【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、自律走行可能とした無人移動体であって、自律して走行させるための走行機構と、進行方向の地形の凹凸の情報を取得する外界計測部と、自己位置及び方位を取得する自己位置データ取得部と、前記外界計測部で得た進行方向の地形の凹凸の情報に基づいて、走行可能域,走行不能域及び未計測域の判定処理を行うデータ解析部と、前記データ解析部での判定結果に基づいて走行可能域,走行不能域及び未計測域を含む局所地図を作成する局所地図作成手段と、前記局所地図作成手段で作成した局所地図
上において、前記自己位置データ取得
部で取得した自己位置
データから進行方向で且つ機軸を中心にしてその両側に曲率半径が漸次小さくなる複数の円弧状探索線を展開させて、走行可能域から未計測域に伸びる円弧状探索線が存在する範囲を扇状走行可能域として抽出すると共に、前記自己位置データ取得部で取得した自己位置データから進行方向に複数の直線状探索線を放射状に展開させて、直線状走行可能域を抽出して、走行可能域地図を生成する走行可能域地図生成手段と、前記走行可能域地図生成手段で生成した走行可能域地図に基づいて、道なり方向,分岐路の位置,分岐路の数,道幅及び曲率の情報を認識する道情報認識手段と、前記道情報認識手段で認識した道情報に基づいて、走行経路を生成する走行経路生成手段と、前記道情報認識手段で認識した道情報に基づいて、交差点を曲がる段階における交差点旋回経路を生成する交差点旋回経路生成手段を備え、前記走行経路生成手段で生成された走行経路と、前記交差点旋回経路生成手段で生成された交差点旋回経路と、前記自己位置データ取得
部で取得した自己位置データとに基づいて前記走行機構を動作させて自律して走行する構成としたことを特徴としており、この無人移動体の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
また、本発明の請求項
2に係る無人移動体において、前記道情報認識手段は、前記扇状走行可能域が複数認められる交差点において、前記複数の扇状走行可能域毎に、各々の両端に位置する円弧状探索線間の中央を通過する円弧状探索線を該扇状走行可能域の代表円弧として定めた後、この代表円弧を前記走行不能域に触れるまで両側に平行移動させて、前記走行不能域にそれぞれ触れる一方の路端円弧及び他方の路端円弧の間隔を道幅とする走行路を設定し、これらの複数の走行路毎に、前記道幅の中央を走行路中央線として定めて、この走行路中央線の曲率及び指向方向を該走行路の曲率及び道なり方向として設定する構成としている。
【0010】
さら
に、本発明の請求項
3に係る無人移動体において、前記道情報認識手段は、走行不能域に達した前記直線状探索線のうちの互いに隣接する直線状探索線の各々の障害到達点の間隔が閾値を越える場合をギャップ有りとしてこれらの障害到達点を結ぶ障害到達線を分岐路候補としてホールドし、前記無人移動体の自己位置における道幅の中央から、該道幅の中央を中心とし且つ前記走行不能域に2点以上で接する内接円を進行方向に向けて一定間隔で順次描き入れて、前記内接円の各中心を結ぶラインが前記分岐路候補である前記障害到達線を通過しない分岐路を交差点として認識し、前記障害到達点のうちの前記無人移動体の自己位置から遠い方の遠到達点に続く走行不能域の境界に基づいて分岐路の道なりラインを設定して、すべての道なりライン毎に道幅、分岐路の長さ及び分岐路の方向を算出する構成としている。
【0011】
さらにまた、本発明の請求項
4に係る無人移動体において、前記走行経路生成手段は、前記道情報認識手段で複数の走行路毎に設定した各々の道幅,曲率及び道なり方向に基づいて、該複数の走行路の中から現在走行中の走行路と最も連なり易い走行路を道なり走行路として抽出する構成としている。
【0012】
さらにまた、本発明の請求項
5に係る無人移動体において、前記交差点旋回経路生成手段は、前記交差点において前記道なり走行路と分岐する他の走行路に向かわせる新規操舵指令を得た時点で、該他の走行路の走行路中央線における前記局所地図上の端部から機軸上に垂線をおろし、前記局所地図上で該垂線及び前記機軸の双方に内接する曲率半径一定の円弧を変更路として設定する構成としている。
【0013】
さらにまた、本発明の請求項
6に係る無人移動体において、前記局所地図作成手段は、未舗装道路において明瞭でない道端に点在する走行不能域を互いに連なる走行不能域に近似すると共に、走行可能域内で走行不能域として誤認識される孤立した走行不能域を除去して、局所地図を作成する構成としている。
【0014】
一方、本発明の請求項
