【文献】
北川文彦 他、高気孔率セラミックス細胞培養担体の開発、第27回日本バイオマテリアル学会大会予稿集、2005, p.301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照して、詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール1は、
図1に示すように、密閉系部材10と、培養液水圧供給部20と、細胞回収部30とで構成されている。
密閉系部材10は、例えば、
図1に示すように、下蓋10Aと、下蓋10A上に設けられた上蓋10Bと、下蓋10Aと上蓋10Bとを固定する固定部材15と、で構成されている。
【0014】
下蓋10Aは、
図1に示すように、細胞培養担体Sを保持し、かつ、培養液を収容するための凹部10Aaを備える凹形状で構成されている。
上蓋10Bは、
図1に示すように、下蓋10A上に設けられ、下蓋10Aと内部空間12を形成し、該内部空間12を密閉可能に保持するために、該下蓋10Aの凹部10Aaに密閉可能に契合する凸部10Baを備えている。
【0015】
細胞培養担体Sの保持は、例えば、
図1に示すように、下蓋10Aの凹部10Aaの底部10Aa1にO−リング17aを配置し、O−リング17a上に細胞培養担体Sを配置し、細胞培養担体S上にO−リング17bを配置し、O−リング17a、細胞培養担体S及びO−リング17bを、下蓋10Aと上蓋10Bとを一体に固定する際に、上蓋10Bの凸部10Baで、O−リング17bを加圧することで、下蓋10Aの凹部10Aa内に細胞培養担体Sを保持する。
なお、下蓋10Aの凹部10Aaに、上蓋10Bの凸部10Baを契合させる際には、内部空間12が密閉可能に保持されるように、上蓋10Bの凸部10Baに設けられた窪みにO−リング17cを取り付けてから行う。
【0016】
下蓋10A及び上蓋10Bは、例えば、アクリル樹脂で構成されている。
固定部材15は、例えば、SUS304で構成されている。
O−リング17a、17b、17cは、例えば、フッ素系ゴムで構成されている。
なお、前記密閉系部材10は、本実施形態では、前述したように、下蓋10Aと上蓋10Bとが固定部材15により一体に固定された構成で説明しているが、本発明は、細胞培養担体Sを内部空間12に密閉可能に保持することができれば、上述した構成に限定されない。
【0017】
内部空間12に密閉可能に保持される細胞培養担体Sは、その表面(第1面)Saに細胞を培養するための凹部S1が設けられた多孔体で構成されている。
前記細胞培養担体Sは、ジルコニア、イットリア、チタニア、アルミナ、シリカ、ハイドロキシアパタイトおよびβ−リン酸三カルシウムのうちの少なくともいずれか1種のセラミックスまたはガラスにより構成される。これらのセラミックスまたはガラスは、生体安定性が高いため、好適である。
【0018】
培養液水圧供給部20は、下蓋10Aの底部10Aa1に一体に又は着脱可能に設けられ、該内部空間12に培養液を供給する。
培養液水圧供給部20は、例えば、
図1に示すように、培養液を収容する培養液収容部22と、一端が該底部10Aa1に他端が該収容部22に取り付けられ、該収容部22に収容された培養液を該内部空間12に供給する培養液供給管24と、該供給管24に取り付けられ、該内部空間12に供給する培養液の供給量を制御する供給量制御部26と、該収容部22に取り付けられ培養液供給の際の供給圧を制御する供給圧制御部28とを備える。
【0019】
培養液収容部22は、例えば、樹脂性の収容容器で構成されている。
培養液供給管24は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
供給量制御部26は、例えば、該培養液の供給量を制御する電磁弁で構成されている。電磁弁は図示しない制御部により、その開閉動作及び開閉量が制御され、その開閉量によって、該培養液の供給量が制御される。
供給圧制御部28は、例えば、培養液収容部22から培養液供給管24に対して高圧ガスを供給する高圧ガス供給装置で構成されている。
【0020】
更に、培養液水圧供給部20は、該内部空間12に保持された細胞培養担体Sの裏面側Sb(細胞培養担体Sの凹部S1が設けられた面(第1面)Saに対向する面(第2面))方向に液圧を与えることで、前記第2面Sbに水圧を供給する。
水圧を与える方法は、密閉された内部空間12に培養液が充填された状態で、該内部空間12に培養液を供給するように供給量制御部26及び供給圧制御部28を制御することで行う。
すなわち、内部空間12に培養液が充填された状態で、供給量制御部26を開状態として、供給圧制御部28により培養液の供給圧を大きくすることで大きい水圧が、供給圧を小さくすることで小さい水圧が細胞培養担体Sの第2面Sbに供給される。
【0021】
前記水圧を細胞培養担体Sの第2面Sbに与えることにより、細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞は、細胞培養担体Sから剥離され、内部空間12に充填された培養液内に浮遊する。
