(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666278
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20150122BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20150122BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
H01L21/52 G
B05C5/00 101
B05C11/10
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-277972(P2010-277972)
(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2012-129288(P2012-129288A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】中津 顕
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−361144(JP,A)
【文献】
実開昭59−135170(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
B05C 5/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体がその吐出口から吐出されるシリンジと、開状態で流体供給源からの加圧流体をシリンジに供給して液体を吐出口から吐出させ、閉状態で流体供給源からの流体のシリンジへの供給を停止する開閉弁とを備え、前記開閉弁は、供給ポートと排気ポートとシリンジポートとの3ポートを有し、供給ポートには配管を介してエア供給源が取り付けられるとともに、排気ポートには負圧をかけるための配管が取り付けられ、開状態であるエア供給状態と閉状態であるエア排気状態との切り替えが可能であり、
少なくとも流体供給源を前記シリンジから離間した位置に配設し、
前記開閉弁の流体排出口をシリンジの反吐出口側に直接的に連結して、開閉弁をシリンジと一体化し、開閉弁のエア供給状態で、供給ポートとシリンジポートとがつながり、排気ポートが閉じてシリンジ内のエア圧が立ち上がって吐出口から液体が吐出し、開閉弁のエア排気状態で、排気ポートとシリンジポートとがつながり、供給ポートが閉じてシリンジ内を負圧状態として液体の吐出口からの吐出を停止することを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記シリンジは、前記吐出口が液体供給部位に対応する位置となるように移動するものであることを特徴とする請求項1の液体供給装置。
【請求項3】
前記吐出口は、内径が0.1mm〜2.0mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2の液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤等の液体を供給する液体供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装分野においては、基板に電子部品を固着する際に、基板に接着剤としての液体が塗布される。接着剤などの液体がシリンジに封入され、このシリンジにエアを導入することにより、液体がシリンジの吐出口から所定量ずつ基板に供給される(特許文献1、特許文献2)。特許文献1及び特許文献2の液体供給装置は、シリンジへ供給するエアの圧力及びエアの供給時間等を制御するコントローラを備えている。
【0003】
すなわち、
図5に示すように、液体Lの吐出口101が設けられたシリンジ100は、配管102(例えば長さ1m、内径3mm)を介してディスペンスコントローラ103に連結されている。ディスペンスコントローラ103は、シリンジ100に負荷するエア圧を適切なものに設定するレギュレータと、開閉弁と、CPU等とが内蔵されている。そして、CPUにてエア圧及び負荷時間を調節して液体Lの押し出し量を制御しつつ、開閉弁を開状態としてシリンジ100にエアを送込む。これにより、シリンジから一定時間、液体Lが定量吐出される。その後、エアの供給終了時にシリンジ内のエアを排気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−104855号公報
【特許文献1】特開2010−253376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長さ1m、内径3mmの配管内には、約7ccのエアが存在することになる。また、LEDチップ等の小さなワークをマウントする場合は、約7ccの液体が内封されるような小さなシリンジ100を使用する場合が多い。このため、配管102として前記した寸法のものを用いれば、シリンジ1本分に相当するエアが配管102に介在することになる。このため、ディスペンスコントローラ103の押し出し指令から、シリンジ側で圧力が上昇するまでの間にタイムラグが生じ、シリンジ100において立ち上がり(エア加圧を始めてからシリンジ内が設定値に到達するまでの時間)が鈍くなる。従って、押し出し指令から、実際に液体Lが吐出口101から供給されるまでの時間に遅れが生じて、微量の塗布コントロールができないという問題があった。
