特許第5666517号(P5666517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5666517
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】塔状構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20150122BHJP
   E04H 5/02 20060101ALI20150122BHJP
   C21B 9/10 20060101ALI20150122BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   E04G21/14
   E04H5/02 D
   C21B9/10 302
   E04H12/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-156907(P2012-156907)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-20016(P2014-20016A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2013年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕治
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】大森 茂佳
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−042313(JP,A)
【文献】 特許第3881343(JP,B2)
【文献】 特開2004−150143(JP,A)
【文献】 特開2009−041062(JP,A)
【文献】 特開2001−254668(JP,A)
【文献】 特開平07−197696(JP,A)
【文献】 特開2008−007985(JP,A)
【文献】 特開2009−102972(JP,A)
【文献】 特許第2828430(JP,B2)
【文献】 特開2011−220102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14
C21B 9/10
E04H 5/02
E04H 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築すべき塔状構造物を高さ方向に複数個のブロックに分割して構築し、構築すべき前記塔状構造物の周囲に、垂直方向に伸縮可能な複数台の重量物昇降装置を、仮設架構として設置し、前記重量物昇降装置間を梁により連結し、前記梁を介してジャッキを前記重量物昇降装置に取り付け、前記ジャッキにより記前記塔状構造物の最上段のブロックを吊り上げて、最上段のブロックより一段下のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結し、次いで、連結した最上段のブロックと最上段のブロックより一段下のブロックとを一体的に吊り上げて、さらに一段下のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結する操作を繰り返し行って塔状構造物を構築する、塔状構造物の構築方法において、
前記重量物昇降装置の頂部間を連結する前記梁の位置が構築中の前記塔状構造物の重心位置となるように、前記重量物昇降装置の高さを調整することを特徴とする、塔状構造物の構築方法。
【請求項2】
前記梁にガイド部材を取り付けて、吊り上げ時の前記ブロックをガイドすることを特徴とする、請求項1に記載の、塔状構造物の構築方法。
【請求項3】
前記塔状構造物は、高炉の熱風炉用蓄熱室であることを特徴とする、請求項1または2に記載の、塔状構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塔状構造物の構築方法、特に、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の大型塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで構築することができる、塔状構造物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、製鉄所に構築されている高さ数十メートルを超える大型塔状構造物としての、高炉の熱風炉用蓄熱室(以下、単に、蓄熱室という。)の構築方法として、大型クレーン工法とジャッキアップ工法がある。
【0003】
