(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666198
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】水素調理装置
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20150122BHJP
F23D 14/82 20060101ALI20150122BHJP
F23D 14/84 20060101ALI20150122BHJP
A47J 37/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
F23K5/00 301Z
F23D14/82 D
F23D14/84 H
A47J37/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-181417(P2010-181417)
(22)【出願日】2010年8月13日
(65)【公開番号】特開2012-42068(P2012-42068A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2013年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】512129217
【氏名又は名称】株式会社TI
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−253017(JP,A)
【文献】
特開2008−045199(JP,A)
【文献】
実開平07−038936(JP,U)
【文献】
実開昭59−007037(JP,U)
【文献】
特表平08−500425(JP,A)
【文献】
特開2000−356317(JP,A)
【文献】
特公平03−027812(JP,B2)
【文献】
特許第3488634(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00− 5/22
F23D14/72−14/84
A47J37/00−37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を供給する水素供給源と、この水素供給源からの送り出し圧力を調整する圧力調整弁と、水素を燃焼させるための水素ガスバーナと、このガスバーナと水素ボンベ間に設けガスバーナの炎が戻らないようにするための逆火防止装置とを有し、前記ガスバーナは、食品の炙り面を形成し、この炙り面に食品が置かれており、前記ガスバーナのノズル径を0.6mm〜1.6mmとした水素調理装置。
【請求項2】
前記炙り面に金網が置かれ、この金網上に食品が置かれて炙られる請求項1記載の水素調理装置。
【請求項3】
前記水素ガスバーナは火力が食品の炙り面に均一になるようにノズル径を位置によって変化させるようにし、前記ノズル径は水素ガスの流路の上流側から水素ガスの流れの下流側に向かって漸増させた請求項1記載の水素調理装置。
【請求項4】
水素ボンベから供給される水素ガスに炎色反応を起こさせるように炎識別手段を設けてなる請求項1記載の水素調理装置。
【請求項5】
前記炎識別手段は、前記逆火防止装置とガスバーナとの間に設けた炎色剤タンクであり、この炎色剤タンクを通って水素ガスバーナに供給される請求項3記載の水素調理装置。
【請求項6】
前記炎識別手段は、SUS304の容器内に水酸化ナトリウムを入れ容器を300〜500℃に加熱して水蒸気を供給し水素を発生させる水素発生装置であり、この水素発生装置から発生した水素は水酸化ナトリウムの微細粒子を含み、この水素を水素ボンベを介してガスバーナに供給するようにした請求項3記載の水素調理装置。
【請求項7】
前記炎識別手段は、ガスバーナ上に設けられ水素炎によって赤くなる金属メッシュからなる請求項3記載の水素調理装置。
【請求項8】
前記ガスバーナ内の水素流通空間に空気の溜まりができないようにグラスファイバー、金属メッシュ等の空気溜まり形成防止手段が設けられている請求項1記載の水素調理装置。
【請求項9】
前記水素ガスバーナは逆円錐台状で多数のノズルが形成されたノズル形成体と、このノズル形成体を受ける椀形の受体とからなり、この受体の底部に水素供給口が臨まされ、前記ノズル形成体はその底部に前記水素供給口に対向した小さな凹みを有し、この凹みから放射状に細溝が形成され、この細溝にノズル穴をノズル形成体の軸方向に形成し、前記ノズル穴をノズル形成体の上面に開口せしめてなる請求項1記載の水素調理装置。
【請求項10】
