(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前照灯の配光パターンを切り替えるADB制御手段と、前記前照灯の照射光軸をスイブル制御するスイブル制御手段を備え、前記応答性制御手段は前記ADB制御手段での配光パターンの切替速度とスイブル制御手段でのスイブル制御速度の少なくとも一方を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯の配光制御装置。
前記配光を追従制御する手段は配光の一部に設けた遮光領域を対向車に対して追従制御する手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯の配光制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなADB制御においては、対向車とすれ違う際あるいは先行車を追い抜く際のカットオフラインの変化制御、ここでは配光のスイブル制御によって自車の前方領域の視認性や前方車両に対する眩惑が問題となることがある。例えば、右カーブの曲路において対向車とすれ違う際には、最初は対向車を右方向に検出し、徐々に左方向に検出することになるため、自車の配光を右方向から左方向にスイブル制御することになるが、自車が曲路に進入して右方向に操舵されるのに従って当該対向車の検出位置が高速で左方向に変位されるため、スイブル制御を左方向に高速に制御する必要があり、この際のスイブル制御の遅れによって当該対向車を眩惑することになる。このことは左カーブの曲路においても同様であり、最初左方向に検出した対向車は自車が曲路に進入して左に操舵するのに従って相対的に高速で右方向に変位されるため、スイブル制御の追従性が遅いと対向車を眩惑してしまうことになる。なお、このような曲路における対向車に対する眩惑は先行車についても同様なことが言えるため、曲路におけるスイブル制御の遅れによって先行車を眩惑するおそれも生じる。
【0005】
一方、このような問題を解消するためにスイブル制御の追従速度を高速にすると、直線路を走行する際に複数の対向車と順次すれ違う毎には、各対向車とすれ違う毎に配光が左右方向に往復して高速でスイブル制御される状態が生じることになり、このような配光の高速スイブル制御が自車の運転者に煩わしさを感じさせてしまう。これは先行車についても同様であり、先行車との車間間隔が変化するのに従って高速でスイブル制御が行われると、自車の運転者に煩わしさを感じさせてしまう。特に、直線路において複数の対向車とすれ違う際には極めて短い時間周期で対向車とすれ違う状況が多いので、配光の切り替え周期やスイブルを往復制御する周期も短くなり運転者が煩わしさを感じ易くなる。これにより、運転者の集中力を損なって安全運転の障害になるおそれもある。なお、このような問題はスイブル制御の場合に限られるものではなく、前方車両に追従して配光パターンをハイビーム配光、ロービーム配光等に切り替える場合においても同様に生じるものである。
【0006】
本発明の目的は配光の追従制御の遅れによる前方車両に対する眩惑を防止するとともに、自車の運転者に対する配光制御の煩わしさを解消することを可能にした配光制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自車の前方に存在する車両の車両位置
を検出し、検出した車両位置の変化に追従して自車の前照灯の配光を追従制御する手段を備える配光制御装置であって、自車の前方の道路状況を判定し、当該道路を曲路と判定したときに
、当該曲路の曲がりが大きくなるほど配光を追従制御する速度を高速に設定する応答性制御手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の配光制御装置は、前照灯の配光パターンを切り替えるADB制御手段と、前照灯の照射光軸をスイブル制御するスイブル制御手段を備ており、応答性制御手段はADB制御手段での配光パターンの切替速度とスイブル制御手段でのスイブル制御速度の少なくとも一方を設定する。本発明において、配光を追従制御する手段は配光の一部に設けた遮光領域を対向車に対して追従制御する手段である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲路においては車両位置の変化に対する配光の切り替えの速度を高速にしているので、自車との相対的な位置変化が速い曲路においても前方車両に対して適切な配光を保持することができ、当該前方車両に対する眩惑を確実に防止でき、その一方で自車の前方領域の照明を確保して視認性を高めることが可能になる。また、直線路においては配光の切り替えの速度が相対的に低速となるので、直進路における配光の切り替えが抑制され、運転者に対する煩わしさを防止することができる。
