(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既設脚柱と、既設脚柱間上部の既設梁と前記既設梁上の既設スラブとからなる既設上部構造とから構成されるラーメン構造物上に鉄道線路が設けられた鉄道高架橋の架替方法において、
橋軸方向に沿って前記既設上部構造上に工事桁を配置し、この工事桁によって前記鉄道線路を支持するとともに、前記支持された鉄道線路の下方で橋軸方向に配置された3本の既設脚柱の上端部に前記橋軸方向に長尺な仮設鋼材を接合する第1工程と、
前記仮設鋼材上に位置する既設上部構造を解体撤去する第2工程と、
前記解体撤去された既設上部構造の下方の地盤に前記3本の既設脚柱の各々の間に1本の新設脚柱をそれぞれ施工する第3工程と、
前記新設脚柱間の既設脚柱を解体撤去する第4工程と、
前記新設脚柱間上に新設梁と新設スラブからなる新設上部構造を築造する第5工程と、を含むことを特徴とする鉄道高架橋の架替方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の方法をラーメン構造を有する鉄道高架橋の架替に適用する場合、工事中に既設脚柱間の上部構造を切断するため、ラーメン構造が一時的に成立しなくなり鉄道高架橋の強度が低下する。そのため、上部構造を切断したままの状態で列車を通行させるためには、安全を確保するための処置が必要となる。
【0005】
また、既設地中梁の存在する鉄道高架橋においては、新設脚柱の基礎と既設の脚柱間の既設地中梁の位置が干渉するという課題がある。
【0006】
そこで、列車の通行について安全を確保しながらラーメン構造を有する既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に架け替えることを実現したいという要望がある。
【0007】
本発明は、列車の通行について安全を確保しながらラーメン構造を有する既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に架け替えることを実現する鉄道高架橋の架替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも一つを解決するために、本発明の鉄道高架橋の架替方法に関する発明は、例えば、
図1〜
図11に示すように、
既設脚柱と、既設脚柱間上部の既設梁と前記既設梁上の既設スラブとからなる既設上部構造とから構成されるラーメン構造物上に鉄道線路が設けられた鉄道高架橋の架替方法において、
橋軸方向に沿って前記
既設上部構造上に工事桁を配置し、この工事桁によって前記鉄道線路を支持するとともに、前記支持された鉄道線路の下方で橋軸方向に配置された
3本の既設脚柱の上端部に前記橋軸方向に長尺な仮設鋼材を接合する第1工程と、
前記工事桁によって前記鉄道線路を支持した状態で、前記仮設鋼材上に位置する既設上部構造を解体撤去する第2工程と、
前記解体撤去された既設上部構造の下方の地盤に
前記3本の既設脚柱の各々の間に1本の新設脚柱を
それぞれ施工する第3工程と、
前記新設脚柱間の既設脚柱を解体撤去する第4工程と、
前記新設脚柱間上に新設梁と新設スラブからなる新設上部構造を築造する第5工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、既設上部構造を解体撤去する前に、橋軸方向に沿って配置された工事桁によって前記鉄道線路を支持するとともに、前記支持された鉄道線路の下方で、橋軸方向に配置された
3本の既設脚柱の上端部に前記橋軸方向に長尺な仮設鋼材を接合することにより、前記鉄道線路を前記工事桁によって支持した状態で前記仮設鋼材により水平力を伝達できる。これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。よって、前記既設上部構造を解体撤去したままの状態でも列車の通行について安全を確保しながら既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に架け替えることができる。
【0010】
更に、本発明は、例えば、
図12〜
図17に示すように、
上記鉄道高架橋の架替方法において、
前記新設脚柱に隣り合う既設脚柱間上部の既設上部構造上に前記工事桁を移動して橋軸方向に沿って配置し、この工事桁によって鉄道線路を支持するとともに、前記仮設鋼材を切り離して橋軸方向に移動し、前記支持された鉄道線路の下方で橋軸方向に配置された
2本の既設脚柱の上端部およびこれら
2本の既設脚柱のうちの1つに隣り合う前記新設脚柱の上端部に前記仮設鋼材を接合する第6工程と、
前記工事桁によって前記鉄道線路を支持した状態で、前記仮設鋼材上に位置する既設上部構造を解体撤去する第7工程と、
