(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記混合工程において、前記極性溶媒を前記ドープ形態の共役高分子と混合してから、前記極性物質を添加する、ことを特徴とする、請求項1に記載のドープ形態の共役高分子膜の製造方法。
前記ドープ形態の共役高分子の濃度は、0. 1〜 30wt% である、ことを特徴とする請求項2に記載のドープ形態の共役高分子膜の製造方法。
前記極性物質の濃度は、0. 001〜 50wt% である、ことを特徴とする、請求項1に記載のドープ形態の共役高分子膜の製造方法。
前記極性溶媒は、水、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert- ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、イソクロマン、2- フェニルエチルメチルエーテル、n-ブチルエチルエーテル、1, 2- ジエトキシエタン、sec-ブチルエチルエーテル、インイソブチルエーテル、エチルn-プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n-ヘキシルメチルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、メチルn-プロピルエーテル、メタノール、エタノール、エチレングリコール、1-プロパノール、2- プロパノール(すなわちイソプロパノール)、グリセロール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール(すなわちイソブタノール)、2-メチル-2-プロパノール(すなわちtert-ブタノール)、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1- ヘキサノール、シクロペンタノール、3- メチル- 1- ブタノール、3- メチル- 2- ブタノール、2- メチル- 1- ブタノール、3- ヘキサノール、2- ヘキサノール、4- メチル- 2- ペンタノール、2- メチル- 1- ブタノール、2, 2- ジメチル- 1- プロパノール、2- メチル- 1- ペンタノール、2- エチルブタノール、2, 4- ジメチル- 3- ペンタノール、1- ヘプタノール、2- ヘプタノール、3- ヘプタノール、4- ヘプタノール、2- エチル- 1- ヘキサノール、2, 6- ジメチル- 4- ヘプタノール、2- ジメチルシクロヘキサノール、3- ジメチルシクロヘキサノール、4- ジメチルシクロヘキサノール、2- ブトキシエタノール、1- メトキシ- 2- プロパノール、2- メトキシエタノール、2- エトキシエタノール、1- メトキシ- 2- ブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1- エトキシ- 2- プロパノール、3- メトキシ- 1- ブタノール、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n- ブチルエーテル、3- メトキシ- 3- メチルブタノール、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノン、イソプロピルケトン、2- ペンタノン、3- ペンタノン、3- ヘキサノン、ジイソプロピルケトン、2- ジヘキサノン、シクロペンタノン、4- ヘプタノン、イソアミルケトン、3- ヘプタノン、2- ヘプタノン、4- メトキシ- 4- メチル- 2- ペンタノン、5- メチル- 3- ヘプタノン、2- メチルシクロへキサノン、二イソブチルケトン、5- メチル- 2- オクタノン、3- メチルシクロへキサノン、2- シクロヘキセン- 1- オン、4- メチルシクロへキサノン、シクロヘプタノン、4-tert-ブチルシクロへキサノン、イソホロン、ベンジルアセトン、アセトニトリル、アクリロニトリル、トリクロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ネオペンタンニトリル、イソブチロニトリル、n-ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、2- メチルブチロニトリル、イソペンタンニトリル、n-ペンタンニトリル、n-ヘキサンニトリル、3- メトキシプロピオニトリル、3- エトキシプロピオニトリル、3, 3- オキシジプロピオニトリル、n-ヘプタンニトリル、グリコロニトリル、ベンゾニトリル、エチレンシアノヒドリン、ブタンジニトリル、アセトンシアノヒドリン、3-n- ブトキシプロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アクリルアミド、2- アセトアミドエタノール、N,N-ジメチル-N- ベンジルホルムアミド、トリフルオロアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルラウロイルアミド、ε-カプロラクタム、N,N-ジエチルエチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-tert-ブチルホルムアミド、ホルムアミド、ネオペンタンアミド、N-ブチルアミド、N,N-ジメチルアセチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-ホルミルエチルアミン、エチルアミド、N,N-二イソプロピルホルムアミド、1- ホルミルピペリジン、N-メチル-N- ホルミルアニリン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、シクロアミン、芳香族アミン、炭素数6のカルボン酸及びその組合せより選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載のドープ形態の共役高分子膜の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、共役高分子がドープされた後、よく使用される溶媒に溶解されにくいため、従来技術ではドープ形態の共役高分子の溶解性を向上するために、共役高分子の構造を調整し、或いは、溶解性に優れた共役陰イオンを使用し、ドープ形態の共役高分子の溶解性を高めるようにしているが、製造された共役高分子膜の導電度が通常低下してしまう。さらに、ドープ形態の共役高分子がドーパントを有するため、通常熱安定性がよくないが、一部の領域(例えば電極として)にとって、共役高分子膜の高導電性と高熱安定性が必要とされる。
