(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、構造物の高層化等に伴い、CFT柱にも更なる構造性能(耐力、剛性)の向上が望まれている。この解決策として、鋼管内のコンクリート強度を高めることが考えられる。しかしながら、コンクリート強度が高くなるとコンクリートの火災時の強度低下や剛性低下が大きくなり、低強度のコンクリートに比べて耐火時間が短くなることが知られている。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、コンクリート充填鋼管柱の構造性能を高めつつ、優れた耐火性能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱は、鋼管と、前記鋼管の内周壁に沿って
コンクリートを打設して形成された筒状の第1コンクリート部と、前記第1コンクリート部の内部に設けられ、前記第1コンクリート部とコンクリート強度が異なる第2コンクリート部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、例えば、第1コンクリート部及び第2コンクリート部の一方を高強度コンクリートや超高強度コンクリートで構成し、第1コンクリート部及び第2コンクリート部の他方を一般的な強度のコンクリートで構成することにより、即ち、鋼管に充填される充填コンクリートのコンクリート強度を部分的に大きくすることにより、コンクリート充填鋼管柱の構造性能を高めつつ、耐火性能を確保することができる。
【0008】
請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱は、請求項1に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記第1コンクリート部は、現場で前記鋼管内にコンクリートを打設することにより形成されている。
請求項
3に記載のコンクリート充填鋼管柱は、請求項1
又は請求項2に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記第1コンクリート部のコンクリート強度が、前記第2コンクリート部のコンクリート強度よりも低い。
【0009】
請求項
3に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、火災時に、高温になり易い第1コンクリート部のコンクリート強度を第2コンクリート部よりも低くしたことにより、第1コンクリート部の熱劣化が抑制される結果、鋼管の局部座屈が抑制される。従って、コンクリート充填鋼管柱の構造性能を高めつつ、耐火性能を確保することができる。
【0010】
請求項
4に記載のコンクリート充填鋼管柱は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のコンクリート充填鋼管柱において、前記第1コンクリート部が、骨材として硬質砂岩、安山岩、及び流紋岩の少なくとも1つを有し、前記第2コンクリート部は、骨材として石灰岩を有している。
【0011】
請求項
4に記載のコンクリート充填鋼管柱によれば、火災時に、高温になり易い第1コンクリート部の骨材に硬質砂岩、安山岩、流紋岩の少なくとも1つを用いることにより、第1コンクリート部の熱劣化が抑制される結果、鋼管の局部座屈が抑制される。従って、コンクリート充填鋼管柱の構造性能を高めつつ、耐火性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の構成としたので、コンクリート充填鋼管柱の構造性能を高めつつ、優れた耐火性能を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印Zは鋼管の軸方向を示している。
【0015】
先ず、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。
【0016】
図1及び
図2(A)には、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱10の一部が示されている。コンクリート充填鋼管柱10は、例えば、高層建物や超高層建物等の高い強度(例えば、設計基準強度で60N/mm
2以上、軸力比(軸力/(柱の水平断面積×充填コンクリートの設計基準強度)で0.3以上の高い軸力)が求められる柱として好適に用いられるものである。
【0017】
コンクリート充填鋼管柱10は、鋼管12と、鋼管12の内部に充填される充填コンクリート14を備えている。鋼管12は角形鋼管からなり、軸方向(矢印Z方向)を上下方向として、図示しない基礎等の上に立てられている。なお、鋼管12の外周部には耐火被覆が施されておらず、コンクリート充填鋼管柱10は、無耐火被覆のコンクリート充填鋼管柱(無耐火被覆CFT柱)とされている。