前記解体撤去された上部構造の下方の地盤に新設脚柱を施工する第8工程と、
前記新設脚柱間の既設脚柱を解体撤去する第9工程と、
前記新設脚柱間上に新設梁と新設スラブとからなる新設上部構造を築造する第10工程とを前記第5工程後に順次所定回数行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、新設上部構造に隣り合う既設上部構造を解体撤去する前に、橋軸方向に沿って移動された前記工事桁によって鉄道線路を支持するとともに、前記支持された鉄道線路の下方で、橋軸方向に配置された
2本の既設脚柱の上端部およびこれら
2本の既設脚柱のうちの1つに隣り合う前記新設脚柱の上端部に前記仮設鋼材を接合することにより、前記鉄道線路を前記工事桁によって支持した状態で前記仮設鋼材により水平力を伝達できる。これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。よって、前記既設上部構造を解体撤去したままの状態でも列車の通行について安全を確保しながら同一工程を繰り返し行うことにより効率よく既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に架け替えることができる。
【0012】
更に、本発明は、例えば、
図1(b)に示すように、
上記鉄道高架橋の架替方法において、
前記橋軸方向に長尺な仮設鋼材は、橋軸直角方向に配置された仮設鋼材を介して前記
3本または2本の既設脚柱に接合され、前記
3本または2本の既設脚柱から離れた状態で接合されることを特徴とする鉄道高架橋の架替方法。
【0013】
本発明によれば、前記長尺な仮設鋼材が、既設脚柱と離れた状態で、橋軸直角方向に配置された仮設鋼材を介して接合されているため、前記長尺な仮設鋼材と既設脚柱が接しない状態にすることができる。これにより、前記長尺な仮設鋼材が、既設脚柱と接した状態と比べて、既設脚柱の撤去および新設脚柱の増築が容易になる。
【0014】
更に、本発明は、例えば、
図7に示すように、
上記鉄道高架橋の架替方法において、
前記既設脚柱間下部を繋ぐ既設地中梁が設けられており、
前記新設脚柱は、この既設地中梁
の各側面を新設基礎杭で挟むようにして、または前記既設地中梁の下端まで新設基礎で包み込むようにして新設基礎杭を施工し、前記既設地中梁と前記新設基礎杭
とを一体化した基礎を施工することにより設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、既設地中梁に新設基礎杭が接して施工される場合、前記既設地中梁と前記新設基礎杭を直接一体化することができる。また、既設地中梁から新設基礎杭が離れて施工される場合、前記新設基礎杭が前記既設地中梁と干渉せずに、前記既設地中梁と前記新設基礎杭と新設柱を一体化することができ、新設脚柱を築造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、列車の通行についての安全を確保しながらラーメン構造を有する既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に架け替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る鉄道高架橋の架替方法の概略を説明するための図であり、(a)は鉄道高架橋の側面図、(b)は
図1(a)のA−A断面図、(c)は
図1(b)のA部拡大図、(d)は
図1(c)のB−B断面図である。
【
図2】(a)は既設の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図2(a)のA−A断面図、(c)は
図2(a)のB−B断面図である。
【
図3】(a)は工事桁で支持された鉄道線路を備えた既設鉄道高架橋の側面図、(b)は
図3(a)のA−A断面図、(c)は
図3(a)のB−B断面図である。
【
図4】(a)は仮設鋼材が接合された既設脚柱を備えた既設鉄道高架橋の側面図、(b)は
図4(a)のA−A断面図、(c)は
図4(a)のB−B断面図である。
【
図5】(a)は既設上部構造を解体撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図5(a)のA−A断面図、(c)は
図5(a)のB−B断面図である。
【
図6】(a)は新設基礎を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図6(a)のA−A断面図、(c)は
図6(a)のB−B断面図である。
【
図7】(a)は新設基礎上に新設脚柱を施工した後の既設鉄道高架橋の側面図、(b)は
