(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666098
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】発振器の発振を安定化させるバイアス回路、発振器、および、発振器の発振の安定化方法
(51)【国際特許分類】
H03K 3/354 20060101AFI20150122BHJP
H03F 1/30 20060101ALI20150122BHJP
H03F 3/347 20060101ALI20150122BHJP
H03K 3/03 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
H03K3/354 B
H03F1/30 Z
H03F3/347
H03K3/03
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-55368(P2009-55368)
(22)【出願日】2009年3月9日
(65)【公開番号】特開2009-219118(P2009-219118A)
(43)【公開日】2009年9月24日
【審査請求日】2011年9月6日
【審判番号】不服2013-21742(P2013-21742/J1)
【審判請求日】2013年11月6日
(31)【優先権主張番号】12/073,958
(32)【優先日】2008年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】アナンダ ナタラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジッティン ジャナルダン
【合議体】
【審判長】
河口 雅英
【審判官】
山本 章裕
【審判官】
山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−214299(JP,A)
【文献】
特開2003−100882(JP,A)
【文献】
特開2001−326560(JP,A)
【文献】
特開2000−244285(JP,A)
【文献】
特開平10−98356(JP,A)
【文献】
特開2001−94418(JP,A)
【文献】
米国特許第5896068(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/00-3/22,3/26-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器の発振を安定化させるバイアス回路であって、
前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、
前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝と、
前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整する制御回路とを備え、
前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給し、前記制御回路から前記第2のバイアス電圧を供給することを特徴とするバイアス回路。
【請求項2】
前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のバイアス回路。
【請求項3】
前記共通電流源の第2のレプリカが、前記第2のレプリカバイアス電流と前記差動遅延セルのバイアス電流との比を変化させるスイッチを備えることを特徴とする請求項1または2記載のバイアス回路。
【請求項4】
前記複数の遅延セルと、前記固定抵抗を除く前記バイアス回路とが、単一の半導体集積回路チップ上に集積され、前記固定抵抗がチップ外の抵抗であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバイアス回路。
【請求項5】
1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器と、
前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝と、前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整する制御回路とを備えたバイアス回路とからなり、
前記バイアス回路が、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給し、前記制御回路から前記第2のバイアス電圧を供給することを特徴とする発振器。
【請求項6】
前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きいことを特徴とする請求項5記載の発振器。
【請求項7】
1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器と、
前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間にチップ外の固定抵抗を接続するための1対の端子と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記チップ外の固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝と、前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整する制御回路とを備えたバイアス回路とが、単一の半導体集積回路チップに集積され、
