特許第5666082号(P5666082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666082
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】転写装置およびプレス装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20150122BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   B29C59/02 ZZNM
   H01L21/30 502D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2008-143523(P2008-143523)
(22)【出願日】2008年5月30日
(65)【公開番号】特開2009-286067(P2009-286067A)
(43)【公開日】2009年12月10日
【審査請求日】2011年4月25日
【審判番号】不服2014-960(P2014-960/J1)
【審判請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 慎也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂
(72)【発明者】
【氏名】小久保 光典
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕喜
【合議体】
【審判長】 田口 昌浩
【審判官】 須藤 康洋
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−287730(JP,A)
【文献】 特開2005−353858(JP,A)
【文献】 特開2006−116602(JP,A)
【文献】 特開2005−328337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C59/00-59/18
B29C43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置において、
前記被成型品を保持する被成型品保持体と;
前記被成型品保持体に対して接近・離反する方向で相対的に移動する移動体と;
前記移動体に支持されて前記移動体と共に移動する型保持体と;
前記移動体を相対的に移動するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して並列に設けられた駆動機構と;
前記被成型品保持体に保持されている前記被成型品と前記型保持体に保持されている前記型とを撮影するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して直列に設けられた撮像装置と;
前記被成型品保持体に対する前記型保持体の姿勢を調整すると共に、前記被成型品保持体に対して接近・離反する方向で前記移動体に対して前記型保持体を移動させる型姿勢調整移動手段と;
を有し、前記型姿勢調整移動手段は、複数のピエゾ素子を用いて構成され
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして転写を行い、
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記被成型品から前記型を離すことを特徴とする転写装置。
【請求項2】
型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置において、
前記被成型品を保持する被成型品保持体と;
前記型を保持し、前記被成型品保持体に対して接近・離反する方向で相対的に移動する型保持体と;
前記型保持体を相対的に移動するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して並列に設けられた駆動機構と;
前記被成型品保持体に保持されている前記被成型品と前記型保持体に保持されている前記型とを撮影するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して直列に設けられた撮像装置と;
前記型保持体に対する前記被成型品保持体の姿勢を調整すると共に、前記型保持体に対して接近・離反する方向で前記被成型品保持体を移動させる型姿勢調整移動手段と;
を有し、前記型姿勢調整移動手段は、複数のピエゾ素子を用いて構成され
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして転写を行い、
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記被成型品から前記型を離すことを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の転写装置において、
前記被成型品保持体に保持されている前記被成型品に紫外線を照射するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して直列に設けられた紫外線照射装置を有することを特徴とする転写装置。
【請求項4】
ベッドと;
前記ベッドの上面に設けられ、上面で被成型品を保持する被成型品保持体と;
前記ベッドの上面の一方の側に立設された第1のコラムと;
前記ベッドの上面の他方の側に立設された第2のコラムと;
前記被成型品保持体の上方に設けられ、一端部が前記第1のコラムに支持され、他端部が前記第2のコラムに支持され、上下方向で移動自在になっている移動体と;
前記移動体を上下方向で移動位置決めするために、前記移動体の一端部側の部位に力を加える第1の駆動機構と;
前記移動体を上下方向で前記第1の駆動機構と同期して移動位置決めするために、前記移動体の他端部側の部位に力を加える第2の駆動機構と;
前記移動体のほぼ中央部で前記移動体の下側に設けられ、各々が上下方向で個別に伸縮する複数のピエゾ素子と;
弾性体によって上方に引っ張られ、前記各ピエゾ素子の下端部に接触し、前記弾性体と前記各ピエゾ素子とによって前記移動体に支持され、前記被成型品保持体の上面とほぼ平行に対向している下面で型を保持する型保持体と;
を有し、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして転写を行い、
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記被成型品から前記型を離すことを特徴とする転写装置。
