(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666494
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 21/14 20060101AFI20150122BHJP
H02K 1/14 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
H02K21/14 M
H02K1/14 C
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-44937(P2012-44937)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-183511(P2013-183511A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2013年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 正美
(72)【発明者】
【氏名】工藤 憲一
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−195353(JP,U)
【文献】
特開昭61−269653(JP,A)
【文献】
実開昭58−078782(JP,U)
【文献】
実開昭53−074612(JP,U)
【文献】
特開昭61−132066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/14
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、
前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、
前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成するとともに、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、
前記ボビンおよび前記ステータの一方によって前記永久磁石ロータの出力軸を支持するとともに、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成し、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、
前記第一ステータおよび前記第二ステータによって前記永久磁石ロータの出力軸を支持するとともに、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成し、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
前記ボビンと前記二つのステータとの結合のために、結合ガイド部が両者の結合部に形成されて結合位置が規定されるように構成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載したアクチュエータ。
【請求項6】
前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの外側部に延伸する磁極部および前記第一ステータの内側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部はそれぞれ同一円周面上に形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載したアクチュエータ。
【請求項7】
前記第一ステータと前記第二ステータとは同一形状で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載したアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気信号を機械的変位に変換することの出来るアクチュエータに関し、特にカメラなどの小型精密機器に利用する駆動源に適合する小型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気信号を機械的変位に変換する駆動源に利用出来るアクチュエータとして各種の機器が開発されており、その多くはステップモータが用いられてきた。そして、そのようなステップモータでは、永久磁石ロータとコイルとが必須の構成要素であり、更には効率を良くするためにステータが構成要素とされてきた。
【0003】
具体的には、例えば特開2003―189584号公報に記載されるように、永久磁石ロータの外周に複数のコイルと複数のステータとが二組配置された構成のステップモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003―189584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアクチュエータとしてのステップモータでは、永久磁石ロータとステータとの隙間を均一にすることが難しく、また漏洩磁束による損失が多くなり、かつ変換効率が悪い上に駆動速度のムラを生じ易かった。
【0006】
