圧の低い部分において絶縁破壊が生じることに起因する。このような耐圧の低い部分は、多くの製造プロセスを経ることによってストレスのかかるゲート絶縁膜の端部に生じやすく、これが端部において絶縁破壊が生じやすい理由となっているものと予想される。
【0020】
本発明は、このような技術的知見に基づきなされたものであって、本発明によるアンチヒューズ素子は、上部電極と、下部電極と、上部電極と下部電極との間に設けられた絶縁膜と、下部電極に隣接して設けられた引き出し電極とを備え、絶縁膜を絶縁破壊することにより下部電極を介して上部電極と引き出し電極とを電気的に接続可能なアンチヒューズ素子であって、上部電極の所定の端部は、下部電極と引き出し電極の境界と平面視において実質的に一致しており、且つ、非直線形状を有していることを特徴とする。
【0021】
「非直線形状」とは、曲線形状やジグザグ形状など、単位区間を結ぶ距離が直線に比べて長くなる全ての形状を含むが、実効的には、単位区間を結ぶ距離が直線に比べて50%以上長くなる形状であることが望ましい。本発明においては、単位区間を結ぶ距離が長いほど、つまり、上部電極の所定の端部が伸張されているほど好ましい。したがって、ジグザグ形状を採用することが非常に好ましい。
【0022】
本発明による半導体装置は、上記のアンチヒューズ素子と、上部電極に高電圧を印加することにより絶縁膜を絶縁破壊する書き込み回路と、上部電極と引き出し電極との間の抵抗値を検出する読み出し回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上部電極の所定の端部が非直線形状とされていることから、この部分を直線形状とした場合と比べて所定の端部の長さが長くなる。これにより、絶縁膜の端部が絶縁破壊される確率が高まることから、絶縁破壊後における抵抗値のばらつきが抑制されるとともに、絶縁破壊後における抵抗値を低減することが可能となる。
【0024】
このため、本発明によるアンチヒューズ素子を用いれば、アンチヒューズ素子が絶縁破壊されているか否かの判定において、誤判定を生じることなく判定時間を短縮することができ、高速動作が要求される回路にも適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の好ましい第1の実施形態によるアンチヒューズ素子100の構造を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すA−A線に沿った略断面図である。尚、
図1(a)においては、図面の見やすさを考慮して上層配線など一部の要素を省略している。
【0027】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態によるアンチヒューズ素子100は、従来のアンチヒューズ素子と同様、デプレッション型のMOSトランジスタと類似の構成を有しているが、主に、ゲート電極110の端部がジグザグ形状を有している点、並びに、ソース領域及びドレイン領域の一方が削除されている点において、従来のアンチヒューズ素子と相違している。以下、より詳細に説明する。
【0028】
本実施形態によるアンチヒューズ素子100は、上部電極であるゲート電極110と、下部電極であるデプレッション型のチャネル領域120と、ゲート電極110とチャネル領域120との間に設けられたゲート絶縁膜130と、引き出し電極である拡散層領域122とを有している。チャネル領域120と拡散層領域122はPN接合しているが、チャネル領域120がデプレッション型であることから、両者は導通状態にある。
【0029】
図1(a)に示すように、拡散層領域122側におけるゲート電極110の端部111は、平面的に見て、チャネル領域120と拡散層領域122の境界と一致している。このような構造は、ゲート電極110をマスクとして活性領域102にイオン注入を行うことにより得ることができる。また、ゲート電極110の端部111は、平面的に見てジグザグ形状を有している。特に限定されるものではないが、ゲート電極110の他の端部112,113は活性領域102の周縁とほぼ一致している。
【0030】
活性領域102内には、チャネル領域120と拡散層領域122しか設けられておらず、通常のアンチヒューズ素子のように、対となる2つの拡散層領域が存在しない。つまり、ソース領域及びドレイン領域の一方が削除されている。
【0031】
平面的に見て、活性領域102の周囲は素子分離領域104によって取り囲まれており、素子分離領域104の周囲はコンタクト領域106によって取り囲まれている。さらに、コンタクト領域106は、素子分離領域108によって取り囲まれている。
