(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車両の側面衝突に関する情報を検出コイルを用いて検出する車両用側突センサにおいて、構造を簡素化するとともに検出精度向上を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。本発明は、典型的には自動車において発生した側面衝突に関する情報を検出する技術に対し適用することができるが、自動車以外の車両において発生した側面衝突に関する情報を検出する技術に対しても同様に、本発明を適用することが可能である。ここでいう「車両」には、自動車、航空機、船舶、電車、バス、トラック等の各種の車両が包含される。
【0006】
本発明にかかる車両用側突センサは、車両の側面衝突によって作動するセンサとして構成される。この車両用側突センサは、センサハウジング、検出コイル、回転軸、慣性質量体、被検出部及び出力部を含む。
【0007】
センサハウジングは、車両ドアのドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される区画領域に配設される。このセンサハウジングは、典型的には車両ドアのドア前端部とドア後端部との間に長尺状に架設され、車両側面衝突時に前記ドアアウタパネルの変位に伴って車両内方へと撓み動作する架設部材(「ドアビーム」或いは「補強部材」ともいう)に取り付けられる。架設部材以外の部材として、車両ドアのドアフレームやドアインナパネルにセンサハウジングが取り付けられてもよい。
【0008】
検出コイルは、車両前後方向に延在するようセンサハウジングに収容され、交流電流が通電されるコイルとして構成される。この検出コイルは、巻線が1または複数回巻かれた円形状のコイルとして構成される。回転軸は、センサハウジングに収容され検出コイルと並行して車両前後方向に延在する構成とされる。
【0009】
慣性質量体は、回転軸を中心として検出コイルのコイル延在面と交差する回転平面上の回転動作が許容された質量体として構成される。被検出部は、検出コイルに対向するよう慣性質量体に設けられ、慣性質量体の回転動作に伴って
外周面と検出コイルとの間の距離が可変とされる導電性の部位として構成される。この被検出部として、典型的には鋼、銅、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体が用いられる。この被検出部については、慣性質量体の全部または一部によって構成されてもよいし、或いは慣性質量体とは別体の部材によって構成されてもよい。
【0010】
出力部は、慣性質量体の回転動作時に、検出コイルと被検出部
の外周面との間の距離変化によって生じる検出コイルの
インピーダンス変化率に基づいて、慣性質量体の回転動作に関する情報を出力する機能を果たす。ここでいう「慣性質量体の回転動作に関する情報」とは、慣性質量体の回転動作時における回転角度、回転角速度、回転角加速度、回転量等が包含される。この車両用側突センサでは、車両ドアの側面衝突態様にかかわらず、慣性質量体の回転軸と検出コイルとの相対的な位置関係が維持されつつ、慣性質量体が予め定められた回転平面(二次元平面)の軌道上を回転動作し、この慣性質量体の回転動作態様が検出コイルによって検出されることとなる。
【0011】
被検出部の外周面は、
車両の側面衝突によって前記慣性質量体が回転動作する際に、前記慣性質量体慣性質量体の回転前期に検出コイルに対向する第1の領域と、慣性質量体の回転後期に検出コイルに対向する第2の領域を有し、第2の領域における回転軸からの距離の回転方向に関する変化率が、第1の領域における回転軸からの距離の回転方向に関する変化率より小さくなるように構成されている。
【0012】
車両用側突センサの上記構成によれば、検出コイルと、被検出部を有する慣性質量体とを主体とした構成ゆえ、複雑な機構や電子部品などを過度に用いることがなく、構造を簡素化するのに有効とされる。また、この車両用側突センサは、検出コイルを用いた非接触式であり、また衝撃にも強く衝撃に反応しないため、周辺環境に影響を受け難い等の特性を有するうえ、予め定められた回転平面の軌道上を回転動作する慣性質量体の被検出部を検出コイルによって検出する構成ゆえ、慣性質量体の回転動作態様の検出精度を高めるのに有効とされる。
また、車両用側突センサの上記構成によれば、回転軸の延在方向に沿った方向に慣性質量体のガタツキが生じたとしても、回転軸の延在方向と交差する方向については検出コイルと慣性質量体との間隔が影響を受けにくく、これにより検出コイルによる被検出部の検出精度が低下するのを防止することが可能となる。
また、慣性質量体の回転角度をより簡便なロジックによって導出することができる。
【0013】
本発明にかかる車両用側突センサの更なる形態では、被検出部は、回転軸の延在方向に関する延在幅が検出コイルのコイル径を上回る構成とされ、且つ被検出部の延在幅内に検出コイルが配置された構成であるのが好ましい。このような構成によれば、回転軸の延在方向に沿った方向の慣性質量体のガタツキが生じたとしても、被検出部が検出コイルの検知領域から外れるのを防止することができ、以って検出コイルによる被検出部の所望の検出精度を確保するのに有効とされる。
【0014】
本発明にかかる車両用側突センサの更なる形態では、慣性質量体の外周面によって被検出部が構成されているのが好ましい。本構成に関しては、慣性質量体の外周面に当該慣性質量体とは別体の被検出部が取り付けられてもよいし、或いは慣性質量体の全体が被検出部として構成されてもよい。このような構成によれば、車両用側突センサの構造をより簡素化することが可能となる。