【0004】
従って、共役高分子膜の導電度と熱安定性を如何に向上させるかは、共役高分子の領域ですでに非常に重要な課題の一つになる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、共役高分子膜の導電度と熱安定性を有効に高める製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係わるドープ形態の共役高分子膜の製造方法は、極性物質と、極性溶媒と、ドープ形態の共役高分子とを混合し、ドープ形態の共役高分子溶液を形成する工程と、前記ドープ形態の共役高分子溶液を利用して、ドープ形態の共役高分子膜を製造する工程と、を有するドープ形態の共役高分子膜の製造方法であって、前記極性物質は、下記式(1)、下記式(2
)およびその組合せからなる群より選択され、前記極性溶媒は、水、エーテル系、アルコール系、スルホキシド系、アルコールエーテル系、ケトン系、アミン系、ニトリル系、カルボン酸系、アミド系の溶媒およびその組合せからなる群より選択され、下記式(1)中のe は、0〜 5の整数を示し、下記式(1)中のR
1〜R
8及び下記式(2)のR
9〜R
14は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基、OC
jH
2j+1、C
jH
2j+1、SC
jH
2j+1、N(C
jH
2j+1)
2及び
CjH2jSO3Hからなる群より選択され、ここで、jは、1〜8の整数を示す
と共に、下記式(1)のR1〜R8及び下記式(2)のR9〜R14のうちの少なくとも一つは、ハロゲンを含むことを特徴とする。
【化1】
【0007】
本発明の一実施例において、ドープ形態の共役高分子は、下記式(3)〜下記式(6)のうちのいずれか一つ、その誘導体、共重合体およびその組合せからなる群より選択され、下記式(3)〜 下記式(6)のn は、3〜5000の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のR
1〜R
20は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基、OC
jH
2j+1、C
jH
2j+1、SC
jH
2j+1、N(C
jH
2j+1)
2及び
CjH2jSO3Hからなる群より選択され、ここで、jは、1〜8の整数を示し、下記式(4)のp は、0〜 3の整数を示し、下記式(6)のy は、0〜 1の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のm は、-5000〜5000の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のa は、5000〜-5000の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のA
aは、有機陰イオン、有機陽イオン、無機陰イオン、無機陽イオン、イオン性高分子からなる群のうちのいずれか一つを示すことを特徴とする。
【化2】
【0008】
本発明の一実施例において、混合工程において、極性溶媒とドープ形態の共役高分子とを混合してから、極性物質を添加する。
【0009】
本発明の一実施例において、ドープ形態の共役高分子の濃度は、0. 1〜 30wt% である。
【0010】
本発明の一実施例において、極性物質の濃度は、0. 001〜 50wt% である。
【0011】
本発明の一実施例において、極性物質は
、ヘプタフルオロイソプロピルヨウ素
、パーフルオロ吉草酸、パーフルオロヘキサン酸、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロプロパ
ンおよびその組合せからなる群より選択される。
【0012】
本発明の一実施例において、極性溶媒は、水、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert- ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、イソクロマン、2- フェニルエチルメチルエーテル、n-ブチルエチルエーテル、1, 2- ジエトキシエタン、sec-ブチルエチルエーテル、インイソブチルエーテル、エチルn-プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n-ヘキシルメチルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、メチルn-プロピルエーテル、メタノール、エタノール、エチレングリコール、1- プロパノール、2- プロパノール(すなわちイソプロパノール)、グリセロール、1- ブタノール、2- ブタノール、2- メチル- 1- プロパノール(すなわちイソブタノール)、2- メチル- 2- プロパノール(すなわちtert- ブタノール)、1- ペンタノール、2- ペンタノール、3- ペンタノール、2, 2- ジメチル- 1- プロパノール、1- ヘキサノール、シクロペンタノール、3- メチル- 1- ブタノール、3- メチル- 2- ブタノール、2- メチル- 1- ブタノール、3- ヘキサノール、2- ヘキサノール、4- メチル- 2- ペンタノール、2- メチル- 1- ブタノール、2, 2- ジメチル- 1- プロパノール、2- メチル- 1- ペンタノール、2- エチルブタノール、2, 4- ジメチル- 3- ペンタノール、1- ヘプタノール、2- ヘプタノール、3- ヘプタノール、4- ヘプタノール、2- エチル- 1- ヘキサノール、2, 6- ジメチル- 4- ヘプタノール、2- ジメチルシクロヘキサノール、3- ジメチルシクロヘキサノール、4- ジメチルシクロヘキサノール、2- ブトキシエタノール、1- メトキシ- 2- プロパノール、2- メトキシエタノール、2- エトキシエタノール、1- メトキシ- 2- ブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1- エトキシ- 2- プロパノール、3- メトキシ- 1- ブタノール、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n- ブチルエーテル、3- メトキシ- 