特許第5666118号(P5666118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5666118-ペリクル用支持枠の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666118
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ペリクル用支持枠の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/64 20120101AFI20150122BHJP
【FI】
   G03F1/64
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-236553(P2009-236553)
(22)【出願日】2009年10月13日
(65)【公開番号】特開2010-113350(P2010-113350A)
(43)【公開日】2010年5月20日
【審査請求日】2012年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2008-263464(P2008-263464)
(32)【優先日】2008年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309002329
【氏名又は名称】旭化成イーマテリアルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】金子 靖
(72)【発明者】
【氏名】谷村 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】田口 喜弘
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−016471(JP,U)
【文献】 特開2005−350775(JP,A)
【文献】 特開2006−184822(JP,A)
【文献】 特開2007−333910(JP,A)
【文献】 特開2008−038237(JP,A)
【文献】 特開2008−081815(JP,A)
【文献】 特開2008−156716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
C25D 11/04−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、片側に光学的薄膜体を備えると共に、その反対側の端面に粘着体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、
アルミニウム材の表面には、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜からなるポーラス層を形成し、次いで酸性水溶液を用いた酸浸漬溶解処理を施して前記ポーラス層のポア径を拡げることにより、
前記ポーラス層の膜厚が4.1〜14μmであると共に、ポーラス層の表面におけるポア径とセル径の比(表面:ポア径/セル径)が0.4〜0.9の範囲となり、また、このポーラス層から溶出する硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の総溶出量が、90℃の純水に2時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm2あたり純水100ml中への溶出濃度で0.25ppm以下となるようにすることを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法。
【請求項2】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、片側に光学的薄膜体を備えると共に、その反対側の端面に粘着体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、
アルミニウム材の表面には、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜からなるポーラス層を形成し、次いで酸性水溶液を用いた酸浸漬溶解処理により前記ポーラス層のポア径を拡げた後、封孔処理によりポーラス層の表面におけるポア径を小さくすることにより、
前記ポーラス層の膜厚が4.1〜14μmであると共に、ポーラス層の内部におけるポア径の最大値とセル径の比〔内部:ポア径(最大値)/セル径〕が0.3〜0.9の範囲となり、また、このポーラス層から溶出する硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の総溶出量が、90℃の純水に2時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm2あたり純水100ml中への溶出濃度で0.25ppm以下となるようにすることを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法。