即ち、ステータによって形成される磁路は閉ループになっていることが好ましいが、中間部にエアギャップが存在する場合でそのエアギャップが不安定なときには作動に安定性を欠くことになる。即ち、内側ステータと外側ステータとが二つの部品で構成されていると、その接合点に部品製作誤差に基づくエアギャップが生じ、しかもこのギャップは個々の部品ごとにバラツキを生じ易いため、作動の安定化が極めて困難な場合が多い。
【0007】
具体的には、特許文献1に記載されているように、平板22では全体が平滑面であるが、加工された凹状ステータコア20の先端部は理論的には平滑面であるものの、現実には製作誤差のほか加工により微小なカエリ或はごみの付着などにより、平板22との接合面にエアギャップが出来てしまうことが多く、しかもこのエアギャップは不安定なことが多く平滑面とはなり難い。
【0008】
さらに、この部分のエアギャップだけではなく、基本的な形状設計における磁極相互間の隙間についても同様の問題が存在する。つまり、この隙間が狭ければコイルによって発生する磁束によるロータに対する駆動力が強くなるが、広い場合には逆に弱くなるので変換効率が悪くなる。
【0009】
それだけではなく、隙間が円周方向で均一でないことにより、ロータの駆動速度にムラが生じるために作動が不均一かつ不安定になる。また、ロータの作動が不均一かつ不安定になることにより、騒音の発生を伴うことに繋がり好ましくない。
【0010】
また、ステータ22に形成された磁極22bは、ステータの内径側から起立して形成されるから磁極部の高さに限界があり、磁極部の長さを長くして小型で高出力のモータを実現させることが困難である。即ち、小型で高出力のモータを実現させるためには、コイルに発生する磁束を永久磁石ロータに効率的に伝達することが求められるから、磁極部の長さを長くすることが必要であるがこの点から従来の構成では困難である。
【0011】
つまり、モータの出力を向上させるにはコイルに通電される電流を多くすると共にコイルの巻き数を多くすることが必要である。ところが、従来の構成ではコイルの巻き数を多くするとコイル全体の外形が大きくなり、それに伴ってコイルの長さが増大することになる。そして、コイルの長さが増大すると全体のコイル抵抗値が増大するため、形態性を重視して小型電源を使用する機器においては、電流を減少させることになって好ましくない。
【0012】
このような状況下において、永久磁石ロータとステータとの隙間を均一にし、また漏洩磁束による損失を減少させるためには単一部品でステータを構成し、磁路が閉ループとなるようにするとともに、変換効率を向上して駆動速度のムラを生じ難くすることが求められている。さらに、ロータの作動を均一にするとともに作動の安定化を図り、騒音の発生を可及的に減少させることが必要となっている。
【0013】
この発明は、前記のような課題を解決するものであり、永久磁石ロータとステータとの隙間を均一にし、また漏洩磁束による損失を可及的に減少させ、変換効率を向上して駆動速度のムラを生じ難くしたアクチュエータを提供することを目的とする。さらに、ステータの形状を改善して磁極の長さを自在に延長できるようにして永久磁石ロータに対向する磁極面積を増大し、コイルに発生する磁束を永久磁石ロータに効率的に伝達してロータの作動を均一にすることにより作動の安定化を図るとともに、小型ながら高出力で騒音の発生をも減少させたアクチュエータを提供することを目的とする。
【0014】
即ち、ステータの形状を改善してコイルの内側磁極の長さを自在に延長できるようにして、コイル外形を大きくすることなくステータを軸方向に延長させて、細い外径を維持させながらコイル巻き数の増大を実現する。このことによって、コイルに通電する電流を多くすると共にコイルの巻き数を多くすることが可能となり、モータの出力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、
前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成するとともに、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、
前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、前記ボビンおよび前記ステータの一方によって前記永久磁石ロータの出力軸を支持するとともに、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成し、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、
前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、前記第一ステータおよび前記第二ステータによって前記永久磁石ロータの出力軸を支持するとともに、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成し、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、
前記第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の前記磁極部は前記平板と前記磁極部の付根から外方に前記コイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項
5に記載の発明によれば、前記ボビンと前記二つのステータとの結合のために、結合ガイド部が両者の結合部に形成されて結合位置が規定されるように構成したことを特徴とする。