3- メチルブタノール、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノン、イソプロピルケトン、2- ペンタノン、3- ペンタノン、3- ヘキサノン、ジイソプロピルケトン、2- ジヘキサノン、シクロペンタノン、4- ヘプタノン、イソアミルケトン、3- ヘプタノン、2- ヘプタノン、4- メトキシ- 4- メチル- 2- ペンタノン、5- メチル- 3- ヘプタノン、2- メチルシクロへキサノン、二イソブチルケトン、5- メチル- 2- オクタノン、3- メチルシクロへキサノン、2- シクロヘキセン- 1- オン、4- メチルシクロへキサノン、シクロヘプタノン、4-tert-ブチルシクロへキサノン、イソホロン、ベンジルアセトン、アセトニトリル、アクリロニトリル、トリクロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ネオペンタンニトリル、イソブチロニトリル、n-ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、2- メチルブチロニトリル、イソペンタンニトリル、n-ペンタンニトリル、n-ヘキサンニトリル、3- メトキシプロピオニトリル、3- エトキシプロピオニトリル、3, 3- オキシジプロピオニトリル、n-ヘプタンニトリル、グリコロニトリル、ベンゾニトリル、エチレンシアノヒドリン、ブタンジニトリル、アセトンシアノヒドリン、3-n- ブトキシプロピオニトリル、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アクリルアミド、2- アセトアミドエタノール、N,N-ジメチル-N- ベンジルホルムアミド、トリフルオロアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルラウロイルアミド、ε- カプロラクタム、N,N-ジエチルエチルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-tert- ブチルホルムアミド、ホルムアミド、ネオペンタンアミド、N-ブチルアミド、N,N-ジメチルアセチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-ホルミルエチルアミン、エチルアミド、N,N-二イソプロピルホルムアミド、1- ホルミルピペリジン、N-メチル-N- ホルミルアニリン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、シクロアミン、芳香族アミン、炭素数6のカルボン酸、及びその組合せより選択される。
【0013】
本発明に係わるドープ形態の共役高分子膜の処理方法は、ドープ形態の共役高分子膜を製造する工程と、前記ドープ形態の共役高分子膜に、極性物質と極性溶媒を含有する混合溶液を添加する工程と、を有し、前記極性物質は、下記式(1)、下記式(2
)およびその組合せからなる群より選択され、前記極性溶媒は、水、エーテル系、アルコール系、スルホキシド系、アルコールエーテル系、ケトン系、アミン系、ニトリル系、カルボン酸系、アミド系の溶媒およびその組合せからなる群より選択され、下記式(1)中のe は、0〜 5の整数を示し、下記式(1)中のR
1〜R
8及び下記式(2)のR
9〜R
14は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基、OC
jH
2j+1、C
jH
2j+1、SC
jH
2j+1、N(C
jH
2j+1)
2及び
CjH2jSO3Hからなる群より選択され、ここで、jは、1〜8の整数を示す
と共に、下記式(1)のR1〜R8及び下記式(2)のR9〜R14のうちの少なくとも一つは、ハロゲンを含むことを特徴とする。
【化3】
【0014】
本発明の一実施例
におけるドープ形態の共役高分子膜の処理方法において、ドープ形態の共役高分子膜に含有される前記ドープ形態の共役高分子は、下記式(3)〜下記式(6)のうちのいずれか一つ、その誘導体、共重合体およびその組合せからなる群より選択され、下記式(3)〜 下記式(6)のn は、3〜5000の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のR
1〜R
20は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基、OC
jH
2j+1、C
jH
2j+1、SC
jH
2j+1、N(C
jH
2j+1)
2及び
CjH2jSO3Hからなる群より選択され、ここで、jは、1〜8の整数を示し、下記式(4)のp は、0〜 3の整数を示し、下記式(6)のy は、0〜 1の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のm は、-5000〜5000の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のa は、5000〜-5000の整数を示し、下記式(3)〜 下記式(6)のA
aは、有機陰イオン、有機陽イオン、無機陰イオン、無機陽イオン、イオン性高分子からなる群のうちのいずれか一つを示すことを特徴とする。
【化4】
【0015】
本発明の一実施例におけるドープ形態の共役高分子膜の処理方法において、極性物質が混合溶液に占める濃度は、0. 001〜 50wt% である。
【0016】
本発明の一実施例におけるドープ形態の共役高分子膜の処理方法において、混合溶液は、液体もしくは気体状態で、コーティング、噴霧法、インクジェット法や浸漬法によりドープ形態の共役高分子膜に添加される。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明に係わるドープ形態の共役高分子膜の製造方法によれば、ドープ形態の共役高分子を極性物質及び極性溶媒と混合し、シート抵抗が比較的に低いドープ形態の共役高分子膜を製造することができ、相対にその導電度を向上するとともに、高い熱安定性を有する。
また、本発明に係わるドープ形態の共役高分子膜の処理方法によれば、混合溶液をドープ形態の共役高分子膜に添加することにより、ドープ形態の共役高分子膜の導電度を有効に高め、製造されたドープ形態の共役高分子膜は、太陽電池、コンデンサー、発光ダイオード、パターンのエッチング、静電気放電、フレキシブル電極、電磁干渉シールドなどの分野に利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の複数の実施例に基づいて、ドープ形態の共役高分子膜の製造方法と処理方法を説明する。
【0020】
