特許第5666128号(P5666128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666128
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   C03C27/12 K
   C03C27/12 L
   C03C27/12 N
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2009-505971(P2009-505971)
(86)(22)【出願日】2007年4月20日
(65)【公表番号】特表2009-534283(P2009-534283A)
(43)【公表日】2009年9月24日
(86)【国際出願番号】GB2007050204
(87)【国際公開番号】WO2007122428
(87)【国際公開日】20071101
【審査請求日】2010年4月8日
(31)【優先権主張番号】0607745.7
(32)【優先日】2006年4月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】597151611
【氏名又は名称】ピルキントン オートモーティヴ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ロバート グリーナル
(72)【発明者】
【氏名】アシュレイ カール トール
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ピーター ヴォス
【審査官】 植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−051642(JP,U)
【文献】 特開2001−039742(JP,A)
【文献】 特開2004−196559(JP,A)
【文献】 特開平10−114007(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/102688(WO,A1)
【文献】 実開平03−093124(JP,U)
【文献】 特表2007−533490(JP,A)
【文献】 特表2004−534282(JP,A)
【文献】 特表2004−510903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2ガラスプライと、その間に積層した中間層構造体とを備える合わせ窓ガラスで、該中間層構造体が、その中に内蔵した懸濁粒子デバイスフィルムを縁どる中間層材料の第1シートを備え、前記中間層材料の第1シートを中間層材料の第2および第3シートの間に積層し、該第2および第3シートのそれぞれが前記第1および第2ガラスプライの一つと接触すると共に同一の外延を有し、前記懸濁粒子デバイスフィルムが中間層材料の少なくとも一つのシートと接触し、前記中間層材料成分は、可塑剤を含まない、または前記懸濁粒子デバイスフィルムに移行しない可塑剤を含むことを特徴とする合わせ窓ガラス。
【請求項2】
前記中間層材料の第1、第2及び第3シートの少なくとも一つが、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、またはエチレンとメタクリル酸の共重合体のうちの一つである請求項1に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項3】
中間層材料の第4シートおよび障壁層をさらに備え、該障壁層が前記中間層材料の第1および第3シートの間、または前記中間層材料の第3および第4シートの間にある請求項2に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項4】
前記障壁層が、ポリエチレンテレフタレートである請求項3に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項5】
前記中間層材料の第4シートが、ポリビニルブチラールである請求項3または4に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項6】
前記中間層材料の第4シートが、着色したものおよび/または音響特性を有する請求項5に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項7】
前記懸濁粒子デバイスフィルムが、着色基板を備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項8】
前記中間層材料の第4シートと第2のガラスプライとの間に介挿した熱反射日照制御コーティングを有するポリエチレンテレフタレート基板と、中間層材料の第5シートとを更に備える請求項1〜7のいずれか一項に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項9】