【0015】
本発明にかかる車両用側突センサの更なる形態では、慣性質量体は、予め設定された加速度を上回る加速度がセンサハウジングに作用した場合に回転動作するよう当該慣性質量体を弾性付勢する弾性部材を備える構成であるのが好ましい。この弾性部材として、典型的にはコイルスプリングや板バネ等を用いることができる。なお、本発明では、センサハウジングに作用する加速度を検出する加速度センサを、車両用側突センサの構成要件とすることもできる。
このような構成によれば、車両ドアのドアアウタパネルが殆ど変位しない或いは変形しないような軽微な側面衝突が発生したときに、車両用側突センサが作動するのを弾性部材によって防止することが可能となる。
【0016】
本発明にかかる車両用側突センサの更なる形態では、センサハウジングに慣性質量体及び
検出コイルが一体状に組み付け固定されてモジュール化された単一のセンサモジュールを含み、当該センサモジュールが車両ドア側部材に対し取付けブラケットを介して取り付けられる構成であるのが好ましい。ここでいう「車両ドア側部材」として、典型的には前述の架設部材、車両ドアのドアフレームやドアインナパネル等が採用される。
このような構成によれば、慣性質量体及び
検出コイルが一体状に組み付けられた単一のセンサモジュールを、当該センサモジュールごと車両ドア側部材に対し取り付けすることができるため、異なる車種の車両ドアに対して汎用性の高い側突センサを構築することが可能となる。
【0017】
本発明にかかる車両用側突検出システムは、車両の側面衝突に関する情報を検出するシステムであって、前述の車両用側突センサと、車両ドアの側面衝突態様を判定する判定部を少なくとも備える構成とされる。判定部は、特には車両用側突センサの出力部で出力された情報に基づいて、車両ドアの側面衝突態様を判定する構成とされる。この判定部によって、典型的には発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性が高い衝突、或いは車両乗員を即座に拘束する必要性が低いないし必要性の無い軽微な衝突であることや、発生した側面衝突が路上ないし路側物体に関する衝突であるか、或いは路上ないし路側物体に関する衝突以外の衝突であること等が判定される。この判定部によって判定された、車両の側面衝突態様に関する情報は、車両の側面衝突の際に車両乗員の拘束を行うべく作動するエアバッグモジュールやシートベルト装置などの乗員拘束装置の制御、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置の制御、またその他の制御対象の制御に適宜用いられる。
このような構成の車両用側突検出システムによれば、検出精度の高い車両用側突センサの検出情報を用いることによって、車両ドアの側面衝突態様を判定部で適正に判定することが可能となる。
【0018】
本発明にかかる乗員拘束システムは、前述の車両用側突検出システム、乗員拘束装置及び制御装置を少なくとも備える。乗員拘束装置は、車両の側面衝突の際、車両乗員を拘束する装置として構成される。ここでいう「乗員拘束装置」として典型的には、乗員拘束領域に展開膨張するエアバッグによって乗員拘束を図るエアバッグ装置(エアバッグモジュール)や、車両シートに着座した乗員の胸部や腹部をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置などの乗員拘束デバイスが包含される。この場合、乗員拘束装置としてエアバッグ装置を用いる場合には、エアバッグがシート、ピラー、上部ルーフレールなどに収容される形態のエアバッグ装置を採用することができる。制御装置は、車両用側突検出システムの判定部で判定された情報、すなわち車両の側面衝突の際の衝突態様に基づいて、乗員拘束装置を駆動制御する機能を少なくとも有する装置として構成される。典型的には、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性が高い衝突であると判定部が判定した場合に、エアバッグ装置やシートベルト装置に駆動制御信号が出力される構成を採用し得る。なお、この制御装置は、当該乗員拘束装置の制御専用として構成されてもよいし、或いは車両のエンジン走行系統や電装系統を駆動制御する手段と兼用とされた構成であってもよい。
このような構成の乗員拘束システムによれば、車両用側突検出システムの判定部で判定された適正な情報を用いて乗員拘束装置が制御されることとなり、これによって車両乗員の拘束徹底が図られる。
【0019】
また、本発明にかかる乗員拘束システムの更なる形態では、更に、車両に作用する加速度に関する情報を検出する加速度センサを備え、制御装置は、側突検出システムの判定部にて判定された情報と加速度センサにて検出された情報の双方に基づいて、乗員拘束装置を駆動制御する構成であるのが好ましい。典型的には、振り子部材の移動量及び移動速度が相対的に高く、且つ車両に作用する加速度が所定値を上回るような場合に、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性が高い衝突であるとして乗員拘束装置を駆動制御する構成を用いることができる。
