(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666153
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】シリアル・アタッチドSCSIドメイン内の、多重化物理層の動的管理のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G06F 13/38 20060101AFI20150122BHJP
G06F 3/06 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
G06F13/38 350
G06F3/06 301B
G06F13/38 310
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-62391(P2010-62391)
(22)【出願日】2010年3月18日
(65)【公開番号】特開2011-28723(P2011-28723A)
(43)【公開日】2011年2月10日
【審査請求日】2012年7月4日
(31)【優先権主張番号】12/506,831
(32)【優先日】2009年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508243639
【氏名又は名称】エルエスアイ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド テー. アデンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】マーク スラッツ
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン ジェー. ヴァーニイ
【審査官】
古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−250631(JP,A)
【文献】
特開2007−256993(JP,A)
【文献】
特開平11−313068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/06− 3/08
G06F 13/10−13/14
G06F 13/38−13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SASドメイン内のシリアル・アタッチドSCSI(SAS)装置の物理層の多重化機能を管理する方法であって、前記方法は前記SAS装置において動作可能であり、前記方法は、
前記SAS装置内で、前記物理層の帯域幅性能を監視するステップと、
前記監視された帯域幅性能に応答して、前記物理層でのSAS多重化機能の使用を修正するように前記物理層を動的に再構成するステップとを含み、前記再構成ステップは、前記SAS装置の他の異なる物理層が、本方法を実行することによって中断されずに動作し続ける間実行される、方法。
【請求項2】
前記物理層を動的に再構成するステップが、
速度ネゴシエーションのために利用された前期物理層での多重化パラメータを調整し、
前記物理層をリセットし、
前記調整された多重化パラメータに基づいて前記物理層を介して速度ネゴシエーションを実施するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再構成するステップが、
前記物理層の前記帯域幅性能が十分に活用されていないという決定に応じて前記物理層の多重化機能を使用可能にするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記再構成するステップが、
前記物理層の前記帯域幅性能が十分に活用されていないという決定に応じて前記物理層の多重化機能を使用不能にするステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記監視するステップが、
1つまたは複数の新しい装置が前記SAS装置に結合されていることを検出するステップと、
1つまたは複数の装置が前記SAS装置から切り離されていることを検出するステップと、
新たに結合された装置の速度を検出するステップと、
前記SAS装置に結合された1つまたは複数の装置上の入出力要求負荷を検出するステップ、
のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記再構成するステップが、
多重化機能の使用に関する、前記物理層の速度ネゴシエーション・パラメータを調整するステップと、
前記物理層をリセットするステップと、