なお、細胞培養担体Sの第2面Sbに供給した水圧を、該細胞培養担体Sの凹部S1の表面まで伝達させるためには、該細胞培養担体Sは多孔質体(多孔体)で構成されていることが必要である。
【0022】
より好ましくは、前記細胞培養担体Sを構成する多孔体の気孔の平均気孔径が10nm以上10μm以下であり、前記気孔は前記細胞培養担体Sの前記凹部S1の表面から、前記第2面Sbまで連通して設けられていることが好ましい。
このような構成とすることで、細胞培養担体Sの第2面Sbに供給した水圧を、該細胞培養担体Sの凹部S1の表面まで伝達することができるため、細胞培養担体Sの凹部S1で培養した細胞を、細胞培養担体Sから容易に剥離させることができる。
【0023】
細胞回収部30は、上蓋10Bの上部10Ba1に一体に又は着脱可能に設けられ、細胞培養担体Sの凹部S1で培養され、細胞培養担体Sの第2面Sbに供給した水圧により、細胞培養担体Sから剥離された細胞を培養液ごと密閉系部材10の内部空間12から回収する。
細胞回収部30は、例えば、
図1に示すように、培養した細胞を培養液ごと収容する細胞収容部32と、一端が該上部10Ba1に、他端が該収容部32に取り付けられ、該内部空間12内で培養された細胞を培養液ごと該内部空間12から排出する細胞排出管34と、該排出管34に取り付けられ、該内部空間12から排出される培養液の排出量を制御する排出量制御部36とで構成されている。
【0024】
細胞収容部32は、例えば、樹脂性の収容容器で構成されている。
細胞排出管34は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
排出量制御部36は、例えば、該排出量を制御する電磁弁で構成されている。電磁弁は図示しない制御部により、その開閉動作及び開閉量が制御され、その開閉量によって、該排出量を制御する。
【0025】
次に、
図1に示す細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を、
図2、3を用いて説明する。
図2、3は、本実施形態に係る細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を説明するための概念図である。
最初に細胞培養担体Sの第2面Sbに、フィーダー細胞(Feeder細胞)を設置する。
【0026】
次に、凹形状の下蓋10Aを用意し、下蓋10Aの底部10Aa1にO−リング17a、フィーダー細胞(Feeder細胞)が設置された細胞培養担体S及びO−リング17bをこの順で積層して下蓋10Aの凹部10Aa内に設置する。その後、下蓋10Aの凹部10Aa内に設置した細胞培養担体Sの凹部S1に培養する細胞を設置する。なお、培養する細胞が細胞培養担体Sの凹部S1に設置されると、前記設置した細胞は、細胞培養担体Sの表面に付着され、保持される。
【0027】
その後、上蓋10Bの凸部10Baの窪みにO−リング17cを挿入し、下蓋10Aの凹部10Aaと、上蓋10Bの凸部10Baとをそれぞれ契合させるように嵌め合わせ、固定部材15により下蓋10Aと上蓋10Bとを一体に固定して、内部空間12が形成された本実施形態に係る密閉系部材10を構成する。
その後、下蓋10Aの底部10Aa1に培養液水圧供給部20の培養液供給管24を取り付けると共に、上蓋10Bの上部10Ba1に細胞回収部30の細胞排出管34を取り付けることで、本実施形態に係る細胞培養モジュール1を構成する。
【0028】
次に、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態とし(本実施形態では排出量制御部36の電磁弁を「開」状態として)、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし(本実施形態では供給量制御部26の電磁弁を「開」状態として)、更に、供給圧制御部28から供給圧を与えることで該内部空間12内に培養液が完全に満たされるまで、培養液収容部22から培養液を供給する。
内部空間12に培養液が完全に満たされた時点で供給圧制御部28からの供給圧を止めて、供給量制御部26を「閉」状態とし(本実施形態では供給量制御部26の電磁弁を「閉」状態とし)、同時に、細胞回収部30の排出量制御部36を「閉」状態(本実施形態では排出量制御部36の電磁弁を「閉」状態)とする。これによって、細胞培養担体Sの凹部S1に保持された細胞が培養される環境が整う(
図2)。
【0029】
細胞培養後、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態として内部空間12内の培養液の排出を開始すると共に、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、更に、供給圧制御部28から供給圧を与えて内部空間12に新たに培養液の供給を開始する。この操作により、細胞培養担体Sの第2面Sb方向に、培養液水圧供給部20から液圧P
