特許第5666464号(P5666464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666464
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】新規化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/06 20060101AFI20150122BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150122BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150122BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20150122BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20150122BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   C07D473/06CSP
   A61K31/522
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61K45/00
   A61K31/455
   A61K31/40
   A61P9/04
   A61P9/00
   A61P9/10 101
   A61P1/14
   A61P3/04
   A61P9/10
   A61P7/02
   A61P13/12
   A61P9/14
【請求項の数】12
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-539772(P2011-539772)
(86)(22)【出願日】2009年12月7日
(65)【公表番号】特表2012-511028(P2012-511028A)
(43)【公表日】2012年5月17日
(86)【国際出願番号】US2009066941
(87)【国際公開番号】WO2010068581
(87)【国際公開日】20100617
【審査請求日】2012年12月6日
(31)【優先権主張番号】61/120,596
(32)【優先日】2008年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591002957
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(72)【発明者】
【氏名】ホリー、エスケン
(72)【発明者】
【氏名】ベス、アダムズ、ノートン
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−522176(JP,A)
【文献】 特公昭55−023825(JP,B1)
【文献】 特表2003−534238(JP,A)
【文献】 特開昭61−115051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D473/00−475/14
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形の無水8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(式(IA)):
【化1】
である化合物。
【請求項2】
結晶形が、以下のピーク:
【表1】
を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
結晶形が、DSCサーモグラムで212±2℃の融解開始温度を有する溶融吸熱を特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
結晶形が、固体生成物のATR−IRスペクトルにおける以下の吸収ピーク:3370、3041、2946、2858、1680、1656、1528、1266、1243、1078、1068、1049±1cm−1を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
a)請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物およびb)1種または複数の治療活性剤を含んでなる、組合せ物。
【請求項6】
a)請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物およびb)ナイアシンまたはアトロバスタチンナトリウムを含んでなる、組合せ物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物を含んでなる、医薬組成物。
【請求項8】
混合型脂質異常症、糖尿病の脂質異常症または高リポ蛋白血症の治療のための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
II型糖尿病の治療のための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
糖尿病の脂質異常症、混合型脂質異常症、心不全、高コレステロール血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症、II型糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症、肥満症、冠動脈疾患、血栓症、アンギナ、慢性腎不全、末梢血管疾患または卒中の治療のための、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
a)請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物およびb)1種または複数の薬学的に許容される担体を含んでなる、医薬製剤。
【請求項12】
式(A):
【化2】
の化合物をトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと混合するステップを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンの特定の新規の塩に関する。
【0002】
