(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(好適な実施態様の詳細な説明)
定義:
ここで、「約」なる用語で前置きされた数的範囲又は量は、正確な範囲又は正確な数量を明示的に含む。
ここで精製される「組成物」は、対象のポリペプチドと一又は複数の混入物を含有する。組成物は「部分的に精製」(すなわち、プロテインAクロマトグラフィといった一又は複数の精製工程が施されている)されてもよく、又は抗体を産生する宿主細胞又は生物体から直接得てもよい(例えば、組成物は、収集された細胞培養液を含んでいてもよい)。
【0009】
ここで使用される場合、「ポリペプチド」とは、一般的に約10以上のアミノ酸を有するペプチド及びタンパク質を意味する。好ましくは、ポリペプチドは哺乳動物タンパク質であり、例えばレニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ウィルブランド因子などの凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化剤、例えばウロキナーゼ又はヒト尿素又は組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリン分解酵素;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4等の細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又は神経増殖因子、例えばNGF-β;血小板誘導増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1ないしIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したポリペプチド並びに抗体の何れかの断片及び/又は変異体、例えば上に列挙したポリペプチドの何れかに結合する抗体断片が含まれる。 好ましいポリペプチドは、例えばリツキシマブ等、ヒトCD20に結合する無傷抗体又は抗体断片;又は例えばベバシズマブ等、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)に結合する無傷抗体又は抗体断片である。
【0010】
「混入物」は所望のポリペプチド産物とは異なる物質である。混入物には、限定されるものではないが、宿主細胞物質、例えばチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP);浸出プロテインA;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集体、異性体又は誘導体;他のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性混入物;細胞培養培地成分(例えば、ガラマイシン;ゲンタマイシン(登録商標))等が含まれる。
本明細書中の対象のポリペプチドは、C
H2/C
H3領域を含むものであって、したがって、プロテインA親和性クロマトグラフィによる精製に適する。本明細書中で用いる「C
H2/C
H3領域」なる用語は、プロテインAと相互作用する免疫グロブリン分子のFc領域中のアミノ酸残基を指す。好ましい実施態様では、C
H2/C
H3領域は、完全なC
H2領域の後に完全なC
H3領域、最も好ましくは免疫グロブリンのFc領域を含む。C
H2/C
H3領域含有ポリペプチドの例には、C
H2/C
H3領域と融合したか又はコンジュゲートした対象のポリペプチドを含む融合タンパク質、免疫アドヘシンおよび抗体が含まれる。
本発明の好ましい実施態様では、本明細書において精製される抗体は組み換え抗体である。「組み換え抗体」は、抗体をコードする核酸により形質転換又は形質移入されているか、又は相同組み換えの結果として抗体を産生する宿主細胞において産生されたものである。「形質転換」および「形質移入」は交換可能に用いられ、核酸を細胞に導入する方法を指す。形質転換又は形質移入後に、核酸が、宿主細胞ゲノムに統合されてもよいし、細胞質因子として存在してもよい。「宿主細胞」には、インビトロ細胞培養物中の細胞並びに宿主動物内の細胞が含まれる。ポリペプチドの組み換え製造方法は、例えば米国特許第5534615号に記載されており、出典明記によってここに明示的に援用される。
【0011】
「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、特にモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、ここで定義するC
H2/C
H3領域を保持するか又は含むように変更される限りそれらの抗体断片を包含する。
ここでの抗体は関心ある「抗原」に対するものである。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、疾病や疾患を患っている哺乳動物への抗体の投与によりその哺乳動物に治療的恩恵がもたらされうる。しかしながら、非ポリペプチド抗原(例えば腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5091178号参照)に対する抗体もまた考慮される。抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通型分子(例えばレセプター)又はリガンド、例えば増殖因子でありうる。例示的な抗原には上述したポリペプチドが含まれる。本発明に包含される抗体に対する好ましい分子標的は、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、及びCD34のようなCDポリペプチド;HERレセプターファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター(HER1)、HER2、HER3あるいはHER4レセプター;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150、95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びav/b3インテグリンで、そのa又はb何れかのサブユニットを含むもの(例えば、抗CD11a、抗CD18あるいは抗CD11b抗体);VEGFのような増殖因子;IgE;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等を含む。他の分子に場合によってはコンジュゲートした可溶型抗原あるいはその断片も、抗体産生のための免疫原として用いることができる。レセプターのような膜貫通型分子については、これらの断片(例えば、レセプターの細胞外ドメイン)を免疫原として用いることができる。あるいは、膜貫通型分子を発現する細胞を免疫原として用いることができる。そのような細胞は、天然源(例えば癌細胞株)に由来しうるか、あるいは膜貫通型分子を発現させるために組換え技術によって形質転換された細胞でありうる。
【0012】
精製される抗体の具体例には、限定されるものではないが、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289(1992), 米国特許第5725856号)及びペルツズマブ(OMNITARG
TM)(国際公開第01/00245号)を含む抗HER2抗体;CD20抗体(以下参照);IL-8抗体(St John., Chest, 103:932(1993)、及び国際公開第95/23865号);例えばヒト化VEGF抗体huA4.6.1ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))及びラニビズマブ(Kimら, Growth Factors, 7:53-64(1992)、国際公開第96/30046号、及び国際公開第98/45331号、1998年10月15日公開)のようなヒト化及び/又は親和成熟VEGF抗体を含むVEGF又はVEGFレセプター抗体;PSCA抗体(国際公開第01/40309号);エファリズマブ(RAPTIVA(登録商標))を含むCD11a抗体(米国特許第5622700号、国際公開第98/23761号、Steppeら, Transplant Intl. 4:3-7(1991)、及びHourmantら, Transplantation 58:377-380(1994));オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))を含むIgEに結合する抗体(Prestaら, J. Immunol. 151:2623-2632(1993)、及び国際公開第95/19181号;1998年2月3日に公開された米国特許第5714338号、又は1992年2月25日に公開された米国特許第5091313号、1993年3月4日に公開された国際公開第93/04173号、又は1998年6月30日に出願された国際出願第PCT/US98/13410号、米国特許第5714338号);CD18抗体(1997年4月22日に公開された米国特許第5622700号、又は1997年7月31日に公開された国際公開第97/26912号);Apo-2レセプター抗体抗体(1998年11月19日に公開された国際公開第98/51793号);組織因子(TF)抗体(1994年11月9日に許可された欧州特許出願公開第0420937B1号);α4-α7インテグリン抗体(1998年2月19日に公開された国際公開第98/06248号);EGFR抗体(例えば、キメラ又はヒト化225抗体、セツキシマブ、ERBUTIX(登録商標)、1996年12月19日に公開された国際公開第96/40210号);CD3抗体、例えばOKT3(1985年5月7日に公開された米国特許第4515893号);CD25又はTac抗体、例えばCHI-621(SIMULECT(登録商標))及びZENAPAX(登録商標)(1997年12月2日に公開された米国特許第5693762号を参照);CD4抗体、例えばcM-7412抗体(Choyら Arthritis Rheum 39(1):52-56(1996));CD52抗体、例えばCAMPATH-1H(ILEX/Berlex)(Riechmannら Nature 332:323-337(1988));Fcレセプター抗体、例えばFcに対するM22抗体(Grazianoら J. Immunol. 155(10):4996-5002(1995)にあるようなRI);癌胎児性抗原(CEA)抗体、例えばhMN-14(Sharkeyら Cancer Res. 55(23Suppl): 5935s-5945s(1995)));huBrE-3、hu-Mc3及びCHL6を含む乳房上皮細胞に対する抗体(Cerianiら, Cancer Res. 55(23): 5852s-5856s(1995);及びRichmanら, Cancer Res. 55(23 Supp): 5916s-5920s(1995));C242のような大腸癌腫細胞に結合する抗体(Littonら, Eur J. Immunol. 26(1):1-9(1996));CD38抗体、例えばAT13/5(Ellisら, J. Immunol. 155(2):925-937(1995));Hu M195(Jurcicら, Cancer Res 55(23 Suppl):5908s-5910s(1995))及びCMA-676又はCDP771のようなCD33抗体;EpCAM抗体、例えば17-1A(PANOREX(登録商標));GpIIb/IIIa抗体、例えばアブシキシマブ又はc7E3 Fab(REOPRO(登録商標));RSV抗体、例えばMEDI-493(SYNAGIS(登録商標));CMV抗体、例えばPROTOVIR(登録商標);HIV抗体、例えばPRO542;肝炎抗体、例えばHep B抗体OSTAVIR(登録商標);CA 125抗体OvaRex;イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;αvβ3抗体(例えば、VITAXIN(登録商標);Medimmune);ヒト腎臓細胞癌腫抗体、例えばch-G250;ING-1;抗ヒト17-1An抗体(3622W94);抗ヒト結腸直腸腫瘍抗体(A33);GD3ガングリオシドを指向する抗ヒト黒色腫抗体R24;抗ヒト扁平上皮細胞癌腫(SF-25);ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10及び抗HLA DR抗体Oncolym(Lym-1);CD37抗体、例えばTRU 016(Trubion);IL-21抗体(Zymogenetics/Novo Nordisk);抗B細胞抗体(Impheron);B細胞標的MAb(Immunogen/Aventis);1D09C3(Morphosys/GPC);LympHoRad 131(HGS);Lym-1抗体、例えばLym-1Y-90(USC)、又は抗Lym-1 Oncolym(USC/Peregrine);LIF 226(Enhanced Lifesci.);BAFF抗体(例えば、国際公開第03/33658号);BAFFレセプター抗体(例えば、国際公開第02/24909号を参照);BR3抗体;Blys抗体、例えばベリムマブ(belimumab);LYMPHOSTAT-B