前記調整された速度ネゴシエーション・パラメータに基づいて前記物理層に対する多重化機能の使用を決定するために、SAS速度ネゴシエーションを可能にするステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記SAS装置がSASイニシエータである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記SAS装置がSASエクスパンダである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
SASドメイン内のシリアル・アタッチドSCSI(SAS)装置であって、
前記SASドメイン内の装置および物理層(110)の構成および性能を監視するように適合された構成監視モジュール(104)と、
前記SASドメインの装置および物理層の構成および性能に関する情報を受信するように前記構成監視モジュールに結合された物理層再構成モジュール(106)とを含み、前記物理層再構成モジュールは、前記SASドメインの他の異なる物理層が中断されずに動作を続ける間、前記物理層でのSAS多重化パラメータを再構成するように適合されている、装置。
【請求項10】
SAS物理層イベント・カウンタ(108)をさらに含み、
前記ドメイン監視モジュールが、前記SAS物理層イベント・カウンタに基づいて装置および物理層の性能を監視するように適合されている、請求項9に記載のSAS装置。
【請求項11】
前記ドメイン監視モジュールが、前記SASドメイン内の他のSAS装置(114)のSAS物理層イベント・カウンタ(116)にアクセスすることによって、装置および物理層の性能を監視するようにさらに適合されている、請求項10に記載のSAS装置。
【請求項12】
SASイニシエータである、請求項9に記載のSAS装置。
【請求項13】
SASエクスパンダである、請求項9に記載のSAS装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
SASは、コンピュータシステムがストレージコントローラを介して記憶装置と結合するための規格群を含む。SAS規格群の詳細の多くは、www.t10.orgで見つけることができる。たとえば、ストレージコントローラは、シリアルSCSIプロトコル(SSP)規格に従って記憶装置(SASディスク・ドライブを含む)と通信でき、シリアル管理プロトコル(SMP)を使用してドメイン内の装置を管理できる。
【0002】
SASバージョン2仕様(SAS−2セクション6.10)は、物理リンクの多重化機能のための仕様を追加する。具体的には、SAS−2仕様によって、物理層論理(PHY層論理)は多重化機能を組み込むことができるようになる。本明細書では、「物理リンク」は、SAS−2規格によって指定されたように多重化機能を統合できる物理層論理要素(PHY Layer logic element)を指す。SAS−2の時間ベースの多重化機能(しばしば「時間ドメイン多重化」または単に「TDM」と呼ばれる)によって、より高い利用可能帯域幅を有する物理リンクは、その利用可能帯域幅を論理的に分割し、複数のSAS装置に論理リンクを提供することができる。たとえば、ある物理層が最大データ転送速度6Gbpsを提供できる。この物理層が多重化機能を使用できる場合、その利用可能帯域幅を分割することができ、その結果、2つの3Gbps装置が(論理リンクを介して)同じ6Gbpsの物理層を使用して結合できる。各装置には時間の一部が割り振られ、より低速で物理層を使用する。または、たとえば、4つの1.5Gbps装置が同じ6Gbpsの物理層を使用できる。このような多重化機能の1つの共通応用例では、SASイニシエータが1つの物理リンク(すなわち1つの物理層)を使用してSASエクスパンダ装置と結合できる。物理リンクは、単一の物理層を使用し(SASエクスパンダ、およびSASドメインの他の何らかの介在するエクスパンダを介して)SASイニシエータを複数のSAS装置と結合することができるような多重化機能を使用可能にするように構成されうる。
【0003】
多重化機能は、他のSASエクスパンダまたは記憶装置などのSAS装置に結合する場合、SASイニシエータまたはSASエクスパンダなど、適切に準拠するSASコントローラにおいて使用可能にされうる。物理層が複数の装置をそれぞれ最大利用可能帯域幅の何分の1かでサポートするように構成されている場合、より高速の装置は、その全速度能力を使用して物理層と結合できない場合がある。たとえば、現在6Gbpsの物理層が2つの3Gbps装置をサポートするように構成されている場合、6Gbpsの装置はその物理層と結合して全能力の6Gbpsを利用することができない(その処理能力の半分である、3Gbpsまでに制限されてしまう)。したがって、たとえ6Gbpsの物理層の両「半分」(それぞれ多重化技法を使用して3Gbpsで動作できる)が接続のために利用可能な場合があるとしても、6Gbpsの装置は全速度でそこに接続することはできない。
【0004】
