(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エアゾール容器の上端部に設けられている内容液の排出用バルブステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液が噴射ボタンの噴射口から噴霧される噴射ボタンにおいて、
この噴射ボタンが前記バルブステムと接続するボタン本体部と、このボタン本体部の軸芯部の導通路内に配置され、このボタン本体部と上下方向に相対的に移動できる弁棒と、この弁棒の上端部分をその内側空間内に受容し、前記ボタン本体部の導通路内の上方端側にその下方部分を嵌入させて前記ボタン本体部と上下方向に相対的に移動できる噴射口部材とから成り、
ボタン本体部の導通路の入口部が前記バルブステムと連通し、その出口側に嵌入する前記噴射口部材の先端部にはエアゾール容器内の内容液を外部に噴霧する噴射口が設けられ、
ボタン本体部の導通路から噴射口部材の内側空間までの間の空間部に定量室が形成され、
弁棒とボタン本体部との間にはコイルスプリング等の弾撥部材が介装されて弁棒は下方向に付勢され、
弁棒の先端側外壁面と噴射口部材の内壁面の接合面に、弁棒の先端側外壁面と噴射口部材の内壁面とを封止する封止手段を設け、
他方、弁棒の基端部とボタン本体部の導通路との間にも封鎖手段を設け、
この封鎖手段が導通路を封鎖した際に、上方側の弁棒と噴射口部材の接合面に設けた封止手段の封止が解除されて所定量の内容液が噴射口から噴霧されることを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタン。
前記封止手段が、弁棒の先端側外壁に嵌合されたOリング等のシーリング部材と、この弁棒の先端側外壁と適合する噴射口部材の内壁面の先端側の細径部とそれに続く基端側の大径部とからなり、
前記シーリング部材が前記噴射口部材の細径部に位置した際に封止が行われ、前記シーリング部材が前記噴射口部材の大径部に位置した際にその封止が解除されることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器の定量噴射ボタン。
前記ボタン本体部と噴射口部材との間にコイルスプリング等の弾撥部材を介装して、噴射口部材を常に下方向に付勢したことを特徴とする請求項1又は2に記載のエアゾール容器の定量噴射ボタン。
エアゾール容器の上端部に設けられている内容液の排出用バルブステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液が噴射ボタンの噴射口から噴霧される噴射ボタンにおいて、
この噴射ボタンが前記バルブステムと接続するボタン本体部と、このボタン本体部の軸芯部の導通路内に配置され、このボタン本体部と上下方向に相対的に移動できる弁棒とからなり、
この弁棒の軸芯部には内部空間が設けられ、
この弁棒の下方部分は、前記バルブステムの内部に嵌入して、バルブステムのステムオリフィスを開閉することができ、
この弁棒の上端部分は、ボタン本体部の導通路の上端側の開閉を行なうことができ、
この弁棒とボタン本体部との間の適宜位置にはコイルスプリング等の弾撥部材を介装して弁棒を常に上方向に付勢して弁棒の上端部分の閉鎖が行なわれ、
弁棒の内部空間からボタン本体部の内部空間までの間の空間部に定量室が形成され、
ボタン本体部を押下することにより、バルブステムのステムオリフィスから内容液が導入されて定量室内に内容液が充填され、
定量室内に内容液が充填されるとその内圧により弁棒が下方に移行して、弁棒上端部の前記閉鎖が解除されて一定量の内容液がボタン本体部の導通路の先端部に形成された噴射口から噴霧されることを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタン。
前記弁棒の上端部分の開閉が、弁棒上端部に形成された環状弁体と、この環状弁体が適合するボタン本体の導通路の上方端側の細径部とこの細径部に続く下方の大径部とから成り、
前記環状弁体が前記細径部と係合した際に封止が行われ、前記環状弁体が前記大径部と適合した際に封止が解除されることを特徴とする請求項4に記載のエアゾール容器の定量噴射ボタン。
【背景技術】
【0002】
従来より一定量の内容液を噴射できるエアゾール容器の定量噴射機構が開発されて来た。
その定量噴射機構としては、基本的には、エアゾール容器の上端部に設けられている開閉バルブに定量室を設けるようにしたものと、前記開閉バルブの上端の排出用バルブステムに取り付ける噴射ボタンの導通路内部に定量室を設けたものとが存在していた。