TM;ISF154(UCSD/Roche/Tragen);ゴミリキシマ(gomilixima) (Idec 152; Biogen Idec);IL-6レセプター抗体、例えばアトリズマブ(atlizumab)(ACTEMRA
TM; Chugai/Roche);IL-15抗体、例えばHuMax-Il-15(Genmab/Amgen);ケモカインレセプター抗体、例えばCCR2抗体(例えば、MLN1202; Millieneum);抗補体抗体、例えばC5抗体(例えば、エクリズマブ5G1.1; Alexion);ヒト免疫グロブリンの経口製剤(例えばIgPO; Protein Therapeutics);IL-12抗体、例えばABT-874(CAT/Abbott);テネリキシマブ(Teneliximab)(BMS-224818;BMS);CD40抗体、特にS2C6及びそのヒト化変異体(国際公開第00/75348号)及びTNX 100(Chiron/Tanox);TNF-α抗体、特にcA2、又はインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、CDP571、MAK-195、アダリムマブ(HUMIRA
TM)、ペグ化TNF-α抗体断片、例えばCDP-870(Celltech)、D2E7(Knoll)、抗TNF-αポリクローナル抗体(例えば、PassTNF;Verigen);CD22抗体、例えばLL2又はエピラツズマブ(LYMPHOCIDE(登録商標);Immunomedics)、特にエピラツズマブY-90、及びエピラツズマブI-131、アビオゲン(Abiogen)製CD22抗体(Abiogen, Italy)、CMC 544(Wyeth/Celltech)、コンボトックス(combotox)(UT Soutwestern)、BL22(NIH)、及びLympoScan Tc99(Immunomedics)が含まれる。
【0013】
CD20抗体の例には、「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」)と称される「C2B8」(米国特許第5736137号)、「Y2B8」と呼称されるイットリウム-[90]-ラベル2B8マウス抗体、又はIDEC pharmaceuticals社から商業的に入手可能な「イブリツモマブ・チウキセタン」(ZEVALIN(登録商標))(米国特許第5736137号;1993年6月22日にHB11388の受託番号でATCCに寄託された2B8;場合によっては
131Iで標識され、「131I-B1」を生じる、「トシツモマズ」と呼称されるマウスIgG2a「B1」、又はCorixaから商業的に入手可能な「ヨードI113トシツモマズ」抗体(BEXXAR
TM)(また、米国特許第5595721号を参照);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Pressら, Blood 69(2):584-591(1987))及び「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5を含むその変異体(国際公開第2003/002607号、Leung, S.; ATCC寄託HB−96450);マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7(国際公開第2004/056312号、Lowmanら);2F2(HuMax-CD20)、B細胞の細胞膜においてCD20分子を標的とする全長ヒト高親和性抗体(Genmab, Denmark;例えばGlennie and van de Winkel, Drug Discovery Today 8: 503-510(2003)、及びCraggら, Blood 101: 1045-1052(2003); 国際公開第2004/035607号;米国特許第2004/0167319号を参照);国際公開第2004/035607号及び米国特許出願公開第2004/0167319号(Teelingら)に説明されているヒトモノクローナル抗体;米国特許第2004/0093621号(Shitaraら)に記載されているような、Fc領域に結合した複合N-グリコシド-結合糖鎖を有する抗体;CD20に結合するモノクローナル抗体及び抗原結合断片(国際公開第2005/000901号、Tedderら)、例えばHB20-3、HB20-4、HB20-25、及びMB20-11;CD20結合分子、例えばAMEシリーズの抗体、特に国際公開第2004/103404号及び米国特許出願公開第2005/0025764号(Watkinsら, Eli Lilly/Applied Molecular Evolution, AME)に説明されているようなAME33抗体;米国特許出願公開第2005/0025764号(Watkinsら)に記載されているようなCD20結合分子;A20抗体又はその変異体、例えばキメラ又はヒト化A20抗体(それぞれ、cA20、hA20)又はIMMU-106(米国特許出願公開第2003/0219433号、Immunomedics);CD20-結合抗体、特にエピトープ枯渇Leu-16、1H4、又は2B8で、米国特許出願公開第2005/0069545A1号及び国際公開第2005/16969号(Carrら)のような、場合によってはIL-2とコンジュゲートしているもの;CD22及びCD20に結合する二重特異性抗体、例えばhLL2xhA20(国際公開第2005/14618号、Changら);International Leukocyte Typing Workshopから入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentineら: Leukocyte Typing III(McMichael編, p. 440, Oxford University Press(1987));1H4(Haismaら Blood 92:184(1998));抗CD20オーリスタチン(auristatin)Eコンジュゲート(Seattle Genetics);抗CD20-IL2(EMD/Biovation/City of Hope);抗CD20 MAb治療(EpiCyte);抗CD20抗体TRU 015(Trubion)が含まれる。
【0014】
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性がある突然変異を除いて同一な抗体を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む一般的な(ポリクローナル)抗体調製物に対して、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法によって生産されることを必要としていると解してはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって産生でき、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照)。さらなる実施態様では、「モノクローナル抗体」は、例えば、McCafferty等, Nature, 348:552-554(1990)に記載されている技術を使用して作製される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clacksonら,Nature, 352:624-628(1991)及びMarksら, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)には、それぞれファージライブラリーを使用するマウス及びヒト抗体の分離について記述されている。続く文献には、チェインシャッフリング(Marksら, Bio/Technology, 10:779-783(1992))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の生産、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse ら, Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266(1993))について記載がある。よって、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替策である。別法として、内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで生成することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが今は可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J
H)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の生成をもたらす。Jakobovitsら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551(1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258(1993); Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33(1993);及びDuchosalら, Nature 355:258(1992)を参照。
【0015】
ここでモノクローナル抗体は、その重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であり、残りの鎖が、他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同のものである「キメラ」抗体(免疫グロブリン)と、所望の生物学的活性を表す限り、このような抗体の断片を特に包含する(米国特許第4816567号;Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。
【0016】
ここで使用される場合「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合の原因である抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」あるいは「CDR」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基24-34(L1)、50-56(L2)及び89-97(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基31-35(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3);Kabatら, Sequences of Polypeptides of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991))からのアミノ酸残基及び/又は「高頻度可変ループ」(つまり、軽鎖可変ドメイン中の残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)と、重鎖可変ドメイン中の残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及び Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))からの残基を含む。「フレームワーク」あるいは「FR」残基は、ここに定義される高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0017】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。通例、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性及び能力を持つマウス、ラット、ウサギあるいは非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基によってレシピエントの高頻度可変領域からの残基が置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基と置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中あるいはドナー抗体中に見出されない残基を含みうる。これらの改変は抗体の性能をさらに洗練するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、また、場合によっては、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部分を少なくとも含むであろう。
