(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の原理の理解を促すことを目的に、これより図に示されている各実施形態を参照してゆくが、説明に際して特定の言語を使用する。しかしながら、これによって本発明の範囲を限定する意図はないものと理解されたい。記載されている実施形態における何らかの改変及び更なる修正、及びここに記載されている開示の原理の何らかの更なる応用が、本開示が関連する分野の当業者には普通に想起されるであろうものと考えられる。最初に
図1aを参照すると、骨及び他の組織の切開のための外科用器具が示されており、器具は全体を符号10で識別されている。
図1に示されている外科用器具10の実施形態は、開頭術の施行で患者Xに作動的に関連付けられている。しかしながら、当業者には、本発明が何らかの特定の外科用途に限定されるものではなくて、所望される様々な用途に実用性を有していることが自明になることであり、その様な用途には、限定するわけではないが、
1.関節鏡視法−整形外科
2.内視鏡的−消化器科、泌尿器科、軟組織
3.神経外科手術−頭蓋、脊椎、及び耳科
4.小骨−整形外科、口腔顎顔面、脊椎外科、耳科
5.胸部心臓−小骨副分節
6.大骨−関節の再生手術及び外傷
7.歯科及び他の用途
が含まれる。
【0014】
これより
図1a及び
図1bを参照すると、外科用器具10はチューブ20に連結されており、チューブ20は潤滑システム100に連結されている。或る実施形態では、潤滑システム100は、継手31を含んでいる足踏みスイッチ30に直接連結することができ、継手31を空気圧供給システムに連結すると、流体(例えば空気)が空気圧供給システムから足踏みスイッチ30、潤滑システム100、及びチューブ20を通して外科用器具10に提供されることになる。或る実施形態では、潤滑システム100は、空気圧供給システムに直接連結されていてもよい。
【0015】
次に
図2a、
図2b、
図2c、
図2d、及び
図2eを参照すると、潤滑システム100の例示としての実施形態が示されている。潤滑システム100は、ステム104に連結されている潤滑カートリッジ102を含んでいる。以上に
図1a及び
図1bに関連付けて説明されている様に、潤滑システム100は、外科用器具10への計量された潤滑を提供するために、空気圧供給システムと空気圧動力式外科用器具(例えば外科用器具10)の間にインライン式に使用することができる。同一出願人が所有する米国特許第5,505,737号及び同第7,011,661号には例示となる外科用器具が開示されており、それら特許をここに参考文献として、それらがここに余すところなく記述されているかのごとくそっくりそのまま援用する。しかしながら、本開示の教示は、他の動力式器具及び流体動力式装置にも適用されるものと考えられる。
【0016】
図2bは、
図2aの潤滑システム100の上面図を示している。潤滑カートリッジ102内には複数の内部通路と体積が含まれており、ステム104については、以下に
図2bに示されている様々な断面図に関連付けて説明してゆく。
【0017】
図2cは、潤滑システム100の
図2bの2c−2c線に沿って切り取られた長手方向断面図を示している。潤滑カートリッジ102は、全体としては、ステム104側の多ポートステム継手108(
図2d、
図5a、及び
図6aにも図示)に連結する多ポートカートリッジ継手106(
図2d、
図4a、
図4b、
図4c、
図4d、及び
図6aにも図示)を有する閉鎖体又はハウジングである。潤滑カートリッジ102は、何れもカートリッジ継手106と流体連通している潤滑部110と排出部112を含んでいる。
【0018】
作動時、加圧された流体が、ステム104を通って潤滑システム100に進入する。ステム104は、概して、空気圧供給システムと空気圧動力式外科用器具(例えば、以上に
図1a及び
図1bに関連付けて説明されている外科用器具10)の間に脱着可能にインライン式に連結することのできる細長いステム又は管を含むものとすることができる。ステム継手108は、潤滑カートリッジ102の潤滑部110及び排出部112と、以下に説明されている複数の通路を通して流体連通している。