1が供給される。この液圧P
1により、細胞培養担体Sの第2面Sbには水圧が供給されるため、細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞は、細胞培養担体Sの凹部S1の表面から剥離され、内部空間12内の培養液内に浮遊し、そのまま、培養液と共に、細胞回収部30の細胞排出管34を経て、細胞収容部32に回収される(
図3)。
【0030】
以上より、本実施形態に係る細胞培養モジュールは、上述したような構成を備えているため、トリプシン処理等の酵素処理を行う事無く、細胞培養担体で培養した細胞を、該細胞培養担体から容易に剥離させることができる。
なお、本実施形態で説明した細胞回収部30は、
図1では、上蓋10Bの上部10Ba1に、すなわち、細胞培養担体Sの凹部S1の上方(垂直方向)に設けられた構成で説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図4に示すように、下蓋10Aの凹部10Aaに保持された細胞培養担体Sの前記垂直方向と垂直に交差する水平方向(
図4では紙面方向)に前記細胞回収部30の細胞排出管34を設置してもよい。
また、本実施形態では、該制御部26、36について電磁弁を用いた例で説明したが、例えば、シリンダー等で制御してもよく、単なる手動式の弁で構成してもよい。
【0031】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール2は、第1の実施形態で説明した
図1に示す培養液水圧供給部20が、細胞培養担体Sの水平方向(
図5では紙面方向)に配置され、
図1に示す培養液水圧供給部20の位置に空気圧供給部40が設けられた点が異なる。その他は、第1の実施形態と同様なため説明を省略する。
【0032】
空気圧供給部40は、下蓋10Aの底部10Aa1に一体に又は着脱可能に設けられ、該内部空間12に充填された培養液に空気圧を供給することで、細胞培養担体Sの第2面Sbに水圧を供給する。
空気圧供給部40は、例えば、空気圧を発生させる空気圧発生装置42と、前記下蓋10Aの底部10Aa1に一体に又は着脱可能に設けられ、前記空気圧発生装置42で発生させた空気圧を該内部空間12に供給する空気圧供給管44とで構成されている。
空気圧発生装置42は、例えば、エアーシリンダーで構成されている。
空気圧供給管44は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
【0033】
次に、
図5に示す細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を、
図6を用いて説明する。なお、第1の実施形態で説明した部分と重複する部分の説明は省略する。
図6は、本実施形態に係る細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を説明するための概念図である。
最初に、本実施形態に係る密閉系部材10を構成する。その後、下蓋10Aの底部10Aa1に空気圧供給部40の空気圧供給管44を取り付け、細胞培養担体Sの水平方向に培養液水圧供給部20の培養液供給管24を取り付け、更に、上蓋10Bの上部10Ba1に細胞回収部30の細胞排出管34を取り付けることで、本実施形態に係る細胞培養モジュール2を構成する。
【0034】
次に、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態とし、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、更に、供給圧制御部28から供給圧を与え、該内部空間12に培養液が完全に満たされるまで、培養液収容部22から培養液を供給する。
内部空間12内に培養液が完全に満たされた時点で供給圧制御部28から供給圧を止めて、供給量制御部26を「閉」状態とし、同時に、細胞回収部30の排出量制御部36を「閉」状態とする。これによって、細胞培養担体Sの凹部S1に保持された細胞が培養される環境が整う。
【0035】
細胞培養後、空気圧発生装置42により空気圧P
2を該内部空間12内に保持された細胞培養担体Sの第2面Sb方向に充填された培養液に供給する。これによって、細胞培養担体Sの第2面Sbには水圧が供給される。この水圧により、細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞は、細胞培養担体Sから剥離され、内部空間12内の培養液内に浮遊する(
図6)。
【0036】
その後、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、更に、供給圧制御部28から供給圧を与えて内部空間12に新たに培養液の供給を開始すると共に、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態として内部空間12内の培養液の排出を開始すると、該内部空間12内に浮遊した培養された細胞は該培養液と共に、細胞回収部30の細胞排出管34を経て、細胞収容部32に回収される。