【0018】
ヒト化抗体を作るのに使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖でも重鎖でも、抗原性を低減させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。齧歯類の配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受容される(Simsら,J. Immunol., 151:2296(1993);Chothiaら, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。
別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来した特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285(1992);Prestaら, J. Immunol, 151:2623(1993))。
抗体は抗原への高親和性及び他の好ましい生物学的性質を保持したままヒト化されることがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法では、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能で、当業者にはなじみが深い。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な三次元立体構造を例証し表示するコンピュータプログラムを利用することができる。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能中で残基の可能な役割の分析、つまり、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大のような、所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及びインポート配列から選び、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的かつ最も実質的に関与している。
【0019】
「抗体断片」は、全長抗体の一部、一般的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')
2及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。抗体断片を生産するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennanら, Science, 229:81(1985)を参照)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。例えば、抗体断片は上述において検討した抗体ファージライブラリーから分離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合してF(ab')
2断片を形成することができる(Carterら, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他の実施態様では、F(ab')
2はロイシンジッパーGCN4を使用して形成され、F(ab')
2 分子のアセンブリが促進される。他のアプローチでは、F(ab')
2断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片の生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。
【0020】
他の実施態様では、選択された抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号を参照。「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV
H及びV
Lドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、FvポリペプチドはV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照。
【0021】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖(V
H-V
L)内で軽鎖可変ドメイン(V
L)に結合した重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollingerら, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993)にさらに詳細に記載されている。
【0022】
この出願を通して使用される場合「線形抗体」なる表現は、Zapataら, Polypeptide Eng. 8(10):1057-1062(1995)において記載されるような抗体を意味する。簡潔に述べると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデム型Fdセグメント(V
H-C
H1-V
H-C
H1)を含む。線形抗体は二重特異性又は単一特異性であってよい。
【0023】
「多重特異性抗体」は、少なくとも2の異なるエピトープに対する結合特異性を有し、該エピトープが通常異なる抗原からのものである。このような分子は、通常の2つの抗原のみに結合する(すなわち、二重特異性抗体、BsAbs)が、さらなる特異性を有する抗体、例えば三重特異性抗体も、ここで使用される場合はこの表現に含まれる。BsAbsには、一本のアームが腫瘍細胞抗原に対し、他のアームが、細胞障害誘発分子、例えば抗FcγRI/抗CD15、抗p185
HER2/FcγRIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B-細胞(1D10)、抗CD3/抗p185
HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR-3、抗CD3/L-D1(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラニン細胞刺激ホルモン類似体、抗EGFレセプター/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗パン(pan)癌腫関連抗原(AMOC-31)/抗CD3に対するもの;腫瘍抗原に特異的に結合する一本のアームと、毒素、例えば抗サポリン/抗Id-1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロン-α(IFN-α)/抗ハイブリドーマイディオタイプ、抗CEA/抗ビンカアルカロイドに結合する一本のアームを有するBsAbs;抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(マイトマイシンホスフェートプロドラッグのマイトマイシンアルコールへの転換を触媒)等、転換酵素活性化プロドラッグ用のBsAbs;抗フィブリン/抗組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、抗フィブリン/抗ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)等、線維素溶解剤として使用可能なBsAbs;抗低密度リポタンパク質(LDL)/抗Fcレセプター(例えば、FcγRI、又はFcγRIII)等、細胞表面レセプターへ免疫複合体を標的化するためのBsAbs;抗CD3/抗単純ヘルペスウイルス(HSV)、抗T細胞レセプター:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗FcγR/抗HIV等の感染症の治療に使用するためのBsAbs;抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185
HER2/抗ハプテン等、インビトロ又はインビボにおいて腫瘍を検出するためのBsAbs;ワクチンアジュバントとしてのBsAbs;抗ウサギIgG/抗フェリチン、抗西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/抗サブスタンスP、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗βガラクトシダーゼ等、診断ツールとしてのBsAbsが含まれる。三重特異性抗体の例には、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37、及び抗CD3/抗CD8/抗CD37が含まれる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab')
2二重特異性抗体)として調製可能である。
【0024】
2以上の結合価を有する抗体が考慮される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuttら J. Immunol. 147: 60(1991)。
ここでの目的に対して「ネイキッド抗体」とは、細胞障害性部分又は放射標識にコンジュゲートしない抗体である。
ここで「インタクトな抗体」とは、2つの抗原結合領域とFc領域を含むものである。好ましくは、インタクトな抗体は機能的Fc領域を有する。
【0025】
「処置」とは、治療的処置、及び予防的又は防止的対策の双方を意味する。処置が必要なものには、既に疾患を患っているもの、並びに疾患が予防されるものが含まれる。
「疾患」とは、ここで記載されたようにして精製された抗体を用いた処置で利益を受ける任意の病状である。これには、慢性及び急性の疾患及び病気、及び当該問題の疾患に哺乳動物がかかりやすい病的状態を含む。
【0026】
「イオン交換クロマトグラフィ」なる表現は、化合物がその総電荷に基づいて分離される分離技術を指す。分子は、陰イオン(陰電荷を有する)と陽イオン(正電荷を有する)のいずれかに分類される。いくつかの分子(例えばポリペプチド)は、陰イオンと陽イオンの両方の基を有してよい。
イオン交換クロマトグラフィメンブレンは、総体的に陽性か又は陰性に荷電した化合物を結合する。結合部位は吸着体の孔に沿って位置する。化合物は、対流によって結合部位へ輸送される。正に荷電したメンブレン(陰イオン交換体)は、概して陰性に荷電した化合物を結合する。反対に、負に荷電するメンブレン(陽イオン交換体)は、概して陽性に荷電した化合物を結合する。
イオン交換メンブレンは強いか弱いかに更に分類することができる。強いイオン交換メンブレンは、pHレベルの広範囲にわたって荷電している(イオン化している)。弱いイオン交換メンブレンは、狭いpH範囲でイオン化している。4つの最も一般的なイオン交換の化学的性質は、以下の通りである。
【0027】