前記バイアス回路が、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給し、前記制御回路から前記第2のバイアス電圧を供給することを特徴とするワンチップ発振器。
【請求項8】
前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きいことを特徴とする請求項7記載のワンチップ発振器。
【請求項9】
1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器の発振を安定化させる方法であって、
前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝とを備えたバイアス回路を設け、
前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整し、
前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給するとともに、前記調整した第2のバイアス電圧を供給することを特徴とする安定化方法。
【請求項10】
前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きくなるように前記バイアス回路を設けることを特徴とする請求項9記載の安定化方法。
【請求項11】
1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器の発振を安定化させる方法であって、
前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝を備えたバイアス回路を設け、
前記電圧制御抵抗のレプリカの実効抵抗があらかじめ定められた値に等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整し、
前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードから前記第1のバイアス電圧を供給するとともに、前記調整した第2のバイアス電圧を供給し、
前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝をさらに備えるように前記バイアス回路を設け、
前記第1および第2の制御ノードの電圧が等しくなるように前記第2のバイアス電圧の調整を行うことを特徴とする安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOSプロセスを利用して半導体集積回路に形成する発振器に関する。特に、本発明は、リング発振器の発振を安定化させるためのバイアス回路、ならびに、製造プロセス、温度、電源電圧に依存せず、安定した周波数の出力を生成する発振器に関する。本発明はさらに、リング発振器の発振の安定化方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発振器は、様々な用途におけるタイミング制御のために利用される。周波数の正確性が特に重要な場合には、通常、水晶振動子を用いた発振器が利用される。水晶振動子を用いない発振器は、温度、製造プロセス、電源電圧による素子特性の変化により、大きな周波数変動を示す。水晶振動子を用いた発振器を必要とするほどの周波数安定性が求められない用途においては、良好な周波数安定性を持つ、水晶振動子を用いない単体の発振器に対する要求がある。
【0003】
例えば、非特許文献1および2では、バンドギャップレファレンス回路や、その他の、バイポーラトランジスタを利用した補償回路が、発振周波数の変動を補償するために利用されている。
【0004】
このようなバイポーラトランジスタを利用した補償回路は、面積が大きいだけではなく、単純なCMOSプロセスでは利用できない複雑な製造プロセスを必要とする。さらに、これらの補償回路は精密な調整を必要とし、さらに/もしくは、十分に高い周波数安定性を保証するものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】K. Sundaresan, P. E. Allen, and F. Ayazi, "Process and Temperature Compensation in a 7-MHz CMOS Clock Oscillator", IEEE J. Solid-State Circuits, Feb. 2006, vol. 41, no. 2, pp. 433-442
【非特許文献2】Yang-Shyung Shyu and Jiin-Chuan Wu ,"A process and temperature compensated ring oscillator", the First IEEE Asia Pacific Conference on ASICs, 1999 (AP-ASIC '99), pp. 283-286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題を解決することを目的とする。本発明の実施形態は、バイポーラトランジスタやインダクタ等の特殊な素子を用いることなく、基本的なCMOSプロセスのみを利用して、リング発振器の発振を安定化させる、すなわち、製造プロセス、温度、電源電圧に対する発振周波数の依存性を抑制する、バイアス回路、および、安定化方法を提供する。本発明の実施形態は、また、特殊な素子を利用することなく、安定して発振する発振器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器の発振を安定化させるバイアス回路であって、前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝と、前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整する制御回路とを備え、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給し、前記制御回路から前記第2のバイアス電圧を供給することを特徴とするバイアス回路を提供する。