【請求項5】
ベース部材と;
前記ベース部材に対して接近・離反する方向で相対的に移動する第1の移動体と;
前記第1の移動体に支持されて前記第1の移動体と共に、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で相対的に移動する第2の移動体と;
前記第2の移動体の姿勢を調整すると共に、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で、前記第1の移動体に対して前記第2の移動体を移動させる移動体姿勢調整移動手段と;
を有し、前記移動体姿勢調整移動手段は、前記第1の移動体と前記第2の移動体との間に設けられている複数のピエゾ素子を用いて構成され
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして前記第2の移動体を前記ベース部材に押し当て、
前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記ベース部材から前記第2の移動体を離すことを特徴とするプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置等に係り、特に、被成型品保持体に対して型保持体を相対的に移動し微細な転写パターンを転写等するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線描画法などで石英基板等に超微細な転写パターンを形成して型(モールド)を作製し、被成型品として被転写基板表面に形成されたレジスト膜に前記型を所定の圧力で押圧して、当該型に形成された転写パターンを転写するナノインプリント技術が研究開発されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
従来、ナノインプリントを行う転写装置(型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置)として、被成型品を保持する被成型品保持体と、この被成型品保持体に対して接近・離反する方向で移動すると共に型を保持する型保持体とを備えて構成されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】Precision Engineering Journal of the International Societies for Precision Engineering and Nanotechnology 25(2001) 192-199
【特許文献1】特開2006−297716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の転写装置では、型保持体を駆動するボールネジ等の駆動機構が、被成型品保持体や型保持体の上方に設けられているので、前記型保持体の移動方向における転写装置の寸法が大きくなる(たとえば高さが高くなる)という問題がある。
【0005】
上記問題は、被成型品の紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)を硬化させるための紫外線照射装置を設ける場合、紫外線照射装置も被成型品保持体や型保持体の上方に設ける必要があるので、一層顕著になる。
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置において、装置の大きさを極力小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置において、前記被成型品を保持する被成型品保持体と、前記被成型品保持体に対して接近・離反する方向で相対的に移動する移動体と、前記移動体に支持されて前記移動体と共に移動する型保持体と、前記移動体を相対的に移動するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して並列に設けられた駆動機構と、前記被成型品保持体に保持されている前記被成型品と前記型保持体に保持されている前記型とを撮影するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して直列に設けられた撮像装置と、前記被成型品保持体に対する前記型保持体の姿勢を調整すると共に、前記被成型品保持体に対して接近・離反する方向で前記移動体に対して前記型保持体を移動させる型姿勢調整移動手段とを有し、前記型姿勢調整移動手段は、複数のピエゾ素子を用いて構成され、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして転写を行い、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記被成型品から前記型を離す転写装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置において、前記被成型品を保持する被成型品保持体と、前記型を保持し、前記被成型品保持体に対して接近・離反する方向で相対的に移動する型保持体と、前記型保持体を相対的に移動するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して並列に設けられた駆動機構と、前記被成型品保持体に保持されている前記被成型品と前記型保持体に保持されている前記型とを撮影するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して直列に設けられた撮像装置と、前記型保持体に対する前記被成型品保持体の姿勢を調整すると共に、前記型保持体に対して接近・離反する方向で前記被成型品保持体を移動させる型姿勢調整移動手段とを有し、前記型姿勢調整移動手段は、複数のピエゾ素子を用いて構成され、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして転写を行い、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記被成型品から前記型を離す転写装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の転写装置において、前記被成型品保持体に保持されている前記被成型品に紫外線を照射するために、前記移動方向で前記被成型品保持体および前記型保持体に対して直列に設けられた紫外線照射装置を有する転写装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、ベッドと、前記ベッドの上面に設けられ、上面で被成型品を