【0019】
ステム104の上流端は、中央ボア116を有する継手114を含んでいる。ステム104の下流端は、継手114に実質的に平行であるが但し継手14からオフセットしている面を含む継手118を備えている。或る実施形態では、継手114と継手118は同軸であってもよい。
図2b及び
図2cに示されている様に、継手118は、概して、高圧流体をチューブ20を通して外科用器具10に供給するための中央ボア120と、外科用器具10から戻される排出流体をチューブ20を通して受け入れるための同軸外側ボア122を備えている。他の実施形態では、下流継手は、非同軸の高圧流体ボアと排出流体ボアを含んでいてもよい。
【0020】
図2cに示されている様に、ステム104は、継手114の中央ボア116と継手118の中央ボア120の間を概ね長手方向軸Lに沿って伸びている一次流体経路124を含んでいる。一次流体経路124は、概して、一定している第1内径D
1を有していて、第1側壁126によって画定されている。一次流体経路124は、第2側壁132によって画定されていて直径D
1より小さい第2内径D
2を含んでいるネック130を含むベンチュリ区間128を含んでいる。第2側壁132は、一次流体経路124に対し概ね横に伸びている吸引タップ134への進入口を画定している。ベンチュリ区間128より上流では、第1側壁126が、一次流体経路124を離れてステム継手108の方へ或る角度で伸びている高圧タップ136への進入口を画定している。ステム104の下流端では、排出通路138は継手118の同軸外側ボア122と流体連通している。
【0021】
従って、高圧タップ136、吸引タップ134、及び排出通路138は、全て、(以下に更に詳細に説明されているガスケットシステムによってステム継手108から隔離されていないときは)ステム継手108の中へ開口している。潤滑カートリッジ102が、以下に更に詳細に説明されている様にステム104に連結されると、ステム継手108はカートリッジ継手106にシール嵌合され、その結果、高圧タップ136と吸引タップ134が潤滑カートリッジ102の潤滑部110と流体連通し、排出通路138が潤滑カートリッジ102の排出部112と流体連通する。
【0022】
これより
図2c及び
図2dを参照して、潤滑カートリッジ102を更に詳細に説明してゆく。
図2dは、潤滑システム100の
図2bの2d−2d線に沿って切り取られた長手方向断面図を示している。潤滑部110は、カートリッジ継手106とステム継手108が嵌合されているときは高圧タップ136とシールされた流体連通にある第1通路140を含んでいる。潤滑部110は、カートリッジ継手106とステム継手108が嵌合されているときは吸引タップ134とシールされた流体連通にある第2通路142を含んでいる。
【0023】
作動時、加圧流体の或る体積がステム104へ継手114の中央ボア116を通して導入されると、それは直接ステム104を通って一次流体経路124に沿って進んでゆく。加圧流体の当該体積の一部は、二次流体経路144に沿って、高圧タップ136を通り第1通路140の中へ迂回させられることになる。第1通路140は、潤滑カートリッジ110の潤滑部110によって画定されている潤滑剤溜め146と流体連通している。第2通路142も、潤滑剤溜め146と、好適には計量部148を通して流体連通している。作動時、ベンチュリ区間128と高圧タップ136と吸引タップ134は流体圧力差を作り出し、その圧力差が潤滑剤を一次流体経路124の中へ注入されるように潤滑剤溜め146から引き込む。
【0024】
潤滑剤溜め146は、例えば油又は当技術で既知の他の適した潤滑剤の様な潤滑剤のための小さい格納又は収容区域147(
図6aに図示)を含むことができる。第1潤滑剤送達管150が、潤滑剤溜め146の中へ下って伸びており、当該第1潤滑剤送達管150の下端150aは潤滑剤溜め146の底146aの付近に位置させることができる。潤滑剤送達管150の上端150bは、第2通路142と計量部148を通して流体連通している。或る実施形態では、潤滑剤溜め146は、潤滑剤だけを収容しているものとされる。しかしながら、他の実施形態では、潤滑剤溜め146は、潤滑剤で飽和される多孔質媒体を収容していてもよい。加えて、潤滑剤溜め146は、以下に説明されている他の特徴を含んでいてもよい。