本発明においては、この後者のタイプである導通路内部に定量室を設けた噴射ボタンに関するものである。
【0003】
その従来例として下記特許文献に記載されたものを挙げることができる。
特許文献1に記載のものは、バルブステム4に立上がり管8を接続し、この立上がり管8を囲繞するように押ボタン7を配置し、この押ボタン7の上端内面に垂設したシリンダー部9に前記立上り管8の上部を嵌挿し、立上り管8の上部の少し下方位置に押ボタン7の噴射口11に通じる略水平方向の流路12を設け、更に立上り管8の上部には押ボタン7の押下に対応して前記流路12を閉鎖するOリング13を、また押ボタン7の内部空間に常時連通する透光14を設けたものである。
【0004】
このような構成により、押ボタン7を指によって押下することにより、立上り管8の先端部が押ボタン7の上端内面から垂下するシリンダー部9の上端面に設けられた弾性円板10と嵌合して封止され、同時にOリング13が流路12を封止した状態となり、バルブステム4も押下されてエアゾール容器内の内容液が排出され、立上り管8の内部空間及び押ボタン7の内部空間内に内容液が一時的に貯留されるのである。
その後、押ボタン7の押下を停止して、押ボタン7から指を話すと、押ボタン7は元の位置に復帰し、前記それぞれの部位の封止が解除されて、その一定量が噴射口11から外部に噴霧されるのである。
【0005】
特許文献2に記載の発明においても、バルブステムに装着される噴射ボタンに定量噴射機能を持たせた噴射ボタンを提案するものである。
その構成は、噴射ボタン本体20に、定量用弁室23を形成する筒部29がノズル部25を包囲して形成される。バルブステム3に基部で嵌着し、かつノズル部25の基端部に形成された環状弁体27を閉鎖する弁座17を先端部に形成する弁座部10が、筒部29に挿入される。基部11の外周面が筒部29の内周面にシール状態で上下にスライド可能にガイドされる。噴射ボタン本体20を押し下げ操作すると、コイルばね15が圧縮されて弁口16が閉鎖され、次いでバルブステム3が下動して開口されることにより、内容物が連通路14を通して定量用弁室23に充填され、続いて噴射ボタン本体20の押し下げ操作を解除すると、バルブステム3が閉鎖されると共にコイルばね15の弾性復元力で弁口16が開口されて定量用弁室23に充填された内容物が噴射口から噴射されるものである。
【0006】
上記従来の噴射ボタンの構成は、基本的には同一である。
即ち、容器上端のバルブステムに接続するステム接続部(立上り管又は弁座部)と、このステム接続部を囲繞するように作動部(押ボタン又は噴射ボタン本体)が上下移動可能に配置されて組み合わされ、作動部を押下することにより、バルブステムが押し下げられて開放され、同時に連通されているステム接続部の導通路と作動部の導通路の噴射口側の通路が封止されることによって、貯留室(定量室)が形成され、噴射されるべき内容液がこの定量室に充填される。その後、作動部の押下を解除することによって、前記定量室内に貯留した一定量の内容液が噴射口から噴霧されるのである。
【0007】
尚、ステム接続部と作動部との間に上記特許文献2の発明にあっては、コイルスプリング15を設けているが、特許文献1にあっては、このような弾撥部材を設けていない点で相違しているが、この弾撥部材は、噴霧される内容液の内圧が外気圧よりも高圧であるために、特に設けなくとも実施できるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明においては、上記先行技術文献にあるような定量室を形成するための封止手段を異なる構成のものとして、適切な封止を可能とし、且つ噴射ボタンを押下するその押し下げ動作とほぼ同時に定量噴霧を行なうことができるものを提供することをその課題としている。
上記従来の噴射ボタンにあっては、その封止手段は、ステム接続部の先端部分が作動部の内部空間又は導通路の噴射口側の通路を封止するに際して、そのステム接続部の先端部分が作動部の内部空間の一部と当接する形式を採用しているが、この云わば弁棒先端と弁座との突き当たり形式の封止を採用するのではなく、別の構成によりこれを実現すること、また、これら従来のものと異なり、ボタンを押下する際に定量噴霧が行われることをその課題としている。
【0010】
これを解決するために、本発明においては、ボタン本体部と弁棒等との封止を、例えば弁棒の先端部分の外壁面と、これに適合する噴射口部材の内壁面との係合又は接合関係を採用して、この接合関係によって封止ができるように封止手段を構成してその解決を図ったのである。
