(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算手段は、前記眼底撮像光学系により撮像された眼底像において前記刺激領域の位置情報を取得し、前記刺激領域における相対的な輝度の変化を求めることを特徴とする請求項2記載の視機能検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置の場合、刺激後の眼底像を得る際、眼底全体に照明光を照射したときの反射像を撮像していたため、内因性信号には、照明光による刺激の影響が含まれていた。また、内因性信号を取得する場合、時間的な輝度変化を利用するしかなかった。
【0005】
本発明は、上記従来技術を鑑み、眼底上における視細胞の感度を好適に評価できる視機能検査装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)
被検眼眼底からの光束を受光素子により受光して眼底像を撮像する眼底撮像光学系と、
被検者眼眼底における前記眼底撮像光学系の撮像範囲内において刺激領域と非刺激領域が形成されるように網膜刺激光を照射する刺激光照射光学系と、
前記刺激光照射光学系を制御して前記
網膜刺激光を眼底に照射し、
前記網膜刺激光の照射後、眼底に光を投光せず、眼底から自発的に発せられる光を前記受光素子を用いて受光し、前記受光素子からの出力信号に基づいて
前記網膜刺激光の照射後の眼底像を取得する撮像制御ユニットと、
前記眼底撮像光学系により撮像された眼底像の輝度分布を解析して被検眼の視機能を計測する演算手段と、
を備えることを特徴とする。
(2)
前記刺激光照射光学系は、刺激領域と非刺激領域が交互に形成されるように前記眼底上の一部に
前記網膜刺激光を照射することを特徴とする請求項1記載の視機能検査装置。
(3)
前記演算手段は、前記眼底撮像光学系により撮像された眼底像において前記刺激領域の位置情報を取得し、前記刺激領域における相対的な輝度の変化を求めることを特徴とする(2)記載の視機能検査装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視細胞の感度を好適に評価できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る視機能検査装置の光学系及び制御系について示す概略構成図である。
図2は網膜刺激光として眼底に照射する二次元パターン像の一例を示す図である。
図3は網膜を刺激したときの眼底像の一例を示す図である。なお、図番号は、参照番号であり、図示の構成に限定されない。
【0010】
本装置の光学系は、網膜刺激光として二次元パターン像を被検者眼Eの眼底Ef上に照射する刺激光照射光学系100と、眼底Efからの光束を受光素子206により受光して眼底像を撮像する眼底撮像光学系200と、を有する。導光光学系300(例えば、ダイクロイックミラー、対物レンズなど)は、照射光学系100の光を眼底に導光し、眼底からの光を撮像光学系200に導光する。
【0011】
演算制御部80は、照射光学系100を制御してパターン像を眼底Efに投影する。また、演算制御部80は、撮像光学系200を制御して受光素子206からの出力信号に基づいて眼底像を取得する。
【0012】
例えば、照射光学系100は、光源102から出射された光の進行状態を制御する光制御デバイス104(例えば、マイクロミラーデバイス、液晶パネル)を有し、演算制御部80は、光制御デバイス104を制御して、眼底Ef上にパターン像を照射する。また、照射光学系100の光路中において、パターン像に対応する開口が形成された遮光板が配置された構成であってもよい。
【0013】
撮像光学系200は、眼底からの光束を受光素子206に入射させる受光光学系を備える。例えば、撮像光学系200には、眼底からの光束の進行方向を変化させる光スキャナ204が配置される。光スキャナ204には、例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、マイクロミラーデバイス、音響光学偏向素子などが考えられる。このような場合、受光素子206として、例えば、単一の受光面を持つ受光素子(ラインスキャンの場合、一次元CCDが用いられる)が設けられる。なお、光スキャナを用いず、二次元撮像素子を用いて眼底像を取得してもよい。また、撮像光学系200に、液晶パネルが設けられる場合も有りうる。