現在行われているように、多重化機能を使用する、または使用しないための物理層の構成は、SASドメインの最初の構成時にのみ、一般には、現在構成されているSASドメインのニーズを分析する管理者の手動処理によって決定される。多重化機能を使用する、または使用しないための、この静的な最初に決定された物理層の構成は、装置が追加または取り外された場合など、ドメインの構成が変化する場合にSASドメインの性能を低下させる可能性がある。多重化機能は、管理者によって指定された、それぞれの物理層について多重化するための構成パラメータに基づくSAS速度ネゴシエーション処理の一部として、物理層について決定される。したがって、管理者によって手動で決定された構成は、そのSASドメインに関して最初の電源投入時(「一日の開始時」)に設定される。新しい装置が追加されるとき、または装置が取り外されるとき(故障のためなど)、静的構成はドメイン内の変更を反映しない。現在の慣行は、物理層の多重化パラメータの手動再構成を可能にするために、ドメイン全体が基本的には利用できなくなることを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ドメイン内の物理層の多重化機能を使用するように構成されたSASドメインの性能を維持することが、進行中の問題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記および他の問題を解決し、それによって、SASドメイン内の物理層の性能を自動的に監視し、かつ/または装置の追加または除去からSASドメイン内の変更を検知し、1つまたは複数の物理層の多重化機能を自動的に再構成するための方法およびシステムを提供することによって、有用な最先端技術を進歩させる。ドメインの物理層内の多重化機能の現在の構成に基づいて低下した性能を検知したことに応答して、新しい構成を決定し自動的に再構成することができる。物理層は、ドメイン全体の再起動の必要なしにSASドメインの性能を改善するために、多重化機能を使用可能または使用不能にするように再構成されてよい。影響を受けた、再構成された物理層だけが再起動される。
【0007】
本発明の一態様では、SASドメイン内のSAS装置の物理層の多重化機能を管理するための方法が提供される。この方法は、SAS装置において動作可能である。この方法は、SAS装置内で物理層の帯域幅性能を監視することを含む。この方法は、監視された帯域幅性能に応答して、SAS装置の他の物理層が、この方法を実行することによって中断されずに動作を続ける間、多重化機能の使用を修正するように物理層を動的に再構成することを含む。
【0008】
本発明の他の態様は、SASドメインの物理層の多重化パラメータを調整するために、SASドメインに結合されたエクスパンダ装置内で動作可能な方法を提供する。この方法は、SASドメインの装置および物理層の構成を監視すること、およびその構成から物理層の多重化パラメータのための新しい構成を決定することを含む。次いでこの方法は、新しい構成に基づいて物理層の多重化パラメータを調整して、調整された多重化パラメータで物理層を再起動する。この方法は、SASドメインの他の物理層がこの方法の実行によって中断されずに動作を続ける間、実行される。
【0009】
本発明の他の態様は、SASドメイン内のSAS装置を提供する。SAS装置は、SASドメイン内の装置および物理層の構成および性能を監視するように適合された構成監視モジュールを含む。この装置は、SASドメインの装置および物理層の構成および性能に関する情報を受信するために構成監視モジュールに結合された物理層再構成モジュールも含む。物理層再構成モジュールは、SASドメインの他の物理層が中断されずに動作を続ける間、物理層の多重化パラメータを再構成するように適合される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】1つまたは複数の物理層の多重化パラメータを、SASドメインの監視された性能およびドメインの構成における変更に基づいて自動的および動的に再構成するための、本発明の特徴および態様に従って拡張されたSAS装置を含む、例示的なSASドメインのブロック図である。
【
図2】1つまたは複数の物理層の多重化パラメータを、SASドメインの監視された性能およびドメインの構成における変更に基づいて自動的および動的に再構成するための、本発明の特徴および態様による例示的方法を示す流れ図である。
【
図3】1つまたは複数の物理層の多重化パラメータを、SASドメインの監視された性能およびドメインの構成における変更に基づいて自動的および動的に再構成するための、本発明の特徴および態様による他の例示的方法を示す流れ図である。
【
図4】1つまたは複数の物理層の多重化パラメータを、SASドメインの監視された性能およびドメインの構成における変更に基づいて自動的および動的に再構成するための、本発明の特徴および態様による他の例示的方法を示す流れ図である。
【