【0018】
鋼管12の内部に充填された充填コンクリート14は、第1コンクリート部としての外側コンクリート部14Aと、第2コンクリート部としての内側コンクリート部14Bを備えている。外側コンクリート部14Aは平面視にて略矩形形状の筒状(筒体)で、鋼管12の内周壁に沿って充填されたコンクリートが硬化したものであり、充填コンクリート14の外周部を構成している。外側コンクリート部14Aの略中央部には、鋼管12の軸方向へ延びる中空部16が形成されている。この中空部16には、内側コンクリート部14Bが設けられている。内側コンクリート部14Bは平面視にて略矩形形状で、外側コンクリート部14Aの中空部16に充填されたコンクリートが硬化したものであり、外側コンクリート部14Aと一体化されている。
【0019】
なお、本実施形態では、一例として、先ず、鋼管12の内部に図示しない筒状の型枠を仮設し、当該型枠と鋼管12との間にコンクリートを充填して外側コンクリート部14Aを形成し、次に、型枠を撤去してから外側コンクリート部14Aの中空部16にコンクリートを充填して、内側コンクリート部14Bを形成した。
【0020】
ここで、
図2(B)には、一例として、所定時間加熱されたコンクリート充填鋼管柱10の温度分布が示されている。なお、この温度分布は、コンクリート充填鋼管柱10の中心軸を通る水平方向の中心線Cに沿って測定した温度である。
図2(B)に示される温度分布から分かるように、加熱面側に近い充填コンクリート14の外周部では、充填コンクリート14の中央部と比較して、急激に温度が高くなっている。コンクリートは、一般に所定温度以上に加熱されると劣化(熱劣化)し、この状態で軸力を負担すると、脆性的に破壊され易くなる。このような熱劣化は、充填コンクリート14のコンクリート強度が高くなるに従って発生し易くなる。即ち、コンクリート強度が高いコンクリートでは、一般的な強度のコンクリートよりも低い温度で熱劣化が発生し易くなる。一方、充填コンクリート14の中央部は、充填コンクリート14の外周部と比較して温度が低く、熱劣化が発生し難い。
【0021】
このように、所定時間加熱された充填コンクリート14のうち、熱劣化する温度に達する領域を熱劣化域とし、熱劣化する温度に達しない領域を健全域とすると、本実施形態では、上記熱劣化の対策として、熱劣化域を外側コンクリート部14Aで構成すると共に、健全域を内側コンクリート部14Bで構成し、外側コンクリート部14Aのコンクリート強度を内側コンクリート部14Bのコンクリート強度よりも低くしている。即ち、熱劣化域と健全域とでコンクリートを打ち分け、熱劣化域のコンクリート強度を健全域のコンクリート強度よりも低くしている。一例として、内側コンクリート部14Bを超高強度コンクリート(例えば、設計基準強度60N/mm
2以上)で構成し、外側コンクリート部14Aを内側コンクリート部14Bよりもコンクリート強度が低いコンクリート(例えば、設計基準強度60N/mm
2を下回る強度(未満))で構成されている。これにより、外側コンクリート部14Aの熱劣化が抑制されている。
【0022】
なお、熱劣化域と健全域との境界は、コンクリート充填鋼管柱10に求められる耐火性能(耐火時間)に応じて適宜変更可能である。また、実施形態におけるコンクリート強度とは、コンクリートの圧縮強度を示す指標であり、例えば、設計基準強度、呼び強度、又はコンクリートの調合設計時に設定される目標強度(調合強度)等を用いることができる。
【0023】
次に、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の作用について説明する。
【0024】
例えば、
図3に示されるように、火災によってコンクリート充填鋼管柱10が矢印A方向から加熱されると、先ず、温度上昇に伴って鋼管12が熱膨張し、鋼管12が軸方向(矢印Z方向)へ伸張すると共に、徐々に軟化して剛性が低下する。また、鋼管12の側壁12Aを介して、当該側壁12Aを内部から支持する外側コンクリート部14Aに熱が伝達され、外側コンクリート部14Aの温度が上昇する。そして、外側コンクリート部14Aの温度が所定温度(熱劣化温度)以上になると、外側コンクリート部14Aが熱劣化する。これにより、外側コンクリート部14Aが脆く、脆性的に破壊され易くなり、鋼管12の側壁12Aの支持強度が低下する。この結果、図中の二点鎖線で示されるように、温度上昇により剛性が低下した鋼管12の側壁12Aが面外方向へ凸状に湾曲し、局部座屈する。この際、矢印Qで示されるように、内側へ凸状に湾曲した鋼管12の側壁12Aによって外側コンクリート部14Aが押圧され、外側コンクリート部14Aが圧壊する。また、鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生すると、鋼管12の軸方向(矢印Z方向)に縮むため、鋼管12が負担していた軸力Fの一部が充填コンクリート14に導入され、充填コンクリート14の負担軸力が増加する。これにより、外側コンクリート部14Aの圧壊が促進され、コンクリート充填鋼管柱10の耐力(軸耐力)が急激に低下し、最終的に破壊に至る。
