特許第5666460号(P5666460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5666460ネジ係合式クランプ装置及びクランピングシステム並びに流体圧アクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666460
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ネジ係合式クランプ装置及びクランピングシステム並びに流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   B23Q3/06 302G
   B23Q3/06 304F
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-532989(P2011-532989)
(86)(22)【出願日】2010年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2010066232
(87)【国際公開番号】WO2011037091
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-222713(P2009-222713)
(32)【優先日】2009年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 慶多朗
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/100958(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3098124(JP,U)
【文献】 特開平07−040165(JP,A)
【文献】 実開平02−014803(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メネジ孔(12)を設けた被固定物(10)を係合用ボルト(50)のネジ係合力で引っ張って固定する装置であって、
ハウジング(5)に設けたシリンダ孔(20)と、上記ハウジング(5)の先端側の中央部に設けたガイド筒(15)との間に、ピストン(21)を軸心方向へ往復移動可能かつ回転可能に挿入し、
上記ピストン(21)と上記ハウジング(5)との間にボールネジ機構(28)を設け、
上記ガイド筒(15)の筒孔(29)及び上記ピストン(21)の筒孔(24)に、出力ロッド(30)を回転可能かつ軸心方向へ移動可能に挿入し、その出力ロッド(30)の入力部(41)を上記ピストン(21)の出力部(42)に回転伝動可能に連結し、上記の出力ロッド(30)の先端部に設けた前記の係合用ボルト(50)を前記の被固定物(10)の前記メネジ孔(12)に係合可能に構成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記出力ロッド(30)をリリース位置へ後退させるために圧力流体が供給される第1作動室(62)を前記ピストン(21)の先端側に形成し、前記出力ロッド(30)をロック位置へ進出させるために圧力流体が供給される第2作動室(64)を前記ピストン(21)の基端側に形成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項3】
請求項2のクランプ装置において、
前記第1作動室(62)における前記ピストン(21)の受圧断面積を前記第2作動室(64)における前記ピストン(21)の受圧断面積よりも大きな値に設定した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項4】
請求項1のクランプ装置において、
前記ボールネジ機構(28)は、前記ハウジング(5)に複数ピッチ形成したメス螺旋溝(56)と、前記ピストン(21)の基端側に設けた小径部(21a)の外周面にほぼ1ピッチ形成した少なくとも一つのオス螺旋溝(57)と、上記メス螺旋溝(56)と上記オス螺旋溝(57)との間に転動自在に挿入した多数のボール(58)とを備え、
上記メス螺旋溝(56)の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁(60)を上記ボール(58)が乗り越えるのを許容するように、上記オス螺旋溝(57)の始端部と終端部とを連通させる循環路(59)を上記ピストン(21)の小径部(21a)の外周面に凹状に形成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項5】
請求項1のクランプ装置において、
前記ボールネジ機構(28)は、前記ピストン(21)の基端側に設けた小径部(21a)の外周面に複数ピッチ形成したオス螺旋溝(57)と、前記ハウジング(5)側にほぼ1ピッチ形成した少なくとも一つのメス螺旋溝(56)と、上記オス螺旋溝(57)と上記メス螺旋溝(56)との間に転動自在に挿入した多数のボール(58)とを備え、
上記オス螺旋溝(57)の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁(60)を上記ボール(58)が乗り越えるのを許容するように、上記メス螺旋溝(56)の始端部と終端部とを連通させる循環路(59)を上記のハウジング(5)側に凹状に形成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項6】
請求項5のクランプ装置において、
前記ハウジング(5)の筒孔内に、前記のメス螺旋溝(56)を形成したボール循環部材(96)を配置し、そのボール循環部材(96)に、前記の循環路(59)を形成した循環路ブロック(97)を設けた、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項7】
請求項1のクランプ装置において、
上記出力ロッド(30)が基端側へ後退したリリース状態では、その出力ロッド(30)の先端が、前記の被固定物(10)が支持される着座面(S)よりも退入した位置に配置される、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項8】
請求項1のクランプ装置において、
前記の出力ロッド(30)を前記のメネジ孔(12)へ向けて押圧する進出手段(47)を設けた、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項9】
請求項1のクランプ装置において、
前記ハウジング(5)の基端部に、手動操作部(44)を、回転可能かつ軸心方向への移動を阻止した状態で設け、その手動操作部(44)に、前記出力ロッド(30)の基端部を回転伝動可能に挿入した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項10】