【0025】
計量部148は、作動時に流体流れを制限しベンチュリ区間128に跨る圧力差を高める、多孔質計量インサート152を含んでいるのが好適である。計量インサート152は、当該計量インサートによって画定されている細孔を通る複数の流体流れ経路を提供することができる。或る実施形態では、計量インサート152は、焼結金属粉末から加工されており、焼結中に空の細孔空間が接し合うことによって無秩序に作り出された複数の流れ経路を含んでいる。複数の流れ経路が計量インサートに含まれていることにより、潤滑剤が通って進んでゆく、流れ経路に沿った特定の細孔空間が、使用中に塞がってしまっても、潤滑剤は他の代わりの流れ経路を通過することができる。よって、計量インサート152の様な多孔質計量インサートは、潤滑システム100を通る潤滑剤の流れの閉塞に備えて冗長性を提供する多数の流れ経路を含んでいる。
【0026】
作動時、ベンチュリ区間128と高圧タップ136と吸引タップ134によって作り出される圧力差は、潤滑剤を予測可能且つ繰り返し可能な速度で潤滑剤溜め146から第1送達管150を通し計量インサート152を通して引き込む。潤滑剤は、計量インサート152を潤滑剤の小滴として出てゆき、それが二次流体経路144に沿って高圧タップ136を通り第1通路140の中へ迂回されてきた加圧流体の体積中へ噴霧化されて、今度は潤滑剤を含んだ加圧空気の迂回体積が吸引タップ134を通って一次流体経路124に再進入することになる。潤滑剤を含んだ加圧空気は、次いで、ステム104及びチューブ20を通って進んでゆくことができ、そうして外科用器具10に供給される。こうして、計量インサート152は、作動中の外科用器具10に潤滑剤の計量送達を提供することができる。
【0027】
計量インサート152は、焼結の他にも、例えば、多孔質インサートを生み出すことのできる天然プロセスの様な、各種プロセスから加工することができる。他の実施形態では、多孔質計量インサートの加工から、無秩序に分散されていない細孔から作り出される複数の流れ経路を備えた計量インサートが産出されている。或る実施形態では、計量インサート152は、例えば、セラミック、プラスチック、ナノ材料、軽石の様な各種材料、及び/又は当技術で知られている他の適した各種材料を含むことができる。
【0028】
次に、
図3a、
図3b、
図3c、
図3d、
図3e、
図3f、
図3g、
図3h、及び
図3iを参照すると、計量インサート152とすることのできる様々な例示的な形状を有する計量インサートの例示としての実施形態が示されている。
図3aに示されている様に、計量インサート152aは、概して、中実円筒として成形されていてもよい。
図3bに示されている様に、計量インサート152bは、概して、円形円盤として成形されていてもよい。
図3c及び
図3dに示されている様に、計量インサート152cは、概して、中空半球として成形されていてもよい。
図3e及び
図3fに示されている様に、計量インサート152dは、概して、中空円錐として成形されていてもよい。
図3gに示されている様に、計量インサート152eは、概して、中空矩形箱として成形されていてもよい。
図3hに示されている様に、計量インサート152fは、概して、中空円筒として成形されていてもよい。
図3iに示されている様に、計量インサート152gは、概して、一端が開口し、開口端と反対の端が閉じている、中空の矩形箱又は円筒として成形されていてもよい。以上、計量インサートの多種多様な形状及び構成を記載したが、本開示は開示されている実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態又は開示されている実施形態の組合せであって他の形状及び構成を提供しているものも考えられ、製造性、計量特性、耐久性、及び/又は当技術で知られている他の特性を根拠に選択されることになろう。形状を変えれば、計量インサート152の計量特性が変化する。例えば、中実円筒形状のインサート152aは、円盤形状のインサート152bに比べ、低い流量を提供することであろう。別の実施例では、計量インサート152dの第1端は開口していてもよく、そうすると、平坦か又は中実の第1端を有するインサートに比べ、潤滑剤が第1端に進入するための表面積がより広くなる。