【0010】
本発明によれば、曲路においては車両位置の変化に対する配光パターンの切り替えの速度やスイブル制御の速度を高速にすることで、前方車両に対する眩惑を確実に防止でき、その一方で自車の前方領域の照明を確保して視認性を高めることが可能になる。また、直線路においては配光パターンの切り替えの速度やスイブル制御の速度が相対的に低速となるので、直進路における配光の切り替えが抑制され、運転者に対する煩わしさを防止することができる。また、本発明において、配光を追従制御する手段は配光の一部に設けた遮光領域を対向車に対して追従制御する手段であり、直線路および曲路のいずれにおいても対向車に対する眩惑を防止するとともに自車の前方領域の高い視認性を確保する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車のヘッドランプに適用した配光制御装置の概念構成図である。自動車の前部の左右にそれぞれ左ヘッドランプLHLと右ヘッドランプRHLが搭載されており、これらヘッドランプLHL,RHLの配光を配光制御装置100によって制御するように構成されている。左右の各ヘッドランプLHL,RHLは基本的には同じ構成であり、例えば
図2に右ヘッドランプRHLを示すように、ランプボディ11と透光性のある前面カバー12とで構成されるランプハウジング1内にプロジェクタ型のランプユニット2が内装されている。このランプユニット2は、ここでは詳細な説明は省略するが放電バルブからなる光源21と、回転楕円形状のリフレクタ22と、当該リフレクタ22の前方位置に配設された投射レンズ23と、投射レンズ23から投射する光の配光パターンを形成するための可変シェード24を備えている。このランプユニット2はランプハウジング1内に配設したブラケット3に支持されるとともにスイブルアクチュエータ4によって左右方向にスイブル制御、すなわち光照射方向を左右に偏向可能に構成されている。また、前記可変シェード24は円筒状をした主軸241の周面に複数の異なる形状をした遮光板242を備えた構成とされており、シェードアクチュエータ5によって軸回り方向に回転位置が可変とされている。この回転位置を変化することによりランプ光軸上に位置する遮光板242が変化され、ランプユニット2から投射する光の配光パターンを変化することが可能とされている。前記放電バルブ21は放電回路ユニット6に電気接続されて点灯される。
【0013】
図3は前記可変シェード24によって制御される左右の各ヘッドランプLHL,RHLの配光パターンと、これら左右のヘッドランプLHL,RHLの配光パターンを重畳したヘッドランプ全体としての配光パターンを示す図である。同図横枠の右ヘッドランプRHLでは、可変シェード24の第1回転位置ではカットオフラインが存在しないハイビーム配光RHを形成し、第3回転位置ではカットオフラインを有するロービーム配光RLを形成する。また、第2回転位置では右側領域がハイビーム配光で左側領域がロービーム配光をした右側ハイビーム配光、ここでは右片ハイ配光と略称する配光RMを形成する。同様に同図縦枠の左ヘッドランプLHLでは可変シェード24の回転位置に応じてハイビーム配光LH、ロービーム配光LL、および左片ハイ配光LMを形成する。これにより、ヘッドランプ全体としては、左右の各ヘッドランプLHL,RHLの配光を重畳することで、同図に示すように、ハイビーム配光Hi、ロービーム配光Lo、右片ハイ配光RHi、左片ハイ配光LHi、さらには右片ハイ配光と左片ハイ配光を重畳して中央が凹状をしたスプリット配光SPでの照明が行われることになる。なお、ハイビーム配光Hiについては左右のヘッドランプの各光の重畳により光度分布の異なるハイビーム配光が得られる。
【0014】