このような構成の乗員拘束システムによれば、側突検出システムの判定部で判定された情報と加速度センサにて検出された情報の双方に基づいて、乗員拘束装置をより適正な条件で駆動制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、車両の側面衝突に関する情報を検出コイルを用いて検出する車両用側突センサにおいて、構造を簡素化するとともに検出精度向上を図ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の「乗員拘束システム」の一実施の形態である乗員拘束システム100について説明する。なお、この乗員拘束システム100は、自車両が、他の車両や、車両以外の衝突物に側面から衝突した側面衝突の際、自車両に乗車している車両乗員を好適に拘束する機能を有するものであり、拘束手段として具体的には乗員側方の乗員拘束領域への展開膨張が可能なエアバッグを有するエアバッグモジュールが採用されている。
【0023】
本実施の形態の乗員拘束システム100の概略構成に関しては
図1が参照される。この乗員拘束システム100は、典型的には自動車(車両)に搭載されるシステムであって、
図1に示されるように、加速度センサ110、側突センサ130、ECU150及びエアバッグモジュール170に大別される。この乗員拘束システム100は、運転席、助手席、後部座席等に着座した車両乗員の拘束を行なうシステムとして適用され得る。また、特に図示しないものの、この乗員拘束システム100が搭載される車両は、この乗員拘束システム100以外に、当該車両を構成する多数の車両構成部材、エンジン及び車両の走行に関与する系統であるエンジン走行系統、車両に使われる電機部品に関与する系統である電装系統、エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う駆動制御装置等を備える。
【0024】
加速度センサ110は、車両に作用する3軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の加速度のうち、少なくともY軸方向の加速度に関する情報を検出する加速度センサとして構成される。この加速度センサ110によって検出された加速度情報S10は、ECU150を構成するCPU152へと出力される。この加速度センサ110は、典型的には車両の左右のBピラーにそれぞれ装着されるのが好ましい。ここでいう加速度センサが、本発明における「加速度センサ」に相当する。
【0025】
側突センサ130は、車両の側面衝突時に生じるドアアウタパネルの変位(「変形」ないし「移動」ともいう)に伴って作動する検出センサとして構成される。この側突センサ130は、典型的には左右の車両ドアに装着されたドアビーム或いは補強部材のそれぞれに装着されるのが好ましい。この側突センサ130は、検出コイル130aと、この検出コイル130aの制御や信号処理のために使用されるICチップと(半導体)してのASIC130bを含む。ASIC130bは、検出コイル130aによる所定の慣性質量体(「ターゲット」ともいう)の検出に基づいて、当該慣性質量体の回転動作態様を示す検出情報S20をCPU152に出力する機能や、側突センサ130の故障診断を行なう機能を果たす。必要に応じては、このASIC130bの機能をCPU152にて一括して行う構成を採用することもできる。ここでいう側突センサ130が、本発明における「車両用側突センサ」に相当する。
【0026】
ECU150は、少なくともエアバッグモジュール170の駆動制御を行なう制御機構として構成され、CPU152を少なくとも含む。CPU152(ECU150)は、加速度センサ110から出力された加速度情報S10、及び側突センサ130(ASIC130b)から出力された慣性質量体(後述する慣性質量体140)の検出情報S20に基づいて、車両ドアの側面衝突態様を判定し、エアバッグモジュール170に対し駆動制御信号S30を出力する機能を果たす。従って、このCPU152は、少なくとも側突センサ130の検出部(後述する検出コイル130a)によって検出された慣性質量体の動作態様に基づいて、車両ドアの側面衝突態様を判定する構成であり、本発明における「判定部」を構成する。
【0027】
なお、ここでいうECU150は、エアバッグモジュール170を駆動制御する制御装置であって、本発明における「制御装置」に相当する。このECU150は、エアバッグモジュール170のみを駆動制御する制御装置として構成されてもよいし、或いはそれに加えて車両のエンジン走行系統や電装系統の制御を行なう駆動制御装置としての制御ユニットの一部として構成されてもよい。このECU150と前記の側突センサ130とによって構成されるシステムは、車両の側面衝突に関する情報を検出する側突検出システムであり、本発明における「車両用側突検出システム」を構成する。
【0028】
エアバッグモジュール170は、ガス供給装置172及びエアバッグ174を少なくとも備える。エアバッグ174は、布地によって袋状とされ、膨張及び収縮が可能な部材として構成される。ガス供給装置172は、展開膨張用ガスのガス発生器としてのインフレータと、このインフレータで発生した展開膨張用ガスを、エアバッグ174内へと案内する案内部材を含む構成とされる。このエアバッグ174は、ECU150から出力された駆動制御信号S30に基づいてガス供給装置172が作動したとき、当該ガス供給装置172からの展開膨張用ガスの供給によって乗員拘束領域に展開膨張する構成とされる。これにより、車両事故の際、エアバッグモジュール170のエアバッグ174を介して車両乗員を拘束する制御が可能となる。ここでいうエアバッグモジュール170は、車両の側面衝突の際、車両乗員を拘束する装置として構成され、本発明における「乗員拘束装置」及び「制御対象」に相当する。
【0029】