【0029】
潤滑システム100は、更に、システム始動時に潤滑剤の初期量を計量することなく迅速に加圧流体のストリームに提供するように構成されている始動時潤滑機構を含んでいる。システム始動時に潤滑剤の初期量又はボーラスが加圧流体のストリームに提供されることにより、新たな潤滑システム100の装着時又は外科用器具10の初期使用時に外科用器具10のモーター並びにそれに隣接する供給ラインが瞬時に潤滑される。始動時潤滑機構又は慣らし給油の組み入れは、外科用器具10の過早失陥又は過剰疲労を防ぐのに役立つ。
【0030】
図2cに戻って、始動時潤滑機構154の或る実施形態は、第3通路158を含む第2潤滑剤送達管156を含んでいる。第2送達管156は、下端が潤滑剤溜め146の中へ開口している。第2潤滑剤送達管156の上端は、第2通路142と、当該第2通路142の吸引タップ134と計量部148の間の場所で流体連通している。
【0031】
こうして、吸引タップ134は、計量インサート152及び第1送達管150を通って走っている第1経路150と第2送達管156の第3通路158を通って走っている第2経路の2つの経路に沿って、潤滑剤溜め146と流体連通している。
【0032】
或る実施形態では、作動時、外科用器具10が始動されると、圧力差が提供され、潤滑剤は、潤滑剤溜め146から第2送達管156の第3通路158を通って、この経路の方が第1送達管150及び計量インサート152を通る経路より抵抗が少ないということで、引き込まれる。こうして、第2送達管156は、システムの始動時に、潤滑剤の始動時分量を提供する働きをすることができる。図示の実施形態では、第2送達管156は、潤滑剤溜め146の上部分の中へ開口しており、潤滑剤の始動時分量は、例えば、以下に更に詳細に説明されている様に、潤滑剤溜め146の上部分の第2送達管156が開口しているより上方に位置する潤滑剤溜め146部分が取り分けられてもよい。別の実施形態では、第2送達管156は、
図2dに示されているよりも更に深く潤滑剤溜め146の中へ伸びていてもよく、そうすると、潤滑剤の始動時分量は、例えば、第2送達管156の下端が潤滑剤溜め146の中へどれほど深く伸びているかに従って取り分けられることになろう。
【0033】
潤滑剤溜め146は、潤滑剤の計量対象量を収容している主体積160と、潤滑剤の始動時分量を収容している拡張体積162を含むことができる。第1送達管150と第2送達管156は、どちらも、潤滑剤溜め146の主体積160と流体連通している。拡張体積162に収容されている潤滑剤の始動時分量は、潤滑剤溜め146の、第2送達管156の下端が潤滑剤溜め146にアクセスしている点より上方に位置している。よって、一次流体経路124を通って加圧流体が流れると、重力並びに高圧タップ136と第2送達管156の上端の間の圧力差が、潤滑剤の始動時分量を吸引タップ134を通して速やかに一次流体経路124に進入させる。
【0034】
次に
図2eを参照すると、潤滑システム100の
図2bの2e−2e線に沿って切り取られた長手方向断面図が示されている。以上に
図2cに関連付けて論じられている拡張体積162は、複数の体積を含んでいてもよい。例えば、第2通路142の第1側に第1拡張体積164が設けられ、第2通路142の第1側とは反対側の第2側に第2拡張体積166が設けられていてもよい。以下に更に詳細に説明されている様に、更に、
図2dに示されている第3拡張体積168が潤滑剤の始動時分量を収容していてもよい。或る実施形態では、潤滑剤大凡0.25グラムが、外科用器具10の慣らし給油用の潤滑剤始動時分量として使用されている。
【0035】
