【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
1.支持体付極薄銅箔の製造
(1)支持体金属層となる金属箔として厚さ18μmの電解銅箔を用い、硫酸30g/lの水溶液で4秒間陰極電解処理を行い表面清浄化後に流水で30秒間水洗を行った。
(2)洗浄した電解銅箔を陰極とし、酸化イリジウムコーテイングを施したTi極板を陽極(以下の陽極は全て同様)として、硫酸ニッケル6水和物30g/l、モリブデン酸ナトリウム2水和物3.0g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物30g/l、pH6.0、液温度30℃の浴にて電解銅箔の光沢面に電流密度20A/dm
2で5秒間電解処理し、ニッケルとモリブデンからなる金属及び金属酸化物を含有する剥離層を形成した。
(3)剥離層の形成後、ピロリン酸銅めっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)ピロリン酸銅めっき
電解液組成:ピロリン酸銅80g/l、ピロリン酸カリウム320g/l、アンモニア水2ml/l
pH:8.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量5000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PBH)15ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
(4)薄銅層を形成後の表面に、硫酸銅5水和物150g/l、硫酸100g/l、液温度30℃に調整しためっき浴(限界電流密度15A/dm
2)を用いて1.電流密度30A/dm
2で3秒間陰極電解処理し、2.電流密度5A/dm
2で80秒間陰極電解処理してコブ状の銅粒子からなる粗化層を形成した。
(5)次に粗化層を形成後の表面に、重クロム酸ナトリウム2水和物3.5g/l、pH4.0、液温度28℃に調整した水溶液を用いて電流密度0.5 A/dm
2で2.5秒間陰極電解処理し、粗化層上にクロメート層を形成した。
(6)クロメート層を形成した表面に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1wt%の水溶液に浸漬後、直ちに80℃で乾燥して、クロメート層上にシランカップリング剤処理層を形成した。
【0044】
2.ビッカース硬度の測定
ビッカース硬度の測定は、JIS Z 2244に準拠し、以下の手順で、アカシ社製、微小硬度計(型番MVK−2H)を用いて23℃で行った。
(1)薄銅層まで形成した支持体付極薄銅箔を230℃に加熱したオーブン(窒素雰囲気)中に1時間放置した後、10×10mm角にカットした。
(2)カット試料に負荷速度3μm/秒、試験荷重5gf、保持時間15秒の条件で圧痕をつけ、圧痕の測定結果からビッカース硬度を算出した。
(3)任意の5点のビッカース硬度を測定した平均値をその条件の値とした。
測定結果をまとめて表1に示す。
【0045】
3.引張強さの測定
引張強さは5μm以下の厚さでは正確な測定が困難なため、薄銅層形成時の硫酸銅めっきによる電解処理時間を調整して、12μmの厚さまでめっきアップした支持体付極薄銅箔を230℃に加熱したオーブン(窒素雰囲気)中に1時間放置してから支持体を剥離し、JIS C 6515の付属書Aに規定された方法に準じて23℃で測定した。
測定結果をまとめて表1に示す。
【0046】
4.エッチング速度の測定
[1]エッチング液の調整
(1)蒸留水650mlに化学研磨液(三菱瓦斯化学(株)製、商品名:CPE−800)320mlと硫酸30mlを加え、攪拌する。
(2)(1)の液に銅箔50gを少しずつ加えて溶解する。
(3)(2)の液中過酸化水素濃度が1.5±0.1wt%となるように調整する。
[2]エッチング速度の測定
(1)1.(6)で得られたシランカップリング剤処理まで施した支持体付極薄銅箔の薄銅層側を接着面としてプレス圧力3.8MPa、プレス温度230℃で1時間、高耐熱性FR−4基材に積層し、銅張積層板を作製する。
(2)銅張積層板を規定サイズ(80mm×40mm)にカットしてサンプルとし、サンプル寸法をノギスで正確に測定し、面積を算出する。
(3)支持体を剥離層と共に剥離除去した各サンプルの重量を電子天秤で0.1mgの単位まで測定する。
(4)エッチング液の温度を30℃に保温し、撹拌した状態で試験サンプルをエッチング液に浸漬する。
(5)エッチング時間を変えたサンプルのエッチング後重量を電子天秤で0.1mgの単位まで測定し、エッチング前の重量との差から時間当たりのエッチング量を算出する。
測定結果をまとめて表1に示す。
【0047】
5.回路直線性の評価
(1)1.(6)で得られたシランカップリング剤処理まで施した支持体付極薄銅箔の薄銅層側を接着面としてプレス圧力3.8MPa、プレス温度230℃で1時間、高耐熱性FR-4基材に積層し、銅張積層板を作製する。
(2)支持体を剥離層と共に剥離除去した後、薄銅層表面の酸化銅等を除去するために、表面を化学研磨液(三菱瓦斯化学(株)製、商品名:CPB−60)で5秒間、23℃でソフトエッチングし、ドライフィルムレジスト(日立化成工業(株)製、商品名:フォテックH−N920、厚さ20μm)を用いて、回路幅50μm、回路間隔50μmのくし型の回路パターンを露光、現像により作製する。
(3)エッチング速度を測定したエッチング液と同様のエッチング液を用いて回路間の幅が50μmとなる条件で薄銅層をエッチングする。
(4)エッチング後の回路を真上から顕微鏡観察し、回路ボトム部の輪郭を目視評価した。
○:顕微鏡観察で、回路ボトム部の輪郭が直線に見える
×:顕微鏡観察で、回路ボトム部の輪郭が曲線状に見える部分がある
測定結果をまとめて表1に示す。
【0048】
6.結晶粒度の評価