保持する被成型品保持体と、前記ベッドの上面の一方の側に立設された第1のコラムと、前記ベッドの上面の他方の側に立設された第2のコラムと、前記被成型品保持体の上方に設けられ、一端部が前記第1のコラムに支持され、他端部が前記第2のコラムに支持され、上下方向で移動自在になっている移動体と、前記移動体を上下方向で移動位置決めするために、前記移動体の一端部側の部位に力を加える第1の駆動機構と、前記移動体を上下方向で前記第1の駆動機構と同期して移動位置決めするために、前記移動体の他端部側の部位に力を加える第2の駆動機構と、前記移動体のほぼ中央部で前記移動体の下側に設けられ、各々が上下方向で個別に伸縮する複数のピエゾ素子と、弾性体によって上方に引っ張られ、前記各ピエゾ素子の下端部に接触し、前記弾性体と前記各ピエゾ素子とによって前記移動体に支持され、前記被成型品保持体の上面とほぼ平行に対向している下面で型を保持する型保持体とを有し、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして転写を行い、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記被成型品から前記型を離す転写装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、ベース部材と、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で相対的に移動する第1の移動体と、前記第1の移動体に支持されて前記第1の移動体と共に、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で相対的に移動する第2の移動体と、前記第2の移動体の姿勢を調整すると共に、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で、前記第1の移動体に対して前記第2の移動体を移動させる移動体姿勢調整移動手段とを有し、前記移動体姿勢調整移動手段は、前記第1の移動体と前記第2の移動体との間に設けられている複数のピエゾ素子を用いて構成され、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して伸縮を繰り返してまたは前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって伸ばして前記第2の移動体を前記ベース部材に押し当て、前記複数のピエゾ素子を個別に制御して一方の側から他方の側に向かって収縮させて前記ベース部材から前記第2の移動体を離すプレス装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、型に形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写するための転写装置において、装置の大きさを極力小さくすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る転写装置1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、転写装置1の概略構成を示す正面図であり、図3は、転写装置1の概略構成を示す平面図である。
【0017】
図4は、図2におけるIV部の拡大図であり、図5は、図4におけるV部の拡大図であり、図6は、図4におけるVI矢視図である。
【0018】
転写装置(ナノインプリント装置)1は、たとえは石英ガラスやニッケルやシリコンで構成されている型(モールド)Mに形成されている微細な転写パターンを被成型品Wに転写するための装置である。
【0019】
まず、微細な転写パターンの被成型品Wへの転写について説明する。
【0020】
微細な転写パターンの被成型品Wへの転写方法は、大別して熱インプリント法とUVインプリント法とに分類される。
【0021】
熱インプリント法では、型を被成型品に押圧し、熱可塑性ポリマからなる樹脂(被成型品)が十分に流動可能となる温度になるまで加熱して微細パターンに樹脂を流入させたのち、型と樹脂をガラス転移温度以下になるまで冷却し、被成型品に転写された微細パターンを固化したのち型を引き離す。
【0022】
UVインプリント法では、光を透過する透明な型を使用し、UV硬化性液(紫外線硬化樹脂)に型を押しつけてUV放射光を照射する。適当な時間紫外線の照射をして液を硬化させ微細パターンを転写したのち型を引き戻す。
【0023】
なお、被成型品Wとして、たとえば、ハードディスクやCD、DVDなどの記憶装置や液晶表示装置の導光板を掲げることができる。
【0024】
また、以下、転写装置1は、UVインプリント法を実行するものとして説明するが、転写装置1で熱インプリント法を実行してもよい。この場合、後述する被成型品保持体3や型保持体5に樹脂を加熱する加熱装置や樹脂を冷却する冷却装置が設けられているものとする。
【0025】
図8にUVインプリント法を用いてハードディスク用の記憶媒体を作成するプロセスの一例を示す。ここでは石英ガラス型101(M)に形成された微細パターン(たとえば、ハードディスクのドットパターン)を、UV硬化樹脂103の塗布された基板105(W)にプレスし、UV光を照射して樹脂103を硬化させている(図8(a)、(b)参照)。このあと離型して残膜107を除去し(図8(c)、(d)参照)、エッチング処理をして(図8(d)参照)、樹脂103にコピーされた型101の微細形状を、基板105に転写している(図8(e)参照)。
【0026】
次に、転写装置1について説明する。
【0027】
以下、説明の便宜のために、水平方向の一方向をX軸方向とし、水平方向の他の一方向であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とし、X軸に平行な軸をA軸(図6参照)とし、Y軸に平行な軸をB軸(図6参照)とし、Z軸に平行な軸をC軸(図2参照)とする。
【0028】
転写装置1は、被成型品Wを保持する被成型品保持体3と、型Mを保持する型保持体5と、型保持体5を移動するための駆動機構7とを備えて構成されている。
【0029】
型保持体5は、被成型品保持体3に対して接近・離反する方向(Z軸方向;上下方向)で移動するようになっている。なお、転写装置1では、型保持体5のみが被成型品保持体3に対してZ軸方向で移動するように構成されているが、型保持体5に代えてまたは加えて被成型品保持体3が、Z軸方向で移動するように構成されていてもよい。すなわち、型保持体5がZ軸方向で被成型品保持体3に対して相対的に移動するようになっていればよい。