請求項1のクランプ装置において、
前記係合用ボルト(50)の外周面を多条ネジによって構成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項11】
請求項1のクランプ装置において、
前記ボールネジ機構(28)を多条ネジによって構成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項12】
請求項1のクランプ装置において、
前記ハウジング(5)の前記ガイド筒(15)の筒孔(29)と前記の出力ロッド(30)の外周面との間に、その出力ロッド(30)の半径方向への移動を許容する環状隙間(79)を形成した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項13】
請求項1のクランプ装置において、
前記の出力ロッド(30)をリリース位置からロック位置へ移動させる途中で、前記ハウジング(5)の前記ガイド筒(15)の筒孔(29)に、前記の出力ロッド(30)を、半径方向への移動を阻止した状態で挿入した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項14】
請求項1のクランプ装置において、
前記の出力ロッド(30)をリリース位置からロック位置へ移動させる途中で、前記ハウジング(5)の前記ガイド筒(15)の筒孔(29)に、前記の出力ロッド(30)を、所定の半径方向への移動を阻止すると共に、上記の所定の半径方向に直交する半径方向への移動を許容する状態で挿入した、ことを特徴とするネジ係合式クランプ装置。
【請求項15】
請求項12から14のいずれかに記載したネジ係合式クランプ装置を少なくとも一つ使用する、ことを特徴とするクランピングシステム。
【請求項16】
請求項13のネジ係合式クランプ装置を一つ使用し、請求項14のネジ係合式クランプ装置を一つ使用し、請求項12のネジ係合式クランプ装置を少なくとも一つ使用する、ことを特徴とするクランピングシステム。
【請求項17】
請求項12のネジ係合式クランプ装置を少なくとも二つ使用する、ことを特徴とするクランピングシステム。
【請求項18】
ハウジング(5)に設けたシリンダ孔(20)に、ピストン(21)を軸心方向へ往復移動可能かつ回転可能に挿入し、
上記ピストン(21)と上記ハウジング(5)との間にボールネジ機構(28)を設け、
前記ボールネジ機構(28)は、前記ピストン(21)の基端側に設けた小径部(21a)の外周面に複数ピッチ形成したオス螺旋溝(57)と、前記ハウジング(5)側にほぼ1ピッチ形成した少なくとも一つのメス螺旋溝(56)と、上記オス螺旋溝(57)と上記メス螺旋溝(56)との間に転動自在に挿入した多数のボール(58)とを備え、
上記オス螺旋溝(57)の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁(60)を上記ボール(58)が乗り越えるのを許容するように、上記メス螺旋溝(56)の始端部と終端部とを連通させる循環路(59)を上記のハウジング(5)側に凹状に形成した、ことを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項19】
請求項18の流体圧アクチュエータにおいて、
前記ピストン(21)を基端方向へ後退させるために圧力流体が供給される第1作動室(62)を前記ピストン(21)の先端側に形成し、前記ピストン(21)を先端方向へ進出させるために圧力流体が供給される第2作動室(64)を前記ピストン(21)の基端側に形成した、ことを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力流体を利用したネジ係合式クランプ装置及びそのクランプ装置を利用したクランピングシステムに関し、さらには、上記クランプ装置に使用するのに好適な流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のネジ係合式クランプ装置には、従来では、特許文献1(国際公開公報 WO 2006/100958)に記載されたものがある。
その従来技術は、次のように構成されている。
ハウジングのシリンダ孔に環状ピストンが上下方向に移動可能に挿入される。そのピストンの筒孔に回転部材が上下方向への移動を阻止した状態で挿入される。上記ピストンと上記の回転部材との間にボールネジ機構が設けられる。そして、ハウジング内のピストンを圧力流体によってロック移動させると、上記の回転部材が上記のボールネジ機構によって軸心回りに回転し、その回転部材が出力ロッドを回転させる。すると、その出力ロッドの先端部に設けた係合用ボルトが被固定物のメネジ孔に係合する。これにより、その被固定物をハウジングに引っ張って固定するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報 WO 2006/100958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術では、被固定物をハウジングに強力に固定できる点で優れるが、次の点で改善の余地が残されていた。
上記ピストンの内側に上記の回転部材を挿入する必要があるため、その回転部材が挿入されたピストン部分の外径寸法が大きくなる。従って、ピストン本体の受圧断面積から上記ピストン部分の受圧断面積を差し引いた環状の受圧断面積(有効シリンダ面積)が小さくなり、クランプ装置の出力が低い。また、上記の回転部材が必要であることから、部品点数が多くなると共に、クランプ装置の小型化には制限があった。
本発明の目的は、高出力でコンパクトなネジ係合式クランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、図1から図6、又は図9から図10Cに示すように、メネジ孔12を設けた被固定物10を係合用ボルト50のネジ係合力で引っ張って固定する装置を次のように構成した。
ハウジング5に設けたシリンダ孔20と、上記ハウジング5の先端側の中央部に設けたガイド筒15との間に、ピストン21を軸心方向へ往復移動可能かつ回転可能に挿入する。上記ピストン21と上記ハウジング5との間にボールネジ機構28を設ける。
上記ガイド筒15の筒孔29及び上記ピストン21の筒孔24に、出力ロッド30を回転可能かつ軸心方向へ移動可能に挿入する。その出力ロッド30の入力部41を上記ピストン21の出力部42に回転伝動可能に連結する。上記の出力ロッド30の先端部に設けた前記の係合用ボルト50を前記の被固定物10の前記メネジ孔12に係合可能に構成した。
【0006】
本発明は、次の作用効果を奏する。