【請求項3】
アルミニウム材の表面を、シュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いて陽極酸化処理して、陽極酸化皮膜からなるポーラス層を形成する請求項1又は2に記載のペリクル用支持枠の製造方法。
【請求項4】
支持枠の表面が着色される請求項1〜3のいずれかに記載のペリクル用支持枠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LSI、超LSIなどの半導体装置や液晶表示装置等の製造の際、フォトリソグラフィー工程で使用されるフォトマスクやレティクルに異物が付着するのを防止するペリクル支持枠の製造方法に関し、詳しくは、ヘイズ(haze)の発生を可及的に低減できるペリクル支持枠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSIなどの半導体装置や液晶表示装置(LCD)を構成する薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルター(CF)等の製造では、露光装置を用いたフォトリソグラフィー工程が含まれ、この際、一般にペリクルと呼ばれる防塵手段が用いられている。このペリクルは、フォトマスクやレティクルに合わせた形状を有する厚さ数ミリ程度の支持枠の上縁面に、厚さ10μm以下程度のニトロセルロース、セルロース誘導体、フッ素ポリマーなどの透明な高分子膜(光学的薄膜体)を展張して接着したものであり、異物がフォトマスクやレティクル上に直接付着することを防ぐ。仮にフォトリソグラフィー工程において異物がペリクル上に付着したとしても、フォトレジストが塗布されたウエハー上にこれらの異物は結像しないため、異物の像による露光パターンの短絡や断線等を防止し、フォトリソグラフィー工程の製造歩留まりを向上させることができる。
【0003】
近年、半導体装置の高集積化に伴い、より狭い線幅で微細な回路パターンの描画が求められ、フォトリソグラフィー工程に用いる露光光についてもKrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、F2エキシマレーザー(波長157nm)等のようなより短波長の光が用いられるようになっている。ところが、これらの短波長の露光光源は高出力であるため光のエネルギーが高く、露光の時間の経過と共に反応生成物をフォトマスク等に付着させて、くもり(ヘイズ)を発生させる問題がある。フォトマスク等の製造後の検査では無欠陥の良好な品質状態であっても、露光装置でエキシマレーザーの照射を繰り返すうちにフォトマスクやレティクル上にヘイズが発生して良好なパターン転写像が得られず、場合によっては半導体素子の回路の断線やショートを引き起こしてしまう。
【0004】
ヘイズの発生要因としては、フォトマスクやレティクル、更にはペリクルをはじめ、高エネルギーの光が照射される環境下におかれた部材に残存する硫酸等の酸性成分と、マスク使用環境下に存在するアンモニア等の塩基性物質とが反応し、硫酸アンモニウム等の反応生成物がくもりを形成することが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。また、ヘイズの発生に関し、水分の介在がなければ硫酸アンモニウムの生成が抑制されることも知られている(例えば非特許文献1参照)。そのため、フォトマスクやレティクル等の洗浄を十分に行ったり、クリーンルーム内のガス状物質の低減等の様々な対策がなされている。
【0005】
なかでもペリクルに注目すると、光学的薄膜体を貼着するペリクル支持枠は、一般にアルミニウム材からなり、耐食性を付与するなどの目的から、通常、その表面には陽極酸化皮膜が形成される。ところが、陽極酸化皮膜を形成する際に用いる電解液には硫酸等の酸性成分が含まれており、これが形成された皮膜中に残存すると、フォトリソグラフィー工程等において離脱して、フォトマスクやレティクルとの間の閉ざされた空間内にガス状物として発生する。そして、雰囲気中に含まれたアンモニアをはじめ、シアン化合物や炭化水素化合物などと光化学反応を起こしてヘイズを生じる。
【0006】
そこで、ペリクル用支持枠に関し、陽極酸化した後に純水中で超音波洗浄等を行うことで、酸性成分を除去する方法が提案されている(特許文献3参照)。この文献には、酸性成分が取り込まれる量を少なくするために陽極酸化の処理条件を調整してポア径をより小さくしたり、セル数を少なくさせることや、封孔処理の条件を調整して適切にポアを封じることが酸性成分の流出を抑制できることも記載されている(段落0026、0027)。また、陽極酸化皮膜の替わりに電着塗装等によるポリマー皮膜を形成する方法も提案されており(特許文献4参照)、更には、酸性成分の含有量を個別に規定することで、フォトリソグラフィー工程に影響を及ぼさない程度のヘイズに抑制できるといった記載の例もある(特許文献5参照)。
【0007】