通常は、イオン交換メンブレンは、0.1〜100μmの孔径を有する。参考として、Sartobind Q (Sartorius AG)は、3〜5μmの公称孔径を有する強い陰イオン交換メンブレンであり、単一又は複数の層様式で市販されており、Mustang Q (Pall Corporation)は、0.8μmの公称孔径を有する強い陰イオン交換メンブレンであり、同様に単一又は複数の層様式で市販されている。また参考として、Sartobind S (Sartorius AG)は、3〜5μmの公称孔径を有する強い陽イオン交換メンブレンであり、単一又は複数の層様式で市販されており、Mustang S (Pall Corporation)は、0.8μmの公称孔径を有する強い陽イオン交換メンブレンであり、同様に単一又は複数の層様式で市販されている。
「公称」孔径評点は、評された孔径の粒子を60〜98%といった主要に有するメンブレンの能力を表す。
【0028】
溶液の「pH」は、水試料のイオン化と比較したときの酸性度又はアルカリ度を計量する。水のpHは中性、すなわち7である。ほとんどのpH読み取り値は0から14である。水(7未満のpH)より高い[H+]溶液は酸性であり、水(7を超えるpH)より低い[H+]溶液は塩基性又はアルカリ性である。pHはpHメータを使用して測定されてよい。バッファpHは、HCl又はNaOHのような酸又は塩基を使用して調整されてよい。
ポリペプチドといった分子の「pI」又は「等電点」は、ポリペプチドが等しい数の陽電荷と陰電荷を含むpHを指す。pIは、ポリペプチドのアミノ酸残基の総電荷から算出しても、等電点電気泳動で測定してもよい。陰イオンと陽イオンの両方の基を有するポリペプチドの両性性質は制御されうる。ポリペプチドのpHは、所望のポリペプチドが陽イオン(正電荷を有する)となるまで下げられてよい。あるいは、ポリペプチドのpHは、所望のポリペプチドが陰イオン(陰電荷を有する)となるまで上げられてよい。
【0029】
「伝導率」なる用語は、2つの電極間の電流を伝えるための溶液の能力を指す。伝導率の塩基性の単位はシーメンス(S)であり、以前は、mhoと称されていた。伝導率はmS/cmの単位で共通して表される。溶液中のイオンへの電荷により電流のコンダクタンスが促され、溶液の伝導率は、そのイオン濃度と比例している。測定値はいずれも、イオン強度と十分に相関している。イオン強度は、電解質の濃度に密接に関連があり、特定のイオンへの電荷が電解質中の他のイオンによってどれくらい効果的に保護されるかまたは安定するかを表す。イオン強度と電解質濃度との間の主な相違は、イオンのいくらかがより多く荷電している場合に、前者が高いことである。この2つの他の相違は、イオン強度は遊離イオンの濃度を反映しており、溶液に添加した塩の量を示してはいない。伝導率は、様々なモデルのオリオン導電率計といった導電率計を使用して測定されてよい。溶液の伝導率は、そのイオンの濃度を変えることによって変更しうる。例えば、緩衝剤の濃度および/または溶液の塩(例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム又は塩化カリウム)の濃度は、所望の伝導率を達成するために変更してよい。好ましくは、様々なバッファの塩濃度を改変して、所望の伝導率を達成する。
メンブレンクロマトグラフィについて、「流速」は、通常時間当たりのメンブレン体積(MV/h)として表す。
メンブレンクロマトグラフィについて、「負荷(load)密度」は、1リットルのメンブレン当たりの処理した組成物のグラムとして表されることが多い。
【0030】
「バッファー」は、 酸-塩基のコンジュゲート成分の作用によるpHの変化に抗する溶液である。例えば所望するバッファーのpHに応じて使用可能な種々のバッファーは、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., Calbiochem Corporation編(1975)に記載されている。
抗体と一又は複数の混入物を含有する組成物から抗体を「精製」するとは、組成物から少なくとも一の混入物を(完全に又は部分的に)除去することにより、組成物における抗体の純度を増加させることを意味する。「精製工程」は「均質」な組成物にする全体的な精製プロセスの一部であってもよい。ここで使用される「均質」とは、組成物の全重量に基づき少なくとも約70重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、より好ましくは少なくとも約90重量%、さらに好ましくは少なくとも約95重量%の関心ある抗体を含有する組成物を意味する。
【0031】
イオン交換メンブレンに分子を「結合」させるとは、分子とイオン交換メンブレンの荷電基又は荷電基群との間の静電気的相互作用により、イオン交換メンブレン内又は上に、分子が可逆的に固定化されるように、適切な条件下(pH及び/又は伝導率)で、分子をイオン交換メンブレンに暴露させることを意味する。
イオン交換メンブレンを「洗浄する」とは、イオン交換メンブレン上に又はこれに通して、適切なバッファーを通過させることを意味する。
イオン交換メンブレンから分子(例えば、抗体又は混入物)を「溶出させる」とは、そこから分子を除去することを意味する。
【0032】
メンブレンクロマトグラフィについて、「フロースルー」は、化合物が再び保持される間のメンブレンへの不純物の結合を指す。
「混合様式」なる表現は、2つの異なるメカニズムに基づいて化合物を分離する、例えば総電荷に基づく分離の際に覆われたポリペプチド間の親水性/疎水性相違に基づく分離の能力を有する吸着剤を指す。これは、イオン相互作用および水素結合又は疎水的相互作用を含む様々な異なる方法で標的分子と相互作用しうる多様式リガンドを用いることによって達成されることが多い。GE Healthcare Capto
TMMMCおよびCapto
TMAdhereのような吸着剤は、「混合様式」クロマトグラフィ樹脂の例である。
【0033】
発明を実施するための形態
ここでの発明は、ポリペプチドと一又は複数の混入物を含有する組成物(例えば水溶液)からポリペプチドを精製するための方法を提供する。組成物は、一般的にポリペプチドの組換え生産から得られるが、ペプチド合成(又は、他の合成手段)によるポリペプチドの生成から得てもよく、又はポリペプチドは、ポリペプチドの天然源から精製されてもよい。好ましくは、ポリペプチドは、C
H2/C
H3領域含有ポリペプチドである。好ましい実施態様では、C
H2/C
H3領域含有ポリペプチドは抗体である。
【0034】
抗体の組換え生産
抗体の組換え生産のために、それをコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために、複製可能なベクター内に挿入される。抗体をコードするDNAは容易に単離され、一般的な手順を使用(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用)して配列化される。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分は、一般的に、これらに限定されるものではないが、次のものの一又は複数:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列(例えば、特に出典明示によりここに援用される米国特許第5534615号に記載されているもの)を含む。
【0035】
ここで、ベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的に適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大量菌類、特に大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバシリ・スブチリス(B. subtilis)及びバシリ・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日公開のDD266710に記載されたバシリリチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、他の菌株、例えば大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)、及び大腸菌株W3110(ATCC27,325)も適している。これらの例は限定というよりは、例示的なものである。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母のような真核微生物は、抗体コード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は通常のパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかしながら、他の多くの属、種及び菌株、例えばシゾサッカロミセス・プロンブ(Schizosaccharomyces prombe);クルベロミセス・ホスツ(Kluveromyces hosts)、例えばケーラクチス(K. lactis)、ケーフラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、ケーブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、ケーウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、ケーワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、ケードロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906)、ケーテルモトレランス(K. thermotolerans)及びケーマルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許出願公開第402226号);ピッチャ・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許出願公開第183070号);カンジダ;トリコデルマレーシア(reesia)(欧州特許出願公開第244234号);アカパンカビ;シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(occidentalis);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)、及びコウジ菌、例えば偽巣性コウジ菌及びクロコウジカビも、ここでは一般的に入手可能で有用である。
【0036】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルスの菌株及び変異体、宿主、例えばヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウショウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコからの対応する許容的昆虫宿主細胞が同定されている。形質移入用の様々なウイルス株、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体、及びカイコNPVのBm-5株も公に入手可能であり、このようなウイルスは、本発明では、特にヨウトガ細胞の形質移入用のウイルスとして使用されてよい。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養体も、宿主として利用可能である。
しかしながら、脊椎動物細胞にも大きな興味があり、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は、常套的な手順でなされる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、限定されるものではないが、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓細胞(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファロラット肝臓細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75); ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065); 及びマウス乳房腫瘍(MMT 060562, ATTC CCL51);TRI細胞(Matherら, Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫(Hep G2)が含まれる。多くの場合、抗体の発現にはCHO細胞が好ましくは、本発明で精製される抗体を産生するのにも有利に使用される。