ロック駆動時には、ハウジング内のピストンを圧力流体によって先端方向へロック移動させる。すると、上記ピストンがボールネジ機構によって軸心回りに回転しながら先端方向へ移動し、これと同時に、そのピストンが出力ロッドを回転させる。すると、その出力ロッドの先端部に設けた係合ボルトが被固定物のメネジ孔に係合し、そのネジ係合力によって上記の被固定物をハウジングに引っ張って固定する。
そして、上記ピストンは、ボールネジ機構によって回転しながら往復移動して出力ロッドを回転させるので、前記の従来例とは異なり、出力ロッドを回転させるための別の部品をピストンの内側に設ける必要がない。そのため、本発明では、前記の従来例で上記の別の部品が挿入されていたピストン部分の外径寸法を小さくできる。従って、ピストン本体の受圧断面積から上記ピストン部分の受圧断面積を差し引いた環状の受圧断面積(有効シリンダ面積)が大きくなり、クランプ装置の出力が高くなる。また、上記の別の部品を省略できるので、シリンダ孔の内径を小さくでき、コンパクトで小型のクランプ装置を提供できる。さらに、上記の別の部品が不要になることから、部品点数が少なくなり、クランプ装置の製造コストを低減できる。
【0007】
本発明では、例えば、図3又は図9に示すように、前記出力ロッド30をリリース位置へ後退させるために圧力流体が供給される第1作動室62を前記ピストン21の先端側に形成し、前記出力ロッド30をロック位置へ進出させるために圧力流体が供給される第2作動室64を前記ピストン21の基端側に形成することが好ましい。
そして、図9の実施形態においては、圧力流体として圧油が用いられる場合に、ボールネジ機構を第2作動室内に配置することが可能となり、そのボールネジ機構が第2作動室に供給される圧油によって潤滑される。そのため、ボールネジ機構は、低摩擦・長寿命となり、長期間にわたって、メンテナンスが不要になる。
【0008】
本発明では、例えば、図3又は図9に示すように、前記第1作動室62における前記ピストン21の受圧断面積を前記第2作動室64における前記ピストン21の受圧断面積よりも大きな値に設定することが好ましい。
この場合、リリース駆動力をロック駆動力よりも大きい値に設定できる。
【0009】
本発明には、例えば、図3から図6に示すように、次の構成を加えることが好ましい。前記ボールネジ機構28は、前記ハウジング5に複数ピッチ形成したメス螺旋溝56と、前記ピストン21の基端側に設けた小径部21aの外周面にほぼ1ピッチ形成した少なくとも一つのオス螺旋溝57と、上記メス螺旋溝56と上記オス螺旋溝57との間に転動自在に挿入した多数のボール58とを備える。上記メス螺旋溝56の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁60を上記ボール58が乗り越えるのを許容するように、上記オス螺旋溝57の始端部と終端部とを連通させる循環路59を上記ピストン21の小径部21aの外周面に凹状に形成する。
この場合、ピストンの外周面を循環路の設置スペースとして有効に利用できるので、ハウジングの半径方向の大きさが小さくなる。その結果、クランプ装置がさらにコンパクトになる。
【0010】
本発明には、例えば図9から図10Cに示すように、次の構成を加えることが好ましい。
前記ボールネジ機構28は、前記ピストン21の基端側に設けた小径部21aの外周面に複数ピッチ形成したオス螺旋溝57と、前記ハウジング5側にほぼ1ピッチ形成した少なくとも一つのメス螺旋溝56と、上記オス螺旋溝57と上記メス螺旋溝56との間に転動自在に挿入した多数のボール58とを備える。上記オス螺旋溝57の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁60を上記ボール58が乗り越えるのを許容するように、上記メス螺旋溝56の始端部と終端部とを連通させる循環路59を上記のハウジング5側に凹状に形成する。
この場合、ハウジング側の内周面を循環路の設置スペースとして有効に利用できるので、ハウジングの半径方向の大きさが小さくなる。その結果、クランプ装置がさらにコンパクトになる。
また、ボールネジ機構のオス側の部品である上記ピストンの小径部の外周面には、複数ピッチのオス螺旋溝が形成される。そのため、ボールネジ加工は、メス側の部品に行う場合と比べて容易に行える。また、ボールネジ機構の部品としての上記ピストンは、ハウジングと比べて小型部品であるので、焼入れ等の硬化処理を行いやすい。
【0011】
本発明では、例えば、図9から図10Cに示すように、前記ハウジング5の筒孔内に、前記のメス螺旋溝56を形成したボール循環部材96を配置し、そのボール循環部材96に、前記の循環路59を形成した循環路ブロック97を設けることが好ましい。
この場合、上記の循環路は、ハウジングとは別部品の循環路ブロックに形成される。そのため、上記循環路の加工がしやすい。また、ボール循環部材から循環路ブロックを取り外すことによって、上記ボール循環部材に対してボールを組み付けたり取り外したりする作業が容易である。
【0012】
本発明では、例えば、図3又は図9に示すように、上記出力ロッド30が基端側へ後退したリリース状態では、その出力ロッド30の先端が、前記の被固定物10が支持される着座面Sよりも退入した位置に配置されることが好ましい。
この場合、上記の被固定物を着座面上へ搬入するとき又は着座面上から搬出するときに、その被固定物を、着座面に垂直な方向からも着座面と平行な方向からも搬入・搬出が可能である。また、着座面の掃除が行いやすい。
【0013】
本発明においては、例えば、図3又は図9に示すように、前記の出力ロッド30を前記のメネジ孔12へ向けて押圧する進出手段47を設けることが好ましい。
この場合、出力ロッドの係合用ボルトと被固定物のメネジ孔とのネジ係合の開始時に、回転しているボルトを進出手段がメネジ孔に押圧することにより、上記ネジ係合を確実に行える。
また、リリース状態において、出力ロッドの先端が上記の着座面よりも退入した位置に配置される場合においても、上記ピストンがロック駆動されると、そのピストンの先端側への移動に伴って上記の進出手段が出力ロッドを先端側に移動させることができる。
【0014】
本発明では、例えば、図3又は図9に示すように、前記ハウジング5の基端部に、手動操作部44を、回転可能かつ軸心方向への移動を阻止した状態で設け、その手動操作部44に、前記出力ロッド30の基端部を回転伝動可能に挿入することが好ましい。
この場合、出力ロッドの係合用ボルトと被固定物のメネジ孔とが焼き付き等によって固着したときに、手動操作部を人力などで回転させることによって上記の固着状態を解除できる。そのため、上記の焼き付き等の発生時に、製造ラインを速やかに復帰できる。
【0015】
本発明には、次の(A)または(B)の構成を加えることが好ましい。
(A) 前記係合用ボルト50の外周面を多条ネジ(好ましくは二条ネジ)によって構成する。