【0006】
また、前記したように小さなワークをマウントする場合は、ディスペンスコントローラ内の開閉弁が開状態となる時間は、例えば20msecであり、極めて短い時間に圧力をかけることになる。この場合、配管分の伝播遅れが原因となって、シリンジの圧力上昇に遅れが生じ、シリンジ内が設定圧となる前に立ち下げる(シリンジ内のエアを排気する)ことがある。このように、極めて短い時間にシリンジ内を設定の圧力に制御することは難しかった。
【0007】
また、この伝播遅れによるシリンジの圧力上昇の遅れを防止するために、配管102の内圧が上がるまでの時間を素早くする必要があり、この場合、ディスペンスコントローラ103に内蔵される開閉弁を大きくする必要があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて、加圧を始めてから液体が吐出口から押出されるまでの時間遅れを防止して設定量の液体を正確に塗布できる流体供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体供給装置は、液体がその吐出口から吐出されるシリンジと、開状態で流体供給源からの加圧流体をシリンジに供給して液体を吐出口から吐出させ、閉状態で流体供給源からの流体のシリンジへの供給を停止する開閉弁とを備え、
前記開閉弁は、開状態であるエア供給状態と閉状態であるエア排気状態との切り替えが可能であり、少なくとも流体供給源を前記シリンジから離間した位置に配設し、前記開閉弁の流体排出口
をシリンジの反吐出口側に直接的に連結して、開閉弁をシリンジと一体化し、開閉弁のエア供給状態で、シリンジ内のエア圧が立ち上がって吐出口から液体が吐出し、開閉弁のエア排気状態で、シリンジ内を負圧状態として液体の吐出口からの吐出を停止するものである。
【0010】
本発明の液体供給装置によれば、開閉弁の流体排出口とシリンジの反吐出口側とを連結したものである。通常、開閉弁は、配管を介してシリンジと連結されるディスペンスコントローラに内蔵されている。これに対して本発明では開閉弁をシリンジに連結しており、開閉弁を開状態とすることにより、配管を介することなくシリンジに流体を供給することができ、吐出口から液体を吐出させることができる。これにより、配管分のエアの立ち上がりを考慮する必要がなく、押し出し指令に対するシリンジの圧力上昇の遅れを防止できる。しかも、従来必要としていたディスペンスコントローラが不要となる。
【0012】
前記シリンジは、前記吐出口が液体供給部位に対応する位置となるように移動するものとでき、例えばダイボンダに適用することができる。
【0013】
前記吐出口は、内径が0.1mm〜2.0mmとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体供給装置は、押し出し指令に対する圧力上昇の遅れを防止できるため、加圧を始めてから、液体が吐出口から押出されるまでの時間遅れを防止して設定量の液体を正確に塗布できる。さらに、配管分の量のエアの立ち上がりを考慮する必要がなくなるため、流量の小さな開閉弁を使用することができるとの利点もある。さらには、従来必要としていたディスペンスコントローラが不要となるため、省スペースを図ることができるとともに、コストの低減を図ることもできる。
【0015】
開閉弁をシリンジと一体化すると、シリンジと開閉弁とは配管を介して連結されることがなくなるため、高い精度でシリンジの圧力上昇の遅れを防止することができる。
【0016】
本発明の液体供給装置をダイボンダに適用すると、リードフレームや基板等にチップを接着する際に、接着剤の塗布量精度を向上させることができる。
【0017】
LEDチップ等の小さなワークでは、内径約0.1mmの吐出口を使用することがあり、このような場合でも接着剤の塗布量精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明の液体供給装置の開閉弁のJIS記号を示す図である。
【
図4】本発明の液体供給装置の空気圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0020】
この液体供給装置は、半導体チップ等の電子部品を回路基板に実装するために、基板上に塗布される接着剤を供給する装置である。すなわち、
図1に示すように、液体供給装置は、例えばエポキシやシリコン等の接着剤としての液体Lが封入されたシリンジ1を備え、このシリンジ1の吐出口53から液体Lを押し出して図示省略の基板等の接着部位上に塗布するものである。本実施形態では、シリンジ1は、吐出口53が接着部位上に対応する位置となるように、図示省略の駆動手段にて移動するものである。
【0021】
この液体供給装置は、
図1に示すように、液体Lが封入されるシリンジ1と、シリンジ内に加圧流体(本実施形態では加圧エア)を供給する空気圧回路60(