【0037】
以上より、本実施形態に係る細胞培養モジュールは、上述したような構成を備えているため、トリプシン処理等の酵素処理を行う事無く、細胞培養担体で培養した細胞を、細胞培養担体から容易に剥離させることができる。
なお、本実施形態に係る細胞培養モジュール2では、培養液水圧供給部20が、細胞培養担体Sの水平方向に配置され、該水平方向から該内部空間12に培養液を供給するが、該培養液の供給と共に、該内部空間12に培養液が充填された状態で、該内部空間12に液圧を与えて、該水平方向から水圧を供給してもよい。
この液圧を与える方法は、第1の実施形態で説明したのと同様であるため、説明を省略する。
このように、水平方向から該内部空間12に水圧を与えることで、該内部空間12内の培養液の流れを制御することができるため、灌流培養も可能となる。
【0038】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール3は、第1の実施形態で説明した
図4に示す細胞培養モジュールの該上部10Ba1に、新たに、該内部空間12に培養液を供給する第2の培養液水圧供給部50が設けられた点が異なる。その他は、第1の実施形態と同様なため、説明を省略する。
【0039】
第2の培養液水圧供給部50は、上蓋10Bの上部10Ba1に一体に又は着脱可能に設けられ、該内部空間12に培養液を供給する。
第2の培養液水圧供給部50は、
図7に示すように、培養液を収容する培養液収容部52と、一端が該上部10Ba1に、他端が該収容部52に取り付けられ、該収容部52に収容された培養液を該内部空間12に供給する培養液供給管54と、該供給管54に取り付けられ該内部空間12に供給する培養液の供給量を制御する供給量制御部56と、該収容部52に取り付けられ培養液供給の際の供給圧を制御する供給圧制御部58とを備える。
【0040】
培養液収容部52は、例えば、樹脂性の収容容器で構成されている。
培養液供給管54は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
供給量制御部56は、例えば、該培養液の供給量を制御する電磁弁で構成されている。電磁弁は図示しない制御部により、その開閉動作及び開閉量が制御され、その開閉量によって、該培養液の供給量を制御される
供給圧制御部58は、例えば、培養液収容部52から培養液供給管54に対して高圧ガスを供給する高圧ガス供給装置で構成されている。
【0041】
また、前記第2の培養液水圧供給部50は、該内部空間12に保持された細胞培養担体Sの凹部S1方向に液圧を与えることで、該凹部S1に水圧を供給する。
水圧を与える方法は、密閉された内部空間12に培養液が充填された状態で、該内部空間12に培養液を供給するように供給量制御部56及び供給圧制御部58を制御することで行う。
すなわち、内部空間12に培養液が充填された状態で、供給量制御部56を「開」状態として、供給圧制御部58により培養液の供給圧を大きくすることで大きい水圧が、供給圧を小さくすることで小さい水圧が細胞培養担体Sの凹部S1に供給される。
第2の培養液水圧供給部50により液圧を細胞培養担体Sの凹部S1方向に与えながら、凹部S1内で細胞を培養すると、軟骨細胞等の圧力に強い細胞を培養することができる。
【0042】
次に、
図7に示す細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法を、
図8から10を用いて説明する。
図8から10は、本実施形態に係る細胞培養モジュール3を用いた細胞培養方法の一例を説明するための概念図である。なお、第1の実施形態で説明した部分と重複する部分の説明は省略する。
最初に、本実施形態に係る細胞培養モジュール3を構成する。
【0043】
次に、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態とし、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、更に、供給圧制御部28から供給圧を与え、該内部空間12に培養液が完全に満たされるまで培養液を供給する。
この際、第2の培養液水圧供給部50においても同様に供給量制御部56及び供給圧制御部58を制御して培養液を供給してもよい。または、第2の培養液水圧供給部50のみで培養液を供給してもよい。
内部空間12内に培養液が完全に満たされた時点で供給圧制御部28からの供給圧を止めて、供給量制御部26を「閉」状態として、培養液水圧供給部20における培養液の供給を停止する。この際、同様に、細胞回収部30の排出量制御部36も「閉」状態とする(
図8)。
【0044】
次に、第2の培養液水圧供給部50の供給量制御部56を「開」状態とし、供給圧制御部58から供給圧を与え、細胞培養担体Sの凹部S1方向に液圧P
3を供給しながら細胞を培養する(
図9)。