【0008】
また、前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きいのが好ましい。
さらに、前記共通電流源の第2のレプリカが、前記第2のレプリカバイアス電流と前記差動遅延セルのバイアス電流との比を変化させるスイッチを備えるのが好ましい。
また、前記複数の遅延セルと、前記固定抵抗を除く前記バイアス回路とが、単一の半導体集積回路チップ上に集積され、前記固定抵抗がチップ外の抵抗であるのが好ましい。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明は、1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器と、前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝と、前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整する制御回路とを備えたバイアス回路とからなり、前記バイアス回路が、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給し、前記制御回路から前記第2のバイアス電圧を供給することを特徴とする発振器を提供する。
【0010】
また、前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きいのが好ましい。
【0011】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器と、前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間にチップ外の固定抵抗を接続するための1対の端子と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記チップ外の固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝と、前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整する制御回路とを備えたバイアス回路とが、単一の半導体集積回路チップに集積され、前記バイアス回路が、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給し、前記制御回路から前記第2のバイアス電圧を供給することを特徴とするワンチップ発振器を提供する。
【0012】
また、前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きいのが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明は、1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器の発振を安定化させる方法であって、前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝と、前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝とを備えたバイアス回路を設け、前記第1の制御ノードの電圧と前記第2の制御ノードの電圧とが等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整し、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードと第2の制御ノードとの一方から前記第1のバイアス電圧を供給するとともに、前記調整した第2のバイアス電圧を供給することを特徴とする安定化方法を提供する。
【0014】
また、前記第2のレプリカバイアス電流が前記第1のレプリカバイアス電流よりも大きくなるように前記バイアス回路を設けるのが好ましい。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、1対の入力ノードと出力ノードとを有し、ゲートが対応する入力ノードに接続され、ソースが共通に接続され、ドレインが対応する出力ノードに接続された1対の入力トランジスタと、電源線と対応する出力ノードとの間に接続された、第1のバイアス電圧に依存する実効抵抗を有する1対の電圧制御抵抗と、第2のバイアス電圧によって制御されるバイアス電流を前記1対の入力トランジスタに供給する共通電流源とを備えた差動遅延セルが、複数個、直列に接続されてリングを構成するリング発振器の発振を安定化させる方法であって、前記電源線と第1の制御ノードとの間に接続された前記電圧制御抵抗のレプリカと、前記第2のバイアス電圧によって制御される第1のレプリカバイアス電流を前記電圧制御抵抗のレプリカに供給する、前記共通電流源の第1のレプリカとを有するレプリカ枝を備えたバイアス回路を設け、前記電圧制御抵抗のレプリカの実効抵抗があらかじめ定められた値に等しくなるように前記第2のバイアス電圧を調整し、前記複数の差動遅延セルに、前記第1の制御ノードから前記第1のバイアス電圧を供給するとともに、前記調整した第2のバイアス電圧を供給
