特許第5666218号(P5666218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5666218マスクブランク、転写用マスク、および転写用マスクセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666218
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスク、および転写用マスクセット
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/50 20120101AFI20150122BHJP
   G03F 1/58 20120101ALI20150122BHJP
   G03F 1/46 20120101ALI20150122BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   G03F1/50
   G03F1/58
   G03F1/46
   H01L21/30 514A
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2010-200543(P2010-200543)
(22)【出願日】2010年9月8日
(65)【公開番号】特開2011-100108(P2011-100108A)
(43)【公開日】2011年5月19日
【審査請求日】2013年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2009-232176(P2009-232176)
(32)【優先日】2009年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 靖
(72)【発明者】
【氏名】打田 崇
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0246647(US,A1)
【文献】 特開2006−146152(JP,A)
【文献】 特開2006−146151(JP,A)
【文献】 特開2007−033470(JP,A)
【文献】 特開2007−163867(JP,A)
【文献】 特開2007−233179(JP,A)
【文献】 特開2008−294352(JP,A)
【文献】 特開2002−184669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ArF露光光が適用されるバイナリ型の転写用マスクを作製するために用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、基板側から、遮光膜と、補助遮光膜とをこの順に備え、
前記遮光膜は、遮光層と表面反射防止層の積層構造を有し、
前記遮光膜は、転写パターンを形成するためのものであり、
前記補助遮光膜は、遮光帯パターンを形成するためのものであり、かつ前記遮光膜との積層構造で遮光帯を形成するためのものであり、
前記遮光膜の光学濃度が2.5以上3.1以下であり、かつ、前記補助遮光膜の光学濃度が0.5以上1.5以下である、
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
ダブル露光技術が適用される転写用マスクを作製するために用いられることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記補助遮光膜は、前記遮光膜をエッチングする際に用いられる、エッチング媒質に対してエッチング選択性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記遮光膜は、クロムを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記遮光膜は、タンタルを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記遮光膜と前記補助遮光膜の間に、これらの膜をエッチングする際に用いられるエッチング媒質に対してエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を設けることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、さらにクロムを主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする請求項に記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、クロムを主成分とする膜であり、さらに遷移金属とケイ素を主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする請求項に記載のマスクブランク。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載のマスクブランクを用いて作製される転写用マスク。
【請求項11】
ArF露光光が適用されるバイナリ型の転写用マスクであって、
透光性基板上の転写パターン領域に、遮光膜で形成される転写パターンを有し、
転写パターン領域の外側の領域に、基板側から、前記遮光膜と遮光帯パターンを有する補助遮光膜との積層構造で形成される遮光帯を有し、
前記遮光膜は、遮光層と表面反射防止層の積層構造を有し、
前記遮光膜の光学濃度が2.5以上3.1以下であり、かつ、前記補助遮光膜の光学濃度が0.5以上1.5以下である、
ことを特徴とする転写用マスク。
【請求項12】
ダブル露光技術が適用されることを特徴とする請求項11に記載の転写用マスク。
【請求項13】
前記補助遮光膜は、前記遮光膜をエッチングする際に用いられる、エッチング媒質に対してエッチング選択性を有することを特徴とする請求項11または12に記載の転写用マスク。
【請求項14】
前記遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の転写用マスク。
【請求項15】
前記遮光膜は、クロムを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であることを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の転写用マスク。
【請求項16】
前記遮光膜は、タンタルを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の転写用マスク。
【請求項17】
前記遮光膜と前記補助遮光膜の間に、これらの膜をエッチングする際に用いられるエッチング媒質に対してエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を設けることを特徴とする請求項11または12に記載の転写用マスク。
【請求項18】
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、さらにクロムを主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする請求項17に記載の転写用マスク。
【請求項19】
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、クロムを主成分とする膜であり、さらに遷移金属とケイ素を主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする請求項17に記載の転写用マスク。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか1項に記載の転写用マスクを2枚セットとした転写用マスクセットであって、
前記2枚の転写用マスクは、ダブル露光技術による転写露光に用いられるものであり、
前記2枚の転写用マスクに形成されている各転写パターンは、転写対象物に転写露光する1つの転写パターンを2つの疎な転写パターンに分割したものであることを特徴とする転写用マスクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の製造において使用されるマスクブランク、転写用マスク、転写用マスクセット等に関する。
【背景技術】
【0002】
転写用マスクに形成された転写パターンをウェハ上のレジスト膜に縮小投影露光で転写する際においては、通常、ウェハ上のレジスト膜にはできる限り多くの転写パターンを転写することが必要とされるため、隣接する転写パターンどうしの間隔を殆ど開けずに転写パターンを連続露光していく。露光装置には、マスクステージにチャックされた転写用マスク上の転写パターンが形成された領域のみに露光光が露光されるように、シャッター(遮光部材)が露光装置の照明光学系に設けられている。しかし、シャッターの位置精度や光の回折の問題から、露光光を転写用マスクの転写パターン領域のみに精度よく照射することは技術的に困難であり、露光光が転写パターン領域外周の遮光膜にも漏れて照射してしまう。露光装置によるウェハ上のレジスト膜への転写パターンの露光は、殆ど間隔を開けずに連続露光するため、転写パターン領域外周の遮光膜に漏れた露光光(これを漏れ光という。)が照射されてわずかに透過した露光光が、隣の転写パターンと重なって露光されてしまう。このため、ウェハ上のレジスト膜には、遮光膜をわずかに透過した露光光によって、最大4回分重なって露光される部分(重なり露光部分)が発生する。この4回分の露光でレジストが転写パターンに影響が生じるような感光をしてしまうと、転写パターンの正常な転写ができなくなる。
露光光を透過する部分と露光光を遮光する部分の白黒のみで転写パターンを形成するバイナリ型の転写用マスクで使用される遮光膜の場合、この漏れ光に起因する、遮光膜をわずかに透過する露光光がウェハ上のレジスト膜に4回露光されても感光しないような遮光性能が求められる。遮光性能としては、光学濃度(OD)が3.0以上(透過率 約0.1%以下)あることが望ましく、2.8以上(透過率 約0.16%以下)は必要とされている。
一方、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を露光光とする露光技術においては、転写パターンの微細化が進み、露光光の波長よりも小さいパターン線幅に対応することが求められ、斜入射照明法、位相シフト法等の超解像技術、さらにNA=1以上の超高NA技術(液浸露光等)が開発されてきたが、それらの技術でも対応が難しいパターンピッチが要求され始めている。
この問題を解決する手段として、ダブルパターニング/ダブル露光(DP/DE)技術が開発されている。いずれの露光技術も、微細な転写パターンを2つの比較的疎なパターンに分割して2枚の転写用マスクを作製して、2枚の転写用マスク(転写用マスクセット)を用いてウェハ上のレジスト膜(転写対象物)に転写露光するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−294352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダブル露光(DE:Double Exposure)技術は、ウェハ上のレジスト膜に、1枚目の転写用マスクによる転写パターンの露光を行った後、さらに同じレジスト膜に対して2枚目の転写用マスクによる転写パターンの露光を行うものである。このため、従来とは異なり、ウェハ上のレジスト膜が漏れ光に起因する、遮光膜をわずかに透過する露光光によって8回露光される部分が発生する。このため、従来では、十分とされてきた光学濃度(OD)2.8の遮光膜を用いた転写用マスクであっても、ウェハ上のレジスト膜が転写パターンに影響が生じるような感光をされてしまい、正常なパターン転写ができない場合が発生するという問題がある。
この問題を解決する方法としては、単純に遮光膜の膜厚を厚くして光学濃度を上げることが考えられる。しかし、遮光膜の膜厚を厚くすると、遮光膜に転写パターンを形成するためのエッチングを行う時のマスクとなるレジストパターン(レジスト膜)の膜厚を厚くする必要が生じる。膜厚の厚いレジスト膜に微細パターンを形成する場合、レジストパターンの倒れや欠落の問題が生じやすくなる。
一方、遮光膜の膜厚が厚くなるに従い、電磁界(EMF: ElectroMagnetics Field)効果に起因するバイアスは大きくなる。EMFバイアスは、ウェハ上のレジストの転写パターン線幅のCD精度に大きな影響を与える。このため、電磁界効果のシミュレーションを行い、EMFバイアスによる影響を低減するための転写用マスクに形成する転写パターンの補正を行う。しかし、膜厚が厚くなるに従って複雑なシミュレーションが必要となり、多大な負荷がかかるという問題がある。