前記中間層材料のシートの少なくとも一つが、日照制御特性を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項10】
日照制御、熱反射、低放射率、疎水性または親水性コーティングの少なくとも一つを更に備える請求項1〜9のいずれか一項に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項11】
空隙によって前記第2のガラスプライから離れた第3のガラスプライを更に備える請求項1〜10のいずれか一項に記載の合わせ窓ガラス。
【請求項12】
前記懸濁粒子デバイスフィルムの厚さが、前記中間層材料の第1シートと同じオーダーである請求項1〜11のいずれか一項に記載の合わせ窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせ窓ガラスの製造方法に関するもので、特に機能性フィルムを含む窓ガラスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、いくつかの追加機能性を有する窓ガラスが、好評で求められるようになってきている。一般に、追加機能性は、合わせ窓ガラス構造体内に少なくとも一つの被覆又は着色したガラスプライを用いて熱または紫外線反射特性を与えることにより得られる。しかし、追加機能性は合わせ窓ガラス構造体内に機能性装置またはフィルムを含めることによっても得ることができる。この機能性装置またはフィルムとして、LED(発光ダイオード)のような照明装置、またはLCD(液晶ディスプレー)若しくはSPD(懸濁粒子デバイス)のような切替可能なフィルムを挙げることができる。
【0003】
国際公開2005/102688号に開示され、フロンティア研究所のライセンス下で入手可能なSPDは、液体懸濁媒体内で懸濁した複数の粒子をポリマー媒体内に保持してなるフィルムである。このフィルムは、暗状態(電圧を印加しないとき)と極めて透明な状態(電圧を印加したとき)との間で切替可能である。粒子間の相対配列程度は、可変電圧を印加した際にSPD装置が可変の光透過を示すようなAC印加電圧によって画定される。
【0004】
独国特許第10043141号は、SPD層を組み込むルーフライトとして使用の窓ガラスを開示する。2個のガラスプライを、該プライの間の隙間に部分真空を有し、SPD層を下方ガラスプライの内側に堆積した二重窓ガラス構造体に形成する。このSPDは、暗状態と明状態との間で切替可能である。
【0005】
部分的に真空になった二重窓ガラス構造体を用いるよりも、例えば米国特許出願公開第2004/0257649号に開示されているように、中間層の全体または一部としてSPDフィルムのような機能性装置を合わせ窓ガラス構造体内に含み得ることが好ましい。典型的な合わせ窓ガラス構造に用いる中間層は、PVB(ポリビニルブチラール)中間層である。中間層内のSPDフィルムを保護するためには、該フィルムの端縁がガラスの端縁に到達しないのが好ましい。通常の1個ではなく3個の中間層を用いて窓ガラス内に機能性フィルムを積層する「額縁」設計を用いることは既知である。機能性フィルムの厚さとほぼ同じ中心層は、フィルムが中間層の枠内に位置し得るように切断される。次いで、フィルムおよび中間層枠を2個のさらなる中間層の間に置き、2個のガラスプライの間に積層する。
【0006】
積層工程の一部として、SPDフィルム、中間層およびガラスプライをオートクレーブ内に置き、高温下で圧力をかけることができる。しかし、PVB中間層を用いる場合、積層温度がSPDフィルムの光学性能に永久劣化を生起し得る。加えて、最終積層体を長時間熱に曝露すると、SPDフィルムの端縁領域が損傷され、切替機能を損なう。図1は、SPDフィルム2を中に積層して有する窓ガラス1の概略的な平面図である。厚さが一様でない境界領域3が、SPDフィルム2の端縁の周りに現れる。この非機能性、すなわち損傷領域の大きさは、オートクレーブでの処理温度および時間に伴って増大し、非可逆性である。図1の点線は、「額縁」構造を例示し、SPDフィルム2の実際の端縁の位置を示す。
【0007】
明らかに、SPDフィルム内の境界領域の存在は、窓ガラスの外観に影響を与えるため、品質管理の観点から受け入れ難い。したがって、SPDフィルムを合わせ窓ガラス内に入れ、窓ガラスの製造する間あらゆる点で生ずるフィルムの劣化を最小または防ぐことができる製造方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、第1および第2ガラスプライと、その間に積層した中間層構造体とを備える合わせ窓ガラスを設け、該中間層構造体が、その中に内蔵した懸濁粒子デバイスフィルムを縁どる中間層材料の第1シートを備え、懸濁粒子デバイスフィルムへの可動性中間層材料成分の移行を最小限にするよう前記中間層材料を選択することにより上記問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