図7(a)のA−A断面図、(c)は
図7(a)のB−B断面図である。
【
図8】(a)は新設脚柱間の既設脚柱を撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図8(a)のA−A断面図、(c)は
図8(a)のB−B断面図である。
【
図9】(a)は新設脚柱間上部に新設梁を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図9(a)のA−A断面図、(c)は
図9(a)のB−B断面図である。
【
図10】(a)は新設梁上部に新設スラブの施工中の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図10(a)のA−A断面図、(c)は
図10(a)のB−B断面図である。
【
図11】(a)は新設梁と新設スラブとを一体化した後の新設上部構造を備えた鉄道高架橋の側面図、(b)は
図11(a)のA−A断面図、(c)は
図11(a)のB−B断面図である。
【
図12】(a)は工事桁および仮設鋼材を左方向に移動した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図12(a)のA−A断面図、(c)は
図12(a)のB−B断面図である。
【
図13】(a)は既設上部構造を解体撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図13(a)のA−A断面図、(c)は
図13(a)のB−B断面図である。
【
図14】(a)は新設基礎を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図14(a)のA−A断面図、(c)は
図14(a)のB−B断面図である。
【
図15】(a)は新設基礎上に新設脚柱を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図15(a)のA−A断面図、(c)は
図15(a)のB−B断面図である。
【
図16】(a)は新設脚柱間の既設脚柱を撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図16(a)のA−A断面図、(c)は
図16(a)のB−B断面図である。
【
図17】(a)は新設脚柱間上部に新設梁を施工し、新設梁上部に新設スラブを施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図17(a)のA−A断面図、(c)は
図17(a)のB−B断面図である。
【
図18】(a)は工事桁および仮設鋼材を左方向に移動した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図18(a)のA−A断面図、(c)は
図18(a)のB−B断面図である。
【
図19】(a)は既設上部構造を解体撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図19(a)のA−A断面図、(c)は
図19(a)のB−B断面図である。
【
図20】(a)は新設基礎を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図20(a)のA−A断面図、(c)は
図20(a)のB−B断面図である。
【
図21】(a)は新設基礎上に新設脚柱を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図21(a)のA−A断面図、(c)は
図21(a)のB−B断面図である。
【
図22】(a)は新設脚柱間の既設脚柱を撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図22(a)のA−A断面図、(c)は
図22(a)のB−B断面図である。
【
図23】(a)は新設脚柱間上部に新設梁を施工し、新設梁上部に新設スラブを施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図23(a)のA−A断面図、(c)は
図23(a)のB−B断面図である。
【
図24】(a)は工事桁および仮設鋼材を左方向に移動した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図24(a)のA−A断面図、(c)は
図24(a)のB−B断面図である。
【
図25】(a)は既設上部構造を解体撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図25(a)のA−A断面図、(c)は
図25(a)のB−B断面図である。
【