図1を再度参照すると、前記配光制御装置100は、前方道路上に存在する他車両、すなわち前方車両の車種や車両位置を検出する車両検出部101と、自車が走行する前方道路を検出し、検出した道路が直進路と曲路のいずれであるかを判定した道路情報を出力する道路判定部102を備えている。また、前記配光制御装置100は検出した車両位置に基づいて自車の左右のヘッドランプLHL,RHLの配光パターンを決定し、前記ランプユニット2の配光を決定した配光パターンに制御するADB制御部103と、検出した車両位置に基づいて自車の左右のヘッドランプLHL,RHLの光軸、すなわち照射方向を決定し、この照射方向に基づいて前記スイブルアクチュエータ4を駆動するスイブル制御部104を備えている。さらに、前記配光制御装置100は、道路判定部102で判定した道路情報に基づいてADB制御部103における配光パターンの切り替えとスイブル制御部104におけるスイブル制御速度を変化制御するための応答性制御部105を備えている。
【0015】
車両検出部101と道路判定部102には自車の前方領域を撮像する撮像カメラCAMが接続されている。車両検出部101は前記撮像カメラCAMで撮像した画像に基づいて前方車両の位置を検出する。この車両位置の検出方法は種々の方法が考えられ、例えば車両の左右に設けられているヘッドランプやテールランプ等の灯火の位置、あるいは当該車両の車体の左右の両端位置、さらにはこれら左右灯火位置や左右両端位置の中央位置等を車両位置として検出する。また、この実施形態では当該前方車両検出部101は前方車両が先行車と対向車のいずれであるかの車種を検出する。例えば、前方車両の灯火の色が赤色系の場合には先行車であると検出し、白色系の場合には対向車であると検出する。
【0016】
道路判定部102は前記撮像カメラCAMで撮像した画像を画像解析して自車の前方の道路を検出し、検出した道路が直線路と曲路のいずれであるかを判定し、これを道路情報として出力する。例えば、詳細な説明は省略するが、画像解析によって前方の道路の形状を認識し、この認識した道路の平面上での曲率半径を演算し、この曲率半径を予め設定した判定マップに適用し、当該判定マップに設定している基準値TH[
図4(a)参照]と比較することによって直線路と曲路のいずれであるかを検出する。この場合、道路情報として前方道路が右カーブ又は左カーブのいずれであるかについても検出することは勿論である。また、後述するように判定マップにおける基準値として複数の異なる基準値を設定しておき、曲路を複数の曲路に区分して検出するように構成することも可能である。さらに、基準値THに所要の幅、すなわちヒステリシスを持たせ、安定な道路判定が得られるようにしてもよい。
【0017】
また、この実施形態では前記道路判定部102には自車の操舵角を検出する操舵角センサSθが接続されており、この操舵角センサSθで検出される操舵角θに基づいて自車が現在走行している道路が直線路であるか曲路であるかを検出することも可能である。さらに、撮像カメラCAMで撮像した画像に基づいて前方の道路の判定を行う代わりに、ナビゲーション装置から得られる情報や、交通システムから得られる道路情報に基づいて前方道路の曲率半径を求め、この曲率半径に基づいて直線路と曲路を判定するように構成することも可能である。
【0018】
ADB制御部103は前記車両検出部101において検出した車両位置に基づいて左右の各ヘッドランプLHL,RHLの各可変シェード24のシェードアクチュエータ5をそれぞれ独立して制御することにより、
図3に示したように、右ヘッドランプRHLについては配光パターンRH,RL,RMに切り替え、左ヘッドランプLHLについては配光パターンLH,LL,LMに切り替えることが可能である。このとき車両検出部101で検出した車種を考慮して配光パターンを切り替えることも行われる。したがって、これら左右のヘッドランプLHL,RHLの配光を重畳することにより、ヘッドランプ全体の配光はハイビーム配光Hi、ロービーム配光Lo、右片ハイ配光RHi、左片ハイ配光LHi、スプリット配光SPのいずれかに制御することができる。
【0019】