JIS H 0501に準じて測定した。手順は下記のとおりである。
(1)1.(6)で得られたシランカップリング剤処理まで施した支持体付極薄銅箔の薄銅層側を接着面としてプレス圧力3.8MPa、プレス温度230℃で1時間、高耐熱性FR-4基材に積層し、銅張積層板を作製する。
(2)支持体を剥離層と共に剥離除去した銅張積層板をFIB(収束イオンビーム)加工装置で加工し、SIM(Scanning Ion Microscope)観察写真を撮影する。
(3)撮影した写真の断面の結晶粒度をJIS H 0501に規定される比較法の標準写真から算出する。なお、この規格の付図には75倍で観察した結晶粒度0.010mmまでしか示されていないので、最も類似した図と観察時の倍率を勘案して算出した。
測定結果をまとめて表1に示す。また、
図1に断面観察写真を示す。
図1中、1は薄銅層であり、2は樹脂基材、3はFIB加工の際に表面を保護する目的で形成されたタングステンの保護膜である。
【0049】
[実施例2]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅めっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量3000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PBF)20ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0050】
[実施例3]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅めっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量1000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PA-10)25ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅ニッケルめっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅ニッケルめっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、硫酸ニッケル6水和物5g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量1000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PA-10)35ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0052】
[実施例5]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅ニッケルめっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅ニッケルめっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、硫酸ニッケル6水和物5g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量5000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PBH)30ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0053】
[比較例1]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、ピロリン酸銅めっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)ピロリン酸銅めっき
電解液組成:ピロリン酸銅80g/l、ピロリン酸カリウム320g/l、アンモニア水2ml/l
pH:8.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。また、
図2に断面観察写真を示す。
【0054】
[比較例2]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅めっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量3000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PBF)10ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅めっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量200000のゼラチン(ニッピ社製、商品名ST1)20ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0056】
[比較例4]
剥離層形成までは実施例1と同様に行い、クエン酸銅ニッケルめっき浴と硫酸銅めっき浴を順次用いて厚さ3μmの薄銅層を形成した。薄銅層形成のためのめっき条件は、下記のとおりである。
i)クエン酸銅ニッケルめっき
電解液組成:硫酸銅5水和物30g/l、硫酸ニッケル6水和物5g/l、クエン酸3ナトリウム2水和物40g/l
pH:6.5
電流密度:2.0A/dm
2
時間:20秒
温度:40℃
ii)硫酸銅めっき
電解液組成:硫酸銅5水和物160g/l、硫酸100g/l、平均分子量5000のゼラチン(ニッピ社製、商品名PBH)40ppm、塩素5ppm、
電流密度:3.5A/dm
2
時間:220秒
温度:40℃
その後の粗化・表面処理及び特性評価も実施例1と同様に行った。全ての測定結果を表1に示す。
【0057】
【表1】