【0025】
ここで、前述したように、一般にコンクリートは、コンクリート強度が高くなると、早期に熱劣化する。そして、鋼管12の側壁12Aを内部から支持する外側コンクリート部14Aが早期に熱劣化すると、コンクリート充填鋼管柱10が所定の耐力(火災時耐力)を発揮する前に、鋼管12の側壁12Aに局部座屈が発生し、コンクリート充填鋼管柱10の耐力が急激に低下してしまう。
【0026】
そこで、本実施形態では、熱劣化域にある外側コンクリート部14Aを、健全域にある内側コンクリート部14Bよりもコンクリート強度が低いコンクリートで構成している。これにより、外側コンクリート部14Aに熱劣化が発生するまでの時間(加熱時間)が長くなるため、鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制される。更に、本実施形態では、内側コンクリート部14Bを超高強度コンクリートで構成したことにより、外側コンクリート部14Aが熱劣化した後においても、所定の耐力を維持することができる。従って、コンクリート充填鋼管柱10の耐火性能が向上する。また、鋼管12を外側から被覆する耐火被覆材等を省略することができるため、施工性の向上、コスト削減を図ることができる。
【0027】
更に、内側コンクリート部14Bのみを超高強度コンクリートで構成し、外側コンクリート部14Aを内側コンクリート部14Bよりもコンクリート強度が低いコンクリートで構成したことにより、充填コンクリート14の軸耐力が向上するため、耐火性能だけでなく、耐震性能も向上する。従って、コンクリート充填鋼管柱10の構造性能を高めつつ、耐火性能を確保することができる。
【0028】
次に、第1実施形態に係るコンクリート充填鋼管構造の変形例について説明する。
【0029】
本変形例では、内側コンクリート部14Bを構成するコンクリートの骨材として石灰岩(以下、「石灰岩骨材」という)が用いられ、外側コンクリート部14Aを構成するコンクリートの骨材として硬質砂岩(以下、「硬質砂岩骨材」という)が用いられている。なお、外側コンクリート部14Aのコンクリート強度は、上記実施形態と同様に、内側コンクリート部14Bよりも低くされている。
【0030】
ここで、石灰岩は、硬質砂岩、安山岩、流紋岩等と比較して安価で、かつコンクリート強度の高強度化(設計基準強度で80N/mm
2程度まで)が可能であり、近年、骨材として広く用いられるようになっている。しかしながら、石灰岩骨材を用いた高強度のコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートと比較して耐火性能が低く、火災時に加熱されると熱劣化し易いことが知られている。下記の耐火試験でも同様の傾向が得られている。
【0031】
耐火試験では、2つの試験体1,2に鉛直荷重(軸力比=0.4)を載荷しながら、試験体1,2をバーナーで加熱し、各試験体1,2の軸方向の変形量をそれぞれ測定した。試験体1では、石灰岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱であり、試験体2では、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートを角形鋼管に一律に充填した従来のコンクリート充填鋼管柱である。また、試験体1,2における角形鋼管の水平断面積は同一であり、これらの角形鋼管に充填されるコンクリートのコンクリート強度も略同一(呼び強度55N/mm
2、試験時強度70N/mm
2程度)である。
【0032】
図4には、耐火試験の試験結果が示されている。図中に実線で示す曲線は試験体1の試験結果であり、点線で示す曲線は試験体2の試験結果である。なお、
図4における横軸は加熱時間(分)であり、縦軸は試験体1,2の軸方向の変形量(mm)である。この変形量(mm)は、各試験体1,2に鉛直荷重を載荷した状態をゼロとし、軸方向に伸びる方向を正、軸方向に縮む方向を負としている。
【0033】
図4に示される試験結果から、石灰岩骨材を用いた試験体1は、硬質砂岩骨材を用いた試験体2よりも早期に軸方向の変形量(縮み量)が大きくなり、急激に耐力が低下したことが分かる。これは、石灰岩骨材を用いた試験体1では、充填コンクリートの外周部が早期に熱劣化し、鋼管の側壁に局部座屈が発生したためと考えられる。石灰岩骨材を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートに比べ耐火性能が劣ることが知られている。試験体1は加熱によって熱劣化し、脆くなった鋼管周辺のコンクリートが、
