(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平面視において、各第1及び第2の支持脚、旋回脚、並びに第1及び第2の駆動輪が、車体の左右に延出して配置してあることを特徴とする請求項1に記載の走行ロボット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の走行ロボットのうちの、とくに月や惑星での探査活動に用いるものでは、打ち上げロケットに搭載する都合上、小型軽量であることが望ましいうえに、遠隔地での運用であるから、走行性や動作の信頼性が高いことが非常に重要である。
【0006】
ところが、上記したような従来の走行ロボットにあっては、各駆動輪や各関節部にモータや回転駆動手段を設けて、これらを個別に制御する構造であるため、その分重量が増すと共に、制御も複雑になり易く、とくに月や惑星での探査活動に適用するものでは、小型軽量化や走行性及び信頼性のさらなる向上が要望されていた。
【0007】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、小型軽量化を図ることができると共に、走行性や信頼性のさらなる向上を実現することができ、月や惑星での探査活動に好適な走行ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の走行ロボットは、車体の前
部に、車体に対してロール軸回りに回動自在に連結され且つ車体左右方向に延出するサスペンションアームと、サスペンションアームの両端部に対してピッチ軸回りに回転駆動可能に設けた左右の第1支持脚
と、第1支持脚をピッチ軸回りに回転駆動する前部モータとを備えると共に、各第1支持脚に
、少なくとも一つの第1駆動輪
と、第1駆動輪を回転駆動するドライブ用モータとを夫々備えている。
【0009】
そして、走行ロボットは、車体
の後部に、車体に対してピッチ軸回りに回転駆動可能に設けた左右の第2支持脚と、
第2支持脚をピッチ軸回りに回転駆動する後部モータと、各第2支持脚に対してピッチ軸回りに回動自在に連結した旋回脚を備えると共に、各旋回脚の両端部に第2駆動輪を夫々備え、 旋回脚が、
別のドライブ用モータと、
そのドライブ用モータの出力を両第2駆動輪に伝達する動力伝達機構を備えている構成としており、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の走行ロボットによれば、サスペンションアーム及び旋回脚の回動部がフリー(回動自在)であるから、その分モータ類を削減して小型軽量化や制御の簡素化を実現することができ、制御の簡素化により動作の信頼性も高めることができる。また、上記のサスペンションアーム及び旋回脚の採用により、関節部を制御しなくても常に全ての駆動輪を接地させることができ、これに加えて他の関節部を制御すれば重心移動や様々な走行形態
が得られ、三点支持の要領で斜面を這い上がるように移動することができるので、月面のレゴリスで覆われた斜面であっても、スリップやスタックを起こすことなく登ることができる。これにより、走行性能のさらなる向上を実現することができ、月や惑星での探査活動に非常に好適なものとなる。さらに、走行ロボットは、旋回脚における二個の第2駆動輪を共通のドライブ用モータ及び動力伝達機構で回転駆動することにより、モータ類を削減してさらなる小型軽量化や制御の簡素化を実現する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の走行ロボットの一実施形態を説明する図である。図示の走行ロボットRは、車体Bの前部に、左右一つずつの
第1駆動輪Wfを備えると共に、車体Bの後部に、左右二個ずつの
第2駆動輪Wrを備えた六輪車である。なお、この走行ロボットRは、前後どちらの方向にも自由に走行することが可能であるが、便宜上、左右一つずつの
第1駆動輪Wfがある方を車体前部として説明する。
【0013】
走行ロボットRの車体Bは、その上部を開閉する回動扉51,51を備えると共に、その内部に、マニピュレータ52、レーザレンジファインダ53及び照明付カメラ54を設けたセンサアーム機構55、各種アンテナ56,57を備えている。マニピュレータ52やセンサアーム機構55等は、折り畳んだ状態で車体Bに収容してあり、回動扉51,51の開放後に、図示の如く外部に展開させる。また、回動扉51,51の裏面には、当該回動扉51の開放により展開される太陽電池パネル58やアンテナ59が設けてある。さらに、車体Bには、各機能部の制御機器、バッテリー及び放熱機構等が搭載してある。
【0014】
走行ロボットRは、車体Bの前部に、車体Bに対してロール軸回りに回動自在に連結され且つ車体左右方向に延出するサスペンションアーム1と、サスペンションアーム1の両端部に対してピッチ軸回りに回転駆動可能に設けた左右の