(B) 前記ボールネジ機構28を多条ネジ(好ましくは二条ネジ)によって構成する。
この場合、係合用ボルトの1回転中に、その係合用ボルトとメネジ孔との噛み合わせが複数回あるので、その噛み合いが速やかになり、回転ロスが低減する。また、1回転で複数ピッチだけネジ込まれるので上記ピストンの回転数が少なくてもよく、そのピストンの移動距離を短くできる。そのため、ハウジングの高さを低くできるので、クランプ装置をさらにコンパクトに造れる。
【0016】
本発明においては、例えば、図3又は図9に示すように、前記ハウジング5の前記ガイド筒15の筒孔29と前記の出力ロッド30の外周面との間に、その出力ロッド30の半径方向への移動を許容する環状隙間79を形成してもよい。
この場合、ハウジングに対して出力ロッドが半径方向へ移動することが許容されるので、被固定物のメネジ孔の軸心と出力ロッドの軸心との心ズレを吸収できる。
【0017】
本発明においては、例えば図5図6に示すように、前記の出力ロッド30をリリース位置からロック位置へ移動させる途中で、前記ハウジング5の前記ガイド筒15の筒孔29に、前記の出力ロッド30を、半径方向への移動を阻止した状態で挿入してもよい。
この場合、その出力ロッドの軸心を位置決めの基準として利用できる。
【0018】
本発明においては、例えば図12(図5図6を参照)に示すように、前記の出力ロッド30をリリース位置からロック位置へ移動させる途中で、前記ハウジング5の前記ガイド筒15の筒孔29に、前記の出力ロッド30を、所定の半径方向への移動を阻止すると共に、上記の所定の半径方向に直交する半径方向への移動を許容する状態で挿入してもよい。
この場合、上記の所定の半径方向では位置決めを行うと共に、それに直交する半径方向では心ズレを許容できる。
【0019】
本発明のクランプ装置を利用したクランピングシステムとしては、上述した各発明に係るクランプ装置を少なくとも一つ使用すること、又は、複数の発明に係るクランプ装置を組み合わせて使用すること等が考えられる。
【0020】
また、本発明のクランプ装置に適用するのに好適な流体圧アクチュエータは、例えば、図9から図10Cに示すように、次のように構成される。
ハウジング5に設けたシリンダ孔20に、ピストン21を軸心方向へ往復移動可能かつ回転可能に挿入する。上記ピストン21と上記ハウジング5との間にボールネジ機構28を設ける。
前記ボールネジ機構28は、前記ピストン21の基端側に設けた小径部21aの外周面に複数ピッチ形成したオス螺旋溝57と、前記ハウジング5側にほぼ1ピッチ形成した少なくとも一つのメス螺旋溝56と、上記オス螺旋溝57と上記メス螺旋溝56との間に転動自在に挿入した多数のボール58とを備える。
上記オス螺旋溝57の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁60を上記ボール58が乗り越えるのを許容するように、上記メス螺旋溝56の始端部と終端部とを連通させる循環路59を上記のハウジング5側に凹状に形成する。
【0021】
この場合、ハウジング側の内周面を循環路の設置スペースとして有効に利用できるので、ハウジングの半径方向の大きさが小さくなる。その結果、流体圧アクチュエータをコンパクトに造れる。
また、ボールネジ機構のオス側の部品である上記ピストンの小径部の外周面には、複数ピッチのオス螺旋溝が形成される。そのため、ボールネジ加工は、メス側の部品に行う場合と比べて容易に行える。また、ボールネジ機構の部品としての上記ピストンは、ハウジングと比べて小型部品であるので、焼入れ等の硬化処理を行いやすい。
【0022】
上記の流体圧アクチュエータの発明においては、例えば、図9に示すように、前記ピストン21を基端方向へ後退させるために圧力流体が供給される第1作動室62を前記ピストン21の先端側に形成し、前記ピストン21を先端方向へ進出させるために圧力流体が供給される第2作動室64を前記ピストン21の基端側に形成することが好ましい。
この場合、ボールネジ機構を第2作動室内に配置することが可能となり、圧力流体として圧油が用いられる場合に、そのボールネジ機構が第2作動室に供給される圧油によって潤滑される。そのため、ボールネジ機構は、低摩擦・長寿命となり、長期間にわたって、メンテナンスが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態のネジ係合式クランプ装置の使用形態を示している。
図2】上記の使用形態におけるクランプ装置の上面図である。
図3】上記クランプ装置のリリース状態の立面視の断面図である
図4図4Aは、上記クランプ装置の平面図である。図4Bは、上記クランプ装置に設けたボールネジ機構を示し、図3中の下部分の左側面視の部分断面図である。
図5】上記クランプ装置のロック上昇の初期状態を示し、前記の図3に類似する図である。
図6】上記クランプ装置のロック状態を示し、前記の図3に類似する図である。
図7】前記の第1実施形態に係るクランプ装置の変形例を示し、前記図3に類似する部分図である。
図8図8は、前記の第1実施形態に係るクランプ装置の他の使用形態を示し、前記の図6に類似する図である。
図9】本発明の第2実施形態のクランプ装置を示し、前記の図3に類似する図である。
図10図10Aは、上記の図9のクランプ装置に設けたボール循環部材の断面図である。図10Bは、前記図10Aの10B−10B線の断面図である。図10Cは、前記図10Aの10C−10C線の断面図である。
図11】前記の第2実施形態に係るクランプ装置の変形例を示し、前記図9に類似する部分図である。
図12】本発明のガイド筒の変形例を示す横断面図である。
図13】本発明の係合用ボルトの変形例を示す縦断面図である。
図14】上記の各クランプ装置を利用したクランピングシステムの平面視の模式図である。
【符号の説明】
【0024】
5:ハウジング,10:被固定物(ワーク),12:メネジ孔,15:ガイド筒,20:シリンダ孔,21:ピストン,21a:小径部,24:ピストン21の筒孔,28:ボールネジ機構,29:ガイド筒15の筒孔(ガイド孔),30:出力ロッド,41:入力部,42:出力部,44:手動操作部,47:進出手段(進出バネ),50:係合用ボルト,56:メス螺旋溝,57:オス螺旋溝,58:ボール,59:循環路,60:区画壁,62
:第1作動室(リリース室),64:第2作動室(ロック室),79:環状隙間,96:ボール循環部材,97:循環路ブロック,S:着座面.
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から図6は、本発明の第1実施形態を示している。
この第1実施形態では、ネジ係合式クランプ装置によってワークを固定および固定解除する場合を例示してある。まず、図1から図4によって上記クランプ装置の構成を説明する。
【0026】