本発明は、詳細には、本明細書において式(IA)の化合物と呼ばれる、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(すなわち、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシメチルアミノメタン(CAS名で)、または8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(IUPAC名で)としても定義される)のトリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)塩、前記化合物を含む医薬製剤、その調製方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
PCT国際特許公開WO2005/077950(SmithKline Beecham Corporation)は、式(I):
【化1】
の治療上活性なキサンチン化合物、対応する前記化合物の製造、前記活性化合物を含む医薬製剤、および療法、特にHM74A受容体の不十分な活性化を一因とするまたは受容体の活性化が有益となる疾患の治療における化合物の使用を開示している。
【0004】
8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン化合物(すなわち遊離酸形)は、PCT国際特許出願公開WO2005/077950中の式(A):
【化2】
として実施例12に記載されている。WO2005/077950は、その全体が引用により本明細書に包含される。
【0005】
本発明はここで、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシメチルアミノメタン(CAS名で)、または8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(IUPAC名で)としても知られる、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(上記「式(A)」として識別される)の新規のトリス塩(すなわち、トリスという用語が、式(HOCH2)3CNH2を有するトリスヒドロキシメチルアミノメタンとして知られる有機化合物の略語である)を識別する。8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(A))のトリス塩は本明細書において式(IA)と呼ばれる。
【化3】
トリス塩(式(IA))は上で定義された遊離酸(式(A))より優れている。詳細には、トリス塩は、特に遊離酸形と比較した場合に、強化された物理的安定性を示すことがわかっている。「強化された物理的安定性」という用語は、トリス塩が、不可欠な製造工程中の水和によっても、その本来の形態にとどまること、および容易に別の形態に転化(または部分的に転化)しないことを意味する。対照的に遊離酸は、水性の処理ステップ中(例えば湿式造粒中)に水和した形態に容易に転化されることがわかっている。
【0006】
さらにトリス塩は、より速い吸収を示すCmaxの増加とTmaxの減少を示し、遊離酸より高い溶解性を持つ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシメチルアミノメタン(CAS名で)、または8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(IUPAC名で)としても知られる、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンの新規のトリス塩(式(IA))に関する。
【0008】
別の態様において、式(IA)の化合物は、無水物である。本発明の文脈において、無水物という用語は、結晶格子内に水が存在しないことを意味する。
【0009】
式(IA)の化合物は、非晶質または結晶である。一態様において、式(IA)の化合物は結晶である。
【0010】
一態様において、結晶形の無水物としての式(IA)の化合物は、次のピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを特徴とする:
【表1】
【0011】
別の態様において、結晶形の無水物としての式(IA)の化合物は、次のピークを含むXRPDパターンを特徴とする:
【表2】
【0012】
別の態様において、結晶形の無水物としての式(IA)の化合物は、図2に実質的に示されるようなXRPDパターンを特徴とする。
【0013】
一態様において、示差走査熱量測定法(DSC)によって、適切には、アルミニウムパンを使用し、密封しないで軽く圧縮し10℃・min−1の加熱速度で求められる212±2℃の融解開始温度を有する融解吸熱を、結晶形の無水物としての式(IA)の化合物は特徴とする。
【0014】
一態様において、結晶形の無水物としての式(IA)の化合物は、固体生成物の全反射吸収分光法赤外線(ATR−IR)スペクトル中に、3370、3041、2946、2858、1680、1656、1528、1266、1243、1078、1068、1049±1cm−1の吸収ピークを持つことを特徴とする。
【0015】
別の態様において、結晶形の無水物としての式(IA)の化合物は、図6に実質的に示されるATR−IRスペクトルを持つことを特徴とする。
【0016】
全体にわたって論じ示されてきたように、本発明は特定の固体状の結晶形を含む。このような形態を特徴づける方法はいくつか存在し、本発明は、本発明の化合物を特徴づけるのに選択される方法または使用される計測機によって限定されるべきではない。例えばX線干渉パターンに関して、当業界で知られているように試験パターンの回折ピーク強度は、主として用意された試料中の好ましい配置(結晶の非ランダム配置)により変動することがある。したがって本発明の範囲は、当業者によって認識される特性評価の変動性に照らして考慮する必要がある。
【0017】
一態様において、本発明は、式(IA)の化合物を含む薬剤組成物に関する。
【0018】
一態様において、本発明は、式(IA)の化合物の治療における使用に関する。
【0019】