7に係る発明は、自律走行可能とした無人移動体の制御方法であって、前記無人移動体の進行方向における地形の凹凸の情報を取得すると共に、該無人移動体の自己位置データを取得し、前記進行方向の地形の凹凸の情報に基づいて、走行可能域,走行不能域及び未計測域の判定処理を行った後、この判定結果に基づいて走行可能域,走行不能域及び未計測域を含む局所地図を作成し、次いで、この局所地図
上において、前記無人移動体の自己位置
データから進行方向で且つ機軸を中心にしてその両側に曲率半径が漸次小さくなる複数の円弧状探索線を展開させて、走行可能域から未計測域に伸びる円弧状探索線が存在する範囲を扇状走行可能域として抽出すると共に、前記無人移動体の自己位置データから進行方向に複数の直線状探索線を放射状に展開させて、直線状走行可能域を抽出して走行可能域地図を生成し、続いて、前記走行可能域地図から認識される道なり方向,分岐路の位置,分岐路の数,道幅及び曲率の各道情報に基づいて、走行経路を生成すると共に、交差点を曲がる段階では交差点旋回経路を生成し、前記走行経路と、前記交差点旋回経路と、前記無人移動体の自己位置データとに基づいて該無人移動体を走行させる構成としたことを特徴としており、この無人移動体の制御方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0016】
また、本発明の請求項
8に係る無人移動体の制御方法において、前記扇状走行可能域が複数認められる交差点では、前記複数の扇状走行可能域毎に、各々の両端に位置する円弧状探索線間の中央を通過する円弧状探索線を該扇状走行可能域の代表円弧として定めた後、この代表円弧を前記走行不能域に触れるまで両側に平行移動させて、前記走行不能域にそれぞれ触れる一方の路端円弧及び他方の路端円弧の間隔を道幅とする走行路を設定し、これらの複数の走行路毎に、前記道幅の中央を走行路中央線として定めて、この走行路中央線の曲率及び指向方向を該走行路の曲率及び道なり方向として設定する構成としている。
【0017】
さら
に、本発明の請求項
9に係る無人移動体の制御方法において、前記走行不能域に達した前記直線状探索線のうちの互いに隣接する直線状探索線の各々の障害到達点の間隔が閾値を越える場合をギャップ有りとしてこれらの障害到達点を結ぶ障害到達線を分岐路候補としてホールドし、前記無人移動体の自己位置における道幅の中央から、該道幅の中央を中心とし且つ前記走行不能域に2点以上で接する内接円を進行方向に向けて一定間隔で順次描き入れて、前記内接円の各中心を結ぶラインが前記分岐路候補である前記障害到達線を通過しない分岐路を交差点として認識し、前記障害到達点のうちの前記無人移動体の自己位置から遠い方の遠到達点に続く走行不能域の境界に基づいて分岐路の道なりラインを設定して、すべての道なりライン毎に道幅、分岐路の長さ及び分岐路の方向を算出する構成としている。
【0018】
さらにまた、本発明の請求項
10に係る無人移動体の制御方法において、前記複数の走行路毎に設定した各々の道幅,曲率及び指向方向に基づいて、該複数の走行路の中から前記無人移動体が走行中の走行路と最も連なり易い走行路を道なり走行路として抽出する構成としている。
【0019】
さらにまた、本発明の請求項
11に係る無人移動体の制御方法は、前記交差点において前記道なり走行路と分岐する他の走行路に前記無人移動体を向かわせる新規操舵指令を得た時点で、前記無人移動体を向かわせようとする前記他の走行路の走行路中央線における前記局所地図上の端部から機軸上に垂線をおろし、前記局所地図上で該垂線及び前記無人移動体の機軸の双方に内接する曲率半径一定の円弧を変更路として設定する構成としている。
【0020】
さらにまた、本発明の請求項
12に係る無人移動体の制御方法は、未舗装道路において明瞭でない道端に点在する走行不能域を互いに連なる走行不能域に近似すると共に、走行可能域内で走行不能域として誤認識される孤立した走行不能域を除去して、局所地図を作成する構成としている。
【0021】
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法は、道路がある環境下において用いるものであり、舗装道路、未舗装道路及び路肩が十分に整備されていないような道路のいずれの道路がある環境下にも適用可能である。
【0022】
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法において、無人移動体の進行方向における地形の凹凸の情報を取得する外界計測部としては、例えば、水平ラインスキャンタイプの1軸レーザレンジファインダが少なくとも一組あれば事足りるが、断面的な勾配データしか得ることができないデメリットを補うべく、ステレオカメラを使用したり、車高(約20cm)以上の起立障害物を検出するレーザレンジファインダを使用したりすることが望ましい。