図5】物理層の多重化パラメータの再構成後、物理層をリセット/再起動するための、本発明の特徴および態様による例示的方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、SAS装置102の1つまたは複数の物理層に多重化パラメータの動的な自動再構成を提供するために、本発明の特徴および態様に従って拡張されたSAS装置102を含むSASドメイン100のブロック図である。SAS装置102は、たとえば、ドメイン内のホスト・バス・アダプタ(HBA)などのSASイニシエータまたはSASエクスパンダを含む、どのようなSASコントローラでもよい。SAS装置102は、SASドメイン100の他の装置と結合するために、1つまたは複数の物理層110.1から110.nまでを含んでよい。さらに、SASバージョン2(SAS−2)規格に従って、物理層110.1から110.nまでのうちのいくつか(またはすべて)は、複数の装置が単一の物理層を介してSAS装置102と結合できるように、多重化機能が可能でよい。
図1に示されるように、物理層110.1は、装置112.1および112.2が単一の物理層インタフェース(110.1)およびSASエクスパンダ114を介して結合できるように、多重化機能を提供する。装置112.1および112.2は、たとえばSASエクスパンダ、ハード・ディスク・ドライブ(シリアル先進技術アタッチメント(SATA)装置を含む)などの記憶装置を含む、どのような適切なSAS装置でもよい。通信経路150、152.1、および152.2は、装置(112.1および112.2)、エクスパンダ(114)、およびSAS装置102を結合するための、SAS通信経路でも、SATA通信経路でも、他の適切な通信媒体でもよい。
【0012】
物理層110.1の多重化機能の使用を通じて、複数のリンク層処理要素120.1および120.2は、それぞれ対応する装置112.1および112.2への複数の論理リンク接続をオープンしてよい。したがって、第1論理リンクは、経路154.1、物理層110.1、経路150、エクスパンダ114、および経路152.1を介して装置112.1に結合されたリンク層120.1を含む。第2論理リンクは、経路154.2、物理層110.1、経路150、エクスパンダ114、および経路152.2を介して、リンク層120.2を装置112.2と結合する。このようにして、多重化機能を使用可能にするように構成された同じ物理リンク(物理層110.1)を共有する複数の論理リンクが定義される。
【0013】
SAS装置102は、物理層110.1から110.nまでの性能および/または構成、ならびにSASドメイン100内の装置の全体の構成を監視するように適合された、構成および性能モニタ104を含んでよい。とくに、構成および性能モニタ104は、物理層イベント・カウンタ108内に格納された、さまざまな物理層110.1から110.nまでを介して交換されたSASフレーム、および他の性能基準によって計測された性能を示す情報を分析してよい。物理層イベント・カウンタ108は、RAM(たとえば、不揮発性メモリ・コンポーネント)、レジスタ・ファイルなどの、どのような適切な記憶コンポーネントとしてSAS装置102内に実装されてもよい。SAS装置102は、1つまたは複数の物理層110.1から110.nまでの多重化パラメータを再構成するための、物理層多重化再構成モジュール106も含んでよい。構成および性能モニタ104によって収集された性能基準に基づいて、物理層多重化再構成モジュール106は、物理層110.1から110.nまでのうちの1つまたは複数の多重化機能を自動的に使用可能または使用不能にしてよい。さらに、構成および性能モニタ104は、SASドメイン100の再構成に関するSASブロードキャスト・メッセージを分析してよい。このようなSASブロードキャスト・メッセージは、たとえば、新しい装置がSASドメイン100に追加されるとき、またはSASドメイン100に以前結合されていた装置が取り外されるときに生成されてよい。SASドメインの構成におけるこのような変更に応答して、物理層多重化再構成モジュール106は、SASドメイン100内の他の装置との通信におけるSAS装置102の性能を改善するために、物理層110.1から110.nまでのうちの1つまたは複数の多重化パラメータをさらに再構成してよい。
【0014】
構成および性能モニタ104は、SASエクスパンダ114内に示されるものなどの、SASドメイン100の他の装置内にある物理層イベント・カウンタ116を検索して分析するために、SASプロトコル(たとえばSMP)も利用してよい。SASドメイン100の他の装置のこのような性能基準の分析により、SAS装置102は、SAS装置102の物理層110.1から110.nまでの再構成を提供できるようになり、ならびに他のSASエクスパンダに自分の物理層をSAS装置102内の構成および性能モニタ104の分析に基づいて再構成するよう指示できるようになる。
【0015】