図1(b)に示すように、素子分離領域104はPウェル領域103内に設けられており、これによって、N型基板101に形成された図示しない他の素子と確実に分離されている。Pウェル領域103への電位供給は、上層配線140及びコンタクト150を介して、リング状のコンタクト領域106から行われる。
【0032】
ゲート電極110への電位供給は、上層配線161及びコンタクト162を介して行われる。上層配線161は、コンタクト151を介して他の上層配線141に接続されている。また、拡散層領域122への電位供給は、上層配線142及びコンタクト152を介して行われる。
【0033】
ゲート電極110と上層配線161とを接続するコンタクト162は、チャネル領域120の真上に配置されている。つまり、通常のMOSトランジスタでは、ゲート電極が素子分離領域上に引き出されたコンタクト領域を有しており、このコンタクト領域にコンタクトを形成するのが一般的である。これは、チャネル領域120の真上にコンタクトを形成すると、コンタクト形成時のストレスなどによってトランジスタ特性が変化するおそれがあるからである。しかしながら、アンチヒューズ素子においては、このような特性の変化が素子の機能に大きな影響を与えないと考えられるため、本実施形態ではチャネル領域120の真上にコンタクト162を配置している。
【0034】
図2は、本実施形態によるアンチヒューズ素子100に書き込み回路及び読み出し回路を接続した状態を示す回路図である。
【0035】
図2に示すように、書き込み回路180は、ゲート電極110に繋がる上層配線141と書き込み電圧Vppとの間に接続されたスイッチによって構成されている。一方、読み出し回路190は、上層配線141と読み出し電圧Vddとの間に接続されたスイッチ191と、拡散層領域122に繋がる上層配線142に接続されたコンパレータ192によって構成されている。
【0036】
アンチヒューズ素子100は、初期状態においては、ゲート電極110とチャネル領域120がゲート絶縁膜130によって絶縁分離されている。このため、上層配線141,142間の抵抗値はほぼ無限大であり、これらの間には実質的に電流は流れない。このため、
図2に示すスイッチ191をオンさせても、上層配線142の電位はほとんど変化しない。したがって、この状態ではコンパレータ192の出力はローレベルとなり、アンチヒューズ素子100が絶縁破壊されていないことが検出される。
【0037】
そして、書き込み回路180をオンさせると、ゲート電極110に高電圧が印加され、ゲート絶縁膜130が絶縁破壊する。これにより、ゲート電極110とチャネル領域120が接続された状態となる。上述の通り、チャネル領域120はデプレッション型であることから、ゲート絶縁膜130が絶縁破壊されると、チャネル領域120を介してゲート電極110と拡散層領域122とが電気的に接続された状態となり、上層配線141,142間の抵抗値が低下する。
【0038】
このため、
図2に示すスイッチ191をオンさせると、上層配線142の電位が上昇し、コンパレータ192の出力はハイレベルとなる。これにより、アンチヒューズ素子100が絶縁破壊されていることが検出される。
【0039】
既に説明したように、本発明者の研究によれば、ゲート絶縁膜の端部の方が中央部分よりも絶縁破壊が生じる確率が高いことが判明している。これに関し、本実施形態によるアンチヒューズ素子では、ゲート電極110の端部111がジグザグ形状を有しており、これにより直線的である場合と比べて端部111の長さが延長されている。このため、この部分にて絶縁破壊が生じる確率が非常に高くなる。この部分が絶縁破壊されると、チャネル領域120を経由する電流経路の距離がほぼゼロとなる。
【0040】
図3は、絶縁破壊された状態におけるアンチヒューズ素子100を示す図であり、(a)は略断面図、(b)は等価回路図である。
【0041】
図3(a)に示すように、ゲート電極110に高電圧を印加すると、絶縁破壊領域130aは拡散層領域122の近傍に形成される。このため、上層配線141,142間の抵抗値Rdeは、
図3(b)に示すように、ゲート電極110及び絶縁破壊領域130aによる抵抗成分Rgと、チャネル抵抗成分Rsの和によって定義される。そして、絶縁破壊領域130aはゲート電極110の端部111近傍にて生じることから、チャネル抵抗成分Rsは従来に比べて非常に小さくなる。
【0042】