そしてこれにより、ボタン本体部と弁棒等の相互の上下のストローク距離を適宜設定することにより、容易に定量室の容量を変更し、設定することができるという効果が実現されることとなるのである。
【0011】
つまり、定量室の半径方向長さの設計を変更することなく、前記上下ストロークの長さの適宜設定により自由に定量室の容量を変更し、設定することができることとなるのである。
このように定量室の容量を容易に変更し、設定できるようにするということも本発明の課題である。
また、上記した通り、噴射ボタンを押下する際に定量噴射を可能とすることも本発明の課題であるが、これにより従来のボタンを押下し、指を離してボタンが上方に戻る際に定量噴射が行われるものと異なり、押下した最初の動作においてすぐに定量噴射が行なわれ、迅速な作動感覚又は迅速なレスポンス感覚を得ることができるのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、エアゾール容器の上端部に設けられている内容液の排出用バルブステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液が噴射ボタンの噴射口から噴霧される噴射ボタンにおいて、この噴射ボタンが前記バルブステムと接続するボタン本体部と、このボタン本体部の軸芯部の導通路内に配置され、このボタン本体部と上下方向に相対的に移動できる弁棒と、この弁棒の上端部分をその内側空間内に受容し、前記ボタン本体部の導通路内の上方端側にその下方部分を嵌入させて前記ボタン本体部と上下方向に相対的に移動できる噴射口部材とから成り、ボタン本体部の導通路の入口部が前記バルブステムと連通し、その出口側に嵌入する前記噴射口部材の先端部にはエアゾール容器内の内容液を外部に噴霧する噴射口が設けられ、ボタン本体部の導通路から噴射口部材の内側空間までの間の空間部に定量室が形成され、弁棒とボタン本体部との間にはコイルスプリング等の弾撥部材が介装されて弁棒は下方向に付勢され、弁棒の先端側外壁面と噴射口部材の内壁面の接合面に、弁棒の先端側外壁面と噴射口部材の内壁面とを封止する封止手段を設け、他方、弁棒の基端部とボタン本体部の導通路との間にも封鎖手段を設け、この封鎖手段が導通路を封鎖した際に、上方側の弁棒と噴射口部材の接合面に設けた封止手段の封止が解除されて所定量の内容液が噴射口から噴霧されることを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタンである。
【0013】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記封止手段が、弁棒の先端側外壁に嵌合されたOリング等のシーリング部材と、この弁棒の先端側外壁と適合する噴射口部材の内壁面の先端側の細径部とそれに続く基端側の大径部とからなり、前記シーリング部材が前記噴射口部材の細径部に位置した際に封止が行われ、前記シーリング部材が前記噴射口部材の大径部に位置した際にその封止が解除されることを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタンである。
【0014】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記ボタン本体部と噴射口部材との間にコイルスプリング等の弾撥部材を介装して、噴射口部材を常に下方向に付勢したことを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタンである。
【0015】
本発明の第4のものは、エアゾール容器の上端部に設けられている内容液の排出用バルブステムに装着する噴射ボタンであって、この噴射ボタンを押下することによって、内容液が噴射ボタンの噴射口から噴霧される噴射ボタンにおいて、この噴射ボタンが前記バルブステムと接続するボタン本体部と、このボタン本体部の軸芯部の導通路内に配置され、このボタン本体部と上下方向に相対的に移動できる弁棒とからなり、この弁棒の軸芯部には内部空間が設けられ、この弁棒の下方部分は、前記バルブステムの内部に嵌入して、バルブステムのステムオリフィスを開閉することができ、この弁棒の上端部分は、ボタン本体部の導通路の上端側の開閉を行なうことができ、この弁棒とボタン本体部との間の適宜位置にはコイルスプリング等の弾撥部材を介装して弁棒を常に上方向に付勢して弁棒の上端部分の閉鎖が行なわれ、弁棒の内部空間からボタン本体部の内部空間までの間の空間部に定量室が形成され、ボタン本体部を押下することにより、バルブステムのステムオリフィスから内容液が導入されて定量室内に内容液が充填され、定量室内に内容液が充填されるとその内圧により弁棒が下方に移行して、弁棒上端部の前記閉鎖が解除されて一定量の内容液がボタン本体部の導通路の先端部に形成された噴射口から噴霧されることを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタンである。
