(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666314
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】電気光学距離測定ユニット
(51)【国際特許分類】
G01S 17/36 20060101AFI20150122BHJP
G01B 9/02 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
G01S17/36
G01B9/02
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-547014(P2010-547014)
(86)(22)【出願日】2009年2月10日
(65)【公表番号】特表2011-514513(P2011-514513A)
(43)【公表日】2011年5月6日
(86)【国際出願番号】CH2009000055
(87)【国際公開番号】WO2009103172
(87)【国際公開日】20090827
【審査請求日】2012年1月18日
(31)【優先権主張番号】230/08
(32)【優先日】2008年2月19日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】502121236
【氏名又は名称】ライカ・ジオシステムズ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LEICA GEOSYSTEMS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュッティ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ディートリッヒ
【審査官】
吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−141388(JP,A)
【文献】
特開平10−185523(JP,A)
【文献】
特開2002−76440(JP,A)
【文献】
特開2000−68553(JP,A)
【文献】
特開平10−62570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 17/00〜17/95、
7/48〜7/51
G01C 3/00〜3/32
G04F 10/00〜10/10
G01B 11/00〜11/30、
9/00〜9/10
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学距離測定ユニット(10)であって、
光源(1)を備え、前記距離測定ユニット(10)における光源の放出光は、少なくとも偏光ビームスプリッタ(3)と、電気光学変調器(5)と、λ/4板(6)とによって測定経路(8)に導かれて、前記測定経路(8)に沿って戻る光は、少なくとも前記λ/4板(6)と、前記電気光学変調器(5)と、前記偏光ビームスプリッタ(3)とによって検出器(4)に導かれ、さらに、前記電気光学変調器(5)の変調周波数と前記検出器(4)の信号とに従って前記測定経路(8)の長さを決定するための評価ユニット(11)を備え、前記光源(1)は、前記放出光の幅広いスペクトルを有し、
n
oが変調材料の通常の波長依存屈折率であり、n
eが変調材料の異常波長依存屈折率であり、l
crystalが変調結晶の長さであり、λが光源の波長であるときに、前記光源の帯域Δλが、
【数1】
の条件を満たす、電気光学距離測定ユニット。
【請求項2】
前記評価ユニット(11)は、フィゾー法に従って前記測定経路(8)の長さを測定するように設計される、請求項1に記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項3】
前記電気光学変調器(5)は、通過する光の偏光を変調するために設けられる、請求項1または2に記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項4】
前記光源(1)の前記発光領域は、10平方マイクロメートルより小さい、請求項1〜3のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項5】
前記光源(1)によって放出される前記光の強度は、3ミリワットと5ミリワットとの間である、請求項1〜4のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項6】
前記変調材料は、LiTaO3であり、前記放出光の前記スペクトルは、少なくとも10ナノメートルの帯域幅を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項7】
前記変調材料は、LiNbO3であり、前記放出光の前記スペクトルは、少なくとも5ナノメートルの帯域幅を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項8】