図26】(a)は新設杭と新設地中梁とからなる基礎を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図26(a)のA−A断面図、(c)は
図26(a)のB−B断面図である。
【
図27】(a)は新設基礎上に新設脚柱を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図27(a)のA−A断面図、(c)は
図27(a)のB−B断面図である。
【
図28】(a)は新設脚柱間の既設脚柱を撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図28(a)のA−A断面図、(c)は
図28(a)のB−B断面図である。
【
図29】(a)は新設脚柱間上部に新設梁を施工し、新設梁上部に新設スラブを施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図29(a)のA−A断面図、(c)は
図29(a)のB−B断面図である。
【
図30】(a)は工事桁および仮設鋼材を右方向に移動した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図30(a)のA−A断面図、(c)は
図30(a)のB−B断面図である。
【
図31】(a)は既設上部構造を解体撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図31(a)のA−A断面図、(c)は
図31(a)のB−B断面図である。
【
図32】(a)は新設基礎を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図32(a)のA−A断面図、(c)は
図32(a)のB−B断面図である。
【
図33】(a)は新設基礎上に新設脚柱を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図33(a)のA−A断面図、(c)は
図33(a)のB−B断面図である。
【
図34】(a)は新設脚柱間の既設脚柱を撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図34(a)のA−A断面図、(c)は
図34(a)のB−B断面図である。
【
図35】(a)は新設脚柱間上部に新設梁を施工し、新設梁上部に新設スラブを施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図35(a)のA−A断面図、(c)は
図35(a)のB−B断面図である。
【
図36】(a)は工事桁および仮設鋼材を右方向に移動した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図36(a)のA−A断面図、(c)は
図36(a)のB−B断面図である。
【
図37】(a)は既設上部構造を解体撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図37(a)のA−A断面図、(c)は
図37(a)のB−B断面図である。
【
図38】(a)は新設杭と新設地中梁とからなる基礎を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図38(a)のA−A断面図、(c)は
図38(a)のB−B断面図である。
【
図39】(a)は新設基礎上に新設脚柱を施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図39(a)のA−A断面図、(c)は
図39(a)のB−B断面図である。
【
図40】(a)は新設脚柱間の既設脚柱を撤去した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図40(a)のA−A断面図、(c)は
図40(a)のB−B断面図である。
【
図41】(a)は新設脚柱間上部に新設梁を施工し、新設梁上部に新設スラブを施工した後の鉄道高架橋の側面図、(b)は
図41(a)のA−A断面図、(c)は
図41(a)のB−B断面図である。
【
図42】(a)は工事桁および仮設鋼材を右方向に移動した後の鉄道高架橋の側面図であり、(b)は
図42(a)のA−A断面図、(c)は
図42(a)のB−B断面図である。
【
図43】(a)から(e)は仮設鋼材を既設脚柱に接合する一例を説明するための図である。
【
図44】(a)から(e)は仮設鋼材を既設脚柱に接合する一例を説明するための図である。
【
図45】(a)から(d)は仮設鋼材を既設脚柱に接合する一例を説明するための図である。
【
図46】新設基礎形状の変形例を示す図であり、(a)は鉄道高架橋の側面図、(b)は