図2cに戻って、作動時、潤滑剤溜め146の中の潤滑剤の総量が、潤滑剤溜め146の、第2送達管156の下端が潤滑剤溜め146にアクセスしている点より下方に低下してしまったら、潤滑剤は溜め146の主区域160から第1送達管150及び計量インサート152を通して供給されることになる。
【0036】
或る実施形態で、始動時潤滑機構154と共に使用されてもよいし或いは始動時潤滑機構154なしに使用されてもよいとされる始動時潤滑機構170が
図2cに示されている。始動時潤滑機構170では、潤滑剤の始動時分量を水平収容管172に貯蔵することができる。
図4aを簡単に参照すると、収容管172は、高圧区域197、第1通路140(
図2dに図示)、及び高圧タップ136(
図2cに図示)と、潤滑カートリッジ102のカートリッジ継手106側の面に画定されている開口部174を通して流体連通することができる。収容管172は開口部174から、
図2cに示されている様に潤滑カートリッジ102の中へ伸びている。よって、潤滑カートリッジ102がステム104に連結されたとき、収容管172の中に在る潤滑剤の始動時分量は(例えば重力により)収容管172から一次流体経路124の中へと高圧タップ136を通って進んでゆき、それにより、潤滑剤は、カートリッジ102がステム104へ接続され次第又は外科用器具10が始動され次第、加圧流体に供給され、その加圧流体がステム104を通り、チューブ20を通り、外科用器具10に供給される。
【0037】
或る実施形態では、収容管172は、第2通路142と流体連通していてもよいとされるが、第1通路140との流体連通に関してはシールされている。よって、重力により、収容管172の中に位置する始動時潤滑剤が第2通路142及び吸引タップ134を通って速やかに一次流体経路124に流入させられることになる。
【0038】
図2dに戻って、以上に簡単に説明されている様に、第3拡張体積168は、第1通路140に流入するか又は潤滑剤溜め146の主区域160に流入することになる潤滑剤の始動時分量のための追加の収容体積を提供することができる。主区域160から、第3拡張体積168からの潤滑剤の始動時分量は、第1送達管150又は第2送達管156の何れかから第2通路142に進入する。
【0039】
様々なシステム特性、例えば、第1通路140と第2通路142の圧力差、潤滑剤粘度、及び計量インサート152の密度などは、潤滑剤の流量に影響し得る。或る実施形態では、圧力差は、少なくとも一部には、第1通路140、第2通路142、及び第3通路158にとっての適した直径の選択により確立される。第2送達管156と共に始動時潤滑機構154を使用している実施形態では、潤滑剤の始動時分量が抜けた後の加圧流体の短絡は、第3通路158の寸法適正化によって防止又は軽減することができる。例えば、第3通路158の寸法を第1通路140の直径より事実上小さい直径にすれば、圧力差は計量インサート152を跨いで持続される。或る実施形態では、第1通路140と第3通路158は、圧力差を約1psiから約5psiの範囲に維持するように設計されている直径比を有しており、これなら潤滑剤の始動時分量が潤滑カートリッジから抜けた後に計量インサート152を通して潤滑剤を引き込むのに十分な圧力差を提供することができるであろう。
【0040】
潤滑剤粘度及び計量インサート152の密度も圧力差に影響し得る。計量インサート152の平均細孔寸法は、所望の潤滑剤流量が得られるように調節されるものであり、潤滑剤の粘度によって制限されるであろう。或る実施形態では、計量インサート152を通る流れは、計量インサートの製造時の処理パラメータを変えることによって制御することができる。こうして、孔隙率又は密度及び平均細孔寸法を制御することにより、外科用器具10使用中の潤滑剤計量を信頼性高く制御することができる。繰り返し精度は、従来式のオリフィス様式の計量機構に勝って有意に改善される。
【0041】
次に
図4a、
図4b、
図4c、
図5a、及び
図6aを参照して、潤滑カートリッジ102側のカートリッジ継手106とステム104側のステム継手108を更に詳細に説明する。