しかしながら、陽極酸化後に洗浄する方法では、酸性成分を低減させることはできても、ヘイズの発生原因になる硫酸の流出のおそれを根本的に無くすことはできない。また、陽極酸化皮膜の替わりにポリマー皮膜を設ける方法では、陽極酸化皮膜に比べてポリマー皮膜の表面硬度は劣るため、傷が付きやすく、その傷が原因による発塵のおそれもある。更に特許文献5に関しては、酸性成分を低減させるための具体的手段が十分に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006-011,048号公報
【特許文献2】特開2004-053,817号公報
【特許文献3】特開2006-184,822号公報
【特許文献4】特開2007-333,910号公報
【特許文献5】特開2007-225,720号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Oleg Kishkovich et al., The ultimate solution for 193nm reticle haze?, Microlithography World, USA, PennWell, November 2007, Volume 16, P12-15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体装置等の高集積化の要望によりフォトリソグラフィー工程で用いる露光光の短波長化が進むにつれて、上述したようなヘイズの問題はより一層顕著になる。そこで、本発明者等は上記問題を解決するために鋭意検討した結果、陽極酸化処理と共に所定の酸浸漬溶解処理を行うことで、ヘイズの生成原因物質である酸性成分の含有量を可及的に低減させたペリクル用支持枠を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、高エネルギーの光の照射下においもてヘイズの発生を可及的に減らすことができ、尚且つ耐久性に優れたペリクル用支持枠の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、片側に光学的薄膜体を備えると共に、その反対側の端面に粘着体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、アルミニウム材の表面には、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜からなるポーラス層を形成し、次いで酸性水溶液を用いた酸浸漬溶解処理を施して前記ポーラス層のポア径を拡げることにより、前記ポーラス層の膜厚が4.1〜14μmであると共に、ポーラス層の表面におけるポア径とセル径の比(表面:ポア径/セル径)が0.4〜0.9の範囲となり、また、このポーラス層から溶出する硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の総溶出量が、90℃の純水に2時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm2あたり純水100ml中への溶出濃度で0.25ppm以下となるようにすることを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム材で形成され、片側に光学的薄膜体を備えると共に、その反対側の端面に粘着体を備えてペリクルとして使用されるペリクル用支持枠の製造方法であって、アルミニウム材の表面には、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜からなるポーラス層を形成し、次いで酸性水溶液を用いた酸浸漬溶解処理により前記ポーラス層のポア径を拡げた後、封孔処理によりポーラス層の表面におけるポア径を小さくすることにより、前記ポーラス層の膜厚が4.1〜14μmであると共に、ポーラス層の内部におけるポア径の最大値とセル径の比〔内部:ポア径(最大値)/セル径〕が0.3〜0.9の範囲となり、また、このポーラス層から溶出する硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の総溶出量が、90℃の純水に2時間浸漬させて溶出したイオン濃度を測定するイオン溶出試験において、支持枠表面積100cm2あたり純水100ml中への溶出濃度で0.25ppm以下となるようにすることを特徴とするペリクル用支持枠の製造方法。
【0014】
ペリクル用支持枠を形成するアルミニウム材の表面のポーラス層について、好適には、陽極酸化処理により形成された陽極酸化皮膜からなるようにするのが良い。陽極酸化処理に使用する電解液については、例えば硫酸、シュウ酸、リン酸等の酸やこれらの塩を用いることができるが、好ましくは、ヘイズの最大原因物質である硫酸を用いないようにして、アルミニウム材の表面のポーラス層が、シュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いた陽極酸化処理により形成された陽極酸化皮膜からなるようにするのが良い。
【0015】