まず、ドープ形態の共役高分子膜の製造方法について説明する。ドープ形態の共役高分子膜の製造方法は、極性物質と、極性溶媒と、ドープ形態の共役高分子とを混合し、ドープ形態の共役高分子溶液を形成する工程と、前記ドープ形態の共役高分子溶液を用いて、ドープ形態の共役高分子膜を製造する工程と、を有する。
【0021】
極性物質は、式(1)、式(2)、無機酸、含ベンゼン環を含む有機酸およびその組合せからなる群より選択される。
【化5】
そのうち、式(1)のe は、0〜 5の整数を示し、式(1)のR
1〜R
8及び式(2)のR
9〜R
14は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基、OC
jH
2j+1、C
jH
2j+1、SC
jH
2j+1、N(C
jH
2j+1)
2、
CjH2jSO3HおよびC
jH
2jPO
3H
2からなる群より選択され、ここで、j は、0〜 8の整数を示す。本発明の一実施例において、極性物質としては、ヘキサフルオロイソプロパノール(hexafluoro-isopropanol, HFIP)、1, 1, 1, 3, 3, 3- ヘキサフルオロ- 2- フェニル- 2- プロパノール(1, 1, 1, 3, 3, 3-hexa-fluoro-2-phenyl-2-propanol, HFPP )、1, 1, 1, 3, 3, 3- ヘキサフルオロ- 2- (p-トリル)- プロパノール(1, 1, 1, 3, 3, 3-hexafluoro-2-(p-tolyl)-propanol, HFTP )、ヘプタフルオロイソプロピルヨウ素(Perfluoroisopropyl iodide, PFIPI)、テトラフルオロプロパノール(Tetrafluoropropanol, TFP)、ペンタフルオロプロパノール(Pentafluoropropanol, PFPOH)、ヘキサフルオロプロパノール(Perfluoropropanol )、1H,1H,3H-ヘキサフルオロ- 2- ブタノール、パーフルオロ吉草酸、パーフルオロヘキサン酸(Perfluorohexanoic acid)、ヘキサフルオロベンゼン(perfluorobenzene)、パーフルオロプロパン(perfluoropropane, PFP )、硫酸、塩酸、過塩素酸、硝酸、安息香酸(benzoic acid)またはその組合せを含む。本発明の他の実施例において、式(1)のR
1〜R
8および式(2)のR
9〜R
14のうちの少なくとも一つは、少なくとも一つのハロゲンを含む。なお、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。具体例として、R
1は、少なくとも一つのハロゲンを有するハロゲン化アルキル(例えば-CHF
2、-CH
2F、-C
2H
2F
3など)である。もちろん、本発明は、ハロゲンを有するアルキル基に限らず、ハロゲンを有するアルキレン基(例えば-CHCF
2、-CCFなど)でもよく、少なくとも一つの置換位置を有する置換基グループであることもできる。
【0022】
極性溶媒は、水と、エーテル系(ethers)( 例えば、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert- ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、イソクロマン、2- フェニルエチルメチルエーテル、n-ブチルエチルエーテル、1, 2- ジエトキシエタン、sec-ブチルエチルエーテル、インイソブチルエーテル、エチルn-プロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、n-ヘキシルメチルエーテル、n-ブチルメチルエーテル、メチルn-プロピルエーテル) と、アルコール系(alcohols)(例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、1- プロパノール、2- プロパノール(すなわちイソプロパノール)、グリセロール、1- ブタノール、2- ブタノール、2- メチル- 1- プロパノール(すなわちイソブタノール)、2- メチル- 2- プロパノール(すなわちtert- ブタノール)、1- ペンタノール、2- ペンタノール、3- ペンタノール、2, 2- ジメチル- 1- プロパノール、1- ヘキサノール、シクロペンタノール、3- メチル- 1- ブタノール、3- メチル- 2- ブタノール、2- メチル- 1- ブタノール、3- ヘキサノール、2- ヘキサノール、4- メチル- 2- ペンタノール、2- メチル- 1- ブタノール、2, 2- ジメチル- 1- プロパノール、3- ヘキサノール、2- ヘキサノール、4- メチル- 2- ペンタノール、2- メチル- 1- ペンタノール、2- エチルブタノール、2, 4- ジメチル- 3- ペンタノール、1- ヘプタノール、2- ヘプタノール、3- ヘプタノール、4- ヘプタノール、2- エチル- 1- ヘキサノール、2, 6- ジメチル- 4- ヘプタノール、2- ジメチルシクロヘキサノール、3- ジメチルシクロヘキサノール、4- ジメチルシクロヘキサノールおよびその組合せなど)と、スルホキシド系(sulfoxides)(例えばジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシドおよびその組合せなど)と、アルコールエーテル系(alcohol ethers)(例えば2- ブトキシエタノール、1- メトキシ- 2- プロパノール、2- メトキシエタノール、2- エトキシエタノール、1- メトキシ- 2- ブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1- エトキシ- 2- プロパノール、3- メトキシ- 1- ブタノール、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n- ブチルエーテル、3- メトキシ- 3- メチルブタノール、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルおよびその組合せなど)と、ケトン系(ketones )(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノン、イソプロピルケトン、2- ペンタノン、3- ペンタノン、3- ヘキサノン、ジイソプロピルケトン、2- ジヘキサノン、シクロペンタノン、4- ヘプタノン、イソアミルケトン、3- ヘプタノン、2- ヘプタノン、4- メトキシ- 