大型クレーン工法は、蓄熱室を高さ方向に複数段のブロックに分割して構築し、大型クレーンにより2段目のブロックを吊り上げて、最下段のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結し、次いで、3段目のブロックを吊り上げて、2段目のブロック上に積み重ねて、両ブロックを連結する作業を繰り返し行って、蓄熱室を構築するものである。
【0004】
ジャッキアップ工法は、蓄熱室を高さ方向に複数段のブロックに分割して構築し、最上段のブロックを、仮設架構に設置されたジャッキアップ装置により吊り上げて、最上段のブロックより一段下のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結し、次いで、連結した最上段のブロックと最上段のブロックより一段下のブロックとをジャッキアップ装置により一体的に吊り上げて、さらに一段下のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結する操作を繰り返し行って、蓄熱室を構築するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−102972号公報
【特許文献2】特許第2828430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した大型クレーン工法およびジャッキアップ工法によれば、蓄熱室等の大型塔状構造物を構築することができるが、大型クレーン工法は、以下のような問題があった。
【0007】
(a)構築すべき塔状構造物の高さに合うように、揚程が高く、大重量のブロックを吊り上げ可能な大型クレーンが必要である。
【0008】
(b)大型クレーンを設置する広いスペースが不可欠であり、設置スペースを確保することができない場合には、大型クレーン工法を採用することができない。
【0009】
(c)高所作業が必要であるので、危険が伴う。また、非常に大がかりな足場が必要となる。
【0010】
一方、ジャッキアップ工法は、以下のような問題があった。
【0011】
(a)ジャッキアップ装置を設置する仮設架構を、塔状構造物の高さに合わせて構築する必要があるので、塔状構造物の構築に時間がかかると共にコスト高となる。
【0012】
(b)仮設架構の構築は、高所作業となるので危険が伴う。
【0013】
(c)ジャッキアップ装置を設置する仮設架構は、構築する構造物に合わせて、その都度、設計し直す必要がある。
【0014】
(d)仮設架構の高さが低いと、ジャッキアップ装置により吊り上げた塔状構造物の安定性に欠ける。
【0015】
従って、この発明の目的は、大型クレーンを使用することなく、高炉の熱風炉用蓄熱室等の大型塔状構造物を安全かつ短期間にしかも低コストで構築することができる、塔状構造物の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0017】
請求項1に記載の発明は、構築すべき塔状構造物を高さ方向に複数個のブロックに分割して構築し、構築すべき前記塔状構造物の周囲に、垂直方向に伸縮可能な複数台の重量物昇降装置を、仮設架構として設置し、前記重量物昇降装置間を梁により連結し、前記梁を介してジャッキを前記重量物昇降装置に取り付け、前記ジャッキにより記前記塔状構造物の最上段のブロックを吊り上げて、最上段のブロックより一段下のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結し、次いで、連結した最上段のブロックと最上段のブロックより一段下のブロックとを一体的に吊り上げて、さらに一段下のブロック上に積み重ね、両ブロックを連結する操作を繰り返し行って塔状構造物を構築する、塔状構造物の構築方法において、前記重量物昇降装置の頂部間を連結する前記梁の位置が構築中の前記塔状構造物の重心位置となるように、前記重量物昇降装置の高さを調整することに特徴を有するものである。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記梁にガイド部材を取り付けて、吊り上げ時の前記ブロックをガイドすることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記塔状構造物は、高炉の熱風炉用蓄熱室であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、以下のような効果がもたらされる。
【0022】
(a)垂直方向に伸縮可能な重量物昇降装置は、仮設架構としての機能を有しているので、別途、仮設架構を構築する必要はない。従って、塔状構造物の構築期間を短縮することができる。