【0021】
さらに、請求項
6記載の発明によれば、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの外側部に延伸する磁極部および前記第一ステータの内側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部はそれぞれ同一円周面上に形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0022】
さらに、請求項
7に記載の発明によれば、前記第一ステータと前記第二ステータとは同一形状で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、永久磁石ロータの外周に配置されたコイルへの通電によって前記永久磁石ロータの回転を制御するアクチュエータにおいて、前記コイルの内側で出力軸に固定され回転自在に支持される永久磁石ロータと、前記コイルを巻回するための非磁性材で形成されたボビンと、前記ボビンに挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が
平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第一ステータと、前記ボビンに逆方向から挿入した位置で固定結合され前記コイルの内側部及び外側部へ前記ロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成された第二ステータと、を備え、前記第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が前記コイルの内側部と外側部におけるいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、
第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の磁極部は平板と磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の磁極部は平板と磁極部の付根から外方にコイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成したことを特徴とする。
【0024】
即ち、第一ステータ及び第二ステータに形成された磁極部が、前記コイルの内側部と外側部にまたがって形成されており、各ステータが単一の部品によって構成されているから磁路の中間にエアギャップが存在することがない。
しかも、前記コイルの内側部と外側部における磁極部のいずれもが円周方向において交互に配置するように構成され、前記コイルへの通電によって前記永久磁石ロータを回転制御するように構成されているから、コイルの内周部及び外周部における磁束の磁路が閉ループを形成する。
そのことによって漏洩磁束による損失を可及的に少なく出来る。
また、第一ステータおよび第二ステータから、コイルの内側部及び外側部へロータの軸方向に沿ってそれぞれ延伸する磁極部が、平板の中心部から外方に向けて放射状に伸びる複数の部分を曲げ加工によって形成され、第一ステータ及び第二ステータに形成された内側部の磁極部は平板と磁極部の付根を曲げ加工によって構成され、第一ステータ及び第二ステータに形成された外側部の磁極部は平板と磁極部の付根から外方にコイルの厚さだけ向かった部分を曲げ加工によって構成されているから、効率的な磁極部を単純な機械加工によって容易に形成することが出来る。
また、コイルの内側部へロータの軸方向に沿って延伸する磁極部が長さの制限を受けることなく自在に形成できるから、この部分を長くして小型ながら高出力のアクチュエータを実現できる。
【0026】
さらに、請求項
2に記載の発明によれば、第一ステータの外側部に延伸する磁極部と第二ステータの内側部に延伸する磁極部とが前記コイルを介在して対向するように構成されているから、コイルの内周部及び外周部における磁束の磁路が閉ループを形成する。そのことによって漏洩磁束による損失を可及的に少なく出来る。
【0027】
さらに、請求項
3に記載の発明によれば、ボビンおよびステータの一方によって永久磁石ロータの出力軸を支持するとともに、第一ステータの外側部に延伸する磁極部と第二ステータの内側部に延伸する磁極部とがコイルを介在して対向するように構成しているから、永久磁石ロータの出力軸に対する各ステータの磁極部のズレが少なくなり、永久磁石ロータと各磁極部との隙間を均一にすることが可能となる。即ち、最小限の部品の嵌合によって永久磁石ロータと各磁極部との隙間が設定されるから、両者の部品製作誤差を考慮するだけでこの隙間が規定され、隙間を少なく設定しても部品製作誤差に起因する作動誤差を回避することが出来る。
【0028】
さらに、請求項
4に記載の発明によれば、第一ステータおよび第二ステータによって前永久磁石ロータの出力軸を支持するとともに、第一ステータの外側部に延伸する磁極部と第二ステータの内側部に延伸する磁極部とがコイルを介在して対向するように構成しているから、永久磁石ロータの出力軸に対する各ステータの磁極部のズレが少なくなり、永久磁石ロータと各磁極部との隙間を均一にすることが可能となる。即ち、最小限の部品の嵌合によって永久磁石ロータと各磁極部との隙間が設定されるから、両者の部品製作誤差を考慮するだけでこの隙間が規定され、隙間を少なく設定しても部品製作誤差に起因する作動誤差を回避することが出来る。