【0037】
宿主細胞は、抗体生成用の上述した発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘発、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適するように改変された従来からの栄養培地で培養される。
この発明の抗体の生成に使用される宿主細胞は、様々な培地で培養されてよい。商業的に入手可能な培地、例えばハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に適している。さらに、 Hamら, Meth. Enz. 58:44(1979)、Barnesら, Anal. Biochem.102:255(1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国特許第Re.30985号に記載されている任意の培地も、宿主細胞用の培養培地として使用されてよい。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばガラマイシン:ゲンタマイシン(登録商標))、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞膜周辺腔で細胞内で産生されるか、あるいは直接培地へ分泌されるかである。最初の段階として、タンパク質が、微粒子状破片、宿主細胞あるいは溶解された断片(例えば、ホモジナイズの結果)のいずれかから細胞内で産生されるなら、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地へ分泌される場合には、このような発現系からの上清は、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮されうる。
【0038】
本発明のメンブレンイオン交換クロマトグラフィー法
本発明の好ましい実施態様では、ここでの精製方法にかけられる組成物は、組換え生産された抗体、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)組換え宿主細胞培養で発現した無傷抗体である。場合によって、組成物は、メンブレンイオン交換クロマトグラフィーの前に、少なくとも一の精製工程にかけられる。組成物は関心ある抗体と一又は複数の混入物、例えばチャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP);浸出プロテインA;核酸;所望する抗体の変異体、断片、凝集体又は誘導体;他のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス性混入物;細胞培養培地成分(例えばガラマイシン:ゲンタマイシン(登録商標))等を含有する。
メンブレンイオン交換クロマトグラフィー法の前、実施中又は後に実施されてもよいさらなる精製手順の例には、疎水性相互作用クロマトグラフィー(例えば、フェニル-セファロース
TM)における分画、エタノール沈殿、熱沈殿、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿、等電点電気泳動、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース
TMにおけるクロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈降、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親水性電荷誘導クロマトグラフィー、高性能クロスフロー濾過(HPTFF)、及びアフィニティクロマトグラフィー(例えば、プロテインA、プロテインG、抗体、又は特定の基質、リガンド、又はキャプチャー試薬としての抗原を使用)が含まれる。
【0039】
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内の細胞膜周辺腔に生産されても、培地に直接分泌されてもよい。抗体が細胞内で生産される場合、第一段階として、宿主細胞又は溶解断片といった微粒子のデブリは、例えば、遠心分離法又は濾過によって取り除かれる。抗体が培地に分泌される場合、組換え宿主細胞は、例えば遠心分離法又は濾過によって細胞培養培地から単離されてもよい。
プロテインA親和性クロマトグラフィの間に大部分が精製される。プロテインAは、抗体のFc領域に特異的に結合する細菌細胞壁タンパク質である。クロマトグラフィ培地へ固定する場合、複合溶液中の抗体を選択的に結合しうるので、プロテインAにより組み換え抗体を精製するための技術が提供され、これにより不純物が流れ出る。
プロテインA親和性カラムの基本プロトコールは簡単であり、およそ中性のpHで結合し、酸性のpHで溶出する。固相に固定されるプロテインAを用いて、C
H2/C
H3領域含有のポリペプチドを精製する。固相は、プロテインAを固定するためのガラス、シリカ又はアガロース表面を含むカラムが好ましい。好ましくは、固相は、調整した孔ガラスカラム、珪酸カラム又は十分に架橋されたアガロースカラムである。GE Healthcareから市販されているMabselect SuRe
TMカラムは、抗体を精製する際に有用な十分に架橋されたアガロースプロテインAカラムの例である。時に、カラムは、カラムへの非特異的な接着を防ぐために、グリセロールといった試薬にてコートされている。Millipore Corporationから市販されているPROSEP ATMカラムは、グリセロールでコートされたプロテインA調整孔ガラスカラムの例である。プロテインAクロマトグラフィのための固相は、適切なバッファにて平衡化する。
【0040】
組換え宿主細胞から得られる混合した調製物は、平衡化バッファと同じでもよい負荷バッファ(ローディングバッファ)を用いて平衡化した固相に添加する。混入した調製物が固相を流れるので、ポリペプチドは、固定したプロテインAに吸着され、他の混入物(CHO細胞中で生産されるポリペプチドである、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質、CHOP)は固相に非特異的に結合する。
続いて実施する次の工程は、中間洗浄工程で塩、アミノ酸および/または疎水性電解質溶媒を含む溶液にて固相を洗浄することによって固相へ結合した混入物を取り除くことを必要とする。好ましい実施態様では、この洗浄の塩はリン酸カリウムであり、アミノ酸はアルギニンであり、疎水性電解質はTEMACおよび/またはTEACである。単一の溶質が洗浄中に存在するが、ある実施態様では、2又はそれ以上の溶質が使われてよい。溶質(一又は複数)は、およそ中性のpHを有するpH緩衝溶液に添加されるのが好ましい。
前段落の中間洗浄工程後に、対象のポリペプチドはカラムから回収する。これは通常、好適な溶出バッファを用いて達成される。ポリペプチドは、例えばおよそ2からおよそ5、好ましくはおよそ2.5からおよそ3.5の低いpHを有する溶出バッファを用いてカラムから溶出されてよい。この目的のための溶出バッファの例には、クエン酸塩又は酢酸塩のバッファが含まれる。
メンブレンイオン交換クロマトグラフィは本明細書中で主張するように実行する。陰イオンと陽イオンの何れの交換メンブレンを用いるべきかは初めに決定する。いくつかの抗体の等電点(pI)はおよそ6.7から9.4であるが、多くの抗体のpIは高い(しばしば8より大きく、9より大きいこともある)。通常は、陽イオン交換メンブレンはおよそ8より大きいpIを有する抗体について用いられてよく、陰イオン交換メンブレンはおよそ8より小さいpIを有する抗体について用いられてよい。
【0041】
常在性タンパク質置換様式で実行するメンブレン陽イオン交換クロマトグラフィのために、充填材(load material)のpHを抗体のpIのおよそ1〜およそ5pH単位以下に調整し、pHに応じて、充填材の伝導率をおよそ40mS/cm以下に調整し、次いで抗体をメンブレンにポンプで通す。いくつかの実施態様では、充填材のpHは、抗体のpIの、およそ1〜およそ4pH単位、およそ1〜およそ3pH単位、およそ1〜およそ2pH単位、又はおよそ1pH単位以下に調整される。他の実施態様では、pHに応じて、充填材の伝導率は、およそ20mS/cm以下、又はおよそ10mS/cm以下に調整される。充填材のpHが抗体のpIよりも小さいので、抗体(陽性荷電しているもの)は初めは流れでないであろう。むしろ、抗体は、陽イオン交換体の陰性官能基に静電的に結合しているであろう。これは、抗体(陽性)とメンブレン(陰性)が逆の電荷を有するからであろう。プロテインA親和性クロマトグラフィの間に抗体にて溶出する多くの混入物、例えばCHOPのような宿主細胞タンパク質のpIは抗体のpIと僅かにしか違わない。つまり、pIはおよそ0.05からおよそ0.2pI単位しか異ならず、「塩基性」抗体のようなこれらの混入物はメンブレンにも結合するであろう。理論によるものではないが、常在性タンパク質置換様式で実行されるメンブレン陽イオン交換クロマトグラフィでは、ごく僅かなイオンシールドを有する電荷を誘導するpHおよび伝導率の条件で、混入物は、メンブレンに優先的に結合するか、又はメンブレンからの抗体を効率よく「置換し」(RR Drager , FE Regnier, J Chromatogr. 359:147-55 (1986))、これにより抗体は結合した後にマトリックス又は流出物から溶出でき、溶出物に回収される。
【0042】
常在性タンパク質置換様式で実行されるメンブレン陰イオン交換クロマトグラフィでは、充填材のpHは抗体のpIよりおよそ1〜およそ5pH単位高く調整し、pHに応じて、充填材の伝導率はおよそ40mS/cm以下に調整し、次いで抗体をメンブレンにポンプで通す。いくつかの実施態様では、充填材のpHは、抗体のpIの、およそ1〜およそ4pH単位、およそ1〜およそ3pH単位、およそ1〜およそ2pH単位、又はおよそ1pH単位高く調整する。他の実施態様では、pHに応じて、充填材の伝導率は、およそ20mS/cm以下又はおよそ10mS/cm以下に調整する。充填材のpHが抗体のpIより大きいので、抗体(陰性に荷電したもの)は初めは流れないであろう。むしろ、抗体は、陰イオン交換体の陽性官能基に静電的に結合しているであろう。これは、抗体(陰性)とメンブレン(陽性)が逆の電荷を有するからである。プロテインA親和性クロマトグラフィの間に抗体にて溶出する多くの混入物、例えばCHOPのような宿主細胞タンパク質のpIは抗体のpIと僅かにしか違わない。つまり、pIはおよそ0.05からおよそ0.2pI単位しか異ならず、「酸性」抗体のようなこれらの混入物はメンブレンにも結合するであろう。理論によるものではないが、常在性タンパク質置換様式で実行されるメンブレン陰イオン交換クロマトグラフィでは、ごく僅かなイオンシールドを有する電荷を誘導するpHおよび伝導率の条件で、混入物は、メンブレンに優先的に結合するか、又はメンブレンからの抗体を効率よく「置換し」(RR Drager , FE Regnier, J Chromatogr. 359:147-55 (1986))、これにより抗体は結合した後にマトリックス又は流出物から溶出でき、溶出物に回収される。
【0043】
ある例では、メンブレンクロマトグラフィは、ポンプ制御装置に加えて圧力計、センサーおよびポンプを備えているAKTA
TMエクスプローラ(GE Healthcare)のようなカスタムクロマトグラフィシステム又は標準のクロマトグラフィシステムの何れかで実行する。この例において、メンブレン装置は圧力計の下流に取り付けられる。前記例において、pHおよび電導度検出器は、メンブレン装置の下流に取り付けられる。この例のために、システムは、水にて完全に洗い流し、その後メンブレンの設置前に平衡化バッファにて洗い流す。更にこの例のために、メンブレンを有するシステムは、溶液pHと伝導率出路が平衡化バッファの詳細と一致するまで平衡化バッファにて洗い流し(およそ5メンブレン容量)、安定な基準値を観察する。更にこの例のために、供給材料は、333−2667MV/時、pH5.5(仮想「塩基性」抗体の精製のため)又はpH8.0(仮想「酸性」抗体の精製のため)、およびおよそ4mS/cmの伝導率 で、ポンプによって添加する。また更にこの例のために、動作を記録する間に、動作背圧、pHおよび伝導率を変化させる。最後に、この例では、280nmの紫外線(UV)吸光度痕跡が基準値に対して0.2吸光度単位である場合に、メンブレン溶出物中のポリペプチドをすぐに回収し、280nmのUV痕跡が0.2吸光度単位以下になったら貯蔵物回収を止め、メンブレン溶出分画のプールからの試料を、ポリペプチド濃度、二量体/凝集レベル、宿主細胞タンパク質、DNA及び溶出したプロテインAについて分析する。回収工程は、一般に、メンブレン溶出物中のポリペプチドと溶出したポリペプチドを用いて算出する。メンブレンは従来より使い捨てである。