し、前記電源線と第2の制御ノードとの間に接続された固定抵抗と、前記第2のバイアス電圧によって制御される第2のレプリカバイアス電流を前記固定抵抗に供給する、前記共通電流源の第2のレプリカとを有する抵抗枝をさらに備えるように前記バイアス回路を設け、前記第1および第2の制御ノードの電圧が等しくなるように前記第2のバイアス電圧の調整を行うことを特徴とする安定化方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のさまざまな実施形態は、以下の効果の1つもしくはそれ以上を有する。
・発振出力周波数が、製造プロセス、電源電圧、温度に依存せず、高い安定性を有する。出力周波数は、抵抗の変化のみに依存する。
・利用する製造プロセスに応じて、寸法を縮小することも、拡大することも可能である。
・必要とする配置面積が小さい。
・バイポーラトランジスタ、インダクタ、等の特殊な素子を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のリング発振器の一実施形態の構成を示す概念図である。
【
図2】実施形態のリング発振器において利用される遅延セルの一例を示す。
【
図3】リング発振器とバイアスブロックを備えた本発明の一実施形態のブロック図である。
【
図4】バイアスブロックにおいて利用可能なバイアス回路の一例を示す。
【
図5】
図4のバイアス回路の一例の小信号等価回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、直列に接続されてリングを構成する差動遅延セル102(Delay 1),104(Delay 2),106(Delay 3)を用いた3段リング発振器100を示す。
【0020】
遅延セルの一例を
図2に示す。入力NMOSトランジスタM210,M220が差動ペアを構成する。入力NMOSトランジスタM210,M220は、それぞれ、入力ノードINp,INnに接続されたゲートと、互いに接続されたソースと、出力ノードOUTn,OUTpに接続されたドレインとを有する。
【0021】
ゲートがバイアス電圧VNにバイアスされたNMOSトランジスタ(バイアス電流源トランジスタ)M202からなる共通バイアス電流源200が、共通接続された入力NMOSトランジスタM210,M220のソースとGND電源線との間に設けられている。これにより、共通バイアス電流源200が、1対の入力NMOSトランジスタM210,M220に、バイアス電圧VNによって制御されるバイアス電流Ixを供給する。
【0022】
バイアス電流Ixは、発振に従って、それぞれの差動対の2つの枝の間でスイッチングされ、この電流が出力ノードOUTn,OUTpの負荷容量250,260を充放電する。負荷容量250,260としては、例えば、GND電源線との間に接続されたMOS容量が利用できる。
【0023】
差動対のそれぞれの枝は、VDD電源線と出力ノードOUTn,OUTpとの間に接続された対称負荷230,240を有している。それぞれの対称負荷230,240は、ダイオード接続されたPMOSトランジスタM232と、ゲートがバイアス電圧VPにバイアスされた他のPMOSトランジスタM234とが、並列に接続されて構成されている。
【0024】
これにより、単一のトランジスタで構成した場合に比較して良好な直線性を示す。対称負荷230,240の実効抵抗(負荷の両端の電圧と、負荷を流れるバイアス電流との比)は、バイアス電圧VPに依存して変化する。すなわち、対称負荷は、バイアス電圧VPによって制御される抵抗を有する電圧制御抵抗として動作する。
【0025】
対称負荷の動作についての解析は、例えば、G. Moon, M.E. Zaghloul, R.W. Newcomb, “An Enhancement-mode MOS Voltage-Controlled Linear Resistor with Large Dynamic Range”, IEEE Trans. Circuits and Systems, Oct. 1990, vol. 37, no. 10, PP. 1284-1288、および、John G. Maneatis, “Low-Jitter Process-Independent DLL and PLL Based on Self-Biased Techniques”, IEEE J. Solid-State Circuits, Nov. 1996, vol. 31, no. 11, pp. 1723-1732に示されている。
【0026】
図3に発振器全体の構成を示す。バイアスブロック(Bias block)400は、リング発振器100にバイアス電圧VP,VNを供給する。バッファ(Level shifter & buffer)300が、同一の半導体集積回路内に集積されたさまざまなブロック(図示しない)に発振信号を出力する。
【0027】
次に、