そして、走行路を作成するうえで必要な刻々変化する自己位置及び方位を求める手段としては、例えば、GPSや、IMU(慣性計測装置)やデッドレコニングを用いることができる。
【0023】
また、本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法において、走行中の無人移動体がスムーズに走行を継続し得る走行路は、無人移動体の自己位置の進行方向にある走行可能域から未計測域に至る車幅以上の幅を有する領域であるとの判断に基づいて、このような走行可能域から未計測域に至る車幅以上の幅を有する領域の探索を行う。
具体的には、局所地図上において、無人移動体の自己位置から進行方向で且つ機軸を中心にしてその両側に曲率半径が漸次小さくなる複数の円弧状探索線を展開させて、走行可能域から未計測域に伸びる円弧状探索線が存在する範囲を扇状走行可能域として認識する、或いは、自己位置データ取得
部で取得した自己位置データから進行方向に複数の直線状探索線を放射状に展開させて、直線状走行可能域を抽出する。
【0024】
ここで、走行域が扇状を成しているのは現実的でないので、扇状走行可能域を車幅以上の幅を有する走行路に変換する必要がある。
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法において、例えば、扇状走行可能域が複数認められた場合、このエリアを交差点と見なして、複数の扇状走行可能域毎に、各々の両端に位置する円弧状探索線間の中央を通過する円弧状探索線を該扇状走行可能域の代表円弧として定め、この代表円弧を両側にそれぞれ走行不能域に触れるまで平行移動させて、走行路を設定するようにしている。つまり、走行不能域に触れた一方の路端円弧及び他方の路端円弧の間隔が走行路の道幅となる。
【0025】
そして、走行中の無人移動体がスムーズに走行を継続し得る走行路は、無人移動体が現在走行中の走行路と無理なく連続するであろうという視点に立ち、本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法では、複数の走行路毎に定めた道幅中央に位置する走行路中央線の曲率及び指向方向を該走行路の曲率及び道なり方向として設定し、各々の道幅,曲率及び道なり方向に基づいて、これらの走行路の中から、現在走行中の走行路と最も連なり易い走行路を道なり走行路として抽出して、この道なり走行路に無人移動体が向かうように制御する。
【0026】
上記した扇状走行可能域抽出の時点において、無人移動体の自己位置の進行方向にT字路やこのT字路に近いY字路が存在している場合には、無人移動体の自己位置から展開させる複数の円弧状探索線がすべて道路の境界に到達してしまい、走行可能域地図を作成することができなくなることが起こり得る。
【0027】
このような場合に備えて、本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法では、局所地図上において、進行方向に複数の直線状探索線を放射状に展開させて、直線状走行可能域を抽出した後に、交差点探索を行う。
すなわち、走行不能域に達した直線状探索線のなかで、隣接する直線状探索線の各々の障害到達点の間隔が閾値を越える場合はこれらの障害到達点を結ぶ障害物到達線を分岐路候補としてホールドし、必要に応じて未計測域に達する直線状探索線のなかで、最も両端に位置する直線状探索線の間隔が閾値を越える場合もこれらの未計測到達点を結ぶ未計測到達線を分岐路候補としてホールドする。
【0028】
この際、無人移動体の自己位置における道幅の中央から、道幅の中央を中心とし且つ走行不能域に2点以上で接する内接円を進行方向に向けて一定間隔で順次フィットさせていき、内接円の各中心を結ぶラインが分岐路候補である障害到達線を通過しない分岐路を交差点として認識し、内接円が接する障害到達線がない場合は袋小路として認識する。
そして、障害到達点のうちの無人移動体から遠い遠到達点に続く走行不能域の境界に基づいて分岐路の道なりラインを設定して、すべての道なりライン毎に道幅、分岐路の長さ及び分岐路の方向を算出する。
【0029】
一方、交差点において、道なり走行路に無人移動体を向かわせるのではなく、道なり走行路から分岐する他の走行路に無人移動体を向かわせる場合において、無人移動体は、オペレータからの新規操舵指令(方向指令)を得て行動する。すなわち、他の走行路の走行路中央線における局所地図上の端部から無人移動体の機軸に垂線をおろして、局所地図上で該垂線及び無人移動体の機軸の双方に内接する曲率半径一定の円弧を変更路として設定し、この変更路に沿って無人移動体は走行する。