PVBのような中間層材料内の可塑剤の移行および溶解は、SPDフィルムを含む合わせ窓ガラスで観察される境界領域に関し少なくとも部分的に関与することは理解できる。SPDフィルムが可塑剤をほとんど又は全く含まない材料と接触する構造を提供することによって、前記観察された損傷を低減するか、または完全に排除することができる。
【0010】
前記中間層材料の第1シートを中間層材料の第2および第3シートの間に積層し、該第2および第3シートのそれぞれが前記第1および第2ガラスプライの一つと接触すると共に同一の外延を有し、前記懸濁粒子デバイスフィルムが中間層材料の少なくとも一つのシートと接触するのが好ましい。
【0011】
中間層材料成分は、懸濁粒子デバイスフィルムに移行しない可塑剤を含むことができる。或いはまた、中間層材料成分は可塑剤を含まない。
【0012】
中間層材料の第1、第2及び第3シートのうち少なくとも一つは、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリカーボネート、塩化ビニル重合体、エチレンおよびメタクリル酸の共重合体のいずれか一つである。
【0013】
好ましくは、合わせ窓ガラスは、さらに中間層材料の第4シートと、障壁層とを備えるのが好ましく、該障壁層が前記中間層材料の第1および第3シートの間、または前記中間層材料の第3および第4シートの間にある。好ましくは、障壁層はポリエチレンテレフタレートである。中間層材料の第4シートはポリビニルブチラールであるのが好ましい。中間層材料の第4シートは着色する、および/または、音響特性を有することができる。
【0014】
或いはまた、懸濁粒子デバイスフィルムが着色した基板を備えることができる。
【0015】
或いはまた、合わせ窓ガラスは、前記中間層材料の第4シートと前記第2ガラスプライとの間介挿した熱反射日照制御コーティングを有するポリエチレンテレフタレート基板と、中間層材料の第5シートとをさらに備えることができる。
【0016】
中間層材料の少なくとも一つのシートは、日照制御特性を有することができる。
【0017】
合わせ窓ガラスは、日照制御、熱反射、低放射率、疎水性又は親水性コーティングの少なくとも一つを備えることができる。
【0018】
或いはまた、合わせ窓ガラスは、前記第2ガラスプライから空隙によって離れた第3のガラスプライを備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を、添付の図面につき実施例を用いて説明する。
【0020】
合わせ窓ガラスにおけるSPDフィルム内の非機能性、すなわち損傷した端縁領域の形成に影響を与える少なくとも一つの機構がある。この機構を画定することによって、SPDフィルム内の境界領域の存在を最小にするか、又は排除した合わせ窓ガラスを開発することが可能となる。
【0021】
一般に、PVB中間層材料は、中間層の剛性および可撓性を画定すると同時に機械的強度に影響を与える可塑剤、並びにUV(紫外光)対抗性を制御する添加剤のような他の成分を含有する。透明な領域は、PVB中間層中の可塑剤および他の成分のSPDフィルムへの移行によって形成され得る。可塑剤および添加剤は、個々にまたは組み合わせで、粒子の分離および懸濁、もしくは液体細孔の安定性を中断するか、または妨げる場合がある。これらの作用は、SPDフィルムの機能の低下になる。境界領域の機能性は一様でなく、暗く切り替えできない領域、または明るく強く切替できる領域を生じさせる場合がある。どちらの場合においても、境界領域は、フィルムの端縁で見られなくなる。この観察は、境界形成機構が拡散に基づくものであるという考えを支持する。実際、母材内の可動性成分の拡散率が温度と共に増大することは既知であり、高温で境界がより早く成長することが観察された。SPDフィルム内で、かつ中間層においてフィルムを囲まない境界領域の出現は、可塑剤のSPDフィルムへの拡散が、フィルムから周りの中間層材料内へSPD粒子が拡散するのを支配しているように見えることを示す。
【0022】
したがって、中間層材料内の可塑剤の存在は、SPDフィルム内の境界領域の形成における重要な要素である。低可塑剤含有量もしくは可塑剤を含まない中間層材料の使用、又はフィルムへ拡散しない可塑剤の使用によって、他の中間層材料成分の作用に応じて境界領域を小さくするか、または完全に排除することができる。適切な中間層材料には、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PU(ポリウレタン)、PC(ポリカーボネート)、エチレンとメタクリル酸との共重合体がある。わずかな可塑剤を含む中間層を用いる場合、可塑剤含有量が標準的な自動車用のPVBのものより少ないのが好ましい。
【0023】