【0030】
駆動機構7は、型保持体5の移動方向(Z軸方向)で被成型品保持体3および型保持体5に対して並列に設けられている。駆動機構7が並列に設けられているということは、平面視において(Z軸方向で見た場合)、駆動機構7が被成型品保持体3および型保持体5から離れて設けられていることである(図3参照)。また、高さ方向(Z軸方向)では、駆動機構7を構成しているボールネジ9等の一部と、被成型品保持体3、型保持体5の少なくともいずれかがお互いにオーバーラップするようになっている(図2参照)。なお、平面視において、被成型品保持体3および型保持体5が、型保持体5を移動自在に支持しているリニアガイドベアリング(ガイド機構の例であるリニアガイドベアリング)11から離れており(図3参照)、高さ方向では、型保持体を移動自在に支持しているリニアガイドベアリング11の一部と、被成型品保持体3、型保持体5の少なくともいずれかがお互いにオーバーラップするようになっている(図2参照)。
【0031】
被成型品Wや型Mは、たとえば、円形や矩形状の平板状に形成されており、型Mの厚さ方向の一方の面(図2では下面)には微細な凹凸で形成された転写パターン(図示せず)が形成されている。また、型Mは、微細な転写パターンが形成されていない他方の面(上面)で、型保持体5の平面(下面)に接触し、たとえば真空吸着やボルト等の締結具とを用いた保持装置で型保持体5の所定の位置に保持され設置されるようになっている。
【0032】
被成型品Wは、厚さ方向の一方の面(図2では上面)に微細な転写パターンが転写されるようになっており、微細な転写パターンが転写されない他方の面(図2では下面)で、被成型品保持体3の平面(上面)に接触し、たとえば真空吸着やボルト等の締結具を用いた保持装置で被成型品保持体3の所定の位置に設置されて保持されるようになっている。
【0033】
このようにして、被成型品Wが被成型品保持体3に保持され型Mが型保持体5に保持された状態では、型Mの微細な転写パターンが形成されている面と、被成型品Wの微細な転写パターンが形成される面とは、お互いが対向しほぼ平行になっている。
【0034】
なお、すでに理解されるように、被成型品保持体3が被成型品Wを保持し型保持体5が型Mを保持した状態では、下方に被成型品保持体3が位置し、上方に向かうにしたがって、被成型品W、型M、型保持体5の順に並んでいる。そして、型保持体5の上下方向の移動によって、型Mが被成型品Wから離れた状態から型Mが被成型品Wに接触し型Mで被成型品Wを押圧するようになっている。
【0035】
また、転写装置1には、撮像装置(カメラ)13が設けられている。
【0036】
カメラ13は、被成型品保持体3に保持(設置)されている被成型品Wと型保持体5に保持(設置)されている型(石英ガラス等の透明体もしくは半透明体で構成された型)Mとを撮影するために設けられているものである。また、カメラ13は、Z方向で被成型品保持体3および型保持体5に対して直列に設けられている。
【0037】
カメラが直列に設けられているということは、平面視において、被成型品保持体3の少なくとも一部および型保持体5の少なくとも一部とカメラ13の少なくとも一部とが、お互いにオーバーラップしていることである。一方、平面視において、カメラ13は、駆動機構7やリニアガイドベアリング11からは離れている。
【0038】
たとえば、カメラ13は、型保持体5に保持されている型Mの上方に設けられており、型保持体5に設置されている型Mと被成型品保持体3に設置されている被成型品Wとをいっしょに撮影することができるようになっている。さらに詳しく説明すると、カメラ13は、被成型品保持体3が被成型品Wを保持し型保持体5が型Mを保持している状態で、型保持体5が下降して被成型品保持体3に近づき、被成型品保持体3に保持されている被成型品Wと型保持体5に保持されている型Mとの距離がごく僅かになった状態や被成型品Wと型Mとがお互いに接触した状態で、型Mの側(型Mを間にした被成型品Wとは反対側;型Mの上方)から、透明体で構成された型Mを通して被成型品Wとをほぼ同時に撮影することができるようになっている。
【0039】
また、転写装置1には、紫外線照射装置15が設けられている。
【0040】
紫外線照射装置15は、被成型品保持体3に保持されている被成型品Wの紫外線硬化樹脂を硬化させるために、被成型品Wに紫外線を照射するものである。また、紫外線照射装置15は、Z軸方向で被成型品保持体3および型保持体5に対して直列に設けられている。
【0041】
紫外線照射装置15が直列に設けられているということは、平面視において、被成型品保持体3の少なくとも一部および型保持体5の少なくとも一部と紫外線照射装置15の少なくとも一部(紫外線の発生部位)とが、お互いにオーバーラップしていることである。一方、平面視において、紫外線照射装置15は、駆動機構7やリニアガイドベアリング11からは離れている。また、カメラ13と紫外線照射装置15とは、お互いが干渉しないようにして設けられている。
【0042】
また、転写装置1には、型姿勢調整移動手段17と移動体19とが設けられている。
【0043】
型保持体5は、移動体19に支持されて移動体19と共にZ軸方向で移動するように構成されている。型姿勢調整移動手段17は、移動体19や被成型品保持体3に対する型保持体5の姿勢を調整すると共に、被成型品保持体3に対して接近・離反する方向(Z軸方向)で、移動体19や被成型品保持体3に対して型保持体5を移動させるものである。
【0044】
なお、転写装置1では、型姿勢調整移動手段17によって、型保持体5のみの姿勢(A軸まわりの回動角度、B軸まわりの回動角度)を調整し型保持体5のみをZ軸方向で移動をさせているが、型保持体5に代えてまたは加えて、被成型品保持体3の姿勢を調整し被成型品保持体3をZ軸方向で移動をさせる構成であってもよい。すなわち、型保持体5の姿勢が被成型品保持体3に対して相対的に変化し型保持体5がZ軸方向で相対的に移動するようになっていてもよい。
【0045】
転写装置1についてさらに詳しく説明する。
【0046】
転写装置1は、ベッド21を備えている。ベッド21には、第1のコラム23と第2のコラム25とが設けられている。
【0047】
被成型品保持体3は、直方体状に形成されたベッド21の平面状の上面のほぼ中央部でベッド21に支持されて設けられており、前述したように、被成型品保持体3の平面状の上面で被成型品Wを所定の位置に保持するようになっている。
【0048】
直方体状に形成された第1のコラム23は、直方体状のベッド21の上面の一方の側でベッド21に一体的に立設されている。第2のコラム25は、第1のコラムとほぼ同形状に形成されており、ベッドの21上面の他方の側でベッド21に一体的に立設されている。
