(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推定手段は、複数の時間範囲のそれぞれと、眠気レベル候補とが対応づけられた眠気レベル推定テーブルを保持し、前記複数の時間範囲の内で前記算出された回帰所要時間が属する時間範囲に対応する眠気レベル候補を特定する、
請求項1に記載の眠気推定装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0013】
[実施の形態1]
[眠気推定装置100の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る眠気推定装置100の構成を示す。眠気推定装置100は、例えば、車両に搭載され、ECU(Electronic Control Unit)によって実現される。
図1において、眠気推定装置100は、眠気推定パラメータ取得部101と、行動検出部102と、回帰所要時間算出部103と、眠気推定部104とを有する。
【0014】
眠気推定パラメータ取得部101は、眠気推定対象(例えば、車両の運転者)についての「眠気推定パラメータ」を取得する。「眠気推定パラメータ」は、顔表情特徴情報、又は、顔表情特徴情報から直接的に推定される眠気レベル(以下では、「粗眠気レベル」と呼ばれることがある)等である。顔表情特徴情報とは、例えば、顔部位の特徴点間の距離、又は、顔画像の画像特徴量である。
【0015】
眠気推定パラメータ取得部101は、所定の周期で「眠気推定パラメータ」を取得し、回帰所要時間算出部103へ出力する。
【0016】
行動検出部102は、検出対象の行動を検出し、行動を検出した場合に行動検出情報を回帰所要時間算出部103へ出力する。
【0017】
回帰所要時間算出部103は、眠気推定パラメータ取得部101から所定の周期で「眠気推定パラメータ」を取得する。また、回帰所要時間算出部103は、行動検出部102において行動が検出された場合、行動検出部102から行動検出情報を取得する。
【0018】
そして、回帰所要時間算出部103は、行動検出情報の取得タイミングより前に取得した眠気推定パラメータと、行動検出情報の取得タイミングより後に取得した眠気推定パラメータとに基づいて、「回帰所要時間」を算出する。「回帰所要時間」とは、行動が検出されたタイミングから、行動検出情報の取得タイミングより後に取得した眠気推定パラメータの値が行動検出情報の取得タイミングより前に取得した眠気推定パラメータの値(以下では、単に「基準値」と呼ばれることがある)に戻るまでに掛かる時間である。
【0019】
具体的には、回帰所要時間算出部103は、行動検出情報を受け取ったタイミングから経過時間の計測を開始し、行動検出情報の取得タイミングより後に取得した眠気推定パラメータの値が基準値に到るまでの時間を計測する。こうして計測された時間が、回帰所要時間である。
【0020】
眠気推定部104は、回帰所要時間算出部103において算出された回帰所要時間に基づいて、眠気推定対象の眠気レベルを推定する。具体的には、眠気推定部104は、複数の時間範囲のそれぞれと、眠気レベルとが対応づけられた眠気レベル推定テーブルを具備している。そして、眠気推定部104は、回帰所要時間算出部103において算出された回帰所要時間が当てはまる、眠気レベル推定テーブルにおける時間範囲と対応づけられた眠気レベルを特定する。この特定された眠気レベルが、眠気推定対象について推定される眠気レベルである。
【0021】
[安全運転支援装置200の構成]
図2は、本発明の実施の形態1に係る安全運転支援装置200の構成を示す。安全運転支援装置200は、眠気推定装置100を含んで構成されている。
図2において、安全運転支援装置200は、画像取得部201と、出力部202とを有する。なお、上述の通り、実施の形態1では、眠気推定パラメータが顔表情特徴情報及び粗眠気レベルのいずれも利用可能であるが、以下では、眠気推定パラメータが顔表情特徴情報である場合の構成について説明する。
【0022】