別の態様において、本発明は、HM74A受容体の不十分な活性化を一因とするまたは受容体の活性化が有益となる疾患、詳細には、脂質異常症、高リポたんぱく血症、混合型脂質異常症、糖尿病性脂質異常症、心不全、過コレステリン血心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症、II型糖尿病、I型糖尿病、インシュリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症、肥満症、冠動脈疾患、血栓症、アンギナ、慢性腎不全、末梢血管疾患または脳卒中の治療に使用する式(IA)の化合物に関する。
【0020】
別の態様において、本発明は、HM74A受容体の不十分な活性化を一因とする疾患または受容体の活性化が有益となる疾患、詳細には、脂質異常症、高リポたんぱく血症、混合型脂質異常症、糖尿病性脂質異常症、心不全、過コレステリン血心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症、II型糖尿病、I型糖尿病、インシュリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症、肥満症、冠動脈疾患、血栓症、アンギナ、慢性腎不全、末梢血管疾患または脳卒中の治療に使用する薬剤の製造における式(IA)の化合物の使用に関する。別の態様において、本発明は、式(IA)の化合物の治療有効量の投与を含む、HM74A受容体の不十分な活性化を一因とする疾患または受容体の活性化が有益となる疾患、詳細には、脂質異常症、高リポたんぱく血症、混合型脂質異常症、糖尿病性脂質異常症、心不全、過コレステリン血心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症、II型糖尿病、I型糖尿病、インシュリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症、肥満症、冠動脈疾患、血栓症、アンギナ、慢性腎不全、末梢血管疾患または脳卒中の治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(IA))の無水物形トリス塩のIRスペクトルを示す図である。
図2】8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(IA))の無水物形トリス塩のX線の粉末回折を示す図である。
図3】8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(IA))の無水物形トリス塩の1H NMRスペクトルを示す図である。
図4】8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(IA))の無水物形トリス塩の13CのNMRスペクトルを示す図である。
図5】8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(IA))の無水物形トリス塩のエレクトロスプレーイオン化スペクトルを示す図である。
図6】8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(式(IA))無水物形トリス塩の全反射吸収分光法(ATR)赤外線スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書および付随の特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」および変形の「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などの語は、包括的に解釈されるべきである。すなわちこれらの語は、文脈が許せば、特に記述されない他の要素または完全体が包含され得ることを伝えるように意図している。
【0023】
本明細書において使用する用語「治療有効量」とは、例えば研究者または臨床医が求めている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き起こすであろう薬物または薬剤の量を意味する。更に、用語「治療的有効量」とは、そのような量を投与されていない対応する被験体と比較して、疾患、障害もしくは副作用の改善された治療、治癒、予防もしくは軽減、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす任意の量を意味する。この用語はまた、正常な生理的機能を増大させるために効果的な量をその範囲内に包含する。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、薬学的な使用に適切な化合物を意味する。医薬での使用に適切な式(IA)の化合物の溶媒和物は、対イオンまたは付随する溶媒が薬学的に許容されるものである。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「治療すること」または「治療」は、病気の症候の緩和および/または悪化の遅延を意味し、また無症候性の患者の症候再発の抑制を含むことができる。
【0026】
式(IA)の化合物への言及は、化合物の溶媒和物(例えば水和物)を包含する。
【0027】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が、反応する、または沈澱するもしくは結晶化する溶媒と、錯体を形成することができることを認識しているものである。
【0028】
式(IA)の化合物の溶媒和物は本発明の範囲内に包含される。本明細書において使用される場合、用語「溶媒和物」は、溶質(式(IA)の化合物)および溶媒によって形成される可変の化学量論の錯体を指す。本発明のためのそのような溶媒は、溶質の生物学的活性を妨害することはできない。適切な溶媒の例は、水、メタノール、エタノールおよび酢酸などを含むが、これらに限定されない。
【0029】
一態様において、本発明で使用される適切な溶媒(複数可)は、薬学的に許容される溶媒(複数可)である。適切な薬学的に許容される溶媒の例は、水、エタノールおよび酢酸などを含むが、これらに限定されない。本明細書において使用される場合、用語「水和物」は、水と、または水の存在下において形成される可変の化学量論の錯体を指す。本発明の一態様において、使用される溶媒は水である。
【0030】
医薬での可能性のある使用のため、一態様において、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンのトリス塩は薬学的に許容される。本発明は、式(IA)の化合物の化学量的および非化学量的な形態のすべての範囲内に含まれる。
