(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666491
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】個人使用電力監視装置、個人使用電力監視システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/28 20060101AFI20150122BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20150122BHJP
G06F 1/32 20060101ALI20150122BHJP
G06Q 10/10 20120101ALI20150122BHJP
【FI】
G06F1/00 333Z
G06F1/00 334J
G06F1/00 332
G06Q10/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-29134(P2012-29134)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-167923(P2013-167923A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
【審査官】
征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−208173(JP,A)
【文献】
特開2007−132804(JP,A)
【文献】
特開2011−164933(JP,A)
【文献】
特開2011−155744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F1/26−1/32
G06Q10/00−10/10;30/00−30/08;
50/00−50/20;50/26−99/00
G08B23/00−31/00
G01R11/00−11/66;21/00−22/04;
35/00−35/06
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ユーザが入室した日時又は退室した日時を含む入退室情報を取得する入退室情報取得手段と、
室内に設けられた各ユーザの座席において計測により得られた各ユーザの使用電力及びその計測された日時を含む使用電力情報を取得する使用電力情報取得手段と、
前記入退室情報及び前記使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶手段に登録する生成手段と、
前記個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する解析手段と、
前記解析手段により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする個人使用電力監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の個人使用電力監視装置において、
前記解析手段は、退室前後において計測により得られた使用電力を比較した結果、退室前に対する退室後における使用電力の減少量又は減少率が、予め設定された閾値に達しない場合に、当該ユーザの節電行動は無いと判断することを特徴とする個人使用電力監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の個人使用電力監視装置において、
前記解析手段は、退室前後において計測により得られた使用電力に前記閾値に達するほどの差異がない場合でも、退室前における使用電力が予め設定された節電基準値を下回っている場合には、当該ユーザの節電行動は有ると判断することを特徴とする個人使用電力監視装置。
【請求項4】
請求項1に記載の個人使用電力監視装置において、
前記通知手段は、前記解析処理手段により節電行動が無いと判断されたユーザに代えて、あるいは当該ユーザとととも当該ユーザの管理者に、節電行動が無い旨を通知することを特徴とする個人使用電力監視装置。
【請求項5】
各ユーザが入室した日時又は退室した日時を含む入退室情報を収集し蓄積する入退室管理サーバと、
室内に設けられた各ユーザの座席において計測により得られた各ユーザの使用電力及びその計測された日時を含む使用電力情報を収集し蓄積する電力管理サーバと、
個人使用電力監視装置と、
を有し、
前記個人使用電力監視装置は、
前記入退室情報を前記入退室管理サーバから取得する入退室情報取得手段と、
前記使用電力情報を前記電力管理サーバから取得する個人使用電力情報取得手段と、
前記入退室情報及び前記使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶手段に登録する生成手段と、
前記個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する解析手段と、
前記解析手段により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする個人使用電力監視システム。
【請求項6】
コンピュータを、
各ユーザが入室した日時又は退室した日時を含む入退室情報を取得する入退室情報取得手段、
室内に設けられた各ユーザの座席において計測により得られた各ユーザの使用電力及びその計測された日時を含む使用電力情報を取得する個人使用電力情報取得手段、