なお、この乗員拘束システム100において、ECU150からの駆動制御信号eによって駆動制御される乗員拘束装置は、エアバッグモジュール170に代えて或いは加えて、エアバッグモジュール170とは別の乗員拘束装置を用いることが可能である。エアバッグモジュール170とは別の乗員拘束装置として、典型的にはシートベルト装置などの乗員拘束装や、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置を用いることができる。
【0030】
上記側突センサ130及びその周辺部位の構成に関しては、
図2及び
図3が参照される。
図2には、車両ドア10の側面視において、当該車両ドア内での側突センサ130の取り付け位置を示す図が示され、また
図3には、
図2中の車両ドア10の矢印A−A線に関する断面構造が示されている。なお、これらの図面や後述する図面において、矢印FRで示す第1の方向が車両前方(前進方向)を示し、矢印UPで示す第2の方向が車両上方を示し、また矢印INで示す第3の方向が車両内方(車室方向)を示している。
【0031】
図2及び
図3に示すように、乗員乗降用の車両ドア10は、ドアヒンジ16を介して車両本体(「車両ボデー」ないし」「車両ボディー」とも称呼する)17に連結されており、車両の外側壁を形成するドアアウタパネル11、車両の内側壁を形成するドアインナパネル12を備える。この車両ドア10は、車両のAピラーとBピラーとの間に設置される前席ドアとして構成されてもよいし、或いはBピラーとCピラーとの間に設置される後席ドアとして構成されてもよい。これらドアアウタパネル11及びドアインナパネル12によって区画される区画領域13には、車両前後方向(「矢印FRに沿った第1の方向」ともいう)に長尺状に延在するドアビーム20が設置されている。本実施の形態では、側突センサ130が取付けブラケット21を介してドアビーム20に取り付けられるように構成されている。必要に応じてはこの側突センサ130を、ドアビーム20以外の取り付け箇所、例えばドアインナパネル12やドアフレームの取り付け箇所に取り付けるようにしてもよい。ここでいう車両ドア10、ドアアウタパネル11、ドアインナパネル12、区画領域13、ドアビーム20及び取付けブラケット21がそれぞれ、本発明における「車両ドア」、「ドアアウタパネル」、「ドアインナパネル」、「区画領域」、「車両ドア側部材」及び「取付けブラケット」に対応している。
【0032】
ドアビーム20は、第1の方向に沿った車両前後方向に長尺状に延在する筒状、棒状ないし柱状の部材とされる。このドアビーム20の一方の端部が車両前方側ブラケット14を介して車両本体17に固定される一方、このドアビーム20の他方の端部が車両後方側ブラケット15を介して車両本体17に固定される。すなわち、このドアビーム20は、ブラケット14,15に対応する両端部を固定端として、車両前後方向に関しドア前端部(車両前方側ブラケット14)とドア後端部(車両後方側ブラケット15)との間に長尺状に架設されている。このような構成において、ドアビーム20は、車両の側面衝突時にドアアウタパネル11の変位に伴って車両内方への撓み動作、すなわち弓なり状に変形する動作をおこす。このドアビーム20は、車両ドア10の区画領域13のうちドアアウタパネル11に近接した位置において、第2の方向に沿ったドア上下方向に関し1または複数設置される。
【0033】
上記側突センサ130の具体的な構成に関しては、
図4〜
図6が参照される。ここで、
図4には、本実施の形態の側突センサ130の分解斜視図が示されている。また、
図5には、
図4中の検出コイル130a及び慣性質量体140の斜視図が示され、
図6には、
図5中の検出コイル130a及び慣性質量体140の平面図が示されている。
【0034】
図4に示すように、本実施の形態の側突センサ130は、前述の取付けブラケット21に対しブッシュ131を介して固定されるベース部材132を備えている。このベース部材132は、側壁部132a,132a、収容空間132b、取り付け穴132c,132c、コネクタ133を含む構成とされる。側壁部132a,132aは、ベース部材132のうち互いに対向する左右一対の側壁部とされ、検出コイル130aが保持されたコイルホルダ136を収容する収容空間132bを区画している。
【0035】
各側壁部132aに取り付け穴132cが設けられており、この取り付け穴132cは、慣性質量体140をシャフト部材141を介してベース部材132に回転動作可能に支持する機能を果たす。具体的には、慣性質量体140の貫通孔140aに、当該貫通孔140aの内径を若干下回る外径のシャフト部材141が貫通されて、このシャフト部材141部材の両端部が取り付け穴132c,132cに挿設された後、シャフト部材141を周方向に延在する溝部141aにクリップ142が係合されることによって、慣性質量体140がベース部材132に支持される。コネクタ133は、検出コイル130aを前述のECU150に接続する接続部としての機能を果たす。
【0036】
また、ベース部材132には、センサカバー135が取り付けられる。このセンサカバー135は、収容空間132bに収容された検出コイル130a、及び慣性質量体140の全体を被覆する機能を果たす。センサカバー135は、ベース部材132とともに、車両ドア10の区画領域13に配設されて、検出コイル130a及び慣性質量体140を収容するセンサハウジングを構成する。従って、ここでいうセンサカバー135及びベース部材132によって、本発明における「センサハウジング」が構成される。
【0037】
本実施の形態では、このセンサカバー135の内面にシールド部材134が設けられている。このシールド部材134は、磁界の影響を受けにくい金属製、例えば鉄製であるのが好ましい。このような構成によれば、収容空間132bに収容された検出コイル130aの周囲がシールド部材134によって被覆されるため、側突センサ130の外部に存在する磁界、具体的には車載されている他部品からの磁界、或いは外界に存在する磁界の影響を受けにくく、磁界ノイズに強いという作用効果を得ることが可能となる。