以上のことから、転写用マスクの少なくとも転写パターンが形成される領域については、遮光膜の膜厚を厚くすることは問題である。
本発明は、上記背景の下なされた発明であり、ダブル露光技術への対応に適したバイナリ型マスクブランクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)
ArF露光光が適用されるバイナリ型の転写用マスクを作製するために用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、基板側から、転写パターンを形成するための遮光膜と、該遮光膜との積層構造で遮光帯を形成するための補助遮光膜とを順に備え、
前記遮光膜の光学濃度が2.5以上3.1以下であり、かつ、前記補助遮光膜の光学濃度が0.5以上である、
ことを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
ダブル露光技術が適用される転写用マスクを作製するために用いられることを特徴とする構成1に記載のマスクブランク。
(構成3)
前記遮光膜は、遮光層と表面反射防止層の積層構造を有することを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記補助遮光膜は、前記遮光膜をエッチングする際に用いられる、エッチング媒質に対しエッチング選択性を有することを特徴とする構成1から3のいずれか1項に記載のマスクブランク。
(構成5)
前記遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記遮光膜は、クロムを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記遮光膜は、タンタルを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
前記遮光膜と前記補助遮光膜の間に、これらの膜をエッチングする際に用いられるエッチング媒質に対してエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を設けることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、さらにクロムを主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする構成8に記載のマスクブランク。
(構成10)
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、クロムを主成分とする膜であり、さらに遷移金属とケイ素を主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする構成8に記載のマスクブランク。
(構成11)
構成1から10のいずれかに記載のマスクブランクを用いて作製される転写用マスク。
(構成12)
ArF露光光が適用されるバイナリ型の転写用マスクであって、
透光性基板上の転写パターン領域に、遮光膜で形成される転写パターンを有し、
転写パターン領域の外側の領域に、基板側から、遮光膜と、補助遮光膜との積層構造で形成される遮光帯を有し、
前記遮光膜の光学濃度が2.5以上3.1以下であり、かつ、前記補助遮光膜の光学濃度が0.5以上である、
ことを特徴とする転写用マスク。
(構成13)
ダブル露光技術が適用されることを特徴とする構成12に記載の転写用マスク。
(構成14)
前記遮光膜は、遮光層と表面反射防止層の積層構造を有することを特徴とする構成12または13に記載の転写用マスク。
(構成15)
前記補助遮光膜は、前記遮光膜をエッチングする際に用いられる、エッチング媒質に対してエッチング選択性を有することを特徴とする構成12から14に記載の転写用マスク。
(構成16)
前記遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする構成12から15に記載の転写用マスク。
(構成17)
前記遮光膜は、クロムを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であることを特徴とする構成12から15に記載の転写用マスク。
(構成18)
前記遮光膜は、タンタルを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、ことを特徴とする構成12から15に記載の転写用マスク。
(構成19)
前記遮光膜と前記補助遮光膜の間に、これらの膜をエッチングする際に用いられるエッチング媒質に対してエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を設けることを特徴とする構成12から14に記載の転写用マスク。
(構成20)
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、さらにクロムを主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする構成19に記載の転写用マスク。
(構成21)
前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、クロムを主成分とする膜であり、さらに遷移金属とケイ素を主成分とするエッチングマスク膜を有することを特徴とする構成19に記載の転写用マスク。
(構成22)
構成13から構成21のいずれかに記載の転写用マスクを2枚セットとした転写用マスクセットであって、
前記2枚の転写用マスクは、ダブル露光技術による転写露光に用いられるものであり、前記2枚の転写用マスクに形成されている各転写パターンは、転写対象物に転写露光する1つの転写パターンを2つの疎な転写パターンに分割したものである
ことを特徴とする転写用マスクセット。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転写パターンを形成するためのものであり、ダブル露光技術による2回の露光ではウェハ上のレジスト膜の感光を転写パターンに影響が生じないように抑制できるだけの遮光性能(OD2.5以上)を有する遮光膜と、遮光帯を形成するためのものであり、遮光膜と組み合わせることで、8回露光してもウェハ上のレジスト膜の感光を転写パターンに影響が生じないように抑制できるだけの遮光性能を発揮する補助遮光膜(OD0.5以上)とを備えるマスクブランクとすることにより、このマスクブランクからダブル露光用の転写用マスクセットを作製して、ウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写しても、8回露光される部分でレジスト膜が感光されることを防止できる。
また、転写パターンを形成するための遮光膜と遮光帯形成するための補助遮光膜の2層構造とし、さらに転写パターンを形成する遮光膜を2回露光でレジスト膜の感光を転写パターンに影響が生じないように抑制できるだけの遮光性能とすることにより、単純に遮光膜の膜厚を厚くしてダブル露光技術に対応する場合と比較し、転写パターン領域の遮光膜の膜厚を薄くできる。これにより、転写パターン領域の遮光膜パターンの精度を向上できる。
また、転写パターン領域の遮光膜の膜厚を厚くする必要がないので、レジストも厚くする必要がなく、レジストパターンの倒れや欠落の問題も生じにくくなる。
また、転写パターン領域の遮光膜の膜厚を厚くする必要がないので、遮光膜の膜厚が厚くなるに従い、電磁界(EMF)効果に起因するバイアスは大きくなり、膜厚が厚くなるに従って複雑なシミュレーションが必要となり、多大な負荷がかかるという問題を回避できる。
本発明によれば、ダブル露光技術で使用する転写用マスクとするマスクブランクには、重ね露光部分のウェハ上のレジスト膜を8回分露光しても転写パターンに影響が生じない程度の感光に抑えることができる光学濃度が遮光膜の最低限転写パターン領域外周のエリアで得られること、と同時に、転写パターン領域の遮光膜の膜厚を厚くすることなく対応できること、を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明のマスクブランクの第1実施形態を示す模式的断面である。
図2図2は、本発明のマスクブランクの第2実施形態を示す模式的断面である。
図3図3は、本発明のマスクブランクの第3実施形態を示す模式的断面である。
図4図4は、薄膜中のMo/Mo+Si比率および窒素含有量と単位膜厚当たりの光学濃度との関係を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例1に係る転写用マスクの製造工程を説明するための模式的断面である。
図6図6は、本発明の実施例3に係る転写用マスクの製造工程を説明するための模式的断面である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマスクブランクは、
ArF露光光が適用されるバイナリ型の転写用マスクを作製するために用いられるマスクブランクであって、
透光性基板上に、基板側から、転写パターンを形成するための遮光膜と、該遮光膜との積層構造で遮光帯を形成するための補助遮光膜とを順に備え、
前記遮光膜の光学濃度が2.5以上3.1以下であり、かつ、前記補助遮光膜の光学濃度が0.5以上である、ことを特徴とする。
【0009】
本発明において、遮光膜10は、ArF露光光が適用されるリソグラフィであって、DRAMハーフピッチ(hp)32nm以降の世代およびダブル露光技術に適した膜厚及び光学濃度を併せ持つ膜である。
従来のシングル露光技術で使用されているものと同程度の特性の材料で形成されたウェハ上のレジスト膜に対し、ダブル露光技術を用い、2枚の転写用マスクで転写パターンを転写しようとする場合、以下のことを考慮する必要がある。
【0010】
従来の1枚の転写用マスクを用いるシングル露光技術で、ウェハ上のレジスト膜にほとんど間隔を開けずに転写パターンを連続転写する場合、レジスト膜には、(1)転写パターンを転写するときの転写露光で、転写用マスクの転写パターンの黒部分(遮光膜が残されている遮光部分)をわずかに透過する露光光によって1回露光され(以下、「転写パターン露光」という)、さらに、(2)レジスト膜の隣接する領域に転写パターンを転写するときの転写露光で、転写用マスクの遮光帯をわずかに透過する露光光(漏れ光)によって最大3回露光される(以下、「漏れ光露光」という)領域ができてしまう。従来のバイナリ型の転写用マスクは、転写パターンの黒部分も遮光帯部分も同じ光学濃度の遮光膜で形成されているので、最も重なる部分は漏れ光露光(または転写パターン露光)4回分と同等の露光を受けることになる。従来は、漏れ光露光でレジスト膜が最大4回露光されても、露光転写される転写パターンに影響が生じない光学濃度となるよう、遮光膜の材料や膜厚を選定する。
【0011】
一方、2枚の転写用マスクを用いるダブル露光技術で、ウェハ上のレジスト膜にほとんど間隔を開けずに転写パターンを連続転写する場合、レジスト膜には、転写パターン露光で2回、漏れ光露光で最大6回露光される。そして、従来と同様に転写パターンの黒部分も遮光帯部分も同じ遮光膜で形成する場合、レジスト膜が漏れ光露光で最大8回露光されても、露光転写される転写パターンに影響が生じないような光学濃度となるように遮光膜の材料や膜厚を選定する必要がある。このため、ダブル露光技術適用の転写用マスクでは、シングル露光技術適用の転写用マスクよりも遮光膜の膜厚を厚くする必要があるという問題があった。
【0012】
本発明では、遮光膜を転写パターンの黒部分を形成するために必要な光学濃度とし、ダブル露光技術適用の転写用マスクの遮光帯を形成するには、遮光膜だけでは不足する光学濃度を、補助遮光膜を積層させて補う構成としている。これにより、転写パターンを形成する部分の遮光膜の膜厚を従来と同等としながら、転写パターン露光2回のほかに、漏れ光露光が最大6回露光されてもレジスト膜の露光転写される転写パターンに影響を受けない光学濃度を有する遮光帯を形成することができる。
【0013】
転写パターンの露光転写をウェハ上のレジスト膜に行う場合、転写パターンの黒部分を形成する遮光膜には光学濃度2.5以上が必要である。
従来のシングル露光適用の転写用マスクの場合、4回分の漏れ光露光に相当する露光がウェハ上のレジスト膜にされても転写パターンに影響が生じないようにするには、遮光帯には最低でも光学濃度2.5が確保されている必要がある。すわなち、遮光膜は、最低でも光学濃度2.5となるようにする必要がある。
さらに、これと同程度の感度特性を有するレジスト膜に対し、転写パターンを形成するための遮光膜の光学濃度を従来のシングル露光技術適用の転写用マスクの遮光膜と同じく2.5とし、ダブル露光技術を用いて転写露光する場合、転写パターン露光2回分と漏れ光露光6回分の積算露光量が、前記のシングル露光技術を適用して光学濃度2.5の遮光膜で転写露光したときの漏れ光露光4回分の積算露光量以下となるように、遮光帯の光学濃度を選定する必要がある。この条件を満たす遮光帯の光学濃度は、3.0以上である。