前記入退室情報及び前記使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶手段に登録する生成手段、
前記個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する解析手段、
前記解析手段により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する通知手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の使用電力を監視する装置、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、企業における節電(省エネ)対策として、座席を離れる際にパーソナルコンピュータ(PC)をスリープモードにしたり、PCのモニタや卓上の照明器具のスイッチをオフにしたりするなど節電を促進すべき運用が行われている場合が少なくない。
【0003】
例えば、特許文献1では、最終退室者による照明機器等の消し忘れを検出した場合に、その最終退室者を記録する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−164933号公報
【特許文献2】特開2004−110778号公報
【特許文献3】特開平11−249765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現実には、従業員の主体性に委ねるだけで節電のための行動が徹底されていない可能性がある。また、従来技術においては、記録の対象となる者は最終退室者となった者だけに限定されている。
【0006】
本発明は、室内における個人毎の使用電力を把握して個人単位での節電対策の喚起を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る個人使用電力監視装置は、各ユーザが入室した日時又は退室した日時を含む入退室情報を取得する入退室情報取得手段と、室内に設けられた各ユーザの座席において計測により得られた各ユーザの使用電力及びその計測された日時を含む使用電力情報を取得する使用電力情報取得手段と、前記入退室情報及び前記使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶手段に登録する生成手段と、前記個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する解析手段と、前記解析手段により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する通知手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記解析手段は、退室前後において計測により得られた使用電力を比較した結果、退室前に対する退室後における使用電力の減少量又は減少率が、予め設定された閾値に達しない場合に、当該ユーザの節電行動は無いと判断することを特徴とする。
【0009】
また、前記解析手段は、退室前後それぞれにおいて計測により得られた使用電力に前記閾値に達するほどの差異がない場合でも、退室前における使用電力が予め設定された節電基準値を下回っている場合には、当該ユーザの節電行動は有ると判断することを特徴とする。
【0010】
また、前記通知手段は、前記解析処理手段により節電行動が無いと判断されたユーザに代えて、あるいは当該ユーザとととも当該ユーザの管理者に、節電行動が無い旨を通知することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る個人使用電力監視システムは、各ユーザが入室した日時又は退室した日時を含む入退室情報を収集し蓄積する入退室管理サーバと、室内に設けられた各ユーザの座席において計測により得られた各ユーザの使用電力及びその計測された日時を含む使用電力情報を収集し蓄積する電力管理サーバと、個人使用電力監視装置と、を有し、前記個人使用電力監視装置は、前記入退室情報を前記入退室管理サーバから取得する入退室情報取得手段と、前記使用電力情報を前記電力管理サーバから取得する個人使用電力情報取得手段と、前記入退室情報及び前記使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶手段に登録する生成手段と、前記個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する解析手段と、前記解析手段により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する通知手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、各ユーザが入室した日時又は退室した日時を含む入退室情報を取得する入退室情報取得手段、室内に設けられた各ユーザの座席において計測により得られた各ユーザの使用電力及びその計測された日時を含む使用電力情報を取得する個人使用電力情報取得手段、前記入退室情報及び前記使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶手段に登録する生成手段、前記個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する解析手段、前記解析手段により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する通知手段、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、室内における個人毎の使用電力を把握して個人単位での節電対策の喚起を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る個人使用電力監視システムの一実施の形態を示した全体構成及び本発明に係る個人使用電力監視装置の一実施の形態を示したブロック構成を示した図である。
