【実施例】
【0041】
[実施例A]
1.二酸化塩素含有組成物の調製
16質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液に9質量%の塩酸(HCl)水溶液を添加することにより、以下の化学反応式(1)
5NaClO
2 + 4HCl → 4ClO
2 + 5NaCl + 2H
2O (1)
に示す反応をさせて、3000ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液原液を作製した。なお、二酸化塩素は大気中で10体積%より高濃度になると爆発の危険性があるため、大気圧より高い加圧雰囲気(具体的には5〜6kgf/cm
2(490〜588kPa))中で、二酸化塩素水溶液原液を作製した後、以下の所定濃度の水溶液へ希釈した。
【0042】
例A1の二酸化塩素含有組成物は、容量500ml(ミリリットル)のプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた20ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液496gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液1.5gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに純度が98.5質量%のグリセリン2.5gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:グリセリン=19.84:750:4925=1:37.80:248.3であった。結果を表1にまとめた。
【0043】
例A2の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた50ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液482gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液3gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに純度が98.5質量%のグリセリン15gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:グリセリン=48.2:1500:29550=1:31.12:613.1であった。結果を表1にまとめた。
【0044】
例A3の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた100ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液482gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液3gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに純度が98.5質量%のグリセリン15gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:グリセリン=96.4:1500:29550=1:15.56:306.5であった。結果を表1にまとめた。
【0045】
例A4の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた200ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液471gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液4gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに純度が98.5質量%のグリセリン25gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:グリセリン=188.4:2000:49250=1:10.62:261.4であった。結果を表1にまとめた。
【0046】
例A5の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた500ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液466gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液9gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに純度が98.5質量%のグリセリン25gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:グリセリン=466:4500:49250=1:9.657:105.7であった。結果を表1にまとめた。
【0047】
例A6の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた800ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液465gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液10gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに純度が98.5質量%のグリセリン25gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:グリセリン=744:5000:49250=1:6.720:66.20であった。結果を表1にまとめた。
【0048】
例A7の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた100ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液482gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液3gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに分子量が400のポリエチレングリコール(PEG400)15gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:PEG400=96.4:1500:29550=1:15.56:306.5であった。結果を表1にまとめた。
【0049】
例A8の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた200ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液471gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液4gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに分子量が400のポリエチレングリコール(PEG400)25gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:PEG400=188.4:2000:49250=1:10.62:261.4であった。結果を表1にまとめた。
【0050】
例A9の二酸化塩素含有組成物は、容量500mlのプラスチック容器内で、上記の原液を希釈して得られた500ppmの二酸化塩素(ClO
2)水溶液466gに25質量%の亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)水溶液9gを添加した後ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合し、ねじ蓋を開けてさらに分子量が400のポリエチレングリコール(PEG400)25gを添加した後再度ねじ蓋を閉めて容器を左右に振って混合することにより得た。得られた二酸化塩素含有組成物中の各成分の質量濃度の理論値は、ClO
2:NaClO
2:PEG400=466:4500:49250=1:9.657:105.7であった。結果を表1にまとめた。
【0051】
2.発生二酸化塩素の測定
上記の例A1〜A9の二酸化塩素含有組成物のそれぞれを、20℃の雰囲気温度中で容量50l(リットル)のポリ容器(底内径33cm、蓋内径40cm、高さ48cm)内にポリエチレン袋が配置された容器内に、1回当たり0.76gを5回(合計3.8g)スプレー散布して1分経過後に、容器内に発生した二酸化塩素の質量濃度を北川式検知管で測定した。例A1においては1ppm、例A2においては3ppm、例A3においては5ppm、例A4においては10ppm、例A5においては18ppm、例A6においては28ppm、例A7においては4.5ppm、例A8においては10ppm、例A9においては17ppmであった。結果を表1にまとめた。
【0052】
【表1】
【0053】
表1を参照して、例A1〜A9の二酸化塩素含有組成物については、二酸化塩素含有組成物3.8gを容量50lの容器内に散布することにより、容器内で1〜28ppm程度の二酸化塩素を発生させる能力が認められた。
【0054】
例A1〜A2の二酸化塩素含有組成物は、マスクなどの通気性シートに塗布することにより、花粉などのアレルギー誘発物質、ウイルス、病原菌などの有害物質の拡散吸入の防止するとともにそれらの有害物質の活性を抑制するのに好適である。
【0055】
例A3〜A9の二酸化塩素含有組成物は、花粉などのアレルギー誘発物質を含む物質に塗布することにより、または、花粉などのアレルギー誘発物質、ウイルス、病原菌を含む空間内に塗布または散布することにより、花粉などのアレルギー誘発物質、ウイルス、病原菌などの有害物質の飛散または拡散を防止または抑制するとともに、それらの有害物質の活性を抑制するのに好適である。
【0056】
[実施例B]
例B1として、スギの実6.4g(詳細には、0.08gのスギの実80個)に対して、上記実施例Aの例A3の二酸化塩素含有組成物1.52gをスプレー塗布(詳細には、二酸化塩素含有組成物0.76gを2回スプレー塗布)する処理をした。
図1は二酸化塩素含有組成物による処理前のスギの実を示す写真であり、
図2は二酸化塩素含有組成物による処理後のスギの実を示す写真である。
図1に示すように処理前のスギの実は表面が暗茶色であったが、
図2に示すように処理後のスギの実は表面が明茶色であり表面が二酸化塩素含有組成物により被覆されていた。
【0057】
次に、処理前および処理後のスギの実のそれぞれから、処理前および処理後のスギ花粉を採取し、走査型電子顕微鏡により観察した。
図3は処理前のスギ花粉を示す走査型電子顕微鏡写真であり、
図4は処理後のスギ花粉を示す走査型電子顕微鏡写真である。
図3に示す処理前のスギ花粉は表面が粗く付着物が多くみられたのに対し、
図4に示す処理後のスギ花粉は表面が二酸化塩素含有組成物により被覆され表面が滑らかになっていた。すなわち、二酸化塩素含有組成物は、スギ花粉の表面に添着することにより、スギ花粉の活性を抑制するものと考えられる。
【0058】
例B2として、ヒノキ花粉0.5gに対して、上記実施例Aの例A3の二酸化塩素含有組成物0.76gをスプレー塗布する処理をした。
図5は、処理前および処理後のヒノキ花粉の写真である。
図5の左側の粉末は、処理前のヒノキ花粉を示しており、表面が空気中の酸素により酸化されて茶色となっていた。
図5の右側の粉末は処理後のヒノキ花粉を示しており、表面が二酸化塩素により漂白されて白色となっていた。処理後のヒノキ花粉は、表面が二酸化塩素含有組成物により被覆されていたため、空気中に置かれても表面の白色が保持された。
【0059】
次に、処理前および処理後のヒノキ花粉を走査型電子顕微鏡により観察した。
図6は処理前のヒノキ花粉を示す走査型電子顕微鏡写真であり、
図7は処理後のヒノキ花粉を示す走査型電子顕微鏡写真である。
図6に示す処理前のヒノキ花粉は表面が粗く付着物が多くみられたのに対し、
図7に示す処理後のヒノキ花粉は表面が二酸化塩素含有組成物により被覆され表面が滑らかになっていた。すなわち、二酸化塩素含有組成物は、ヒノキ花粉の表面に添着することにより、ヒノキ花粉の活性を抑制するものと考えられる。
【0060】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。