可塑剤のない中間層材料と、PVB中間層との影響を比較するために、2組のサンプルを作成し、一組はPVB中間層構造であり、他の組はEVA(エチレン酢酸ビニル)中間層構造である。用いたPVB中間層は、積水化学工業株式会社から入手し得るRZN−12中間層であり、用いたEVA中間層も積水化学工業株式会社から入手し得るEN中間層である。図2は、積層したSPDフィルムを有する窓ガラスの構造を示す概略図である。窓ガラス4は中間層構造体6内に積層したSPDフィルムを有し、該構造体それ自体は2個のガラスプライ7a,7b間に積層される。積層構造体6は、中間層材料の3層8a,8b,8cを備える。第1の中間層8aは、該第1中間層8aが「額縁」を形成するように、SPDフィルムを設置する中央裁断の領域を有する。SPDフィルム5の厚さは、第1中間層8aと同じ程度のものであるのが好ましい。第1中間層8aは、第2の中間層8bと第3中間層8cとの間に積層し、これらがガラスプライ7a,7bと同じ外延を有する。
【0024】
サンプルを以下の方法で調製する。第一に、コネクタを調製する。サンプルに用いるSPDフィルムは、Reserch Frontiers Incorporated, 240 Crossways Park Drive, Woodbury, New Yok 11797, USAから入手可能なポリマー分散SPDフィルムである。電気的接続をSPDフィルム内の各ITO(酸化インジウムスズ)層に作る一方、ITO層間の電気絶縁を維持する。
【0025】
第二に、はんだ付けを完了すると、サンプルを積層するために置く。中間層材料の3つのシート(PVB中間層材料であれば、それぞれ厚さ0.76mm,0.38mm,0.76mm、または3つ全てEVA中間層であれば0.40mm)を、サンプルを形成するのに使用すべき2つのガラスプライの間に設置し、ガラスプライの外寸に整える。次いで、SPDフィルムをテンプレートとして用いて、厚さ0.38mm/0.40mmの中間層材料のシートにおける穴をマークし、このマークよりも1〜2mm大きく穴を開けて、中間層材料とSPDフィルムの端縁との接触を最小限にする。これは、SPDフィルムを設置する「額縁」を形成する。次いで、中間層材料のシートおよびSPDフィルムをガラス上に置いて図2に示す構造体を作る。
【0026】
第三に、サンプルを積層する。各サンプルを真空袋詰めし、40分間105℃のオーブン内に置く。積層サイクルを完了すると、極限状況下で境界領域が見られる程度を画定するために、両サンプルを様々な時間高温大気圧下で加熱する。加熱が完了すると、サンプルを外観検査する。
【0027】
境界領域はEVA中間層を有するサンプルにおいて観察されないが、PVB中間層を有するサンプルにおける境界領域の幅が温度上昇に従って広くなる。これらの結果は、境界領域の出現に対し必ずしも全ての理由ではないが、上述した機構がその形成に支配的であることを示す。
【0028】
本発明に係る窓ガラスをルーフライト、サイドライト又はバックライトのような自動車用窓ガラスとして用いる場合、該窓ガラスの色を調整できることが望ましい。これを実施し得る一つの方法は、例えばCIEイルミナントAを用いて測定して2.1mmで87%未満のLT(光透過率)を有する着色した少なくとも一つのガラスプライを用いることにある。特に、ピルキントン社から入手し得るGALAXSEETMおよびSUNDYMTMとして既知のガラスを用いることができる。用いるガラスプライを積層前に徐冷または準強化するのが好ましい。
【0029】
代案として、少なくとも一つの透明なプライ(CIEイルミナントAを用いて測定して88%以上のLTを有する)を使用すると、少なくとも一つの着色したPVB層をSPDフィルムを設置する積層構造体に含めることである。しかし、上述したように、PVB内のあらゆる可塑剤がSPDフィルムの構造および外観に影響を与える場合がある。これを防ぐためには、SPDフィルムの端縁とPVB中間層との間のあらゆる接触を除去することが望ましい。これは多数の方法、例えば着色EVA中間層を用いることによって行うことができる。或いはまた、SPDフィルム5の基板を形成するPET中間層に色を(例えば染料により)加えることができる。用いる色の量は、未使用時のSPDフィルム5のオフホワイトを隠す程度の着色の低いレベルから、窓ガラスにいくらかの熱および/または光学制御を与える程度の重度の着色まで変えることができる。
【0030】
或いはまた、着色PVB中間層を第2の「額縁」構造により含むことができる。図3は、第2の「額縁」構造を有する窓ガラス9の構造の概略的な断面図である。中間層構造体10を2個のガラスプライ11a,11bの間に積層する。中間層構造体10は4つの層、すなわち、着色PVBから形成され、上方ガラスプライ11aと同じ外延を有する上部層12aと、PETのような可塑剤のない、または可塑剤の低い含有量の材料から形成される第2額縁層12bと、SPDフィルム5を含む第1額縁層12cと、可塑剤のないまたは可塑剤の低い含有量の材料から形成され、下方ガラスプライ11bと同じ外延を有する下部層12dとを備える。第2額縁層12bは、SPDフィルム5の端縁が着色PVB中間層と接触してしまうのを防ぎ、したがってSPDフィルムの劣化を防ぐ。着色PVB中間層12aは、中央領域においてSPDフィルム5と接触し、中間層構造体10内の接着を確実にする。