よって、補助遮光膜には0.5以上の光学濃度が必要となる。
【0014】
なお、ウェハ上のレジスト膜の感光特性によって、転写パターンの黒部分を形成する遮光膜に必要とされる光学濃度は異なる。感度の高めのレジスト膜に対して転写露光する場合には、遮光膜の光学濃度は2.6以上が好ましく、より感度の高いレジスト膜に対しては、遮光膜の光学濃度は2.8以上が望ましい。また、遮光膜の光学濃度が2.6の場合において、補助遮光膜に必要な光学濃度は0.5以上であり、遮光膜の光学濃度が2.8の場合において、補助遮光膜に必要な光学濃度も0.5以上である。一方、バイナリ型の転写用マスクの転写パターンが形成される遮光膜については、光学濃度がより高いことが理想的である。しかし、遮光膜の光学濃度を材料の選定で高めるのには限界があり、光学濃度を高くしていくに従って必然的に膜厚が厚くなっていく。転写パターンを形成する遮光膜の膜厚が厚くなるに従い、遮光膜をドライエッチングして転写パターンを転写するときのレジストパターンの膜厚が厚くなっていき、レジストパターンの倒れや欠落が生じやすくなり、電磁界(EMF)効果に起因するバイアスに係る負荷が大きくなっていく。これらの関係から考慮すると、転写パターンを形成する遮光膜は、光学濃度3.1以下とすることが好ましく、光学濃度3.0以下がより好ましい。なお、光学濃度3.1の遮光膜の場合、補助遮光膜に必要な光学濃度は0.5以上である。
【0015】
補助遮光膜の光学濃度は、ウェハ上のレジスト膜の感光特性や露光装置の露光条件等を総合的に考慮して選定する必要がある。これらの条件を変更したときの影響を小さくするためには、光学濃度は0.7以上が好ましく、1.0以上がさらに好ましい。
本発明では、遮光膜と、補助遮光膜は、別の膜として構成しているため、ダブル露光において、遮光帯を形成すべき領域にさらに高い光学濃度(3.3以上、更には3.5以上)が必要となった場合においても、転写パターン領域における遮光膜パターンの厚さに影響を与えることなく、補助遮光膜を厚くすることで、容易に対応できる。
一方、後述のように、補助遮光膜は、遮光膜に転写パターンを転写するときのエッチングマスクとしても機能する。この場合、レジストパターンをマスクに補助遮光膜をドライエッチングすることになるため、レジストパターンの膜厚をより薄くするには、補助遮光膜の膜厚が厚くなることは好ましくない。これらのことを考慮すると、補助遮光膜の光学濃度は、1.5以下が好ましく、1.2以下がさらに好ましい。
【0016】
本発明のマスクブランクは、ダブル露光技術が適用される転写用マスクを作製するための用途に適する。
【0017】
本発明において、前記遮光膜は、遮光層と表面反射防止層の積層構造とすることができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクの一例を示す。
第1の実施形態は、図1に示すように、透光性基板1上に、遮光層11と表面反射防止層12の積層構造からなる遮光膜10と、遮光膜10上に形成された補助遮光膜20と、レジスト膜100を有する。
【0018】
本発明において、前記遮光膜は、前記基板と前記遮光層との間に裏面反射防止層を備える構造とすることができる。
図2は、本発明の第2の実施形態に係るマスクブランクの一例を示す。
第2の実施形態は、図2に示すように、透光性基板1上に、裏面反射防止層13と遮光層11と表面反射防止層12の積層構造からなる遮光膜10と、遮光膜10上に形成された補助遮光膜20と、レジスト膜100を有する。
【0019】
本発明において、前記補助遮光膜は、前記遮光膜をエッチングする際に用いられるエッ
チング媒質に対してエッチング選択性を有することが好ましい。
図1図2に示す実施形態のように、遮光膜と接して補助遮光膜が形成される態様において、転写パターン領域に遮光膜のみで転写パターンが形成され、転写パターン領域の外周領域に、遮光膜と補助遮光膜の積層構造を有する遮光帯が形成された転写用マスクを作製可能とするためである。また、補助遮光膜をエッチングマスクとして、遮光膜をエッチングする構成とすることで、レジスト膜の薄膜化を図り、転写パターンを高精度に加工するためである。
【0020】
本発明において、前記遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、構成とすることができる。
フッ素系ガスのエッチングガスによるドライエッチングに対し、遷移金属とケイ素を主成分とする膜はエッチングレートが高く、クロムを主成分とする膜はエッチングレートが大幅に低く、高いエッチング選択性を有している。また、塩素と酸素の混合ガスによるドライエッチングに対し、クロムを主成分とする膜はエッチングレートが高く、遷移金属とケイ素を主成分とする膜はエッチングレートが大幅に低く、高いエッチング選択性を有している。よって、補助遮光膜は、遮光膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして十分に機能する。また、クロムを主成分とする膜は、レジストの濡れ性が良好であるという利点もある。
【0021】
本発明において、前記遮光膜は、クロムを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、遷移金属とケイ素を主成分とする膜である、構成とすることができる。
前記と同様の理由から、補助遮光膜は、遮光膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして十分に機能する。また、クロムを主成分とする膜は、透光性基板に対して高いエッチング選択性を有しているため、遮光膜をドライエッチングするときに基板を掘り込んでしまう恐れが非常に小さいという利点もある。
【0022】
本発明において、前記遮光膜は、タンタルを主成分とする膜であり、前記補助遮光膜は、クロムを主成分とする膜である、構成とすることができる。
フッ素系ガスのエッチングガスによるドライエッチングに対し、タンタルを主成分とする膜はエッチングレートが高く、クロムを主成分とする膜はエッチングレートが大幅に低く、高いエッチング選択性を有している。また、塩素と酸素の混合ガスによるドライエッチングに対し、クロムを主成分とする膜はエッチングレートが高く、タンタルを主成分とする膜はエッチングレートが大幅に低く、高いエッチング選択性を有している。よって、補助遮光膜は、遮光膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして十分に機能する。また、クロムを主成分とする膜は、レジストの濡れ性が良好であるという利点もある。
【0023】
本発明において、前記遮光膜と前記補助遮光膜の間に、これらの膜をエッチングする際に用いられるエッチング媒質に対してエッチング選択性を有するエッチングマスク膜を設ける構造とすることができる。
図3は、本発明の第3の実施形態に係るマスクブランクの一例を示す。
第3の実施形態は、図3に示すように、透光性基板1上に、遮光層11と表面反射防止層12の積層構造からなる遮光膜10と、遮光膜10上に形成されたエッチングマスク膜21と、その上に形成された補助遮光膜22と、レジスト膜100を有する。
【0024】
上記図3の第3の実施形態のように、遮光膜10と補助遮光膜22の間にエッチングマスク膜21を設ける構成とすることにより、光学濃度の下限の制約のある補助遮光膜20をエッチングマスクとして用いる場合(例えば図1図2)に比べて、エッチングマスクを薄膜化することができるため、遮光膜10に、より高い精度で転写パターンを形成できる。
なお、補助遮光膜22に、遮光膜10をエッチングするときのエッチングガスでエッチングされる材料を選定することができる。補助遮光膜22に遮光膜10で適用したものと同じ材料を適用することができる。
【0025】
本発明において、前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、遷移金属とケイ素を主成分とする膜であり、さらにクロムを主成分とするエッチングマスク膜を有する、構成とすることができる。
【0026】
本発明において、前記遮光膜、前記補助遮光膜ともに、クロムを主成分とする膜であり、さらに遷移金属とケイ素を主成分とするエッチングマスク膜を有する、構成とすることができる。
【0027】
本発明において、遷移金属とケイ素を主成分とする膜としては、遷移金属とケイ素に窒素、酸素、炭素、水素、不活性ガス(ヘリウム,アルゴン,キセノン等)、ホウ素等を含む化合物、などが挙げられる。ここで、遷移金属(M)としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pb)の何れか一つ又は合金、などが挙げられる。
本発明において、クロムを主成分とする膜としては、クロム単体や、クロムに酸素、窒素、炭素、水素、ホウ素からなる元素を少なくとも1種を含むもの(Crを含む材料)、などの材料が挙げられる。
本発明において、タンタルを主成分とする膜としては、タンタル単体や、タンタルに酸素、窒素、炭素、水素、ホウ素からなる元素を少なくとも1種を含むもの(タンタルを含む材料)、などの材料が挙げられる。
本発明において、前記遮光膜、前記補助遮光膜、前記エッチングマスク膜は、いずれも、単層、複数層構造とすることができる。複数層構造では、異なる組成で段階的に形成した複数層構造や、連続的に組成が変化した膜構造とすることができる。
【0028】
本発明において、遮光膜10における遮光層11は、遮光性が非常に高い材料が好ましく、クロムに比べ遮光性が高い材料で構成することが好ましい。
遮光層11は、クロム系に比べ、光学濃度の高い、遷移金属とケイ素を含む材料、Ta系材料を用いることが好ましい。また、これらの材料について光学濃度を更に高めるべく開発された材料を用いることが好ましい。
遮光層11は、遮光性を極限まで高めた材料(高MoSi系)が好ましい。遮光層11は、Ta系材料(TaN,TaB,TaC,TaBC,TaBN,TaCN,TaBCN等)を用いることもできる。特に、遮光層11の材料としてTa系窒化物を用いる場合、遮光膜10を単層(表面反射防止層12のない構成)としても、表面反射率や裏面反射率をある程度は抑制することが可能である。これにより、表面反射率や裏面反射率の上限が緩い場合においては、遮光膜10を大幅に薄膜化することができる。
【0029】
本発明において、遮光膜10における表面反射防止層12は、遷移金属とケイ素に、さらに酸素および窒素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を含む材料を主成分とすることが好ましい。
表面反射防止層12は、遮光層との積層構造で所定値以上の表面反射率が得られるのであれば、基本的にいずれの材料でも適用可能ではあるが、遮光層11と同じターゲットで成膜できる材料を用いることが好ましい。遮光層11に遷移金属とケイ素を主成分とする材料を適用した場合には、表面反射防止層12には、遷移金属(M)とケイ素(Si)を主成分とする材料(MSiO,MSiN,MSiON,MSiOC,MSiCN,MSiOCN等)が好ましい。これらのうちでも、耐薬品性、耐熱性の観点からはMSiO、MSiONが好ましく、ブランクス欠陥品質の観点からMSiONが好ましい。また、遮光層11にTa系材料を適用した場合には、表面反射防止層12には、Taを主成分とする材料(TaO,TaON,TaBO,TaBON,TaCO,TaCON,TaBCO,TaBCON等)が好ましい。
【0030】
遮光膜10の全体での光学濃度は、ほとんど遮光層11が寄与するものである。表面反射防止層12は、露光装置の縮小光学系のレンズで反射される一部の露光光を遮光膜10でさらに反射してしまうことを抑制するために設けているものであり、露光光がある程度透過するように調整されている。これにより、遮光膜10の表面での全反射を抑制し、干渉効果を利用する等して露光光を減衰させることができている。表面反射防止層12は、この所定の透過率が得られるように設計されていることから、遮光膜10全体への光学濃度の寄与度は小さい。裏面反射防止層13を備える遮光膜10の場合においても、同様の理由から、遮光膜10全体への光学濃度の寄与度は小さい。以上のことから、遮光膜10の光学濃度の調整は、基本的に遮光層11で行う。すなわち、遮光層11で光学濃度2.5以上を確保できると望ましく、2.8以上を確保できるとより望ましい。
【0031】
遮光膜10のArF露光光に対する表面反射率としては、30%以下を確保する必要性が高く、25%以下であると好ましく、遮光膜1全体の膜厚が許容範囲内であれば20%以下が確保できると最も好ましい。