【0023】
(b)重量物昇降装置は、垂直方向に伸縮するので、大型クレーンのように広い設置スペースを必要としない。
【0024】
(c)仮設架構としての機能を有する重量物昇降装置は、標準化および他の塔状構造物の構築への転用が可能であるので、塔状構造物の構築コストを低減することができる。
【0025】
(d)従来のジャッキアップ工法によれば、構築すべき塔状構造物の高さ以上の大型の仮設架構を構築する必要があるが、大型の仮設架構の構築作業は、高所作業となるので危険が伴う。これに対して、重量物昇降装置は、伸縮可能であるので、仮設架構としての機能を有する重量物昇降装置の構築作業は、低地で行え、安全である。
【0026】
(e)重量物昇降装置の頂部に構築中の塔状構造物の重心位置が来るように、重量物昇降装置の高さを調整することによって、重量物昇降装置を、構築すべき塔状構造物の全長に亘り設けなくても、塔状構造物を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置にガイド部材を取り付けることにより、さらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明の構築方法により既に構築された蓄熱室(No.2)と、最下段のブロック1を設置した状態の蓄熱室(No.1)を示す平面図である。
図2】この発明の構築方法により既に構築された蓄熱室(No.2)と、最下段のブロック1を設置した状態の蓄熱室(No.1)を示す正面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図2のB−B線断面図である。
図5】重量物昇降装置を示す正面図である。
図6】重量物昇降装置を示す平面図である。
図7(A)】この発明の、塔状構造物の構築方法の最上段のブロックBnに吊り金具を固定する工程を示す正面図である。
図7(B)】この発明の、塔状構造物の構築方法のブロックBnを吊り上げる工程を示す正面図である。
図7(C)】この発明の、塔状構造物の構築方法のブロックBnの下方にブロックBnより1段下のブロックBn−1を設置する工程を示す正面図である。
図7(D)】この発明の、塔状構造物の構築方法の吊り金具をブロックBnからブロックBn−1に付け替える工程を示す正面図である。
図7(E)】この発明の、塔状構造物の構築方法の連結されたブロックBnとブロックBn−1を吊り上げる工程を示す正面図である。
図7(F)】この発明の、塔状構造物の構築方法のブロックBn−1の下方にブロックBn−1より1段下のブロックBn−2を設置する工程を示す正面図である。
図7(G)】この発明の、塔状構造物の構築方法のブロックBnに炉頂部を設置する工程を示す正面図である。
図7(H)】この発明の、塔状構造物の構築方法の最下段のブロック1から上段の全てのブロックを吊り上げる工程を示す正面図である。
図7(I)】この発明の、塔状構造物の構築方法のブロック1を設置する工程を示す正面図である。
図8】油圧ジャッキ装置を示す一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の、塔状構造物の構築方法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、この発明の構築方法により既に構築された蓄熱室(No.2)と、最下段のブロック1を設置した状態の蓄熱室(No.1)を示す平面図、図2は、この発明の構築方法により既に構築された蓄熱室(No.2)と、最下段のブロック1を設置した状態の蓄熱室(No.1)を示す正面図、図3は、図2のA−A線断面図、図4は、図2のB−B線断面図である。
【0030】
図1から図4において、1は、塔状構造物としての2基の高炉の熱風炉用蓄熱室(No.1、No.2)であり、円筒形状をなし、数十メートルを超える高さを有している。蓄熱室と燃焼室とを備えた熱風炉は、高炉の羽口から炉内に送り込む熱風をつくる炉であり、一基の高炉に対して複数基、設けられていて、各熱風炉は、蓄熱と送風の状態を交互に繰り返し行う。
【0031】
2は、地面に設置された垂直方向に伸縮可能な複数台(この例では4台)の重量物昇降装置である。重量物昇降装置2は、構築すべき蓄熱室1の周囲に蓄熱室1を取り囲むように四角形のコーナー部に配置されている。重量物昇降装置2間は、後述する上部梁3A、主梁3Bおよび下部梁3Cにより互いに連結され、重量物昇降装置2は、後述するジャッキ5により蓄熱室1を吊り上げるための仮設架構として使用される。重量物昇降装置2の頂部間を連結する上部梁3Aおよび重量物昇降装置2の下方部間を連結する下部梁3Cには、下降時の蓄熱室1をガイドするチルタンク等からなるガイド部材6が取り付けられている。上部梁3Aと下部梁3Cとの間の重量物昇降装置2間を連結する主梁3Bのコーナー部は、副梁4により連結され、副梁4には、ジャッキ5が取り付けられている(図4参照)。上部梁3Aの高さが構築中の蓄熱室1の重心位置以上の高さとなるように、重量物昇降装置2の頂部高さを調整することによって、蓄熱室1の全長に亘り重量物昇降装置2を設けなくても、蓄熱室1を安定して支持することができる。蓄熱室1の安定支持は、ガイド部材6によりさらに向上する。