【0031】
一態様において、本発明は、8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンのトリス塩形に関し、その溶媒和物または水和物を含むことができる。
【0032】
本発明のさらなる態様として、脂質異常症、高リポ蛋白血症、糖尿病の脂質異常症、混合型脂質異常症、心不全、高コレステロール血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症、II型糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症および肥満症の治療で使用される医薬の製造における式(IA)の化合物の使用が提供される。したがって、本化合物はまた、冠動脈疾患、血栓症、アンギナ、慢性腎不全、末梢血管疾患または卒中の治療における使用に提供される。
【0033】
さらに、本発明は、関節の炎症性疾患または症状、特に関節炎(例えば関節リウマチ、変形性関節炎、人工関節障害)の、または胃腸管(例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、および他の炎症性腸、胃腸疾患、感染に起因する胃炎および粘膜の炎症、非ステロイド系抗炎症薬により誘発される腸疾患)の、肺(例えば成人型呼吸窮迫症候群、喘息、嚢胞性繊維症または慢性閉塞性肺疾患)の、心臓(例えば心筋炎)の、神経組織(例えば多発性硬化症)の、膵臓(例えばdiabetes melitusに付随する炎症およびその合併症)の、腎臓(例えば糸球体腎炎)の、皮膚(例えば皮膚炎、乾癬、湿疹、じんましん、熱傷)の、眼(例えば緑内障)の、ならびに移植器官(例えば拒否反応)の、多臓器疾患(例えば全身性エリテマトーデス、敗血症)およびウイルスまたは細菌感染の炎症性後遺症ならびにアテローム性動脈硬化症および後続の低酸素性または虚血性損傷(再潅流を伴うまたは伴わない)に付随する炎症性症状(例えば脳の、または虚血性心疾患において)の治療で使用される医薬の製造における式(IA)の化合物の使用を提供する。
【0034】
さらなるまたは代替の態様において、HM74A受容体の不十分な活性化を一因とする、またはこの受容体の活性化が有益であろう症状を有するヒト被験体の治療方法であって、前記ヒト被験体に式(IA)の化合物の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0035】
より詳しくは、本発明は、治療を必要とするヒト被験体において、脂質異常症、高リポ蛋白血症、糖尿病の脂質異常症、混合型脂質異常症、心不全、高コレステロール血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、高トリグリセリド血症、2型糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症または肥満症、の治療方法であって、前記ヒト被験体に式(IA)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0036】
したがって、これらの化合物は、また冠動脈疾患、血栓症、アンギナ、慢性腎不全、末梢血管疾患または卒中の治療方法であって、前記ヒト被験体に式(IA)の化合物の治療有効量を投与することを含む方法にとって好都合である。
【0037】
所望の生物学的作用を達成するために必要な式(IA)の化合物の量は、当然多くの因子、例えば投与の様式およびレシピエントの正確な臨床症状に依存する。一般に、一日量は、1mgから500mg、通常5mgから250mgまたは5mgから200mgの範囲にある。例えば7.35mg、36.75mg、73.5mgまたは147mgは5mg、25mg、50mgおよび100mgの遊離酸に相当する。静脈内の用量は、例えば、0.01mgから0.1g、通常0.01mgから10mgの範囲にあってよく、毎分0.1μgから1mgの浸剤として都合よく投与することができる。この目的に対して適切な浸剤液は、例えば、1ミリリットル当たり、0.01μgから0.1mgを含んでいてもよい。単位用量は、例えば0.01μgから1gのトリス塩を含んでいてもよい。したがって、注射用のアンプルは、例えば、0.01μgから0.1g含んでいてもよく、また錠剤またはカプセル剤などの経口的に投与可能な単位用量製剤は、例えば0.1mgから1g含んでいてもよい。本発明の化合物が上記用量範囲で投与される場合、毒物学上の作用は示されない/予想されない。
薬剤組成物
【0038】
本発明の方法で使用するために、式(IA)の化合物を原体物質として投与することができるが、活性成分を医薬製剤中に与えることは好ましく、例えば、意図する投与ルートおよび標準的な薬学の慣行に関して選択される少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、この薬剤は混合される。
【0039】
したがって、本発明は、1種または複数の薬学的に許容される担体(複数可)、希釈剤(複数可)および/または添加剤(複数可)と付随して、式(IA)の化合物を含む薬剤組成物を提供する。担体、希釈剤および/または賦形剤は、組成物の他の原料と適合し、かつそのレシピエントに対して有害でないという意味において「許容」されなければならない。
【0040】
したがって、本発明は、a)式(IA)の化合物およびb)1種または複数の薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物を提供する。
【0041】
用語「担体」は、活性化合物が投与される希釈剤、賦形剤および/またはビヒクルを指す。本発明の薬剤組成物は、複数の担体の組合せを含んでいてもよい。そのような製薬担体は、水、塩水、デキストロース水溶液、グリセリン水溶液、および石油、動物、植物または合成起源のものを含むオイル(落花生油、大豆油、鉱油、ごま油など)無菌の液体であってもよい。水または塩水溶液ならびに水性のデキストロースおよびグリセリン溶液は、担体として、特に注射剤用に好ましくは使用される。適切な製薬担体はE.W. Martin,18th Edition“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。製薬担体の選択は意図する投与ルートおよび標準的な薬学の慣行に関して選択することができる。さらに、薬剤組成物は、担体に加えて、適切な結合剤(複数可)、潤滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、被覆剤(複数可)および/または可溶化剤(複数可)を含むことができる。