図5a及び
図6aは、中心環状壁176、中間環状壁178、及び外側環状壁180を有する同軸壁構成を含んでいるステム継手108を示しており、それら環状壁のそれぞれは、ステム継手108の面から伸びていて、軸A周りに概ね同心配置に設けられている。中心環状壁176は、軸Aに沿って伸びていて尖った先端を含んでいてもよいとされる穿孔カニューレを含んでいる。中心環状壁176は、吸引タップ134(以上に
図2cに関連付けて説明)と流体連通している通路176aを画定している。中間環状壁178と中心環状壁176は、それらの間に、高圧タップ136(以上に
図2cに関連付けて説明)と流体連通している高圧区域188を画定している。穿孔ピン190が、ステム継手108の高圧区域188に位置する面から伸びている。外側環状壁180と中間環状壁178は、それらの間に減圧排出区域192を画定している。
【0042】
作動時は、例えば、外科用器具10に動力供給するための加圧流体の所望の膨張によって引き起こされ得る体積増加のせいで、外科用器具10に加圧流体として供給されたよりも多くの量の排出流体が外科用器具10から戻るかもしれない。排出流体の体積増加に対応するために、ステム継手108は、1つ又はそれ以上の開口部であって、それらの断面積を合わせると一次流体経路124を貫いて含まれている断面積よりも大きい開口部を含むことができる。例えば、ステム継手108の減圧排出区域192の面に、減圧排出区域192と排出通路138の間に流体連通を提供するための三日月形状の開口部194が提供されていてもよい。
【0043】
図4a、
図4b、
図4c、及び
図6aは、中心環状壁196、中間環状壁198、及び外側環状壁200を有する同軸壁構成を含んでいるカートリッジ継手106を示しており、それら環状壁は、それぞれ、カートリッジ継手106の面から伸びていて、軸B周りに概ね同心配置に設けられている。潤滑カートリッジ102がステム104に連結されているとき、中心環状壁196は、以上に
図2cに関連付けて説明されている第2通路142への進入口を提供している。潤滑カートリッジ102がステム104に連結されているとき、中間環状壁198と中心環状壁196はそれらの間に、ステム継手108側の高圧区域188に直接隣接して、第1通路140と流体連通している高圧区域197を画定している。潤滑カートリッジ102がステム104に連結されているとき、外側環状壁200と中間環状壁198はそれらの間に、ステム継手108側の減圧区域197に直接隣接する減圧排出区域199を画定している。
【0044】
作動時は、以上に
図1a及び
図1bに関連付けて説明されている様に外科用器具10から戻る排出流体の体積増加に対応するために、カートリッジ継手106は、1つ又はそれ以上の開口部であって、それらの断面積を合わせると一次流体経路124を貫いて提供されている断面積よりも大きい開口部を含むことができる。例えば、カートリッジ継手106の減圧排出区域199の面に、2つの大きな半円形の開口部204a及び204bが画定されていて、減圧排出区域192と潤滑カートリッジ102の排出部112の間に流体連通を提供していてもよい。
【0045】
これより
図4c、
図4d、及び
図6aを参照しながら、潤滑カートリッジ102及びステム組立体104を更に詳細に説明してゆく。カートリッジ継手106部分のためのシールアッセンブリ206は、脆弱シール208とシールガスケット210を含むものとすることができる。シール208は、高圧区域197と第2通路142への進入口に及ぶように中間環状壁198の外径に一致する寸法とすることができる。シール208は、潤滑剤カートリッジ102内部の、例えば上述の潤滑剤の始動時分量の様な、潤滑剤をシールする機能を果たすことができる。シール208及びシールガスケット210は、協働的に、例えば、第2通路142、高圧区域197、及び/又は減圧排出区域199の様な、分離されている圧力区域を維持し持続させる機能を果たす。シールガスケット210は、以下に更に詳しく説明されている様に、中心に位置する開口212と中間開口部214を画定しており、それらはカートリッジ継手106側とステム継手108側の両方の特徴に対応している。