工作機械等のテーブル1上には、支持台としての治具プレート2が設けられている。その治具プレート2はフランジ部2aを備えている。そのフランジ部2aの上面に、着座ブロック3が複数(ここでは図2に示すように3本)の取付けボルト3bによって固定されると共に、上記フランジ部2aの下面に、クランプ装置4(4a)のハウジング5の上部が複数(ここでは図2に示すように2本)の取付けボルト5aによって固定される。なお、ハウジング5の上面には、図4Aに示すように、取付けボルト5a用の取付けボルト穴5bが複数(ここでは8個)形成されている。
被固定物としてのワーク10には基準面11とメネジ孔12とが予め加工されている。そのメネジ孔12は上記の基準面11に下向きに開口されている。
【0027】
着座ブロック3は、図2に示すように、平面視で略半円形状の部材であって、その一端にはU字状の切り欠き3aが形成されている。そして、着座ブロック3が治具プレート2に取り付けられると、クランプ装置4の出力ロッド30は、上記の切り欠き3a内に配置される。着座ブロック3の上面において、上記の切り欠き3aの近傍に、ワーク10を支持する着座面Sが設けられる(図2において二点鎖線の斜線で示す部分を参照)。そして、図1又は図3に示すように、ワーク10は、その右端が着座ブロック3の右端よりも右方に配置されるように着座ブロック3上に固定される。そのため、切削工具が着座ブロック3に干渉しなくなり、ワーク10に対する5面加工が可能である。また、図2に示すように、クランプ装置4の出力ロッド30が挿入される上記の切り欠き3aは右方へ開放されているため、切粉や切削油が右方へ流出しやすくなり、切粉・切削油に対する対策が容易である。そして、治具パレットや組立治具等は、ワーク等の被固定物よりも少し大きくするだけでよいので、スペースが小さくてすみ、設備コストが低減される。
【0028】
なお、上記の着座面Sや上記の出力ロッド30の先端(後述の係合用ボルト50のオネジ部53)にエアーを吹き付けるため、上記クランプ装置4又は着座ブロック3等に、エアブロー機構を備えるのが好ましい。
【0029】
上記フランジ部2aに固定されたハウジング5の上ハウジング部分6に、下ハウジング部分7が複数の連結ボルト8によって固定されている。そして、上ハウジング部分6の中央部にガイド筒15が挿入されている。そのガイド筒15の上部フランジ16が、多数(ここでは8本)の締結ボルト17によって上ハウジング部分6の上部に固定される。
上ハウジング部分6の下部内には、環状の仕切部材18が配置されている。その仕切部材18は、上記の下ハウジング部分7の筒孔の周壁の上面に回り止めピン19によって回り止めされている。上記の仕切り部材18の外周上部には、後述のロック室(第2作動室)64に供給される圧油の通路としての溝65aが形成されている。そして、上記の上ハウジング部分6に大径のシリンダ孔20が形成される。
上記シリンダ孔20とガイド筒15の外周面との間に、環状ピストン21が上下方向(軸心方向)へ往復移動可能かつ軸心まわりに回転可能に挿入される。
【0030】
上記ピストン21の下端側(基端側)に小径部21aが設けられ、その小径部21aは、上記の仕切部材18の筒孔と、上記の下ハウジング部分7に設けられたロッド収容孔22と、に挿入される。なお、上記ピストン21の上端側には、ピストン本体としての大径部21bが設けられる。
上記ロッド収容孔22は、上記シリンダ孔20よりも小径に形成され、上記ピストン21の小径部21aの内方に配置された出力ロッド30の入力部41及び基端部43を上下方向へ移動可能に収容する。
また、上記ピストン21の小径部21aと、上記ハウジング5のロッド収容孔22との間には後述のボールネジ機構28が設けられる。
【0031】
前記ガイド筒15の筒孔によってガイド孔29が構成される。そのガイド孔29は、ピストン21の筒孔24よりも半径方向の内方に配置されている。上記ガイド孔29に出力ロッド30が軸心回りに回転可能かつ上下方向(軸心方向)へ移動可能に挿入される。
また、上記ガイド筒15のガイド孔29の上端と、出力ロッド30の外周面との間には、ダストシール機能及び封止機能を備えたパッキン31が装着されている。
【0032】
ガイド筒15の前記ガイド孔29には、上下方向(軸心方向)へ所定の間隔をあけてメス嵌合部32・32が半径方向の内方へ突出され、これらメス嵌合部32・32の間に環状凹溝33が形成される。また、出力ロッド30の外周面にも上下方向へ所定の間隔をあけてオス嵌合部34・34が形成され、これらオス嵌合部34・34の上側に環状凹溝35・35が形成される。
【0033】
そして、出力ロッド30が下方へ後退した図3のリリース状態では、上記メス嵌合部32とオス嵌合部34とが上下方向へ離間して、ガイド孔29内で上記の出力ロッド30が半径方向へ移動可能となる。
これに対して、上記の出力ロッド30が上方へ進出した図6のロック状態では、上記メス嵌合部32とオス嵌合部34とがほぼ全周で嵌合して、ガイド孔29に出力ロッド30が半径方向に拘束される。
これにより、この第1実施形態のクランプ装置4(4a)は、図6のロック状態では、出力ロッド30が半径方向へ移動することが阻止され、後述の図14のクランピングシステムにおいて、いわゆるデータム形のクランプ装置として構成されている。
上記オス嵌合部34には、後述のロック状態検出用の圧縮空気の通路となる溝部34aが形成されている。そのため、上記メス嵌合部32とオス嵌合部34とがほぼ全周で嵌合した場合でも、出力ロッド30とガイド孔29との間の嵌合隙間79は、上記オス嵌合部34の上下で連通している。なお、上記の溝部34aは、オス嵌合部34に設けることに代えて、メス嵌合部32に設けてもよい。
【0034】
出力ロッド30の入力部41は、前記ピストン21の出力部42に回転伝動可能かつ上下方向(軸心方向)へ移動可能に挿入されている。ここでは、上記の出力ロッド30の入力部41は、六角形の断面形状を有しており、上記ピストン21の出力部42は、六角形の筒孔である。そして、上記の入力部41の外周側には、上記の出力部42の筒孔との間に環状隙間80が形成される。
【0035】
出力ロッド30の入力部41の下方には基端部43が設けられている。ハウジング5の下端部(基端部)には、手動操作部44が回転可能かつ上下方向への移動を阻止した状態で設けられている。そして、上記の出力ロッド30の基端部43が手動操作部44の筒孔に回転伝動可能に挿入されている。ここでは、上記の出力ロッド30の基端部43は、六角形の断面形状を有しており、上記の手動操作部44は、六角形の筒孔を有している。そして、上記の基端部43の外周面と、上記の手動操作部44の筒孔との間には、環状隙間81が形成される。
そのため、出力ロッド30の係合用ボルト50とワーク10のメネジ孔12とが焼き付き等によって固着してクランプ装置4のリリーストルクによって固着解除できないときには、手動操作部44をスパナ等で回転させることでその固着状態を解除できる。