【0044】
分析物アッセイに関して、ポリペプチド含量(抗体濃度)は、ベックマンの分光光度計を用いて280nmの吸光度によって決定してよい。抗体集合は、サイズ排除クロマトグラフィによって測定してよい。宿主細胞タンパク質、例えばCHOPのレベルは、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)によって分析してよい。宿主細胞DNAは、TaqMAN PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の使用によって定量化してよい。溶出したプロテインAは、プロテインA樹脂販売会社によって推奨される免疫化学的なELISAベースの方法を使用して実行してよい。
以下のバッファを仮に設定し、Sメンブレンと共に使用するために試験する。(1) 89mM 酢酸、127mM TRISベース、21mM クエン酸、pH5.5、6.0mS/cm、(2) 28mM MES、95mM NaCl、pH6.0、11mS/cm、(3) 200mM NaOAc、pH5.5、12mS/cm、(4) 100mM NaOAc、pH5.5、6.4mS/cm、そして、(5) 96mM 酢酸、65mM TRIS、pH5.0、3.6mS/cm。
以下のバッファを仮に設定し、Qメンブレンと共に使用するために試験する。(1) 50mM TRIS、15mM NaCl、pH8.0、4.3mS/cm、(2) 25mM TRIS、pH8.0、1.3mS/cm、(3) 60mM TRIS、118mM NaCl、pH8.0、15.7mS/cm、(4) 50mM TRIS、50mM NaOAc、pH8.0、7.0mS/cm、(5) 25mM HEPES、85mM NaOAc、pH7.0、6.5mS/cm、そして、(6) 91mM 酢酸、130mM TRIS、pH8.0、5.0mS/cm。
更に、何れのバッファ系も、適切なpHにするために、酢酸、クエン酸、HEPES、塩酸、リン酸、水酸化ナトリウム、TRIS、又は他の酸性ないし塩基性バッファを添加して、上げる又は下げるなどしてpHを調整することができる。また、何れのバッファ系も、適切な伝導率にするために、純水、注射用蒸留水(WFI)、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸カリウム、又は他の低及び高塩含有バッファを用いて、上げる又は下げるなどして伝導率を調整することができる。
【0045】
常在性タンパク質置換メンブレンクロマトグラフィ工程の進行は簡単である。充填材は、様々なレベルのpHおよび伝導率でメンブレンに通される。分子が大きな静電的相互作用を有する場合、抗体又は混入物のポリペプチドの保持率が高まりうる。ポリペプチドが十分に荷電している状態、すなわち、ポリペプチドのpIとは十分に異なったpHを有し、ポリペプチドの電荷を促すバッファと、バッファイオンによる電荷のシールドを妨げるための低イオン強度とを用いた条件下で操作するとき、静電的相互作用が高まりうる。対照的に、ポリペプチドがさほど荷電していない状態、すなわち、ポリペプチドのpIと非常に近いpHを有し、ポリペプチドの電荷を減少させるバッファと、バッファイオンによる電荷のシールドを受け入れる高イオン強度とを用いた条件下で操作するとき、静電的相互作用が減少しうる。その結果、異なる物理化学的性質を有するポリペプチドは、バッファ溶液を最適化することによって、メンブレン吸着により単離されうる。所定のメンブレンに保持される分子もあれば、バッファのpHおよびイオン強度の適切な選択に応じて流れ出る分子もある。
本明細書中のメンブレンイオン交換クロマトグラフィ法によって得た抗体調製物は、必要に応じて更なる精製工程に供してよい。例示的な更なる精製工程は先に論じた。
【0046】
図12に関して、成功した精製体系の一つの例は、プロテインA親和性クロマトグラフィの最初の分画化工程を必要とする回収工程、結合/溶出様式で動作する陽イオン交換クロマトグラフィの中間精製工程、およびフロースルー様式で動作する陰イオン交換クロマトグラフィの最終的な研摩工程である。
図13に関して、改良した精製体系の一つの例は、プロテインA親和性クロマトグラフィの最初の分画化工程を必要とするが、結合/溶出様式で動作する陽イオン交換カラムクロマトグラフィを常在性タンパク質置換様式で動作する陽イオン交換メンブレンに置き換える回収工程である。これは、中間及び研磨の工程が一つの連続する操作、つまり単一工程に組み合わされるなどの多くの理由のために有用であろう。
【0047】
場合によっては、抗体は、所望の場合は一又は複数の異種分子にコンジュゲートされる。異種分子は、例えば抗体の血清半減期を増加させるもの(例えば、ポリエチレングリコール、PEG)であり得、又は標識(例えば、酵素、蛍光標識及び/又は放射性核種)、又は細胞障害性分子(例えば、毒素、化学治療剤、又は放射性同位元素)でありうる。
場合によっては異種分子とコンジュゲートした抗体を含有する治療用製剤は、所望の純度を有する抗体を、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤(Remington's pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A. 編(1980))と混合することにより調製されてよい。「薬学的に許容可能な」担体、賦形剤、又は安定剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)
TM、プルロニクス(PLURONICS)
TM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0048】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されてもよい。これらの技術はRemington's Pharmaceutical Science 第16版, Osol, A. 編(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0049】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。除放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT
TM(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドからなる注射可能なミクロスフィア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0050】
ここで開示されたようにして精製される抗体、又は抗体と薬学的に許容可能な担体を含有する組成物は、種々の診断、治療、及びこのような抗体及び組成物に公知の他の用途に使用される。例えば、治療的有効量の抗体を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における疾患を処置するために、抗体を使用してよい。
【0051】
次の実施例は例証のために提供されるものであって、限定するためのものではない。本明細書における全ての引用の開示は、出典明示により明示的にここに援用される。
【実施例】
【0052】
はじめに
細胞培養条件が向上するにつれて、モノクローナル抗体(mAb)のバイオリアクタ力価は増加する。大きなバッチのmAbは、従来のカラムクロマトグラフィを使用して精製するのが困難かもしれない。結合能が高い新規の樹脂は、平衡して複数のカラムをサイクルするか又は実施する必要を避けられない。大きなバッチを効率良く扱うことができないことは、商品のコストおよび設備収容量に負の影響を与えうる。更に、バイオプロセス産業は、商品のコストを抑えるために、より便利で費用効果の良いツールを必要とする。同時に確認および人件費を低減しうる、小さい、処理可能な精製技術が、望ましい。産業が発達するにつれて、イオン交換メンブレンはmAb処理のためにより有利になってきている。
カラムクロマトグラフィ法が強力で確実であるにもかかわらず、分離性能が孔拡散に依存しているので、一般に低い質量処理量を有する。生成物および不純物はゆっくりと孔内に拡散して、結合部位にアクセスしなければならない。それに反して、メンブレンは孔拡散が制限されない。分離性能は流速とは無関係であるので、メンブレンは樹脂より高い質量処理量が可能である。また、メンブレンはカラム体、カラムパッキング/脱パッキング、又は資格を必要としないので、樹脂よりも便利である。工業規模のメンブレンは、1回使用の後に捨てることができるカートリッジ又は自己被包型の様式に有用であり、さらに再利用及び貯蔵に関する検証費用がかからない。また、メンブレンは、樹脂が充填したカラムよりも小さく、非常に軽く、製造施設の中での取扱いが容易である。
【0053】
メンブレンにはいくつかの欠点がある。樹脂と比較して、メンブレンは、まだ工業規模で広範囲にわたって利用されていない相対的に新規な技術である。市販のメンブレンの種類と十分に特徴付けされたリガンドの選択には制限がある。また、メンブレンはイオン交換樹脂よりかなり高価である。さらに、メンブレンは、工業規模の結合及び溶出クロマトグラフィを実施するための好適な媒体ではない。メンブレンは相対的に低い結合能を有するので、サイクルによって経済的に補うことが難しい。メンブレンの生成が新たに発達するにつれて、これらの問題の多くが解決されそうである。
欠点があるにもかかわらず、メンブレンは終了段階の精製に適している。イオン交換メンブレンは、プロテインA mAbキャプチャに続く工程として成功したことが明らかとなった。不純物レベルが低いのでこの状況でメンブレンは理想的であり、フロースルー様式で用いる場合、結合能はもはや限定するものではない。フロースルークロマトグラフィは、適切に荷電した不純物が吸着されながら標的タンパク質が結合することなく吸着媒体を流れるクロマトグラフィの動作と定義される。メンブレンクロマトグラフィに応用した場合、メンブレンとmAbとの間に生じる反発力を利用し、大多数の結合部位が逆に荷電したCHOP種の吸着に利用可能なままとなっている技術である。
【0054】
この研究は、常在性タンパク質置換様式でイオン交換メンブレンを用いたモノクローナル抗体の精製に取り組んでいる。mAbは生成物吸着が生じるpHおよび伝導率の条件でメンブレンにて処理されるので、手法はフロースルーと異なる。これは、低イオン強度、そして陰イオン交換の間にはmAbのpIより大きいpH、そして陽イオン交換の間にはmAb pIより低いpHで操作することによって達成される。これらの条件で、反発力は、生成物吸着が生じるメンブレンとmAbとの間で生じる。フィードストリーム負荷(loading)は破過容量を超えて続け、メンブレン溶出物は精製された形で回収する。常在性タンパク質置換様式の実験的データにより高い精製と収率が示され、メンブレンとmAbとの間に強い静電的相互作用が明らかに生じたのではなかった。
4つの組換えDNA由来のmAbは、等電点(pI6.7−9.3、アミノ酸配列に基づいて算出した)の範囲に基づいて、分析のために選択した。4つすべてのmAbは、ジェネンテック社のCHO細胞培養物において製造し、一又は複数のカラムクロマトグラフィ工程(プロテインA又はプロテインA及びイオン交換)にて部分的に精製した。フィードストリームは、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOP)の残留するレベルに基づいて選択した。
この研究は、イオン交換メンブレンMustang
TMS、Mustang
TMQおよびSartobind
TMSの、mAb吸着も生じるpHおよび伝導率条件でCHOPを除去する能力を調べるものである。CHOP精製および収率は、pH、伝導率、負荷(load)密度、流速およびメンブレン種類に応じて調査した。また、メンブレンスケールアップおよび再生成を試験し、連続操作の実現可能性を調べた。