以下、電解液としてシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いる場合について説明する。但し、電解液はシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液に限定されるものではない。シュウ酸塩として具体的には、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸アンモニウム等を挙げることができ、好ましくはシュウ酸水素カリウム、シュウ酸カリウム、及びシュウ酸ナトリウムであるのが良い。電解液の濃度については、シュウ酸根(C2O42-)が20〜90g/Lであるのがよく、好ましくは30〜60g/Lであるのが良い。シュウ酸根濃度が20g/L〜90g/Lの範囲であると適切な電解電圧を得ることができる。
【0016】
陽極酸化処理の電圧については10〜60Vであるのがよく、好ましくは20〜50Vであるのが良い。10Vより高いと得られる陽極酸化皮膜強度を使用十分なものとすることができ、60Vより低くすることでポーラス層で大きな表面積が得られるので、後の着色処理で十分な着色性が得られる。また、電解液の温度については、好ましくは15〜40℃とするのがよく、陽極酸化の処理時間は10〜60分、好ましくは15〜50分の範囲であるのが良い。そして、これら陽極酸化処理の条件を調整し、得られる陽極酸化皮膜の膜厚を2〜20μm、好ましくは5〜10μmとするのが望ましい。陽極酸化皮膜の厚みが2μmより大きいと着色処理で十分な着色性が得られ、20μmより小さいと皮膜内に取り込まれる酸性成分の量をヘイズの原因とならない程度に少なくすることができる。このようにシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いたことで、一般に硫酸を用いて陽極酸化皮膜を形成する場合(通常100〜200g/L程度)に比べて使用する酸の量を減らすことができる。また、得られた陽極酸化皮膜はビッカース硬度で150〜500Hv程度の硬度を有することができるため、支持枠表面の傷付きや発塵を抑えることができて耐久性にも優れる。
【0017】
ポーラス層の表面におけるポア径とセル径の比(ポア径/セル径)は、0.4〜0.9の範囲にすることが好ましい。本発明者らが推測するメカニズムによると、電解液としてシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いた場合、陽極酸化処理により形成された陽極酸化皮膜のポーラス層には、シュウ酸やシュウ酸が分解して形成されたギ酸が、イオンとして皮膜内に取り込まれ、また、酸あるいはイオンとしてポアの表面に吸着しているものと考えられる。また、これ以外の電解液を用いた場合、例えば硫酸を使用すると、陽極酸化皮膜は硫酸イオンを含有すると考えられる。そこで、ポーラス層のポア径を拡げるような酸浸漬溶解処理を行い、これらの酸性成分(酸やイオン)を効果的に除去する方法が考えられる。具体的にはポーラス層の表面のポア径とセル径の比(ポア径/セル径)が0.4〜0.9の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは0.6〜0.7の範囲とすることが好ましい。一般に、陽極酸化により形成されるポーラス層のポア径及びセル径は電解電圧のみに依存し、電解液の温度や濃度には影響されない(永山政一,高橋英明「多孔質アルミニウム・アノード酸化皮膜−微細構造および生成/封孔の機構」金属表面技術Vol.38,No.10,1987,p494-504のFig.8等参照)。そのため、より詳しくは電圧10〜60Vの定電圧電解を5〜50分実施して陽極酸化皮膜を形成した後、ポーラス層の表面での「ポア径/セル径」が0.4〜0.9の範囲となるような酸浸漬溶解処理を行うことが好ましい。この比の値が0.4より大きいとポーラス層に付着した酸性成分の除去を十分に行うことができる。0.9以下であるとポア(細孔)の形状を維持することができ、十分な耐食性や、後の着色処理で十分な着色性が得られる。なお、酸浸漬溶解処理後のポーラス層の表面での「ポア径/セル径」の比については、下記実施例で説明するように、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して観察倍率10万倍で観察し、縦×横が800nm×1000nmの視野内にある20個のポアを選択して、ポア径及びセル径のそれぞれの平均値から比の値を求めるようにする。
【0018】