【0031】
図4は、SPDフィルム5を含む第1額縁層12c(点線で表す)を持つ窓ガラスの概略的な平面図であり、第1額縁層12cに重なる第2額縁層12bを示す。母線13a,13bおよび電気コネクタ14a,14bを設けて、サンプルを電源に接続し得る。
【0032】
例えばルーフライトとして車両に含むべき窓ガラスに関しては、SPDフィルムと車両の配線用ハーネスとの間の母線および電気コネクタを不透明バンドによって隠すことができる。これは、上方ガラスプライの端縁の周りで、窓ガラスを車両に保持する接着剤および電気コネクタを覆うように作用する焼成した黒いセラミックインクのバンドである。このバンドの目的は、2つあり、第1に美観を整え、第2にUV曝露から接着剤および他の成分の損傷を防ぐ。不透明バンドは、SPDフィルムの端縁も隠すことができる。
【0033】
着色EVA中間層材料を窓ガラス構造に用いるか、または着色PET基板をSPDフィルムの製造に用いる場合、音響特性を有する透明なPVB中間層材料を用いることができる。或いはまた、着色吸音PVB中間層材料を用いてもよい。
【0034】
図5は、2つのガラスプライ17b(第2のガラスプライ),17a(第1のガラスプライ)の間に積層した5層の中間層構造体16を備える窓ガラス15の概略的な断面図である。上方ガラスプライ17は透明で、その内表面に熱反射日照制御コーティングを備えるのが好ましい。下方ガラスプライ17は透明または着色である。中間層構造体16は、第中間層18と、SPDフィルム20を組み込んだ第中間層19と、第3中間層21と、PET基板22と、第4中間層23とを備える。上述したように、第中間層18と、第中間層19と、第3中間層21とをEVAまたは他の適切な中間層材料から形成するのが好ましい。第4中間層は、着色PVB中間層であるのが好ましい。加えて、PVB中間層は、音響または日照/熱制御特性を有することができる。5層の中間層構造体を用いることによって、SPDフィルム20とPVB中間層との間に障壁を設けて、中間層成分の移行による問題を排除する。
【0035】
代案として、被覆ガラスを用いて日照制御を付与する代わりに、ある程度の日照制御を付与する中間層材料を用いるのが望ましい場合がある。例えば、顔料又はLaBもしくはITO(酸化インジウムスズ)を含むナノ粒子系のような添加物が、PVB中間層との使用に対し既知であり、本発明の合わせ窓ガラス構造体におけるEVA中間層に用いることができる。
【0036】
しかし、日照制御中間層を用いるか、又はガラスプライの一つにコーティングを付与するよりも、合わせ窓ガラスにおける中間層構造体内に含めたPET基板上に日照反射、とくに二重層銀コーティングを設けることが望ましい場合がある。図6は、本発明に係る他の合わせ窓ガラスの概略的な断面図であり、2つのガラスプライ26b(第2のガラスプライ),26a(第1のガラスプライ)の間に積層した7層の中間層構造体25を備える窓ガラス24を示す。上方ガラスプライ26は透明であるが、下方ガラスプライ26は透明または着色であるのが好ましい。中間層構造体25は、第中間層27と、SPDフィルム29を組み込んだ第中間層28と、第3中間層30と、第1PET基板31と、第4中間層32と、二重銀層日照制御コーティングを有する第2PET基板33と、第5中間層34とを備える。第4中間層32は着色PVB中間層であり、第5中間層34は透明PVBまたは他の適切な中間層材料であるのが好ましい。日照制御を付与するための被覆PET基板および着色PVB中間層を用いることによって、濃着色グラスを用いる必要なしに色彩調整窓ガラスを製造することができる。
【0037】
とくに好ましい窓ガラス構造体は、EVA中間層のみを利用する。かかる中間層をいずれかのガラスプライ上のコーティング、または被覆PET基板と組合わせて適切な日照制御を付与することができる。
【0038】
好ましくは、着色中間層材料を用いたとき、ピルキントン社から入手可能なGALAXSEETMおよびSUNDYMTMのような着色ガラス、または青色、灰色もしくは緑色ガラスに色合わせする。
【0039】
このような窓ガラス構造体をルーフライトとして用いるときに使用する適切な機能性コーティングには、低放射率コーティング、導電性コーティングおよび日照制御コーティングがある。低放射率コーティングは、透明で厚さ3mmのフロートガラスに適用した際に0.05〜0.45の範囲の放射率を有する被覆ガラスになるコーティングで、その実測値をEN 12898(ヨーロッパ板硝子製造者協会の公開標準)に従って測定する。ハードコーティングは通常0.15〜0.2の間の放射率を有するが、一方オフラインコーティングは通常0.05〜0.1の放射率を有する。比較として、未被覆の厚さ3mmのフロートガラスは0.89の放射率を有する。