【0055】
材料および方法
フィードストリーム
フィードストリームは、商業目的又は研究目的のために最初に製造される、産業的、試験的又は小規模の細胞培養バッチ(Genentech Inc., South San Francisco, California)から採取した。各フィードストリームは部分的に精製し、目的の細胞を分離し、分離した液体を少なくとも一のカラムクロマトグラフィ工程(プロテインA又はプロテインA及びイオン交換)により精製した。各フィードストリームは、標的治療的モノクローナル抗体(IgG1又はIgG4)と定量可能なレベルの宿主細胞不純物を含んでいた。各フィードストリームの組成物は、個々のmAbプロセス及び精製のレベルに応じて変化した。通常、フィードストリームのpHは5.5−8.0、伝導率は3.2−9.0mS/cm、そして、生成物濃度は3.5−6.9mg/mLであった。表1は、この研究において使用した各mAbについてのフィードストリーム特徴を示す。
【0056】
mAb定量化
mAbの濃度は、280及び320nmのUV分光光度スキャンを用いて決定した。CHOPレベルは非常に低いので、UV吸光度にかなり影響する。mAbを含む試料は、適切な非妨害希釈物にて0.1〜1.0AUの範囲に希釈した。試料調整物および仕様スキャン読み取り値は複製して実行し、平均値を記録した。試験したmAbの吸収係数は1.45−1.70(mg/mL)−1cm−1であった。280及び320nmの吸光度、希釈因子、パス長(1cm)及び吸収係数を用いて、ランベルト・ベールの法則として知られる方程式を用いてmAb濃度を算出した。
【0057】
CHO宿主細胞タンパク質(CHOP)定量化
酵素結合免疫測定法(ELISA)を用いて、CHOPのレベルを定量化した。親和性精製したヤギ抗CHOP抗体は、マイクロタイタープレートウェルに固定した。CHOP、標準物質およびコントロールを含有している試料の希釈物は、ウェルで培養し、その後西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗CHOP抗体と共にインキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素活性はo-フェニレンジアミンジヒドロクロライドにて検出した。CHOPは、マイクロタイタープレート読み取り機で492nmの吸光度を読むことによって定量化した。コンピュータ曲線フィッティングプログラムを用いて、標準曲線を生成し、自動的に試料濃度を算出した。ELISAのアッセイ範囲は典型的に5ng/ml〜320ng/mlであった。各試料について、2〜4の希釈物を検定し、値を平均した。CHOP値はmAb濃度で割り、結果をppmの単位(ng CHOP/mg mAb)で記録した。
定量化の限界(LOQ)以下のCHOPレベルを示す濾過試料を続いて濃縮し、定量化可能な結果を得た。試料は、Amicon(登録商標)Ultra−15遠心10kD MWCOフィルター(Millipore Corporation, Billerica, Massachusetts)、そして、5〜25℃、3200〜4000rpmで10〜20分間のエッペンドルフ5810R遠心機(Eppendorf AG, Hamburg, Germany)を用いて10倍に濃縮した。
【0058】
メンブレン
試験したメンブレンは、Mustang
TMSおよびQ (Pall Corporation, East Hills, New York)およびSartobind
TMS (Sartorius-Stedim Biotech S.A., Aubagne, France)であった。Mustang
TMSおよびSartobindTMSは強力な陽イオン交換メンブレンであり、Mustang
TMQは強力な陰イオン交換メンブレンである。Mustang
TMSおよびSartobind
TMSはスルホン酸の様式によって変更し、Mustang
TMQは第四級アミンの様式によって変更する。Mustang
TMSおよびQは0.8m孔を有するポリエーテルサルホン(PES)でできており、Sartobind
TMSは3〜5m孔を有する再生セルロースでできている。結合能を増やすために、各製造業者は、複数層のメンブレンを各装置に組み合わせている。層の合計数と厚さは、製造業者と造られた装置の大きさに応じて異なる。メンブレン体積(MV)は、メンブレンの物理的な体積(固体および空所)であって、mLを単位にして測定される。複数のスケールを表す様々なメンブレン装置をこの研究に用いた。表2は試験した各メンブレンの付属詳細を挙げる。
【0059】
濾過システム
小規模の試験は、統合した定量ポンプ、圧力センサおよびインラインpH、伝導率およびUVセンサを含むプログラム可能なプロセス精製システムであるAKTA Explorer
TM100(GE Healthcare, Fairfield, Connecticut)にて実施した。エクスプローラシステムは、コンピュータ実行UNICORN
TMv5.10ソフトウェア(GE Healthcare, Fairfield, Connecticut)によりプログラムし、制御した。また、小規模試験は、Masterflex(登録商標)L/S(登録商標)デジタルエコノミードライブペリスタル型ポンプ(Cole Parmer, Vernon Hills, Illinois)、インラインDTX
TMプラスTNF−R圧力センサ(Becton Dickinson, Franklin Lakes, New Jersey)およびAND EK-1200iバランス(A&D Company, Ltd., Tokyo, Japan)からなる手動システムを用いて実施した。バランスを用いて、質量蓄積を測定することによってポンプの流速を物理的にモニターした。質量は体積に変換して1.0g/mLのフィードストリーム密度とみなした。インライントランスデューサからの圧力とバランスからの質量は、コンピュータ実行Trendlink
TMバージョン3.1.1(Canary Labs Inc., Martinsburg, Pennsylvania)及びRsComバージョン2.40(A&D Company, Ltd., Tokyo, Japan)ソフトウェアをそれぞれ圧力及び質量採取のために連結しているNetDAQ
TM2640A/41Aネットワークデータ獲得システム(Fluke, Everett, Washington)を使用して継続的にモニターした。スケールアップ研究は、AKTA Pilot
TM(GE Healthcare, Fairfield, Connecticut)実行UNICORN
TMv5.10ソフトウェアを使用して実施した。Pilotは大きなポンプを具備しているが、エクスプローラと機能的に同等であった。
【0060】
濾過試料採取技術
濾過液は3つの異なる方法で採集した。任意抽出試料および分画は最も共通していた。任意抽出試料は、特定の流量で行われる濾過液の瞬間的な一定量である。分画は、より大きな濾過液試料であって、流量範囲によって定められる。また、濾過液は、単一の大きなプールとして回収した。プール分析は有効であるが、連続的な試料を組み合わせて傾向を示すので、任意抽出試料および分画はmAbおよびCHOPレベルをモニターするために概して有用である。
【0061】
実験
原料は、低温貯蔵(2〜8℃又は−70℃以下)から取り出し、室温に戻した。その後場合によって、適切な滴定試薬(すなわち1.5M トリス塩基又は1M クエン酸塩)又は希釈液(精製水又は5M 塩化ナトリウム)を用いて表1に示す条件から調整したpHおよび/または伝導率とした。次いで、0.2m Millipak-20 (Millipore Corporation, Billerica, Massachusetts)、AcroPak
TM 20 (Pall Corporation, East Hills, New York)又は1000mL 真空フィルター(Thermo Fisher Scientific, Rochester, New York)を用いてオフラインで濾過し、低温貯蔵又は調整している間に形成された沈殿物を取り除いた。
濾過システムは、精製水又は適切なバッファを使用して負荷(load)および濾過ラインを水で流すことによって調整した。メンブレンは、給水ポンプおよび圧力センサの下流にインラインで配置し、次いで、50〜500MVの精製水又は平衡化バッファにて洗い流した。洗い流した後、供給口をメンブレンに向かわせ、333〜2667MV/時間の一定流速で様々な量を流した。負荷(load)段階の間、濾過液は必要に応じて試料採取した。次いで、メンブレンはバッファにて追跡し、残留する生成物を採取した。メンブレン上の不純物の保持を維持するために、追跡(a.k.aバッファ)バッファは、概してpHを同じにし、供給口への伝導率と等しいか又は低くした。
場合によって、メンブレン吸着体を溶出した。メンブレン溶出は、Explorer又はPilotを用いてのみ行い、インラインUVセンサによって貯蔵を容易にした。メンブレンは、高塩バッファ(20mM 酢酸ナトリウム及び350mM 塩化ナトリウム, pH5.5又は25mM トリス及び250mM 塩化ナトリウム, pH8.0)を用いて、333〜2667MV/時間の一定流量で溶出し、0.5−0.5ODからプールした。
【0062】
連続操作
AKTA Explorerにて連続操作実験を行った。これらの実験において、Qカラムフロースルーは、インラインでpH調整し、Mustang
TMSメンブレンへ直ちにロードした。Qカラムは、Qセファロースファストフロー樹脂(直径×長さ:1.1cm×20cm)を含む。カラム放出口は、T型接続の入口に付着させ、「Bポンプ」をT型接続の逆の入口に向けることによってインラインでpH調整を行った。T型接続により十分に混合し、pH調整した溶液をMustang
TMSメンブレンの入口に向かわせた。カラムの流速は、100cm/時間(1.58mL/分)に維持した。メンブレンの流速は、インラインpH調整による液体添加により、わずかに高かった(およそ2.2%)。
【0063】
結果
小規模陽イオン交換(CEX)メンブレン性能
pH5.5および6.0mS/cmのMAb1陰イオン交換プールは、667MV/時間の一定流速の小規模0.18mLのMustang
TMSメンブレンにて処理した。mAb1のpHはpIの3.4pH単位以下であるので、抗体は正に荷電した。フィードおよび濾過液任意抽出試料はmAbおよび宿主細胞不純物について分析した。
図1は、Mustang
TMSがまず最初に38から4.3ppmへCHOPを稀釈したことを示す。負荷(load)密度が16000g/Lへ増加するにつれ、CHOPは5.7ppmまで僅かに上昇した。また結果から、5000g/Lの後におよそ100%に達する高収率が達成されたことが示された。
mAbおよび電荷依存性を同定するために、mAb2陰イオン交換プールは、pH5.5および8.0のMustang
TMSにて処理した。mAb2のフィードストリームを等しく分け、第一のものはpH8.0および5.0mS/cmに維持し、第二のものは1Mのクエン酸を使用してpH5.5および6.4mS/cmに調整した。両方のフィードストリームは、667MV/時間の一定流速の小規模0.18mLのMustang
TMSメンブレンにより処理した。pH5.5および8.0のmAb2はpI以下であったので、正に荷電した。フィードおよび濾過液任意抽出試料を分析し、CHOPの結果を
図2に示す。pH5.5では、Mustang
TMSはまず最初に51から3.0ppmへCHOPを低減し、mAb1と同様に、負荷密度によってレベルが増加した。メンブレン性能はpH8.0で激減したことから、明らかにCHOP吸着はpH依存的であることが示された。
図3は、収率が両pH条件で同じであり、96%以上は、およそ5000g/Lの負荷密度の後に達成できることを示す。
粗フィードストリームにおける吸着性能を評価するために、pH5.5および3.2mS/cmのmAb1プロテインAプールは、1333MV/時間の一定流速の小規模0.18mLのMustangTMSメンブレンにて処理した。mAb1負荷は算出したpIの3.4単位以下であったので、抗体は正に荷電した。負荷、濾過液分画および溶出試料を分析し、CHOPの結果を