【0038】
慣性質量体140は、質量部分(マス)として構成されており、
図5及び
図6に示すように、慣性質量体140は、車両前後方向(第2の方向)と交差する左右方向(第3の方向)に延在する回転平面A1上において、検出コイル130aと並行して車両前後方向に延在するシャフト部材141を中心として、矢印30方向及び矢印32方向に振り子状に回転ないし揺動する動作が許容されている。この慣性質量体140は、「振り子部材」、「揺動部材」、或いは「回転部材」とも称呼される。この慣性質量体140の外周面140bは、検出コイル130aに対向するよう慣性質量体140に設けられた対向面とされ、検出コイル130aによって実質的に検出される被検出部(「ターゲット」ともいう)とされるべく、典型的には鋼、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体を用いて構成される。この外周面140bは、慣性質量体140の回転動作に伴って検出コイル130aとの間の距離が可変とされ、特に慣性質量体140が検出コイル130aに近接するにつれて、外周面140bと検出コイル130aとの距離が徐々に小さくなるように構成されている。従って、この外周面140bは、ここでいう慣性質量体140が本発明における「慣性質量体」に相当し、またこの慣性質量体140の外周面140b、すなわち慣性質量体140自体によって、本発明における「導電性の被検出部」が構成される。
【0039】
なお、側突センサ130の構造をより簡素化するためには、本実施の形態のように、慣性質量体140の外周面140bを導電体ないし磁性体によって構成するとともに、外周面140bを含む慣性質量体140全体を、外周面140bと同一の導電体ないし磁性体によって構成するのが好ましい。この場合、慣性質量体140と外周面140bは、一体構造であってもよいし、或いは互いに分離が可能な別体構造であってもよい。
【0040】
また、この慣性質量体140には、当該慣性質量体を矢印32方向へ弾性付勢するコイルスプリング143(「コイルバネ」ともいう)が取り付けられている。このコイルスプリング143は、シャフト部材141のまわりに螺旋状に巻き付けられたバネ部材として構成される。このコイルスプリング143は、車両ドア10の側面衝突時に側突センサ130に作用する加速度(例えば
図5及び6中の矢印34方向に入力される加速度)が相対的に低い低加速度状態においては、慣性質量体140の矢印30方向の回転動作を阻止する一方、当該低加速度状態における加速度を上回る加速度が側突センサ130のセンサハウジング(ベース部材132ないしセンサカバー135)に作用した高加速度状態においては、慣性質量体140の矢印30方向の回転動作を許容するような弾発力を有する。すなわち、このコイルスプリング143は、予め設定された規定の加速度を上回る加速度が側突センサ130のセンサハウジングに作用した場合にはじめて、慣性質量体140が矢印30方向に回転動作するように当該慣性質量体140に対し矢印32方向の弾性付勢力を付与するスプリングとされる。このコイルスプリング143によれば、車両ドア10のドアアウタパネル11が殆ど変位しない或いは全く変形しないような軽微な側面衝突が発生したときに、側突センサ130が作動するのを防止することが可能となる。ここでいうコイルスプリング143が、本発明における「弾性部材」に相当する。
【0041】
これに対して、検出コイル130aは、慣性質量体140の回転平面A1と交差する(典型的には直交する)コイル延在平面A2上において車両前後方向に延在するよう配置されている。この検出コイル130aは、巻線が1または複数回巻かれた円形状のコイルとして構成され、外部磁界(被検出磁界)の状況に応じてインピーダンスが変化する特性を有する。この検出コイル130aは、ASIC130bに含まれる交流電源装置(図示省略)に接続されており、当該交流電源装置の駆動によって交流電流(正弦波電流)が通電されることで、この検出コイル130aに交流磁界が発生する。この検出コイル130aは、交流電流が導通される「導電コイル」とも称呼される。
【0042】
ところで、この種の検出コイルの検出に際しては、検出コイルによって検出される慣性質量体の組み付け時のガタツキが、慣性質量体の検出精度に影響を及ぼすことが懸念される。本実施の形態の慣性質量体140の場合には、シャフト部材141の延在方向に沿った方向の慣性質量体140のガタツキが、シャフト部材141の延在方向と交差する方向の慣性質量体140のガタツキを上回る場合が想定される。そこで、本実施の形態では、検出コイル130a及び慣性質量体140の相対的な配置関係について以下のような2つの特徴点を有する。
【0043】
第1の特徴点として、慣性質量体140の回転平面A1と検出コイル130aのコイル延在平面A2が交差するように構成している。このような構成によれば、シャフト部材141の延在方向に沿った方向に慣性質量体140のガタツキが生じたとしても、シャフト部材141の延在方向と交差する方向については検出コイル130aと慣性質量体140との間隔が影響を受けにくく、これにより検出コイル130aによる被検出部(外周面140b)の検出精度が低下するのが防止される。
【0044】