【0030】
ここで、無人移動体の走行中に複数の走行不能域を検出した時点において、まず、通常道路上には孤立した障害物はなく、例え孤立した障害物を検出したとしてもそれは葦などの背丈のある植物等であって踏み倒すことが可能な障害物であるとの判断、及び、連なる走行不能域は道路の境界である(未舗装道路の明瞭でない道端の走行不能域は点在することが多い)との判断に基づいて、本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法において、複数の走行不能域が疎に点在する場合には、これらの走行不能域を除去する処理、例えば、ハフ変換、或いは大きさに基づいて走行不能域を除去する処理を施し、一方、複数の走行不能域が比較的密に点在する場合には、これらの走行不能域を互いに連なる走行不能域に近似する処理、例えば、ハフ変換、或いは最小自乗曲線近似により、連なる走行不能域に近似する処理を施す。
【0031】
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法において、オペレータから特に指示がない場合には、それまで走行してきた走行路に継続し易い道なり走行路が、進行方向の地形の凹凸の情報に基づいて局所地図上で抽出されるので、無人移動体は滑らかに自律走行することとなる。
【0032】
一方、交差点において、道なり走行路と分岐する他の走行路へ無人移動体を向かわせる場合には、交差点進入時にオペレータが新規操舵指令(方向指令)を出すと、無人移動体がこの指令に従った他の走行路への変更路を設定するので、無人移動体は道なり走行路を走行するのと同様に、変更路を介して円滑に他の走行路へ進行することとなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の請求項1に係る無人移動体及び請求項
7に係る無人移動体の制御方法では、上記した構成としているので、舗装道路や未舗装道路や整備されていない道路がある環境下で且つこれらの道路や交差点に関する事前情報が一切得られない状況下で、自律移動可能な無人移動体を遠隔操縦するに際して、曲がり道や交差点を道なりに円滑に走行させることが可能であり、交差点での右左折も曲折の指示を出すだけでスムーズに行わせることができ、したがって、上記した道路環境下における無人移動体の高速走行を実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0034】
また、本発明の請求項
1に係る無人移動体及び請求項
7に係る無人移動体の制御方法では、曲率半径が漸次小さくなる複数の円弧状探索線を展開させて、走行可能域から未計測域に伸びる円弧状探索線が存在する範囲を扇状走行可能域として認識するようにしているので、道が曲がっている場合において、道なりのイメージを確実に認識することが可能であり、加えて、直線状走行可能域も抽出することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0035】
さらに、本発明の請求項
2に係る無人移動体及び請求項
8に係る無人移動体の制御方法では、上記した構成としているので、扇状走行可能域が複数認められる交差点において、複数の扇状走行可能域毎に、車幅以上の道幅を有する走行路を設定することができる。
【0036】
さらにまた、本発明の請求項
3に係る無人移動体及び請求項
9に係る無人移動体の制御方法では、上記した構成としているので、T字路やこのT字路に近いY字路が存在している場合であったとしても、分岐路の位置や道幅や方向などといった情報を正しく認識することが可能である。
【0037】
さらにまた、本発明の請求項
4に係る無人移動体及び請求項
10に係る無人移動体の制御方法では、上記した構成としているので、現在走行中の走行路と最も連なり易い道なり走行路を抽出することができる。
【0038】
さらにまた、本発明の請求項
5に係る無人移動体及び請求項
11に係る無人移動体の制御方法では、上記した構成としているので、交差点において道なり走行路と分岐する他の走行路に向かわせる新規操舵指令を得た場合であったとしても、変更路を介して他の走行路に円滑に向かわせることができる。
【0039】
さらにまた、本発明の請求項
6に係る無人移動体及び請求項
12に係る無人移動体の制御方法では、上記した構成としているので、例えば、道端がはっきりしない未舗装道路を走行している際に、道路上や道端に複数の走行不能域を検出した時点において、道路上の孤立する走行不能域を無視しつつ、連なる走行不能域を道路の境界として捉えて、未舗装道路を円滑に走行させることができる。