前記光源(1)は、スーパールミネッセントダイオードである、請求項1〜7のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項9】
前記光源(1)の前におけるビーム経路に、光アイソレータが配置されていない、請求項1〜8のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【請求項10】
周波数および帯域幅を安定させるための光バンドパスフィルタ(12)が、ビーム経路に配置される、請求項1〜9のいずれかに記載の距離測定ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学距離測定の分野に関し、特に請求項1のプリアンブルに従う電気光学距離測定ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
そのような電気光学距離測定は、たとえばEP−A−1 647 838で知られている。前記出願の内容は全体として、絶対距離測定のためのフィゾー法の機能を明らかにするために取り入れられる。本発明にとって重要であることは、この方法において、出て行きそして戻る測定光が変調器において変調されることである。測定光はレーザ、特にダイオードレーザによって生成される。前記変調の周波数の変化により、検出された測定光ビームの最小値が決定される(または、実質的に同じ意味では、強度の微分のゼロクロスである)。測定装置と再帰反射器の間の測定経路の長さは、最小周波数から決定される。測定光ビーム中の光学素子による付加的な偏光が、二次収差としての上記最小値を移動させることがわかっている。結果として、測定が乱されるとともに、補償の測定が実行されなければならない。偏光の乱れは、たとえば測定ビーム中の付加的なビーム偏向ミラーまたは再帰反射器によって起こり得る。
【0003】
WO 97/18486は、フィゾー法に従う電気光学絶対距離測定を開示する。その場合において、レーザビームは、生成されて、焦点光学ユニットおよび光アイソレータによってレーザ光を直線偏光させるための偏光ビームスプリッタに導かれ、そしてその後に、電気光学変調器と、外部の付加的な偏光の影響を除くためのさらなる電気光学結晶と、λ/4板(lambda/4 retarder)と、外部の光学ユニットとによる測定経路に導かれる。測定経路に沿って戻る光は、上記の素子を偏光ビームスプリッタまで通過するとともに、後者によって検出器に導かれる。評価ユニットは、検出器の信号に基づいて測定経路の長さを決定する役割を果たす。
【0004】
EP 1 744 119は、光学コヒーレンストモグラフィのための装置を記載する。これは、光周波数範囲に亘りスイープする光を用いる。その光は、広帯域光源、たとえば「エッジエミッティングLED(ELED)」または「スーパールミネッセントダイオード(SLD)」または「ファイバフルオレッセントソース(EDFFS)」によって生成される。光源からの光は、たとえばファブリペローフィルタまたは音響光学フィルタによって、その光が、選択された周波数線(frequency line)を有する予め定められた周波数範囲に亘りスイープするようにフィルタされる。広帯域光源からの光の残りは、したがって取除かれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
それゆえに、本発明の目的は、上記の不利な点を取除く、導入部において記載されたタイプの電気光学距離測定を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を備える電気光学距離測定によって達成される。
対応する電気光学距離測定ユニットは、したがって、光源を備え、距離測定ユニットにおけるその光源の放出光は、(変調器の屈折係数の温度補償のため)、少なくとも、偏光ビームスプリッタと、電気光学変調器と、λ/4板とによる測定経路へと導かれる。測定経路に沿って戻る、すなわち反射する光は、少なくとも、λ/4板と、電気光学変調器と偏光ビームスプリッタとによって検出器へと導かれる。さらに、距離測定ユニットは、電気光学変調器の変調周波数および検出器の信号に従って測定経路の長さを決定するための評価ユニットを備える。光源は、放出光の幅広いスペクトルを有する。好ましくは、光源は、スーパールミネッセントダイオード(SLDまたはSLED)である。レーザ光源に代えてスーパールミネッセントダイオードを用いるときのさらなる利点は、光源の前の光アイソレータが不要になることであり、前記アイソレータは、戻り光がレーザに進入して後者が発光するよう励起するのを防止することを目的とする。光アイソレータは、ただ1つの(伝搬)方向における特定の偏光方向を有する光波を伝達するが、反対方向(阻止方向)における任意の偏光の光を吸収する。
【0007】