画像取得部201は、車両の運転者の顔画像を所定の周期で取得し、眠気推定パラメータ取得部101及び行動検出部102へ出力する。画像取得部201は、例えば、車両において運転者の正面方向に設置されるカメラである。このカメラは、運転者の顔を含む領域を撮影する。
【0023】
眠気推定パラメータ取得部101は、眠気推定対象(例えば、車両の運転者)についての眠気推定パラメータを取得する。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態1に係る眠気推定パラメータ取得部101の構成を示す。
図3において、眠気推定パラメータ取得部101は、表情特徴算出部121を有する。
【0025】
表情特徴算出部121は、画像取得部201から出力された顔画像を用いて、眠気推定対象(例えば、車両の運転者)についての眠気推定パラメータの値(つまり、ここでは、顔表情特徴情報)を算出する。
【0026】
具体的には、眠気推定パラメータとして顔部位の2つの特徴点間の距離が用いられる場合、2つの特徴点としては、例えば、上瞼及び下瞼のペア、左眉及び右眉のペア、又は、左口角及び右口角のペアが用いられる。なお、顔部位の特徴点の検出には、形状抽出、テンプレートマッチング、AAM(Active Appearance Model)、ASM(Active Shape Model)などが用いられる。
【0027】
また、眠気推定パラメータとして顔画像の画像特徴量が用いられる場合、画像特徴量は、顔画像データの一部分(例えば、眉間領域)に対して、ガボール特徴、Haar-lke特徴、HoG(Histogram of oriented Grandient)特徴、又は、Haar-lke特徴を適用することにより求められる。
【0028】
こうして算出された眠気推定パラメータの値は、回帰所要時間算出部103へ出力される。
【0029】
行動検出部102は、画像取得部201から出力された顔画像を用いて、検出対象の行動を検出する。例えば、眠気推定対象が車両の運転者である場合、検出対象の行動は、ルームミラー、サイドミラー、メータ等を確認するための視線移動又は頭部挙動である。なお、行動検出部102は、顔画像を用いずに、音声入力による機器操作のための発話、又は、同乗者との会話等を、検出対象の行動としてもよい。
【0030】
回帰所要時間算出部103は、上述の通り、行動検出情報の取得タイミングより前に取得した眠気推定パラメータと、行動検出情報の取得タイミングより後に取得した眠気推定パラメータとに基づいて、「回帰所要時間」を算出する。ここで、回帰所要時間は、眠気推定対象の眠気が深い程短くなり、眠気が浅い(つまり、覚醒状態に近い)程長くなる。
【0031】
眠気推定部104は、回帰所要時間算出部103において算出された回帰所要時間に基づいて、眠気推定対象の眠気レベルを推定する。眠気レベルの推定には、上述の通り、複数の時間範囲のそれぞれと、眠気レベル候補とが対応づけられた眠気レベル推定テーブルが用いられる。眠気レベル推定テーブルでは、各時間範囲は、時間範囲を規定する時間が短くなる程、高い眠気レベルに対応づけられる。すなわち、眠気推定部104は、回帰所要時間算出部103において算出された回帰所要時間が属する時間範囲と対応付けられた眠気レベル候補を特定することにより、眠気推定対象の眠気レベルを推定する。
【0032】
眠気レベルとしては、例えば、非特許文献1において規定されている眠気レベルを用いることができる。この非特許文献1では、レベル1:全く眠くなさそう、レベル2:やや眠そう、レベル3:眠そう、レベル4:かなり眠そう、レベル5:非常に眠そう、の5段階の眠気レベルが規定されている。特に、眠気レベル3までの初期の眠気レベルにおいて安全運転を支援することが事故の未然防止に効果的であると言われている。
【0033】
出力部202は、眠気推定部104において推定された眠気レベルに応じた報知情報を出力する。この報知情報は、眠気による事故防止のために出力される。
例えば、眠気レベル1では、出力部202は、何も出力しない。