また、表面反射率を所定値以下に抑制するためには、表面反射防止層12の膜厚は5nmよりも大きいことが望ましい。また、より低反射率とするには、膜厚を7nm以上とすることが望ましい。さらに、生産安定性の観点や、転写用マスクを作製した後のマスク洗浄の繰り返しによる表面反射防止層12の膜減りを考慮すると、表面反射防止層12の膜厚は10nm以上あると好ましい。遮光膜10全体での薄膜化を考慮すると、遮光膜の光学濃度への寄与度の低い表面反射防止層12の膜厚は、20nm以下であることが望ましく、15nm以下であるとより望ましい。さらに、電磁界(EMF)効果に係るシミュレーション負荷をより軽減させるためには、12nm以下であることが望まれる。
【0032】
遮光膜10のArF露光光に対する裏面反射率としては、40%以下を確保する必要性が高く、35%以下であると好ましく、遮光膜1全体の膜厚が許容範囲内であれば30%以下が確保できると最も好ましい。
裏面反射防止層13を備える3層積層構造の遮光膜10の場合、裏面反射率を所定値以下に抑制するためには、裏面反射防止層13の膜厚は5nmよりも大きいことが望ましい。また、より低反射率とするには、膜厚を7nm以上とすることが望ましい。遮光膜10全体での薄膜化を考慮すると、遮光膜の光学濃度への寄与度の低い裏面反射防止層13の膜厚は、15nm以下であることが望ましく、12nm以下であるとより望ましい。さらに、電磁界(EMF)効果に係るシミュレーション負荷をより軽減させるためには、10nm以下であることが望まれる。
【0033】
上述したように、遮光膜10における遮光層11は、遮光性が非常に高い材料が好ましく、クロムに比べ遮光性が高い材料で構成することが好ましい。
遷移金属とケイ素を含有する材料は、クロムに比べて遮光性が高い。図4に、遮光膜10中に遷移金属のモリブデンとケイ素と窒素を含有する薄膜において、膜中の窒素含有量が0原子%,10原子%,20原子%,30原子%,35原子%,40原子%のそれぞれの場合について、膜中のモリブデンの含有量をモリブデンとケイ素の合計含有量で除した比率(すなわち、遮光膜中のモリブデンとケイ素の合計含有量を100としたときのモリブデンの含有量の比率を原子%で表したもの。以下、(Mo/Mo+Si)比率という。)と、単位膜厚当たりの光学濃度(ΔOD[/nm@193.4nm])との関係を示す。遮光膜10の窒素含有量が増加するに従い、単位膜厚当たりの光学濃度は低下していく。一方、(Mo/Mo+Si)比率については、所定比率までは増加するに従い、単位膜厚当たりの光学濃度も増加する関係になるが、40原子%以下で、いずれの窒素含有量の場合も頭打ちの傾向を示している。モリブデンとケイ素を含有する材料は、モリブデンの含有量が高いと、耐薬性や耐洗浄性(特に、アルカリ洗浄や温水洗浄)が低下するという問題がある。これらのことを考慮すると、転写用マスクとして使用する際の必要最低限の耐薬性、耐洗浄性を確保できるモリブデンの含有量である40原子%を上限とすることが好ましい。
【0034】
遮光膜10に転写パターンを転写するためのレジスト膜の薄膜化や、電磁界(EMF)効果に起因するシミュレーション負荷の軽減を考慮すると、遮光膜10の膜厚は、少なくとも65nm未満とすべきであり、60nm以下とすることが望ましい。また、前述の通り、遮光膜10は、遮光層11と表面反射防止膜12の2層積層構造、あるいはさらに遮光層11と透光性基板1との間に裏面反射防止層13を備える3層積層構造とすることが通常である。これらの条件を考慮すると、遮光層11の単位膜厚当たりの光学濃度は、ΔOD=0.05[/nm@193.4nm]以上であることが少なくとも望まれる。この場合、遮光層11の窒素含有量を40原子%以下とする必要がある。また、窒素含有量が40原子%の場合、(Mo/Mo+Si)比率は、15原子%以上28原子%以下とする必要がある。
【0035】
遮光膜10の薄膜化を考慮すると、ΔOD=0.06[/nm@193.4nm]以上であることが望ましい。この場合、遮光層11の窒素含有量を33原子%以下とする必要がある。窒素含有量が33原子%の場合、(Mo/Mo+Si)比率は、20原子%以上30原子%以下とする必要があり、窒素含有量が30原子%の場合、(Mo/Mo+Si)比率は、15原子%以上33原子%以下とする必要がある。さらに、EMF効果に係るシミュレーション負荷のさらなる軽減を考慮すると、遮光層は、ΔOD=0.07[/nm@193.4nm]以上であることがより望ましい。この場合、遮光層11の窒素含有量を23原子%以下とする必要がある。窒素含有量が23原子%の場合、(Mo/Mo+Si)比率は、20原子%以上30原子%以下とする必要があり、窒素含有量が20原子%の場合、(Mo/Mo+Si)比率は、17原子%以上33原子%以下とする必要がある。遮光層11の窒素含有量が10原子%以上であると、裏面反射防止層13を備えない構成(遮光層11と表面反射防止層12の2層積層構造)であっても裏面反射率を露光転写に影響のない範囲に抑制することが可能である。種々の露光条件に対応することを考慮すると、裏面反射率を30%以下に抑制することが求められる。裏面反射防止層13を備えない構成でこれを達成するには、遮光層11の窒素含有量を20原子%以上とすることが望ましい。遮光層11の窒素含有量が10原子%未満の方が光学濃度は高いが、裏面反射防止層13を設けて裏面反射率を低減させる必要が生じる。
【0036】
なお、図4では、遷移金属にモリブデンを適用した場合について傾向を示したが、他の遷移金属を適用した場合についても概ね同様の傾向を示す。また、酸素は、層中の含有量に対する消衰係数の低下度合が窒素に比べて大きく、酸素の含有に率に比例して遮光層11に必要な膜厚がより厚くなってしまう。窒素だけでも露光光に対する裏面反射率を低減させることは可能であることから、下層の酸素の含有量は、10原子%未満であることが好ましく、さらに好ましくは、酸素を実質的に含有しない(コンタミ等によって含有されることを許容する程度)ことが好ましい。
【0037】
なお、遷移金属とケイ素を含む遮光層は、上記の特性、作用効果を損なわない範囲(10%未満)で、他の元素(炭素、不活性ガス(ヘリウム、水素、アルゴン、キセノン等)等)を含んでも良い。
【0038】
本発明において、MoSiで実質的に構成される遮光層、MoSiCHで実質的に構成される遮光層等は、スパッタ室内のガス圧、加熱処理によって引張応力と圧縮応力を自在に制御可能である。例えば、MoSi遮光層、MoSiCH遮光層等の膜応力を引張応力となるよう制御することによって、反射防止層(例えばMoSiON)の圧縮応力と調和が取れる。つまり、遮光膜を構成する各層の応力を相殺でき、遮光膜の膜応力を極力低減できる(実質的にゼロにできる)。
【0039】
本発明において、表面反射防止層にMoSiON、MoSiO、MoSiN、MoSiOC、MoSiOCNを適用する場合、Moを多くすると耐洗浄性、特にアルカリ(アンモニア水等)や温水に対する耐性が小さくなる。この観点からは、反射防止層であるMoSiON、MoSiO、MoSiN、MoSiOC、MoSiOCN等では、Mo極力減らすことが好ましい。
また、応力制御を目的として高温で加熱処理(アニール)する際、Moの含有量が高いと膜の表面が白く曇る(白濁する)現象が生じることがわかった。これは、MoOが表面に析出するためであると考えられる。このような現象を避ける観点からは、反射防止層であるMoSiON、MoSiO、MoSiN、MoSiOC、MoSiOCN等では、反射防止層中のMoの含有量は10at%未満であることが好ましい。しかし、Moの含有量が少なすぎる場合、DCスパッタリングの際の異常放電が顕著になり、欠陥発生頻度が高まる。よって、Moは正常にスパッタできる範囲で含有していることが望ましい。他の成膜技術によってはMoを含有せずに成膜可能な場合がある。
【0040】
本発明においては、例えば図1に示すように、前記遮光膜10は、2層で構成され、
タンタルの窒化物からなる遮光層11と、
該遮光層11の上に接して形成され、タンタルの酸化物からなる表面反射防止層12と、
からなる態様が含まれる。
遮光層11のタンタルを窒化させることによって、転写マスク作製後の遮光膜の転写パターン側壁の酸化防止が図れる。反面、高い遮光性能を確保するためには、できる限り窒素の含有量を低くすることが望まれる。これらの点を考慮すると、遮光層中の窒素含有量は、1原子%以上20原子%以下が好ましく、5原子%以上10原子%以下であるとより好ましい。
酸素を50原子%以上含有するタンタルの酸化物からなる反射防止層は、反射防止効果に優れるので好ましい。
上記のような構成によって、遮光性膜の表面側の反射防止が図られる。また、裏面反射防止層を省略した構造であっても、一定の裏面反射防止効果(例えば裏面の反射率が40%以下)が得られる。さらに、このように、裏面反射防止層を省略した構造によって、転写パターン領域における遮光膜パターンの厚さに関しより薄膜化を図ることは、転写パターン領域における遮光膜パターンの精度向上等に有効である。
【0041】
本発明において、遮光膜10が遷移金属とケイ素を主成分とする材料やTa系の材料からなる場合、補助遮光膜20は、クロム系材料で形成されている態様が含まれる。
遮光膜10が遷移金属とケイ素を含む材料やTa系の材料からなる場合にあっては、これらの材料は、フッ素系ガスでドライエッチング可能な材料がほとんどである。このため、補助遮光膜20にはフッ素系ガスに対して耐性を有する材料を用いることが好ましい。クロム系の材料は、フッ素系ガスに対する耐性が高く、基本的に塩素と酸素の混合ガスでドライエッチング可能な材料であるため、補助遮光膜の上層のレジスト膜に形成された転写パターンを補助遮光膜に転写するドライエッチングを行う際、下層の遮光膜をエッチングストッパとして機能させることができる。また、補助遮光膜をエッチングマスクとして、下層の遮光膜をドライエッチングして転写パターンを転写することができ、遮光膜に高い精度で転写パターンを形成することが可能となる。
本発明において、補助遮光膜20としては、例えば、クロム単体や、クロムに酸素、窒素、炭素、水素からなる元素を少なくとも1種を含むもの(Crを含む材料)、などの材料を用いることができる。なかでも、窒化クロム、酸化クロム、窒化酸化クロム、酸化炭化窒化クロムのいずれかを主成分とする材料で形成されている態様が好ましい。前記補助遮光膜の膜構造としては、上記膜材料からなる単層、複数層構造とすることができる。複数層構造では、異なる組成で段階的に形成した複数層構造や、連続的に組成が変化した膜構造とすることができる。
さらに、補助遮光膜20は、膜中のクロムの含有量が45原子%以下である態様が含まれる。膜中のクロムの含有量が45原子%以下とすることにより、補助遮光膜のエッチングレートを高めてレジスト膜厚の低減を図ることができる。
【0042】
本発明において、例えば、図3等に示すように、遮光膜10をMoSi系材料で構成する場合にあっては、エッチングマスク膜21はクロム系材料で構成し、補助遮光膜20はMoSi系材料で構成する態様が含まれる。
この態様において、前記エッチングマスク膜21は、クロムに、窒素、酸素のうち少なくともいずれかの成分を含み、膜中のクロムの含有量が45原子%以下である態様が含まれる。これにより、エッチングマスク膜21のエッチングレートを高めることができる。
【0043】
本発明において、前記エッチングマスク膜21は、膜厚が、5nmから20nmであることが好ましい。このような構成によれば、エッチングマスク膜のCD(Critical Dimension)に対する被エッチング層のCDのシフト量(エッチングマスク膜のパターン寸法に対する被エッチング層のパターン寸法の寸法変化量)が、5nm未満である転写用マスクを得ることが可能となる。
【0044】
本発明者らは、透光性基板上に、フッ素系ガスでドライエッチング可能な材料(遷移金属とケイ素を主成分とする材料やTa系材料)からなる系遮光膜、Cr系エッチングマスク膜、レジスト膜(膜厚100nm以下)をこの順で(互いに接して)備えるマスクブランクを用いて加工を行う際に、
(1)エッチングマスク膜の膜厚を単に薄くする(例えば20nm以下にする)だけではレジスト膜の膜厚を低減できない場合があること、
(2)レジスト膜の膜厚を低減する観点からは、Cr系エッチングマスク膜は、Cr成分がリッチな材料では塩素系(Cl+O)ドライエッチングのエッチングレートが遅いので好ましくなく、従ってこの観点からはCr系エッチングマスク膜は、Cr成分が少なく、高窒化、高酸化されたCr系材料が好ましいこと、
(3)遮光膜パターンのLER(Line Edge Roughness)を低減する観点からは、Cr系エッチングマスク膜は、Cr成分がリッチな材料の方がフッ素系ドライエッチングに対する耐性が高いので好ましく、従ってこの観点からはCr系エッチングマスク膜は、Cr成分が多いCr系材料が好ましいこと、