図4に示す。データは、MustangTMSがまず最初に438から109ppmへCHOPを低減したことを示す。負荷密度が55,300g/Lに近づくにつれ、CHOPは318ppmへ増加した。メンブレンは、高い塩を含有する溶液を使用して溶出した。塩イオンを用いて電荷を保護し、それにより静電的相互作用を崩壊させ、タンパク質をメンブレン表面から脱着させ、移動相に遊動する。溶出プールの分析により不純物の濃縮が示され、このことからCHOPが静電力によりメンブレンに結合することが確認される。
【0064】
小規模の陰イオン交換(AEX)メンブレン性能
比較のために、MAb3は、7.7の等電点より上の陰イオン交換メンブレンを用いて試験するために選択した。タンパク質は高pHで脱アミドおよび凝集する傾向があるので、mAb1および2について同様な試験を行わなかった。pH5.5および9mS/cmの陽イオン交換プールは、1.5Mのトリス塩基を使用して8.0にpH調整した。次いで、フィードストックを3つの異なるプールに分け、伝導率は純水を使用して調整した。第一プールは10mS/cm、第二および第三のプールはそれぞれ7mS/cmおよび4mS/cmに調整した。3つすべてのプールはpH8.0に維持した。次いで、各フィードストリームは、600MV/時間の一定流速の小規模0.35mLのMustang
TMQにて処理した。pH8.0のmAb3はpIより0.3pH単位上であったので、抗体は負に荷電した。負荷および濾過液プールを分析し、CHOPの結果を
図5に示す。データから、4mS/cmでは、Mustang
TMQが180から0.6ppmへCHOPを低減し、不純物クリアランスが、おそらくイオンシールドによって高い伝導率で減少したことが示される。
図5は、pHがpIよりたった0.3単位のみ上であったにもかかわらず、mAb3の電荷が強く、10mg/mLより多くの結合が可能であったことを示す。CHOPクリアランスと同様に、mAb3結合も高い伝導率で減少した。
図6は、mAb3の収率が急増し、およそ1000g/Lの後に96%を上回ったことを示す。
【0065】
AEXメンブレンとCEXメンブレンを組み合わせた方法
MAb4を用いて、陰イオンおよび陽イオン両方の交換メンブレンを使用して連続的な常在性タンパク質置換工程を使用することの実現可能性を試験した。6.7のpIが非常に低く、等電点より上および下両方のpH条件での処理が可能であったので、MAb4は望ましかった。pH5.0および3.5mS/cmのプロテインAプールは、1.5Mのトリス塩基を使用してpH8.0および4mS/cmに調整した。次いで、フィードストックは、1333MV/時間の一定流速の小規模0.18mLのMustang
TMQメンブレンにより処理した。pH8.0のmAb4はpIの1.3単位上であったため、抗体は負に荷電した。Mustang
TMQ濾過液分画の試料を採取し、次いで組み替えて、1Mのクエン酸を使用してpH5.5および6.1mS/cmに調整した。次いで、組み替えたプールは、1333MV/時間の一定流速の小規模0.18mLのMustang
TMSメンブレンにより処理した。pH5.5のmAb4はpIの1.2pH単位より小さかったので、抗体は正に荷電した。負荷および濾過液分画を分析し、両メンブレンのCHOP結果を
図7に示す。データは、MustangTMQがまず最初に1215から555ppmへCHOPを低減し、負荷密度が1700g/Lに近づくにつれ、レベルが徐々に726ppmまで増加したことを示す。また、結果から、組み替えたMustang
TMQ濾過液分画を5.5にpH調整した後、CHOPは375ppmに減少したことが示される。CHOPの減少の正確な原因はわからない。Mustang
TMSを用いたその後の試験の結果は、負荷密度が1500g/Lに近づくにつれ、CHOPレベルが143ppmまでさらに低減し、再びおよそ168ppmまで徐々に増加したことを示す。まとめると、結果から、宿主細胞不純物をさらに低減するためにメンブレン工程を組み合わせることが実行可能であることが示される。
【0066】
カラムとメンブレンを組み合わせた連続法
MAb1を用いて、常在性タンパク質置換様式で動作するイオン交換メンブレンと直列にしたおよび連続的なカラムクロマトグラフィの使用の実現可能性を試験した。2回実行した。Run1の間、カラムとメンブレンを別々に分析し(バッチ様式)、Run2の間、カラムとメンブレンを順次同時に行った(連続様式)。Run1のバッチ操作は、以下の通りである。調整したmAb1プロテインAプール(pH8.0および4.7mS/cm)は、Qセファロースファストフローカラムに流した。Q Seph FF負荷のpHはpIより0.9pH単位低かったので抗体が正に荷電したことから、樹脂とmAbとの間に反発力が生じた。作動モードは、従来のフロースルーカラムクロマトグラフィとして特徴を表されてよい。フロースルー任意抽出試料を実行全体にわたって採集した。カラムは、およそ136g/Lの樹脂を負荷した。Q Seph FFプールを採取し、1Mのクエン酸を使用してpHを5.5および6mS/cmに調整した。次いで、およそ15,000g/Lのメンブレンの負荷密度に対して、538MV/時間の小規模0.18mLのMustang
TMSメンブレンにて処理した。メンブレン負荷のpHは算出したpIよりおよそ3.4単位低かったので、抗体は正に荷電した。メンブレン溶出物任意抽出試料は、実行全体を通して採取した。用いたMustangTMSメンブレンを破棄し、Q Seph FFカラムは0.5MのNaOHを使用して再生し、そして0.1NのNaOHに貯蔵した。Run2は、Run1と同様の方法で行った。しかしながら、Q Seph FFフロースルーはインラインでpH調整し、次いでMustang
TMSメンブレン上にすぐに流した。負荷およびカラム/メンブレン任意抽出試料を分析し、CHOP結果は、バッチ(Run1)および連続的(Run2)実験について
図8にまとめる。データから、プロテインAプールのCHOPがQセファロースカラムにより1450ppmからおよそ16.8ppmに低減したことが示される。16.8ppmのQプール値は実行全体で得た任意抽出試料結果に基づいて算出した。バッチおよび連続的なMustang
TMS結果(12.7および11.1ppm)は、良好な一致を示す。まとめると、このデータから、単一の連続工程にカラムとメンブレンの工程を連結することが可能であり、従来のバッチ操作に相当する結果が得られることが示される。
【0067】
メンブレン製造業者間の比較
Sartobind
TMSメンブレンはメンブレン供給元間の性能を比較するためにmAb1を用いて試験した。pH5.5および6mS/cmのmAb1陰イオン交換プールは、857MV/時間の一定流速の小規模0.14mLのSartobind
TMSメンブレンにて処理した。mAb1負荷pHはpIより3.4pH単位低かったので、抗体は正に荷電した。フィードおよび濾過液分画をCHOPについて分析し、結果を
図9に示す。データから、Sartobind
TMSはまず最初に29から3.3ppmへCHOPを低減し、およそ11,500g/Lの後に、レベルは5.6ppmまで僅かに増加したことが示される。このデータは、Sartobind
TMSおよびMustang
TMSのメンブレンが同様なCHOP吸着を有することを示す。
【0068】
流速効果
Mustang
TMS CHOPクリアランスは、333〜2667MV/時間で調べ、流速の影響を試験した。pH5.5および6mS/cmのMAb1陰イオン交換プールは、同じ装置ロットからの4つの異なる小規模0.18mLのMustang
TMSメンブレンにて処理した。mAb1負荷はpIより3.4pH単位低かったので、抗体は正に荷電した。フィードおよび濾過液任意抽出試料はCHOPについて分析し、結果を
図10に示す。データは、Mustang
TMSがまず最初に45からおよそ6.9ppmまでCHOPを低減したことを示す。16,000g/Lの後、CHOPは、8.7ppmの平均へ増加した。孔拡散が制限されていないメンブレン装置について予測されたように、この結果はCHOP吸着が流速依存性であることを示す。
【0069】
スケールアップ
試験規模Mustang
TMSメンブレンを用いて、スケールアップによるCHOPクリアランスおよび収率を検査した。最小の完全な代表装置が有用であったので、10mLの16層装置を選択した。メンブレン層の数、プリーツおよび装置の組み立ては大きな産業規模カプセルと同じであったので、完全な代表であると考えた。10mLの装置は、既に試験した小規模装置のスケールの55倍の増加を表す。pH5.5および6mS/cmのMAb1陰イオン交換プールは、AKTA Pilot
TMを使用して試験規模の吸着体により処理した。mAb1負荷はpIより3.4pH単位低かったので、抗体は正に荷電した。再現性の感覚を得るために、mAb1負荷を同じ10mL装置にて2回試験した。サイクルの間に、メンブレンは、高塩バッファ(2mM 酢酸ナトリウム、350mM 塩化ナトリウム、pH5.5)にて溶出させ、0.5MのNaOHを使用して再生した。すべての相間の流速は546MV/時間とした。フィードおよび濾過任意抽出試料および溶出プールはCHOPについて分析し、結果を
図11に示す。このデータは、サイクル間で良好な再現性を示したことから、Mustang
TMSが少なくとも一回再生しうることを示す。溶出試料の分析により不純物の濃縮が示されたことから、CHOPが静電力によってメンブレンに結合することが二度確認された。mAb1の前述の小規模結果との比較から、CHOPおよび収率の良好な一致が示された。このデータは、小規模の装置が大規模の性能を予測することが可能なことを示す。
【0070】
結論
イオン交換メンブレンは、フロースルー様式のクロマトグラフィと同じ様式であるが、mAb結合を引き起こすpHおよび伝導率の条件でCHOPを除去するのに有効であることが示された。この技術は、常在性タンパク質置換イオン交換メンブレンクロマトグラフィと呼ばれている。この技術を用いて、収率、精製および工程時間を維持するために従来の樹脂充填カラムサイズによっては生じ得た実質的な収率損失を伴わないで、CHOPを浄化することができることが、結果から示された。このデータは、プロテインAおよびイオン交換カラムクロマトグラフィを用いて既に部分的に精製が行われたmAbを、Mustang
TMS、Sartobind
TMSおよびMustang
TMQを用いて96%以上の収率で10ppmより低いCHOPレベルにまでさらに精製することができることを示した。低CHOPレベルは高い負荷密度で維持され、場合によって、性能は16,000g/Lに維持された。結果は、不純物クリアランスが負荷pHに依存しており、通常は、より高い伝導率により減少することを示した。さらに、実現可能性試験により、複数のメンブレンを組み合わせて用いると不純物レベルがさらに低減できること、そして、カラムおよびメンブレン工程を単一の連続する精製工程に統合することができることが示された。Mustang
TMSとSartobind
TMSとの間の比較から、同様な不純物クリアランスが示された。メンブレンには顕著な差異があるが、結果は類似していたことから、不純物除去のメカニズムはメンブレン依存性でない。333〜2667MV/時間の流速での試験結果は、メンブレン性能は流速とは無関係であるとする理論および文献と一致していた。。最後に、55倍の規模を表す中間装置による実験は、小規模メンブレンと同様な性能を示した。このデータから、小規模の装置から産業規模の性能を予測することが可能であることが確認された。さらに、二重反復試験間の試験規模装置の塩化ナトリウムおよびその後の水酸化ナトリウムクリーニングは、メンブレン吸着体が再生し、性能を損なうことなく2回以上使うことができることを示した。
さらに良好な精製技術が必要とされていることは明らかである。バイオリアクタータイターの増加はカラムベースの精製基盤に過度な負担をかけ、単に樹脂結合能を増すだけではその必要に応じ得ない。さらに、商品のコストを抑えるために、この産業界はより便利で、費用効果の高い方法を必要としている。質量処理量を増やす一方で、メンブレン吸着体は小さくかつ使い捨てであり、検証や人件費を抑える。常在性タンパク質置換モードで作動されるイオン交換メンブレンの実験結果が高い不純物クリアランスおよび収率を示したことから、この技術は生物学的処理の魅力的な選択肢となる。
【0071】
表1:フィードストリーム特徴。
フィードストック試料は、産業規模、試験的規模および小規模の工程から採取した。
aプールのpHおよび伝導率は、十分な生成物安定性を確認するために予め調整した。
b等電点(pI)は、各mAbのアミノ酸配列に基づいて算出した。
【0072】
表2:メンブレン特性