【0016】
本発明の第5のものは、上記第4の発明において、前記弁棒の上端部分の開閉が、弁棒上端部に形成された環状弁体と、この環状弁体が適合するボタン本体の導通路の上方端側の細径部とこの細径部に続く下方の大径部とから成り、前記環状弁体が前記細径部と係合した際に封止が行われ、前記環状弁体が前記大径部と適合した際に封止が解除されることを特徴とするエアゾール容器の定量噴射ボタンである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1のものにおいては、ボタン本体部とその軸芯部の導通路内に配備される弁棒と、この弁棒の上端部分をその内部空間内に受容し、前記ボタン本体部の導通路内の上方端側にその下方部分が嵌入する噴射口部材とから成るものであって、弁棒の先端部分を噴射口部材の内側に配置し、封止手段を、弁棒の先端側外壁面と噴射口部材の内壁面の接合面に設けたものである。
従って、その封止構造も簡易なものとして製作でき、弁棒と噴射口部材間の上下方向ストロークも自在に設計することが出来ることなり、定量室の容量設定に際して、定量室の半径方向の長さを変更することなく、その容量を適宜変更し、設定することができることとなるのである。
また、上記従来のものにおいては、噴射ボタンを押し下げた後、指を離し、ボタンが上方に戻る際に定量噴射が行われるが、本発明においては、弁棒と噴射口部材の2つの可動部材を利用することにより、噴射ボタンの押し下げ動作によりすぐに定量噴射が行なわれ、迅速な作動感覚を得ることができることとなる。
【0018】
本発明の第2のものにおいては、上記第1の発明において、封止手段をより具体化したものであり、その効果は上記第1の発明と同じである。
即ち、封止手段として、弁棒の先端側外壁に嵌合されたOリング等のシーリング部材と、この弁棒の先端側外壁と適合する噴射口部材の内壁面の先端側の細径部とそれに続く基端側の大径部とから形成し、前記シーリング部材が前記噴射口部材の細径部に位置した際に封止が行われ、前記シーリング部材が前記噴射口部材の大径部に位置した際にその封止が解除されるように構成したものである。
他方、弁棒の基端部では、前記封止手段が封止を行い定量室が形成されて内容液が充填され、その定量室の内圧が高圧となって噴射口から内容液が噴霧される直前に閉鎖が行なわれるように構成しているものである。
【0019】
上記構成を採用することにより、噴射ボタンの押下前において、弁棒のシーリング部材が噴射口部材の上方(先端側)の細径部と適合している封止状態から、噴射ボタンを押下することにより、そのまま封止状態が維持されて、バルブステムが押下されることにより、エアゾール容器内の内容液が排出されて封止された定量室内に貯留し、定量室内の内圧が高圧となり、これによって噴射口部材が上方に押し上げられて、弁棒のシーリング部材が噴射口部材の大径部に移行することとなって封止が解除され、定量室内の一定量の内容液が作動部の噴射口から外部に噴霧されることとなるのである。この状態で弁棒の下端部は閉鎖された状態である。
この具体的な作動手順については後に詳述する。
【0020】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記ボタン本体部と噴射口部材との間にコイルスプリングや樹脂スプリング等の弾撥部材を装備して、噴射口部材を常に下方に付勢したものである。
実際には、定量室内の内容液の内圧により一定量の内容液が噴射口部材の噴射口から噴霧され、この弾撥部材はなくとも実施できるのであるが、この弾撥部材を装備することのより噴射口部材の動作をより迅速に動作させることができ、内容液の一定量を噴射ボタンの押し下げ動作の間に短時間に完了させることができるのである。
【0021】