眠気レベル2では、出力部202は、報知情報として、車室内に存在する環境音を強調した強調音、香り、冷風、又は、光等を用いる。これにより、運転者に対して、さりげなく眠気防止を促すことができる。この場合、出力部202は、スピーカ、ベンチレータ、又は、LED照明等によって実現される。
眠気レベル3では、出力部202は、報知情報として、警報音(beep音、音声、超音波)、シート若しくはステアリングの振動、又は、シートベルトの一時的な巻き取り等を用いる。これにより、運転者に対して、注意喚起を促すことができる。
眠気レベル4又は5では、出力部202は、報知情報として、大音量の警報音、又は、シート若しくはステアリングの大振動等を用いる。また、同時に、安全運転支援装置200は、運転者に対して、積極的に休憩を促してもよい。また、例えば、先行車との車間距離が極めて接近している場合、安全運転支援装置200が車両の制御に介入し、緊急停車させてもよい。
【0034】
[眠気推定装置100の動作]
上記した構成を有する眠気推定装置100の動作例について説明する。
図4は、眠気推定装置100の動作説明に供するフロー図を示す。
【0035】
ステップS11において、眠気推定パラメータ取得部101は、眠気推定パラメータ(基準値)P
0を取得し、回帰所要時間算出部103へ出力する。
【0036】
ステップS12において、行動検出部102は、検出対象の行動を検出し、行動検出情報を回帰所要時間算出部103へ出力する。ここで、運転者が検出対象である行動を実行すると、運転者の眠気レベルが少なくとも一時的にレベル1(つまり、最も低い眠気レベル)に近づく。
【0037】
ステップS13において、回帰所要時間算出部103は、行動検出情報を受け取り、経過時間tをゼロにセットすると共に、経過時間のカウントを開始する。
【0038】
ステップS14において、眠気推定パラメータ取得部101は、眠気推定パラメータP
tを取得し、回帰所要時間算出部103へ出力する。
【0039】
ステップS15において、回帰所要時間算出部103は、P
tがP
0以下であるか否かを判定する。なお、ここでは、眠気の度合いが高まるにつれて大きくなる眠気推定パラメータ(例えば、粗眠気レベル)が用いられている前提として説明を行っているが、採用される眠気推定パラメータによっては、判定条件におけるP
0とP
tとの大小関係が逆転する場合がある。
【0040】
ステップS15においてP
tがP
0より大きいと判定される場合(ステップS15:NO)、眠気推定パラメータ取得部101は、ステップS14において次のタイミングの眠気推定パラメータP
tを取得する。
【0041】
ステップS15においてP
tがP
0以下であると判定される場合(ステップS15:YES)、回帰所要時間算出部103は、ステップS16において、そのタイミングでの経過時間(つまり、回帰所要時間)を特定する。
【0042】
ステップS17において、眠気推定部104は、ステップS16において特定された回帰所要時間に基づいて、眠気推定対象の眠気レベルを推定する。
【0043】
以上のように本実施の形態によれば、眠気推定装置100において、回帰所要時間算出部103が、行動が検出された検出タイミングから、検出タイミングより後に取得した眠気推定パラメータの値が検出タイミングより前に取得した眠気推定パラメータの値に戻るまでに掛かる時間である回帰所要時間を算出し、眠気推定部104が、算出された回帰所要時間に基づいて、眠気推定対象の眠気レベルを推定する。
【0044】
こうして、眠気推定パラメータという個人によってバラツキのあるパラメータの代わりに、「回帰所要時間」を用いて眠気レベルを推定できるので、個人差の影響を排した眠気レベル推定を行うことができる。
【0045】
具体的には、眠気推定部104は、複数の時間範囲のそれぞれと、眠気レベル候補とが対応づけられた眠気レベル推定テーブルを保持し、複数の時間範囲の内で回帰所要時間が属する時間範囲に対応する眠気レベル候補を特定する。
【0046】
[実施の形態2]