図46(a)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<実施の形態>
1.鉄道高架橋の架替方法の概略
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係る鉄道高架橋の架替方法の概略について説明する。
はじめに、
図2における既設鉄道高架橋について説明する。符号100は鉄道線路であり、符号101aから101hは既設脚柱であり、符号103aは既設梁であり、符号103bは既設スラブであり、符号103は既設梁103aと既設スラブ103bとからなる既設上部構造である。ここで、鉄道線路100は、少なくとも枕木及びレールから構成され、既設脚柱と既設梁とからなるラーメン構造が維持された状態で列車の通行に必要な構成要素をいい、既設上部構造103により支持されている。そのため、既設上部構造103を切断してラーメン構造が成立しなくなると、鉄道高架橋の強度が低下する。上部構造を切断したままの状態で列車を通行させるためには安全を確保するための処置が必要となる
【0020】
図1は、鉄道高架橋の既設上部構造が解体撤去された状態で、列車の通行について安全を確保している状態を示している。
図1(a)および
図1(b)において、符号1a,1bは新設脚柱を示し、符号3は、新設梁および新設スラブからなる新設上部構造を示し、符号7は新設基礎杭を示す。符号20は既設スラブ103bの代わりに鉄道線路100を支持する工事桁を示し、符号30は既設梁103aの代わりに既設脚柱101a,101b等と接合され水平力を伝達するための長尺な仮設鋼材である。ここで、
図1(a)に示すように、新設脚柱1a,1bは既設脚柱101a〜101c間にそれぞれ施工される。そして、新設脚柱1a,1b間の既設脚柱101bは、新設脚柱1a,1bが施工された後に解体撤去される。その後、新設上部構造3が築造され、新設脚柱1a,1bと新設上部構造3とからなるラーメン構造を有する鉄道高架橋に架け替えられる。
【0021】
図1(c)は、レール100aと枕木100bを含む鉄道線路100を支持する工事桁20の一例を示す。工事桁20は、主として、H形鋼または極厚H形鋼からなる長尺な主桁20aと、枕木100bを受けるH形鋼の下部等を切断加工した枕木受桁20bと、主桁20aと枕木受桁20bとを接合する棚板20cとからなる。また、必要に応じて棚板20cの下部等に補強材20dが適宜設けられている。なお、H型鋼を用いずに、鋼板を溶接して、工事桁20を製作してもよい。
【0022】
2.鉄道高架橋の架替方法の詳細
次に、
図3〜
図42を参照して、5径間に相当する既設脚柱101a〜101fとその既設上部構造103の架替方向について、説明する。
【0023】
(第1工程)
図3に示すように、橋軸方向に沿って、既設脚柱101a〜101c間上の既設上部構造103に工事桁20を配置し、この工事桁20によって前記鉄道線路100を支持する。工事桁20の長さは、既設上部構造103を解体撤去した際に、列車の通行についての安全を確保するために、既設脚柱101aと既設脚柱101c間の距離よりも十分に長いことが望ましい。
【0024】
次に、
図4に示すように、前記支持された鉄道線路20の下方で橋軸方向に配置された複数の既設脚柱101a〜101cの上端部に前記橋軸方向に長尺な仮設鋼材30を橋軸直角方向に配置された仮設鋼材31を介して接合する。また、
図4(c)に示すように、仮設鋼材30は橋軸方向に交差する方向の外側から既設脚柱101a〜101cを挟むように接合されている。これにより、既設上部構造103を解体撤去した後に水平力を伝達できる。これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。具体的には、
図4(c)に示すように、橋軸方向と交差する方向であって前記仮設鋼材30の下部に仮設鋼材31が配置されている。そして、例えば、アンカーボルトによって、既設脚柱101a〜101cと複数の仮設鋼材31を接合する。その後、仮設鋼材30と仮設鋼材31をボルト接合することにより、仮設鋼材30が既設脚柱101a〜101cと接合されている。なお、図示していないが、仮設鋼材30と既設脚柱とを直接接合してもよい。しかし、仮設鋼材30と既設脚柱が接していると、既設脚柱の撤去および新設脚柱の増築が困難になることが予想されるため、仮設鋼材30は、既設脚柱と離れた状態で、橋軸直角方向に配置された仮設鋼材31を介して接合することが望ましい。
【0025】
ここで、あと施工アンカーを打って仮設鋼材を既設脚柱101cに接合する例について説明する。他の既設脚柱および新設脚柱についても同じ方法にて、仮設鋼材を脚柱に接合する。