図1,2を利用してリング発振器100の動作を説明する。それぞれの遅延セル10が十分な増幅率を有する場合、回路は正帰還によって発振する。遅延セル10の入力ノードINpにVDDレベルの信号が供給されると、対応する入力NMOSトランジスタM210は完全にオンし、バイアス電流Ixの全てがそのトランジスタを通じて流れる。これにより、対応する対称負荷230の両端にVDD−VPの電圧降下が発生し、対応する出力ノードOUTnからVPの出力電圧が出力される。言い換えれば、一方の対称負荷にバイアス電流Ixの全てが流れたときにVDD−VPの電圧降下が発生するように、バイアス電圧VN,VPを設定する。
【0028】
同様に、入力ノードINpにVPの電圧レベルの入力信号が供給されると、入力NMOSトランジスタM210がカットオフ(弱いON)状態になり、バイアス電流Ixの全てが他方の枝を流れる。これにより、出力ノードOUTnからVDDが出力される。このように、それぞれの遅延セル10の出力ノードOUTp、OUTnは、VDDとVPとの間で振幅する。
【0029】
それぞれのセルの遅延時間は、出力電圧振幅、バイアス電流、入力トランジスタのトランスコンダクタンス、出力ノードの抵抗および容量負荷、に依存する。このため、発振周波数は、電圧振幅、容量負荷、抵抗負荷、バイアス電流、入力トランジスタのトランスコンダクタンス、の複雑な関数となる。しかしながら、次の式によって発振周波数を良好に近似することができる。
【0031】
ここで、
Ixは各段のバイアス電流
Nは段数
Cpはそれぞれの出力ノードの容量
である。
【0032】
式(1)で示される周波数は、段数、電圧振幅、バイアス電流、ならびに、各遅延セルの負荷容量の関数である。これらのパラメータのうち、電圧振幅とバイアス電流が、製造プロセス、温度、電源電圧に応じて変化する。しかし、式(1)は、リング発振器100の出力周波数が、バイアス電流Ixと電圧振幅VDD−VPを設定することによって制御できることを示す。
【0033】
本発明の実施形態では、電圧振幅とバイアス電流との比が、バイアスブロック400に設けられてバイアス電圧VP,VNを遅延セル10に供給するバイアス回路によって一定に維持される。
図4は、バイアス回路の一実施形態を示す。
図4に示す実施形態のバイアス回路40は、レプリカ枝42と抵抗枝44を有する。
【0034】
図の左側に示されるレプリカ枝42は、VDD電源線とノードC1(第1の制御ノード)との間に接続された対称負荷410と、対称負荷410にバイアス電流Irepを供給する電流源420とを有する。この枝は、遅延セル10の枝の厳密なレプリカであってもいい。すなわち、レプリカ枝42の電流源420を、遅延セル10のバイアス電流源トランジスタM202と同一の寸法を有するNMOSトランジスタで構成し、レプリカ枝42の対称負荷410を、遅延セル10の対称負荷230,240を構成するトランジスタと同一の寸法を有する2個のPMOSトランジスタM412,M414で構成してもいい。この場合、同一のバイアス電圧VNがレプリカ枝42および遅延セル10のバイアス電流源トランジスタに供給されるため、レプリカ枝42のバイアス電流Irepは遅延セル10のバイアス電流Ixと同一になる。
【0035】
レプリカ枝42を異なる寸法のトランジスタで構成することも可能であるが、この場合には、バイアス電流Irepを寸法に比例して変化させる必要がある。例えば、レプリカ枝42のトランジスタの寸法を遅延セル10のトランジスタの寸法の半分にした場合、バイアス電流も半分にする。レプリカ枝42および遅延セル10のバイアス電流源トランジスタに同一のバイアス電圧VNが供給されるため、電流源トランジスタの寸法に比例してバイアス電流を減少もしくは増大させることができる。
【0036】
前述のように、遅延セル10のバイアス電流が全て一方の枝に流れた場合、対称負荷の両端にVDD−VPの電圧降下が発生する。従って、レプリカ枝42は、対称負荷410の一方の端子が接続されたノードC1にバイアス電圧VPを生成する。具体的には、
図4に示した実施形態では、ゲートがバイアス電圧VPにバイアスされたPMOSトランジスタM414のドレインが、バイアス電圧VPを生成するノードC1に接続されている。
【0037】
一方、抵抗枝44は、VDD電源線とノードC2(第2の制御ノード)の間に接続されたチップ外抵抗430(外付け抵抗R
EXT)(固定抵抗)と、ミラー電流源440とを有する。ミラー電流源440は、レプリカ枝42に流れる電流Irepを反映した電流Iresを、抵抗枝44に流す。従って、抵抗枝44の電流Iresは、レプリカ枝42の電流Irepと等しいか、もしくは、比例し、さらに、遅延セル10の電流Ixとも、等しいか、もしくは、比例する。
【0038】
本発明の実施形態において、
図4のバイアス回路40は、
図2の遅延セル10のバイアス電流源トランジスタM202および対称負荷230,240に、出力電圧振幅とバイアス電流との比が一定に保たれるように、バイアス電圧VNおよびVPを供給する。これは、電圧振幅とバイアス電流との比がチップ外抵抗430によって決められるように制御することによって実現される。すなわち、バイアス電流は、ミラー電流源440によってチップ外抵抗430を流れる電流に反映される。そして、演算増幅器450を含む制御回路が、チップ外抵抗430の電圧降下と対称負荷のレプリカ410の両端の電圧降下とが同一になるようにフィードバック制御を行う。
【0039】
具体的には、実施形態のバイアス回路40において、演算増幅器450が、レプリカ枝42の第1の制御ノードC1の電圧と抵抗枝44の第2の制御ノードC2の電圧とが同一になるようにバイアス電圧VNを調整する。言い換えれば、演算増幅器450が、レプリカ枝42の対称負荷410の実効抵抗(負荷の両端の電圧降下と負荷を流れる電流との比)が、チップ外抵抗430の値と同一か、もしくは、比例する、所定の値と等しくなるようにバイアス電圧VNを調整する。