【0029】
さらに、請求項
5に記載の発明によれば、ボビンと二つのステータとの結合のために、結合ガイド部が両者の結合部に形成されて結合位置が規定されるように構成しているから、ボビンに対するステータの位置ズレを減少させることが可能になり、その結果としてコイルに対するステータの取り付け誤差が減少し、磁路隙間の均一性を容易に確保できるようになる。
【0030】
さらに、請求項
6に記載の発明によれば、前記第一ステータの外側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの外側部に延伸する磁極部および前記第一ステータの内側部に延伸する磁極部と前記第二ステータの内側部に延伸する磁極部はそれぞれ同一円周面上に形成されるように構成されているから、永久磁石ロータと各磁極部との隙間を均一にすることが可能となり、磁路の安定化を図ることができる。
【0031】
さらに、請求項
7に記載の発明によれば、第一ステータと第二ステータとは同一形状で構成されているから、共通部品を用いてアクチュエータを構成できるので、製造価格を節減した製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】この発明の実施の一形態による構成部品の展開斜視図である。
【
図2】
図1の構成部品を反対側から見た展開斜視図である。
【
図3】この発明の実施の一形態による構成部品の主要部の縦断面図である。
【
図4】この発明の他の実施形態による構成部品の主要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の一形態を
図1乃至
図3を参照しながら説明する。
図1は、この発明の各構成部品を配列した斜視図であり、
図2は、
図1の構成部品を反対側から見た斜視図であり、
図3は、構成部品の主要部の縦断面図である。
【0034】
図1乃至
図3に示すように、本例のアクチュエータは、永久磁石ロータ1、ボビン2、コイル3、第一ステータ4、第二ステータ5、及び、出力軸6を備える。
【0035】
永久磁石ロータ1は、出力軸6と一体に磁性材を用いて成型された後に所定の方向に着磁される。この着磁方向は通常は出力軸を挟んだ両側にN-S極が現れるように着磁され、本発明においては後述するようにステータの数に対応しており、径方向に六極着磁がなされている。
【0036】
また、出力軸6は、永久磁石ロータ1の一方側に第二ステータ5と嵌合する係合部6a、永久磁石ロータ1の他方側にボビン2と嵌合する係合部6bが形成される。さらに永久磁石ロータ1が形成される範囲を規制するとともに、永久磁石ロータ1の取り付け位置を規制する規制部6cが永久磁石ロータ1の回転軸方向両側に形成されている。
【0037】
ボビン2は、真中に永久磁石ロータ1を嵌合させるために空間が確保され、周囲にコイルを巻回する巻き線部分2a、コイル端子の巻き付け部2b、出力軸6を貫通させるため両側の軸受け部2c、第一ステータ4及び第二ステータ5のそれぞれに対して設けた複数の取り付けガイド部2dおよび2g、第一ステータ4の磁極部を挿入する穴2eと第二ステータ5の磁極部を挿入する穴2fとが形成されている。
コイル3はボビン2の巻き線部分2aに巻回され、その端子3aはボビン2に形成された巻き付け部2bに絡げて半田付けされる。
【0038】
第一ステータ4は、ボビン2の軸受け部2cに嵌合される取り付け穴4a、この取り付け穴4aから外方に向けて延びた内側磁極部4bと外側磁極部4cとが曲げ加工によって形成されている。そして、内側磁極部4bと外側磁極部4cは、それぞれ三箇所に交互に形成され、ボビン2の取り付けガイド部2dに嵌合するガイド穴4dが三箇所に形成されている。三箇所の内側磁極部4bはボビン2の挿入穴2eに挿入されコイル3の内側に配置され、また三箇所の外側磁極部4cはボビン2に巻回されているコイル3の外側に配置される。
【0039】
第二ステータ5は、出力軸6に嵌合される取り付け穴5a、この取り付け穴5aから外方に向けて延びた内側磁極部5bと外側磁極部5cとが曲げ加工によって形成されている。そして、内側磁極部5bと外側磁極部5cは、それぞれ三箇所に交互に形成され、ボビン2の取り付けガイド部2gに嵌合するガイド穴5dは三箇所に形成されている。三箇所の内側磁極部5bはボビン2の挿入穴2fに挿入されコイル3の内側に配置され、また三箇所の外側磁極部5cはボビン2に巻回されているコイル3の外側に配置される。
【0040】
ここで、第二ステータ5は、第一ステータ4とはボビン2に対して逆方向から結合され、第一ステータ4および第二ステータ5に形成された内側磁極部4b、5bと外側磁極部4c、5cとは、それぞれ内側の同一円周上と外側の同一円周上に構成されている。また、出力軸6の先端部分には、図示しないピニオンまたは駆動部材等が取り付けられている。
【0041】
また、第一ステータ4および第二ステータ5に形成され、コイル3の内側部へ永久磁石ロータ1の軸方向に沿って延伸する磁極部4b、5bが、加工原品において中心から外方に向けて放射状に伸びるように形成されるから、長さの制限を受けることなく自在に形成できるため、この部分を長くして小型ながら高出力のアクチュエータを実現できる。
【0042】
即ち、従来の磁極形成は内方に延びる原品を絞り加工するもので、磁極部の長さが制限されていたのに対して、本発明ではこの部分の長さに制限がなく自在に形成できる。そのために、コイル3に発生する磁束を永久磁石ロータ1に効率的に伝達することが可能となり、小型で高出力のアクチュエータを実現できる。