【0026】
第1の方法として、
図43(a)に示すような2本の既設脚柱101cの橋軸方向に複数のアンカーボルト33aを打ち込み、
図43(b)に示すように、各既設脚柱101cの一面に複数のアンカーボルト33aを設置する。次に、
図43(c)および
図43(d)に示すように、仮設鋼材31の孔にアンカーボルト33aを通し、ナット33bにて固定する。同じ作業を他の既設脚柱101a,101bに対しても行い、仮設鋼材31を接合する。最後に、
図43(e)に示すように、橋軸方向に仮設鋼材30を設置し、仮設鋼材30と仮設鋼材31とを複数個所でボルト接合する。同じ作業を他の既設脚柱101a,101bに対しても行い、仮設鋼材30と仮設鋼材31とを複数個所でボルト接合する。
【0027】
第2の方法として、
図44(a)に示すような2本の既設脚柱101cの橋軸方向と交差する方向(橋軸直角方向)に複数のアンカーボルト33aを打ち込み、
図44(b)に示すように、各既設脚柱101cの一面に複数のアンカーボルト33aを設置する。次に、
図44(c)に示すように、仮設鋼材落下防止用の鋼材34の孔にアンカーボルト33aを通し、ナット33bにて固定する。その後、
図44(d)に示すように、仮設鋼材31を橋軸直角方向に鋼材34上に設置する。同じ作業を他の既設脚柱101a,101bに対しても行う。最後に、
図44(e)に示すように、橋軸方向に仮設鋼材30を仮設鋼材31上に設置し、仮設鋼材30の下部と仮設鋼材31の上部とを複数個所でボルト接合する。同じ作業を他の既設脚柱101a,101bに対しても行い、仮設鋼材30の下部と仮設鋼材31の上部とを複数個所でボルト接合する。なお、仮設鋼材31と鋼材34とは、必要に応じて、ボルト接合してもよい。
【0028】
第3の方法として、
図45(a)に示すような2本の既設脚柱101c下の柱基礎8の上面に、
図45(b)に示すように、垂直方向に長尺な鋼材35を配置し、アンカーボルトにより鋼材35の上部と既設脚柱101cを固定する。鋼材35は、仮設鋼材30,31の落下防止のために設置される。次に、
図45(c)に示すように仮設鋼材31を鋼材35上に配置する。同じ作業を他の既設脚柱101a,101bに対しても行い、仮設鋼材31を鋼材35上に配置する。最後に、
図45(d)に示すように、橋軸方向に仮設鋼材30を設置し、仮設鋼材30の下部と仮設鋼材31の上部とを複数個所でボルト接合する。同じ作業を他の既設脚柱101a,101bに対しても行い、仮設鋼材30の下部と仮設鋼材31の上部とを複数個所でボルト接合する。なお、鋼材35が自立可能な場合等、鋼材35と既設脚柱とをボルト接合しなくてもよい場合もある。
【0029】
(第2工程)
図5に示すように、前記仮設鋼材30,31上に位置する既設上部構造103を解体撤去する。この場合に、工事桁20は、解体撤去された既設スラブ103bの代わりに鉄道線路100を支持している。更に、仮設鋼材30,31は既設梁103aの代わりに既設脚柱101a〜101cと接合され水平力を伝達できる。これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。
【0030】
(第3工程)
図6および
図7に示すように、前記解体撤去された既設上部構造103の下方の地盤に複数の新設脚柱1a,1bを施工する。
図7(b)に示すように、新設脚柱1a,1bは、橋軸方向と交差する方向にそれぞれ2本施工され、それらの上部が橋軸直角方向の横梁により剛結され、ラーメン構造が構成される。そして、横梁の上部にスペーサー9が施工され、工事桁20を支持すると共に、新設スラブ3bを施工するスペースを確保している。ここで、前記既設脚柱101a〜101c間下部を繋ぐ既設地中梁105が設けられているため、新設脚柱1a,1bを支える基礎杭等を新規に新設脚柱1a,1bの真下の位置に施工する場合に既設地中梁105と干渉する。そこで、この既設地中梁105の各側面を2本の新設基礎杭7でそれぞれ挟むように新設基礎杭7を施工し、前記既設地中梁と前記新設基礎杭と一体化した基礎を施工し、その基礎の上に新設脚柱1a,1bを施工する。このように、新設脚柱1a,1bを前記既設地中梁105と前記新設基礎杭7と一体化することにより、既設地中梁105と干渉することなく、既設地中梁105を有効活用した上で、新設脚柱1a,1bを施工できる。
【0031】
(第4工程)
図8に示すように、前記新設脚柱1a,1b間の既設脚柱101bを解体撤去する。既設脚柱101bを解体撤去しても、前記新設脚柱1a,1bが2つのスペーサー9を介して工事桁20を支えているため、列車の通行について安全を確保することができる。
【0032】
(第5工程)
図9〜