本発明の第4のものにおいては、噴射ボタンが、ボタン本体部とこのボタン本体部の軸芯部の導通路内に配備された弁棒とからなり、弁棒の軸芯部には内部空間が設けられ、弁棒の内部空間からボタン本体部の内部空間までの間の空間部に定量室が形成され、この弁棒の下方部分は、前記バルブステムの内部に嵌入して、バルブステムのステムオリフィスを開閉することができ、他方、弁棒の上端(先端)部分は、ボタン本体部の導通路の上端側の開閉を行なうことができるものである。
【0022】
これにより、噴射ボタンを押下することによって、バルブステムが押下されて内容液が定量室内に充填され、このとき弁棒の上端部分はボタン本体部の導通路を封止しているが、定量室内の内圧が高まると、前記弁棒の上端部分の封止が解除されて、所定量の内容液がボタン本体部の導通路の出口である噴射口から外部に噴霧されるのであり、この噴霧の際には弁棒下端部分がバルブステムのオリフィスを閉鎖した状態となる。
このようにして、噴射ボタンを押下する動作により、一定用の内容液が噴霧されることとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
本発明においては、以下に2つの実施例について記載しているが、その何れの噴射ボタンにおいても、ボタン本体部とその軸芯部に設けられた導通路内に1個又は2個の弁棒等の可動部材を配設して、噴射口側とバルブステム側とのそれぞれの側においてその通路の開閉を行い、定量室を形成しそして定量室を開放してエアゾール容器内の内容液の定量噴射を行なうものである。
以下、それぞれの実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明のエアゾール容器の定量噴射ボタンに係る実施例1を図示する縦断面説明図であり、その(A)が不使用(保管)状態を示し、その(B)がボタン本体部を押下してバルブステムを押下し、定量室内に内容液が充填される状態を示し、その(C)が定量室内に内容液が充填され、定量室内の内圧が高まり、噴射口から一定量の内容液が外部に噴射されている状態を示している。この実施例では、噴射ボタンを下方に押下した際に噴霧が行なわれる。
【0026】
実施例1に係る定量噴射ボタン1は、エアゾール容器Cの上端部に設けられた開閉バルブの上端から上方に突出する内容液の排出用バルブステムSに接続するボタン本体部11と、このボタン本体部11の軸芯部上下方向に設けられた筒孔からなる導通路の内部に配備された弁棒12と、この弁棒12の先端側部分がその基端側に嵌入する噴射口部材13とからなる。
【0027】
ボタン本体部11の導通路の下端の入口側はバルブステムSと接続し、このボタン本体部11を押下することにより、このバルブステムSも押下できる。
このボタン本体部11の導通路の下方側に弁棒12が配備される。
弁棒12の下端部12kはその外縁部に鍔部が形成され、ボタン本体部11の導通路内の環状凸部11tと当接してその通路を閉鎖できる。
【0028】
前記導通路内の環状凸部11tと対応する弁棒12の部位には、環状突出部12tが形成され、この環状突出部12tが前記導通路内の環状凸部11tと当接することによって弁棒12の導通路内での位置が規定される。
更に、導通路内の略中央部にはガイド16が内設され、弁棒12の上下方向の往復動を案内する。
【0029】
ガイド16と弁棒12の環状突出部12tとの間にはコイルスプリング17が配設されいている。このコイルスプリング17によって弁棒12が上方に移行した際に、その弁棒12を下方に押し戻す効果を発揮する。
弁棒12の上方の先端部12sの外周面には環状凹部が形成されて、この環状凹部にOリング12rが嵌合され、この弁棒12の先端部12sは、前記噴射口部材13の内部空間内に下端部から嵌入する。
【0030】
この噴射口部材13の内部空間の上端側は、細い内径の細径部14に形成され、この細径部14に続いてその下方にその細径部よりも内径の大きい大径部15が形成されている。
これにより、弁棒12の先端部12sに配備されたOリング12rが噴射口部材13の細径部14に係合すると封止が行なわれ、このOリング12rがその大径部15と適合するとその封止が解除されることとなる。
【0031】
この噴射口部材13は、その基端部側がボタン本体部11の導通路内に嵌入して上下方向に往復動可能であり、その基端部側の外壁面にもOリング13rが嵌合されている。
また、噴射口部材13の基端部側には環状段部が設けられ、この環状段部とボタン本体部の上端部との間にコイルスプリング18が内装され、噴射口部材13を常に基端側(下方向)に付勢した状態にある。