(4)上記(2)と(3)はトレードオフの関係にあり、それを考慮すると、Cr系エッチングマスク膜は、膜中のクロムの含有量が45原子%以下である必要があり、40原子%以下が好ましいこと、更にCr系エッチングマスク膜中のクロムの含有量は35原子%以下であることが好ましいこと、また、Cr系エッチングマスク膜中のクロムの含有量の下限は20原子%以上が好ましく、さらに好ましくは30原子%以上が好ましいこと、特に、エッチングマスク膜が酸化クロム膜の場合は33原子%以上が好ましいこと、
(5)上記(2)及び(4)に関連し(即ちCr系エッチングマスク膜のエッチング時間の短縮に関連し)、レジスト膜の膜厚を低減する観点からは、Cr系エッチングマスク膜の膜厚は20nm以下であることが好ましいこと、
(6)上記(3)及び(4)に関連し(即ちCr系エッチングマスク膜のエッチング耐性に関連し)、下層の遮光膜にマスクパターンを転写するエッチングプロセスが完了するまで、エッチングマスクがマスクパターンを維持できなければならないため、Cr系エッチングマスク膜の膜厚は5nm以上であることが好ましいこと、
を見い出した。
【0045】
Cr系材料は、酸化を進行させるほど塩素系ガスに対するエッチングレートが向上する。また、酸化させたときほどではないが、窒化を進行させても塩素系ガスに対するエッチングレートが向上する。よって、ただ単にエッチングマスク膜のクロム含有量を35原子%以下にするだけでなく、高酸化、高窒化させることが好ましい。
なお、膜の欠陥品質に優れる観点からは、酸化炭化窒化クロム、酸化炭化クロムが好ましい。また、応力の制御性(低応力膜を形成可能)の観点からは、酸化炭化窒化クロム(CrOCN)が好ましい。
【0046】
本発明において、前記遮光層は、遷移金属(M)、ケイ素(Si)に加え、炭素(C)、水素(H)の少なくとも一方を含む材料を含有することが好ましい。
本発明において、遷移金属(M)、ケイ素(Si)に加え、炭素(C)、水素(H)の少なくとも一方を含む遮光膜は、スパッタ成膜時に膜中に、酸化しづらい状態になっている、ケイ素炭化物(Si−C結合)、遷移金属炭化物(M−C結合、例えばMo−C結合)、水素化ケイ素(Si−H結合)、が形成されることにより、耐光性等に優れる。
本発明において、遷移金属(M)、ケイ素(Si)に加え、炭素(C)、水素(H)の少なくとも一方を含む遮光層は、化学結合状態として、M(遷移金属)−Si結合、Si−Si結合、M−M結合、M−C結合、Si−C結合、Si−H結合を含んでいる。
本発明において、遷移金属(M)は、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pb)の何れか一つ又は合金からなる。
【0047】
本発明においては、炭素を含むターゲット又は炭素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することによって、遷移金属、ケイ素、炭素を含み、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物を有してなる薄膜を形成できる。
ここで、炭化水素ガスは、例えば、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)等である。
炭化水素ガスを用いることにより、膜中に炭素と水素(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)を導入できる。
炭素を含むターゲットを用いることにより、膜中に炭素(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物)のみ導入できる。この場合、MoSiCターゲットを用いる態様の他、Moターゲット及びSiターゲットのいずれか一方又は双方にCを含むターゲットを用いる態様や、MoSiターゲット及びCターゲットを用いる態様、が含まれる。
【0048】
本発明においては、水素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することによって、遷移金属、ケイ素、水素を含み、水素化ケイ素を有してなる薄膜を形成できる。
この方法では、膜中に水素(水素化ケイ素)のみ導入できる。
この方法では、MoSiターゲットを用いる態様の他、Moターゲット及びSiターゲットを用いる態様、が含まれる。また、この方法においてさらに膜中に炭素(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物)を含ませる場合には、MoSiCターゲットを用いる態様の他、Moターゲット及びSiターゲットのいずれか一方又は双方にCを含むターゲットを用いる態様や、MoSiターゲット及びCターゲットを用いる態様、が含まれる。
【0049】
本発明においては、前記薄膜は、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整して形成されることが好ましい。
雰囲気ガスの圧力が低い(この場合成膜速度が遅い)と炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されやすいと考えられる。また、電力(パワー)を低くすると炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されやすいと考えられる。
本発明は、このように炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成され、上述した本発明の作用効果が得られるように、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整する。
また、本発明は、スパッタ成膜時に膜中に安定的なSi−C結合及び/又は安定的な遷移金属M−C結合が形成され、上述した本発明の作用効果が得られるように、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整する。
これに対し、雰囲気ガスの圧力が高い(この場合成膜速度が速い)と炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されづらいと考えられる。また、電力(パワー)を低くすると炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されづらいと考えられる。
【0050】
なお、遮光層11中の炭素の含有量は、1〜10原子%が好ましい。遮光膜の炭素の含有量が1原子%以下の場合には、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物が形成されにくく、炭素の含有量が10原子%より多い場合には遮光膜の薄膜化が困難になる。
水素の含有量は、1〜10原子%が好ましい。遮光膜の水素の含有量が1原子%以下の場合には、水素化ケイ素が形成されにくく、水素の含有量が10原子%以上の場合には成膜が困難になる。
【0051】
本発明においては、レジスト膜100と補助遮光膜20などのレジスト膜と接する下層膜との密着性を向上させる密着性向上層を形成してもよい。密着性向上層としては、例えば、補助遮光膜22などのレジスト膜と接する下層膜の表面にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)層を蒸散処理によって形成する構成がまず挙げられる。また、その他として、レジスト膜100にレジストパターンを形成するときに使用する現像液に対しては溶解せず、レジストパターンをマスクに補助遮光膜20などのレジスト膜と接する下層膜をドライエッチングするときにはともにエッチングされ、さらにレジストパターンを除去するときの除去処理時(溶剤除去、酸素プラズマアッシング等)にはともに除去される特性を有する樹脂層を形成する構成も挙げられる。
【0052】
本発明において、補助遮光膜20は、光学濃度0.5以上を確保できる膜厚である必要がある。遮光膜10との間にエッチングマスク膜21を設けない構成の場合においては、補助遮光膜20のみで光学濃度0.5以上は確保する必要がある。この場合、補助遮光膜20の膜厚は、少なくとも22nm以上は最低限必要とされ、好ましくは25nm以上、さらには30nm以上がより好ましい。一方、この構成の場合、補助遮光膜20はエッチングマスクの役割も持たせる必要があるため、膜厚が厚すぎると遮光膜10に転写パターンを転写するときの精度が低下してしまう。この点を考慮すると、補助遮光膜20の膜厚は、45nm以下であることが最低限必要とされ、好ましくは40nm以下、さらには35nm以下がより好ましい。なお、補助遮光膜20であるが、露光装置の機構等によって、補助遮光膜20の露光光に対する表面反射率を、遮光膜10の露光光に対する表面反射率の程度まで低くする必要性がない場合においては、膜中の金属元素の含有量を増やすことが可能となる。この場合、補助遮光膜20の膜厚の下限を9nmとすることが可能である。
【0053】
本発明において、遮光膜10との間にエッチングマスク膜21を設ける構成の場合においては、エッチングマスク膜21の膜厚は、遮光膜10に転写パターンを精度よく転写できる必要がある。エッチングマスク膜21を形成する材料に遮光膜10をドライエッチングするときのエッチング媒質に対してエッチング選択性を有する材料を選定しても、多少はエッチングされてしまう。この点を考慮すると、エッチングマスク膜21の膜厚は、少なくとも5nm以上である必要があり、7nm以上あると好ましい。一方、前述の通り、エッチングマスク膜の膜厚が厚くなるにつれて転写精度が低下していくほかに、転写用マスクを作製する最終段階でエッチングマスク膜を除去するときに遮光膜10や透光性基板1に与えるダメージも大きくなっていく。これらのことを考慮すると、エッチングマスク膜21の膜厚は、20nm以下である必要があり、15nm以下であると好ましい。
【0054】
本発明の転写用マスクは、上記の各マスクブランクを用いて作製される。
これにより、上記で説明した効果を有する転写用マスクを提供できる。
【0055】
本発明の転写用マスクは、ArF露光光が適用されるバイナリ型の転写用マスクであって、
透光性基板上の転写パターン領域に、遮光膜で形成される転写パターンを有し、
転写パターン領域の外側の領域(漏れ光エリア)に、基板側から、遮光膜と補助遮光膜との積層構造で形成される遮光帯を有し、
前記遮光膜の光学濃度が2.5以上3.1以下であり、かつ、前記補助遮光膜の光学濃度が0.5以上である、
ことを特徴とする。
これにより、上記で説明した効果を有する転写用マスクを提供できる。
【0056】
本発明の転写用マスクセットは、上記の転写用マスクを2枚セットとした転写用マスクセットであって、
前記2枚の転写用マスクは、ダブル露光技術による露光転写に用いられるものであり、
前記2枚の転写用マスクに形成されている各転写パターンは、転写対象物に転写露光する1つの転写パターンを2つの疎な転写パターンに分割したものである
ことを特徴とする。
これにより、ダブル露光技術に用いるのに適した転写用マスクセットを提供できる。なお、転写対象物に転写露光すべき1つの転写パターンを2つの疎な転写パターンに分割する方法であるが、これは、ダブル露光技術を用いて転写対象物に転写露光したときに、密な転写パターンが転写できるように、密な転写パターンを比較的疎な2つの転写パターンに分割する公知の技術(シミュレーション計算等)を利用するものであり、目的を達成できるのであれば、どのような技術を用いてもよい。
【0057】
本発明において、クロム系薄膜のドライエッチングには、塩素系ガスと酸素ガスとを含む混合ガスからなるドライエッチングガスを用いることが好ましい。この理由は、クロムと酸素、窒素等の元素とを含む材料からなるクロム系薄膜に対しては、上記のドライエッチングガスを用いてドライエッチングを行うことにより、ドライエッチング速度を高めることができ、ドライエッチング時間の短縮化を図ることができ、断面形状の良好な遮光性膜パターンを形成することができるからである。ドライエッチングガスに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl2、SiCl4、HCl、CCl、CHCl等が挙げられる。
【0058】
本発明において、遷移金属とケイ素を含むとする薄膜、のドライエッチングには、例えば、SF、CF、C、CHF等の弗素系ガス、これらとHe、H、N、Ar、C、O等の混合ガスを用いることができる。
また、タンタル系材料の薄膜のドライエッチングには、例えば、SF、CF、C、CHF等の弗素系ガス、これらとHe、H、N、Ar、C、O等の混合ガス、或いはCl、CHCl等の塩素系のガス又は、これらとHe、H、N、Ar、C等の混合ガスを用いることができる。
【0059】
本発明において、レジストは化学増幅型レジストであること好ましい。高精度の加工に適するためである。
本発明において、レジストは電子線描画用のレジストであること好ましい。高精度の加工に適するためである。