【0049】
移動体19は、被成型品保持体3から離れて被成型品保持体3の上方に設けられている。移動体19の一端部(平面視において被成型品保持体3から離れている一端部;図2図3の左側の部位)は、第1のコラム23に、たとえばリニアガイドベアリング11を介して支持されている。移動体19の他端部(平面視において被成型品保持体3から離れている他端部)は、第2のコラム25にたとえばリニアガイドベアリング11を介して支持されている。そして、移動体19が、Z軸方向でベッド21等に対して移動自在になっている。なお、移動体19は、たとえば、矩形な平板状に形成されており、厚さ方向が上下方向になるようにして設けられている。
【0050】
駆動機構7は、第1の駆動機構7Aと第2の駆動機構7Bとで構成されている。
【0051】
第1の駆動機構7Aは、移動体19を上下方向で(Z軸方向)移動位置決めするために、移動体19の一端部側の部位に力を加えるものである。より詳しくは、第1のコラム23と移動体19の一端部側の部位との間に上下方向の力を加えるものである。第2の駆動機構7Bは、移動体19を上下方向で第1の駆動機構7Aと同期して移動位置決めするために、移動体19の他端部側の部位に力を加えるものである。
【0052】
型姿勢調整移動手段17は、複数のピエゾ素子(固体アクチュエータの例であるピエゾ素子)29を備えて構成されている(図6参照)。ピエゾ素子29は、この上端部が移動体19のほぼ中央部で移動体19の下側に一体的に設けられている。また、各ピエゾ素子29は、各々が上下方向で個別に伸縮するようになっている。
【0053】
また、型保持体5は、移動体19(より正確には型保持体支持部材31)に設けられた弾性体(たとえば引っ張りコイルバネ)33によって上方に引っ張られており、型保持体5が、各ピエゾ素子29の下端部に接触している。そして、型保持体5が、引っ張りコイルバネ33と各ピエゾ素子29とによって移動体19に支持されている。また、前述したように、型保持体5は、被成型品保持体3の上面とほぼ平行に対向している平面状の下面で型Mを所定の位置に保持するようになっている。
【0054】
さらに説明すれば、各ピエゾ素子29は、移動体19と型保持体5とで挟まれており、引っ張りコイルバネ33により各ピエゾ素子29に圧縮応力が生じている。なお、引っ張りコイルバネ33の引っ張り力は各ピエゾ素子29が伸びる力よりも小さくなっている。したがって、引っ張りコイルバネ33で引っ張られているにもかかわらず、型保持体5は各ピエゾ素子29の伸縮によって僅かに移動し姿勢が変化するようになっている。なお、ピエゾ素子29に代えて、磁歪素子等を採用してもよい。
【0055】
ところで、被成型品保持体3が被成型品Wを保持し型保持体5が型Mを保持した状態で、Z軸移動方向から見ると、被成型品Wと型Mとの位置はほぼ一致しているか、もしくは、被成型品Wのほうが型Mよりも大きく被成型品Wの内側に型Mが位置している。カメラ(たとえば、レンズ系と撮像素子とを備えて構成されたカメラ本体)13や紫外線照射装置15(紫外線が出射される出射口)も、型Mの内側に位置することができるようになっている。
【0056】
被成型品保持体3は、精密位置決め可能なXYステージ35、精密位置決め可能なC軸ステージ37を介して、ベッド21に支持されており、X軸方向、Y軸方向でベッド21や型保持体5に対して移動位置決め自在になっていると共に、C軸まわりで回動位置決め自在になっている。
【0057】
このように、質量の大きいXYステージ35やC軸ステージ37をベッド21上に配置したことにより、移動体19等の質量が軽減され、移動体19を上下方向で移動位置決めしやすくなっている。
【0058】
なお、被成型品保持体3に代えてまたは加えて、型保持体5を、X軸方向、Y軸方向で移動位置決め自在にすると共に、C軸まわりで回動位置決め自在な構成にしてもよい。すなわち、被成型品保持体3が、型保持体5に対して、X軸方向、Y軸方向で相対的に移動位置決め自在であると共に、C軸まわりで相対的に回動位置決め自在であればよい。
【0059】
第1の駆動機構7Aは、たとえば、サーボモータ27Aとこのサーボモータ27Aで回転するボールネジ9Aとを備えて構成されており、ボールネジ9Aのネジ軸が回転することにより、移動体19の一端部に上下方向の力が加わるようになっている。第2の駆動機構7Bも第1の駆動機構7Aと同様にして、サーボモータ27Bとボールネジ9Bとを備えて構成されており、移動体19の他端部に上下方向の力が加わるようになっている。
【0060】
そして、前述したように、制御装置151の制御の下、たとえば、フィードバック制御によって各モータ27が同期して稼動することにより、型保持体5の下面を水平な状態にしたまま移動体19が上下方向で移動位置決めされるようになっている。なお、1つのモータの回転出力軸と各ボールネジ9(9A,9B)とをたとえばタイミングベルト等の動力伝達機構で連結し、各ボールネジ9を回転し、移動体19を上下方向で移動位置決めする構成であってもよい。
【0061】
平面視において、移動体19のほぼ中央部には、貫通孔(たとえば円形状の貫通孔)39が設けられている。移動体19の下面の中央部には、環状(たとえば円環状)のロードセル41を間にして環状(たとえば円環状)の型保持体支持部材31が一体的に設けられている。また、型保持体支持部材31の下側には、型保持体支持部材31から僅かに離れて環状(たとえば円環状)の型保持体5が設けられている。そして、移動体19の貫通孔39と、ロードセル41の貫通孔と、型保持体支持部材31の貫通孔と、型保持体5の貫通孔とがお互いにほぼ一致している。
【0062】
ピエゾ素子29は、型保持体支持部材31と型保持体5との間に複数(たとえば3本)設けられている。各ピエゾ素子29(29A,29B,29C)は、型保持体支持部材31の貫通孔や型保持体5の貫通孔の外側に配置されている。より詳しくは、型保持体支持部材31の貫通孔や型保持体5の貫通孔の内径よりも大きい円の円周を3等配する位置に設けられている(図6参照)。
【0063】
また、ピエゾ素子29は、上端部が型保持体支持部材31に一体的に支持されており、下端部が型保持体5に接触している。ピエゾ素子29の下端部は、凸な球面状に形成されており、このピエゾ素子29の下端部と接触する型保持体5の部位は凹な球面状に形成されている。なお、凹な球面の曲率半径は、凸な球面の曲率半径よりも大きくなっている(図5参照)。
【0064】
さらに、型保持体支持部材31と型保持体5との間であって各ピエゾ素子29の近くには、弾性体の例である引張りコイルバネ33が複数(たとえば3本)設けられており、型保持体5を上方に付勢している。