但し、定量室内に内容液が充填された際には、その内容液の内圧に負けて前記コイルスプリング18は収縮する程度の強度である。
【0032】
尚、弁棒12は、図面からは明瞭には見て取れないが、ボタン本体部11の導通路壁面と少しの隙間を設けて遊嵌された状態に組み付けられており、内容液はこの隙間から噴射口19に向けて流通するが、弁棒12の下端部12kがボタン本体部11の導通路内に設けられている環状凸部11tと当接するとバルブステムSからの流入は閉鎖される構成である。
従って、定量室は、(B)図の状態から解る通り、ボタン本体部11の導通路内で、導通路内の環状凸部11tから上方の空間部と、噴射口部材13と弁棒12の先端部12sとの間の隙間部分となる。
【0033】
次に、この実施例1の作動手順とその機能について説明する。
(1) まず(A)図は、不使用時(保管時)状態を示す。
この状態では、バルブステムSは、上方端に付勢されており、閉鎖状態である。またOリング12rは噴射口部材12の内壁面の細径部14の部位に位置するために封止された状態である。
【0034】
(2) 次に(B)図は、ボタン本体部11を指で押下してバルブステムSを押下し、エアゾール容器内の内容液が定量室内に充填されている状態を示す。
この状態では、ボタン本体部11が押下されてバルブステムも押下され、内容液が定量室内に導入され、定量室内の内圧が高まると共に、弁棒12が内容液の圧力により上方に押し上げられる。
定量室内の内圧がほぼエアゾール容器内と同圧となると同時に弁棒12の下端部12kがボタン本体部11の導通路内の環状凸部11tと当接してバルブステムS側との連通が閉鎖されるのである。
この状態が(B)図の状態である。
【0035】
(3) 次に(C)図は、噴射口部材13が定量室内の内容液の内圧により押し上げられることによって、定量室内の内容液が噴射口から外部に噴霧される状態を示している。
前記(B)図の状態とほぼ同時に、定量室内の内容液の内圧により噴射口部材13が上方に押し上げられる。
するとOリング12rが噴射口部材13の大径部15の位置に移行して封止が解除され、定量室内の内容液の一定量が噴射口19から外部空間に噴霧されるのである。
【0036】
定量室内の内容液が外部に噴霧されると、定量室内の内圧が低下して、コイルスプリング18の付勢力により噴射口部材13は下方に移行する。
噴射口部材13が下方に移行すると、弁棒12の先端部12sのOリング12rが噴射口部材13の細径部14と係合して再度封止がおこなわれ、(B)図の状態に戻り、ボタン本体部11から指を離すことによって、(A)図の不使用状態に復帰するのである。
このように、本発明の実施例1においては、噴射ボタン1を押下するとほぼ同時に一定量の内容液が噴霧されることとなるのである。
【0037】
以上の作動手順において、その上方の封止手段は、シーリング部材としてのOリング12rと、噴射口部材13の内部空間の内壁面に形成されている上方側の細径部14とこれに続く下方の大径部15との連携と共働によって実行される。
また下方側の閉鎖手段は、弁棒12の下端部12kの鍔部と、ボタン本体部11の導通路の内壁面に形成されている環状凸部11tとの当接によって行なわれるものである。
【実施例2】
【0038】
図2は、本発明の第2の実施例の縦断面図であり、その中心線に沿って2分割し、その左半部が不使用時を示し、その右半部が作動状態を示す定量噴霧状態を図示している。
この実施例2に係る定量噴射ボタン2は、エアゾール容器の上端部に位置するバルブステムSに装着されるボタン本体部21と、このボタン本体部21の軸芯部上下方向に設けられた導通路内に配備される弁棒22とからなる。
【0039】
ボタン本体部21の導通路の下端の入口側はバルブステムSと接続し、このボタン本体部21を押下することにより、このバルブステムSも押下できる。
このボタン本体部21の導通路の上端の出口側に噴射口29が設けられている。
このボタン本体部21の導通路内に弁棒22が上下方向移動可能に配備される。
弁棒22の下端側の弁棒下部22kは、バルブステムSの通路内に嵌入している。
【0040】
弁棒22の弁棒下部22kの下端側には下方に延長する鍔部23が設けられ、弁棒22が下方に移行した際にバルブオリフィス24を封鎖できる。
他方、弁棒22の軸芯部には内部導通路22tが形成され、その中間部に横穴22yが設けられて、バルブステムSの通路と内部導通路22tが連通されている。
【0041】
弁棒22には、その上方部に弁棒上部22sが形成されており、この弁棒上部22sと前記弁棒下部22kとは一体化されて、その境界部には通路25が形成されている。