【0042】
製剤は、経口、直腸、局所、口腔内(例えば、舌下)および非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内または静脈内)の投与に対して適切なものを含む。投与の最も好ましい形態は経口である。
【0043】
経口投与に適する製剤は、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ロゼンジ剤などの不連続単位として提供され、その各々は、散剤もしくは粒剤として、水性もしくは非水性の液体溶液もしくは懸濁液として、または水中油型もしくは油中水型乳剤として、所定量の式(IA)の化合物を含有してもよい。一般に、製剤は、式(IA)の活性化合物を、液体もしくは微粉固体担体または両方と、一様に密接に混ぜ、また必要ならば、次に、生成物を成形することにより調製される。例えば、錠剤は、式(IA)の化合物の粉体または顆粒、場合によって1種または複数の副成分とともに圧縮または成型することにより、調製することができる。圧縮錠剤は、場合によって、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤および/または界面活性/分散剤(複数可)と混合された、粉体または顆粒などの自由流動形態のコンパウンドを、適切な機械で、圧縮することにより調製することができる。湿製錠剤は、不活性希釈液で湿らせた粉末コンパウンドを適切な機械で、成型することにより製造することができる。
【0044】
経口投与のための錠剤およびカプセル剤は、結合剤(例えば、シロップアラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、デンプンの糊液またはポリビニルピロリドン);充填材(例えばラクトース、微結晶性セルロース、砂糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウムまたはソルビトール);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ);崩壊剤(例えばジャガイモでんぷん、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム);またはラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤などの、従来からの賦形剤を含んでいてもよい。錠剤は当業界で周知の方法によって被覆することができる。経口液状調合薬は、例えば水溶性か油性の、懸濁液、溶液、乳濁液、シロップまたはエリキシルの形態をしていてもよく、または使用の前に水または他の適切なビヒクルで構成される乾燥生成物として提供することができる。そのような液状調合薬は、従来からの添加剤、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル剤、水素化食用脂など);乳化剤(例えばレシチン、ソルビタンモノオレアート、アラビアゴム);(食用油を含んでよい)非水性のビヒクル(例えば扁桃油、ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール);または防腐剤(例えばp−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)を含んでよい。その調合薬は、また適切な緩衝塩、着香剤、着色剤および/または甘味剤(例えばマンニトール)を含んでもよい。
【0045】
口腔内(舌下)投与に適切な製剤は、風味をつけた基剤(通常、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム)中に式(IA)の化合物を含むロゼンジ剤、および不活性基剤(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなど)中に式(IA)の化合物を含むトローチを含む。
【0046】
非経口的投与に適切な本発明の製剤は、式(IA)の化合物の無菌の水性調合薬を含むのが好都合である。製剤は意図するレシピエントの血液と等張とすることができる。これらの調合薬を静脈内に投与することができるが、投与は皮下、筋肉内または皮内注射によっても達成することができる。そのような調合薬は、式(IA)の化合物を水と混ぜて結果として得られる溶液を無菌および血液と等張とすることによって調製することができる。本発明による注射可能な組成物は、一般的に0.1から5重量/重量%の式(IA)の化合物を含む。
【0047】
したがって、本発明による化合物を含む非経口的投与に適切な本発明の製剤は、大量注射または持続注入による非経口的投与用に製剤化することができ、また、例えば、アンプル、バイアル、少量の浸剤またはプレフィルドシリンジとして、単位用量形態で、または添加防腐剤を含む多用量容器で提供することができる。組成物は、水性または非水性のビヒクル中で溶液、懸濁液または乳濁液などの形態をとることができ、また抗酸化剤、緩衝剤、抗菌薬および/または毒性調節剤などの製剤化剤を含んでいてもよい。代替として、活性成分は、使用の前に適切なビヒクル(例えば無菌の、発熱性物質を含まない水)で構成するための粉末形態であってもよい。乾燥固体組成物(dry solid presentation)は、無菌粉末を個々の無菌容器内に無菌で充填することによって、または無菌溶液を各容器内に無菌で充填し、凍結乾燥することによって調製することができる。
【0048】
直腸投与に適切な製剤は単位用量坐薬として提供することができる。これらは、1種または複数の従来の固体の担体、例えば、カカオ脂またはグリセリドと、式(IA)の化合物を混ぜ、次いで結果として得られる混合物を成形することにより調製することができる。
【0049】
[11] 皮膚への局所塗布に適切な製剤は、軟膏、クリーム剤、ローション剤、パスタ剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤またはオイル剤の形態をとってもよい。使用することができる担体は、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコールおよびこれらの2種以上の組合せを含む。式(IA)の化合物は、一般に、組成物の0.1から15重量/重量%、例えば0.5から2%の濃度で存在する。