【0065】
これにより、型保持体5のC軸まわりの回動が規制されるようになっている。また、制御装置151の制御の下、各ピエゾ素子29を適宜伸縮すれば、A軸まわりおよびB軸まわりにおける型保持体5(型M)の姿勢を調整すると共に、Z軸方向で型保持体5(型M)を移動させることができるようになっている。型保持体支持部材31と型保持体5との間の隙間は、ゴム等の弾性体43で構成された遮光部材で覆われている。
【0066】
なお、引っ張りコイルバネ33に換えて、ベローズ45等の弾性体を用いてもよい(図7参照)。図7に示す状態では、ベローズ45により型保持体5が上方に引っ張られている。また、円筒状に形成されたベローズ45の内側に、各ピエゾ素子29が入っている。ベローズ45を使用することにより、型保持体5がC軸まわりで回動することを一層確実に抑制することができると共に、遮光を行うことができる。
【0067】
なお、各ピエゾ素子29内側にベローズ45を設けた構成であってもよい。さらに、引っ張りコイルバネ33やベローズ45等の弾性体を削除し、ピエゾ素子29の下端部を型保持体5に一体的に設けた構成であってもよい。
【0068】
カメラ13(13A,13B,13C)は、移動体19の上部に複数(たとえば3台)設けられている(図3参照)。1台のカメラ13Aは、移動体19の上面に設けられたカメラ移動位置決めユニット47によって支持されており、制御装置151の制御下、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向で移動位置決め自在になっている。他のカメラ13B,13Cも同様にして移動位置決め自在になっている。
【0069】
また、各カメラ移動位置決めユニット47により、各カメラ13は、移動体19の貫通孔39とロードセル41の貫通孔と型保持体支持部材31の貫通孔と型保持体5の貫通孔との中に同時に入り込み(図4参照)、型保持体5に保持されている型Mや被成型品保持体3に保持されている被成型品Wのアライメントマークや等圧干渉縞(fringes of equal thickness)等を撮影することができるようになっている。
【0070】
紫外線照射装置15は、図示しない紫外線発生部と、この紫外線発生部が発した紫外線を移動体19の貫通孔39まで導いて、移動体19の貫通孔39とロードセル41の貫通孔と型保持体支持部材31の貫通孔と型保持体5の貫通孔との中に出射する紫外線出射部49とを備えて構成されている。なお、紫外線出射部49は移動体19の上面に設けられている。
【0071】
紫外線出射部49は、図示しないリニアガイドベアリング等の支持部材を介して移動体19に支持されていると共に、制御装置151の制御の下、図示しないシリンダ等のアクチュエータにより、移動体19の貫通孔39から離れた位置(図6に示すPS1の位置)と移動体19の貫通孔39のところに存在し移動体19の貫通孔39等の内部に紫外線を照射可能な位置(図6に示すPS2の位置)との間を移動するようになっている。
【0072】
なお、各カメラ13と紫外線出射部49との干渉を避けるべく、各カメラ13が、移動体19の貫通孔39等の中に入り込むときには、紫外線出射部49は移動体19の貫通孔39から離れたところPS1に位置し、各カメラ13が、移動体19の貫通孔39等から出て離れたところに位置しているときに、紫外線出射部49が、貫通孔39等の内部に紫外線を照射可能なところPS2に位置するようになっている。
【0073】
なお、紫外線照射装置15として、発光ダイオード51等の小型のものを採用し、カメラ13の先端部に一体的に設けてもよい(図4参照)。
【0074】
カメラ13は、前述したように、たとえば、型Mや被成型品Wに予め設けられているアライメンマークを撮影するようになっている。カメラ13で撮影された画像は、画像処理装置(画像処理コントローラ)155(図9参照)により画像処理され、制御装置151の制御の下、型保持体5に保持されている型Mに対する被成型品保持体3に保持されている被成型品Wの位置ずれを、XYステージ35とC軸ステージ37とを適宜駆動し無くすようになっている。
【0075】
また、カメラ13は、前述したように、たとえば、型Mと被成型品Wとで発生する等圧干渉縞を撮影するようになっている。カメラ13で撮影された画像は、画像処理装置(画像処理コントローラ)155(図9参照)により画像処理され、制御装置151の制御の下、各ピエゾ素子29の伸び量が別個に制御され、被成型品保持体3に設置された被成型品Wの平面状の上面と、型保持体5に設置された型Mの平面状の下面とがお互いに平行になるような制御をするようになっている。
【0076】
ここで、転写装置1の制御装置151について図9を用いて説明する。
【0077】
制御装置151は、たとえば、アライメントユニット153、画像処理コントローラ155、微細転写装置コントローラ157、ステージコントローラ159、シーケンスコントローラ161とを備えて構成されている。
【0078】
アライメントユニット153は、各カメラ13を適宜の位置に位置させるためにカメラ移動位置決めユニット47を駆動制御するものである。画像処理コントローラ155は、各カメラ13が撮影した画像について所定の画像処理を行うものである。微細転写装置コントローラ157は、転写装置1を全体的に制御するものである。ステージコントローラ159は、XYステージ35、C軸ステージ37、各ピエゾ素子29を制御するものである。シーケンスコントローラ161は、転写装置1に備わっているその他のセンサーの信号を受け取り、型保持体5をZ軸方向で移動位置決めするサーボモータや他のアクチュエータを制御するものである。
【0079】
ここで、転写装置1の動作について説明する。
【0080】
初期状態として、被成型品保持体3に転写がされる前の被成型品Wは設置されており、型保持体5に型Mが設置されており、移動体19が上昇しており、各ピエゾ素子29は縮んでいる状態にあるものとする。また、紫外線照射装置15は停止しており、紫外線出射部49がPS1のところに位置しているものとする。各カメラ13は、移動体19の貫通孔39等の外に存在しているものとする。
【0081】
上記初期状態において、制御装置151の制御の下、型保持体5が保持している型Mと被成型品保持体3が保持している被成型品Wとの間の距離がごく僅かになるまで移動体19を下降し、この後、移動体19を停止する。
【0082】
続いて、各カメラ13を、移動体19の貫通孔39等の中に移動し、型Mのアライメントマークと被成型品Wのアライメントマークとを撮影し、型Mに対する被成型品Wに位置ずれ量を検出し、この検出した位置ずれ量を、各ステージ35,37を適宜駆動し修正する。