更に、弁棒上部22sの上端部には、環状鍔部33が形成され、ボタン本体部11の導通路の上方端側の内壁面と係合できる。この環状鍔部33が環状弁体となる。
即ち、この環状鍔部33が係合するボタン本体部21の導通路の内壁面には、その内径の小さい細径部34とこの細径部34に続く下方の大径部35が形成され、前記環状鍔部33が前記細径部34と係合した際に封止が行われ、前記環状鍔部33が前記大径部35と適合するとその封止が解除されるのである。
【0042】
弁棒22とボタン本体部21との間にはコイルスプリング28が装備されており、弁棒22を常に上方に付勢している。
この実施例2においては、その定量室は、弁棒22の内部導通路22tから弁棒上部22sとボタン本体部21の導通路との間隙ということとなるが、厳密には、ボタン本体部21の導通路内で、弁棒下部22k及び弁棒上部22sとの間隔空間となる。
【0043】
次に、この実施例2の作動手順とその機能について説明する。
(1) まず
図2の左半部においては、不使用時(保管時)状態を示している。
この状態では、バルブステムSは、上方端に付勢されており、閉鎖状態である。また弁棒上部22sの上端の環状鍔部33はボタン本体部12の導通路の内壁面の細径部34の部位に位置するために封止された状態にある。
【0044】
(2) 次に、ボタン本体部21を指で押下すると、バルブステムSも押下され、バルブオリフィス24が開くこととなる。
それによってエアゾール容器内の内容液がバルブオリフィス24を通過して、弁棒下部22kの横穴22yを通過して、弁棒下部22k内の内部導通路22tへ、そして通路25を通過して弁棒上部22sの外側に流入して定量室内に充填されるのである。
定量室内に内容液が充填されると、定量室内の内圧が高まり、コイルスプリング28の付勢力に抗して弁棒22が下方に押し下げられる。
【0045】
この状態を
図2の右半部が図示しており、同時に弁棒上部22sの上端の環状鍔部33がボタン本体部21の導通路の上端側の大径部35の部位に移行し、両者の封止が解除されるのである。
これによって、定量室内に充填された内容液が噴射口29から外部空間へと噴霧されるのである。
この間、噴射ボタン2は、下方に押下されたとほぼ同時に、一定量の内容液が噴射口29から噴射されることとなるのである。
【0046】
以上の作動手順において、その上方の封止手段は、弁棒上部22sの上端の環状鍔部33とボタン本体部21の導通路上方側の細径部34と大径部35との連携と共働により行なわれる。
他方、下方側では、バルブステムS内の通路において、弁棒下部22kの下方側に設けられた下方に延長する鍔部23によるバルブオリフィス24の閉鎖によって行なわれることとなるのである。
【実施例3】
【0047】
図3は、本発明に係る実施例3の縦断面図であり、その(A)が不使用時を示し、その(B)が噴射ボタンを押下して定量噴霧状態を図示している。
この実施例3に係る定量噴射ボタン3は、エアゾール容器の上端部に位置するバルブステムSに装着されるボタン本体部31と、このボタン本体部31の内部空間に上方からその下部が嵌入する作動部32とからなる。
【0048】
ボタン本体部31の内部空間の下端側はバルブステムSと接続して連通し、このボタン本体部31が下方に押下することにより、このバルブステムSも押下する。
このボタン本体部31の内部空間内には、定量室46を形成する有底筒状の区画壁45が形成され、この区画壁45の上端開口部から作動部32の下方部分である作動部下部32kが遊嵌状態に嵌入する。
この作動部下部32kの先端部分と区画壁45の底面との間にはコイルスプリング38が介装されて作動部32は常に上方に付勢されている。
【0049】
作動部32は、下方部分の作動部下部32kの上端部に作動部上部32sが接続され、作動部下部32kの軸芯部に形成されている導通路32tから作動部上部32sの上端部の噴射口29とが連通している。
作動部下部32kの軸芯部の導通路32tの中間部には横穴32yが設けられており、この横穴32yは、不使用時、シーリング部材43によって封止されて、導通路32tとボタン本体部31の内部空間とは連通していない状態に形成されている。
【0050】
作動部上部32sの下端面は、ボタン本体部31の上端面と所定間隔に維持されており、この作動部上部32sを押下すると、その下端面がボタン本体部31の上端面に当接してボタン本体部31を押下することができ、その結果バルブステムSをも押下できる。