【0014】
撮像光学系200は、刺激光の照射後、眼底に照明光を投光せず、刺激光により眼底から自発的に発せられる光を受光する。これにより、眼底像を得る際に網膜が刺激されないので、刺激光による反応が精度良く検出される。撮像光学系200には、所定の波長の光を選択的に透過する光フィルタが適宜配置される。
【0015】
眼底に投影される指標について、例えば、
図2(a)の縦縞パターン、
図2(b)の多重リングパターンなどの幾何学模様のような指標が投影される。また、自覚視力検査に用いられる検査視標(例えば、ランドルト環)などが投影されるようにしてもよい。すなわち、眼底Efにおける撮像光学系200の撮像範囲に対応する領域において、刺激領域と非刺激領域が形成されるように眼底上の一部に刺激光が照射される。
【0016】
また、投影視標は、時間的に変化する動的指標であってもよいし、静的な指標であってもよい。動的指標の場合、指標の位置、色、明るさ、形状などが時間的に変化される。例えば、指標の明暗が交互に変更され、又は指標の投影位置が順次変更される。指標は、連続的又は段階的又は断続的に変化される。これにより、眼底Ef上における刺激光の照射領域と非照射領域が時間的に変化される。この場合、撮像光学系200による撮像範囲に対応する眼底領域に刺激光が照射されるように投影位置が制御されることにより、結果的に広範囲の検査が可能となる。
【0017】
刺激光の照射波長が制御され、指標の色が変化されることにより、ある波長に感度を有する特定の視細胞への刺激が可能となる。例えば、赤色光が照射されると、赤色に感度を持つ細胞(長波長錐体)が刺激される。この場合、光源202として、各波長に対応する光源がそれぞれ配置される。もしくは白色光と波長選択フィルタの組み合わせにより指標の色が設定される。
【0018】
刺激光の照射光量が制御され、指標の明るさが変化されることにより、明るさの変化による視細胞の反応の違いが計測される。また、視細胞の感度に応じて明るさが調整される。例えば、反応が悪い視細胞領域において強い刺激光が照射されることにより、視細胞の生死がより詳しく検査される。
【0019】
演算制御部80は、撮像光学系200により撮像された眼底像の輝度分布を解析して眼Eの視機能を計測する。光制御デバイス104による刺激光の照射位置と光スキャナ204による走査位置との関係は予め設定されており、撮像された眼底像における刺激領域の位置情報(照射位置情報)と非刺激領域の位置情報が得られる。また、演算制御部80には、上記光学系の構成に加えて、メモリ72、操作部74、表示モニタ75、などが接続されている。メモリ72は、例えば、取得された眼底像を連続的に蓄積できる。操作部74は、検者の操作に応じた操作信号を出力し、例えば、眼底投影指標が設定され、又は、刺激を経て眼底像を得るモードと刺激なしに眼底像を得るモードとの間でモードが切換えられる。モニタ75には、アライメント画面、視機能の検査結果などが表示される。
【0020】
例えば、演算制御部80は、撮像された眼底像における刺激領域と非刺激領域の相対的な輝度を求める。
【0021】
また、演算制御部80は、眼底像を経時的に取得し、刺激領域における相対的な輝度の変化を求める。また、演算制御部80は、眼底像を経時的に取得し、非刺激領域における相対的な輝度の変化を求める。
【0022】
演算制御部80は、輝度の変化のある領域又は変化がない領域を特定する。このとき、演算制御部80は、例えば、時系列の輝度情報を解析する。例えば、輝度分布に関する時系列の変化量、変化率、変化速度が計測される。例えば、演算制御部80は、輝度レベルを複数段階に分けてグラフィック表示し、異なる時間の輝度情報を同時に表示する(
図3参照)。
【0023】
図3は、
図2(a)の縦縞パターンが刺激光として投影されたときの輝度分布の時間変化を示す例である。なお、刺激光による自発蛍光は、数秒から数十秒間において発生される。