【0083】
続いて、カメラ13で等圧干渉縞を撮影し、撮影した情報に基づいて、各ピエゾ素子29の伸び量を別個に制御し、被成型品保持体3に設置された被成型品Wの上面と、型保持体5に設置された型Mの下面とがお互いに平行になるようする。
【0084】
続いて、各カメラ13を移動体19の貫通孔39等の外に退避させ、紫外線出射部49をPS2のところに位置させ、各ピエゾ素子29をさらに均等に伸ばして、型Mで被成型品Wを押圧し、紫外線出射部49から被成型品Wに向かって紫外線を照射し、被成型品Wへの転写を行う。
【0085】
この後、紫外線出射部49からの紫外線の照射を停止し、各ピエゾ素子29を縮め、移動体19を上方に移動し離型する。
【0086】
転写装置1によれば、駆動機構7が、型保持体5の移動方向で、被成型品保持体3や型保持体5と並列に設けられているので、装置の大きさ(たとえば、転写装置1の高さ)を小さくすることができる。また、駆動機構7が被成型品保持体3や型保持体5と並列に設けられているので、紫外線照射装置15や複数のカメラ13を設置するためのスペースを容易に得ることができると共に、設置した紫外線照射装置15やカメラ13のメンテナンスをしやすくなる。
【0087】
また、転写装置1によれば、発塵源になりやすい駆動機構7が被成型品保持体3(被成型品W)や型保持体5(型M)の脇に配置されているので、転写の際における被成型品Wへの塵埃の侵入を避けることができる。さらに、平面視において被成型品保持体3よりも面積の大きい平板状の移動体19が、被成型品保持体3(被成型品W)や型保持体5(型M)の上部を覆っているので、転写の際における被成型品Wへの塵埃の侵入を避けることができる。
【0088】
さらに、図3から理解されるように、平板状に形成されている移動体19の上面には、他の機器を設置するスペースが残されているので、種々のナノインプリント(インプリント)に必要な装置を設置することが容易であり、装置の拡張性が高くなる。
【0089】
また、転写装置1によれば、カメラ13が被成型品保持体3や型保持体5と直列に設けられているので、型Mを保持している型保持体5が、被成型品Wを保持している被成型品保持体3に近づいたときに、カメラ13で型Mと被成型品Wとをほぼ同時に撮影することができ、転写がされる直前の状態で、被成型品Wに対する型Mの位置を合わせることができ、正確な転写を行うことができる。
【0090】
すなわち、型保持体5に保持されている型Mと被成型品保持体3に保持されている被成型品Wとが、所定の距離だけ離れている状態で、型Mと被成型品Wとの間にカメラを挿入し、被成型品Wに対する型Mの位置ずれ量を検出し、この検出に応じて被成型品Wに対する型Mの位置ずれ量を補正する構成であると、前記位置ずれ量の補正後、転写のために型保持体5がさらに前記所定の距離だけ被成型品保持体3側に移動しなければならず、この型保持体5の移動によって、僅かではあるが、被成型品Wに対する型Mの位置ずれ(たとえば、X軸方向やY軸方向の位置ずれ)が発生するおそれがある。
【0091】
しかし、型Mを保持している型保持体5が、被成型品Wを保持している被成型品保持体3に十分に近づき型Mと被成型品Wとの間の距離(隙間)がごく僅かになったときに、カメラ13で型Mと被成型品Wとをほぼ同時に撮影し型Mに対する被成型品Wの位置ずれ量を検出し、この検出に応じて型Mに対する被成型品Wの位置ずれ量を補正するように構成されているので、前記位置ずれ量の補正後、転写のために型保持体5が移動する距離が極めて小さくなり、転写のときに型Mに対する被成型品Wの位置ずれが発生するおそれがほとんどなくなるのである。
【0092】
また、型保持体5に保持されている型Mと被成型品保持体3に保持されている被成型品Wとが、所定の距離だけ離れている状態で、型Mと被成型品Wとの間に複数のカメラを挿入する構成であると、カメラの挿入位置とこの挿入位置から横方向で離れた位置との間でカメラを移動するための機構が大掛かりなものになってしまう。しかし、カメラ13が被成型品保持体3や型保持体5と直列に設けられているので、カメラ13を移動する機構を小型化しかつ簡素化することができる。
【0093】
また、転写装置1によれば、型姿勢調整移動手段17によって、型保持体5の姿勢を調整すると共に、わずかではあるがZ軸方向に型保持体5を平行移動することができる。したがって、型保持体5の姿勢と移動とを簡素な構成で達成することができる。さらに説明すると、もしも、型姿勢調整移動手段17ではなく移動体19で型保持体5をZ方向に移動する構成であると、移動体19の質量が大きくかつ駆動機構7を並列に配置して2つのモータ27を同期させて移動するので、転写の際における型Mの移動の制御が困難になる。しかし、型姿勢調整移動手段17を構成しているピエゾ素子29で支持されている型保持体5や型Mの質量は、紫外線照射装置15や複数のカメラ13を載置している移動体19の質量に比べて十分に小さいので、Z軸方向における型保持体5の移動を速く正確に行うことができ正確な転写を速やかに行うことができる。
【0094】
また、転写装置1によれば、すでに述べたように、型Mを保持している型保持体5が、被成型品Wを保持している被成型品保持体3に十分に近づき型Mと被成型品Wとの間の距離(隙間)がごく僅かになったとき(転写のために型Mが被成型品Wに接触を開始したときでもよい)に、移動体19の移動を止めてその位置を保持し、カメラ13で型Mと被成型品Wとによって発生する等圧干渉縞を撮影し、この撮影結果に応じて、型保持体5の姿勢を調整し(被成型品保持体3に保持されている被成型品Wの上面と型保持体5に保持されている型Mの下面とが平行になるように調整し)、この調整後に移動体19の位置を維持したまま、型姿勢調整移動手段17によって型保持体5をごく僅かに平行移動し(型保持体5の姿勢を保ったままごく僅かに下降し)、型Mで被成型品Wを押圧し転写を行うことができる。
【0095】
また、型Mを保持している型保持体5が、被成型品Wを保持している被成型品保持体3に十分に近づき型Mと被成型品との間の距離(隙間)がごく僅かになったときに、もしくは、転写のために型Mが被成型品Wに接触を開始したとき、移動体19の移動を止めてその位置を保持し、各ピエゾ素子29のみを延ばして転写を行うのであるが、このときに各ピエゾ素子29の伸び速度をオープン制御し、ロードセル41によって転写の圧力を検出し各ピエゾ素子29の伸び量をフィードバック制御するようにしてもよい。
【0096】