【0040】
ハード(または熱分解)な低放射率コーティングは、金属酸化物、好ましくは、透明な導電性酸化物の単一層を備えることができる。スズ、亜鉛、インジウム、タングステンおよびモリブデンのような金属の酸化物が、金属酸化物層において存在し得る。通常、かかるコーティングは、フッ素、塩素、アンチモン、スズ、アルミニウム、タンタル、ニオブ、インジウム又はガリウムのようなさらなるドーパントを有し、例えばフッ素をドープした酸化スズまたはスズをドープした酸化インジウムを用いることができる。一般に、該コーティングは、シリコンまたは酸窒化ケイ素のような下層に備える。かかる下層は、障壁として作用し、ガラスからのアルカリ金属イオンの移行を制御する、および/または、低放射率層の厚さ変化により起こる虹色の反射光を抑制する。
【0041】
一般に、オフライン(代表的にはスパッタリングした)の低放射率コーティングは、通常少なくとも1つの金属層または導電性金属化合物層と、誘電体層とを含む多層コーティング積層体からなる。銀、金、銅、ニッケルまたはクロムを金属層として使用し得る一方、酸化インジウム、酸化アンチモン等を導電性化合物として使用し得る。典型的な多層積層体は、ケイ素、アルミニウム、チタン、バナジウム、スズ又は亜鉛の酸化物のような誘電体の層間に堆積した銀の一層または二層を備える。かかるコーティングの個々の層は、一般に厚さが数十ナノメートルである。低放射率コーティングは、用いる中間層の組合せおよび所望の熱性能に応じて、合わせ窓ガラス構造体における上方および下方ガラスプライのいずれかの表面に設けることができる。
【0042】
典型的な日照制御コーティングは、銀または酸化スズの層を備え、被覆ガラスを介して吸収する熱量を制御する。日照制御および低放射率コーティングも導電性であるので、放射率および熱貫流に関する機能をガラスに付与するだけでなく、LED、センサ及びカメラのような導電性装置を搭載するための導電性基板を形成することができる。
【0043】
熱反射日照制御コーティング、例えば2層銀コーティングも用いることができる。一般に、かかるコーティングによって反射した太陽熱は、気団1.5でのISO9050:E(2003)に従って測定して23%以上である。金属熱放射コーティングも導電性であり、特に外側のガラスプライが透明なガラスからなるときに有用である。このコーティングを、通常外側の透明なガラスプライの内側に設ける。
【0044】
或いはまた、SPDフィルムを二重窓ガラス構造体内に含めることができる。図7は、SPDを含む二重窓ガラス構造体35の概略的な側面図である。二重窓ガラス構造体35は、図7に通常参照番号36で表した上述の合わせ窓ガラス構造体のいずれかを追加の上方ガラスプライ37と組合わせて、また空隙38によって窓ガラス構造体から離して備える。かかる追加の上方ガラスプライ37は強化し、好ましくは着色したもので、例えば、ピルキントン社からGALAXSEETMとして市販されているような黒色のものである。
【0045】
熱反射コーティング(ガラスプライ上、又は独立中間層上のどちらか)を有する構造体、または空隙を有する二重窓ガラス構造体を用いる利点は、SPDフィルムによって吸収する熱量を減少し得ることである。可塑剤および他の中間層材料成分の移行が拡散プロセスであるので、SPDフィルムによって吸収したあらゆる余分な熱が、透明な境界領域の大きさを拡大させる。これは、車両におけるルーフライトとして用いる窓ガラスに対する特別な問題で、SPDフィルムがそのままで損傷する場合がある。
【0046】
したがって、本発明は、窓ガラスを通して車両に入る光量を変化させる切り替え可能な窓ガラスを提供する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態は、添付請求項の範囲内において、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】積層したSPDフィルムを有する合わせ窓ガラスの概略的な平面図である。
図2】積層したSPDフィルムを有する合わせ窓ガラスの構造を示す概略的な断面図である。
図3】第2額縁設計を示す積層したSPDフィルムを有する合わせ窓ガラスの構造を示す概略的な断面図である。
図4】第2額縁設計を示す積層したSPDフィルムを有する合わせ窓ガラスの概略的な平面図である。
図5】本発明に係るさらなる合わせ窓ガラスの概略的な断面図である。
図6】本発明に係るさらなる合わせ窓ガラスの概略的な断面図である。
図7】本発明に係るSPDフィルムを有する二重窓ガラス構造体の概略的な断面図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7