本発明は、電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランクに適用する。
【0060】
本発明において、基板としては、合成石英基板、CaF基板、ソーダライムガラス基板、無アルカリガラス基板、低熱膨張ガラス基板、アルミノシリケートガラス基板などが挙げられる。
【0061】
本発明において、マスクブランクには、マスクブランクや、レジスト膜付きマスクブランクが含まれる。
本発明において、転写用マスクには、位相シフト効果を使用しないバイナリ型マスク、レチクルが含まれる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
(マスクブランクの作製)
図1は、実施例1のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、遮光膜10として、MoSiN膜(遮光層11)、MoSiON膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した。
具体的には、透光性基板1上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=21原子%:79原子%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N=25:28)で、ガス圧を0.07Pa、DC電源の電力を2.1kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光層11(MoSiN膜:Mo:Si:N=14.7原子%:56.2原子%:29.1原子%)を47nmの膜厚で形成した。
次に、遮光層11上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)と酸素(O)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:O:N:He=6:3:11:17)で、ガス圧を0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、表面反射防止層(MoSiON膜:Mo:Si:O:N=2.6原子%:57.1原子%:15.9原子%:24.4原子%)12を10nmの膜厚で形成した。
なお、各層(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
遮光膜10の合計膜厚は57nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて2.8であった。
次に、上記基板を450℃で30分間加熱処理(アニール処理)した。
【0063】
次に、遮光膜10上に、補助遮光膜20を形成した(図1)。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、クロムターゲットを使用し、ArとCOとNとHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CO:N:He=21:37:11:31)、ガス圧:0.2Pa、DC電源の電力:1.8kW、で成膜を行い、CrOCN膜(膜中のCr含有率:33原子%)を22nmの膜厚で形成した。このときCrOCN膜を前記MoSi遮光膜のアニール処理温度よりも低い温度でアニールすることにより、MoSi遮光膜の膜応力に影響を与えずCrOCN膜の応力を極力低く(好ましくは膜応力が実質ゼロ)なるよう調整した。
なお、CrOCN膜(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
補助遮光膜20は、膜中のCr含有率が33原子%であるCrOCNからなり、膜厚22nmで光学濃度0.5である。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用かつダブル露光対応の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0064】
(転写用マスクおよび転写用マスクセットの作製)
ダブル露光技術を用いて転写対象物(ウェハ上のレジスト膜)に転写パターンを露光転写するため、1つの密な設計転写パターンを分割して対となる2つの設計転写パターンを生成した。次に、製造した2枚のバイナリ型マスクブランクを使用し、分割された対となる2つの転写パターンをそれぞれ有する2枚の転写用マスク(転写用マスクセット)を以下の手順によりそれぞれ作製した(以下、1枚の転写用マスクの製造プロセスについて説明する。)。
マスクブランクの補助遮光膜20の上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジスト100(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコート法により膜厚が100nmとなるように塗布した(図1図5(1))。
次に、レジスト膜100に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターンの描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン100aを形成した(図5(2))。
次に、レジストパターン100aをマスクとして、補助遮光膜20のドライエッチングを行い、補助遮光膜パターン20aを形成した(図5(3))。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。
次いで、残留したレジストパターン100aを薬液により剥離除去した。
次いで、補助遮光膜パターン20aをマスクにして、遮光膜10を、SFとHeの混合ガスを用い、ドライエッチングを行い、遮光膜パターン10aを形成した(図5(4))。
次に、電子線描画(露光)用ポジレジスト(FEP171:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)のレジスト膜110をスピンコート法により膜厚が100nmとなるように塗布した(図5(5))。
次に、レジスト膜110に対し、電子線描画装置を用いて遮光部(遮光帯)のパターンを描画露光し、所定の現像液で現像して、レジストパターン110bを形成し(図5(6))、このレジストパターン110bをマスクとして、補助遮光膜パターン20aをClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)でドライエッチングによってエッチングし、補助遮光膜パターン20bを形成した(図5(7))。
次に、レジストパターン110bを剥離し、所定の洗浄を施して、補助遮光膜パターン20bとその下部にある遮光膜パターン10aの部分とで構成される遮光部(遮光帯)80を有するバイナリ型転写用マスクを得た(図5(8))。
上記のようにして、実施例1のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、ダブル露光技術対応のバイナリ型転写用マスクセットを作製した。
【0065】
なお、上記転写用マスクの作製例では、補助遮光膜パターン20aを形成後、レジストパターン100aを剥離除去したが、レジストパターン100aを遮光膜パターン10aが形成された後に剥離除去することもできる。このことは、後述する実施例2、3、6、7においても同様である。
【0066】
(比較例1)
(マスクブランクの作製)
実施例1と同様にして、透光性基板1上に、遮光膜10として、MoSiN膜(遮光層11)を厚さ50nmで、MoSiON膜(表面反射防止層12)を厚さ10nmで、それぞれ形成した(図1)。
次に遮光膜10上に、膜中のCr含有量が50原子%であるCrNからなるエッチングマスク膜を厚さ10nmで形成した(図1の補助遮光膜20をエッチングマスク膜に代えた構成。以下、エッチングマスク膜20として説明。)。
遮光膜10の合計膜厚は60nmであり、遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて2.8であった。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0067】
(転写用マスクおよび転写用マスクセットの作製)
実施例2と同様のプロセスで、エッチングマスク膜で補助遮光膜パターン20bに当たるものを作製し、その下部にある遮光膜パターン10aの部分とで構成される遮光部(遮光帯)80を有するバイナリ型転写用マスクを得た(図5(8))。
上記のようにして、比較例1のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、バイナリ型転写用マスクセットを作製した。
【0068】
(比較例2)
(マスクブランクの作製)
比較例1と同様にして、透光性基板1上に、遮光膜10として、MoSiN膜(遮光層11)、MoSiON膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した(図1)。このとき、MoSiN膜(遮光層11)の膜厚を、50nmから60nmに変えた。
遮光膜10の合計膜厚は70nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.3であった。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0069】
(転写用マスクの作製)
比較例1と同様にして、遮光膜パターン10aを形成した後(図5(4))、エッチングマスクパターン20aをClとOの混合ガスのドライエッチングによって剥離し、補助遮光膜パターン20bに当たるものは形成しない構成のバイナリ型転写用マスクを得た。
上記のようにして、比較例2のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、バイナリ型転写用マスクセットを作製した。
【0070】
(実施例2)
(マスクブランクの作製)
図2は、実施例2のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、遮光膜10として、MoSiN膜(裏面反射防止層13)、MoSiCH膜(遮光層11)、MoSiON膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した。
具体的には、透光性基板1上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N:He=6:11:16)で、ガス圧を0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、裏面反射防止層(MoSiN膜:Mo:Si:N=2.3原子%:56.5原子%:41.2原子%)13を12nmの膜厚で形成した。
次に、裏面反射防止層13上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=21原子%:79原子%)を用い、アルゴン(Ar)とメタン(CH)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CH:He=10:1:50)で、ガス圧を0.3Pa、DC電源の電力を2.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光層(MoSiCH膜:Mo:Si:C:H=19.2原子%:77.3原子%、C:2.0原子%、H:1.5原子%)11を29nmの膜厚で形成した。
次に、遮光層11上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)と酸素(O)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:O:N:He=6:5:11:16)で、ガス圧を0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、表面反射防止層(MoSiON膜:Mo:Si:O:N=2.6原子%:57.1原子%:15.9原子%:24.4原子%)12を15nmの膜厚で形成した。
なお、各層(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
遮光膜10の合計膜厚は56nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて2.8であった。
次に、上記基板を450℃で30分間加熱処理(アニール処理)した。
【0071】