(B)図の状態は、作動部上部32sを押下し、ボタン本体部31が押下され、バルブステムSも押下され、これによってエアゾール容器C内の内容液がバルブステムSから排出され、内容液が噴射口39から噴霧されている状態を示している。
【0051】
この状態で、バルブステムSから排出された内容液は、ボタン本体部31の区画壁46の外周部を通過して、区画壁46の上端部の周縁部から区画室45内への流入が阻止される。
他方、区画室46内の定量室45に充填された内容液は、区画壁46と作動部下部32kとの外周面との間の隙間から横穴32yを通過して、作動部下部32kの導通路32tを通過して噴射口39から外部空間に噴霧されることとなるのである。
【0052】
次に、この実施例3の作動手順とその機能について説明する。
(1) まず
図3(A)においては、不使用時(保管時)状態を示している。
この状態では、バルブステムSは、上方端に付勢されており、閉鎖状態である。また作動部下部32kの横穴32yは、シーリング部材43により封止されており、定量室45と作動部下部32kの導通路32tは連通していない状態である。
この状態において、定量室45内には、内容液が既に充填された状態にある。
【0053】
(2) 次に、
図3(B)に図示した通り、作動部上部32sを押下し、ボタン本体部31が押下されてバルブステムSも押下される。
この状態で、シーリング部材43が区画壁46の上端縁の間隙44((A)図)が閉鎖される((B)図)。
前記間隙44が閉鎖されると、それに伴い、作動部下部32kの横穴32yが開放されて、定量室45と導通路32tが連通する。
【0054】
これによって、噴射口39から一定量の内容液が外部に噴霧されるのである。
この間、噴射ボタン3は、下方に押下されたとほぼ同時に、一定量の内容液が噴射口39から噴射されることとなるのである。
以上の作動手順において、その上方の横穴32yの封止手段と、下方の間隙44の封止手段は、シーリング部材43による封止ということとなるのである。
【0055】
以上、3つの実施例について説明したが、本発明の実施例1及び2においては、バルブステムに接続するボタン本体部とこの軸芯部の導通路内に配設された弁棒等の上下可動部材とから構成され、他方、実施例3においてはシーリング部材の機能により、ボタン本体部の押下とほぼ同時に定量噴射が可能なものであり、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々設計変更することができるものである。
それぞれの実施例においては、その封止手段を各種の形態に設計変更することができる。
【0056】
即ち、上記実施例1又は2では、Oリング又は環状鍔部と、これに係合する内壁面の大径部と細径部とから構成されるが、これら相互に係合する構成部材は、相互に関係する内壁面又は外壁面の何れか一方の側に設けることができ、その何れの側に設けて実施することもできるものである。
要するに、Oリングや環状鍔部と細径部及び大径部との係合関係からなる封止手段において、その何れか一方をボタン本体部(噴射口部材)又は弁棒の何れか一方に設けて実施することができるものである。
【0057】
実施例1においては、ボタン本体部と噴射口部材に介在させたコイルスプリング18等の弾撥部材は、これを装着して形成することもできるし、これを装着せずに実施することもできる。
構成部材の材質は、金属製のコイルスプリング以外は合成樹脂製であり、適宜その材質を選択して採用することができる。
それぞれの構成部材のサイズ、形状等は自由に設計することができる。
特に、ボタン本体部や弁棒等の上下方向長さを適宜変更することによって、それらの半径方向長さを変更せずに定量室の容量を適宜決定することができる。
【0058】
実施例2においては、ボタン本体部は、複数のパーツから構成し、これを合体・結合して一体化して形成してもよいものである。
とりわけ、内部にスプリングや弁棒等を内装するため、複数のパーツによってボタン本体部を構成し、その導通路内に弁棒やスプリングを配設し、最後に導通路の内壁面の上端部形状(細径部と大径部)をも規定する噴射口部を嵌合して噴射ボタンを形成するのが普通である。
【0059】
以上、本発明は、ボタン本体部と弁棒等の簡易な構成を採用して、その封止手段もこれまでにない構成を採用し、定量室の容積も容易に変更でき、且つ、ボタンの押し下げ動作とほぼ同時に定量噴霧を行うことができるエアゾール容器の定量噴射ボタンを提案することができたものである。