図3に示す鋼管の面外への変形を抑えることができなくなり、鋼管の局部座屈によって脆性的に崩壊されたものと思われる。このように負担軸力が大きいCFT柱(例えば軸力比0.3以上)に石灰岩のように脆い骨材を用いる場合は、充填コンクリートが十分な耐力を残している場合でも、鋼管の局部座屈によって早期に破壊が生じる。なお、骨材として安山岩、流紋岩を用いたコンクリートは、硬質砂岩骨材を用いたコンクリートと同等以上の耐火性能を有することが知られている。従って、石灰岩骨材を用いたコンクリートは、安山岩、流紋岩を用いたコンクリートよりも早期に熱劣化するが分かる。
【0034】
そこで、本実施形態では、火災時に高温になり難い内側コンクリート部14Bに石灰岩骨材を用い、火災時に高温になり易い外側コンクリート部14Aに硬質砂岩骨材を用いている。このように、石灰岩骨材よりも耐火性能に優れ、熱劣化し難い硬質砂岩骨材を外側コンクリート部14Aに用いることにより、火災時に、外側コンクリート部14Aに熱劣化が発生するまでの時間(加熱時間)が長くなるため、鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制される。従って、コンクリート充填鋼管柱10の耐火性能が向上する。更に、外側コンクリート部14Aと比較して、高温になり難い内側コンクリート部14Bに安価な石灰岩骨材を用いることにより、コスト削減を図りつつ、内側コンクリート部14Bの高強度化を図ることができる。
【0035】
なお、外側コンクリート部14Aには、骨材として硬質砂岩、安山岩、流紋岩を適宜組み合わせて用いても良い。
【0036】
次に、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
【0037】
図5には、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱30が示されている。コンクリート充填鋼管柱30は、外側コンクリート部14Aの中空部16に内側鋼管32が配置された二重鋼管構造とされている。内側鋼管32は、外側の鋼管12(外側鋼管)と同じ形状の角形鋼管とされ、軸方向を上下方向にすると共に、その中心軸を鋼管12の中心軸に略一致させて鋼管12の内部に配置されている。また、内側鋼管32は、前述した熱劣化域と健全域の境界上に配置されており、鋼管12と内側鋼管32との間に外側コンクリート部14Aが設けられ、内側鋼管32の内部に内側コンクリート部14Bが設けられている。これらの鋼管12、内側鋼管32、外側コンクリート部14A、及び内側コンクリート部14Bは、コンクリートの付着力によって一体化されている。
【0038】
本実施形態では、一例として、先ず、鋼管12の内部に内側鋼管32を配置し、次に、鋼管12と内側鋼管32との間にコンクリートを充填して外側コンクリート部14Aを形成すると共に、内側鋼管32の内部にコンクリートを充填して内側コンクリート部14Bを形成した。なお、工場等で、予め外側コンクリート部14Aを形成し、現場で内側コンクリート部14Bを形成しても良い。
【0039】
次に、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の作用について説明する。
【0040】
本実施形態では、鋼管12と内側鋼管32との間に設けられた外側コンクリート部14Aによって、対向する鋼管12の側壁12Aと内側鋼管32の側壁32Aとが連結されており、いわゆるサンドイッチ構造になっている。従って、鋼管12の側壁12Aの面外剛性が向上するため、火災時における鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制される。更に、曲げやせん断に対する鋼管12及び内側鋼管32の靭性が向上する。従って、コンクリート充填鋼管柱30の耐火性能が向上する。
【0041】
また、内側鋼管32が内側コンクリート部14Bを拘束するコンファインド効果により、コンクリート充填鋼管柱30の耐力(軸耐力)が向上する。従って、耐火性能のみならず、コンクリート充填鋼管柱30の耐震性能も向上する。更には、外側コンクリート部14Aを成形するための型枠として内側鋼管32を用いることにより、コンクリート充填鋼管柱30の施工性が向上する。
【0042】
次に、第2実施形態に係るコンクリート充填鋼管柱の変形例について説明する。
【0043】