4- メチル- 2- ペンタノン、5- メチル- 3- ヘプタノン、2- メチルシクロへキサノン、二イソブチルケトン、5- メチル- 2- オクタノン、3- メチルシクロへキサノン、2- シクロヘキセン- 1- オン、4- メチルシクロへキサノン、シクロヘプタノン、4-tert-ブチルシクロへキサノン、イソホロン、ベンジルアセトンおよびその組合せなど)と、アミン系(amines)(例えばモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、シクロアミン、芳香族アミンおよびその組合せなど)と、ニトリル系(nitriles)(例えばアセトニトリル、アクリロニトリル、トリクロロアセトニトリル、プロピオニトリル、ネオペンタンニトリル、イソブチロニトリル、n-ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、2- メチルブチロニトリル、イソペンタンニトリル、n-ペンタンニトリル、n-ヘキサンニトリル、3- メトキシプロピオニトリル、3- エトキシプロピオニトリル、3, 3- オキシジプロピオニトリル、n-ヘプタンニトリル、グリコロニトリル、ベンゾニトリル、エチレンシアノヒドリン、ブタンジニトリル、アセトンシアノヒドリン、3-n- ブトキシプロピオニトリルおよびその組合せなど)と、カルボン酸系(carboxylic acids)(主に、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐鎖状のカルボン酸)と、アミド系(amides)(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アクリルアミド、2- アセトアミドエタノール、N,N-ジメチル-N- ベンジルホルムアミド、トリフルオロアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルラウロイルアミド、ε- カプロラクタム、N,N-ジエチルエチルアミド、N-tert- ブチルホルムアミド、ホルムアミド、ネオペンタンアミド、N-ブチルアミド、N,N-ジメチルアセチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-ホルミルエチルアミン、エチルアミド、N,N-二イソプロピルホルムアミド、1- ホルミルピペリジン、N-メチル-N- ホルミルアニリン溶媒およびその組合せなどの溶媒)と、からなる群より選択される。
【0023】
ここで、共役高分子とは、2重結合と単結合が交互に共役結合した高分子であり、本質的に、導電性を有し、本質的な導電性ポリマー(intrinsic conductive polymer, ICP )と称する。本発明の共役高分子は、ポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン)(poly( 3, 4-ethylenedioxythiophenes), PEDOT)、ポリチオフェン(polythiophenes)、ポリ(3, 4- プロピレンジオキシチオフェン)(poly( 3, 4-(2, 2-benzylpropylenedioxythiophenes)), PProDOT )、ポリアニリン(polyanilines, PANI)、その共重合体(copolymers)、誘導体およびその組合せより選択されることが好ましい。共役高分子の導電性を高めるために、本発明の一実施例において、ドーピング法(doping)により、ホールもしくは電子の輸送キャリアを形成し、より高い導電性を有するドープ形態の共役高分子を形成する。なお、ドーピング法は、酸性溶液でドーピングする方法、酸化剤でドーピングする方法などがある。特に、本発明のドープ工程では、重合反応を行う前にモノマーにドーパント(dopant)を添加してもよく、重合反応を行った後、共役高分子に添加してもよい。なお、使用するドーパントは、1種に限らず、同時に2種以上のドーパントをドーピングすることもできる。また、共役高分子も、必要に応じて、ドーピングもしくは脱ドーピング(dedoping)を繰り返して行うことができる。ただし、その後、極性物質および極性溶媒と混合する際に、ドープ形態の共役高分子を使用することが好ましい。
【0024】
本発明のドープ形態の共役高分子の構造式は、例えば、式(3)〜 式(6)のうちのいずれか一つ、その誘導体、共重合体(例えば式(7)〜 式(8))およびその組合せからなる群より選択される。
【化6】
【0025】
構造式(3)〜 式(8)において、式(3)は、ドープ形態のポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体の構造式である。式(4)は、ドープ形態のポリチオフェン及びその誘導体の構造式である。式(5)は、ドープ形態のポリ(3, 4- プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体の構造式である。式(6)は、ドープ形態のポリアニリン及びその誘導体の構造式である。式(7)は、ドープ形態のポリ(アニリン‐co‐3,4-エチレンジオキシチオフェン)(poly(aniline-co-3,4-ethylenedioxy-thiophenes))及びその誘導体であり、主に、アニリン(aniline)と3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)とから合成された共重合体である。式(8)は、ドープ形態のポリ(アニリン‐co‐ピロール)(poly(aniline-co-pyrroles))であり、主に、アニリン(aniline)とピロール(pyrrole)から合成された共重合体である。
【0026】
そのうち、式(3)〜(8)のnは、3〜5000の整数を示し、式(3)〜式(8)のR
1〜R
20は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基、OC
jH
2j+1、C
jH
2j+1、SC
jH
2j+1、N(C
jH
2j+1)
2、
CjH2jSO3HおよびC
jH
2jPO
3H
2からなる群より選択され、ここで、j は、0〜 8の整数を示す。式(4)のp は、0〜 3の整数を示し、式(6)のy は、0〜 1の整数を示す。式(3)〜 式(8)のm は、- 5000〜 5000の整数を示し、式(3)〜 式(8)のa は、- 5000〜 5000の整数を示す。式(3)〜 式(8)のA