酸浸漬溶解処理に用いる酸性水溶液については、例えば硫酸、シュウ酸、硝酸、リン酸、ギ酸、コハク酸、酢酸等の水溶液を例示することができるが、好ましくはシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いるのが良い。酸浸漬溶解処理で得られるポーラス層の表面での「ポア径/セル径」の比は、用いる酸性水溶液の濃度と温度、そして処理に要する時間とで決まるものである。濃度と温度が高いほど処理時間を短くすることができ、濃度と温度が低いほど処理時間が長くなることで、ポア径の制御が容易になる。具体的には、以下の条件である。酸性水溶液の濃度については、シュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いる場合、シュウ酸根(C2O42-)が20〜180g/Lであるのがよく、好ましくは50〜150g/Lであるのが良い。また、酸性水溶液の温度及び浸漬時間については、15〜40℃で10〜50分であるのがよく、好ましくは20〜35℃で15〜45分であるのが良い。なお、陽極酸化処理の電解液と酸浸漬溶解処理に用いる酸性水溶液とが同じ場合は、陽極酸化の電解終了後の電解液を利用するようにしてもよい。
【0019】
本発明のペリクル用支持枠は、その表面が着色されているのが良い。着色処理の条件については特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、有機系染料や無機系染料による染色処理や、金属塩による二次電解着色処理が挙げられる。好ましくは、酸浸漬溶解処理後に支持枠を有機系染料で染色処理するのが良い。着色処理は露光光の散乱防止等を目的にし、いわゆる黒色化することができればよいが、本発明では、一般に酸性成分の含有量が少ないとされる有機系染料を用いるのが良い。なかでも、硫酸、酢酸、及びギ酸の含有量が少ない有機系染料を用いるのが好ましい。また、着色処理後はポーラス層のポアを封孔する封孔処理を行っても良い。封孔処理の条件については特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、処理後は純水洗浄を十分に行うようにする。好ましくは純水温度を50〜95℃とし、15〜90分の洗浄を行うようにするのが良い。この封孔処理は、ポーラス層の表面におけるポア径がポーラス層の内部のポア径よりも小さくなるようにするのが良く、これにより、仮にポーラス層に酸性成分が残存していたとしても、表面からの流出を抑えることができる。この封孔処理について、好ましくは、ポーラス層の表面におけるポア径が、ポーラス層の内部のポア径よりも小さくなるようにし、かつ、ポーラス層の内部のポア径の最大値とセル径の比(ポア径の最大値/セル径)が0.3〜0.9の範囲となるようにするのが良く、より好ましくは0.4〜0.8の範囲であるのが良く、更に好ましくは0.5〜0.7の範囲であるのが良い。この「ポア径の最大値/セル径」が0.3以上だと、内部の空隙率が上がり、純水洗浄効果が高くなることで、イオンを低減しやすくなる。0.9以下であると、十分な強度のポーラス層が得られる。なお、ポーラス層の内部のポア径の最大値とセル径の比については、ポーラス層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察倍率10万倍で観察し、縦×横が800nm×1000nmの視野内にあるポアのうち最大径のものを選択して、「ポア径の最大値/セル径」を求めるようにする。
【0020】
また、本発明においては、陽極酸化処理に先駆けて、アルミニウム材の熱処理(焼鈍処理)を行うようにしても良い。予め熱処理を行うことでアルミニウム材のひずみが除去され、陽極酸化処理で形成する陽極酸化皮膜のクラックの発生を抑えることができる。具体的な処理条件については、対象がアルミニウム材であることやクラックの発生を効果的に抑制させる観点から、好ましくは150〜350℃の温度で15〜60分間の熱処理であるのが良い。更には、均一な陽極酸化皮膜を形成するために、前処理として酸やアルカリを用いたエッチング処理を行ってもよく、得られた支持枠にごみ等が付着した場合に検知し易くするために予めブラスト処理等を施すようにしても良い。一方、洗浄度を高めるために、陽極酸化処理や酸浸漬溶解処理後さらには着色処理や封孔処理後に、純水洗浄、湯洗浄、超音波洗浄等の洗浄処理を行うようにしても良い。
【0021】
本発明において、ペリクル用支持枠の形成に用いるアルミニウム材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなればよく、所定の支持枠として強度等が確保される限り特に制限はないが、好適にはJIS A7075、JIS A6061、JIS A5052等を挙げることができる。
【0022】
硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の総溶出量が、支持枠表面積100cm2あたり100mlの純水を90℃に加温し、2時間浸漬させた溶出濃度で0.25ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.13ppm以下、更により好ましくは0.08ppm以下である。陽極酸化処理、酸浸漬溶解処理及び着色処理を経た支持枠の表面には、これらの処理やそれ以外の処理で使用される水溶液や薬液等に含まれる酸やアルカリ成分が、そのままあるいはイオンとして付着しているものと考えられる。そこで、これらのなかから代表的であり、尚且つヘイズの発生に影響が考えられるイオン、すなわち無機酸イオンとして硫酸イオン(SO42-)及び硝酸イオン(NO3-)、有機酸イオンとしてシュウ酸イオン(C2O42-)、ギ酸イオン(HCOO-)及び酢酸イオン(CH3COO-)が少ないほうが好ましい。