図11に示すように、前記新設脚柱1a,1b間上に新設梁3aと新設スラブ3bからなる新設上部構造3を築造する。はじめに、
図9(c)に示すように、新設脚柱1a,1b間に橋軸方向に新設梁3aを施工する。その後、
図10に示すように、橋軸方向に交差する方向の外側からスペーサー9間に差し込むように新設スラブ3bを設置する。その後、
図11に示すように、新設スラブ3bと新設梁3aとを一体化するようにコンクリートを打設する。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、既設上部構造103を解体撤去する前に、橋軸方向に沿って配置された工事桁20によって前記鉄道線路100を支持するとともに、前記支持された鉄道線路100の下方で橋軸方向に配置された複数の既設脚柱101a〜101cの上端部に前記橋軸方向に長尺な仮設鋼材30を橋軸直角方向に配置された仮設鋼材31を介して接合することにより、前記鉄道線路100を前記工事桁20によって支持した状態で前記仮設鋼材30,31により水平力を伝達できるので、これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。よって、前記既設上部構造103を解体撤去したままの状態でも列車の通行について安全を確保しながら既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に架け替えることができる。
【0034】
(第6工程)
次に、
図12に示すように、前記新設脚柱1bに隣り合う既設脚柱101c,101d間上部の既設上部構造103上に前記工事桁20を橋軸方向左側に移動し、橋軸方向に沿って前記工事桁20を配置し、この工事桁20によって鉄道線路100を支持する。一方で、前記仮設鋼材30を切り離して橋軸方向左側に移動し、前記支持された鉄道線路100の下方で橋軸方向に配置された複数の既設脚柱101c,101dの上端部およびこれら複数の既設脚柱のうちの1つに隣り合う前記新設脚柱1bの上端部に前記仮設鋼材30,31を接合する。この際に、新設脚柱1aと既設脚柱101a間上部の既設上部構造103上に工事桁22を配置し、この工事桁22によって鉄道線路100を支持し、新設脚柱1aの上端部と既設脚柱101aの上端部に仮設鋼材32を接合しておく。
【0035】
(第7工程)
図13に示すように、前記仮設鋼材30,31上に位置する既設上部構造103を解体撤去する。この場合に、工事桁20は、解体撤去された既設スラブ103bの代わりに鉄道線路100を支持している。更に、仮設鋼材30,31は既設梁103aの代わりに既設脚柱101aと接合され水平力を伝達できる。これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。
【0036】
(第8工程)
図14および
図15に示すように、前記解体撤去された既設上部構造103の下方の地盤に新設脚柱1cを施工する。
図15(b)に示すように、新設脚柱1cは、橋軸方向と交差する方向にそれぞれ2本施工され、それらの上部および下部が橋軸直角方向の横梁により剛結され、ラーメン構造が構成される。そして、横梁の上部にスペーサー9が施工され、工事桁20を支持すると共に、新設スラブ3bを施工するスペースを確保している。ここで、前記既設脚柱101c〜101d間下部を繋ぐ既設地中梁105が設けられているため、新設脚柱1cを支える基礎杭等を新規に新設脚柱1cの真下の位置に施工する場合に既設地中梁105と干渉する。そこで、この既設地中梁105の各側面を2本の新設基礎杭7でそれぞれ挟むように新設基礎杭7を施工し、前記既設地中梁と前記新設基礎杭と一体化した基礎を施工し、その基礎の上に新設脚柱1c施工する。このように、新設脚柱1cを前記既設地中梁105と前記新設基礎杭7と一体化することにより、既設地中梁105と干渉することなく、既設地中梁105を有効活用した上で、新設脚柱1cを施工できる。
【0037】
(第9工程)
図16に示すように、前記新設脚柱1b,1c間の既設脚柱101cを解体撤去する。既設脚柱101cを解体撤去しても、前記新設脚柱1b,1cが2つのスペーサー9等を介して工事桁20を支えているため、列車の通行について安全を確保することができる。
【0038】
(第10工程)
図17および
図18に示すように、前記新設脚柱1b,1c間上に新設梁3aと新設スラブ3bとからなる新設上部構造3を築造する。はじめに、
図17(a)に示すように、新設脚柱1b,1c間に橋軸方向に新設梁3aを施工する。その後、橋軸方向に交差する方向の外側からスペーサー9間に差し込むように新設スラブ3bを設置する。その後、新設スラブ3bと新設梁3aとを一体化するようにコンクリートを打設し、新設スラブ3bと新設梁3aとからなる新設上部構造3を築造する。なお、