例として、物理層110.1が、装置102が単一の物理層を共有する複数の装置112.1および112.2と結合できるように、多重化機能で動作するように示されている。構成および性能モニタ104によって、他の物理層が十分に活用されていないので、複数の物理層のそれぞれに対する全体的な負荷が十分に平衡しないと決定される場合がある。SAS装置102の物理層110.1から110.nまでの性能および構成を監視することによってこのような決定が行われると、物理層多重化再構成モジュール106は、物理層110.1から110.nまでのうちの1つまたは複数の多重化機能を使用可能または使用不能にするために、さまざまな物理層を再構成することを選択してよい。または、たとえばSASドメイン100に新しい装置が追加されて装置102の他の物理層に結合されると、他の物理層の多重化構成が再構成されてよい。たとえば、新たに追加された装置が高速SAS装置の場合、新しい高速装置が物理層110.nの利用可能帯域幅を完全に利用できるようにするために、物理層110.nの多重化機能が使用不能にされてよい。同様に、装置(たとえば112.2)がSASドメイン100から取り外される場合、分析は、物理層110.1を介してまだ結合している装置112.1が物理層110.1の帯域幅全体を利用できるように、物理層110.1は、多重化機能を使用不能にするように再構成することによって利用された方がいいと決定してよい。SASドメイン100内の他の装置との通信におけるSAS装置102の全体的な性能を改善するために1つまたは複数の物理層の多重化機能を再構成するための他の多くの例示的分析および対応する再構成は、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0016】
当業者は、SASドメイン100内、および、とくにこのようなSASドメイン内の装置の通常動作に適合されたSAS装置102内の多くのさらなる、および同等の諸要素を容易に理解できよう。本明細書では、この議論を単純および簡潔にするために、このようなさらなる、および同等の諸要素は省略される。さらに、SAS装置102はどのような適切な数の物理層110.1から110.nまでも含んでよいことを、当業者は容易に理解できよう。SAS装置102内の物理層110.1から110.nまでの表示は、単に本発明の特徴および態様の1つの可能な実施形態の例を企図する。さらに、どのような数の記憶装置(たとえば、112.1および112.2)およびエクスパンダ(たとえば114)も、SAS装置102の適当な物理層への適切な通信経路を介して結合されてよい。したがって、
図1に示された全体的な構成は、単に本発明の特徴および態様に従って拡張されたSAS装置102を含むSASドメイン100の1つの可能な実施形態の例を企図する。
【0017】
図2は、SASドメイン内のSAS装置の物理層の多重化機能を動的に再構成するための、本発明の特徴および態様による例示的方法を示す流れ図である。
図2の方法は、たとえば、
図1に示された例示的システムなどのシステムにおいて動作可能でよく、とくに
図1の装置102などのSAS装置において動作可能でよい。さらにより具体的には、
図2の方法は、SASドメインのSASイニシエータにおいて、および/またはSASエクスパンダにおいて動作可能でよく、装置内のプロセッサによって、および/または装置内の適切に適合されたカスタム回路によって実行される適切にプログラムされた命令として実装されてよい。
【0018】
ステップ200は、SAS装置の1つまたは複数の物理層の帯域幅性能および構成を監視するための、SAS装置内(たとえば、SASイニシエータまたはSASエクスパンダ内)の処理を示している。上述のように、このような監視は、たとえばSAS装置内の物理層イベント・カウンタ、および/またはSAS装置のさまざまな物理層を介してSAS装置に結合された装置の物理層イベント・カウンタを読み取ることによって実現されてよい。SAS装置内の物理層イベント・カウンタへのアクセスは、標準的な電子回路またはSAS装置内のメモリに格納されたカウンタ情報へのプログラムされた命令アクセスによって成し遂げられてよい。SAS装置に結合された他の装置の物理層イベント・カウンタへのアクセスは、たとえばSMPプロトコルまたは他のSASプロトコルを使用する適切な照会によって、あるいは別の方法では、ベンダ独自の通信プロトコル(たとえば、通常のSAS通信能力に関するサイドバンド・プロトコル)の実装によって実行されてよい。
【0019】
ステップ204は、ステップ200の監視によって実行された性能情報の分析に応答してSAS装置の物理層の多重化機能を再構成するための、SAS装置内の処理を示している。上述のように、再構成は、SAS装置の1つまたは複数の物理層の多重化機能の代替構成はSASドメインの他の装置との通信においてSAS装置によりよい性能を提供するという決定に基づいて、SAS装置の1つまたは複数の物理層の多重化機能を使用可能にすることおよび/または使用不能にすることを含んでよい。SASドメインへのSAS装置の追加、またはSASドメインからのSAS装置の除去は、改善された性能のための新しい構成を生じさせる可能性がある、検出された他のタイプのイベントを示してよい。