【0032】
なお、ジャッキ5の容量を大型化することによって、耐火材、触媒等の内蔵物を組み込んだ状態での蓄熱室1の大重量のブロックの吊り上げが可能となる。
【0033】
重量物昇降装置2としては、例えば、特許文献1(特開2009−102972号公報)に開示されている重量物昇降装置を使用する。以下、重量物昇降装置2を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図5は、重量物昇降装置を示す正面図、図6は、重量物昇降装置を示す平面図である。
【0035】
図5および図6に示すように、重量物昇降装置2は、外側支柱7A、中間支柱7B、内側支柱7Cが入れ子式に且つそれぞれ複数台の外側昇降手段8A、内側昇降手段8Bにより昇降可能に組み立てられ、内側支柱7Cの頂部間に上述した上部梁3Aが連結されている。
【0036】
外側昇降手段8Aおよび内側昇降手段8Bは、例えば、特許文献2(特許第2828430号公報)に開示された油圧ジャッキ装置からなっている。この油圧ジャッキ装置については、後述する。
【0037】
外側昇降手段8Aは、中間支柱7Bの上下端間に張り渡された外側ストランド9Aと、外側支柱7Aに固定された、油圧ポンプにより伸縮可能な外側ジャッキ本体10Aとからなっている。外側ジャッキ本体10Aは、可動側に設けられる第1把持手段(後述する上部ワイヤグリッピング装置41a)と、外側ジャッキ本体10Aの固定側に取り付けられる第2把持手段(後述する下部ワイヤグリッピング装置41b)とを備え、外側ジャッキ本体10Aの伸張時に、前記第1把持手段は、外側ストランド9Aを把持し、これと同時に前記第2把持手段は、外側ストランド9Aの把持を解放し、一方、外側ジャッキ本体10Aの縮小時に、前記第1把持手段は、外側ストランド9Aの把持を解放し、これと同時に前記第2把持手段は、外側ストランド9Aを把持し、かくして、外側ジャッキ本体10Aの伸縮によって中間支柱7Bは、外側支柱7Aに対して内側支柱7Cと共に間歇的に昇降する。
【0038】
内側昇降手段8Bは、内側支柱7Cの上下端間に張り渡された内側ストランド9Bと、中間支柱7Bに固定された、油圧ポンプにより伸縮可能な内側ジャッキ本体10Bとからなっている。内側ジャッキ本体10Bは、可動側に設けられる第1把持手段と、内側ジャッキ本体10Bの固定側に取り付けられる第2把持手段とを備え、内側ジャッキ本体10Bの伸張時に、前記第1把持手段は、内側ストランド9Bを把持し、これと同時に前記第2把持手段は、内側ストランド9Bの把持を解放し、一方、内側ジャッキ本体10Bの縮小時に、前記第1把持手段は、内側ストランド9Bの把持を解放し、これと同時に前記第2把持手段は、内側ストランド9Bを把持し、かくして、内側ジャッキ本体10Bの伸縮によって内側支柱7Cは、中間支柱7Bに対して間歇的に昇降する。
【0039】
このようにして、中間支柱7Bは、外側支柱7Aに対して内側支柱7Cと共に昇降し、内側支柱7Cは、中間支柱7Bに対して昇降するが、これらの昇降は、各支柱7A、7B、7C間に取り付けられたチルタンク等からなるガイド部材11(図6参照)によって円滑に行われる。
【0040】
特許文献2に開示された油圧ジャッキ装置の概略を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図8は、油圧ジャッキ装置を示す一部省略断面図である。
【0042】
図8に示すように、油圧ジャッキ装置は、上部ワイヤグリッピング装置41aと下部ワイヤグリッピング装置41bとをストランド40に沿って上下に間隔をあけて設けたものから構成されている。上部ワイヤグリッピング装置41aの上部アンカーベースプレート42aは、油圧ジャッキ43のピストン45側に固定され、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部アンカーベースプレート42bは、油圧ジャッキ43のシリンダ44側に固定されている。油圧ジャッキ43は、対称位置に複数個、設置され、それぞれ油圧系統により同期して駆動される。
【0043】