aは、有機陰イオン、有機陽イオン (例えばCSA
-1(camphorsulfonic acid)、MSA
-1(methylsulfonic acid )、TsO
-1(toluene-p-sulfonic acid )、DBSA
-1(dodecylbenzene- sulfonic acid )、N-alkylpyridinium ([CnPY]
+))、式(9)、イオン性高分子(例えば式(10)〜式(11)のうちのいずれか一つ)、無機陰イオン、無機陽イオン(例えばF
-1、Br
-1、Cl
-1、I
-1、SO
4-2、PO
4-3、ClO
4-1、ClO
2-1、BF
4-1、NO
3-1、NH
4+、Na
+、K
+など)からなる。なお、式(10)〜 式(11)のq は、1〜5000の中の整数を示す。ここで注目しておきたいところは、「中の整数」とは、端点の二つの数値も含むことである。
【化7】
【0027】
極性物質と、極性溶媒とドープ形態の共役高分子とをドープ形態の共役高分子溶液に混合する際に、ドープ形態の共役高分子は、乾燥した固態形式(例えば粉末や塊状)、または、乾燥せず溶液状態で直接に極性物質と極性溶媒とを混合し、あるいは、ドープ形態の共役高分子を極性溶媒と混合してから、極性物質と混合してもよい。ここで、ドープ形態の共役高分子がドープ形態の共役高分子溶液に占める濃度は、0. 1〜 30重量パーセント(wt% )である。極性物質がドープ形態の共役高分子溶液に占める濃度は、約0. 001〜 50wt% である。
【0028】
極性物質と極性溶媒とドープ形態の共役高分子とを混合する際に、材料の極性の強度によって順次添加することが好ましい。例えば、本発明の一実施例において、選用した極性物質が極性溶媒に比べ、極性が比較的に大きい場合に、ドープ形態の共役高分子と混合するときは、予め極性の比較的に小さい極性溶媒をドープ形態の共役高分子と混合してから、極性の比較的に大きい極性物質を添加することにより、極性の比較的に大きい極性物質がドープ形態の共役高分子と相溶せず、あるいは、沈殿が生成し、ドープ形態の共役高分子の分散性が低下してしまうことを避けることができる。しかしながら、他の実施例において、選択した極性物質と極性溶媒が、同じまたは近い極性を有する溶媒であるときは、極性物質と極性溶媒は、同時にドープ形態の共役高分子と混合することもできる。また、極性物質と極性溶媒を予め均一に混合し、それから、ドープ形態の共役高分子に添加して混合することもできる。さらに、他の実施例において、選用した極性物質の極性が選用した極性溶媒より小さい場合には、混合工程では、ドープ形態の共役高分子を予め極性物質と混合してから、極性溶媒と混合する。以上、本発明の具体的な実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
ドープ形態の共役高分子は、極性物質と極性溶媒とを均一に混合した後、回転塗布、インクジェット、フローコーティング、モールディング、浸漬などの方法により、高導電性、高熱安定性のドープ形態の共役高分子膜を製造し、太陽電池、コンデンサー、発光ダイオードの電極、導電パターンの作製、静電気放電、フレキシブル電極や電磁干渉シールド等の分野に利用できる。本発明の一実施例において、本発明の極性物質と極性溶媒を添加したドープ形態の共役高分子溶液は、ドープ形態の共役高分子水溶液(水のみを溶媒として、ドープ形態の共役高分子を溶解)から製造したドープ形態の共役高分子膜と比べ、シート抵抗(好適な場合、200倍も低くできる)が比較的に低く、すなわち、導電性が比較的に高く、熱安定性もよい。
【0030】
さらに、本発明は、ドープ形態の共役高分子膜を製造する工程と、混合溶液をドープ形態の共役高分子膜に添加する工程と、を有するドープ形態の共役高分子膜の処理方法も提供する。
【0031】
ドープ形態の共役高分子膜は、ドープ形態の共役高分子から構成され、前記式(3)〜 式(6)のうちのいずれか一つ、その誘導体、共重合体およびその組合せからなる群より選択される。また、本発明に選択されたドープ形態の共役高分子の構造式に関する説明は以上述べた内容を参照することができる。
【0032】
混合溶液は、極性物質と極性溶媒とから調製され、そのうち、極性物質は、前記式(1)、式(2)、無機酸(例えば硫酸、塩酸、過塩素酸、硝酸)、ベンゼン環を含有する有機酸(例えば安息香酸)およびその組合せからなる群より選択される。極性溶媒は、水、エーテル系、アルコール系、スルホキシド系、アルコールエーテル系、ケトン系、アミン系、ニトリル系、カルボン酸系、アミド系およびその組合せからなる群より選択される。その極性物質と極性溶媒についての詳しい説明は以前の段落で示したとおりである。
【0033】
なお、ドープ形態の共役高分子膜の処理方法は、上述した製造方法と比較すると、ドープ形態の共役高分子膜を製造した後、混合溶液とドープ形態の共役高分子膜の処理を行うところが異なる。さらに、極性物質が混合溶媒に占める濃度は、約0. 001〜 50wt% である。
【0034】
そして、混合溶液をドープ形態の共役高分子膜に添加する。ここでの「添加」とは、主に、混合溶液がドープ形態の共役高分子膜に接触できるすべての方法を含む。例えば、混合溶液が液体もしくは気体状態で、液滴法や噴霧法により、ドープ形態の共役高分子膜と接触してよく、ドープ形態の共役高分子膜を混合溶液に浸漬し、その後、取り出して乾燥してもよい。本発明の一実施例において、本発明のドープ形態の共役高分子膜の処理方法による製造したドープ形態の共役高分子膜は、ドープ形態の共役高分子膜の導電度を有效に向上させることができる。
【0035】
以下の実験例において、それぞれポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT :PSS )及びポリアニリン、ポリ(スチレンスルホン酸)(PANI:PSS )膜の製造及び処理を用いて、本発明のドープ形態の共役高分子膜の製造方法及びドープ形態の共役高分子膜の処理方法を説明する。
【実施例】
【0036】
実施例1:ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)膜の製造及びその導電度、熱安定性及び曲げ試験。
ポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)膜の製造について。
ポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT :PSS (poly(styrenesulfonate))[その構造は、式(12)を参照、なお、PSS をドープPEDOT のドーパントとし、且つ、PEDOT :PSS の重量比は、1:2.5]0.1gを、水10mlに溶解させ、1 wt% PEDOT:PSS 水溶液とする。それぞれPEDOT :PSS 水溶液に5 wt%、10 wt%、15 wt%及び20 wt%(PEDOT :PSS 水溶液に対して)の4種の異なる濃度のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)をさらに添加した後、一時間の超音波振動を加える。PEDOT :PSS 水溶液と、4種の異なる濃度のHFIPが添加されたPEDOT :PSS 水溶液から、それぞれ100μl を5枚の1×1cm
2のガラス上に滴下し、100℃に加熱し乾燥させ、これらのサンプルのシート抵抗を測定した。その結果を表1の第1〜 第5組に記載する。本発明によって、極性物質とするHFIPと、極性溶媒とする水と、を混合して製造されたPEDOT :PSS 膜は、PEDOT :PSS 水溶液から製造されたPEDOT :PSS 膜より、比較的に低いシート抵抗を有するため、比較的に高い導電度を有する。
【化8】
【0037】
さらに、異なる濃度のヘプタフルオロイソプロピルヨウ素(PFIPI)、硫酸(H
2SO
4)または安息香酸(benzoic acid)を極性物質とし、水を極性溶媒として1 wt% PEDOT:PSS 溶液を生成し、これらの溶液から製造したPEDOT :PSS 膜のシート抵抗は、表1の第6〜 16組に示す。本実験例によれば、PFIPI 、H
2SO
4または安息香酸を極性物質とし、水を極性溶媒とし、PEDOT :PSS と混合して製造されたPEDOT :PSS 膜は、PEDOT :PSS 水溶液から製造したPEDOT :PSS 膜より、比較的に低いシート抵抗を有するため、比較的に高い導電度を有する。
【0038】
また、HFIPを極性物質とし、水及び異なる濃度のエチレングリコール(ethylene glycol, EG )を極性溶媒とし、PEDOT :PSS と混合する。本実験例において、PEDOT :PSS は、同時に水、EG及びHFIPと混合してもよく、予め水と混合してからEGに添加して均一に混合した後、HFIPに添加してもよい。組成の異なる各溶液からPEDOT :PSS 膜を製造した後、そのシート抵抗を測定した。その結果を、表1の第17〜 第20組に記載する。その結果は、第1組のデータと比較すると、極性物質と2種の極性溶媒とを添加して製造したPEDOT :PSS 膜は、比較的に低いシート抵抗を有し、つまり、比較的に高い導電度を有する。そのうち、10〜 20 wt% HFIP 、0. 5〜 1 wt% H
2SO
4または0.2〜4 wt%安息香酸を極性物質とし、水を極性溶媒とし、もしくは、5 wt% HFIP を極性物質とするとともに、10 wt% EG 及び85 wt%水を極性溶媒とし、混合して製造したドープ形態のPEDOT :PSS 膜は、比較的に低いシート抵抗を有する。
【表1】
【0039】
PEDOT :PSS 膜の熱安定性試験
1wt% PEDOT:PSS を84 wt%水、10wt% EG、5wt% HFIPと混合してから(例えば表1の第18組の溶液)、PEDOT :PSS 溶液をガラス上に滴下し、PEDOT :PSS 膜を製造してから、250℃で加熱し、PEDOT :PSS 膜の異なる加熱時間でのシート抵抗の変化を測定した。その結果を
図1に記載する。その結果によれば、本発明のドープ形態の共役高分子膜の処理方法により製造した高導電性ドープ形態の共役高分子膜は、250℃で40分加熱し、膜のシート抵抗を増加せず、優れた熱安定性を有する。
【0040】
PEDOT :PSS 膜の曲げ試験
上述した溶液(例えば表1の第18組のPEDOT :PSS 溶液)1mlを、きれいな5cm ×3cm のPET プラスチックチップキャリア上にコーティングして、100℃まで加熱して乾燥した後、導電電極を形成し、
図2に示すようにこの電極を数回折り曲げ、シート抵抗の変化を測定した。その結果は
図3に示すように、本発明による高導電性、高熱安定性のドープ形態の共役高分子膜は、1000回折り曲げられても、ドープ形態の共役高分子膜のシート抵抗値が、顕著に変化することがない。言い換えれば、本発明による高導電性、高熱安定性ドープ形態の共役高分子膜は、フレキシブル性を有し、フレキシブル電極とすることが可能である。
【0041】
実施例2:混合溶液でポリアニリン:ポリ(スチレンスルホン酸)膜を処理する。
ポリアニリン:ポリ(スチレンスルホン酸)の生成について。
過硫酸アンモニウム((NH
4)
2S
2O
8)0.41gを1.2 M塩酸水溶液10mlに溶解させ、アニリンモノマー0.17gと、フェノール1.7×10
-5gを1.2 M塩酸水溶液26mlに溶解させる。過硫酸アンモニウムを含有する塩酸水溶液と、アニリンモノマーを含有する塩酸水溶液と、を混合した後、室温で重合反応を行う。約20分間後、溶液中に黒緑色のドープ形態のポリアニリン(固体)を生成する。この重合反応後の溶液をフィルターで濾過(液体部分を除去し、固体部分を保留する)した後、それぞれ蒸留水、メタノール、塩酸水溶液などの洗浄剤で固体部分を濾過液が無色になるまで洗浄する。しかしながら、上述したように生成したポリアニリンが塩酸でドープされた後、その導電度が比較的に小さいため、0.1 Mのアンモニア水でポリアニリン粉末を脱ドーピング(dedoped )し、粉末に乾燥した後、0.1gを取り、0.1 Mポリスチレンスルホン酸(PSS、分子量75000)水溶液20mlに溶解させると、ドープ形態のポリアニリン:ポリ(スチレンスルホン酸)(PANI:PSS)(式(13)に示すように、PANI:PSSの重量比は、3:2)水溶液を得ることができる。
【化9】
【0042】
ポリアニリン:ポリ(スチレンスルホン酸)(PANI:PSS )膜の製造及び処理について。
2枚の1×1cm
2のガラスを用意し、それぞれ100μLのドープ形態のPANI:PSS水溶液を滴下し、100℃に加熱しPANI:PSS膜に乾燥する。そのうち、1枚のPANI:PSS膜に5 wt% HFIP 0.2mlと95 wt% EGとを含有する混合溶液(本実験例において、HFIPを極性物質とし、水およびEGを極性溶媒とする)をさらに滴下し、100℃に加熱して乾燥した後、この二つのドープ形態の共役高分子膜のシート抵抗を測定する。その結果を表2に記載する。表2のデータに示すように、本発明のPANI:PSS膜は、混合溶液により処理された後、ポリアニリン膜の導電度を向上させることができる。