【0050】
本明細書において使用される局所投与によって、本発明者らはガス注入法および吸入による投与を含む。局所投与についての様々なタイプの製剤の例は、吸入器または注入器、または点滴薬(例えば点眼または点鼻剤)で使用される、軟膏、クリーム剤、ローション剤、散剤、ペッサリー、スプレー剤、エアゾール剤、カプセル剤またはカートリッジを含む。
【0051】
軟膏およびクリーム剤は、例えば、水性または油性の基剤を用いて、適切な増粘剤および/またはゲル化剤および/または溶媒を添加して製剤化することができる。したがって、そのような基剤は、例えば、水および/または流動パラフィンまたは落花生油もしくはヒマシ油などの植物油などのオイル、またはポリエチレングリコールなどの溶媒を含むことができる。使用することができる増粘剤は、液性パラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、微結晶ワックスおよびみつろうを含む。
【0052】
ローション剤は水溶性または油性の基剤を用いて製剤化され、一般に、1種または複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤または増粘剤を含む。
【0053】
外用のための散剤は、任意の適切な粉末基剤、例えば、タルク、ラクトースまたはデンプンの助力により形成することができる。点滴薬は、一種または複数の分散剤、可溶化剤または懸濁化剤を含む水性または非水性基剤を用いて製剤化することができる。
【0054】
スプレー組成物は、例えば、加圧パックから送達される水性の溶液もしくは懸濁液として、またはエアゾールとして、適切な推進薬(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2−tetrafluorethane、二酸化炭素または他の適切なガス)を使用して製剤化することができる。
【0055】
吸入器または注入器において使用するための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本発明の化合物と適切な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンとの粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0056】
本発明による薬剤組成物を、他の治療活性剤と組み合わせ、例えば、他の種類の脂質異常症薬(例えば、スタチン、フィブレート、胆汁酸結合樹脂またはニコチン酸)と併用することもできる。
【0057】
式(IA)の化合物を、1種または複数の他の治療活性剤と組み合わせ、例えば他の種類の脂質異常症薬、例えば、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリール−補酵素A還元酵素阻害薬(スタチン)もしくはフィブレートまたは胆汁酸結合樹脂もしくはニコチン酸と併用することができる。
【0058】
一態様において、本発明は、a)式(IA)の化合物およびb)1種または複数の治療活性剤を含んでなる組合せを提供する。
【0059】
したがって、本発明は、さらなる実施形態において、HM74A受容体の不十分な活性化を一因とする、または該受容体の活性化が有益である疾患の治療におけるそのような組合せの使用、ならびに脂質異常症、高リポ蛋白血症、糖尿病の脂質異常症、混合型脂質異常症、心不全、高コレステロール血症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症および高トリグリセリド血症、II型糖尿病、I型糖尿病、インスリン抵抗性、高脂血症、神経性食欲不振症または肥満症の組合せ治療のための医薬の製造における式(IA)の化合物の使用を提供する。
【0060】
本発明の化合物が他の治療剤と組み合わせて使用される場合、化合物は任意の都合のよい経路によって連続してまたは同時に投与することができる。
【0061】
上に言及された組合せは、医薬製剤の形態での使用に都合よく提供することができ、薬学的に許容される担体または賦形剤と一緒に上に最適に定義される組合せをこのようにして含む医薬製剤は、本発明のさらなる態様を含む。そのような組合せの個々の成分は、別々の医薬製剤または混ぜ合わせた医薬製剤で連続してまたは同時に投与されてもよい。
【0062】
同一の製剤に組み合わせる場合、2つの成分が安定で、かつ、互いおよび製剤の他の成分と適合しなければならず、投与に対して製剤化することができることが認識されよう。別々に製剤化される場合は、当分野でその種の化合物について知られている方法で都合よく、任意の好都合な製剤で提供することができる。
【0063】
同じ疾患に対して活性を有する第2の治療剤と組み合わせる場合、各成分の用量は、本化合物が単独で使用される場合の用量と異なっていてもよい。適切な用量は、当業者に容易に認識されるだろう。
【0064】
したがって本発明は、さらなる態様において、他の治療活性剤と一緒に式(IA)の化合物を含んでなる組合せを提供する。ナイアシンまたはアトロバスタチンナトリウムである他の治療活性剤の例。
【0065】
上に言及された組合せは、医薬製剤の形態での使用に対して都合よく提供することができる。したがって、その薬学的に許容される担体と一緒に上に定義される組合せを含む医薬製剤は、本発明のさらなる態様を表す。
【0066】
本発明の化合物は有用な作用持続時間を有する。
調製の方法
【0067】
本発明は、以下のスキーム1に示される8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンのトリス塩を調製する方法をさらに提供する。スキーム1:
【化4】
【0068】
ステージ1、2、3、4および5は国際公開第2005/077950号に記載される通りであり、これはその全体を参照として組み込む。
【0069】
ステージ1:臭化アリルを用いるグアノシンのアルキル化
ステージ2:亜硝酸ナトリウムを用いるジアゾ化およびそれに続くキサンチンを形成するための加水分解
ステージ3:塩素化
ステージ4:N3位のアルキル化ならびに/またはN1位およびN3位のジアルキル化
ステージ5:パラジウム触媒によるアリル基の除去
【0070】
