【実施例】
【0058】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0059】
本発明の実施例として、ハニカムセグメントの載置台及び接合装置を製造した。
【0060】
(
第1参考例)
(接合装置)
本参考例(以下、本参考例を実施例1及び本実施例とも称する)のハニカムセグメント接合装置1は、断面正方形状のハニカムセグメントを接合する接合装置であって、ハニカムセグメントの載置台2,塗布手段(図示せず)を有する。本実施例のハニカムセグメント接合装置1を、
図1〜2に示した。なお、
図1〜2は、載置台2にハニカムセグメントを載置したときに、ハニカムセグメントの端面側から見た正面図である。
【0061】
本実施例のハニカムセグメントの載置台2は、二つの載置面20A,20Bが直交した状態で、V字状(L字状)をなすようにもうけられている。それぞれの載置面20A,20Bは、湾曲していない広がった平面状をなしている。また、それぞれの載置面20A,20Bは、
図2に示したように、水平方向に対して、45度の角度をなすようにもうけられている。
【0062】
二つの載置面20A,20Bのそれぞれには、等間隔で、溝条3(30,3A−1,3A−2,3A−3・・・,3B−1,3B−2,3B−3・・・)が開口している。この溝条3は、ハニカムセグメント5を載置したときに、ハニカムセグメント5の軸方向に平行に設けられている。二つの載置面20A,20Bの交差する部分には、溝条30が形成されている。そして、載置面20Aには、溝条3の幅方向に、溝条30から等間隔で、溝条3(3A−1,3A−2,3A−3・・・)がもうけられている。載置面20Bにおいても同様に溝条3(3B−1,3B−2,3B−3・・・)がもうけられている。この溝条3は、載置台2の載置面20上に、断面方形のハニカムセグメント5を載置したときに、ハニカムセグメント5の角が溝条3の開口部上に位置するようにもうけられている。
【0063】
溝条3は、断面凹字状に形成されている。本実施例において、溝条3は、開口部の開口幅が10mm、深さが10mmの断面凹字状の形状に形成されている。また、本実施例においては、一辺が36mmの断面正方形のハニカムセグメントを接合するときに、溝条3の間隔(溝条3の開口部の中央部の間隔)は27mmであった。
【0064】
二つの載置面20A,20Bのそれぞれにおいては、ハニカムセグメント5を載置したときに、溝条3が形成されていない部分4,4がハニカムセグメント5の外周面と当接する。
【0065】
塗布手段(図示せず)は、ヘラが用いられた。
【0066】
また、本実施例のハニカムセグメント接合装置1は、溝条3内に浸入したスラリーを回収するスラリー回収装置(図示せず)がもうけられている。このスラリー回収装置は、溝条3の一方の端部にスラリーの粘度を低下させるための溶媒(水)を供給する水供給部と、溝条3を流れて溝条3に流れ落ちたスラリーを含む水を回収する水回収部と、を有する。
【0067】
(ハニカムセグメントの接合)
実施例のハニカムセグメント接合装置1を用いてハニカムセグメント5の接合を行った。接合されたハニカムセグメントは、従来公知の炭化ケイ素焼結体よりなる断面正方形状のハニカムセグメント5である。また、ハニカムセグメントの接合に用いられるスラリー(接合材スラリー)についても、従来公知のSiC系の接合材スラリーを用いた。
【0068】
まず、実施例のハニカムセグメント接合装置1のハニカムセグメントの載置台2の二つの載置面20A,20Bが交差する角部にハニカムセグメント5Aを載置する。このとき、ハニカムセグメント5Aの二つの外周面5Aa,5Abのそれぞれは、対向する二つの載置面20A,20Bと密着して支持されている。(
図3)
そして、ハニカムセグメント5Aの外周面5Acに、塗布手段を用いて所定の塗布厚さで接合材スラリー6を塗布する。(
図4)接合材スラリー6が塗布されたハニカムセグメント5Aの外周面5Acは、載置面20A側が下方側に傾斜している。そして、接合材スラリー6も流動性を有しており、塗布された外周面5Ac上をわずかに流動する。
【0069】
つづいて、接合材スラリー6が塗布されたハニカムセグメント5Aの外周面5Acに、別のハニカムセグメント5Bの外周面5Bbを押しつけて、両者5A,5Bを接合する。このとき、ハニカムセグメント5Aの外周面5Acに塗布されている接合材スラリー6は、両者5A,5Bの間から押し出されてはみ出る。押し出されてはみ出た接合材スラリー6は、載置面20Aに開口した溝条3A−1内に浸入し(滴下し)、載置面20Aの表面上から取り除かれる。(
図5)
次に、ハニカムセグメント5Aの外周面5Adに、塗布手段を用いて所定の塗布厚さで接合材スラリー6を塗布する。(
図6)接合材スラリー6が塗布されたハニカムセグメント5Aの外周面5Adは、載置面20B側が下方側に傾斜している。そして、接合材スラリー6も流動性を有しており、塗布された外周面5Ad上を若干流れる。
【0070】