【0036】
なお、上記の出力ロッド30の入力部41と上記ピストン21の出力部42との間に形成される環状隙間80、及び、上記の出力ロッド30の基端部43と上記の手動操作部44の筒孔との間に形成される環状隙間81は、後述のロック状態検出用の圧縮空気の排気用の通路となると共に、出力ロッド30の心ズレを許容するためのものである。
また、上記の出力ロッド30の入力部41と上記ピストン21の出力部42との嵌合や、上記の出力ロッド30の基端部43と上記の手動操作部44の筒孔との嵌合は、回転伝動可能かつ上下方向(軸心方向)へ相対移動可能であればよく、上記の六角形同士の嵌合に代えて、例えば四角形同士の嵌合であってもよい。
【0037】
出力ロッド30の下部において、入力部41と基端部43との間にストッパ45が装着されている。そして、そのストッパ45と、前記の手動操作部44の上部に配置された止め輪46との間に、進出バネ47(進出手段)が装着される。その進出バネ47は、出力ロッド30を上方へ付勢する弾性体として機能している。なお、ストッパ45は、組立・分解を容易に行うために略半円径に2分割されている。
【0038】
上記の出力ロッド30の上端部(先端部)に係合用ボルト50が設けられる。そのボルト50は、先細りのテーパ部51と肩部52とオネジ部53とを、下向きに順に備える。そのオネジ部53が、前記ワーク10のメネジ孔12のメネジ部12aに係合可能に構成されている。なお、この第1実施形態では、オネジ部53及びメネジ部12aは、右ネジかつ平行ネジからなる。
さらに、出力ロッド30には、入力部41の上方に拡径部54が設けられる。その拡径部54の上面に、上スラストベアリング55が載置される。上スラストベアリング55は、低摩擦の滑り軸受けによって構成されている。
【0039】
前記ボールネジ機構28は次のように構成されている。
上記の下ハウジング部分7のロッド収容孔22にメス螺旋溝56が複数ピッチ形成される。また、上記ピストン21の小径部21aの外周面にオス螺旋溝57がほぼ1ピッチ形成される。これらメス螺旋溝56とオス螺旋溝57との間に多数のボール58が転動自在に挿入される。また、上記オス螺旋溝57の始端部と終端部とを連通させる循環路59が、上記のピストン21の小径部21aの外周面に凹状に形成される。その循環路59の作用により、上記ボール58は、上記メス螺旋溝56の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁60を乗り越えることが許容される。
なお、この第1実施形態では、メス螺旋溝56とオス螺旋溝57とが右ネジによって構成されている。また、ほぼ1ピッチ形成した上記オス螺旋溝57は、一つだけ設けることに代えて、軸心方向へ間隔をあけて複数設けてもよい。
【0040】
前記ピストン21の上側に形成したリリース室(第1作動室)62が圧油の第1給排口63に連通され、そのピストン21の下側に形成したロック室(第2作動室)64が、前記の仕切り部材18の溝65aを介して圧油の第2給排口65に連通される。リリース室62におけるピストン21の受圧断面積をロック室64におけるピストン21の受圧断面積よりも大きな値に設定しており、これにより、ロック駆動力よりもリリース駆動力を大きい値に設定している。
【0041】
下ハウジング部分7の下部には、リリース状態検出用の圧縮空気が供給される第1供給口71が設けられる。また、下ハウジング部分7の途中高さ部には、ロック状態検出用の圧縮空気が供給される第2供給口72が設けられる。
上記の第1供給口71は、下ハウジング部分7の下端部とピストン21の下端面との間で上下方向に対面するように配置された第1開閉部73を介して外部空間へ連通されている。また、上記の第2供給口72は、後述する図6のロック状態で示したように、ハウジング5の一部を構成するガイド筒15の下端面と上スラストベアリング55の上面との間で上下方向に対面するように配置された第2開閉部74を介して外部空間へ連通されている。
【0042】
上記クランプ装置4は、図3のリリース状態と、図5のロック上昇の初期状態と、図6のロック状態に示すように、次のように作動する。
図3のリリース状態では、ロック室64の圧油が排出されると共にリリース室62へ圧油が供給されており、ピストン21が下降している。そのため、出力ロッド30は、下側へ後退したリリース位置に配置される。このとき、出力ロッド30は、前記の進出バネ47の付勢力によって上方へ押圧されているが、前記ストッパ45を介してピストン21の出力部42によって上昇が阻止されている。
【0043】
この状態で、ワーク10が着座ブロック3に載置されると、ワーク10の基準面11の一部が着座ブロック3の着座面Sと接触した状態となる。ワーク10のメネジ孔12は出力ロッド30のほぼ上方に配置される。このとき、出力ロッド30の先端は、着座ブロック3の着座面Sよりも下側へ距離Aだけ退入した位置に配置される。
【0044】
上記リリース状態では、第1供給口71の圧縮空気は、第1開閉部73でストップされている。このため、その第1供給口71の圧力上昇を検出することにより、クランプ装置4がリリース状態であることを確認できる。
なお、そのリリース状態では、第2供給口72の圧縮空気は、下ハウジング部分7の斜め路76と、上ハウジング部分6の縦路77と、ガイド筒15の横路78と、出力ロッド30とガイド孔29との間の嵌合隙間79と、出力ロッド30の入力部41とピストン21の出力部42との間の嵌合隙間80と、出力ロッド30の基端部43と手動操作部44の筒孔との間の嵌合隙間81と、を順に通って外部へ排出可能になっている。
【0045】
図3のリリース状態のクランプ装置4を図6のロック状態へ切り換えるときには、リリース室62の圧油を排出すると共にロック室64へ圧油を供給して、ピストン21を上昇させる。すると、そのピストン21は、出力ロッド30を回転させながら上昇し、図5に示すようなロック上昇の初期状態となる。即ち、上記ボルト50のテーパ部51がワーク10のメネジ孔12内に挿入され、次いで、メネジ孔12の周壁の下部に上記ボルト50の肩部52が当接する。この状態では、進出バネ47の付勢力により、ボルト50のオネジ部53の上端がメネジ孔12のメネジ部12aの下端に噛み合うようになっている。
なお、図3のリリース状態から図5のロック上昇の初期状態へ切り換えるときにおいて、メネジ孔12の軸心と出力ロッド30の軸心とが心ズレしている場合には、テーパ部51がメネジ孔12から挿入抵抗を受けるので、その抵抗によって、出力ロッド30が半径方向へ調心移動する。
【0046】
引き続いて、リリース室62の圧油を排出すると共にロック室64へ圧油を供給して、ピストン21を上昇させる。すると、図6に示すように、出力ロッド30が底面視で時計回りの方向へ回転して、ボルト50のオネジ部53がメネジ部12aに螺合していく。