浅い円盤状でノズルが形成されたノズル形成体と、このノズル形成体を受ける円筒状の受け体とからなり、前記ノズル形成体の底部中央に小凹みを形成し、この小凹みに水素供給管から水素を供給し、この小凹みから放射状に細溝を形成し、この細溝にノズルを連通させた請求項1記載の水素調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を燃焼させて調理する水素調理装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃焼させた場合に、水蒸気となり炭酸ガスを排出しないので、地球環境には好適であるが、空気(酸素)と混合すると爆鳴するという危険性があり、一般調理用には全く使用されていなかった。しかしながら、本件発明者は水素発生装置を作成中に十分なる安全装置を備えれば、一酸化炭素中毒がなく食品からの水分の流出が少ない水素調理が可能であるとの知見を得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2009−120757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この知見に基づいて、逆火が全くなく、しかも水素の燃焼は目視できないので炎に色を付着させ、更に均一な燃焼
を確保できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の水素調理装置は、水素が加圧貯溜された水素ボンベと、この水素ボンベからの送り出し圧力を調整する圧力調整弁と、水素を燃焼させるための水素ガスバーナと、このガスバーナと水素ボンベ間に設けガスバーナの炎が戻らないようにするための逆火防止装置とを有し、前記ガスバーナのノズル径を0.6mm〜1.6mmとした。
【0006】
また、前記水素ガスバーナは火力が食品の炙り面に均一になるようにノズル径を位置によって変化させるようにし、前記ノズル径は水素ガスの流路の上流側から水素ガスの流れの下流側に向かって漸増させるようにすることが好ましい。
【0007】
更に、また、水素ボンベから供給される水素ガスに炎色反応を起こさせるように炎識別手段を設けることが好ましい。
【0008】
更に、また、前記炎識別手段は、前記逆火防止装置とガスバーナとの間に設けた炎色剤タンクであり、この炎色剤タンクを通って水素ガスバーナに供給されることが好ましい。
【0009】
更に、また前記炎識別手段は、SUS304の容器内に水酸化ナトリウムを入れ容器を300〜500℃に加熱して水蒸気を供給し水素を発生させる水素発生装置であり、この水素発生装置から発生した水素は水酸化ナトリウムの微細粒子を含み、この水素を水素ボンベを介してガスバーナに供給するようにすることが好ましい。
【0010】
更に、また前記炎識別手段は、ガスバーナ上に設けられ水素炎によって赤くなる金属メッシュからなることが好ましい。
【0011】
更に、また前記ガスバーナ内の水素流通空間に空気の溜まりができないようにグラスファイバー、金属メッシュ等の空気溜まり形成防止手段が設けられていることが好ましい。
【0012】
更にまた、前記水素ガスバーナは逆円錐台状で多数のノズルが形成されたノズル形成体
と、このノズル形成体を受ける椀形の受体とからなり、この受体の底部に水素供給口が臨まされ、前記ノズル形成体はその底部に前記水素供給口に対向した小さな凹みを有し、この凹みから放射状に細溝が形成され、この細溝にノズル穴をノズル形成体の軸方向に形成し、前記ノズル穴をノズル形成体の上面に開口せしめてなることが好ましい
。
【発明の効果】
【0013】
ガスバーナの燃焼中に、空気(酸素)が水素流路中に入らないようにするためには、ノズル径が重要であり、余りにも細いと十分な量の水素が出ないし、ノズル径が大きいとノズル出口の周囲の空気が流路中に入り逆火を起こすので、ノズル径は0.6mm〜1.6mmとするのがよいことが実験の結果判明した(請求項1)。
【0014】
また、ガスバーナの水素の流れの上流側は圧力が高いので水素が多くノズルから流出するが、水素の流路の下流側は圧力がひくいのでノズルから流出する水素量が減少する。従って、流路の上流側のノズル径を小とし、下流側のノズル径を大とするように上流側から下流側に向かってノズル径を漸増させれば食品の炙り面の火力が均一となる(請求項2)。
【0015】
水素ガスの炎は完全燃焼すると透明であり、目視できないので、目で見えるように炎を炎色反応させるようにした炎識別手段を設ければ、火傷を防ぐことができ(請求項3)、この炎識別手段としては、カセイソーダ等の炎色剤を収納した炎色剤タンクであり(請求項4)、水酸化ナトリウムを用いた水素発生装置であれば、ナトリウムの炎色反応を起こさせることができ(請求項5)、バーナ上に設けた金属メッシュであれば、メッシュが赤くなるので目視できる(請求項6)。