上部ワイヤグリッピング装置41aの上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとは、上部アンカーブロック48aを貫通する複数本の連結棒49により連結され、後述する上部クランピングシリンダ50aにより一体的に上下動する。同様に、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとは、下部アンカーブロック48bを貫通する複数本の連結棒49により連結され、後述する下部クランピングシリンダ50bにより一体的に上下動する。
【0044】
上部アンカーブロック48aには、上部クランピングシリンダ50aが固定され、そのピストン52a側に上部リリースプレート47aが固定されている。従って、上部クランピングシリンダ50aを作動させれば、上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとは、一体的に上下動する。同様に、下部アンカーブロック48bには、下部クランピングシリンダ50bが固定され、そのピストン52b側に上部リリースプレート47aが固定されている。従って、下部クランピングシリンダ50bを作動させれば、下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとは、一体的に上下動する。
【0045】
上部クランピングシリンダ50aにより、上部プレッシャープレート46aと上部リリースプレート47aとを同時に上下動させて、上部ワイヤグリッピング装置41aの上部ワイヤグリップ51aを強制的に上部アンカーブロック48aの貫通孔53aに対して緩めたり、貫通孔53aに嵌め込んだりすることにより、すなわち、開閉することにより、ストランド40の把持または解放を同時に行うことができる。同様に、下部クランピングシリンダ50bにより、下部プレッシャープレート46bと下部リリースプレート47bとを同時に上下動させて、下部ワイヤグリッピング装置41bの下部ワイヤグリップ51bを強制的に下部アンカーブロック48bの貫通孔53bに対して緩めたり、貫通孔53bに嵌め込んだりすることにより、すなわち、開閉することにより、ストランド40の把持または解放を同時に行うことができる。
【0046】
この操作を上部および下部ワイヤグリッピング装置41a、41bについて交互に行い、ストランド40を把持した上部ワイヤグリッピング装置41aを油圧ジャッキ43により昇降させれば、ストランド40の先端に連結した重量物54の吊り上げ、吊り下ろしが行える。すなわち、上記支柱7B、7Cを昇降させることができる。
【0047】
ジャッキ5は、外側および内側昇降手段8A、8Bと同様な油圧ジャッキ装置からなり、副梁4に取り付けられたジャッキ本体12と、ジャッキ本体12と後述する吊り金具13との間に張り渡されたストランド14とからなっている。
【0048】
図3に示すように、吊り金具13は、蓄熱室1の外面に当てがわれる複数枚(この例では4枚)の円弧状の当て板15と、当て板15をリング状に締め付ける油圧シリンダ16とからなっている。吊り金具13は、当て板15同士を油圧シリンダ16により締め付けることによって、蓄熱室1のブロックに強固に固定することができ、かくして、蓄熱室1のブロックは、ジャッキ5によって吊り上げられる。油圧シリンダ16を使用することによって、蓄熱室1のブロックへの吊り金具13の固定が容易かつ確実に行える。
【0049】
次に、この発明による、塔状構造物の構築方法を、塔状構造物として蓄熱室を例に挙げて、図7を参照しながら説明する。
【0050】
先ず、構築すべき蓄熱室を高さ方向に複数個のブロック(最下段のブロックB1から最上段のブロックBn)に分割して、予め構築する。
【0051】
次に、図7(A)に示すように、構築すべき蓄熱室1(No.1)の周囲の地面に4基の重量物昇降装置2を設置し、重量物昇降装置2間を上部梁3A、主梁3B、下部梁3C(図示せず)により連結し、かつ、ガイド部材6(図示せず)および副梁4(図示せず)を取り付け、副梁4にジャッキ5を設置する。
【0052】
次に、同図に示すように、最上段のブロックBnに吊り金具13を仮止めし、ジャッキ5のストランド14の下端に吊り金具13を固定する。そして、吊り金具13を油圧シリンダ16(図3参照)により本締めして、蓄熱室1に吊り金具13を固定する。なお、蓄熱室1は、吊り金具13との間の摩擦力により吊り下げられるが、蓄熱室1の強度上、吊り金具13を強く締め付けられない場合には、蓄熱室1の外壁に突起部材17(図2参照)を溶接し、突起部材17を介して吊り金具13を固定する。
【0053】
次に、図7(B)に示すように、ジャッキ5によりブロックBnを吊り上げる。