【0020】
図3は、SAS装置の1つまたは複数の物理層の構成および性能を、動的に監視するための、およびSASドメインの他の装置との通信におけるSAS装置の性能を改善するために、1つまたは複数の監視された物理層の多重化機能を再構成するための、本発明の特徴および態様による他の例示的方法を示す流れ図である。
図3の方法は、たとえば、
図1のドメイン100などのSASドメインにおいて動作可能でよく、より具体的には、SASイニシエータおよび/またはSASエクスパンダなどの、
図1のSAS装置102において動作可能でよい。さらにより具体的には、
図3の方法は、SASドメインのSASイニシエータにおいて、および/またはSASエクスパンダにおいて動作可能でよく、装置内のプロセッサによって実行される適切にプログラムされた命令、および/または適切に適合された装置内のカスタム回路として実装されてよい。
【0021】
ステップ300は、SAS装置の物理層を介してSAS装置に結合された装置の構成および/また性能を監視するためのSAS装置内の処理を示している。上述のように、監視された情報は、十分に活用されていない、および/または過度に利用されている物理層を識別するために、SAS装置のさまざまな物理層の間の帯域幅利用(たとえば、負荷バランシング)を含んでよい。さらに、監視された情報は、監視を実行するSAS装置に結合された装置の追加または除去などの変更を含む、SASドメインの構成情報を含んでよい。
【0022】
ステップ302は、SAS装置の1つまたは複数の物理層のための多重化パラメータの新しい構成(もしあれば)を決定するために、監視された情報を分析する。新しい構成は、SASドメインの他の装置との通信におけるSAS装置の負荷バランシングまたは他の性能測定を改善するために、SAS装置の1つまたは複数の物理層の多重化機能を使用可能にすることおよび/または使用不能にすることを含んでよい。新しい構成(もしあれば)がそう決定されると、次いでステップ304で、SAS装置の1つまたは複数の物理層の多重化パラメータを新しい構成情報に基づいて調整する。このような調整された多重化パラメータを有するそれぞれの物理層のために、ステップ306で、新たに構成された多重化パラメータを利用する新しい速度ネゴシエーションができるように、再構成された物理層を再起動する。
【0023】
図4は、上記の
図2および3で論じた処理のさらなる詳細の例示的方法を説明する流れ図である。とくに、
図4の例示的方法は、SAS装置内の物理層イベント・カウンタに基づく物理層の監視性能、および、SASドメインの新しい構成を示すSASブロードキャスト・メッセージに基づく構成変更の監視を説明する。
図4の方法は、
図1で説明したようにSASドメインにおいて、より具体的には
図1の装置102などのSAS装置において動作可能でよい。さらにより具体的には、
図4の方法は、SASドメインのSASイニシエータにおいて、および/またはSASエクスパンダにおいて動作可能でよく、装置内のプロセッサによって、および/または装置内の適切に適合されたカスタム回路によって実行される適切にプログラムされた命令として実装されてよい。
【0024】
ステップ400は、このSAS装置に結合されたこのSAS装置または他の装置の1つまたは複数の物理層の物理層イベント・カウンタを読み取るための処理を示している。上述のように、このSAS装置の物理層カウンタ情報を読み取ることは、通常レジスタまたはこのSAS装置に関連付けられる他の適切なメモリ構造に格納された情報へのアクセスを必要とする。SAS装置の物理層論理要素の標準的な特徴は、一般にそれぞれの物理層の動作に関連付けられるさまざまなイベントを数えることを含む。このようなイベントは、受信したフレーム、伝送したフレーム、受信した無効フレームなどを含んでよい。このSAS装置に結合された他の装置の物理層イベント・カウンタを読み取る場合、このような状況情報を他の装置から照会および検索するためにSMPプロトコルが利用されてよい。他のカスタマイズされたベンダ独自のプロトコルも、設計上の選択として使用されてよい。
【0025】
イベント・カウンタ情報に基づいて、ステップ402で、この、または他のSAS装置のいずれかの物理層のうちで、現在十分に活用されていないものがあるかどうかを決定する。もしあれば、次いでSASドメインの全体的な性能を改善するために、この、または他のSAS装置の1つまたは複数の物理層のための多重化機能の新しい構成を決定するために、ステップ412が動作可能である。監視された性能データに基づいて、現在十分に活用されていない物理層がない場合、次いでステップ404で、SASドメインのトポロジまたは構成における変更を示す、いずれかの新しいSASブロードキャスト・メッセージがこのSAS装置によって受信されたかどうかを決定する。当業者にはよく知られているように、SASドメインにおける変更は、それぞれのSAS装置がSASドメインの変更されたトポロジを再発見できるようにする、SASブロードキャスト・メッセージを生成する。ステップ404が、どのような新しいブロードキャスト・メッセージも受信されていないと決定すると、この方法の処理は終了する。