次に、遮光膜10上に、補助遮光膜20を形成した(図2)。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、クロムターゲットを使用し、ArとCOとNとHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CO:N:He=21:37:11:31)、ガス圧:0.2Pa、DC電源の電力:1.8kWで成膜を行い、CrOCN膜(膜中のCr含有率:33原子%)を21nmの膜厚で形成した。このときCrOCN膜を前記MoSi遮光膜のアニール処理温度よりも低い温度でアニールすることにより、MoSi遮光膜の膜応力に影響を与えずCrOCN膜の応力を極力低く(好ましくは膜応力が実質ゼロ)なるよう調整した。
なお、CrOCN膜(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
補助遮光膜20は、膜中のCr含有率が33原子%であるCrOCNからなり、膜厚25nmで光学濃度0.7である。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用かつダブル露光技術対応の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0072】
(転写用マスクの作製)
実施例2のバイナリ型マスクブランクを用い、上記実施例1と同様にして、実施例2のバイナリ型転写用マスクを作製した。
上記のようにして、実施例2のマスクブランクからダブル露光用の転写用マスクセットを作製した。
【0073】
(実施例3)
(マスクブランクの作製)
図3は、実施例3のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
実施例1と同様に、透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、遮光膜10として、MoSiN膜(遮光層11)、MoSiON膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した。
次に、遮光膜10上に、エッチングマスク膜21を形成した(図3)。
具体的には、実施例1の補助遮光膜20の形成と同様の成膜条件で、CrOCN膜(膜中のCr含有率:33原子%)を10nmの膜厚で形成した。
【0074】
次に、エッチングマスク膜21上に、補助遮光膜22を形成した(図3)。
具体的には、実施例3の補助遮光膜20の形成と同様の成膜条件で、補助遮光膜22(MoSiN膜:Mo:Si:N=14.7原子%:56.2原子%:29.1原子%)を15nmの膜厚で形成した。
エッチングマスク膜21は、膜中のCr含有率が33原子%であるCrOCNからなり、補助遮光膜22は、膜中のMo含有量が14.7原子%であるMoSiNからなり、エッチングマスク膜21と補助遮光膜22の積層構造で、合計膜厚25nmで光学濃度0.7である。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用かつダブル露光対応の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0075】
上記実施例3の態様では、上記実施例1等のCr系補助遮光膜20(エッチングマスクを兼ねる)に比べ、遮光膜10に対するエッチングマスク膜21の薄膜化が可能となる。これにより、遮光膜10のより高いエッチング精度を得る。
【0076】
(転写用マスクの作製)
実施例1と同様に、ダブル露光技術を適用し、1つの密な設計転写パターンを対となる
2つの転写パターンに分割し、製造した2枚のバイナリ型マスクブランクを使用して対となる2つの転写パターンをそれぞれ有する2枚の転写用マスク(転写用マスクセット)を以下の手順によりそれぞれ作製した。
マスクブランクの補助遮光膜20の表面に、窒素ガスを用いて蒸散させたHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を接触させ、HMDS層からなるごく薄い層の密着性向上層を形成した。HMDS層は疎水性表面層であり、レジストの密着性が向上する。(図3図6(1))。
マスクブランクの密着性向上層の上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジスト100(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコート法により膜厚が75nmとなるように塗布した(図3図6(1))。
次に、レジスト膜100に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターンの描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン100aを形成した(図6(2))。
次に、レジストパターン100aをマスクとして、補助遮光膜22のドライエッチングを行い、補助遮光膜パターン22aを形成した(図6(3))。ドライエッチングガスとして、SFとHeの混合ガスを用いた。
次いで、残留したレジストパターン100aを薬液により剥離除去した。このとき、密着性向上層も同時に剥離除去される。
次に、補助遮光膜パターン22aをマスクとして、エッチングマスク膜21のドライエッチングを行い、エッチングマスクパターン21aを形成した(図6(4))。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。
次に、上記基板上に、電子線描画(露光)用ポジレジスト(FEP171:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)のレジスト膜110をスピンコート法により膜厚が100nmとなるように塗布した(図6(5))。
次に、レジスト膜110に対し、電子線描画装置を用いて遮光部(遮光帯)のパターンを描画露光し、所定の現像液で現像して、レジストパターン110bを形成した(図6(6))。
次に、エッチングマスクパターン21aをマスクにして、遮光膜10を、SFとHeの混合ガスを用い、ドライエッチングを行い、遮光膜パターン10aを形成した(図6(7))。これと同時に、レジストパターン110bをマスクとして、補助遮光膜パターン22aがドライエッチングによってエッチングされ、補助遮光膜パターン22bが形成された(図6(7))。
次に、レジストパターン110b及び補助遮光膜パターン22bをマスクとして、エッチングマスクパターン21aをClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)でドライエッチングによってエッチングし、エッチングマスクパターン21bを形成した(図6(8))。
次に、レジストパターン110bを剥離し、所定の洗浄を施して、補助遮光膜パターン22b、エッチングマスクパターン21bおよび遮光膜パターン10aの部分で構成される遮光部(遮光帯)80を有する転写用マスクを得た(図6(9))。
上記のようにして、実施例3のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、ダブル露光対応の転写用マスクセットを作製した。
【0077】
実施例4
(マスクブランクの作製)
図6(1)は、実施例5のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、遮光膜10として、CrOCN膜(裏面反射防止層13)、CrON膜(遮光層11)、CrOCN膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した(図2参照)。
具体的には、透光性基板1上に、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比Ar:CO:N:He=24:29:12:35)で、ガス圧0.2Pa、DC電源の電力を1.7kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、裏面反射防止層(CrOCN膜)13を31nmの膜厚で成膜した。
次に、裏面反射防止層13上に、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比Ar:NO:He=27:18:55)とし、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力を1.7kWとして、反応性スパッリング(DCスパッタリング)により、遮光層(CrON膜)11を15nmの膜厚に成膜した。
次に、遮光層11上に、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(ガス流量比Ar:CO:N:He=21:37:11:31)とし、ガス圧0.2Pa、DC電源の電力を1.8kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、表面反射防止層(CrOCN膜)12を14nmの膜厚に成膜した。
なお、各層(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
遮光膜10の合計膜厚は60nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて2.5であった。
【0078】
次に、遮光膜10上に、エッチングマスク膜21を形成した(図6(1))。
具体的には、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、エッチングマスク膜21(MoSiN膜:Mo:Si:N=2.9原子%:67.5原子%:29.6原子%)を5nmの膜厚で形成した。
【0079】
次に、エッチングマスク膜21上に、補助遮光膜22を形成した(図6(1))。
具体的には、実施例1の補助遮光膜20の形成と同様の成膜条件で、補助遮光膜22(CrOCN膜)を20nmの膜厚で形成した。
エッチングマスク膜21は、膜中のMo含有量が14.7原子%であるMoSiNからなり、補助遮光膜22は、膜中のCr含有率が33原子%であるCrOCNからなり、エッチングマスク膜21と補助遮光膜22の積層構造で、合計膜厚25nmで光学濃度0.6である。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用かつダブル露光対応の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0080】
(転写用マスクの作製)
実施例1と同様に、ダブル露光技術を適用し、1つの密な設計転写パターンを対となる2つの転写パターンに分割し、製造した2枚のバイナリ型マスクブランクを使用して対となる2つの転写パターンをそれぞれ有する2枚の転写用マスク(転写用マスクセット)を以下の手順によりそれぞれ作製した。
マスクブランクの補助遮光膜22の上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジスト100(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコート法により膜厚が75nmとなるように塗布した(図6(1))。
次に、レジスト膜100に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターンの描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン100aを形成した(図6(2))。
次に、レジストパターン100aをマスクとして、補助遮光膜22のドライエッチングを行い、補助遮光膜パターン22aを形成した(図6(3))。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。
次いで、残留したレジストパターン100aを薬液により剥離除去した。
次に、補助遮光膜パターン22aをマスクとして、エッチングマスク膜21のドライエッチングを行い、エッチングマスク膜のパターン21aを形成した(図6(4))。ドライエッチングガスとして、SFとHeの混合ガスを用いた。
次に、上記基板上に、電子線描画(露光)用ポジレジスト(FEP171:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)のレジスト膜110をスピンコート法により膜厚が100nmとなるように塗布した(図6(5))。
次に、レジスト膜110に対し、電子線描画装置を用いて遮光部(遮光帯)のパターンを描画露光し、所定の現像液で現像して、レジストパターン110bを形成した(図6(6)参照)。
次に、エッチングマスク膜のパターン21aをマスクにして、遮光膜10を、ClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)を用い、ドライエッチングを行い、遮光膜パターン10aを形成した(図6(7)参照)。これと同時に、レジストパターン110bをマスクとして、補助遮光膜パターン22aがドライエッチングによってエッチングされ、補助遮光膜パターン22bが形成された(図6(7)参照)。