実施の形態1では、全ての眠気レベルに関して、「回帰所要時間」を用いた推定が行われた。そして、眠気推定パラメータとしては、顔表情特徴情報及び粗眠気レベルのいずれも用いることができる。これに対して、実施の形態2では、眠気推定パラメータとして、粗眠気レベルが用いられる。そして、粗眠気レベルでも比較的精度の高い、最も高いレベル及び最も低いレベルでは、「回帰所要時間」を用いた推定処理を行わず、粗眠気レベルをそのまま眠気レベルとして用いる。これにより、眠気推定装置における処理負荷を削減できる。
【0047】
[眠気推定装置300の構成]
図5は、本発明の実施の形態2に係る眠気推定装置300の構成を示す。
図5において、眠気推定装置300は、眠気推定パラメータ取得部301と、時間算出制御部302と、回帰所要時間算出部303とを有する。
【0048】
眠気推定パラメータ取得部301は、所定の周期で「眠気推定パラメータ」を取得し、時間算出制御部302及び回帰所要時間算出部303へ出力する。ここでは、眠気推定パラメータは、「粗眠気レベル」である。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態2に係る眠気推定パラメータ取得部301の構成を示す。
図6において、眠気推定パラメータ取得部301は、粗眠気レベル算出部311を有する。
【0050】
粗眠気レベル算出部311は、表情特徴算出部121において算出された顔表情特徴情報に基づいて、眠気レベルを推定する。この推定された眠気レベルが、粗眠気レベルである。眠気推定部104において精度良く推定される眠気レベルと区別するために、粗眠気レベル算出部311によって推定された眠気レベルを粗眠気レベルと呼んでいる。従って、粗眠気レベルも、例えば、レベル1−5の5段階用意されている。
【0051】
ここで、眠気レベルが高くなるにつれて、上瞼と下瞼との間の距離は小さくなる傾向があり、左右の眉間の距離は小さくなってから大きくなる傾向があり、左右の口角間の距離は小さくなる傾向がある。また、眠気レベルが高くなるにつれて、眉間領域の画像特徴量としては、高周波成分を多く含むテクスチャに現れる特徴的な特徴量が得られる。これは、眠気レベルが高くなるにつれて、運転者が眠気に抗って覚醒しようとするときに現れる眉間のしわに起因する。
【0052】
図5に戻り、時間算出制御部302は、眠気推定パラメータ取得部301から出力された粗眠気レベルに応じて、回帰所要時間算出部303による算出処理の実行を制御する。具体的には、時間算出制御部302は、眠気推定パラメータ取得部301から出力された粗眠気レベルが最も高いレベル又は最も低いレベルである場合、算出処理の停止命令信号を回帰所要時間算出部303へ出力すると共に、その粗眠気レベルを眠気推定部104で推定される眠気レベルと同様に精度の高い眠気レベルとして後段の機能部(例えば、出力部202)へ出力する。一方、眠気推定パラメータ取得部301から出力された粗眠気レベルが最も高いレベルと最も低いレベルとを除くレベルである場合、時間算出制御部302は、算出処理の実行命令信号を回帰所要時間算出部303へ出力する。
【0053】
回帰所要時間算出部303は、基本的に、実施の形態1の回帰所要時間算出部103と同様の機能を有する。ただし、回帰所要時間算出部303は、時間算出制御部302から実行命令信号を受けるときにのみ、回帰所要時間の算出処理を実行する。すなわち、回帰所要時間算出部303は、粗眠気レベルが最も高いレベルと最も低いレベルとを除くレベルである場合にのみ、回帰所要時間の算出処理を実行する。これは、正常状態(つまり、覚醒状態)を表す眠気レベル1及び非常に眠い状態である眠気レベル5の特定は比較的容易であるが、眠気レベルの初期から中期に該当する眠気レベル2−4ではその切り分けが難しいからである。
【0054】
[眠気推定装置300の動作]
図7は、眠気推定装置300の動作説明に供するフロー図を示す。
【0055】
ステップS21において、眠気推定パラメータ取得部301は、眠気推定パラメータ(基準値)P
0を取得し、時間算出制御部302及び回帰所要時間算出部303へ出力する。ここでは、眠気推定パラメータは、「粗眠気レベル」である。
【0056】
ステップS22において、時間算出制御部302は、眠気推定パラメータ取得部301から出力された粗眠気レベルがレベル1又はレベル5であるか否かを判定する。