【表2】
【0043】
実施例3:ポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT :PSS )膜の色素増感型太陽電池における適用。
本実施例において、スクリーン印刷(Screen printing )により、二酸化チタン(Titanium dioxide, TiO
2)塗料を洗浄済みの導電ガラスにコーティングし、管状炉に放入した後、450℃の高温で焼成することにより、TiO
2をアナターゼ(Anatase )結晶に形成するとともに、それをFTO (fluorine-doped tin oxide)ガラス表面に緊密に附着させ、2層の小粒子TiO
2膜と、1層の大粒子TiO
2散射層を順次コーティングし、TiO
2電極を形成する。形成したTiO
2電極を濃度3×10
-4 MのN 719(cis-bis(isothiocyanato)bis-(2, 2'-bipyridyl-4, 4'-dicar- boxylato)-ruthenium(II)bis-tetrabutyl-ammonium )色素のエタノール溶液に4時間浸漬し、取り出してから、アルコールで洗浄し、ペトリ皿中で放置乾燥させる。2枚のガラス上にそれぞれ1滴のPEDOT :PSS 水溶液(例えば、表1の第1組溶液の成分)と、10 wt% EG と5 wt% HFIP が入ったPEDOT :PSS 溶液(例えば表1の第18組溶液の成分)を滴下し、加熱して乾燥してから、PEDOT :PSS 対極を得る。Surlyn(登録商標)製のスペーサーを用いて、色素が吸着したTiO
2電極と、PEDOT :PSS 対極とを、サンドイッチの形式で組み立てて、最後に孔を開口した対極に電解液を注入する。ここで、電解液の成分は、0.6 M BMII (N-methyl-N- butyl-imidazolium iodide)、0.1 M LiI、0.05 M I
2、0.5 M TBP(4-tert-butylpyridine )、0.1 M GuNCS(guanidinium thiocyanate )をアセトニトリルに溶解させてなるものである。その後、速やかにカバーガラスにより孔を閉じて瞬間接着剤で密封し、導電ガラスと白金(Pt)金属の無い色素増感型太陽電池素子の組み立てを完成する。これに、AM1.5(強度は、100 mW/cm
2)の疑似太陽光を照射して、電流- 電圧曲線を測定し、光電変換効率を算出する。
【0044】
その結果は、表3に示すように、PEDOT :PSS と極性物質と極性溶媒とを混合してから、PEDOT :PSS 膜に形成することにより、色素増感型太陽電池分野に利用することができ、無導電ガラスと白金の無い色素増感型太陽電池の光電変換効率を有効に向上させることができる。
【表3】
【0045】
実施例4:ポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT :PSS )膜の高分子多重接合型太陽電池における適用。
まず、きれいな酸化インジウムスズ(ITO )ガラスを用意し、その上にPEDOT :PSS を回転塗布して、正孔輸送層(transport layer) とし、(それぞれ、例えば表1の第1組成分及び第18組成分の溶液を用いて、ITO ガラスに回転塗布して、加熱法で乾燥する)、それから、PCBM([ 6, 6]-phenyl-C61-butyric acid methyl ester)とP 3HT(poly( 3-hexylthiophene))が混入した活性層(active layer)をそれぞれコーティングし、最後に、陰極としてカルシウムとアルミニウム金属を蒸着し、高分子多重接合型太陽電池を組み立てる。異なる共役高分子溶液(表1の第1組の成分及び第18組の成分)から製造したPEDOT :PSS 膜を正孔輸送層とする高分子多重接合型太陽電池の光電変換効率のデータを、表4に示す。
【0046】
表4に示すように、極性物質(HFIP)と極性溶媒(エチレングリコールと水の混合溶媒)を含有するPEDOT :PSS 溶液を使用して製造した高導電性を有するドープ形態の共役高分子膜を正孔輸送層とすることにより、高分子多重接合型太陽電池が、比較的に高い光電変換効率を有することが理解できる。
【表4】
【0047】
実施例5:ポリ(3, 4- エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT :PSS )膜の電極における適用。
100μl の表1の第18組成分の溶液をきれいなガラス上にコーティングして製造したPEDOT :PSS 膜を、導電電極とし、PEDOT :PSS 膜に1層のポリアニリン膜を塗布して作用電極(working electrode )とする。そして、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)法により、三電極システムで、ポリアニリン膜の電気化学的性質を測定する。なお、ポリアニリンを塗布したPEDOT :PSS 膜を作用電極とする他に、参照電極(Reference electrode )としてAg/Ag
+を用い、対極(Counter electrode )として白金プレートを用い、電解液として0.1 Mの LiClO
4/CH
3CNの溶液を用い、走査速度として100 mV/sec に設定した。その結果を、
図4に記載する。サイクリックボルタンメトリー図(CV図)に示すように、ポリアニリンの酸化還元電流曲線がほぼ対称的であるため、本発明の高導電性を有するPEDOT :PSS 膜は、電極として利用できる。
【0048】
上述したように、本発明に係わるドープ形態の共役高分子膜の製造方法は、ドープ形態の共役高分子を極性物質と極性溶媒とを混合することにより、シート抵抗が比較的に低いドープ形態の共役高分子膜を製造することができ、その導電度を向上させ得るとともに、高熱安定性を得ることができる。また、本発明に係わるドープ形態の共役高分子膜の処理方法は、混合溶液をドープ形態の共役高分子膜に添加することにより、ドープ形態の共役高分子膜の導電度を有効に向上させ、製造したドープ形態の共役高分子膜は、太陽電池、コンデンサー、発光ダイオード、パターンのエッチング、静電気放電、フレキシブル電極、電磁干渉シールドなどの分野に利用できる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更などがあっても、本発明に含まれる。