細胞培養後、供給圧制御部58からの供給圧を止めて、供給量制御部56を「閉」状態とし、細胞培養担体Sの凹部S1方向に対する液圧P
3の供給を停止し、その後、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態として内部空間12内の培養液の排出を開始すると共に、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、更に、供給圧制御部28から供給圧を与えて内部空間12に新たに培養液の供給を開始する。この操作により、細胞培養担体Sの第2面Sb方向に、培養液水圧供給部20から液圧P
1が供給される。この液圧P
1により、細胞培養担体Sの第2面Sbには水圧が供給されるため、該細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞は、細胞培養担体Sの凹部S1の表面から剥離され、内部空間12内の培養液内に浮遊し、そのまま、培養液と共に、細胞回収部30の細胞排出管34を経て、細胞収容部32に回収される(
図10)。
【0045】
以上より、本実施形態に係る細胞培養モジュールは、上述したような構成を備えているため、軟骨細胞等の圧力に強い細胞を培養することができ、かつ、トリプシン処理等の酵素処理を行う事無く、細胞培養担体で培養した細胞を、該細胞培養担体から容易に剥離させることができる。
なお、本実施形態で説明した第2の培養液水圧供給部50は、第2の実施形態で説明したような
図5に示す空気圧供給部40で構成してもよい。この場合、空気圧供給部40により、該内部空間12に充填された培養液に空気圧を供給することで、細胞培養担体Sの凹部S1に水圧を供給することができるため、本実施形態で説明した効果と同様な効果を得ることができる。
【0046】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール4は、第3の実施形態で説明した
図7に示す培養液水圧供給部20、第2の培養液水圧供給部50が、第2の実施形態で説明した空気圧供給部40に各々置き換えられ、また、細胞培養担体Sの水平方向に設けられた細胞回収部30に対向する方向に培養液水圧供給部20が新たに設けられた点が異なる。その他は、第3の実施形態と同様なため、説明を省略する。
下蓋10Aの底部10Aa1に取り付けられた空気圧供給部40は、前述した第2の実施形態と構成及び作用が同様であるため説明を省略する。また、上蓋10Bの上部Ba1に取り付けられた空気圧供給部40においても、前述した第3の実施形態と構成及び作用が同様であるため説明を省略する。
【0047】
次に、
図11に示す細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を説明する。
なお、第1から第3の実施形態で説明した部分と重複する部分の説明は省略する。
最初に、本実施形態に係る細胞培養モジュール4を構成する。
次に、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態とし、更に、培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、供給圧制御部28から供給圧を与え、該内部空間12に培養液が完全に満たされるまで、培養液収容部22から培養液を供給する。内部空間12内に培養液が完全に満たされた時点で、供給圧制御部28からの供給圧を止めて、細胞回収部30の排出量制御部36及び培養液水圧供給部20の供給量制御部26を「閉」状態とする。
【0048】
細胞培養の際には、上蓋10Bの上部Ba1に取り付けられた空気圧供給部40により、細胞培養担体Sの凹部S1上に水圧を供給しながら培養を行う。これによって、軟骨細胞等の圧力に強い細胞を培養することができる。
また、細胞培養中に、培養液水圧供給部20から該内部空間12内に細胞培養担体Sの水平方向に液圧を与えてもよい。このような構成とすることで内部空間12内の培養液の流れを制御することができ、灌流培養も可能となる。
【0049】
細胞培養後、下蓋10Aの底部10Aa1に取り付けられた空気圧供給部40により、細胞培養担体Sの第2面Sbに水圧を供給して、細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞を細胞培養担体Sから剥離させて、内部空間12内の培養液内に浮遊させる。
その後、培養液供給部20の供給量制御部26を「開」状態とし、供給圧制御部28から供給圧を与え、内部空間12に新たに培養液の供給を開始すると共に、細胞回収部30の排出量制御部36を「開」状態とし、内部空間12内の培養液の排出を開始すると、該内部空間12内に浮遊した培養された細胞は該培養液と共に、細胞回収部30の細胞排出管34を経て、細胞収容部32に回収される。
【0050】