【0057】
ステップS22において粗眠気レベルがレベル1又はレベル5であると判定された場合(ステップS22:YES)、時間算出制御部302は、算出処理の停止命令信号を回帰所要時間算出部303へ出力する。これにより、眠気レベル推定処理は終了する。
【0058】
ステップS22において粗眠気レベルがレベル1又はレベル5でないと判定された場合(ステップS22:NO)、時間算出制御部302は、算出処理の実行命令信号を回帰所要時間算出部303へ出力する。
【0059】
ステップS23において、眠気推定パラメータ取得部301は、眠気推定パラメータP
tを取得し、時間算出制御部302及び回帰所要時間算出部303へ出力する。
【0060】
以上のように本実施の形態によれば、眠気推定装置300において、眠気推定パラメータ取得部301は、眠気推定対象の顔部位の特徴点間の距離、又は、顔画像の画像特徴量に基づいて、粗眠気レベルを眠気推定パラメータとして算出し、回帰所要時間算出部303は、粗眠気レベルが複数の眠気レベル候補の内の最も高い眠気レベル候補及び最も低い眠気レベル候補以外の、眠気レベル候補に対応する場合にのみ、回帰所要時間を算出する。
【0061】
こうすることにより、レベルの切り分けが難しい複数の眠気レベル候補の内の最も高い眠気レベル候補及び最も低い眠気レベル候補以外の、眠気レベル候補についてのみ、回帰所要時間を算出するので、眠気推定装置300における処理負荷を削減できる。
【0062】
[実施の形態3]
[眠気推定装置400の構成]
図8は、本発明の実施の形態3に係る眠気推定装置400の構成を示す。
図8において、眠気推定装置400は、行動分類部401と、テーブル調整部402とを有する。
【0063】
行動分類部401は、「行動分類パラメータ」に基づいて、行動検出部102によって検出された行動を複数の区分に分類する。実施の形態3での行動分類パラメータとは、行動に対応する視線移動又は頭部挙動の大きさを、視線角度又は頭部角度の時間変化の大きさとして表現したものである。
【0064】
ここで、運転者の頭部の中心に対して鉛直方向のz軸、運転者の両目中心から正面方向のx軸、両目を結んだ直線上でかつx軸に垂直な方向のy軸によって構成される座標系を定義する。この座標系において、例えば、メータを視線だけで目視確認するような場合、頭部角度の変化はなく、短時間の視線角度のピッチ方向の移動(約0.5secでの20°程度の上下運動)として捉えられる。従って、この場合、行動分類部401は、運転行動の大きさが小さい行動区分に分類する。また、例えば、運転席が右側にある場合に左サイドミラーを見る場合、頭部角度(ヨー方向に約30°)及び視線角度(ヨー方向に30°)のヨー方向の変化が短時間(約1sec程度)で生じる。また、車線変更において、首を回転させて側後方を目視確認する場合、頭部角度は、ヨー方向の回転(約2secでの90°程度の回転運動)として捉えられる。この場合、行動分類部401は、運転行動の大きさが大きい区分に分類する。
【0065】
テーブル調整部402は、行動検出部102によって検出された行動が行動分類部401によって分類された区分に応じて、眠気推定部104によって用いられる眠気レベル推定テーブルを調整する。
【0066】
具体的には、テーブル調整部402は、眠気推定部104によって用いられる眠気レベル推定テーブルにおける各時間範囲を規定する時間(つまり、閾値)を、行動検出部102によって検出された行動が行動分類部401によって分類された区分に応じて調整する。なお、1つの眠気レベル推定テーブルにおける閾値を調整する代わりに、眠気推定部104に複数の眠気レベル推定テーブルを保持させておき、テーブル調整部402は、その複数の眠気レベル推定テーブルの中から、行動分類部401によって分類された区分に応じたテーブルを指定してもよい。
【0067】
[眠気推定装置400の動作]
図9は、眠気推定装置400におけるテーブル調整処理の説明に供するフロー図を示す。
【0068】