【0040】
このように、バイアス回路40は、対称負荷の電圧降下VDD−VPとバイアス電流との比を、外部抵抗の値と等しいか、その値に比例する値に維持する。この結果、バイアス電流と電圧振幅とは、以下の式の関係を持つ。
【0042】
抵抗枝44のミラー電流源440のトランジスタの寸法と、遅延セル10のバイアス電流源トランジスタM202の寸法との比が、比例係数kを決定する。
【0043】
図4の実施形態のバイアス回路は、さらに、それぞれの遅延セル10の入力NMOSトランジスタM210,M220のレプリカである2個のトランジスタM460,M470を有する。これらのトランジスタのゲートはVDDに接続されている。これらのトランジスタにより、電流源420,440のトランジスタのドレイン電圧が、一方の枝に全電流が流れているときの遅延セル10のバイアス電流源トランジスタM202のドレイン電圧と同一になる。これによって、バイアス回路40の枝による遅延セル10の枝の複製精度が高くなり、遅延セル10のバイアス電流とバイアス回路40のバイアス電流とが高い精度で対応する。
【0044】
式(1)、(2)により、発振器の発振周波数は次式で表される。
【0046】
このように、本発明の実施形態において、発振周波数はチップ外抵抗430の値と、遅延セル10の出力ノードの負荷容量のみに依存する。チップ外抵抗430が理想的なものであったとすると、発振周波数は負荷容量のみに依存することになる。
【0047】
0.13μmCMOS、1.2Vプロセスで製造された、約200fFのNMOS容量(負荷容量)250,260を有する出力周波数400MHzの発振器の実施例において、高い周波数安定性が確認された。シミュレーションによって、±10%の電源電圧変化と−40℃から125℃までの温度変化の範囲において、±1%のチップ外抵抗430のばらつきを含めても、±2%のばらつきにおさまることが示された。この実施例の発振器が占める面積は約100μm×50μmと小さく、最大でも2mAの電流しか消費しない。プロセス技術や出力周波数によらず適用可能であり、バイポーラトランジスタやインダクタンス等の特殊な素子も必要としない。
【0048】
上記の実施例のように、負荷容量250,260の値が比較的小さい場合には、出力周波数は、それぞれの遅延セルの出力ノードの寄生容量にも依存する。負荷容量250,260の値が出力ノードの寄生容量の値に比較して遙かに大きい場合には、寄生容量のばらつきの周波数に対する影響は無視できる。要求される発振周波数が余り高くない場合や、全消費電流の制限が厳しくない場合には、このような状態が実現される。製造プロセス,温度、電源電圧のばらつきによる容量ばらつきが小さいMIM(metal-insulator-metal)容量の利用により、出力周波数はさらに安定になる。
【0049】
上記の実施形態では、周波数変動の最小化のために有利であるように、チップ外抵抗430を利用している。バイアス回路40のこれ以外の素子は、遅延セル10からなるリング発振器100を集積した半導体集積回路チップ内に集積し、バイアス回路40の枝による遅延セルの枝の複製の精度を高めることができる。これにより、リング発振器と、チップ外抵抗430を接続するための1対の端子(抵抗端子)を有するバイアス回路とを含んだ1チップ集積回路を実現することができる。
【0050】
外部抵抗を、多結晶シリコン抵抗等の内部抵抗に置き換え、抵抗端子に内部で接続することも可能である。これによって、リング発振器とバイアス回路とが集積されて、チップ外の部品を必要としない、1チップ集積回路を実現することができる。内部抵抗を利用したときの出力周波数のばらつきは、内部抵抗のばらつきに依存する。
【0051】
図4のバイアス回路40は、演算増幅器450の正入力端子からVNを経て正入力端子に戻る負帰還ループと、演算増幅器450の負入力端子からVNをへて負入力端子に戻る正帰還ループとの、2つのループを有している。バイアス回路の小信号等価回路を
図5に示す。バイアス回路は、負帰還ループの増幅率の方が高く、両方のループからなる総合的なループが負帰還ループとなるように設計する。全体の増幅率が0となるまでの全周波数領域において負帰還ループの増幅率の方が高くなるように、外部抵抗によって形成されるポールが正帰還ループのポールからはるかに離れるようにする。すなわち、正帰還ループのロールオフが、負帰還ループのロールオフよりも低い周波数で発生するようにする。
【0052】
第2の制御ノードC2にチップ外抵抗430が接続された場合、そのノードの寄生容量は大きく、30pF程度に達する可能性がある。この大きな寄生容量と外付け抵抗とが、負帰還ループに低い周波数のポールを形成する。このポールから、負帰還ループの増幅率の低下が開始される。この結果、総合的な正帰還の増幅率が1を超える可能性がある。
【0053】
これを防ぐために、負帰還ループのポールを高い周波数に移動させるか、もしくは、総合的なループに支配的なポールを追加する。前者は、R
EXTの値を低下させ、それに伴って抵抗枝の電流を増大させることによって達成される。この場合、R
EXTを、例えば、対称負荷の実効抵抗の1/10程度に低下させ、これに応じて電流を10倍程度に増大させる。後者は、
図4に示されたように、例えば15pFの容量Ccをバイアス電圧VNを供給するバイアス配線に接続し、支配的なポールを追加することによって達成される。
【0054】