以上より、本実施形態に係る細胞培養モジュールは、上述したような構成を備えているため、軟骨細胞等の圧力に強い細胞を培養することができ、かつ、トリプシン処理等の酵素処理を行う事無く、細胞培養担体で培養した細胞を、該細胞培養担体から容易に剥離させることができる。更に、細胞培養担体Sの水平方向に設けられた細胞回収部30と対向する方向に培養液水圧供給部20が設けられているため、培養した細胞を細胞回収部32に回収するスピードが向上するという効果も有する。
【0051】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール5は、第1の実施形態で説明した
図4に示す培養液水圧供給部20に変え、内部空間12内の培養液を循環させる培養液循環系100が新たに設けられた点が異なる。その他は、第1の実施形態と同様なため、説明を省略する。
培養液循環系100は、例えば、
図12に示すように、内部空間12内に充填された培養液を循環させる循環部110と、循環部110の循環方向(Dn or Up)を可変させる可変部120とで構成されている。
【0052】
循環部110は、培養液を事前に保持すると共に、循環された培養液を一時的に収容する培養液収容部112と、該収容部112に収容された培養液を該内部空間12内に供給する供給装置114と、該密閉系部材10、該収容部112及び供給装置114間を連結する配管116a、116b、116cと、配管116a、116cに取り付けられ、該循環部110の循環のON/OFF及びその循環量を制御する循環量制御部118a、118bとを備える。
【0053】
可変部120は、循環部110の配管116aに空気圧を供給する空気圧発生装置122と、一端が該配管116aに一体に又は着脱可能に連結され、他端が該発生装置122に接続された配管124と、配管124に取り付けられ、配管116aからの培養液の該発生装置122への侵入を防止すると共に、空気圧のON/OFFを制御する空気圧制御部126とで構成されている。
【0054】
培養液収容部112は、例えば、樹脂性の収容容器で構成されている。
供給装置114は、例えば、ポンプで構成されている。
配管116a、116b、116cは、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
循環量制御部118a、118bは、例えば、第1の実施形態で説明したような電磁弁で構成されている。
空気圧発生装置122は、例えば、エアーシリンダーで構成されている。
配管124は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
空気圧制御部126は、例えば、第1の実施形態で説明したような電磁弁で構成されている。
【0055】
本実施形態に示す細胞培養モジュール5では、前述した制御部118a、118b、126の開閉動作を駆使して、密閉系部材10と循環部110との間の循環方向(Dn、Up)を制御する。循環方向がDnとなるように制御部118a、118b、126の開閉動作を制御すると、培養液が密閉系部材10と循環部110との間を循環し、その循環方向(Dn)に液圧が加わるため、細胞培養担体Sの凹部S1に水圧が供給される。また、循環方向がUpとなるように制御部118a、118b、126の開閉動作を制御すると、培養液が密閉系部材10と循環部110との間を循環し、その循環方向(Up)に液圧が加わるため、細胞培養担体Sの第2面Sbに水圧が供給される。制御部118a、118b、126の開閉動作の制御は後述する。
【0056】
次に、
図12に示す細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法を、
図13、
図14を用いて説明する。
図13、14は、本実施形態に係る細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を説明するための概念図である。なお、第1の実施形態で説明した部分と重複する部分の説明は省略する。
最初に、本実施形態に係る細胞培養モジュール5を構成する。
【0057】
次に、循環量制御部118a、118bを「開」状態とし、排出量制御部36を「閉」状態とし、予め培養液が収容されている培養液収容部112から供給装置114を用いて、密閉系部材10の内部空間12内に培養液を完全に満たされるまで供給する。
なお、前記培養液を供給する方向は、空気圧制御部126の開閉動作により制御することができる。すなわち、空気圧制御部126を「開」状態とすることで前記供給する方向をDn、空気圧制御部126を「閉」状態とすることで前記供給する方向をUpに制御することができる。
【0058】
次に、該内部空間12内に培養液が完全に満たされた状態で、前記培養液を供給する方向をDnとする。なお、内部空間12内に培養液を供給する際の方向がDnであった場合はそのまま継続し、該方向がUpであった場合は、供給する方向をDnに変えて継続する。この培養液の供給を継続させることで、培養液を密閉系部材10の内部空間12と循環部110との間を循環させる。
このように、培養液の供給する方向をDnに継続させることで、培養液が密閉系部材10と循環部110との間を循環されつつ、細胞培養担体Sの凹部S1方向に液圧P
4が供給される(