このように、本実施形態によるアンチヒューズ素子100によれば、絶縁破壊後における抵抗値のばらつきを小さくすることができる。これにより、コンパレータ192に入力されるしきい値Vrefの設定が容易となることから、誤判定を防止することが可能となる。しかも、絶縁破壊後における抵抗値が低減されることから、短時間で判定を行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、ソース領域及びドレイン領域の一方が削除されていることから、絶縁破壊時においてゲート電極110とチャネル領域120との間に印加される電界に偏りが生じ、端部111側において絶縁破壊が生じる確率がより高くなる。しかも、ソース領域又はドレイン領域の削除により、アンチヒューズ素子100の占有面積を縮小することも可能となる。尚、削除された側(
図1では右側)にて絶縁破壊が生じると絶縁破壊後における抵抗値が大きくなってしまうが、上述の通り、電界の偏りが存在する点、並びに、削除された側におけるゲート電極110の端部112は直線的である点から、こちら側で絶縁破壊が生じる確率は十分に低い。
【0044】
但し、本発明においてソース領域及びドレイン領域の一方を削除することは必須ではなく、略断面図である
図4に示すように、ゲート電極110から見て拡散層領域122とは反対側の領域に、使用されない他の拡散層領域124が存在していても構わない。このような拡散層領域124が存在する場合であっても、これを上層配線に接続する必要はなく、したがって、コンタクトを形成可能なサイズである必要はない。
【0045】
さらに、本実施形態では、ゲート電極110と上層配線161とを接続するコンタクト162が、チャネル領域120の真上に配置されていることから、コンタクト領域を別途形成する必要がなくなり、占有面積をよりいっそう縮小することが可能となる。
【0046】
図5は、複数のアンチヒューズ素子100をアレイ状に配列した例を示す略平面図である。
【0047】
図5に示すように、複数のアンチヒューズ素子100をアレイ状に配列する場合、リング状のコンタクト領域106を個別に設ける必要はなく、複数のアンチヒューズ素子100を一つのコンタクト領域106によってまとめて取り囲む構成とすればよい。この場合、アンチヒューズ素子100同士の分離は、素子分離領域による平面的な分離のみとなるが、アンチヒューズ素子100同士の分離特性としては十分であると考えられる。これにより、コンタクト領域106を個別に設ける場合と比べ、全体的な占有面積を削減することが可能となる。
【0048】
しかも、従来のアンチヒューズ素子のように3端子型ではなく、2端子型の素子であることから、例えば
図5に示すように、右側に延びる上層配線171をゲート電極110に接続し、左側に延びる上層配線172を拡散層領域122に接続することができ、レイアウトを簡素化することが可能となる。
【0049】
図6は、本発明の好ましい第2の実施形態によるアンチヒューズ素子200の構造を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すB−B線に沿った略断面図である。尚、
図6(a)においても、図面の見やすさを考慮して上層配線など一部の要素を省略している。
【0050】
本実施形態によるアンチヒューズ素子200は、チャネル領域120の長さLが大幅に縮小され、その分、ゲート電極110の端部112が素子分離領域104上に位置している。その他の点については、
図1に示したアンチヒューズ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
本実施形態によれば、絶縁破壊を意図しない部分のゲート絶縁膜130の大部分が素子分離領域104上に位置していることから、この部分で絶縁破壊が発生することが無くなる。つまり、ジグザグ形状とされた端部111側にて絶縁破壊が生じる可能性がよりいっそう高くなる。また、端部ではない部分で絶縁破壊が生じたとしても、チャネル領域120の長さ自体が大幅に短いことから、チャネル領域120部分における抵抗値は十分に低く抑えられる。
【0052】
このため、絶縁破壊後における抵抗値のばらつきがいっそう抑制されるとともに、絶縁破壊後における抵抗値をいっそう低減することが可能となる。しかも、活性領域102のサイズが縮小されることから、アンチヒューズ素子200の占有面積を低減することも可能となる。
【0053】