第2の特徴点として、シャフト部材141の延在方向に関する慣性質量体140(外周面140b)の延在幅w1が、検出コイル130aのコイル径(直径)w2を上回るように構成され、且つ慣性質量体140(外周面140b)の延在幅w1内に検出コイル130a全体が配置されるよう構成している。このような構成によれば、シャフト部材141の延在方向に沿った方向の慣性質量体140のガタツキが生じたとしても、慣性質量体140の外周面140bが検出コイル130aの検知領域から外れるのを防止することができ、以って検出コイル130aによる慣性質量体140の被検出部(外周面140b)の所望の検出精度を確保するのに有効とされる。なお、本発明では、少なくとも上記の第1の特徴点を有していれば足り、必要に応じてはこの第2の特徴点を有してない場合であっても、本発明の目的を達成することが可能である。
【0045】
上記構成の乗員拘束システム100の作用に関しては、
図7〜
図9が参照される。
図7には、本実施の形態の乗員拘束システム100において、車両ドア10が衝突物200に対し側面衝突する前の断面構造が模式的に示され、また
図8には、
図7中の車両ドア10の衝突物200に対する側面衝突時における断面構造が模式的に示されている。また、
図9には、本実施の形態の側突センサ130の作動時の様子が模式的に示されている。
【0046】
いま、衝突物200に対し車両が側面衝突して車両ドアの側面に接触し、
図7中に示す車両ドア10のドアアウタパネル11が側方(
図7中の上方)から衝撃を受け、第3の方向である車両内方(
図7中の下方)へと変位する場合について考える。この衝突態様は、典型的には電柱等の衝突物200に対し車両が衝突する態様、いわゆる「ポール衝突」と称呼される。
【0047】
図7中に示すドアアウタパネル11は、衝突物200との側面衝突により当該衝突物200が侵入すると潰れはじめ、例えば
図8に示すような二点鎖線位置から実線位置へと変位する。この変位に伴いドアアウタパネル11を介して押圧されたドアビーム20は、車両内方へと撓み動作する。このようなドアビーム20の撓み動作に伴って側突センサ130がドアビーム20とともに車両内方へと変位する際、或いはドアアウタパネル11に対する衝撃が側突センサ130に作用する際に、当該側突センサ130が作動して、
図1中の検出情報S20が検出される。一方、衝突物200との側面衝突時に車両に作用するY軸方向(
図5及び6中の矢印34方向)の加速度に関する情報(
図1中の加速度情報S10)が、加速度センサ110によって検出される。
【0048】
側突センサ130の作動に関しては、
図9に示すように、側突センサ130に矢印34方向の加速度が作用することで、初期位置P1にある慣性質量体140(図中の二点鎖線で示す)には、加速度と反対方向の荷重、すなわち矢印36方向の荷重が作用する。このとき、前述のコイルスプリング143の弾性付勢力に打ち勝って規定値を上回る加速度が側突センサ130に作用すると、慣性質量体140はその慣性力によってシャフト部材141を回転中心として初期位置P1から、例えば図中の実線で示す第1作動位置P2、更には第2作動位置P3へと回転動作する。第1作動位置P2は、慣性質量体140が初期位置P1から矢印30方向に角度θ1で検出コイル130aに接近するように回転動作した位置とされる。また、第2作動位置P3は、慣性質量体140が初期位置P1から矢印30方向に角度θ2で検出コイル130aに接近するように回転動作した位置とされる。
【0049】
慣性質量体140の上記回転動作の際、検出コイル130aと、この検出コイル130aに対向配置された慣性質量体140の外周面140bとの間の距離、例えば慣性質量体140の所定時間内或いは所定回転区間内での回転動作に関し、検出コイル130と慣性質量体140の外周面140bとの間の平均距離が徐々に小さくなっていく。例えば、慣性質量体140の外周面140bのうち検出コイル130aに最も近接する部位と検出コイル130aとの直線距離は、初期位置P1にある慣性質量体140ではd1、第1作動位置P2にある慣性質量体140ではd2(<d1)、第2作動位置P3にある慣性質量体140ではd3(<d2)とされる。慣性質量体140の回転動作時におけるこの距離変化によって、検出コイル130aにインピーダンス変化が生じる。従って、検出コイル130aのインピーダンス情報と、慣性質量体140の回転角度とを予め関連付けることによって、検出コイル130aの検出情報に基づいて、慣性質量体140の回転角度及び回転角速度を検出することが可能となる。上記の「検出コイル130と慣性質量体140の外周面140bとの間の平均距離」は、典型的には、検出コイル130aのコイル面の面積をSとし、検出コイル130aのコイル面が慣性質量体140の外周面140bに投影された体積(ボリューム)をVとした場合には、体積Vを面積Sで除した値、すなわちV/Sとして規定され得る。
【0050】
なお、検出コイル130aのインピーダンス情報として、典型的にはインピーダンス変化率を採用するのが好ましい。この場合、検出コイル130aのインピーダンス変化率と慣性質量体140の回転角度との関係を予めデータベース化しておき、検出コイル130aで実際に検出されたインピーダンス変化率に基づいて、慣性質量体140の回転角度を算出することが可能となる。慣性質量体140の回転角度をより簡便なロジックによって導出するためには、検出コイル130aのインピーダンス変化率と慣性質量体140の回転角度との関係が特に直線関係(リニアな関係)となるのが好ましい。
【0051】