本発明は、広帯域光源を使用するが、正確に制御された波長を有する狭帯域(レーザ)光源が、高い測定精度を得るために、対象とされた方法で用いられる、電気光学距離測定のための従来の構成とは一致していない。驚くべきことに、さらに以下で説明されるように、広帯域測定光の結果として生じる偏差は相互に補償する。
【0008】
電気光学変調器は、好ましくは、光の偏光を変調する。原理的には、本来のフィゾー法のように、振幅を変調する変調器を用いることもまた可能である。現実には、しかしながら、これは外乱の影響を受けやすい。
【0009】
検出器の信号は、好ましくは、変調器によって逆変調された戻り信号に対応する。電気光学変調器の変調周波数は、無線周波数の範囲、すなわち、たとえば2GHzから2.5GHzまでの範囲にある。
【0010】
驚くべきことに、広帯域光源の場合には、変調周波数が変化する場合における検出器の信号の最小値の周波数位置が、測定光の偏光の乱れによって、もはや(少なくとも重要でない程度に)影響を受けないことがわかる。結果として、これまでは慣習的であった、距離測定ユニットがレーザダイオードによって動作するときに必要となる補償装置は、もはや要求されなくなる。距離測定ユニットの構成が単純化される。
【0011】
光源の最小帯域幅は、好ましくは、変調器のパラメータを有する以下の関係によって決定される。
【0012】
【数1】
【0013】
この場合において、n
oは、複屈折変調材料の通常波長依存屈折率であり、n
eは、複屈折変調材料の異常波長依存屈折率であり、l
crystalは、結晶の長さであり、λは波長であり、Δλは帯域幅である。Δλの最小値は、したがってこの条件に由来する。
【0014】
光源の周波数は、実質的には望むように選ばれることが可能であり、たとえば異なるタイプのスーパールミネッセントダイオード(たとえば650nm、または750nm、または795nm、または800nm、または830nm、または840nm、または850nm、または1270nm、または1300nm、または1400nm、または1480nm、または1550nmの波長を有する)が使用されることができる。
【0015】
本発明の1つの好ましい実施形態において、光の周波数および帯域は、ビーム経路に配置された光バンドパスフィルタによって安定化されることができる。この場合において、フィルタの帯域は、好ましくは、上記のように決定された光源の最小の要求帯域よりも若干大きく、たとえば20%大きい。
【0016】
さらなる好ましい実施形態は従属請求項から明らかになる。
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面において各場合が概略的に示された、好ましい例示的な実施形態に基づいて、これまで以上に詳しく以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】フィゾー距離測定ユニットの構造を示す図である。
【
図2】従来技術に従う、変調周波数と検出器の信号との間の依存性の特徴的プロファイルを示す図である。
【
図3】本発明に従う、変調周波数と検出器の信号との間の依存性の特徴的プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図において用いられる参照符号およびその意味は、参照符号のリストにおいて総括される。原則として、同一の部分には図において同一の参照符号が与えられる。
【0019】
発明の具体化の方法
図1は、絶対距離測定のためのフィゾー距離測定ユニットの構造を示す。光源1は測定光を放出し、その測定光はコリメータ2と、偏光ビームスプリッタ3と、電気光学変調器5と、位相板(retarder)または位相差板(retarder plate)6およびビームエキスパンダ7とによって、測定経路8へ導かれる。測定経路8は、典型的には、数メートルから数百メートル、適切であるならば数キロメートルもの長さを有する。測定経路8の終端において、反射器、典型的にはキューブコーナ再帰反射器またはトリプルリフレクタ9が、測定光を反射する。後者は、戻り測定光として、ビームエキスパンダ7と、位相差板6と、電気光学変調器5と、偏光ビームスプリッタ3とを通過して検出器4を通る。電気光学変調器5は、好ましくは、出て行きそしてまた戻る測定光の偏光を変調する。この目的のため、それは、高周波変調周波数で変調器5を駆動するためのデバイスを有する。位相差板6はλ/4板であり、したがって直線偏光から円偏光を生成し、そして二重経路の後には、直線偏光であるが、90°回転した偏光方向、すなわち変調結晶における変調の交換軸を有する直線偏光を再び生成する。検出器4は戻り光の強度を測定する。評価ユニット11は、前記検出器4の出力信号を処理し、検出信号の最小値を繰返し決定するために電気光学変調器5の変調周波数を制御し、フィゾー法に従う距離の決定を実行する。さらにそのような距離測定ユニットの一般的に知られた素子、たとえばフィルタ、ポーラライザ、ミラーなどが存在することができるが、明確さのために図に示されていない。