つづいて、接合材スラリー6が塗布されたハニカムセグメント5Aの外周面5Adに、別のハニカムセグメント5Cの外周面5Caを押しつけて、両者5A,5Cを接合する。このとき、ハニカムセグメント5Aの外周面5Adに塗布されている接合材スラリー6は、両者5A,5Cの間から押し出されてはみ出る。押し出された接合材スラリー6は、載置面20Bに開口した溝条3B−1内に浸入し(滴下し)、載置面20Bの表面上から取り除かれる。(
図7)
そして、5D,5Eの順序でハニカムセグメント5の接合を順番に行い、4×4のハニカムセグメント5の接合体7が製造された。(
図8)
また、本実施例においては、ハニカムセグメント5の接合においては、溝条3(30,3A−1,3A−2,3A−3・・・,3B−1,3B−2,3B−3・・・)に流れ落ちた接合材スラリー6は、回収手段により回収された。
【0071】
本実施例においては、ハニカムセグメント5の外周面に接合材スラリー6を塗布したときに、過剰な接合材スラリー6がハニカムセグメント5の外周面(塗布面)から押し出されてはみ出ても(滴下しても)、溝条3内に浸入するため、接合材スラリー6がハニカムセグメント5の塗布面以外の表面に付着しなかった。このように、本実施例により製造されたハニカムセグメントの接合体7は、接合時にハニカムセグメント5の所定の外周面以外の面に接合材スラリー6が付着しなくなっており、その製造時に接合材スラリー6が付着することによる不具合の発生が抑えられた。
【0072】
特に、本実施例においては、ハニカムセグメント5の間の過剰な接合材スラリー6は、溝条3内に浸入するようにハニカムセグメント5の間から押し出される。換言すると、ハニカムセグメント5の接合時に、積極的に接合材スラリー6を押し出すことで、所望の間隔とすることができる。つまり、ハニカムセグメント5の位置(相対位置)の決定に、接合材スラリー6の影響を排除することができる。すなわち、ハニカムセグメント5を、高い精度で接合することができる。より具体的には、
図9に断面(部分断面)を示したように、接合材スラリー6により接合されたハニカムセグメント5,5の対向面の距離が一定(対向面が平行)であった。また、接合されたハニカムセグメント5,5の対向面に垂直な面が同一平面をなしていた。ハニカムセグメント5の間隔のバラツキを抑えられた。
【0073】
特に、本実施例においては、所定の外周面以外の外周面(たとえば、5Aa,5Ab)に接合材スラリー6が付着しないため、ハニカムセグメント5を接合するときに、ハニカムセグメント5の位置のズレが生じなくなっている。つまり、高い位置精度でハニカムセグメント5の接合を行うことができた。
【0074】
(比較例)
本比較例では、ハニカムセグメントの載置台の載置面20A,20Bに溝条3が形成していない(それぞれの載置面20A,20Bが凹凸のない平面状となっている)こと以外は、実施例1において用いられたハニカムセグメントの接合装置を用いてハニカムセグメントの製造を行った。
【0075】
本比較例では、実施例1の時と同様にしてハニカムセグメントの接合を行ったが、ハニカムセグメント5の外周面に接合材スラリー6を塗布したときに、過剰な接合材スラリー6がハニカムセグメント5の外周面(塗布面)から押し出されてはみ出た。そして、はみ出たスラリー6は、ハニカムセグメント5と当接する載置面20A,20Bの間に浸入してハニカムセグメント5の外周面に付着した。そして、この付着したスラリー6がハニカムセグメント5の位置ズレを生じさせ、この位置ズレが生じた状態でスラリー6が固化した。このように、本比較例において製造されたハニカムセグメントの接合体は、接合時にハニカムセグメント5の外周面に接合材スラリー6が付着して、ハニカムセグメント5の位置精度の低下を生じさせた。より具体的には、
図10に断面(部分断面)を示したように、接合材スラリー6により接合されたハニカムセグメント5,5の対向面の距離にバラツキ(対向面にそって広がる平面が交差する状態)があった。また、接合されたハニカムセグメント5,5の対向面に垂直な面も同一平面に位置しなくなっていた。
【0076】
(評価)
実施例1及び比較例のハニカムセグメントの接合体7の評価として、押し抜き試験を施した。
【0077】
実施例及び比較例の接合体7は、合計16個のハニカムセグメント5を4×4の配置で接合している。つまり、ハニカムセグメント5の位置ズレが生じない状態(実施例)であれば、接合材スラリー6の厚さが一定であり、軸方向に垂直な断面が正方形をなしている。これに対し、ハニカムセグメント5の位置ズレが生じた状態(比較例)では、軸方向に垂直な断面が正方形をなしていない。
【0078】
より具体的には、
図11,12に示したように、ハニカムセグメントの接合体7の外形において、最も長い辺の長さをL,ハニカムセグメント5の外形の一辺の長さをl(一定数),接合材スラリー6から形成される接合材層の厚さをa(一定数),ハニカムセグメントの積層数をn(たとえば、実施例では4)としたときに、