【
図2】本実施の形態における個人使用電力監視装置を形成するサーバコンピュータのハードウェア構成図である。
【
図3】本実施の形態における個人使用電力情報記憶部に記憶される個人使用電力情報の一例を示した図である。
【
図4】本実施の形態における個人使用電力監視処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る個人使用電力監視システムの一実施の形態を示した全体構成及び本発明に係る個人使用電力監視装置の一実施の形態を示したブロック構成を示した図である。
図1には、入退室管理サーバ1、カードリーダコントローラ2、ビル管理サーバ3、モニタコントローラ4及び個人使用電力監視装置20がネットワーク5により接続された構成が示されている。
【0017】
更に、
図1には、本システムにおいて、個人単位での使用電力の監視を行う部屋6が示されている。なお、各部屋6における構成は、同じでよいので、
図1には、1つの部屋6のみを図示した。部屋6の出入口7には、入室者が入室する際にICカードがかざされるカードリーダ8aと、退室者が退室する際にICカードがかざされるカードリーダ8bとが設置される。なお、カードリーダ8aとカードリーダ8bとを総称する場合、「カードリーダ8」と記す。ICカードには、ICカードを携帯するユーザを特定するための識別情報としてユーザIDが記録されている。また、部屋6の中には、ある部署に所属する従業員の座席9が複数配置されている。もちろん、本発明は、1つの座席のみが置かれた個室にも適用可能である。使用電力計測器10は、座席毎に対応させて設置される。各従業員は、PC、扇風機等の季節家電、携帯電話、あるいは卓上の照明器具等の電気機器を自分の座席9において使用するが、各使用電力計測器10には、各座席9において利用される電気機器が接続される。これにより、使用電力計測器10は、個人毎の使用電力をリアルタイムに計測することになる。
【0018】
本実施の形態は、従業員の入退室を管理する入退室管理システム及び施設における使用電力を監視、管理するビル管理システムと連係して動作する。
【0019】
入退室管理システムには、各部屋6の出入口7に設置されるカードリーダ8、部屋毎に対応して設けられるカードリーダコントローラ2及び1又は複数台のカードリーダコントローラ2が接続され入退室管理を行う入退室管理サーバ1が含まれている。ICカードの携帯者がICカードをカードリーダ8にかざすと、カードリーダ8は、ICカードから少なくともユーザIDを読み取り、その読み取ったユーザID、読取日時及び自装置の識別情報を含む情報を送信する。カードリーダコントローラ2は、ICカードを読み取ることによりカードリーダ8から送られてくる情報を収集し、入退室管理サーバ1へ送信する。入退室管理サーバ1は、カードリーダコントローラ2を介してカードリーダ8から送信されてくる情報を取得すると、ユーザID、当該ユーザの入退室日時及び入室/退室の別を含む入退室情報を生成して、所定の入退室情報データベースに登録する。入退室管理サーバ1は、カードリーダ8の識別情報と、当該カードリーダ8の設置場所を特定する情報(設置された部屋6及び出入口7の入側/出側)とを対応付けたデータベースを有しているので、取得した情報に含まれるカードリーダ8の識別情報から当該ユーザの行動が入室か退室かを判別できる。入退室管理システムでは、このように入退室情報を蓄積していくことで、従業員の入退室を管理する。
【0020】
なお、入退室管理サーバ1には、前述したデータベース以外にも、部署と、当該部署が使用している部屋と、当該部署の上長及び当該部署に所属しかつ当該部屋に座席を持つ従業員の各識別情報を対応付けしたグループ情報を格納するグループ情報データベースを有している。更に、各ユーザの連絡先としての各ユーザの電子メールアドレスを当該ユーザIDと対応付けた個人情報を格納する個人情報データベースを有している。
【0021】
一方、ビル管理システムには、各座席9に対応して設置された使用電力計測器10、部屋毎に対応して設けられるモニタコントローラ4及び1又は複数台のモニタコントローラ4が接続され使用電力の監視を行うビル管理サーバ3が含まれている。各座席で使用される電気機器は、全て使用電力計測器10に接続されており、使用電力計測器10を介して電力の供給を受ける。なお、電力線に関しては、図から省略している。使用電力計測器10は、予め設定された送信間隔(例えば、1分)で、その送信時点において計測した使用電力、計測日時及び自器の識別情報を含む情報を送信する。モニタコントローラ4は、使用電力計測器10から定周期で送信されてくる情報をビル管理サーバ3へ送信する。ビル管理サーバ3は、モニタコントローラ4を介して使用電力計測器10から送信されてくる情報を取得すると、ユーザID、計測日時及び計測した使用電力を含む使用電力情報を生成して、所定の使用電力情報データベースに登録する。ビル管理サーバ3は、使用電力計測器10の識別情報と、使用電力計測器10が設置された座席9を使用するユーザのユーザIDとを対応付けたデータベースを有しているので、取得した情報に含まれる使用電力計測器10の識別情報から電力を使用したユーザを特定する。ビル管理システムでは、このように使用電力情報を蓄積していくことで、ビル管理の一機能として各従業員の使用電力を監視する。