そこで、本発明者らは、当該関係について鋭意検討した結果、慣性質量体140の外周面140bの形状を工夫することによって、検出コイル130aのインピーダンス変化率と慣性質量体140の回転角度との間に直線関係或いは直線近似が可能な関係を得ることが可能であることを見出した。例えば、慣性質量体140の回転前期(「回転初期」ともいう)においては、検出コイル130aとの間の平均距離の変化が大きくなり、慣性質量体140の回転後期においては、検出コイル130aとの間の平均距離の変化が小さくなるように、慣性質量体140の外周面140bの形状を特徴付ける手法が有効とされる。この場合の慣性質量体140の形状の特徴に関しては
図10が参照される。
【0052】
図10に示すように、慣性質量体140の外周面140bには、第1の領域144及び第2の領域145が含まれる。第1の領域144は、外周面140bの各部位のうち慣性質量体140の回転前期に検出コイル130aに対向する部位とされる。この第1の領域144を、例えば
図10中の二点鎖線で示される、シャフト部材141を中心とした所定半径Rの円弧Cと対比した場合、第1の領域144は、シャフト部材141からの距離の回転方向に関する変化率が相対的に大きい領域として規定することができる。一方、第2の領域145は、外周面140bの各部位のうち慣性質量体140の回転後期に検出コイル130aに対向する部位とされる。この第2の領域145は、シャフト部材141からの距離の回転方向に関する変化率が第1の領域144よりも小さい領域として規定することができる。従って、検出コイル130と外周面140bとの間の平均距離の変化は、第2の領域145よりも第1の領域144の方が大きい。これにより、検出コイル130aのインピーダンス変化率と慣性質量体140の回転角度との間に、直線関係或いは直線近似が可能な関係が得られる。なお、このような関係を満たす形状であれば、第1の領域144及び第2の領域145の形状は、
図10に示す形状に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更が可能である。例えば、特に図示しないものの、慣性質量体140の外周面140b自体に溝部、穴等の凹部を設ける構造によって、第1の領域144及び第2の領域145の形状を定めることもできる。
【0053】
側突センサ130の検出コイル130aで検出された検出情報として、慣性質量体140の回転角度が、慣性質量体140の回転動作情報としてASIC130bからECU150のCPU152に出力される。従って、ここでいうASIC130bが、本発明における「出力部」を構成している。そして、CPU152では、慣性質量体140の回転角速度や、慣性質量体140と一体状に移動するドアビーム20の移動量及び移動速度が演算される。なお、ASIC130bから出力される慣性質量体140の回転動作情報として、回転角度以外に、回転角速度、回転角加速度、回転量等を用いることもできる。
【0054】
またこのCPU152では、演算したドアビーム20の移動量及び移動速度が「側突センサ130に関するオン領域」にあるか否かを判定する。ここでいう「側突センサ130に関するオン領域」とは、側突センサ130の検出結果に基づいて所定態様の側面衝突が発生したと判定される領域として規定される。典型的には、ドアビーム20の移動速度と移動距離との相関につき、これら移動速度及び移動距離がいずれも規定条件を満たす領域を側突センサ130に関するオン領域として規定し、前記の領域以外の領域を側突センサ130に関するオフ領域として規定することができる。
【0055】
側突センサ130に関するオン領域は、ドアビーム20の移動速度及び移動距離との相関に基づき、ドアビーム20を変形させるのに十分な力を有する物体が側面衝突し、これにより実際にドアビーム20の明らかな変形が生じて車両ドア10が潰れた場合、車両ドア10を変形させた物体の衝突速度が一定値以上であり変形が進行している場合、或いは大きく重い物体が車両ドア10を所定以上変形させ、更に所定以上の速度で変形が進行している場合等を想定している。これに対し、側突センサ130に関するオフ領域は、ドアビーム20の移動速度が相対的に大きく、且つドアビーム20の移動距離が相対的に小さい場合、例えば車両ドアが路上ないし路側物体以外の衝突、例えばキャスター付買い物かご、ボール、バット等に衝突して可逆的に変位した場合等を想定している。このオフ領域には、例えば高速で低重量物が側面衝突した場合のドアビーム20の移動速度と移動距離との相関や、低速で高重量物が側面衝突した場合のドアビーム20の移動速度と移動距離との相関が包含される。
【0056】
一方、CPU152では、加速度センサ110から出力された加速度情報(前述の加速度情報S10)に基づいて、加速度出力値が「加速度センサ110に関するオン領域」にあるか否かが判定される。ここでいう「加速度センサ110に関するオン領域」とは、加速度センサ110の加速度出力値が予め規定された閾値に達したと判定される領域として規定される。このオン領域以外の領域、すなわち加速度センサ110の加速度出力値が予め規定された閾値を下回ると判定される領域が、「加速度センサ110に関するオフ領域」として規定される。
【0057】
そして、CPU152(ECU150)は、最終的に側突センサ130の検出結果に基づいて演算したドアビーム20の移動量及び移動速度が「側突センサ130に関するオン領域」にあり、且つ加速度センサ110の加速度出力値が「加速度センサ110に関するオン領域」にあると判定した場合、すなわち2つの条件が成立した場合に、エアバッグモジュール170に対し作動信号を出力する。これにより、エアバッグモジュール170のガス供給装置172からのガス供給によってエアバッグ174が乗員拘束領域に展開膨張し、展開膨張した当該エアバッグ174が、車両乗員の側部(頭部、首部、肩部、胸部、腹部、膝部、下肢部など)に作用する衝撃力を緩和しつつ乗員拘束を行う。この場合、加速度センサ110は、側突センサ130のセーフィングセンサとしての機能を果たす。