第1支持脚としての前部支持脚2,2を備えると共に、各前部支持脚2に
第1駆動輪Wfを夫々備えている。ロール軸は、車体前後方向に沿う水平軸であり、ピッチ軸は、車体左右方向に沿う水平軸である。
【0015】
また、走行ロボットRは、車体Bの後部に、車体Bに対してピッチ軸回りに回転駆動可能に設けた左右の
第2支持脚としての後部支持脚3,3と、各後部支持脚3に対してピッチ軸回りに回動自在に連結した旋回脚4を備えると共に、各旋回脚4の両端部に
第2駆動輪Wr,Wrを夫々備えている。旋回脚4における二つの
第2駆動輪Wr,Wrは、車体前後方向の配置である。
【0016】
図2〜
図4にも示すように、車体Bの前部において、その下面中央にはロール軸の軸受部5が設けてあり、この軸受部5に、サスペンションアーム1の中央が回動自在に連結してある。左右の前部支持脚2は、図示例ではL字形状を成していて、サスペンションアーム1の端部に設けた前部モータ6の出力軸に一端部が連結してあり、前部モータ6によりピッチ軸回りに回転駆動される。
【0017】
また、
前部支持脚2は、他端部側にブラケット7が設けてあり、このブラケット7に、垂直軸を介して
第1駆動輪Wfが設けてあると共に、
第1駆動輪Wfを垂直軸回りに回転駆動するステアリング用モータ8が設けてある。前部の各
第1駆動輪Wfは、ドライブ用モータ9が夫々設けてあり、個別に回転駆動することができる。
【0018】
車体Bの後部において、その下面左右両側には、後部モータ10が夫々設けてあり、各後部モータ10の出力軸に後部支持脚3の一端部が連結してある。後部支持脚3は、後部モータ10によりピッチ軸回りに回転駆動される。また、各後部支持脚3の他端部には、旋回脚4の中央が回動自在に連結してある。
【0019】
さらに、各旋回脚4には、両端部に設けた
第2駆動輪Wrに対して、ドライブ用モータ11と、ドライブ用モータ11の出力を両
第2駆動輪Wrに伝達する動力伝達機構12を備えている。後部の各
第2駆動輪Wrは、前部の駆動輪Wfのように個別のドライブ用モータを有するものではなく、各旋回脚4において、共通のドライブ用モータ11及び動力伝達機構12により回転駆動される。
【0020】
そして、走行ロボットRは、とくに
図4に示す平面視において、サスペンションアーム1、左右の前部支持脚2,2、各
第1駆動輪Wf、左右の後部支持脚3,3、旋回脚4,4及び各
第2駆動輪Wrが、車体Bの前後左右に延出する配置にしてある。
【0021】
上記構成を備えた走行ロボットRは、従来のように全ての関節部にモータや回転駆動手段を備えているのではなく、サスペンションアーム1及び旋回脚4の回動部がフリー(回動自在)であるから、その分モータ類を削減して小型軽量化を実現することができる。また、モータ類の削減により、制御の簡素化を実現して動作の信頼性もより高めることができる。
【0022】
さらに、走行ロボットRは、旋回脚4における二個の
第2駆動輪Wr,Wrを共通のドライブ用モータ11及び動力伝達機構12で回転駆動することによっても、モータ類を削減してさらなる小型軽量化や制御の簡素化を実現している。さらに、走行ロボットRは、
第2駆動輪Wf,Wrの一つが動作不良になった場合でも、ドライブ用モータをフリーにすることで動作可能な方式を採用することができる。
【0023】
さらに、走行ロボットRは、回動自在な上記のサスペンションアーム1及び旋回脚4の採用により、関節部を制御しなくても常に全ての駆動輪Wf,Wrを接地させることができる。また、他の関節部すなわち前部モータ6及び後部モータ10を制御して前部支持脚2や後部支持脚3を適宜の方向に回動させれば、後記するように、重心移動や様々な走行形態が得られる。これにより、走行性能のさらなる向上を実現することができ、月や惑星での探査活動に非常に好適なものとなる。
【0024】
ここで、従来の走行ロボットは、各駆動輪がドライブ用モータを備え、左右の駆動輪の回転方向を逆向きにして方向転換を行っていた。この場合には、各駆動輪に捩れ方向の力が働くので、高トルクのドライブ用モータが必要であり、その分重量の増大や大型化を招く虞があった。
【0025】
これに対して、本発明の走行ロボットRは、左右の前部支持脚2,2に、垂直軸を介して各
第1駆動輪Wfを設けると共に、ステアリング用モータ8を夫々設けており、ステアリング用モータ8により前部の
第1駆動輪Wfを垂直軸回りに回動させて方向転換を行う。このため、走行ロボットRは、六輪車でありながら優れた旋回性能を得ることができるうえに、小型のステアリング用モータでも円滑な旋回動作が可能であり、さらなる小型軽量化や走行性能の向上を実現することができる。
【0026】