【0043】
それと同時に、内側磁極部4b、5bを軸方向へ自在に延長できるから、コイル3の外形を大きくすることなくコイル巻き数の増大が可能となり、さらにコイル抵抗の増加を巻き数増加の比率に対して極力小さくしつつ、アクチュエータの出力を向上させることが可能となる。つまり、コイル抵抗の増加を極力少なくして巻き数増加が図れるから、発生させ得る磁束量がコイル抵抗値と電流量との積で決まるため、これを増大させるのに極めて有効な構成である。
【0044】
次に、このように構成されたアクチュエータの作動方法について説明すると、図示しないが公知の制御回路から、コイル3の入力端子3aに所定の駆動パルス信号が入力されると、コイル3に発生する磁束によって第一ステータ4および第二ステータ5の磁極部4b、5bが、公知のようにそれぞれ対応する磁極に励磁され、永久磁石ロータ1の磁極に作用してこの永久磁石ロータ1を旋回させる。
【0045】
そして、順次駆動パルス信号の変化に対応して第一ステータ4および第二ステータ5の磁極部4b、5bが励磁されることにより、永久磁石ロータ1が順次旋回を続ける。所定の駆動パルス信号が終了すると、永久磁石ロータ1は作動を停止する。なお、強制的に永久磁石ロータ1の作動を停止させる場合には、公知のブレーキパルスがコイル3に供給される。
【0046】
また、正逆方向に永久磁石ロータ1を揺動させる方式の場合には、コイル3に正方向と逆方向の駆動パルスが順次入力され、その入力信号に対応して永久磁石ロータ1が、正方向と逆方向へ揺動制御される。
【0047】
このような永久磁石ロータ1の旋回作動や揺動作動は、出力軸6の先端部分に取り付けられているピニオンまたは駆動部材を作動させ、所定の機械的変位に変換される。
【0048】
即ち、出力軸6の先端部分に取り付けられているピニオンの旋回や揺動により所定の機構を作動させて、例えばカメラの撮影レンズ鏡胴を撮影モードへ移動し、更に元の状態に戻し、あるいはカメラの撮影レンズの焦点調節作動を制御することなどが行われる。さらに、駆動部材を作動させてカメラのシャッタ羽根を開閉作動させること、あるいは絞り羽根を作動させて所定の絞り値を制御することなども可能である。
【0049】
上記実施形態においては、永久磁石ロータ1の出力軸6をボビン2および第二ステータ5によって支持しているので、出力軸6とステータ4、5との間に複数の部品を経由して、永久磁石ロータ1とステータ4、5との位置関係が規定されるものに比べて、位置関係を規定する部品が少ない分、構成部品の製作誤差に基づく嵌合誤差を可及的に減少させることが可能であり、永久磁石ロータ1と内側磁極部4b、5bとの設計上の隙間を少なくすることが出来る。
【0050】
また、嵌合誤差が累積されると隙間にバラツキを生じることになり、駆動出力にバラツキを生じて作動の安定性を欠くことになるが、そのような問題も解決することができる。
それにより、エアギャップを少なく出来るために駆動出力が向上して、駆動効率の高く、作動の安定したアクチュエータを提供することができる。
【0051】
本発明のアクチュエータの第2の実施例について、
図4を参照して説明する。本実施例においては、出力軸6を第一ステータ4、及び第二ステータ5によって支持している。
【0052】
これにより、位置関係を規定する部品が更に少なくなるため、永久磁石ロータ1と内側磁極部4b、5bとの隙間をさらに小さく設定した設計が可能となり、エアギャップをさらに少なく出来るために駆動出力が向上して、駆動効率の高く、作動の安定したアクチュエータを提供することができる。
【0053】
以上述べたような構成のアクチュエータは、磁束の漏洩が減少しコイル3で発生する磁束を効率的にステータ4、5の磁極部に導くことが出来るうえ、更に各磁極部4b、5bを永久磁石ロータ1に近接して構成できるようになるから強力な出力が得られ、小型でありながらも変換効率の向上したアクチュエータを提供できる。
【0054】
なお、上記実施形態では内側磁極部4b、5bおよび外側磁極部4c、5cがそれぞれ三箇所に形成されているが、必要に応じて増加しまたは減少させて実施することも出来る。また、永久磁石ロータ1はステータ4、5の数が六ヶ所で構成したから、着磁を六極としたがこれに限定されるものではなく適宜増減しても実施可能である。
【0055】
また、出力軸6を支持する方法として、ボビン2および第二ステータ5によって支持する形態と第一ステータ4、及び第二ステータ5によって支持する形態とを例示したが、両側共にボビン2によって支持するようにすることも出来る。即ち、
図3に示す第二ステータ5と嵌合する係合部6aを細径に形成し、第二ステータ5の穴5aと細径に形成した係合部6aとを、別途プラスチックで形成した部材に嵌合させて、当該プラスチックで形成した部材をボビン2に固定する等の方法が考えられる。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜実施形態を変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・永久磁石ロータ
2・・・・ボビン
3・・・・コイル
4・・・・第一ステータ
4b・・・内側磁極部
4c・・・外側磁極部
5・・・・第二ステータ
5b・・・内側磁極部
5c・・・外側磁極部
6・・・・出力軸