これにより、まず、出力ロッド30が上昇して前記スラストベアリング55がガイド筒15の下端面に接当し、次いで、上記ボルト50の螺合力によってワーク10を着座ブロック3の着座面Sに強力に押圧する。なお、オネジ部53がネジ込まれる山数は、ここでは、3山から5山程度に設定してある。
【0047】
なお、上記の螺合時において、上記ピストン21は、1回転すると前記ボールネジ機構28のボールネジのリード分だけ上昇し、上記の出力ロッド30は、オネジ部53のネジピッチ分だけ上昇する。即ち、上記ピストン21が1回転したときのピストン21と出力ロッド30のそれぞれの移動量は、上記ボールネジのリードと上記オネジ部53のネジピッチとの違いにより異なっている。
なお、前記の係合用ボルト50又は前記ボールネジ機構28を、二条ネジによって構成した場合には、上記のボルト50が1回転する間に、そのボルト50とメネジ孔12との噛み合わせが2回ある(180°毎)ので、その噛み合いが速やかになり、回転ロスが1/2に低減する。また、上記のボルト50は、1回転で2ピッチだけネジ込まれるので上記ピストン21の回転数が少なくてもよく、そのピストン21の昇降距離が1/2になる。そのため、ハウジング5の高さを低くできるので、クランプ装置4をさらにコンパクトに造れる。
【0048】
上記ロック状態では、第2供給口72の圧縮空気は、斜め路76、縦路77及び横路78を経て嵌合隙間79の下端へ供給されるが、その下端の第2開閉部74でストップされている。このため、その第2供給口72の圧力上昇を検出することにより、クランプ装置4がロック状態であることを確認できる。
なお、そのロック状態では、第1供給口71の圧縮空気は、出力ロッド30の基端部43と手動操作部44の筒孔との嵌合隙間81を通って外部へ排出可能になっている。
【0049】
図6のロック状態のクランプ装置4を図3のリリース状態へ切り換えるときには、ロック室64の圧油を排出すると共にリリース室62へ圧油を供給して、ピストン21を下降させる。すると、図3に示すように、出力ロッド30が底面視で反時計回りの方向へ回転し、ボルト50のオネジ部53とメネジ部12aとの螺合に従って出力ロッド30が下降し、その螺合状態が解除される。その後、ワーク10を移動させればよい。
【0050】
上記の第1実施形態は、次の長所を奏する。
ピストン21は、ボールネジ機構28によって回転しながら往復移動して出力ロッド30を回転させるので、前記の従来例とは異なり、上記ピストン21の内側に出力ロッド30を回転させるための別の部品を設ける必要がない。そのため、ピストン21の小径部21aの外径寸法を小さくできる。従って、ピストン21の大径部21bの受圧断面積から上記の小径部21aの受圧断面積を差し引いた環状の受圧断面積(有効シリンダ面積)が大きくなり、クランプ装置の出力が高くなる。また、上記の別の部品を省略できるので、シリンダ孔20の内径を小さくでき、コンパクトで小型のクランプ装置を提供できる。さらに、上記の別の部品が不要になることから、部品点数が少なくなり、クランプ装置の製造コストを低減できる。
なお、後述する別の実施形態も上記と同様の長所を奏する。
【0051】
図7から図14は、本発明の変形例や別の実施形態を示している。これらの変形例や別の実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の符号を付けて説明する。
【0052】
図7は、前記の第1実施形態の変形例を示し、前記図3に類似する部分図である。
本変形例では、下ハウジング部分7の下部とピストン21の下端部との間に、所定厚さの環状スペーサ(図示せず)を挿入している。このため、図7に示すように、出力ロッド30が下側へ後退したリリース状態において、出力ロッド30の先端は、着座ブロック3の着座面Sよりも上方へ突出した位置に配置される。ここで、リリース状態では、ワークを下降させたときに、そのワーク10のメネジ孔12の周壁の下部が上記ボルト50の肩部52によって受け止められる。そのときにワーク10の仮位置決めがなされる。
なお、前記の図3において、下ハウジング部分7の下部とピストン21の下端部との間に、上記の所定厚さの環状スペーサを設けるのに代えて、下ハウジング部分7の下端部を上記スペーサ分だけ上方へ突出させてもよい。
【0053】
また、本変形例では、着座ブロック3の着座面Sに着座センシング用エア穴85が設けられている。そのエア穴85は、着座ブロック3の横路86及び治具プレート2の縦路87を介して、上ハウジング部分6の縦路77と連通している。そして、上記エア穴85は、ワーク10が着座ブロック3の着座面S上に接当されることにより閉じられる。そのため、クランプ装置4の内部においてガイド筒15の下端面と上スラストベアリング55の上面との接当による圧力上昇だけでなく、ワーク10と着座ブロック3の着座面Sとの接当による圧力上昇を同時に検出することにより、クランプ装置4がロック状態であることを確認できる。
【0054】
図8は、前記の第1実施形態に係るクランプ装置の他の使用形態を示し、その使用形態の要部の断面図であって、前記の図6に類似する図である。
【0055】
この使用形態は、被テスト物92のメネジ孔12にテスト用圧力流体を供給可能に構成されている。
ピストン21に、前記の図6の出力ロッド30に代えて中空ロッド93が連結される。その中空ロッド93の下部43がノズル94に連結される。
【0056】
図8の状態では、ピストン21が上昇し、中空ロッド93を回転させている。これにより、その中空ロッド93の上端部に設けた係合用ボルト50が前記の被テスト物92のメネジ孔12に保密状に接続されている。圧縮空気等のテスト用圧力流体は、ノズル94と中空ロッド93内の流通路95を介して上記の被テスト物92内へ供給される。
なお、被テスト物92のメネジ孔12及びボルト50のオネジ部は、平行ネジに代えてテーパネジであってもよい。
【0057】
図9及び図10は、本発明の第2実施形態のクランプ装置を示している。図9は、リリース状態を示し、前記の図3に類似する部分図である。図10Aは、上記の図9のクランプ装置に設けたボール循環部材の断面図である。図10Bは、前記図10Aの10B−10B線の断面図であり、図10Cは、前記図10Aの10C−10C線の断面図である。
【0058】
この第2実施形態は、前記の第1実施形態とは次の点で異なる。
ハウジング5の上ハウジング部分6の下部内には、環状のボール循環部材96が配置されている。そのボール循環部材96は、下ハウジング部分7の筒孔の周壁の上面に取付ボルト100によって固定されている。上記ボール循環部材96は、半径方向へ延びる保持孔96aを有している。そして、その保持孔96a内に、循環路ブロック97が設けられている。また、上記ボール循環部材96の外周面に環状の止め輪99が装着されている。その止め輪99は、循環路ブロック97の回転止めと組み立て時の仮押さえを行うものである。