ステップS31において、行動分類部401は、「行動分類パラメータ」に基づいて、行動検出部102によって検出された行動を複数の区分に分類する。実施の形態3での行動分類パラメータとは、行動に対応する視線移動又は頭部挙動の大きさを、視線角度又は頭部角度の時間変化の大きさとして表現したものである。
【0069】
行動分類部401は、例えば、運転行動の大きさに基づいて、「大」、「中」、「小」の区分に分類する。
【0070】
ステップS32において、テーブル調整部402は、行動検出部102によって検出された行動が行動分類部401によって分類された区分に応じて、眠気推定部104によって用いられる眠気レベル推定テーブルを調整する。このテーブルの調整は、調整テーブルに基づいて行われる。
【0071】
図10は、調整テーブルの一例を示す。
図10において、t_1は、眠気レベル4と眠気レベル3とを仕切る閾値であり、t_2は、眠気レベル3と眠気レベル2とを仕切る閾値であり、t_3は、眠気レベル2と眠気レベル1とを区切る閾値である。また、a_1、a_2、a_3は、「小」区分と分類された場合のt_1、t_2、t_3の値にそれぞれ対応する。また、b_1、b_2、b_3は、「中」区分と分類された場合のt_1、t_2、t_3の値にそれぞれ対応する。また、c_1、c_2、c_3は、「大」区分と分類された場合のt_1、t_2、t_3の値にそれぞれ対応する。ここで、区分に応じたt_1、t_2、t_3の値は、次の関係を満たす。
0<a_1≦b_1≦c_1, 0<a_2≦b_2≦c_2, 0<a_3≦b_3≦c_3, 0<a_1<a_2<a_3, 0<b_1<b_2<b_3, 0<c_1<c_2<c_3
【0072】
なお、以上の説明では、運転行動の例として、視線移動、頭部挙動を伴う、メータの目視確認、左サイドミラーの目視確認、車線変更時の側後方への目視確認を例に挙げたが、他にも運転者が車両の前方を中心とする車両周辺の視界に存在する他の移動物(他車両、歩行者等)の存在を確認するための目視確認動作、又は、信号器の現示若しくは標示・標識の内容を目視確認する運転行動等でもよい。又は、眠気に抗うために行う、瞬間的に瞼を強く瞑る、頬を叩く、頬をつねる、頬を膨らます、口角を強く引く、首を回す等の運転者の自発的な行動であってもよい。
【0073】
以上のように本実施の形態によれば、眠気推定装置400において、行動分類部401は、行動分類パラメータに基づいて、行動検出部102において検出された行動を複数の区分の内のいずれかに分類し、テーブル調整部402は、分類された区分に応じて、眠気レベル推定テーブルの各時間範囲を規定する時間を調整する。そして、行動分類パラメータは、検出された行動の大きさである。
【0074】
こうすることにより、回帰所要時間に影響を与える行動の大きさに応じて眠気レベル推定テーブルを調整できるので、眠気推定精度を向上させることができる。
【0075】
[実施の形態4]
[眠気推定装置500の構成]
図11は、本発明の実施の形態4に係る眠気推定装置500の構成を示す。
図11において、眠気推定装置500は、運転イベント検出部501と、行動分類部502とを有する。
【0076】
運転イベント検出部501は、「行動分類パラメータ」を検出する。実施の形態4での「行動分類パラメータ」は、行動を誘発するイベントの発生頻度である。このイベントの発生頻度は、例えば、警告灯、安全運転支援システム、又はカーナビゲーションシステム等のシステムからの、注意喚起、警告、又は、ルート案内情報のリアルタイム出力の動作ログに基づいて、検出される。
【0077】
行動分類部502は、運転イベント検出部501において検出された「行動分類パラメータ」に基づいて、行動検出部102によって検出された行動を複数の区分に分類する。
【0078】
テーブル調整部402は、行動分類部502によって分類された区分に応じて、眠気推定部104によって用いられる眠気レベル推定テーブルを調整する。
【0079】
[眠気推定装置500の動作]
図12は、眠気推定装置500におけるテーブル調整処理の説明に供するフロー図を示す。
【0080】