【0054】
次に、図7(C)に示すように、吊り上げたブロックBnの下方にブロックBnより1段下のブロックBn−1を設置する。
【0055】
次に、図7(D)に示すように、吊り金具をブロックBnからブロックBn−1に付け替える。
【0056】
次に、ブロックBnとブロックBn−1とを連結した後、図7(E)に示すように、連結したブロックBnとブロックBn−1をジャッキ5により一体的に吊り上げる。
【0057】
次に、図7(F)に示すように、ブロックBn−1の下方にブロックBn−1より1段下のブロックBn−2を設置する。
次に、図7(G)に示すように、ブロックBn−1とブロックBn−2とを連結した後、ブロックBnに炉頂部1Aを設置する。
【0058】
以上の工程を繰り返し行って、図7(H)に示すように、互いに連結した最下段のブロックB1より上段の全てのブロックをジャッキ5により一体的に吊り上げたて、最後に、図7(I)に示すように、最下段のブロックB1を設置し、両ブロックを連結すれば、蓄熱室1(No.1)の構築が完了する。この後、重量物昇降装置2を撤去する。なお、蓄熱室1の構築が進行するにつれて、蓄熱室1の重心が上方に移動するが、これに合わせて、図7(H)、図7(I)に示すように、重量物昇降装置2の上部梁3Aを上昇させる。
【0059】
なお、重量物昇降装置2の上部梁3Aが構築中の蓄熱室1の重心位置に来るように、重量物昇降装置2の高さを調整することによって、構築すべき蓄熱室1の全長に亘り重量物昇降装置2を設けなくても、構築中の蓄熱室1を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置2に取り付けられたガイド部材11により、さらに向上する。
【0060】
以上は、蓄熱室1を構築する場合であるが、他の塔状構造物であっても、この発明の構築方法を適用することがきることは勿論である。
【0061】
以上、説明したように、この発明によれば、仮設架構として垂直方向に伸縮可能な重量物昇降装置を使用することにより、別途、仮設架構を構築する必要がないので、塔状構造物の構築期間を短縮することができる。
【0062】
また、塔状構造物の大きさによらず、同じ重量物昇降装置を使用することができるので、仮設架構の標準化を図ることができ、さらに、重量物昇降装置は、他の塔状構造物の構築に転用することが可能となるので、構築コストを低減することができる。
【0063】
また、従来のジャッキアップ工法によれば、塔状構造物全体を覆うことが可能な大型の仮設架構を構築する必要があるが、大型仮設架構の構築作業は、高所作業となるので危険が伴う。これに対して、重量物昇降装置は、伸縮可能であるので、重量物昇降装置の構築作業は、低地で行え、安全、かつ、高揚程の大型クレーンを必要としないために、コストも低減することができる。
【0064】
さらに、重量物昇降装置の頂部に構築中の塔状構造物の重心位置が来るように、重量物昇降装置の高さを調整すれば、重量物昇降装置を塔状構造物全体に亘り構築することなく、塔状構造物を安定して支持することができる。この安定支持効果は、重量物昇降装置にガイド部材を取り付けることにより、さらに向上する。
【符号の説明】
【0065】
1:蓄熱室
1A:炉頂部
2:重量物昇降装置
3A:上部梁
3B:主梁
3C:下部梁
4:副梁
5:ジャッキ
6:ガイド部材
7A:外側支柱
7B:中間支柱
7C:内側支柱
8A:外側昇降手段
8B:内側昇降手段
9A:外側ストランド
9B:内側ストランド
10A:外側ジャッキ本体
10B:内側ジャッキ本体
11:ガイド部材
12:ジャッキ本体
13:吊り金具
14:ストランド
15:当て板
16:油圧シリンダ
17:突起部材
40ストランド
41a:上部ワイヤグリッピング装置
41b:下部ワイヤグリッピング装置
42a:上部アンカーベースプレート
42b:下部アンカーベースプレート
43:油圧ジャッキ
44:シリンダ
45:ピストン
46a:上部プレッシャープレート
46b:下部プレッシャープレート
47a:上部リリースプレート
47b:下部リリースプレート
48a:上部アンカーブロック
48b:下部アンカーブロック
49:連結棒
50a:上部クランピングシリンダ
50b:下部クランピングシリンダ
51a:上部ワイヤグリップ
51b:下部ワイヤグリップ
52a:ピストン
52b:ピストン
53a:貫通孔
53b:貫通孔
54:重量物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(A)】
図7(B)】
図7(C)】
図7(D)】
図7(E)】
図7(F)】
図7(G)】
図7(H)】
図7(I)】
図8