【0022】
図2は、本実施の形態における個人使用電力監視装置20を形成するサーバコンピュータのハードウェア構成図である。本実施の形態において個人使用電力監視装置20を形成するサーバコンピュータは、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータは、
図2に示したようにCPU31、ROM32、RAM33、ハードディスクドライブ(HDD)34を接続したHDDコントローラ35、入力手段として設けられたマウス36とキーボード37、及び表示装置として設けられたディスプレイ38をそれぞれ接続する入出力コントローラ39、通信手段として設けられたネットワークコントローラ40を内部バス41に接続して構成される。なお、入退室管理サーバ1及びビル管理サーバ3も同じコンピュータであることから、そのハードウェア構成は、
図2と同じように図示することができる。
【0023】
図1に戻り、個人使用電力監視装置20の構成について説明する。個人使用電力監視装置20は、入退室情報取得部21、使用電力情報取得部22、実績記録部23、管理情報取得部24、解析部25、通知部26、制御部27及び個人使用電力情報記憶部28を有している。入退室情報取得部21は、入退室管理サーバ1から入退室情報を取得する。使用電力情報取得部22は、ビル管理サーバ3から使用電力情報を取得する。実績記録部23は、生成手段として設けられ、取得された入退室情報及び使用電力情報から一定時間毎の各ユーザの使用電力及び在室状況を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶部28に登録する。解析部25は、個人使用電力情報記憶部28に記憶されている個人使用電力情報を解析することによって各ユーザの退室時における節電行動の有無を判断する。ここで、「節電行動」というのは、退室する際にPCをスリープモードにしたり、PCのモニタや卓上の照明器具のスイッチをオフにしたりするなど使用電力を減少させる行動のことをいう。通知部26は、解析部25により節電行動が無いと判断されたユーザに対して、その旨を通知する。管理情報取得部24は、電子メールアドレスなど通知部26による通知に必要な情報を入退室管理サーバ1から取得する。制御部27は、各構成要素21〜26と連携動作して処理を実行するなど個人使用電力監視装置20における処理の全体制御を行う。
【0024】
図3は、本実施の形態における個人使用電力情報記憶部28に記憶される個人使用電力情報の一例を示した図である。個人使用電力情報は、ユーザ毎に、使用電力が計測された日時、当該計測日時において計測された使用電力及び当該日時における当該ユーザの在室/不在の別を示す在室情報として在室中フラグが対応付けして生成される。本実施の形態では、在室中の場合をフラグ値“1”、退室中(不在)の場合をフラグ値“0”としている。個人使用電力情報は、ユーザ毎に生成されるが、更に日などの一定期間毎に分割して生成してもよい。
【0025】
個人使用電力監視装置20における各構成要素21〜27は、個人使用電力監視装置20を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU31で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、個人使用電力情報記憶部28は、個人使用電力監視装置20に搭載されたHDD34にて実現してもよい。あるいは、ネットワーク5を介してアクセス可能な他のコンピュータ上に設けてもよい。
【0026】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPU31がプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0027】
次に、本実施の形態における動作について説明する。本実施の形態においては、個人使用電力情報を生成する個人使用電力情報生成処理と、その生成した個人使用電力情報に基づき節電行動を喚起する通知を行う個人使用電力監視処理とに、大別できる。まず最初に、個人使用電力監視処理を実施するために必要な個人使用電力情報を生成する処理について説明する。
【0028】
前述したように、入退室管理システムにおいては、従業員が部屋6に入退室する度にユーザID、当該ユーザの入退室日時及び入室/退室の別を含む入退室情報が生成され、入退室管理サーバ1に蓄積される。一方、ビル管理システムにおいては、所定の一定周期毎(本実施の形態においては、1分毎)に各座席9において計測された使用電力、計測された座席9を使用するユーザのユーザID及び計測日時を含む使用電力情報が生成され、ビル管理サーバ3に蓄積される。使用電力情報取得部22は、使用電力計測器10における送信間隔に合わせて1分毎に、まだ取得していない使用電力情報をビル管理サーバ3から取得する。換言すると、直前に蓄積された使用電力情報をビル管理サーバ3から取得する。入退室情報取得部21は、使用電力情報取得部22における情報取得の周期に合わせて入退室管理サーバ1から入退室情報を取得する。