ステップS41において、運転イベント検出部501は、「行動分類パラメータ」を検出する。実施の形態4での「行動分類パラメータ」は、行動を誘発するイベントの発生頻度である。
【0081】
ステップS42において、行動分類部502は、「行動分類パラメータ」に基づいて、行動検出部102によって検出された行動を複数の区分に分類する。
【0082】
行動分類部502は、例えば、「運転イベントの検出無し」、運転イベントの発生頻度の「高」、「低」の3つの区分に分類する。
【0083】
ステップS43において、テーブル調整部402は、行動分類部502によって分類された区分に応じて、眠気推定部104によって用いられる眠気レベル推定テーブルを調整する。このテーブルの調整は、調整テーブルに基づいて行われる。
【0084】
図13は、調整テーブルの一例を示す。
図13において、t_1は、眠気レベル4と眠気レベル3とを仕切る閾値であり、t_2は、眠気レベル3と眠気レベル2とを仕切る閾値であり、t_3は、眠気レベル2と眠気レベル1とを区切る閾値である。また、d_1、d_2、d_3は、「運転イベントの検出無し」区分と分類された場合のt_1、t_2、t_3の値にそれぞれ対応する。また、e_1、e_2、e_3は、「高」区分と分類された場合のt_1、t_2、t_3の値にそれぞれ対応する。また、f_1、f_2、f_3は、「低」区分と分類された場合のt_1、t_2、t_3の値にそれぞれ対応する。ここで、区分に応じたt_1、t_2、t_3の値は、次の関係を満たす。
0<d_1≦e_1≦f_1, 0<d_2≦e_2≦f_2, 0<d_3≦e_3≦f_3, 0<d_1<d_2<d_3, 0<e_1<e_2<e_3, 0<f_1<f_2<f_3
【0085】
なお、以上の説明では、イベントの発生頻度は、警告灯、安全運転支援システム、又はカーナビゲーションシステム等のシステムからの、注意喚起、警告、又は、ルート案内情報のリアルタイム出力の動作ログに基づいて、検出されるものとして説明した。しかしながらこれに限定されるものではなく、運転イベント検出部501をマイクによって構成し、例えば周辺車両からのクラクションをイベントとして検出してもよい。クラクションが誘発する運転行動は、低頻度なイベントとして分類される。また、運転イベント検出部501をカメラによって構成し、例えば西日差し込み状況を検出できる。西日に眩惑してサンバイザーを下ろすといった運転行動は、高頻度なイベントとして分類される。
【0086】
以上のように本実施の形態によれば、眠気推定装置500において、行動分類部502は、行動分類パラメータに基づいて、行動検出部102において検出された行動を複数の区分の内のいずれかに分類し、テーブル調整部402は、分類された区分に応じて、眠気レベル推定テーブルの各時間範囲を規定する時間を調整する。そして、行動分類パラメータは、運転イベント検出部501において検出された、行動を誘発するイベントの発生頻度である。
【0087】
こうすることにより、回帰所要時間に影響を与える行動の種別に応じて眠気レベル推定テーブルを調整できるので、眠気推定精度を向上させることができる。
【0088】
[他の実施の形態]
(1)上記各実施の形態では、行動検出部102は、顔画像を用いて行動を検出するものとして説明を行った。しかしながら、これに限定されるものではなく、CAN(Controller Area Network)から得られる操舵角又はアクセル開度を用いて行動を検出してもよいし、運転者のシートに取り付けられたシートセンサの圧力分布の時間変化の大きさを用いて行動を検出してもよい。
【0089】
(2)上記各実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0090】
また、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0091】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0092】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。