スイブル制御部104は、ADB制御部103を通して車両検出部101で検出した車両位置を入力し、この車両位置に追従して左右の各ヘッドランプLHL,RHLのスイブルアクチュエータ4を駆動し、各ヘッドランプLHL,RHLのランプユニット2を左右にスイブル制御する。すなわち、スイブル制御部104はADB制御部103において設定された配光パターンの中心位置、すなわち照射光軸の方向が前方車両に対して所定の位置関係となるように左右にスイブル制御するようになっている。特に、スイブル制御に際しては右ヘッドランプRHLの右片ハイ配光RMと左ヘッドランプLHLの左片ハイ配光LMのそれぞれにおける垂直方向のカットオフラインが前方車両に重なることがないように光軸位置を制御することが可能とされている。
【0020】
応答性制御部105は前記道路判定部102で判定された道路情報、ここでは前方道路が直線路であると判定した場合と、曲路であると判定した場合とで車両位置の変化に対する応答性、すなわち配光パターンを切り替える際の配光切替速度やスイブル制御する際のスイブル制御速度を切り替えるように構成している。
図4(a)はこの応答性制御部105における制御速度の特性図であり、曲路における配光切替速度を直線路における配光切替速度よりも高速に設定している。すなわち、同図に示す基準値THとしての曲率半径は道路判定部102において用いた基準値に相当しており、基準値THを境に直線路と曲路を区分し、かつそれぞれにおける制御速度を相違させている。例えば、この制御速度をスイブル制御速度とした場合には、曲路におけるスイブル制御速度を直線路におけるスイブル制御速度よりも高速に設定している。したがって、曲路においては車両位置の変化に対して照射光軸を高速で変化追従制御するが、直線路においては車両位置の変化に対する照射光軸の変化追従制御は曲路よりも遅くなるように設定する。なお、この応答性制御部105は自車の車速センサSVで検出される車速Vを考慮して応答性を切り替えるように構成することも可能とされている。なお、この
図4(a)に示した応答性の特性は、自車の車速の違い等の種々の走行状況を想定して予め適正な速度を計測した上で設定しておくことが好ましい。
【0021】
以上の構成の実施形態の配光制御装置100の動作を説明する。
図5は配光制御の流れを説明するフローチャートである。車両検出部101は撮像した画像信号に基づいて前方に存在する車両を検出し、検出した車両の車両位置を検出する(S11)。そして、検出した車両位置をADB制御部103に出力する。ADB制御部103は検出された車両位置に基づいて左右のヘッドランプLHL,RHLの配光を制御する(S12)。例えば、車両位置が自車の直進方向の近傍位置にあるときには左右のヘッドランプをそれぞれ片ハイ配光に設定する。すなわち、右ヘッドランプRHLは右片ハイ配光RMとし、左ヘッドランプLHLは左片ハイ配光LMとする。これにより、左右のヘッドランプLHL,RHLの配光が重畳されたスプリット配光SPに制御される。また、検出した車両位置が左側または右側に偏っているときには左右のヘッドランプLHL,RHLの少なくとも一方をロービーム配光に設定する。例えば、車両位置が左側に検出されたときには右ヘッドランプRHLは右片ハイ配光RMのままとし、左ヘッドランプLHLはロービーム配光LLとする。あるいは両ヘッドランプの配光をロービーム配光とする。これにより、ヘッドランプ全体の配光は片ハイ配光あるいはロービーム配光となり、左側に存在する車両に対する眩惑を防止する一方で右側領域の視認性を確保する。車両位置が右側に検出されたときには、これと左右反対の配光制御をすることは言うまでもない。
【0022】
一方、道路判定部102は撮像カメラCAMで撮像した自車の前方領域の画像信号を入力し、この画像信号から前方の道路を検出し(S13)、かつ検出した道路が直線路と曲路のいずれであるかを判定する(S14)。ここでは、画像信号から検出した道路の曲率半径を演算により求め、この曲率半径を判定マップに規定している基準値THと比較し、当該曲率半径が基準値以上のときには直線路であると検出し、基準値よりも小さいときには曲路であると検出する。この検出した道路情報、すなわち直線路または曲路の情報は応答性制御部105に出力する。
【0023】