次に、レジストパターン110b及び補助遮光膜パターン22bをマスクとして、エッチングマスク膜のパターン21aをSFとHeの混合ガスでドライエッチングによってエッチングし、エッチングマスク膜のパターン21bを形成した(図6(8)参照)。
次に、レジストパターン110bを剥離し、所定の洗浄を施して、補助遮光膜パターン20bとその下部にある遮光膜パターン10aの部分とで構成される遮光部(遮光帯)80を有する転写用マスクを得た(図6(9)参照)。
上記のようにして、実施例4のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、ダブル露光対応の転写用マスクセットを作製した。
【0081】
実施例5
(マスクブランクの作製)
図1は、実施例5のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、遮光膜10として、窒化タンタル(TaN)膜(遮光層11)、酸化タンタル(TaO)膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、Taターゲットを使用し、導入ガス及びその流量:Ar=39.5sccm、N=3sccm、DC電源の電力:1.5kWの条件で、膜厚41nmの窒化タンタル(TaN)からなる膜(Ta:93原子%、N:7原子%)を形成した。次に、同じTaターゲットを使用し、導入ガス及びその流量:Ar=58sccm、O=32.5sccm、DC電源の電力:0.7kWの条件で、膜厚11nmの酸化タンタル(TaO)からなる膜(Ta:42原子%、O:58原子%)を形成した。
遮光膜10の合計膜厚は52nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
【0082】
次に、遮光膜10上に、補助遮光膜20を形成した(図5(1))。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、クロムターゲットを使用し、ArとCOとNとHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CO:N:He=21:37:11:31)、ガス圧:0.2Pa、DC電源の電力:1.8kWで成膜を行い、CrOCN膜(膜中のCr含有率:33原子%)を22nmの膜厚で形成した。このときCrOCN膜を前記MoSi遮光膜のアニール処理温度よりも低い温度でアニールすることにより、MoSi遮光膜の膜応力に影響を与えずCrOCN膜の応力を極力低く(好ましくは膜応力が実質ゼロ)なるよう調整した。
なお、各層(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
補助遮光膜20は、膜中のCr含有率が33原子%であるCrOCNからなり、膜厚22nmで光学濃度0.5である。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用かつダブル露光技術対応の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0083】
(転写用マスクの作製)
実施例1と同様に、ダブル露光技術を適用し、1つの密な設計転写パターンを対となる2つの転写パターンに分割し、製造した2枚のバイナリ型マスクブランクを使用して対となる2つの転写パターンをそれぞれ有する2枚の転写用マスク(転写用マスクセット)を以下の手順によりそれぞれ作製した。
マスクブランクの補助遮光膜20の上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジスト100(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコート法により膜厚が100nmとなるように塗布した(図1図5(1))。
次に、レジスト膜100に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターンの描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン100aを形成した(図5(2))。
次に、レジストパターン100aをマスクとして、補助遮光膜20のドライエッチングを行い、補助遮光膜パターン20aを形成し(図5(3))。ドライエッチングガスとして、ClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)を用いた。
次いで、残留したレジストパターン100aを薬液により剥離除去した。
次いで、補助遮光膜パターン20aをマスクにして、遮光膜10のドライエッチングを行い、遮光膜パターン10aを形成した(図5(4))。このとき、酸化タンタル(TaO)層12のドライエッチングガスとして、CHFとHeの混合ガスを用いた。窒化タンタル(TaN)層11のドライエッチングガスとして、Clガスを用いた。
次に、電子線描画(露光)用ポジレジスト(FEP171:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)のレジスト膜110をスピンコート法により膜厚が200nmとなるように塗布した(図5(5))。
次に、レジスト膜110に対し、電子線描画装置を用いて遮光部(遮光帯)のパターンを描画露光し、所定の現像液で現像して、レジストパターン110bを形成し(図5(6))、このレジストパターン110bをマスクとして、補助遮光膜パターン20aをClとOの混合ガス(Cl:O=4:1)でドライエッチングによってエッチングし、補助遮光膜パターン20bを形成した(図5(7))。
次に、レジストパターン110bを剥離し、所定の洗浄を施して、補助遮光膜パターン20bとその下部にある遮光膜パターン10aの部分とで構成される遮光部(遮光帯)80を有するバイナリ型転写用マスクを得た(図5(8))。
上記のようにして、実施例5のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、ダブル露光技術対応の転写用マスクセットを作製した。
【0084】
実施例6
(マスクブランクの作製)
図1は、実施例6のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、遮光膜10として、MoSiN膜(遮光層11)、MoSiN膜(表面反射防止層12)、をそれぞれ形成した。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=13原子%:87原子%)を使用し、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気で、膜厚44nmのMoSiNからなる膜(Mo:10.2原子%、Si:64.7原子%、N:25.1原子%)を形成した。次に、同じモリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=13原子%:87原子%)を使用し、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気で、膜厚13nmのMoSiNからなる膜(Mo:7.5原子%、Si:50.1原子%、N:42.4原子%)を形成した。
遮光膜10の合計膜厚は57nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて2.8であった。
【0085】
次に、遮光膜10上に、補助遮光膜20を形成した。具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、クロムターゲットを使用し、ArとNとの混合ガス雰囲気で成膜を行い、CrN膜(膜中のCr含有率:80原子%)を9nmの膜厚で形成した。このときCrN膜を200℃でアニールし、CrN膜の応力を極力低くなるよう調整した。
なお、各層(薄膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
補助遮光膜20は、膜中のCr含有率が80原子%であるCrNからなり、膜厚9nmで光学濃度0.5である。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用かつダブル露光技術対応の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。
【0086】
(転写用マスクの作製)
実施例1と同様に、ダブル露光技術を適用し、1つの密な設計転写パターンを対となる2つの転写パターンに分割し、製造した2枚のバイナリ型マスクブランクを使用して対となる2つの転写パターンをそれぞれ有する2枚の転写用マスク(転写用マスクセット)をそれぞれ作製した。
以上のようにして、実施例6のマスクブランクから転写用マスクを2枚作製し、ダブル露光技術対応の転写用マスクセットを作製した。
【0087】
評価
実施例1〜6で得られたダブル露光技術対応のバイナリ型転写用マスクセットを用いて、ArF露光光で、ダブル露光によりウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写すると、8回露光される部分でレジスト膜の感光が転写パターンに影響が生じない程度に抑制できていることが確認された。
これに対し、比較例1で得られたバイナリ型フォトマスクセット(光学濃度(OD)2.8の遮光膜から、転写パターン領域の遮光膜パターンを形成し、遮光膜とエッチングマスク膜の積層構造から、転写パターン領域の外側の領域の遮光帯を形成した)を用いて、ArF露光光で、ダブル露光により、ウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写すると、8回露光される部分でレジスト膜が感光されてしまっており、転写パターンに影響が生じていることが確認された。すなわち、従来の遮光膜10に転写パターンを転写するマスクとしての役割のみで考慮された膜厚のエッチングマスクでは光学濃度が不足する(エッチングマスクの役割の観点では、ドライエッチングで遮光膜10にパターンが転写し終えるまでマスクとして機能する範囲でより薄い膜厚が好ましく、光学濃度の確保とは相反する関係である。)ことが明らかとなった。
【0088】
実施例1〜6で得られたダブル露光技術対応のバイナリ型転写用マスクセットを用いて、ArF露光光で、ダブル露光により、ウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写すると、転写パターン領域に対応する2回露光される部分でレジスト膜の感光が転写パターンに影響が生じない程度に抑制できていることが確認された。
また、転写パターン領域の遮光膜の膜厚を薄くできるので、転写パターン領域の遮光膜パターンの精度を比較例2に比べ向上できた。
さらに、遮光膜の膜厚が厚くなるに従い、電磁界(EMF)効果に起因するバイアスは大きくなり、膜厚が厚くなるに従って複雑なシミュレーションが必要となり、多大な負荷がかかるという問題を回避できた。
これに対し、比較例2で得られたバイナリ型フォトマスクセット(単純に遮光膜の膜厚を厚くしてダブル露光技術に対応する場合で、光学濃度(OD)3.3の遮光膜から、転写パターン領域の遮光膜パターンおよび転写パターン領域の外側の領域の遮光帯を形成した)を用いて、ArF露光光で、ダブル露光により、ウェハ上のレジスト膜に転写パターンを転写すると、転写パターン領域に対応する2回露光される部分や、転写パターン領域の外側の領域で8回露光される部分でレジスト膜の感光が転写パターンに影響が生じない程度に抑制できているものの、転写パターン領域の遮光膜の膜厚が厚くなるので、転写パターン領域の遮光膜パターンの精度の低下が確認された。
さらに、遮光膜の膜厚が厚くなるに従い、電磁界(EMF)効果に起因するバイアスは大きくなり、膜厚が厚くなるに従って複雑なシミュレーションが必要となり、比較例2の場合、他の実施例と比較して、多大な負荷がかかるという問題があることが確認された。
【0089】
以上、本発明を実施形態や実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施形態や実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは、当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0090】
1 透光性基板
10 遮光膜
11 遮光層
12 表面反射防止層
13 裏面反射防止層
20 補助遮光膜
21 エッチングマスク膜
22 補助遮光膜
100 レジスト膜
110 レジスト膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6