【0023】
上記イオン溶出試験における溶出イオンについて、より詳しくは、有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン、及び酢酸イオンの総量)の溶出量が、支持枠表面積100cm2あたり純水100ml中への溶出濃度で0.20ppm以下、好ましくは0.10ppm以下、より好ましくは0.05ppm以下であるのが良い。有機酸イオンのなかでも、特にシュウ酸イオンの濃度が0.01ppm以下、好ましくは0.008ppm以下、より好ましくは0.005ppm以下であるのが良い。また、無機酸イオンでは、硫酸イオンの溶出量が支持枠表面積100cm2あたり純水100ml中への溶出濃度で0.01ppm以下、好ましくは0.008ppm以下、より好ましくは0.005ppm以下であるのが良い。溶出イオンの検出はイオンクロマトグラフ分析により行い、詳細な測定条件については実施例に記載するとおりである。
【0024】
また、本発明によって得られるペリクル用支持枠は、含水率が高くなるポアの内壁表層部分を溶解除去するため含有水分率が低く、硫酸アンモニウムの生成を抑制することができる。具体的には、含有水分率が支持枠重量の100ppm以下であり、好ましくは80ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下、最も好ましくは10ppm以下であるのが良い。これらイオンや水分を低減させる方法として、アルミニウム材のポーラス層表面におけるポア径/セル径の比を0.4〜0.9の範囲としたり、アルミニウム材のポーラス層内部におけるポア径(最大値)/セル径の比を0.3〜0.9の範囲としたり、ポーラス層をシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いた陽極酸化処理により形成する方法を用いることが好ましい。また、洗浄度を高めるために、陽極酸化処理や酸浸漬溶解処理後さらには着色処理や封孔処理後に純水洗浄、湯洗浄、超音波洗浄等の洗浄処理を行うようにすることが好ましい。
【0025】
更には、支持枠の表面に実質的にマイクロクラックがないペリクル用支持枠を得ることができる。ここで、マイクロクラックとは、クラック幅が0.1μm以上のものを対象にしており、マイクロクラック数の評価方法としては、支持枠表面を電子顕微鏡にて1000倍に拡大した写真において10cm(実寸法0.1mm)の直線を引き、その直線に交差するクラック数を計算する。クラックの幅は、その電子顕微鏡写真で観察できるもの、即ちクラック幅0.1μm以上のものを計数する。一般に、マイクロクラックは陽極酸化処理の際の電圧が低かったり、厚膜に形成するほど入りやすくなるが、本発明における好ましい態様、すなわち陽極酸化処理の電解電圧を10V以上(好ましくは20V以上)とし、かつ、得られる陽極酸化皮膜の膜厚を20μm以下としたり、更には陽極酸化処理に先駆けてアルミニウム材の熱処理を行うことで、封孔処理後の支持枠表面には上記方法によって確認される幅0.1μm以上のクラックはなく、緻密な皮膜を得ることができる。
【0026】
本発明により得られたペリクル用支持枠は、その片側に光学的薄膜体を貼着すると共に、その反対側の端面に粘着体を備えるようにしてペリクルとして使用することができる。光学的薄膜体としては特に制限はなく公知のものを使用することができるが、例えば石英等の無機物質や、ニトロセルロース、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル類、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のポリマーなどを例示することができる。光学的薄膜体はCaF2等の無機物やポリスチレン、テフロン(登録商標)等のポリマーからなる反射防止層などを備えるようにしても良い。また、光学的薄膜体を設けた面とは反対側の支持枠端面には、ペリクルをフォトマスクやレティクルに装着するための粘着体を備えるようにする。粘着体としては粘着材単独あるいは弾性のある基材の両側に粘着材が塗布された素材を使用することができる。ここで、粘着材としてはアクリル系、ゴム系、ビニル系、エポキシ系、シリコーン系等の接着剤が挙げることができ、また、基材となる弾性の大きい材料としてはゴムまたはフォームが挙げられ、例えばブチルゴム、発砲ポリウレタン、発砲ポリエチレン等を例示できるが、特にこれらに限定されない。
【0027】