応答性制御部105は道路判定部102から入力された道路情報に基づいて配光制御の応答性、すなわち車両位置に追従して配光パターンを切り替える速度や照射光軸をスイブル制御する際の速度を切り替える。ここでは道路が直線路の場合には(S14)、車両の位置変化に対して配光を切り替える際の速度として当該車両を眩惑することがない最小限の速度である低速に設定する(S15)。一方、曲路の場合には配光の切り替えを迅速に行うように直線路のときよりも高速にする(S16)。そして、スイブル制御部104は設定された速度でスイブル制御を実行する(S17)。なお、この配光制御のフローではADB制御部103において配光パターンの切り替える速度を直線路よりも曲路において高速に設定することは行っていない例を示している。
【0024】
したがって、ADB制御部103において左右のヘッドランプLHL,RHLの配光を前方車両の車両位置に応じて所要の配光パターンに制御するとともに、スイブル制御部104において当該車両位置の変化に追従して照射光軸をスイブル制御して照射方向を制御する。これにより、当該前方車両を眩惑することなく自車の前方領域を広く照明して視認性を高めることが可能になる。このとき曲路では直線路に比較してスイブル制御の速度が高速とされているため、配光のカットオフラインの変化制御の遅れによる前方車両に対する眩惑を防止するとともに、自車の運転者に対する配光変化の煩わしさを解消することが可能になる。
【0025】
例えば、
図6(a)に示すように、道路判定部102が直線路を判定し、車両検出部101が自車の前方に対向車CARを検出したときにADB制御部103が配光パターンとしてスプリット配光SPを設定したとする。このときには応答性制御部105は対向車を眩惑するのに必要最小のスイブル制御速度に応答性を設定する。そして、
図6(b)のように当該対向車CARが接近した場合には、右ヘッドランプをロービーム配光LLに切り替えるとともに対向車に対応して左右のヘッドランプを右方向にスイブル制御して左片ハイ配光LHiに設定する。このとき、当該対向車CARに追従して右方向にスイブル制御される速度は低速度である。そのため、
図6(c)のように、次の対向車CAR2を自車の直進方向近傍に検出した場合には、左片ハイ配光LHiを左方向に戻す方向にスイブル制御するが、当該左片ハイ配光LHiの右方向へのスイブル制御が低速度であってスイブル量が同図破線に示すように少なかったため、次の対向車CAR2に対する左方向へのスイブル制御の移動量は少なくて済み、自車の運転者が煩わしさを感じることはない。
【0026】
一方、
図7(a)のように、道路判定部102が曲路、例えば右カーブの曲路を判定し、車両検出部101は対向車CARを自車の直進方向よりもやや右側に検出する。ADB制御部103は左片ハイ配光LHiを設定する。この状況では自車が右カーブの曲路に進入して行くのに従って右に操舵を行うため、対向車CARの車両位置は自車に対して急速に左方向に変化する。このとき応答性制御部105はスイブル制御の制御速度を直線路の場合よりも高速に設定するので、
図7(b)のように、スイブル制御部104は配光を高速に左方向にスイブル制御する。これにより急速に左に相対移動する対向車CARに対する眩惑を確実に防止する。なお、スイブル制御速度が直線路と同じ速度であったと仮定した場合には、
図7(c)のように左片ハイ配光LHiが左方向に移動するのに遅れが生じて対向車CARを眩惑してしまうことになる。
【0027】
このように実施形態の配光制御装置100は、曲路においては車両位置の変化に対するスイブル制御の速度を高速にしているので、自車との相対的な位置変化が速い曲路においても前方車両に対して適切な配光を保持することができ、当該前方車両に対する眩惑を確実に防止でき、その一方で自車の前方領域の照明を確保して視認性を高めることが可能になる。
【0028】
実施形態では前方車両の車両位置変化に追従して配光パターンのカットオフラインを追従制御する例、すなわち当該配光を左右にスイブル制御する例について説明したが、前方車両の車両位置変化に追従してADB制御部103において左右のヘッドランプLHL,RHLの配光パターンを切り替えて実質的に配光のカットオフラインを追従制御するように制御することも勿論可能である。すなわち、直線路の場合には前方車両の車両位置の変化に対する配光パターンの切り替えのタイミングを必要な範囲で低速に行うようにすることで直線路における頻繁な配光パターンの切り替えが防止でき運転者に煩わしさを感じさせることがなくなる。その一方で曲路の場合には配光パターンの切り替えのタイミングを高速で行うようにすることで対向車に対する眩惑を確実に防止することが可能になる。
【0029】