【0016】
なお、水素流路中には、空気が溜まる溜まり場を作らないことが重要で、流路中にグラスファイバー、金属メッシュを入れれば、かかる溜まり場がなくなるとともに、戻ろうとする炎を遮断でき、バックファイヤーが有効に防止できる(請求項7)。
【0017】
また、円形に水素炎を出す時は、逆円錐状のノズル形成体を受体内に収納し、ノズルをノズル形成体の軸方向に形成すると空気溜まりもなく、ノズル形成体は逆円錐台状でノズルはその軸方向にある長さ以上に亘って形成されているので逆火が有効に防止される(請
求項8)
。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】水素調理装置に使用される水素発生装置の概略構成図である。
【
図3】水素調理装置の一部をなすガスバーナの平面図である。
【
図5】ガスバーナの他の実施例を示す斜視図である。
【
図6】ガスバーナの更に他の実施例を示す平面図である。
【
図7】
図6のガスバーナの燃焼部の一部を示す上面図である。
【
図8】
図6のガスバーナの燃焼部の横断面図である。
【
図9】ガスバーナの更に他の実施例を示す斜視図である。
【
図10】
図9に示すノズル形成体の上面側の斜視図である。
【
図12】
図9に示すノズル形成体の受体を示す斜視図である。
【
図13】ガスバーナの更に他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1において、本発明の水素調理装置Hは、水素を高圧で貯溜しておくための水素ボンベ1を備え、この水素ボンベ1は、流出する水素の圧力を調節するための圧力調整弁2を備え、この圧力調整弁2を流失した水素は水タンクからなる逆火防止装置3を経てカセイソーダの粉末等が封入された炎識別手段としての炎色剤タンク4に流入する。
【0021】
一方、炎色剤タンク4は調理台5に連なり、この調理台5はフレーム6とこのフレーム6を支持する脚7を備え、フレーム6内にはガスバーナ8が載置され、このガスバーナ8上に金網9が設けられ、この金網9上に灸られる食品10が載せられている。
【0022】
また、水素の炎は完全燃料時には透明で目視できないので、金網9とガスバーナ8間に炎識別手段としてのステンレスの金属メッシュ11を設け、この金属メッシュは水素により加熱されたとき赤くなるので、調理人が水素燃焼を認識して火傷を有効に防止するようにできる。
【0023】
また、炎識別手段としては、
図2に示すような水素発生装置20を設け、この水素発生装置20から流出する水素にカセイソーダの微粉末を混ぜ、それを加圧ポンプ21を介して前記水素ボンベ1に貯溜させガスバーナ8にその水素を供給するようにしてもよい。なお、この場合には、前記発色剤タンク4は不要となる。
【0024】
前記水素発生装置20は、角筒状のケーシング22を有し、このケーシング21内の端部近傍には蒸気室23が設けられ、この蒸気室23に水タンク24からの水が水ポンプ25を介して一定量送り込まれるようになっている。
【0025】
一方、前記ケーシング22は、SUS304(Cr18−Ni8−残Fe)からなり、蒸気室23は反応剤室24に連なり、この反応剤室24には水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物(反応剤25)が収納され、この反応剤25には、SUS304からなるフィン26が浸漬されており、このフィン26及びケーシング22の内壁が反応剤25に接触し、且つ、反応剤25の液面上から飛散する微細粒子群Pと流入する水蒸気とが衝突して水素が発生し、この水素が微細粒子群Pの一部とともに水素ボンベ1内に貯留され、この水素をガスバーナ8で燃焼すると、ナトリウムNaの炎色反応が起こる。なお、前記反応剤25は、図示しないヒータによって300〜500℃に加熱されている。
【0026】
前記ガスバーナ8は、
図3に示すように複数の燃焼筒8a、8a…8aを結合したものであり、根元管8bからの水素が分散管8cを介して、この分散管8cにその軸方向に所定間隔で設けた燃焼筒8aに供給される。この燃焼筒8aには、
図4に示すように多数の細孔(直径1mm程度)h、h…hが設けられ、この燃焼筒8aの中空部分の水素流通空間には、外部の空気が流入して空気溜りができないようにグラスファイバー又は金属メッシュ等の空気溜り形成防止手段30が設けられている。
【0027】
なお、ガスバーナ8は、