【0058】
以上のように、本実施の形態の乗員拘束システム100によれば、車両ドア10(車両)の側面衝突の際の側面衝突態様を、構造が簡素化された側突センサ130を用いて適正に判定することが可能となる。すなわち、本実施の形態の側突センサ130は、検出コイル130a及び慣性質量体140を主体とした構成ゆえ、複雑な機構や電子部品などを過度に用いる必要がない。また、この側突センサ130は、検出コイル130aを用いた非接触式であり、また衝撃にも強く衝撃に反応しないため、周辺環境に影響を受け難い等の特性を有するうえ、予め定められた回転平面(
図5中の回転平面A1)の軌道上を回転動作する慣性質量体140を検出コイル130aによって検出する構成ゆえ、慣性質量体140の回転動作態様の検出精度を高めるのに有効とされる。
【0059】
しかも、本実施の形態では、前述のように、慣性質量体140の回転平面A1と検出コイル130aのコイル延在平面A2が交差するとともに、慣性質量体140の延在幅w1が、検出コイル130aのコイル径w2を上回り、且つ慣性質量体140の延在幅w1内に検出コイル130a全体が配置される配置構造を採用することによって、シャフト部材141の延在方向に沿った方向に慣性質量体140のガタツキが生じた場合でも、検出コイル130aの所望の検出精度を確保することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態の乗員拘束システム100では、側突センサ130によって検出された情報と、加速度センサ110によって検出された情報の双方に基づいて、車両の側面衝突態様を判定するため、発生した側面衝突が車両乗員を即座に拘束する必要性の高いものであるか、或いは車両乗員を即座に拘束する必要性の低いないし必要性の無い軽微なものであるかを適正に判定することができ、これにより側面衝突態様の判定精度を更に高めるのに効果的である。
【0061】
また、上記実施の形態の側突センサ130は、ベース部材132に検出コイル130a及び慣性質量体140が一体状に組み付けられた単一のセンサモジュールを、当該センサモジュールごと取付けブラケット21を介してドアビーム20に対し取り付けることができるため、異なる車種の車両ドアに対して汎用性の高い側突センサを構築することが可能となる。
【0062】
また、ドアビーム20は、車両前後方向に関し車両ドア10の広い範囲にわたって延在していることから、このドアビーム20に側突センサ130を取り付けることによって、車両ドア10の広範囲にわたり側面衝突を安定して検出することが可能となる。例えば上記のように電柱等の衝突物200に対し車両が衝突する、いわゆるポール衝突のみならず、壁や別の車両等に対し自車両が衝突する、いわゆる「バリア衝突」と称呼される衝突態様の際においても、安定的な側面衝突検出を行なうことが可能となる。
【0063】
また、上記実施の形態によれば、側突センサ130によって検出された精度の高い情報を用いてエアバッグモジュール170が制御されることとなり、これによって車両乗員の拘束徹底が図られる。
【0064】
また、上記実施の形態の乗員拘束システム100を用いれば、側突センサ130によって検出された精度の高い情報を、エアバッグモジュール170をはじめ、車両に関する種々の制御対象の制御に用いる車両が提供されることとなる。
【0065】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0066】
上記実施の形態では、加速度センサ110によって検出された情報及び側突センサ130によって検出された情報の双方を、車両側面衝突の際に車両乗員の拘束を行うべく作動するエアバッグモジュール170の制御に用いる場合について記載したが、本発明では、加速度センサ110によって検出された情報及び側突センサ130によって検出された情報の双方を、シートベルト装置などの乗員拘束装置の制御や、車両側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置の制御などに用いることもできる。また、本発明では、少なくとも側突センサ130によって検出された情報、例えば側突センサ130によって検出された情報のみに基づいて、エアバッグモジュール170や、その他の制御対象を制御するように構成することができる。
【0067】
また、上記実施の形態の側突センサ130では、規定の加速度を上回る加速度がセンサハウジングに作用した場合に慣性質量体140が回転動作するように当該慣性質量体140に弾性付勢力を付与するコイルスプリング143を用いる場合について記載したが、本発明では、コイルスプリング143以外の弾性部材、例えば板バネ等を採用することもできる。また、コイルスプリング143のような弾性部材に代えて、側突センサ130に作用する加速度に応じて慣性質量体140の回転動作を阻止或いは許容する機構を採用することもできる。
【0068】
また、上記実施の形態では、導電体ないし磁性体としての慣性質量体140自体が検出コイル130aによって検出される場合について記載したが、本発明では、非導電体ないし非磁性体としての慣性質量体に、導電体ないし磁性体の被検出部を設け、当該被検出部が検出コイルによって検出される構成を採用することもできる。
【0069】
また、上記実施の形態では、自動車に装着される乗員拘束システムの構成について記載したが、自動車をはじめ、航空機、船舶、電車、バス、トラック等の各種の車両に装着される乗員拘束システムの構成に対し本発明を適用することができる。