代替として、ステージ5もジメチルバルビツル酸を用いる脱保護により行うことができる。
【0071】
トリス塩を調製する最終ステージは、下記に示すトリスヒドロキシメチルアミノメタンと式(A)の化合物の反応である。
【化5】
【0072】
以下に述べる実施例は、本発明の例証であって、決して本発明の範囲を限定するようには意図されない。
実施例
実施例1:8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシルメチルアミノメタン塩(すなわち8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン−2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(IUPAC名)としても公知)
【0073】
10容積のアセトニトリル中で8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン1.0グラムのスラリーを形成し、これに水1.2容積中のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン1.1当量を添加した。反応混合物を加熱して約75から77℃で還流し、前述の成分を溶解した。成分は初め溶解し、迅速で自発的な結晶形成が続いた。8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシルメチルアミノメタン塩の結晶は濾過によって単離した(生成物収率:94%)。
実施例2:8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシルメチルアミノメタン塩の調製
【0074】
スラリーを8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(22kg、およそ16%の水を含む)およびアセトン(125L)から形成し、これに、水(79.8kg)中のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(9.3kg)の溶液を室温で添加した。還流温度に近いおよそ55℃に加熱した後、この溶液を55℃で1.2ミクロンのフィルターカートリッジを通して濾過し、バッチ温度を61から63℃に調節した。
【0075】
30分間保持した後、その溶液は53から57℃に冷却し、種結晶(0.062kg)をまいたが、これは同じ方法でアセトン水晶出から得られたか、または上記実施例1の手順でアセトン(2L)中のスラリーとして得られた。この工程において、晶出は、粒子サイズの制御を提供し、かつ所望の生成物の形態を確実に得るために種をまく。その混合物は53から57℃で1時間撹拌した。次いで、結果として得られたスラリーは、撹拌しながら18から22℃に徐々に冷却し、アセトン(75L)を30分にわたり装填した。18から22℃で30分間撹拌した後、結果として得られたスラリーを−5から0℃に冷却し、18時間保持し、濾過し、予め冷却された(−5から0℃)アセトン(75L)を用いて洗浄した。結果として得られた8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシルメチルアミノメタン塩は真空下で45から50℃で乾燥した。収量:18.2kg(67%収率)。
実施例3:8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシルメチルアミノメタン塩の調製
【0076】
8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオン(29kg)を約90から100°Cの高温でDMSO(40L)に溶解し、5ミクロンのフィルターを通して濾過し、続いてDMSO(13L)で管路洗浄した。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(15.1kg)を水(44L)に溶解し、5ミクロンのフィルターを通して濾過して親酸と同一の容器に入れ、続いて水(15L)で管路洗浄した。次いで、容器の内容物をおよそ95℃に加熱し、透明な溶液が得られたことを確認した。内容物は88℃に冷却し、種結晶をまいたが、これは、同じ方法でアセトン水晶出から得られたか、または上記実施例1の手順で得られた。この工程において、晶出は、粒子サイズの制御を提供し、かつ所望の生成物の形態を確実に得るために種をまく。種のあるスラリーは、およそ30分間保持し、0℃に冷却した。生成物を、濾過によって単離し、〜5℃のDMSO/水(1:1、58L)および〜5℃のアセトン(2×58L)を用いて洗浄した。結果として得られた生成物は真空下で50℃で乾燥した。収量:35.4kg(83%収率)
実施例4:8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオントリスヒドロキシルメチルアミノメタン塩製剤の調製
【0077】
【表3】
36.75mg、73.50mgまたは147.00mgの量のトリス塩が、1.47の変換係数で算定して、25mg、50mgまたは100mgの遊離酸それぞれを得るために必要である。
薬物物質の量は純度アッセイに基づいて調節することができる。
水は加工中に除去する。
植物起源。
トリス塩、マンニトール粉末、ポビドン、クロスポビドンおよび純水は、液床造粒機を用いて造粒した。次いで、液床を乾燥した。次いで、造粒物は、微結晶性セルロース、クロスポビドンおよびステアリン酸マグネシウムとブレンドし、タブレット成形機で圧縮した。次いで、結果として得られた錠剤を、opadryの水溶性のフィルムコーティングおよび水で覆った。
【0078】
ポビドン(ポリビニルピロリドン)は、BASF Chemicalsによって供給される、直鎖状の1−ビニル−2−ピロリドン基からなる平均分子量約10,000から約700,000の範囲の合成高分子である。ポビドンは造粒工程の間、結合剤として使用される。
【0079】
クロスポビドンは架橋したポビドンで、錠剤中で2から5%の濃度で使用される水不溶性の錠剤崩壊剤および溶解剤である。これはBASF Chemicalsによって供給される。
【0080】
Opadry White OY−S−9603 はColorconによって供給される商標のフィルムコーティング材料である。