走行ロボットRは、先にも述べたように月の探査活動にも好適である。月面は微細な粒子から成るレゴリスで覆われているので、走行ロボットは常にスタックの危険にさらされている。本発明の走行ロボットRは、フリーのサスペンションアーム1及び旋回脚4を採用しているので、常に六輪を接地させることが可能であって、機動性に優れている。しかも、走行ロボットRは、前後の各支持脚2,3を回動させることで、車高の増減や重心移動等を行って、地形に応じた様々な姿勢をとることが可能であるうえに、ウォーキングが可能であり、スタックからの脱出や障害物の回避を行うことができる。
【0027】
図5は走行形態の一例を説明する図であり、斜面を登る場合を例示している。図示例の場合は、図(A)に示す初期状態から、図(B)に示すように前部の一方の
第1駆動輪Wfを前進させ、次に、図(C)に示すように前部の他方の
第1駆動輪Wfを前進させる。この際、
第1駆動輪Wfの前進とともに前部支持脚2を前方に回動させる。これにより、重心が後方へ移動するので、その車体Bを後部の四つの
第2駆動輪Wrで保持する。その後、前部モータ6及び後部モータ10の駆動より、図(D)に示すように車体Bを前方に移動させる。そして、図(E)に示すように後部の一方の
第2駆動輪Wrを前進させ、次に、図(F)に示すように後部の他方の
第2駆動輪Wrを前進させる。この際、
第2駆動輪Wrの前進とともに後部支持脚3を前方に回動させる。
【0028】
このように、走行ロボットRは、三点支持の要領で斜面を這い上がるように移動することができ、月面のレゴリスで覆われた斜面であっても、スリップやスタックを起すことなく登ることができる。
【0029】
図6は走行形態の他の例を説明する図であり、障害物Qの回避を例示している。この場合には、後部支持脚3側を前部として走行する。
【0030】
この際、走行ロボットRでは、後部支持脚3に対して旋回脚4をピッチ軸回りに回動自在にしたので、図(A)に示すように、二つの
第2駆動輪Wr,Wrが、これらに外接する直径を有する一つの駆動輪と同等のものとなる。これにより、走行ロボットRは、
第2駆動輪Wrの直径ほどの高さの障害物Qであっても、図(B)に示すように、旋回脚4及び二つの
第2駆動輪Wrが一体的に回動して、障害物Qを乗り越えることができる。
【0031】
また、走行ロボットRは、車体Bに対してサスペンションアーム1をロール軸回りに回動自在にしたので、車体Bの移動に伴って、図(C)に示すように、サスペンションアーム1及び前部支持脚2が一体的に回動して、障害物Qを乗り越えることができる。
【0032】
ここで、走行ロボットRは、旋回脚4の回動、及びサスペンションアーム1の回動だけでも、障害物Qを乗り越えることが可能であるが、左右一方の駆動輪Wf,Wrで障害物Qを乗り越える場合、車体Bが横に大きく傾くことになる。そこで、走行ロボットRは、左右の後部支持脚3,3においては、障害物Qを乗り越える
第2駆動輪Wrの後部支持脚3を回動させることで、
図6(B)に示す如く車体Bをほぼ水平に維持することができる。
【0033】
他方、左右の前部支持脚2,2においては、障害物Qを乗り越えない
第1駆動輪Wfすなわちサスペンションアーム1の回動時に下位側となる
第1駆動輪Wfの前部支持脚2を回動させることで、
図6(C)に示す如く車体Bをほぼ水平に維持することができる。このように、走行ロボットRは、安定した姿勢で障害物Qを回避することができる。
【0034】
さらに、走行ロボットRは、平面視において、サスペンションアーム1、左右の前部支持脚2,2、各
第1駆動輪Wf、左右の後部支持脚3,3、旋回脚4,4及び各
第2駆動輪Wrが、車体Bの前後左右に延出する配置にしてあることから、
図3中の仮想線で示すように、車体Bの側部に
第1駆動輪Wfが沿うように前部支持脚2を回動させ、さらに、
第2駆動輪Wrが車体Bに近づくように後部支持脚3を回動させることで、
図7に示すように、コンパクトな折り畳み姿勢にすることができ、打ち上げロケットに搭載する際の収容効率を高めることができる。
【0035】
なお、上記実施形態の走行ロボットRは、便宜上、前部及び後部を区別して説明したが、どちらの方向にも自由に走行することが可能であり、斜面の走行や障害物の回避の際にあっても上記実施形態と逆向きに走行することも可能である。
【0036】
本発明の走行ロボットは、その構成が上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。例えば、前部支持脚に二つの駆動輪を設けた構成にしたり、左右の前部支持脚2,2及び左右の後部支持脚3,3のうちの少なくとも一方を左右同時に回動する構成にしたりすることができる。
【0037】
左右の支持脚2,3を連動させる構成とした場合には、モータ類をさらに削減して、さらなる小型軽量化や制御の簡素化を図ることができ、さらに、前部支持脚2,2の回動及び
第1駆動輪Wfの前進と、後部支持脚3,3の回動及び
第2駆動輪Wrの前進とを交互に繰り返すような走行形態も可能である。