【0059】
前記ボールネジ機構28は次のように構成されている。
上記ピストン21の下側(基端側)に設けた小径部21aの外周面に、右ネジからなるオス螺旋溝57が複数ピッチ形成される。また、上記ボール循環部材96にメス螺旋溝56がほぼ1ピッチ形成される。これらオス螺旋溝57とメス螺旋溝56との間に多数のボール58が転動自在に挿入される。また、上記の循環路ブロック97に、上記メス螺旋溝56の始端部と終端部とを連通させる循環路59が凹状に形成される。その循環路59の作用により、上記ボール58は、上記オス螺旋溝57の隣り合う溝部分の間に形成された区画壁60を乗り越えることが許容される。
【0060】
また、上記ガイド孔29と出力ロッド30の外周面との間には環状隙間79が形成されている。これにより、この第2実施形態のクランプ装置4(4b)は、出力ロッド30が全周にわたって半径方向へ移動可能になっており、後述の図14のクランピングシステムにおいて、いわゆるフリー形のクランプ装置として構成されている。
【0061】
上記の第2実施形態は、次の長所を奏する。
ボールネジ機構28のオス側の部品である上記ピストン21の小径部21aの外周面には、複数ピッチのオス螺旋溝57が形成される。そのため、ボールネジ加工は、メス側の部品に行う場合と比べて容易に行える。また、ボールネジ機構28の部品としての上記ピストン21は、ハウジング5と比べて小型部品であるので、焼入れ等の硬化処理を行いやすい。
また、上記の循環路59は、ハウジング5とは別部品の循環路ブロック97に形成される。そのため、上記循環路59の加工がしやすい。また、ボール循環部材96から循環路ブロック97を取り外すことによって、上記ボール循環部材96に対してボール58を組み付けたり取り外したりする作業が容易である。
さらに、ボールネジ機構28がロック室64内に配置されるので、そのボールネジ機構28がロック室64に供給される圧油によって潤滑される。そのため、ボールネジ機構28は、低摩擦・長寿命となり、長期間にわたって、メンテナンスが不要になる。
【0062】
図11は、前記の第2実施形態の変形例を示し、前記図9に類似する部分図である。
本変形例では、クランプ装置4のリリース状態またはロック状態がリミットスイッチ101によって検出される。そのリミットスイッチ101は、上下方向(軸心方向)へ所定の間隔をあけて配置されたリリース状態の検出スイッチ102とロック状態の検出スイッチ103とを備える。出力ロッド30は、基端部43の下方に設けられた突出部104を有している。その突出部104の下部に操作具105が固定されている。その操作具105が、上記の各スイッチ102・103を動作させる。
なお、クランプ装置4のリリース状態またはロック状態は、リミットスイッチに代えて、近接スイッチまたはリードスイッチ等によって検出してもよい。
【0063】
図12は、本発明のガイド筒15の変形例を示す図である。
上記ガイド筒15のガイド孔29が平面視で楕円形状に形成され、そのガイド孔29に出力ロッド30が挿入されている。これにより、そのガイド孔29の周壁に、半径方向に対面する突出部106・106が設けられると共に、これら突出部106・106の間に逃し部107・107が設けられる。
そのため、出力ロッド30がハウジング5に対して図12上の左右方向へ移動可能かつ図12上の上下方向へ移動不能に構成される。即ち、この変形例のクランプ装置4(4c)は、後述の図14のクランピングシステムにおいて、いわゆるダイヤモンドカット形のクランプ装置として構成されている。
【0064】
前記ハウジング5に対して上記突出部106・106の回転位相を変更する場合には、前記の締結ボルト17を取り外して、ハウジング5に対するガイド筒15の回転位相を変更すればよい。ちなみに、図4に示すように8本の締結ボルト17を使用している場合には、回転位相を45度の角度ごとに変更できる。
【0065】
なお、ガイド孔29は、平面視で楕円形状に形成されるのに代えて、平面視で長方形状などに変更してもよい。また、ガイド筒15のガイド孔29に出力ロッド30が直接に挿入されるのに代えて、上記ガイド孔29と上記の出力ロッド30との間に少なくとも一つの中間スリーブを配置してもよい。この場合は、その中間スリーブの外周面と上記ガイド孔との少なくとも一方に半径方向に対面する突出部106・106を設けると共に、これら突出部106・106の間に逃し部107・107を設けられる。このとき、中間スリーブは、上下方向(軸心方向)へ所定の間隔をあけて二つ配置することが好ましいが、比較的に長尺のものを一つだけ配置することも可能であり、三つ以上を配置してもよい。
【0066】
図13は、本発明の係合用ボルト50の変形例を示している。
本変形例では、係合用ボルト50が、出力ロッド30の上端部(先端部)に一体的に設けられるのに代えて、上記の出力ロッド30の上端部に着脱可能にネジ止めされる。そのため、係合用ボルト50のネジ径の変更や取り替えを容易に行える。
【0067】
図14は、上記の各実施形態のクランプ装置を利用したクランピングシステムの平面視の模式図である。
この場合、ワーク10に4つのメネジ孔121・122・123・124を対角線上に配置し、第1メネジ孔121に図3のデータム形のクランプ装置4aを対応させ、第2メネジ孔122に図12のダイヤモンドカット形のクランプ装置4cを対応させ、第3メネジ孔123及び第4のメネジ孔124には図9のフリー形のクランプ装置4bを対応させてある。
なお、ダイヤモンドカット形のクランプ装置4cの前記突出部106・106(図12を参照)が対面する方向は、第1メネジ孔121を中心としてワーク10が回転するのを阻止する方向に設定してある。
【0068】
上記の各実施形態や変形例は次のように変更可能である。
前記ボールネジ機構28及び係合用ボルト50は、例示した右ネジに代えて、左ネジであってもよい。
前述したリリース状態の検出手段とロック状態の検出手段とは、いずれか一方を省略してもよく、両方を省略してもよい。
本発明に係るクランプ装置の被固定物は、例示したワークに代えて、治具・パレット・金型・組み立て完成品などであってもよい。
クランプ装置の設置姿勢は、例示した姿勢とは上下逆の姿勢であってもよく、水平向きの姿勢や斜め向きの姿勢であってもよい。
前記クランピングシステムにおいては、各形式のクランプ装置4a・4b・4cを、同じ形式のものだけを複数使用してもよく、また、異なる形式のものを一つ又は複数ずつ組み合わせて使用してもよい。
本発明に係る流体圧アクチュエータのピストンは、環状でなくてもよい。
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