Opadry White OY−S−9603 Aqueous Film Coating.の製造および管理についてはColorcon Drug Master File Number 721を参照する。
【0081】
本発明によると、本発明の化合物(すなわちその溶媒和物を含む)の様々な形態は、異なる特性評価または同定法を使用して、互いを識別する。そのような手法は、固体13C核磁気共鳴(NMR)、31P核磁気共鳴(NMR)、赤外線(IR)、ラマン、X線粉末回析など、および/または示差走査熱量測定(DSC)(すなわち、加熱し、冷却し、または一定温度で保持するときに試料に吸収されまたは放出されるエネルギー量(熱量)を測定する手段)などの他の手法を含む。
【0082】
具体的には、本発明のトリス塩は、図1から6に記載されたデータによって実質的に示す。
【0083】
下記の特性データを、本発明(式(IA))の8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンのトリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリス)塩について作成した。
【0084】
スペクトルおよび回析データは、用いる温度、濃度および計測などの様々な因子によって多少変動することが認識されるであろう。
実施例5:紫外/可視吸収スペクトル
【0085】
紫外/可視吸収スペクトルはアセトニトリル:水、95:5において得られた。トリス塩0.02mg/mlの試料を調製し、1cmの路長で分析した。スペクトルは、Varian Cary 50分析装置で300nm/分のスキャン速度で収集した。
【表4】
実施例6:示差走査熱量測定(DSC):
融点
【0086】
本発明のトリス塩の融点または温度特性は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて調べた。溶融の開始は、典型的には212℃±2℃で観察される。DSCトレースはTA Q1000熱量計を使用して得られた。試料を、アルミニウムパンに量り取り、パン蓋を上に置き、パンを密閉せずに軽く圧縮した。試験は10*C分−1の加熱速度を使用して行った。
実施例7および8:Hおよび13C核磁気共鳴スペクトル
【0087】
HNMRスペクトルは400MHzのVarian分析装置で298Kで得られた。試料をDMSO−dに溶解し、化学シフトは0ppmのテトラメチルシラン(TMS)シグナルに対するppmで報告した。結合定数(J)の単位はヘルツ(Hz)である。分裂パターンは見かけの多重度を記載し、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、dd(2重の二重線)、dt(2重の三重線)、m(多重線)、br(ブロード)で示す。
【0088】
HNMR(400MHz、DMSO−d)δppm:10.07−5.41(br,7H)、3.80(t,2H)、3.52(s,6H)、1.61(m,2H)、1.29(m,1H)、1.28(m,2H)、0.86(t,3H)
【0089】
13CNMRスペクトルは100MHzのVarian分析装置で298Kで得られた。試料はDMSO−dに溶解し、化学シフトは0ppmのTMSシグナルに対して報告した。
【0090】
13CNMR(100MHz、DMSO−d、25mg/mL、25℃)δppm:157.0、151.0、150.9、142.8、115.2、61.0、59.4、42.0、28.4、27.3、22.0、13.9
実施例9:プラスイオンエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル
【0091】
質量スペクトルをQ−TOF Premier LC−MSで採取した。試料をアセトニトリル/水に溶解し、エレクトロスプレーイオン化によってイオン化した。脱溶媒ガス温度は350℃であり、脱溶媒ガス流速は600L/時間であった。スプレー電圧は3.5kVであり、ソース温度は120℃に維持した。衝突ガス流速は0.5ml/分であった。
【0092】
プロトン化分子の正確な質量は257.0804Daで測定した。このイオンの算定質量は257.0805Daである。MS(m/z):257.0804Da[M+H]:187、170、144(測定値は、0.3ppmの誤差でこのイオンの元素組成と一致する。)
実施例10:赤外線スペクトル(IR)
【0093】
ATR赤外線スペクトル:ピーク波数(cm−1)3370、3041、2946、2858、1680、1656、1528、1266、1243、1078、1068、1049.
【0094】
DATR赤外線スペクトルは、SensIR Travel IR DATRで分解能4cm−1、128回スキャンして得られた。
実施例11:X線粉末回析(XRPD)
【0095】
本発明の8−クロロ−3−ペンチル−3,7−ジヒドロ−1H−プリン−2,6−ジオンのトリス塩は、X線粉末回析(XRPD)データに示すように結晶性であり、図2に示す通りである。
【0096】
図2に示すX線粉末回折図(XRPD)は、X’Celerator検出器が搭載され、固定発散スリットを用いるPANalytical X’Pert Pro粉末回折計で得られた。取得条件は次のとおりであった:照射:CuKα、発生器圧:40kV、発生器電流40mA、開始角度:2.0度2シータ、終了角度40度2シータ、ステップサイズ0.017度2シータ。試料をデータ収集の間、回転した。特徴的なXRPD角度およびd間隔は表1に記録する。
【0097】
表1:特徴的なXRPDピーク角度およびd間隔
当業者は、XRPDピーク位置が試料高さの違いによって影響されることを認識するだろう。したがって本明細書において引用したピーク位置は、+/−0.2度2シータの変動を受ける。
【表5】
実施例12:元素分析
【0098】
トロメタミン(トリス)塩の化学量論は提示した元素分析データによって確認され、対応する分子式に対して理論値と一致している。
【表6】
【0099】
本発明が上記に例証された実施形態に限定されず、例証された実施形態および、以下の特許請求の範囲の範囲内である、すべての修正に権利が留保されることは理解されるべきである。
【0100】
本明細書において引用される雑誌、特許および他の刊行物への様々な言及は、現状技術を含み、また、あたかもすべて述べたかのように参照により本明細書に組み込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6