図6に示されるように、本変形例に係るコンクリート充填鋼管柱40では、外側鋼管としての鋼管12と内側鋼管32とが連結部材としての複数のリブ42で連結されている。これらのリブ42は板状で、長手方向を鋼管12の軸方向にすると共に、鋼管12の周方向に間隔を空けて鋼管12と内側鋼管32との間に複数配置されている。また、各リブ42は、鋼管12の下端部から上端部に渡って設けられ、鋼管12の側壁12A及び内側鋼管32の側壁32Aに溶接等でそれぞれ接合されている。これらのリブ42によって、仕切られた鋼管12と内側鋼管32との間の空間には、外側コンクリート部14Aを構成するコンクリートがそれぞれ充填されている。
【0044】
このように鋼管12と内側鋼管32とを複数のリブ42で連結することにより、鋼管12の側壁12Aの面外剛性が飛躍的に増加する。従って、火災時における鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱40の耐火性能が向上する。また、リブ42によって鋼管12と内側鋼管32とを連結することにより、運搬時やコンクリート充填時における内側鋼管32の移動が拘束される。従って、コンクリート充填鋼管柱40の施工性が向上する。
【0045】
なお、リブ42の形状、数、配置等は上記のものに限らず、適宜変更可能である。また、上記変形例では、各リブ42を鋼管12の下端部から上端部に渡って設けたが、長さが短くされた複数のリブ42を鋼管12の軸方向に間隔を空けて配置しても良いし、これらのリブ42を千鳥状に配置しても良い。更に、内側鋼管32やリブ42に、コンクリート充填用の貫通孔を形成しても良い。これにより、内側鋼管32の内部や、鋼管12と内側鋼管32との間の空間へのコンクリートの充填性が向上する。
【0046】
なお、上記第1,第2実施形態では、鋼管12の側壁12Aの局部座屈を抑制するために、外側コンクリート部14Aのコンクリート強度を内側コンクリート部14Bのコンクリート部よりも低くしたが、鋼管12の側壁12Aの局部座屈の抑制を目的としない場合は、外側コンクリート部14Aのコンクリート強度を内側コンクリート部14Bのコンクリート部と同じか若しくはそれよりも高くしても良い。例えば、外側コンクリート部14Aを高強度コンクリートや超高強度コンクリートで構成し、内側コンクリート部14Bを一般的なコンクリート強度のコンクリートで構成しても良い。このように、充填コンクリート14のコンクリート強度を部分的に大きくすることにより、コスト削減を図りつつ、コンクリート充填鋼管柱10,30,40の負担軸力を大きくすることができる。これと同様に、外側コンクリート部14Aの骨材として硬質砂岩、安山岩、流紋岩の少なくとも1を用い、内側コンクリート部14Bの骨材として石灰岩を用いても良い。
【0047】
また、第1,第2実施形態では、充填コンクリート14にコンクリート強度が異なる2つの外側コンクリート部14A及び内側コンクリート部14Bを設けたが、充填コンクリート14にコンクリート強度が異なる3つ以上の領域を層状に設けても良い。この場合、鋼管12の側壁12Aの座屈を防止する観点から、充填コンクリート14の外周部を構成する外側コンクリート部のコンクリート強度を相対的に低くすることが望ましい。
【0048】
更に、第1,第2実施形態において、コンクリート充填鋼管柱10,30,40の断面形状は適宜変更可能である。例えば、
図7に示されるように、内側コンクリート部14Bの形状を断面円形状にしても良い。また、鋼管12は、内部にコンクリートを充填可能であれば良く、例えば、
図8に示されるように、円筒形状の丸形鋼管44を用いて良いし、断面多角形状の鋼管を用いても良い。なお、
図7及び
図8に示される外側コンクリート部14Aは、遠心成形によって形成される。このように遠心成形で外側コンクリート部14Aを形成することにより、型枠を省略することができるため、コンクリート充填鋼管柱10,30,40の製造性が向上する。
【0049】
更にまた、外側コンクリート部14Aに、鋼繊維、鉄繊維、ガラス繊維等の繊維補強材を混入し、鋼管12の側壁12Aに対する支持強度を高めても良い。
【0050】
また、火災時に、外側コンクリート部14Aに爆裂が発生すると、鋼管12の側壁12Aに対する支持強度が低下し、鋼管12の側壁12Aが局部座屈する原因となる。この対策として、外側コンクリート部14Aにポリプロピレン繊維等の有機繊維を混入しても良い。この場合、火災時に加熱された有機繊維が溶融し、外側コンクリート部14A内に多数の細孔が形成される。これにより、外側コンクリート部14Aに発生した水蒸気が細孔を通して外部へ放出されるため、外側コンクリート部14Aの水蒸気圧が低くなり、外側コンクリート部14Aの爆裂が抑制される。従って、鋼管12の側壁12Aの局部座屈が抑制されるため、コンクリート充填鋼管柱の耐火性能が向上する。
【0051】
また、上記第1,第2実施形態におけるコンクリート充填鋼管柱10,30,40には、必要に応じて耐火被覆を施しても良い。
【0052】
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。