図3において、ハッチングのピッチ数が多い部分(H1)は、通常の反応を示す領域(Hs)に比べて輝度レベルが異常に大きい部分を示している。これは、眼疾患(例えば、浮腫)により視細胞が大きく反応するような場合に生じる。
【0024】
一方、ハッチングのピッチが少ない部分(H2)は、通常の反応を示す領域(Hs)に比べて輝度レベルが小さい部分を示している。これは、眼疾患(例えば、視野欠損)により視細胞の反応が低い場合に生じる。
【0025】
また、ハッチングがない部分(H0)は、輝度レベルがゼロ又はバックグラウンドに近い輝度であることを示している。これは、何らかの原因により視細胞が死んだ状態である場合に生じる。
【0026】
演算制御部80は、取得された眼底像における非刺激領域の輝度レベルを検出し、これを刺激領域の輝度レベルと比較する。これにより、刺激領域と非刺激領域との相対的な輝度変化が検出される。すなわち、非刺激領域における輝度レベルは、網膜が刺激されていない領域の輝度レベルとして判断材料として利用されうる。
【0027】
また、刺激光領域で視細胞が反応したときの非刺激領域での視細胞の内因性信号の取得に利用されうる。この場合、
図2に示すように刺激領域と非刺激領域が交互に形成されるような刺激光の場合、刺激領域に挟まれた非刺激領域での信号が得られる。なお、互いに隣接する刺激領域と非刺激領域における輝度情報が比較されることにより、眼底のある部分における局所的解析が可能となる。
【0028】
上記相対的な輝度変化について、正常眼における変化量がデータベースとしてメモリ72に予め記憶され、正常眼における変化量と眼Eの変化量とを比較され、比較結果が出力されるようにしてもよい。また、演算制御部80は、撮像された複数の眼底像に対して加算平均などの画像処理を行い、画像のコントラストを改善するようにしてもよい。
【0029】
以上示したように、刺激領域と非刺激領域が形成されるように網膜刺激光を照射し、その後、眼底から自発的に発せられる光を撮像光学系200により受光することにより、一枚の眼底像において網膜が刺激された領域と網膜が刺激されなかった領域の情報が取得される。このため、経時的に画像を取得しなくとも、視機能の他覚的検査が可能となる。
【0030】
<マイクロミラーデバイス、若しくは液晶パネルの利用>
以下に、照射光学系100及び撮像光学系200の一例を示す。
図4は眼底共役位置にマイクロミラーデバイスを配置した場合の図である。照射光学系100は、光源10(レーザダイオード、LEDなど)、コンデンサレンズ12、マイクロミラーデバイス14、対物レンズ16を備える。
【0031】
マイクロミラーデバイス14は、半導体基板上においてマイクロミラーが数十万〜数百万単位で分離して配置されたものであり、各マイクロミラーがそれぞれ独立して駆動される。このとき、各マイクロミラーを駆動させる各駆動部に対して印加電圧が制御されることにより、マイクロミラーは光を所定方向に偏向させる。そして、演算制御部80は、マイクロミラーデバイス14の駆動を制御し、各マイクロミラーにおいて光源10からの光を眼底に導光するか否かを制御する。
【0032】
マイクロミラーデバイス14の各マイクロミラーは、対物レンズ16に関して眼底Efと略共役な位置に配置されている。ここで、各マイクロミラーの反射面が平らに配置された構成であってもよいし、眼底の湾曲形状に合わせて各マイクロミラーの反射面が湾曲に配置された構成であってもよい。ここで、各マイクロミラーは眼底共役位置に配置されているから、各マイクロミラーの反射角度の制御によって、眼底上における刺激光の照射位置、照射パターンが直接的に任意に制御される。これにより、
図2のような二次元パターンが眼底上に同時に投光され、網膜刺激が同時に行われる。また、各マイクロミラーの反射角度が経時的に変化されることにより、刺激光として動的指標が眼底に投影される。
【0033】
撮像光学系200は、対物レンズ16、マイクロミラーデバイス14、ビームスプリッタ18(例えば、ハーフミラー)、レンズ20、ピンホール板22、レンズ23、受光素子24(例えば、APD:アバランシェフォトダイオード)を備える。
【0034】