各情報取得部21,22が直前の情報をそれぞれ取得すると、実績記録部23は、取得された入退室情報及び使用電力情報から計測日時における使用電力及び在室情報を含む個人使用電力情報を生成し、個人使用電力情報記憶部28に登録する。個人使用電力情報に含まれる日時及び使用電力は、使用電力情報に含まれる計測日時及び使用電力であり、個人使用電力情報に含まれる在室情報(在室中フラグ)は入退室情報に含まれる入室/退室の別からフラグ値を設定する。具体的には、在室中でないユーザに対し、入室があった旨を示す入退室情報が取得された場合、当該ユーザの在室中フラグには在室を示す“1”が設定される。在室中であるユーザに対し、退室があった旨を示す入退室情報が取得された場合、当該ユーザの在室中フラグには不在を示す“0”が設定される。また、入退室情報が取得されなかったユーザの在室中フラグには直前のフラグ値がそのまま引き継がれる。以上のようにして、
図3に例示した個人使用電力情報がユーザ毎に生成される。
【0029】
次に、本実施の形態における個人使用電力監視処理について
図4に示したフローチャートを用いて説明する。この個人使用電力監視処理は、以降に説明する処理の内容から理解できるように、1就業日の終了後などのように定時処理として実行してもよいし、1分周期又は1時間周期等所定の時間間隔毎に定周期処理として実行してもよい。また、個人使用電力監視処理は、必ずしも全ユーザをまとめて実行する必要はなく、コンピュータの処理負荷を考慮して、部署単位など全ユーザを複数のグループに分割して、所定のタイミングで実行するようにしてもよい。ここでは、1就業日の終了後に全ユーザに対して処理を実施するものとして説明する。
【0030】
個人使用電力監視処理を実現するプログラムは、管理情報取得部24、解析部25及び通知部26における各処理機能を含み、制御部27により所定のタイミングで起動される。
【0031】
プログラムが起動されると、解析部25は、まだ解析の対象としていないユーザの個人使用電力情報を個人使用電力情報記憶部28から取得する(ステップ110)。そして、次のような個人使用電力情報の解析を行うことで当該ユーザの節電行動の有無を判断する(ステップ120)。
【0032】
例えば、
図3に示した個人使用電力情報群51の設定例を参照すると、当該ユーザは、9時に出社して座席9にある電気機器のスイッチを順次オンにしていることが想像できる。ここでは、ユーザは、在室中であって節電行動をする必要性は特にないと判断する。
【0033】
図3に示した次の個人使用電力情報群52の設定例を参照すると、当該ユーザは、在室中であって退室していないため節電行動をする必要性は特にないと判断する。もちろん、在室中であっても使用電力値が大きい場合、具体的には予め設定された使用電力上限値を上回る電気機器の使用をしているユーザに対しては、節電行動を喚起する通知を行うようにしてもよい。
【0034】
図3に示した次の個人使用電力情報群53の設定例を参照すると、当該ユーザは、12時に退室しており、このタイミングで使用電力が大幅に減少している。従って、ユーザは、電気機器のスイッチをオフにするなどの節電行動を行ったと判断する。
【0035】
図3に示した次の個人使用電力情報群54の設定例を参照すると、当該ユーザは、15時に退室しているが、このタイミングで使用電力がそれほど減少していない。従って、ユーザは、電気機器のスイッチをオフにするなどの節電行動を行っていないと判断する。
【0036】
図3に示した次の個人使用電力情報群55の設定例を参照すると、当該ユーザは、18時に退室しており、このタイミングで使用電力が大幅に減少して0になっている。従って、ユーザは、電気機器のスイッチをオフにするなどの節電行動を行ったと判断する。なお、この場合、使用電力が0なので退社したと想像できる。
【0037】
ここで、節電行動の有無の判断について詳細に説明する。本実施の形態において節電行動の有無は、退室時における使用電力の減少の程度によって判断している。ここで、「退室時」というのは、在室中フラグの値が“1”から“0”に変更された日時である。減少の程度には、減少量と減少率とが考えられる。「減少量」というのは、退室時点における計測電力とその直前の計測電力とを比較した結果、退室直前に対する退室時における使用電力の減少量のことをいう。個人使用電力情報群54の設定例では、250Wから240Wに減少しているので、この場合の減少量は10Wである。また、「減少率」というのは、退室が検出された時点における計測電力とその直前の計測電力とを比較した結果、退室直前に対する退室時における使用電力の減少の割合のことをいう。個人使用電力情報群54の設定例では、250Wから240Wに減少しているので、この場合の減少率は(250−240)/250=4%である。
【0038】
従って、退室前後の使用電力の減少量又は減少率を算出し、その算出値を予め設定された閾値と比較し、その閾値に達しない場合には当該ユーザの節電行動は無いと判断する。例えば、減少量の閾値として50Wと設定されていれば、個人使用電力情報群54の設定例では、減少量は10Wであり閾値の50Wに達していないので節電行動は無いと判断する。また、減少率の閾値として5%と設定されていれば、個人使用電力情報群54の設定例では、減少率は4%であり5%に達していないので節電行動は無いと判断する。
【0039】