ズレなし : L=nl+(n−1)a
ズレ有り : L≠nl+(n−1)a
(L>nl+(n−1)a)
と、定義し、実施例の接合体7はズレなし,比較例の接合体7はズレ有りとした。
【0079】
押し抜き試験は、ハニカムセグメントの接合体7に、JASO M 505−87に規定の耐熱衝撃テストの後、万能試験機を用いてハニカムセグメントの抜け落ちを確認した。この押し抜き試験は、サンプル数が16個で行われた。押し抜き試験の試験結果を表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示したように、実施例の接合体7ではハニカムセグメント5のズレが16個のサンプルのいずれにおいても見られなかった。対して、比較例の接合体7ではハニカムセグメント5のズレが16個のサンプルの全てにおいて確認された。
【0082】
すなわち、実施例の接合装置1を用いて製造されたハニカムセグメントの接合体7は、ハニカムセグメントの位置精度の低下が抑えられたことで、高い耐久性能を発揮できることが確認できた。
【0083】
(
第2参考例)
本参考例(以下、本参考例を実施例2及び本実施例とも称する)は、
図13に示したように、載置台2の直交する二つの載置面20A,20Bが、水平方向と垂直方向とに沿って広がること以外は、実施例1と同様な構成のハニカムセグメントの載置台及び接合装置である。なお、
図13においては、載置台2の直交する二つの載置面20A,20B近傍を模式的に示した。
【0084】
本実施例においても、実施例1と同様に、余分な接合材スラリーを溝条3に排出する。そして、本実施例においても実施例1と同様な効果を発揮した。また、製造されたハニカム構造体においても、実施例1の時と同様な効果を発揮した。
【0085】
(
第3参考例)
本参考例(以下、本参考例を実施例3及び本実施例とも称する)は、
図14に示したように、溝条3の断面形状が異なること以外は、実施例1と同様な構成のハニカムセグメントの載置台及び接合装置である。なお、
図14においては、載置台2の載置面20Aに開口した溝条3を模式的に断面で示した。
【0086】
本実施例の溝条3は、
図14に示したように、溝内に角部がない断面U字状である。
【0087】
本実施例においても、実施例1と同様に、余分な接合材スラリーを溝条3に排出する。そして、本実施例においても実施例1と同様な効果を発揮した。また、製造されたハニカム構造体においても、実施例1の時と同様な効果を発揮した。
【0088】
(
第1実施例)
本実施例
(以下、本実施例を実施例4とも称する)は、
図15に示したように、載置台2の載置面20が、波状に形成されていること以外は、実施例1と同様な構成のハニカムセグメントの載置台及び接合装置である。なお、
図15においては、載置台2の載置面20Aの波状の形状を模式的に断面で示した。
【0089】
本実施例の載置面20は、
図15に示したように、載置面20上にハニカムセグメント5の軸方向に垂直な方向に沿って波が進むようにもうけられている。この載置面20においては、波の頂点がハニカムセグメント5と当接(線接触)する。また、それ以外の部分が、実施例1の溝条3と同様に機能する。
【0090】
本実施例においても、実施例1と同様に、余分な接合材スラリーを排出する。そして、本実施例においても実施例1と同様な効果を発揮した。また、製造されたハニカム構造体においても、実施例1の時と同様な効果を発揮した。
【0091】
(
第2実施例)
本実施例は、載置台2の載置面20が、網状に形成されていること以外は、実施例1と同様な構成のハニカムセグメントの載置台及び接合装置である。
【0092】
本実施例の載置面20は、網により形成されている。載置面20は、網を形成する部材がハニカムセグメント5と当接・支持し、網の目の部分が実施例1の溝条3と同様に機能する。
【0093】
本実施例においても、実施例1と同様に、余分な接合材スラリーを排出する。そして、本実施例においても実施例1と同様な効果を発揮した。また、製造されたハニカム構造体においても、実施例1の時と同様な効果を発揮した。
【0094】
(
第4参考例)
本参考例(以下、本参考例を実施例3及び本実施例とも称する)は、
図16に示したように、載置台2の載置面20が、凹凸状に形成されていること以外は、実施例1と同様な構成のハニカムセグメントの載置台及び接合装置である。なお、
図16においては、載置台2の載置面20Aの凹凸形状を模式的に示した。
【0095】
本実施例の載置面20は、
図16に示したように、凸となる部分が略円柱状に形成されている。この載置面20は、略円柱状の凸となる部材がハニカムセグメント5と当接・支持し、それ以外の部分が実施例1の溝条3と同様に機能する。
【0096】
本実施例においても、実施例1と同様に、余分な接合材スラリーを排出する。そして、本実施例においても実施例1と同様な効果を発揮した。また、製造されたハニカム構造体においても、実施例1の時と同様な効果を発揮した。