【0020】
フィゾー法に従う絶対距離測定の機能のために、導入部で引用されたEP−A−1 647 838が参照される。
【0021】
本発明の1つの好ましい実施形態において、光バンドパスフィルタ12が付加的に存在する。前記フィルタは
図1において破線によって示されており、例としては直接的に光源1の前に示されている。しかしながら、バンドパスフィルタ12は光源1と検出器4との間のビーム経路におけるいかなる他の場所に配置されることもまた可能である。バンドパスフィルタ12は、通過する光のスペクトルを、光変調器5において用いられる変調材料に従って制限するとともに、特に、伝達する光の波長を安定化させる。
【0022】
図2は、従来技術に従う変調周波数fと検出器信号の振幅Aとの間の依存性の特徴的プロファイルを示す。その図は、fに対するAのプロファイルの1つの最小値を示す。破線は、偏光の乱れがない理想的なプロファイルを示し、実線は偏光の乱れを有するプロファイルを示す。偏光の乱れは、実際には、距離測定ユニット10または再帰反射器9の少なくとも1つの要素に存在し、光は、その波長および/またはその要素を通過する偏光の方向に依存するが、付加的に偏光され、すなわち偏光が変化させられる(「超過偏光(excess polarization)」)。
【0023】
偏光変調は、2つの相互に直交する光ベクトル成分の位相の変調とみなすことができる。したがって、たとえば直線偏光が円偏光となるように、それら偏光方向の間の位相を付加的にシフトさせることができる。そのような外乱要素は、特に、偏向ミラー(図示せず)および再帰反射器9である。電気光学変調器5の場合、そのような外乱は、特に、電気光学変調器5が最適に調整されていない(共振において動作した「平坦でない」変調器)、すなわち電気的励起周波数とその共振周波数とが一致していないときに最小周波数のシフトをもたらす。再帰反射器9の場合には、通常では再帰反射器は三面鏡(キューブコーナミラー)として具体化されるが、偏光の影響は、測定ビーム8に対して回転するとともに傾く再帰反射器9のために変化する。結果として、検出器4による測定が関係する限りは、このことは(周波数fiにおける)理想的な最小値Miから乱された最小値Mrへの最小値のシフトをもたらす。乱された最小値Mrは、異なる周波数frに対応し、したがってまた再帰反射器9に関する、異なる乱れた測定距離に対応する。
【0024】
図3は、本発明に従う変調周波数と検出器信号との間の依存性の特徴的プロファイルを示す。破線は偏光の乱れのない理想的プロファイルを示し、実線は偏光の乱れを有するプロファイルを示す。狭帯域の光源1の場合においては、DC信号成分(DC成分)の振幅は変調周波数および変調結晶の温度に依存することが明らかである。しかしながら広帯域光源の場合には、DC成分は波長で平均された方法で上昇し、その結果、最小値Mrが生じる周波数は変化しないままに保たれる!この有利な効果は、乱れた最小値を正しくするための計量的な補償測定を省くことを可能にする。
【0025】
光源1は、好ましくは、放出光の固有の帯域を有するスーパールミネッセントダイオード、または他の光源である。LiTaO
3が電気光学変調器5における変調材料として用いられるとき、帯域幅は少なくとも10ナノメートル、好ましくは少なくとも15ナノメートルとなるべきである。30から40ナノメートルの帯域幅は良い結果を与える。LiNbO
3が変調材料として用いられるとき、帯域幅は、記載された有利な効果が生じるために少なくとも5から10ナノメートルとなるべきである。これらの帯域幅は、好ましくは795ナノメーターの光波長に対して真に保持される。もし光バンドパスフィルタ12が存在するならば、それは通過する光を、最大で、変調材料に対応する帯域幅に制限する。フィルタの帯域幅はしたがって、少なくとも、光源の要求される帯域と同じぐらい広く、より良い結果のためには、光源の要求される帯域に対していくらか広い(なぜならここでは一般に、フィルタは光源よりもより鋭く帯域幅を制限するためである)。
【0026】
光源1は、好ましくは、小さい発光領域および放出光の高い強度を有する。光源1の発光領域は、この目的のため、好ましくは10平方マイクロメートルより小さく、特に4平方マイクロメートルより小さい。放出光の強度は、ビーム経路における伝達ロスおよび温度の影響を考慮して、目の安全性に関する規定によって一般的に制限される。結果として、光源から光の形態で放出される強度またはパワーは、典型的には3から5ミリワットである。
【符号の説明】
【0027】
1 光源、2 コリメータ、3 偏光ビームスプリッタ、4 検出器、5 電気光学変調器、6 λ/4板、7 ビームエキスパンダ、8 測定経路、9 再帰反射器、10 距離測定ユニット、11 制御および評価ユニット、12 バンドパスフィルタ、Mi 理想的最小値、Mr 実際の最小値。