この閾値は、企業の節電目標に基づき設定したり、通常の電気機器の使用状況から設定してもよい。また、閾値は、全ユーザに共通して設定してもよいし、各個人の電気機器の保有台数や種類、あるいは役職レベル、部署、職務等に基づきグループ毎やユーザ毎に設定してもよい。なお、各個人の部署等の情報は、管理情報取得部24が入退室管理サーバ1などから取得する。
【0040】
ところで、人によっては、ある日に行っている業務がPCを使用しない業務であるため、退社する前からPCの電源をオフにしている場合もあり得る。この場合、退社時における退室時においては使用電力の減少の程度が所定の閾値に達しない可能性がある。そうすると、退室前に節電行動を行っていたユーザが節電行動が無いと判断されてしまう可能性が生じてくる。そこで、本実施の形態においては、退室前後それぞれにおいて計測により得られた使用電力に閾値に達するほどの差異がない場合でも、退室前における使用電力が予め設定された節電基準値を下回っている場合には、当該ユーザの節電行動は有ると判断するようにした。
【0041】
例えば、節電基準値として60Wと設定されている場合において、退室直前の使用電力が40W、退室時点における使用電力が0Wであることから退室前後における使用電力の減少の程度は40Wであり、所定の閾値(50W)に達していないとする。このような場合でも、退室直前の使用電力(40W)が節電基準値(60W)を下回っている場合には、当該ユーザの節電行動は有ると判断する。この場合、節電行動は、退室時点ではなく退室前にされていたと考えることができる。
【0042】
以上のようにして、解析対象のユーザにおいて、節電行動が無いと1つでも判断された場合には(ステップ130でN)、解析部25は、節電行動が無いという旨の通知をするよう通知部26に指示する。
【0043】
通知部26は、通知の指示を受けると、当該ユーザのユーザIDを含むメールアドレス送信要求を入退室管理サーバ1に送信するよう管理情報取得部24に指示する。管理情報取得部24は、この指示に応じてメールアドレス送信要求を入退室管理サーバ1に送信する。入退室管理サーバ1は、メールアドレス送信要求に応じて当該ユーザのメールアドレスを個人情報データベースから取り出し返信する。
【0044】
管理情報取得部24が入退室管理サーバ1から送られてきたメールアドレスを取得すると、通知部26は、その取得されたメールアドレスを宛先として電子メールを送信することで節電行動が無いという旨を通知する(ステップ140)。なお、この電子メールには、その旨と共に、節電行動が無いと判断された日時、使用電力等他の情報を含めてもよい。
【0045】
また、ここでは、節電行動を取っていないユーザに対してのみ通知を行ったが、そのユーザに代えて、あるいは当該ユーザとととも当該ユーザの管理者(上長)に、節電行動が無い旨を通知するようにしてもよい。この場合、当該ユーザの上長のメールアドレスを合わせて送信する旨と当該ユーザのユーザIDとを含むメールアドレス送信要求を入退室管理サーバ1に送信するよう管理情報取得部24に指示する。管理情報取得部24は、この指示に応じてメールアドレス送信要求を入退室管理サーバ1に送信する。入退室管理サーバ1は、メールアドレス送信要求に応じてグループ情報データベースを参照することで当該ユーザの上長を特定し、その特定した上長のユーザIDを特定する。そして、節電行動が無いユーザ及びその上長のメールアドレスを個人情報データベースから取り出し返信する。その後は前述したように、通知部26は、管理情報取得部24により取得されたメールアドレスを宛先として電子メールを送信することで節電行動が無いという旨を通知する。
【0046】
なお、ここでは、通知の手段としてメールアドレスを例にしたが、その他の手段を用いて通知するようにしてもよい。
【0047】
一方、節電行動が無いと判断されていない場合には(ステップ130でY)、次のユーザに解析処理を移行する(ステップ110)。以上の処理を全ユーザに対して繰り返し実施する(ステップ150)。
【0048】
本実施の形態においては、以上のようにして個人単位に節電行動の有無を判断し、節電行動のないユーザに対しては、その旨を通知する。これにより、節電行動の喚起を図ることができる。
【0049】
なお、上記説明では、個人単位に使用電力の監視を行ったが、個人単位ではなく部屋単位にしか使用電力が計測できないような場合には、部屋単位(部署単位)に節電行動の喚起を図るようにしてもよい。この場合の通知の宛先は、上長としてもよい。また、個人単位に使用電力の計測が可能な本実施の形態においても個人の使用電力を部署等のグループ毎にまとめてグループ毎に節電行動の喚起を図るようにしてもよい。
【0050】
また、以上の説明で明らかなように、個人使用電力情報生成処理は、個人使用電力監視処理が実施されるまでに終了していればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 入退室管理サーバ、2 カードリーダコントローラ、3 ビル管理サーバ、4 モニタコントローラ、5 ネットワーク、6 部屋、7 出入口、8a,8b カードリーダ、9 座席、10 使用電力計測器、20 個人使用電力監視装置、21 入退室情報取得部、22 使用電力情報取得部、23 実績記録部、24 管理情報取得部、25 解析部、26 通知部、27 制御部、28 個人使用電力情報記憶部、31 CPU、32 ROM、33 RAM、34 ハードディスクドライブ(HDD)、35 HDDコントローラ、36 マウス、37 キーボード、38 ディスプレイ、39 入出力コントローラ、40 ネットワークコントローラ、41 内部バス。