【0026】
ステップ404が、SASドメインのトポロジまたは構成における変更を示す新しいSASブロードキャスト・メッセージが受信されたと決定すると、どのような種類の変更が検知されたかを決定するために、ステップ406から410までが動作可能である。例として、ステップ406で、この、または他のSAS装置に高速装置が新たに結合されたかどうかを検出する。ステップ408で、この、または他のSAS装置に低速装置が新たに結合されたかどうかを決定する。ステップ410で、この、または他のSAS装置から、いずれかの装置が切り離されたかどうかを決定する。ステップ406から410までによって検出された変更のうちのいずれかが検知されると、ステップ412で、上述のように、SASドメインの全体的な性能を改善するために、この、または他のSAS装置の1つまたは複数の物理層の多重化機能を使用可能および/または使用不能にするために新しい構成を決定する。SASドメインのこれらの例示的トポロジ変更のうちのどれも検知されない場合、この方法の処理は終了する。
【0027】
図2から4までの方法は、SASドメイン内で動作する物理層の負荷バランシングにおける変更に動的に適応するために、および/またはSASドメインのトポロジまたは構成における変更に応答して、SAS装置内で繰り返し実行されてよい。ある例示的実施形態では、
図2から4までの方法は、指定時刻に定期的に実行されてよい。このような実施形態では、ドメイン内の物理層の多重化機能の構成を頻繁に変更する必要はないので、監視頻度がとくに高い必要はない。他の実施形態では、
図2から4までの方法は、特定の性能に関するイベント、または構成に関するイベントの検出に応答して実行されてよい。たとえば、現在の性能および構成を評価する方法は、SASドメイン・トポロジ内の構成変更を検知したことに応答して、またはドメイン構成変更の十分なしきい値数を検知したことに応答して実行されてよい。または、たとえば現在の性能および構成を評価する方法は、過度の利用による特定の物理層の通常より高いエラー率、または他の性能基準を検知したことに応答して実行されてよい。
【0028】
図5は、新たに構成された多重化パラメータを、SAS装置の特定の物理層に適用するための、本発明の特徴および態様による例示的方法を説明する流れ図である。
図5の方法は、
図1で説明したようにSASドメイン内で、より具体的には、
図1の装置102などのSAS装置において動作可能でよい。さらにより具体的には、
図5の方法は、SASドメインのSASイニシエータにおいて、および/またはSASエクスパンダにおいて動作可能でよく、装置内のプロセッサによって、および/または装置内の適切に適合されたカスタム回路によって実行される適切にプログラムされた命令として実装されてよい。
【0029】
ステップ500は、まず再構成から恩恵を受けることができる識別された物理層のための速度ネゴシエーションで使用される多重化パラメータを調整する。次いでステップ502で、SAS速度ネゴシエーション処理が、新たに調整された多重化パラメータを利用して実行されるように、影響を受けた物理層をリセットまたは再起動する。ある実施形態では、
図5の方法は、現在のトランザクション(たとえば、現在オープンな接続)が終了できるように、ステップ502で物理層の現在の動作に基づいて物理層のリセットまたは再起動をスケジュールしてよい。したがって、
図5の方法の再構成は、物理層が現在オープンな接続を妨げることなくリセットまたは再起動できる、後の適当な時間まで延期されてよい。
【0030】
当業者は、
図2から5までの方法で実行されうる多くのさらなる、および同等の諸ステップを容易に理解できよう。本明細書では、この議論を単純および簡潔にするために、このようなさらなる、および同等の諸ステップは省略される。
【0031】
本発明を、図面および上記の説明において示し説明してきたが、このような例証および説明は例示的なものであり、性質において限定的なものではないと考えられるべきである。本発明の一実施形態、およびその二次的な変形形態を図示し説明してきた。とくに、例示的ソフトウェアまたはファームウェア実施形態として図示し説明してきた特徴をカスタマイズされた論理回路として同等に実装してよく、逆もまた同様である。本発明の精神に含まれるすべての変更および変更形態に保護が望まれる。当業者は、本発明の範囲内に含まれる上述の実施形態の変形形態を理解できよう。結果として、本発明は、上述の特定の例および例証に限定されないが、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定される。