また、ピエゾ素子29の伸縮を短い周期で繰り返すことにより、型保持体5に振動を与えつつ転写を行うようにしてもよい。さらに、基材の上に樹脂(たとえば硬化前のUV樹脂)が滴下されている被成型品(被成型品保持体3に保持されている被成型品)Wに転写を行う場合、3本のピエゾ素子29の伸縮を個別に制御し、型Mが一方の側から他方の側に向かって順に被成型品Wに押し当てられるようにしてもよい。これにより、型Mと被成型品Wとの間の空気の追い出しを図ることができ、転写性が向上し正確な転写を行うことができる。
【0097】
同様にして、転写後に被成型品Wから型Mを離す場合も、3本のピエゾ素子29の伸縮を個別に制御し、型Mを一方の側から他方の側に向かって順に被成型品Wから離すようにしてもよい。これにより、離型するとき(転写後に型Mを被成型品Wから離すとき)に要する力を小さくすることができ、成型の幅を広げることができる。
【0098】
ところで、XYステージ35やC軸ステージ37を適宜駆動して、型(型保持体5に保持されている型)Mに対する被成型品(被成型品保持体3に保持されている被成型品)Wの位置を変更することにより、特願2008−008011の明細書や図面に記載されているようなつなぎ転写(ステップ・アンド・リピートの転写;複数回の転写により、型Mに形成されている微細な転写パターンと同様な微細パターンを、被成型品Wにたとえば連続して広く形成するための転写)を行うことができる。そして、小さな型Mから大きな被成型品Wを得ることができ、上記大きな被成型品Wを型として使用するのであれば、結局小さな型から大きな型を安価に得ることができることになる。
【0099】
なお、上記つなぎ転写をするときに、被成型品Wの所定の位置(各転写で使用される適宜の位置)に複数のアライメントマークを設けておいて、各転写をする前に、型Mのアライメントマークと転写位置における被成型品Wのアライメントとをカメラ13で撮影し、型Mに対する被成型品Wの位置を決める方式(ダイ・バイ・ダイ方式)を採用することがある。
【0100】
しかし、上述したダイ・バイ・ダイ方式では、各転写位置毎に被成型品Wにアライメントマークを多数設けておく必要があるので、被成型品Wの形状に制限が出てしまう。そこで、次に述べるグローバル方式を採用する場合がある。
【0101】
グローバル方式とは、たとえば、被成型品Wに型Mで転写を最初にするときにのみ、被成型品Wに設けられているアライメントマークと型Mに設けられているアライメントマークとをカメラ13で撮影し、型Mに対する被成型品Wの位置決めをし、この後、つなぎの転写をするときは、カメラ13によるアライメントマークの撮影をすることなく、転写を行う方式である。これにより、被成型品Wに設けるアライメントマークの数を削減することができる。
【0102】
このようなグローバル方式の転写を行う場合、XYステージ35のストロークにわたりXYステージ35の位置決め誤差を予め測定しておき、この測定した値を制御装置151のメモリ(図示せず)に記憶しておき、つなぎの転写をするべくXYステージ35を稼動し被成型品Wの位置決めをしたときに、上記メモリに記憶されている補正値を読み出して、正確なつなぎ転写ができるように被成型品Wの位置を補正してもよい。このときに、必要に応じて型保持体5のZ方向に位置を同様にして補正するような構成であってもよい。さらに、C軸ステージ37についても、XYステージ35の場合と同様な補正をしてもよい。
【0103】
なお、型Mが、型保持体5に対して、X軸方向およびY軸方向およびC軸まわりで、正確に位置決めされ保持されているのであれば、型Mにアライメントマークを設けることなく、被成型品Wのアライメントマークのみをカメラ13で撮影し、型Mに対する被成型品Wの位置決めをするようにしてもよい。
【0104】
また、たとえば、C軸ステージ37を適宜駆動することにより、特願2008−052606の図9等に記載されているような精度の高い重ね合わせ転写を行うことができ、複雑な三次元構造の微細転写がされた加工品を安価に得ることができる。
【0105】
なお、上記説明では、X軸方向やY軸方向を水平方向としZ軸方向を鉛直方向としたが、たとえば、Y軸方向やZ軸方向を水平方向としてもよい。さらには、X軸方向Y軸方向Z軸方向を斜めの方向としてもよい。
【0106】
また、上述した転写装置1を、ベース部材と、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で相対的に移動する第1の移動体と、前記移動体に支持されて前記移動体と共に相対的に移動する第2の移動体と、前記第2の移動体の姿勢を調整すると共に、前記ベース部材に対して接近・離反する方向で、前記第1の移動体に対して前記第2の移動体を移動させる移動体姿勢調整移動手段とを有するプレス装置として把握してもよい。なお、このプレス置では、たとえば、前記ベース部材と前記第2の移動体とで物体を挟み込み、プレスをするようになっている。
【0107】
また、上述した転写装置1の型姿勢調整移動手段17を、第1の部材と、伸縮方向の一端部が前記第1の部材に支持された複数の固体アクチュエータと、前記各固体アクチュエータの伸縮方向の他端部側で、前記各固体アクチュエータに支持された第2の部材と、前記各部材がお互いに近づくように付勢する弾性体とを有する位置姿勢調整機構として把握してもよい。なお、この位置姿勢調整機構によって、第2の部材が、転写装置1の型保持体5と同様に駆動するようになっているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】本発明の実施形態に係る転写装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】転写装置の概略構成を示す正面図である。
図3】転写装置の概略構成を示す平面図である。
図4図2におけるIV部の拡大図である。
図5図4におけるV部の拡大図である。
図6図4におけるVI矢視図である。
図7】型保持体の支持形態の変形例を示す図であり、図4に対応した図である。
図8】UVインプリント法を用いてハードディスク用の記憶媒体を作成するプロセスの一例を示す図である。
図9】転写装置の制御装置の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0109】
1 転写装置
3 被成型品保持体
5 型保持体
7 駆動機構
13 カメラ
15 紫外線照射装置
17 型姿勢調整移動手段
19 移動体
21 ベッド
23,25 コラム
27 サーボモータ
29 ピエゾ素子
33 コイルバネ
M 型
W 被成型品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9