なお、本発明の製造方法によれば、所定の形状のアルミニウム材を、上述したように、ポーラス層表面におけるポア径/セル径の比を0.4〜0.9の範囲としたり、ポーラス層をシュウ酸又はシュウ酸塩の水溶液を用いた陽極酸化処理により形成することで、ペリクル用支持枠以外の用途に使用する表面処理アルミニウム材を得ることもできる。用途に応じて黒色化等の着色処理や封孔処理等を施してもよく、得られた表面処理アルミニウム材は、酸性成分の含有量や発塵性が可及的に低減されるため、電子機器部品をはじめ、カバー材、各種半導体製造装置用部材等に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により得られたペリクル用支持枠は、酸性成分が取り込まれるおそれを可及的に排除し、酸性成分の含有量が少ないペリクル用支持枠を得ることができるため、ペリクルとして使用した場合に露光中の反応成生物(ヘイズ)の発生が極めて低減される。特に、本発明により得られたペリクル用支持枠は、ヘイズの発生が極めて低減されることから、例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー等のような高エネルギーの露光光を用いたフォトリソグラフィーで使用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、陽極酸化皮膜のポーラス層の様子を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【実施例】
【0031】
〔実施例1〕
T651処理(溶体化処理後残留応力を除去し、さらに人工時効硬化処理したもの;「アルミニウムハンドブック」社団法人日本アルミニウム協会発行等参照)されたA6061アルミニウム合金の中空押出し材を切断し、支持枠外寸法149mm×122mm×5.8mm、支持枠厚さ2mmとなるように切削研磨して枠材を用意した。次いで、シュウ酸50g/Lの水溶液(C2O42-:48.9g/L)を電解液として、30℃で電解電圧40Vの定電圧電解を15分行い、上記枠材を陽極酸化処理した。純水にて洗浄後、得られた陽極酸化皮膜を渦電流式膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ社製)にて確認したところ膜厚は4.3μmであった。また、陽極酸化皮膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察倍率10万倍で観察し、ポーラス層に形成されたポアとセルの形状を確認した。縦×横:800nm×1000nmの視野内にある20個のポアを選択し、「ポア径」及び「隣接するポアの中心間距離(r)」を測定し、平均値を求めて、それぞれ「ポア径」及び「セル径」を算出したところ、「ポア径」が40nmであり、「セル径」が110nmであった(ポア径/セル径=0.36)。なお、ポアはSEM画像(二次電子像)で黒く見え、容易に計測できるが、セル構造は不明瞭である。図1はSEM写真におけるポアとセルの様子を模式的に示したものである(参考文献:永山政一,高橋英明,甲田満「アルミニウムアノード酸化皮膜の生成・溶解の挙動」金属表面技術Vol.30,No.9,1979,p438-456)。ここで、「セル径(R)」は「隣接するポアの中心間距離(r)」とR=rの関係にあり、「隣接するポアの中心間距離(r)」を測定することによって算出できる。ここで言う「ポア径」は、ポアが真円ではない場合は、最大径であり、最大径とは、ポーラス層の表面に対して垂直方向から観察したポア形状に外接するように描いた円の直径のことである。また、「隣接するポアの中心間距離(r)」は、隣接するポアの最大径の中点どうしを結んだ距離である。
【0032】
上記で陽極酸化皮膜を形成した枠材を、別途用意したシュウ酸50g/L含有の水溶液に入れ、温度30℃にて30分間の酸浸漬溶解処理を行った。純水にて洗浄後、陽極酸化処理後の場合と同様にして電子顕微鏡観察し、ポーラス層の「ポア径」と「セル径」を測定して、ポア径/セル径を求めたところ0.7であった。
【0033】
そして、上記で酸浸漬溶解処理した枠材を、有機染料(奥野製薬製TAC 411)を濃度10g/Lで含有した水溶液に入れ、温度55℃にて10分間浸漬して染色処理した。その後、封孔剤(花見化学社製 シーリングX)を濃度40ml/Lで含有した水溶液に枠材を入れ、90℃にて20分浸漬して封孔処理を行った。そして純水にて十分に洗浄し、試験用ペリクル支持枠を得た。ここで、試験用ペリクル支持枠の染色性を以下のようにして評価した。本実施例1と同じ材質の板材を陽極酸化処理及び染色処理を施し、ハンターの色差式による明度指数L*値が30となる染色対照材を別途用意した。そして、得られた試験用ペリクル支持枠を目視検査して、染色対照材より黒いものを○とし、そうでないものを×と評価した。結果を表1に示す。また、封孔処理後のポーラス層の断面を電子顕微鏡観察して、ポーラス層の内部の「ポア径の最大値」と「セル径」を測定して、ポア径の最大値/セル径を求めたところ0.5であった。なお、ポーラス層の内部のポア径の最大値とセル径の比については、ポーラス層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察倍率10万倍で観察し、縦×横が800nm×1000nmの視野内にあるポアのうち最大径のものを選択して、「ポア径の最大値/セル径」を求めた。
【0034】