例えば15pFの電源カップリング容量を、遅延セルにバイアス電圧VPを供給するバイアス配線とVDD電源線との間に接続することも可能である。このようなカップリング容量を用いて電源電圧の変動をバイアス配線にカップリングすることにより、電圧振幅の変動を防止もしくは抑制することができる。
【0055】
図4に示すバイアス回路40の実施形態では、バイアス電圧VPをレプリカ枝42の制御ノードC1から供給する。演算増幅器450が、レプリカ枝42の制御ノードC1の電圧と抵抗枝44の制御ノードC2の電圧とが同一になるように制御するので、バイアス電圧VPを抵抗枝44の制御ノードC2から供給することも可能である。この場合、レプリカ枝42のPMOSトランジスタM414のゲートにも、抵抗枝44の制御ノードC2からバイアス電圧VPを供給する。そして、演算増幅器450の入力端子の接続を逆にする。すなわち、正入力端子をC1に、負入力端子をC2に接続する。
【0056】
本発明の実施形態において、遅延セルの電流源は、カスケード接続トランジスタ、もしくは、顕著に大きなゲート長を有するトランジスタを利用して、高い出力インピーダンスを持つようにすることができる。これにより、バイアス電流の変化が小さくなり、発振周波数の近似式の妥当性が高くなる。バイアス回路についても、カスケード接続トランジスタを用いた電流源のレプリカを備えるようにすることも可能である。
【0057】
図6は、バイアスブロック400に設けることが可能なバイアス回路の他の実施形態を示す。
図4に示したバイアス回路40とは異なり、
図6に示すバイアス回路46の抵抗枝48は、抵抗枝に流れる電流を調整するスイッチSW1,SW2を有している。これにより、発振器をシリコン基板上に製造した後での、周波数の調整が可能になる。
【0058】
具体的には、バイアス回路46の抵抗枝48は、3個の電流源トランジスタM482,M484,M486からなるバイアス電流源480を備えている。電流源トランジスタM484の寸法は、レプリカ枝42の電流源420の電流源トランジスタM422の寸法と同一である。電流源トランジスタM482,M486の寸法は、それぞれ、電流源420の電流源トランジスタM422の寸法の9倍および2倍である。電流源トランジスタM482のゲートには、常時、バイアス電圧VNが供給されている。
【0059】
デフォルト状態では、電流源トランジスタM484のゲートにバイアス電圧VNを供給するスイッチSW1はONであり、電流源トランジスタM486のゲートにバイアス電圧VNを供給するスイッチSW2はOFFである。従って、デフォルト状態で抵抗枝48に流れる電流はレプリカ枝42に流れる電流の10倍である。これによって、ループの安定性が確保される。スイッチSW1をOFFにすると、抵抗枝48の電流は10%減少し、出力周波数は11%高くなる。スイッチSW2をONにすると、出力周波数は17%低くなる。
【0060】
図6に示すバイアス回路46による製造後の周波数調整機能を、表1にまとめる。
【0062】
図3に示した遅延セルの実施形態では、それぞれが2個のトランジスタ(互いに並列に接続された、ダイオード接続されたPMOSトランジスタと、ゲートがバイアス電圧VPにバイアスされた他のPMOSトランジスタ)からなる対称負荷230,240を、電圧制御抵抗として利用した。これ以外にもさまざまな種類の電圧制御抵抗が利用可能である。
【0063】
例えば、米国特許第5767748号明細書の
図1Bに示されたように、ダイオード接続されたPMOSトランジスタをダイオード接続されたNMOSトランジスタに置き換えることが可能である。PMOSトランジスタで入力トランジスタを構成する場合には、GND電源線と出力ノードとの間に接続する対称負荷を、例えば米国特許第5767748号明細書の
図3Bに示されたように、ダイオード接続されたNMOSトランジスタと、ゲートにバイアス電圧が供給された他のNMOSトランジスタとで構成することが可能である。この場合、ダイオード接続されたNMOSトランジスタをダイオード接続されたPMOSトランジスタに置きかえることも可能である。
【0064】
例えば米国特許第5359301号明細書の
図1に示されたように、ダイオード接続されたMOSトランジスタを抵抗素子に置きかえることも可能である。一方、例えば米国特許第5847616号明細書の
図3に示されたように、ゲートがバイアス電圧にバイアスされた他のMOSトランジスタを、ダイオード接続されたMOSトランジスタと直列に接続することも可能である。
【0065】
また、ダイオード接続されたMOSトランジスタとゲートがバイアス電圧にバイアスされた他のMOSトランジスタとで電圧制御抵抗を構成することが、直線性を向上させるためには好ましいが、用途によっては、ゲートがバイアス電圧にバイアスされた1個のトランジスタのみで電圧制御抵抗を構成することが可能な場合もある。
【符号の説明】
【0066】
10 遅延セル
40,46 バイアス回路
42 レプリカ枝
44,48 抵抗枝
100 リング発振器
102,104,106 差動遅延セル
200 共通バイアス電流源
230,240,410 対称負荷
250,260 負荷容量
300 バッファ
400 バイアスブロック
420 電流源
430 チップ外抵抗
440 ミラー電流源
450 演算増幅器
480 バイアス電流源
M202 バイアス電流源トランジスタ(NMOSトランジスタ)
M210,M220 入力NMOSトランジスタ
M232,M234,M412,M414 PMOSトランジスタ
M422,M482,M484,M486 電流源トランジスタ
M460,M470 トランジスタ