図5に示すような面状バーナ40であってもよく、この面状バーナ40は、水素管41と、この水素管41が接続される分散部42と面状の本体43とを有し、この本体43は、仕切板44によって上下に仕切られ、本体上面には多数の細孔h、h…hが形成されている。水素は、分散部42から仕切板44の下方を通ってその上方に向かい、前記細孔hの直径は水素の流れの上流側USから下流側DSに向かって次第に大きくなるように形成され、ガス圧が高い部分(US側)は細孔の径を小さくし、ガス圧が低い部分(DS側)は、細孔の径を大きくして細孔から流出するガス量をほぼ均一とするようにしている。
【0028】
前記ガスバーナ8の細孔の直径は、水素を安定して燃焼させ逆火を起こさせずに全ての細孔から均一に水素を流出させるのに極めて重要である。なお、一般にガスバーナに供給される時の水素のガス圧は1〜2気圧であり、例えば、
図6に示すガスバーナ50においては、根元管51に設けたバルブ52のコック53の開度により燃焼部54のガス圧は若干変化するが、1〜2気圧程度の範囲の変化は細孔hの直径を定めるものに大きな影響を与えない。前記燃焼部54は、連続形状とし、連続管の中央部を凹ませて、両端管54a、54aと中央管54b、54bを形成してある。
【0029】
前記両端管54aと中央管54bは、
図7、8に示すように、外径13.8mm、内径9.8mm、肉厚2mmのステンレス管であり、この管の上部に円筒方向幅8mmの間隔で対の細孔hを形成し、対間の間隔は10mmで燃焼部の各管の長さは280mmで各管には54個(27対)の細孔が形成されている。
【0030】
このような寸法関係で前記コック53を適宜調整しつつ細孔の直径を変化させてみた。なお、レーザでは0.2mmの細孔が形成できるが、それ以外の径はドリルで形成した。以下、角径との炎の関係を以下に示す。
【0031】
細孔径 結 果
0.2mm 火力が弱く不十分
0.4mm 〃
0.6mm 火力がやや弱く、均一性にかけるが使用可能
0.8mm 〃
1.0mm 火力も十分で均一加熱可能
1.2mm 〃
1.4mm 火力は十分であるが均一性がやや乏しいが使用可能
1.6mm 〃
1.8mm 火力が出すぎて均一性に欠ける。
2.0mm 管の中で逆火が起きて使用不可能
【0032】
以上の実験結果から1〜2気圧のガス圧の下では、細孔の径は0.6mm〜1.6mm程度が好ましく、特に1mmが最も好ましいことが判明した。
【0033】
次にやかん、なべ等を加熱するための円形火炎を作るためのガスバーナ50について、
図9〜12を参照して説明する。前記ガスバーナ50は、逆円錐台状のノズル形成体51と、このノズル形成体51を着脱自在に受ける椀形の受体52とからなり、ノズル形成体51は20mm以上の高さを有し、その底面には小凹み53(
図11)が形成され、この小凹み53から放射状に細溝54、54…54が底面及び傾斜側面に沿って形成され、この細溝54に所定間隔で1mmの直径のノズル穴55、55…55が形成されている。このノズル穴55は、ノズル形成体の上面に開口しており、ここから炎が均一に流出する。前記ノズル形成体51は20mm以上の高さを有しているので、その軸方向に伸びるノズル穴の長さも10mm以上となり、外部からの空気の流入を防止して炎を切断するので逆火は全く起こらない。前記ノズル形成体51の底面の小凹みに対応して、受体52の底面には、水素供給口56が臨まされ、この水素供給口56は筒体57に形成されている。水素供給口56から流入した水素は、ノズル形成体51の小凹み53を経て細溝54に流入して、細溝54に開口しているノズル穴55を通ってノズル形成体51の上面から流出し、ここで着火して炎となる。このような構造で空気が溜まる場所がないので逆火は起こらない。
【0034】
図13は成形が容易なガスバーナ140を示し、このガスバーナ140は浅い円筒状の受体130内に円板状のノズル形成体131を係合せしめ、このノズル形成体131の底面中央には小凹み132が設けられている。この小凹み132には水素供給管135から水素が供給され、この小凹み132からは放射状に細溝136が伸び、その最先端は出口133に開口している。また、細溝136の中間からは直径が1mm程度のノズル134、134…134が伸びている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の水素調理装置は、業務用又は家庭用の加熱手段として使用可能であり、肉、魚を焼いたり、湯わかしに使用できる。
【符号の説明】
【0036】
1…水素ボンベ
3…逆火防止装置
4…炎色剤タンク
5…調理台
8…ガスバーナ
9…金網
11…金属メッシュ
20…水素発生装置
24…水タンク
30…溜り形成防止手段
40…面状バーナ
50…ガスバーナ