図13)。そのため、骨細胞等の圧力に強い細胞も培養することができる。
【0059】
細胞培養後、空気圧制御部126を「閉」状態とすることで供給方向をUpとする。
このように、培養液の供給する方向をUpとすることで、細胞培養担体Sの第2面Sbに液圧P
5が供給される。この液圧により、該細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞は、細胞培養担体Sの凹部S1から剥離され、内部空間12内の培養液内に浮遊する(
図14)。
その後、排出量制御部36を「開」状態とし、制御部118bを「閉」状態とすることで、該培養液と共に、培養された細胞は、細胞回収部30の細胞排出管34を経て、細胞収容部32に回収される。
【0060】
以上より、本実施形態に係る細胞培養モジュールは、上述したような構成を備えているため、軟骨細胞等の圧力に強い細胞を培養することができ、かつ、トリプシン処理等の酵素処理を行う事無く、細胞培養担体で培養した細胞を、該細胞培養担体から容易に剥離させることができる。また、培養液を循環させることができるため、灌流培養も可能となる。
【0061】
(第6の実施形態)
図15は、第6の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール6は、第1の実施形態で説明した培養液供給部20の培養液供給管24にフィーダー細胞(Feeder細胞)を供給するフィーダー細胞(Feeder細胞)供給部130を新たに備える点が異なる。その他は、第1の実施形態と同様なため、説明を省略する。
【0062】
フィーダー細胞(Feeder細胞)供給部130は、培養液供給管24に一体に又は着脱可能に設けられ、該内部空間12に培養液と共にフィーダー細胞(Feeder細胞)を供給する。
フィーダー細胞(Feeder細胞)供給部130は、
図15に示すように、フィーダー細胞(Feeder細胞)及び培養液を収容する細胞収容部132と、一端が培養液供給管24に、他端が該収容部132に取り付けられ、該収容部132に収容されたフィーダー細胞(Feeder細胞)及び培養液を該内部空間12に供給する細胞供給管134と、該供給管134に取り付けられ、該内部空間12に供給するフィーダー細胞(Feeder細胞)及び培養液の供給量を制御する供給量制御部136と、該収容部132に取り付けられフィーダー細胞(Feeder細胞)及び培養液の供給の際の供給圧を制御する供給圧制御部138とで構成されている。
【0063】
細胞収容部132は、例えば、樹脂性の収容容器で構成されている。
細胞供給管134は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
供給量制御部136は、例えば、第1の実施形態と同様に電磁弁で構成されている。
供給圧制御部138は、例えば、細胞収容部132から細胞供給管134に対して高圧ガスを供給する高圧ガス供給装置で構成されている。
【0064】
なお、フィーダー細胞(Feeder細胞)を内部空間12に供給する方法は、例えば、培養液水圧供給部20から培養液を該内部空間12に供給する際、供給量制御部136を「開」状態とし、供給圧制御部138から供給圧を与え、細胞収容部132内のフィーダー細胞(Feeder細胞)及び培養液を同時に供給する。これによって、フィーダー細胞(Feeder細胞)は、そのまま、培養液供給管24内を培養液と共に流れていき、細胞培養担体Sの第2面Sbに付着される。
【0065】
本実施形態に係る細胞培養モジュールは、このような構成とすることで、細胞培養担体Sの第2面Sbにフィーダー細胞(Feeder細胞)を別作業で設置する必要が無く、作業が効率的になる。また、直接、細胞培養モジュール内で、細胞培養担体Sの第2面Sbにフィーダー細胞(Feeder細胞)を付着させることができるため、細胞培養の際の汚染も防止することができる。
また、本実施形態で説明したフィーダー細胞(Feeder細胞)供給部130は、前述したその他の実施形態に適用してもよい。なお、前述した第5の実施形態に係る細胞培養モジュール5に適用する場合は、
図16に示すような構成を備えるとよい。
【0066】
(第7の実施形態)
図17は、第7の実施形態に係る細胞培養モジュールの断面構成を示す概念図である。
本実施形態に係る細胞培養モジュール7は、第5の実施形態で説明した培養液循環系100が、培養液循環系100aに置き換えられた点が異なる。その他は、第5の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
培養液循環系100aは、例えば、
図17に示すように、内部空間12内に充填された培養液を循環させる循環部110aと、内部空間12に充填された培養液に空気圧を供給することで、細胞培養担体Sの第2面Sbに水圧を供給する空気圧供給部140と、で構成されている。
【0067】