図4参照)とを備えている。そして、この空気圧回路60を介してシリンジ内にエアを供給することによりエア圧で液体Lを吐出口53(後述するノズル51の先端部)から押出すものである。
【0022】
シリンジ1は、その内周側に液体Lが封入される円筒状の本体部50と、本体部50の下端部から下方(供給側)に液体Lの流路を狭くするノズル51とから構成されている。
図1では簡略化しているが、ノズル51と本体部50とは別体となっており、ノズル51は、本体部50の下端部に着脱自在に取付られている。このノズル51の先端部(下端部)が、液体Lの出口となる吐出口53となる。なお、シリンジ1の構成としては、本体部50とノズル51とが一体の構成であってもよい。本実施形態では、シリンジ1は5ccの液体Lを充填することができるものとしており、吐出口53の内径Dを0.1mm〜2.0mmとしている。
【0023】
シリンジ内において、液体Lの吐出口53と反対側には、下方に向かって縮径する円錐部を備えたプランジャ54がシリンジ長手方向へ摺動自在に嵌入されている。このプランジャ54と、後述するブロック体21との間に形成された空間55にエアが供給されることにより、プランジャ54は下方に押し下げられて、液体Lを吐出口53から押し出すことができる。
【0024】
開閉弁(電磁弁)2は、シリンジ1の反吐出口側に設けられている。開閉弁2は、
図2に示すように公知公用の3ポートタイプのものを使用している。
図3に示すように、P(供給)ポート3には、図示省略のエア供給源からエアを導入する配管6が取り付けられるとともに、R(排気)ポート4には、弱い負圧(例えば0〜−5kPa)をかけるための配管7が取り付けられている。開閉弁2は、常時開、常時閉のいずれにでも使用することができる。液体供給時には、Pポート3とAポート5とがつながり、Rポート4は閉じて、流体供給源30(
図4参照)から配管6を介してエアをシリンジ1の空間55に供給する。これにより、シリンジ内のエア圧が立ち上がり、所定圧に達すると液体Lが吐出口53から吐出する。液体Lの供給を停止する場合は、Pポート3が閉じ、A(シリンジ)ポート5とRポート4とがつながって弱い負圧(例えば0〜−5kPa)をかける。これにより、液体Lが吐出口53から吐出するのを停止するとともに、液体Lを吸引して液体Lの吐出口53からの垂れを防止することができる。
【0025】
図1に示すように、開閉弁2にはブロック体21が取り付けられている。このブロック体21は、Oリング22を介してシリンジ1の反吐出口側に内嵌されており、開閉弁2が、シリンジ1の蓋部材20と一体的に固定される。また、ブロック体21には、開閉弁2のAポート5に連通する図示省略の孔部が設けられており、この孔部を介してシリンジ内の空間55にエアを導入することができる。ブロック体21にはエアフィルタ23が取付られている。
【0026】
ところで、開閉弁2は空気圧回路60に設けられており、従来必要としていたディスペンスコントローラが不要となる。すなわち、本発明の液体供給装置の開閉弁2は、
図4に示すように流体供給源30に接続されており、流体供給源30が本体装置のCPU32に接続されている。流体供給源30は、コンプレッサ、レギュレータ等から構成されており、コンプレッサにてエアが供給されて、レギュレータにて開閉弁2への出力電圧及び出力電流を一定に保つように制御する。
【0027】
本発明では、開閉弁2の流体排出口とシリンジ1の反吐出口側とを連結しており、開閉弁2を開状態とすることにより、配管を介することなくシリンジ1に流体を供給することができ、吐出口53から液体Lを吐出させることができる。これにより、配管分のエアの立ち上がりを考慮する必要がなく、押し出し指令に対するシリンジ1の圧力上昇の遅れを防止できるため、加圧を始めてから、液体Lが吐出口53から押出されるまでの時間遅れを防止して設定量の液体を正確に塗布できる。さらに、配管分の量のエアの立ち上がりを考慮する必要がなくなるため、流量の小さな開閉弁2を使用することができるとの利点もある。しかも、従来必要としていたディスペンスコントローラが不要となるため、省スペースを図ることができるとともに、コストの低減を図ることもできる。
【0028】
開閉弁2の流体排出口をシリンジ1の反吐出口側に直接的に連結して、開閉弁2をシリンジ1と一体化しているので、シリンジ1と開閉弁2とは配管を介して連結されることがない。これにより、高い精度でシリンジ1の圧力上昇の遅れを防止することができる。
【0029】
シリンジ1は、吐出口53が液体供給部位に対応する位置となるように移動するものとしているため、例えばダイボンダに適用すると、リードフレームや基板等にチップを接着する際に、接着剤の塗布量精度を向上させることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、実施形態では吐出口53が液体の供給位置の上方に位置するようにシリンジ1が移動するものであったが、シリンジ1が固定されて、液体の供給位置側が動くものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 シリンジ
2 空気圧回路
20 蓋部材
53 吐出口
60 空気圧回路
D 内径
L 液体