ここで、実施形態では道路判定部102で曲路と直線路を判定する方法として、撮像カメラで撮像した画像を解析して道路形状を認識し、この道路形状に基づいて判定を行っているが、操舵角センサSθで検出した操舵角θに基づいて判定を行うようにしてもよい。すなわち、曲路では自車の操舵角θは当然に左右に偏向されて「0」でない値になるので、この操舵角θの変化を検出することで曲路を判定することが可能になる。この場合においても、操舵角θに基づく判定マップを設定しておき、この判定マップに操舵角θを適用することで直線路と曲路を判定することが可能になる。あるいは自車に加速度センサ、特にヨーレートセンサを搭載している場合には、当該ヨーレートセンサの出力信号に基づいて直線路と曲路を判定するようにしてもよい。
【0030】
また、実施形態では道路判定部102で曲路と直線路を判定する際の判定マップに1つの基準値THを設けて、道路を直線路と曲路の2つに区分しているが、前記したように複数の基準値を設けて道路を曲率半径の大きさによって複数の区分に分類してもよく、この分類した複数の曲路に対応して配光制御における応答性を段階的に相違させるようにしてもよい。例えば、
図4(b)に示すように、曲率半径の異なる複数の基準値TH1〜TH3を設定し、これらの基準値TH1〜TH3を用いて道路を複数の曲路に区分し、曲率半径が小さい曲路ほど配光パターンの切替速度やスイブル制御速度を高速にするようにすればよい。
【0031】
さらに、応答性制御部105における応答性、すなわち配光パターンの切替速度やスイブル制御速度を設定する際には、実施形態のように判定マップを用いることなく演算により設定するようにしてもよい。例えば、道路判定部102で検出している操舵角センサSθの操舵角θの情報を取り込み、この操舵角の変化に対応して応答性を演算する。すなわち、操舵角は道路の曲率半径と密接な関係があるので、操舵角を因子として応答性を演算することで、曲路における応答性を制御することが可能になる。例えば、詳細な説明は省略するが、ADB制御部103やスイブル制御部104の制御回路にローパスフィルタ等で構成した遅延回路を介装しておき、この遅延回路の遅延係数を操舵角θに基づいて設定するようにする。操舵角が大きくなるほど遅延係数が小さくなるように遅延回路を設定すれば、操舵角の小さい直線路では各制御における遅延が大きくなり、操舵角の大きな曲路では各制御における遅延が小さくなり、結果として曲路における配光の制御速度を直線路よりも高速なものに設定することが可能になる。
【0032】
本発明においては左右のヘッドランプLHL,RHLをそれぞれ独立してスイブル制御することも可能である。例えば、前方車両の車両位置が右方向に移動変化した場合に、左ヘッドランプLHLについてはスイブル制御を行わず、右ヘッドランプRHLのみを前方車両に対応してスイブル制御するようにしてもよい。この場合においても、当該右ヘッドランプRHLをスイブル制御する場合のスイブル制御速度を直線路よりも曲路において高速に制御することで直線路におけるスイブル制御を抑制して運転者が煩わしさを感じることを抑制し、その一方で曲路における前方車両に対する眩惑を防止することができる。
【0033】
ただし、本発明において左右のヘッドランプをそれぞれ独立して配光制御する場合、特に配光パターンを切り替えるときやスイブル制御するときのように実質的に配光のカットオフラインを車両に追従して移動制御する場合には次の(a)〜(d)を考慮し、応答性制御部105における制御、すなわち曲路における制御速度の高速化を制限することが好ましい。これは車両検出部101において前方車両の車両位置の検出処理の遅れが生じた場合でも当該前方車両に対する眩惑を確実に防止し、かつその一方で自車の前方領域の視認性を確保するために必要とされることによるものであり、これら(a)〜(d)のいずれか一つまたは複数を組み合わせた制御とする。なお、(c),(d)は道路判定部102が道路をS字カーブの曲路を判定した場合に適用されるものである。
(a)曲路の外側のヘッドランプに対して内側に向かう方向への制御。
(b)曲路の内側のヘッドランプに対して外側に向かう方向への制御。
(c)曲路の外側のヘッドランプに対して前方車両に追従した方向へのスイブル制御。
(d)曲路の内側および外側のヘッドランプに対して前方車両に追従したスイブル制御。