尚、ゲート電極110のうち、素子分離領域104上に位置する部分は本来不要である。しかしながら、この部分を削除するとゲート電極110が細くなりすぎるため、パターニング時において剥がれが生じるおそれがあるとともに、コンタクト162の形成が困難となる。したがって、
図6に示すように、素子分離領域104上にもゲート電極110を形成することが好ましい。
【0054】
図7は、本発明の好ましい第3の実施形態によるアンチヒューズ素子300の構造を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すC−C線に沿った略断面図である。尚、
図7(a)においても、図面の見やすさを考慮して上層配線など一部の要素を省略している。
【0055】
本実施形態によるアンチヒューズ素子300は、ゲート電極110が活性領域102上で島状に形成されており、全周に亘って端部114がジグザグ形状とされている。その他の点については、
図1に示したアンチヒューズ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0056】
本実施形態によれば、ゲート電極110の全周がジグザグ形状であることから、この部分で絶縁破壊が生じる可能性が極めて高くなる。このため、占有面積は多少増大するが、絶縁破壊後における抵抗値のばらつきが抑制されるとともに、絶縁破壊後における抵抗値を低減することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0058】
例えば、上記各実施形態によるアンチヒューズ素子100,200,300では、ゲート電極110の端部111,114をいずれもジグザグ形状としているが、本発明がこれに限定されるものではなく、非直線形状であれば足りる。しかしながら、ゲート電極の端部の長さが長いほど、端部近傍にて絶縁破壊が生じる確率が高くなる点を考慮すれば、ジグザグ形状のように、単位区間を結ぶ距離が効果的に長くなる形状を採用することが好ましい。
【0059】
ゲート電極110の形状のバリエーションとしては、
図8(a)〜(d)に示す形状を挙げることができる。本発明において、これらはいずれも「ジグザグ形状」に該当する。つまり、ゲート電極の平面形状はレチクル上におけるパターンと完全には一致せず、多少カドが取れたパターンとなるが、このようなカドが丸いパターンであってもジグザグ形状に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の好ましい第1の実施形態によるアンチヒューズ素子100の構造を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すA−A線に沿った略断面図である。
【
図2】アンチヒューズ素子100に書き込み回路及び読み出し回路を接続した状態を示す回路図である。
【
図3】絶縁破壊された状態におけるアンチヒューズ素子100を示す図であり、(a)は略断面図、(b)は等価回路図である。
【
図4】アンチヒューズ素子100の変形例を示す図である。
【
図5】複数のアンチヒューズ素子100をアレイ状に配列した例を示す略平面図である。
【
図6】本発明の好ましい第2の実施形態によるアンチヒューズ素子200の構造を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すB−B線に沿った略断面図である。
【
図7】本発明の好ましい第3の実施形態によるアンチヒューズ素子300の構造を示す図であり、(a)は略平面図、(b)は(a)に示すC−C線に沿った略断面図である。
【
図8】ゲート電極の好ましい他の形状を示す図である。
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図9】一般的なアンチヒューズ素子の構造を示す模式図である。
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図10】絶縁破壊された状態におけるアンチヒューズ素子の等価回路図である。
【0061】
100,200,300 アンチヒューズ素子
101 N型基板
102 活性領域
103 Pウェル領域
104 素子分離領域
106 コンタクト領域
108 素子分離領域
110 ゲート電極
111〜114 ゲート電極の端部
120 チャネル領域
122,124 拡散層領域
130 ゲート絶縁膜
130a 絶縁破壊領域
140〜142,161,171,172 上層配線
150〜152,160 コンタクト
180 書き込み回路
190 読み出し回路
191 スイッチ
192 コンパレータ