刺激光の照射後、演算制御部80は、マイクロミラーデバイス14の駆動を制御し、各マイクロミラーにおいて眼底からの光を受光素子24に導光するか否かを制御する。そして、演算制御部80は、マイクロミラーデバイス14を用いて眼底からの光を二次元的に制御し、眼底像を得る。例えば、X方向に並べられたミラーの反射角度が順次制御されることにより、眼底からの光を取得する位置がX方向に走査される。そして、Y方向のある位置に並べられたミラーの走査(主走査)が完了されると、Y方向に関するミラーの制御位置が次の位置に変更される(副走査)。そして、Y方向において次の位置に並べられたミラーに関して、同様に主走査が行われる。このようにしてY方向に関するミラーの制御位置が上方向から下方向に順次変更されていき、1フレーム分の眼底画像が取得される。そして、眼底像を連続的に取得する場合、上記動作が繰り返し行われる。
【0035】
なお、眼底像を取得した後の動作については、上記の手法と同様であるため、説明を省略する。また、上記構成においては、マイクロミラーデバイス14が照射光学系100と撮像光学系200の共通光路に配置され、マイクロミラーデバイスが刺激光の照射制御と眼底からの光の取得制御を兼用した。これにより、例えば、装置が小型化される。また、刺激光の照射位置と眼底像との対応付けが容易となる。ただし、上記に限定されるものではなく、少なくとも刺激光の照射にのみマイクロミラーデバイスが利用されるようにしてもよい。
【0036】
図4は眼底共役位置に液晶パネルを配置した場合の図である。照射光学系100は、光源10(レーザダイオード、LEDなど)、コンデンサレンズ12、液晶パネル26、対物レンズ16を備える。
【0037】
液晶パネル26は、二次元的に画素(ドット)が配列されており、背後から入射される光の遮光と透過が各画素毎に演算制御部80によって制御される。液晶パネル26の各画素に対応する印加電圧が制御されることにより、遮光と透過が制御される。そして、演算制御部80は、液晶パネル26の駆動を制御し、各画素において光源10からの光を眼底に導光するか否かを制御する。
【0038】
液晶パネルは、対物レンズ16に関して眼底Efと略共役な位置に配置されている。液晶パネルは、マイクロミラーデバイスと同様に、フラットな形状であってもよいし、湾曲形状であってもよい。
【0039】
ここで、液晶パネルは、眼底共役位置に配置されているから、各画素の制御によって、眼底上における刺激光の照射位置、照射パターンが直接的に任意に制御される。これにより、
図2のような二次元パターンが眼底上に同時に投光され、網膜刺激が同時に行われる。また、遮光/透過の位置が経時的に変化されることにより、刺激光として動的指標が眼底に投影される。
【0040】
撮像光学系200は、対物レンズ16、液晶パネル26、ビームスプリッタ18(例えば、ハーフミラー)、レンズ20、ピンホール板22、レンズ23、受光素子24(例えば、APD:アバランシェフォトダイオード)を備える。
【0041】
刺激光の照射後、演算制御部80は、液晶パネル26の駆動を制御し、各画素において眼底からの光を受光素子24に導光するか否かを制御する。そして、演算制御部80は、液晶パネルを用いて眼底からの光を二次元的に制御し、眼底像を得る。例えば、X方向に並べられた画素が順次制御されることにより、眼底からの光を取得する位置がX方向に走査される。そして、Y方向のある位置に並べられた画素の走査(主走査)が完了されると、Y方向に関する画素の制御位置が次の位置に変更される(副走査)。そして、Y方向において次の位置に並べられた画素に関して、同様に主走査が行われる。このようにしてY方向に関する画素の制御位置が上方向から下方向に順次変更されていき、1フレーム分の眼底画像が取得される。そして、眼底像を連続的に取得する場合、上記動作が繰り返し行われる。
【0042】
なお、眼底像を取得した後の動作については、上記の手法と同様であるため、説明を省略する。また、上記構成においては、液晶パネル26が照射光学系100と撮像光学系200の共通光路に配置され、液晶パネル26が刺激光の照射制御と眼底からの光の取得制御を兼用した。これにより、装置が小型化される。また、刺激光の照射位置と眼底像との対応付けが容易となる。ただし、上記に限定されるものではなく、少なくとも刺激光の照射にのみ液晶パネルが利用されるようにしてもよい。