循環部110aは、培養液を事前に保持すると共に、循環された培養液を一時的に収容する培養液収容部112と、該収容部112に収容された培養液を該内部空間12内に循環方向Dnから供給する供給装置114aと、該密閉系部材10、該収容部112及び供給装置114a間を連結する配管116a、116b、116cと、配管116a、116cに取り付けられ、該循環部110aの循環のON/OFF及びその循環量を制御する循環量制御部118a、118bとを備える。
空気圧供給部140は、例えば、空気圧を発生させる空気圧発生装置142と、一端が該配管116aに一体に又は着脱可能に連結され、他端が空気圧発生装置142に接続された配管144と、配管144に取り付けられ、配管116aからの培養液の空気圧発生装置142への侵入を防止すると共に、空気圧のON/OFFを制御する空気圧制御部146とで構成されている。
【0068】
培養液収容部112は、例えば、樹脂性の収容容器で構成されている。
供給装置114aは、例えば、ポンプで構成されている。
配管116a、116b、116cは、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
循環量制御部118a、118bは、例えば、第1の実施形態で説明したような電磁弁で構成されている。
空気圧発生装置142は、例えば、エアーシリンダーで構成されている。
配管144は、例えば、樹脂性のチューブで構成されている。
空気圧制御部146は、例えば、第1の実施形態で説明したような電磁弁で構成されている。
【0069】
本実施形態に示す細胞培養モジュール7では、該内部空間12内に循環方向Dnから培養液を供給する供給装置114aにより、該内部空間12内に培養液を充填し、前記充填させた培養液を循環方向Dnから循環させる。この循環により前記内部空間12に保持された細胞培養担体Sの凹部S1に水圧が供給される。また、空気圧供給部140により、該内部空間12に充填された培養液に空気圧を供給することで、細胞培養担体Sの第2面Sbに水圧を供給される。
【0070】
次に、
図17に示す細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法を、
図18、
図19を用いて説明する。
図18、19は、本実施形態に係る細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法の一例を説明するための概念図である。なお、第1の実施形態で説明した部分と重複する部分の説明は省略する。
最初に、本実施形態に係る細胞培養モジュール7を構成する。
次に、循環量制御部118a、118bを「開」状態とし、排出量制御部36を「閉」状態とし、空気圧制御部146を「閉」状態とし、予め培養液が収容されている培養液収容部112から供給装置114aを用いて、循環方向Dnから密閉系部材10の内部空間12内に培養液を供給する。
【0071】
該内部空間12内に培養液が完全に満たされた状態で、そのまま供給を継続し、培養液を密閉系部材10の内部空間12と循環部110aとの間を循環させる。
このように、培養液の供給する方向をDnに継続させることで、細胞培養中においても培養液が密閉系部材10と循環部110aとの間を循環されつつ、細胞培養担体Sの凹部S1方向に液圧P
6が供給される(
図18)。そのため、骨細胞等の圧力に強い細胞も培養することができる。
細胞培養後、循環量制御部118a、118bを「閉」状態とし、排出量制御部36を「閉」状態とし、空気圧制御部146を「開」状態とすることで該内部空間12に充填された培養液に空気圧を供給することで、細胞培養担体Sの第2面Sbに液圧P
7が供給される。この液圧により、該細胞培養担体Sの凹部S1で培養された細胞は、細胞培養担体Sの凹部S1から剥離され、内部空間12内の培養液内に浮遊する(
図19)。その後、排出量制御部36を「開」状態にすることで、培養された細胞は、細胞回収部30の細胞排出管34を経て、細胞収容部32に回収される。
【0072】
以上より、本実施形態に係る細胞培養モジュールは、上述したような構成を備えているため、第5の実施形態と同様に、軟骨細胞等の圧力に強い細胞を培養することができ、かつ、トリプシン処理等の酵素処理を行う事無く、細胞培養担体で培養した細胞を、該細胞培養担体から容易に剥離させることができる。更に、第5の実施形態と比べて、細胞培養担体Sの第2面Sbに供給する液圧P
7をより高精度に制御することができるため、培養する細胞毎に前記液圧P
7の高精度な制御が可能となる。
【0073】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行うことができる。
例えば、前述したように、第1、2の実施形態で説明した細胞培養モジュール1、2に、第5の実施形態で説明した培養液循環系100を更に設けてもよい。この場合、培養液循環系100を、第5の実施形態で説明したように凹部S1及び第2面Sbの両方に液圧(水圧)を供給するような構成としてもよく、単に、内部空間12内の培養液を循環させるためだけに、例えば、細胞培養担体Sの水平方向に対向するように配置してもよい。