図18に示すように、工事桁20と仮設鋼材30を移動した後に、新設梁3a上のスペーサー9を撤去し、スペーサー9を撤去した後の空間に相当する新設スラブ3b間にコンクリートを打設するのが望ましい。
【0039】
図18に示すように、工事桁20と仮設鋼材30を移動した後に、
図19から
図24に示すように、上記第7工程から第10工程を順次行う。ここで、
図19は第7工程(既設上部構造103の解体撤去)に相当し、
図20および
図21は第8工程(新設脚柱1dの施工)に相当し、
図22は第9工程(既設脚柱101dの解体撤去)に相当し、
図23および
図24(新設上部構造の築造)に相当する。
【0040】
図24に示すように、工事桁20と仮設鋼材30を移動した後に、
図25から
図30に示すように、上記第7工程から第10工程を順次行い、左側の鉄道高架橋の架替が完了する。ここで、
図25は第7工程(既設上部構造103の解体撤去)に相当し、
図26および
図27は第8工程(新設脚柱eの施工)に相当し、
図28は第9工程(既設脚柱101eの解体撤去)に相当し、
図29および
図30は第10工程(新設上部構造3の築造)に相当する。なお、新設脚柱1eの真下には既設地中梁105が存在しないため、通常の基礎杭を施工して基礎を作り、その基礎上に新設脚柱eを施工することができる。
【0041】
(第6工程)
図30に示すように、前記新設脚柱1aに隣り合う既設脚柱101a,101f間上部の既設上部構造103上に前記工事桁20を橋軸方向右側に移動し、橋軸方向に沿って前記工事桁20を配置し、この工事桁20によって鉄道線路100を支持する。一方で、前記仮設鋼材30を切り離して橋軸方向右側に移動し、前記支持された鉄道線路100の下方で橋軸方向に配置された複数の既設脚柱101a,101fの上端部およびこれら複数の既設脚柱のうちの1つに隣り合う前記新設脚柱1aの上端部に前記仮設鋼材30,31を接合する。この際に、新設脚柱1eと既設脚柱101g間上部の既設上部構造103上に工事桁22を配置し、この工事桁22によって鉄道線路100を支持し、新設脚柱1eの上端部と既設脚柱101gの上端部に仮設鋼材32を接合しておく。なお、上述のように、工事桁20と仮設鋼材30を移動した後に、新設梁3a上のスペーサー9を撤去し、新設梁3a上の新設スラブ3b間にコンクリートを打設するのが望ましい。
【0042】
その後、
図31から
図36に示すように、上記7工程から第10工程を順次行う。ここで、
図31は第7工程(既設上部構造103の解体撤去)に相当し、
図32および
図33は第8工程(新設脚柱1fの施工)に相当し、
図34は第9工程(既設脚柱101aの解体撤去)に相当し、
図35および
図36は第10工程(新設上部構造の築造)に相当する。
【0043】
図36に示すように、工事桁20と仮設鋼材30を移動した後に、
図37から
図42に示すように、上記第7工程から第10工程を順次行い、5径間に相当する鉄道高架橋の架替が完了する。ここで、
図37は第7工程(既設上部構造103の解体撤去)に相当し、
図38および
図39は第8工程(新設脚柱gの施工)に相当し、
図40は第9工程(既設脚柱101fの解体撤去)に相当し、
図41および
図42は第10工程(新設上部構造3の築造)に相当する。最後に、
図42に示すように、工事桁20と仮設鋼材30を移動し、再度、第7工程〜第10工程が順次繰り返し行われる。上述のように、第7工程〜第10工程が鉄道高架橋の架替が完了するまで順次行われる。
【0044】
(新設基礎形状の変形例)
上記実施例では、既設地中梁105の上に新設基礎が設けられ、既設地中梁と新設脚柱と新設基礎杭とが一体化されていた。これに限らず、
図46に示すように、新設基礎形状を既設地中梁の下端まで包み込むように設けてもよい。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、新設上部構造3に隣り合う既設上部構造103を解体撤去する前に、橋軸方向に沿って移動された前記工事桁20によって鉄道線路を支持するとともに、前記支持された鉄道線路100の下方で橋軸方向に配置された複数の既設脚柱101の上端部およびこれら複数の既設脚柱のうちの1つに隣り合う前記新設脚柱1の上端部に前記仮設鋼材30,31を接合することにより、前記鉄道線路100を前記工事桁20によって支持した状態で前記仮設鋼材30,31により水平力を伝達できる。これによって鉄道高架橋の強度低下を抑制することができる。よって、前記既設上部構造103を解体撤去したままの状態でも列車の通行について安全を確保しながら既設の鉄道高架橋を新たな鉄道高架橋に更に架け替えることができる。