また、上記で得られた試験用ペリクル支持枠をポリエチレン袋に入れ、支持枠表面積100cm2あたり純水100mlを加えて密封し、90℃に保って2時間浸漬した。このようにして支持枠からの溶出成分を抽出した抽出水を、セル温度35℃、カラム(IonPacAS11-HC)温度40℃とし、1.5ml/minの条件でイオンクロマトグラフ分析装置(日本ダイオネクス社製ICS-2000)を用いて分析した。この抽出水から、硫酸イオン、硝酸イオン、及び有機酸イオン(シュウ酸イオン、ギ酸イオン及び酢酸イオン)を検出した。結果を表1に示す。
【0035】
更に、本実施例1の条件で得た別の試験用ペリクル支持枠を、電子天秤で重量を測定後、250℃に保って30分乾燥させた。乾燥後の減少重量を乾燥前の支持枠の重量に対する割合で示した値を含有水分率とした。結果を表1に示す。更に、本実施例1の条件で得た別の試験用ペリクル支持枠の表面を電子顕微鏡にて1000倍に拡大した写真において10cmの直線を引き、その直線に交差する幅0.1μm以上のクラック数を求めたところ、クラックは確認されなかった。
【0036】
更にまた、本実施例1の条件で得た別の試験用ペリクル支持枠の片側面に光学的薄膜体として厚さ0.8μmの非晶質フッ素ポリマーを展張し、反対側の支持枠端面にはアクリル系粘着材からなる粘着体を設けて試験用ペリクルとした。そして、この試験用ペリクルを、Crテストパターンを形成した石英ガラス製6インチフォトマスク基板(レティクル:表面残留酸成分の濃度が1ppb以下になる条件で洗浄したもの)に貼り付けた。次いで、ArFエキシマレーザーを、レティクル面上露光強度が0.7mJ/cm2/pulseであり、繰り返し周波数200Hzにて10000J/cm2の照射量で照射した。照射後のフォトマスク上をレーザー異物検査装置にて観察し、ヘイズや異物の発生の有無を調べた。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
〔実施例2〕
実施例1で用意したものと同じ枠材を、陽極酸化処理に先駆けて、大気中で200℃、30分間の熱処理を行った。次いで、陽極酸化処理での電解時間を20分にした以外は実施例1と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備した。そして、表1に示す項目を実施例1と同様にしてそれぞれ評価した。
【0039】
〔実施例3〕
陽極酸化処理における電解時間を60分とした以外は実施例1と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備した。そして、表1に示す項目を実施例1と同様にしてそれぞれ評価した。なお、本実施例3で得られた試験用ペリクル支持枠の表面には4本のクラックが確認された。
【0040】
〔実施例4〕
陽極酸化処理に用いる電解液を硫酸160g/Lの水溶液として、15℃で電解電圧20Vの定電圧電解を25分行い、また、酸浸漬溶解処理における水溶液を別途用意した15℃の硫酸160g/Lの水溶液とした以外は実施例1と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備した。そして、表1に示す項目を実施例1と同様にしてそれぞれ評価した。
【0041】
〔比較例1〕
陽極酸化処理に用いる電解液を硫酸160g/L含有の水溶液とすると共に、酸浸漬溶解処理を省略した以外は実施例4と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備した。そして、表1に示す項目を実施例1と同様にしてそれぞれ評価した。
【0042】
〔比較例2〕
酸浸漬溶解処理を省略した以外は実施例1と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備した。そして、表1に示す項目を実施例1と同様にしてそれぞれ評価した。
【0043】
〔比較例3〕
酸浸漬溶解処理に用いる酸性水溶液をシュウ酸濃度50g/Lとすると共に、この酸性水溶液に枠材を浸漬する時間を60分とした以外は実施例1と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備した。そして、表1に示す項目を実施例1と同様にしてそれぞれ評価した。
【0044】
〔比較例4〕
陽極酸化処理に用いる電解液をマロン酸10g/L含有の水溶液とした以外は実施例1と同様にして試験用ペリクル支持枠及び試験用ペリクルを準備したが、陽極酸化皮膜は形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって得られたペリクル用支持枠及びペリクルは、種々の半導体装置や液晶表示装置等の製造の際のフォトリソグラフィー工程で使用することができ、特に短波長化が進む高エネルギーの露光環境においてより一層その効果を発揮する。
【0046】
また、本発明における表面処理アルミニウム材の製造方法は、電子機器部品をはじめ、カバー材や各種半導体製造装置用部材等のような低発塵性や低ガス発生性が要求され表面処理アルミニウム材を得るのに好適である。
図1