【0046】
或る実施形態では、脆弱シール208は、接着剤又は当技術で知られている他のシール機構を用いて中心環状壁196及び中間環状壁198に対してシールされている金属箔を含んでいる。或る実施形態では、シール208は、厚さが大凡0.002”(0.00508cm)のアルミニウム箔を含んでいてもよい。シールガスケット210は、潤滑システム100が組み立てられたときに、潤滑カートリッジ102とステム104の間にシールを提供するために、例えば、Teflon、ゴム、独立気泡フォーム、及び/又は当技術で知られている他の各種ガスケット材料の様な、僅かに圧縮性のある薄い材料を含むことができる。
【0047】
或る実施形態では、シール208は、例えばエラストマー材料から加工されていてもよいとされる栓(図示せず)を含んでいてもよい。栓は、出荷及び保存中のカートリッジ102内の潤滑剤を、潤滑剤が潤滑剤溜め146から脱出できないように第1通路140を塞ぐことによってシールするように設計することができる。その様な実施形態では、シール208が第2通路142への進入口をシール式に覆っているだけで、穿孔ピン190は省略されていてもよい。組み立て作業時、潤滑カートリッジ102側のカートリッジ継手106がステム104側のステム継手108に連結されるとき、中心環状壁176の穿孔カニューレがシール208を穿孔して第2通路142へのアクセスを提供すると、高圧区域197を通って第1通路140に進入してくる高圧流体が栓を押し退ける。或る実施形態では、栓は潤滑剤溜め146の中へ押し退けられてもよい。或る実施形態では、栓又はシール208は、バーストディスク、逆止弁、フラッパ、及び/又は当技術で知られている他のシール装置に置き換えられてもよい。上述のシール機能に加え、シール208は不正開封防止機能を提供することができる。
【0048】
次に
図4a、
図4b、
図4c、
図4d、
図5a、
図5b、
図6a、
図6b、
図6c、
図6d、
図6e、
図6f、
図6g、及び
図6hを参照しながら、カートリッジ102及びステム104の様々な特徴を説明してゆく。潤滑カートリッジ102は、カートリッジ継手106に隣接して位置する外面216を含んでいる。カートリッジ継手106と潤滑カートリッジ102の外面216の間には係止タブ220を設けることができる。係止タブ220は、係止タブ220の長さに沿って伸びている外面222を含んでいる。係止タブ220は、幅がその長さに沿って一定していてもよいし或いは細い先導縁220aから広い追従縁220bへとテーパしていてもよい。係止タブ220は、係止窪み224を画定していてもよい。
【0049】
ステム104は、ステム継手108に隣接して位置していて、その長さに沿って溝228を画定している保定部材226を含んでいる。溝228は、潤滑カートリッジ102側の係止タブ220を滑動式に受け入れるようにキー溝が切られていてもよい。溝228は、幅がその長さに沿って一定していてもよいし或いは溝228の第1端228aの広い幅から溝228の第2端228bの細い幅へとテーパしていてもよい。保定部材226によって更に開口区間230が画定されていてもよい。
【0050】
潤滑カートリッジ102は、カートリッジ102をステム104に固定するのを支援する様々な特徴を含むことができる。或る実施形態では、潤滑カートリッジ102は、潤滑カートリッジ102がステム104の周りを部分的に包み込めるようにする長手方向陥凹232を画定していてもよく、そうすれば潤滑システム100の外形寸法の縮小化に役立つ。潤滑カートリッジ102は、更に、固定タブ234を含んでいてもよく、連結支援陥凹236を画定していてもよい。
【0051】
ステム104は、同様に、上述の潤滑カートリッジ102の特徴と相補である様々な特徴並びに幾つかの追加の特徴を含んでいる。或る実施形態では、ステム104は、以下に更に詳細に説明されている様に、潤滑カートリッジ102側の固定タブ234と協働する戻り止め238を画定している。ステム104は、更に、以下に詳細に説明されている様に、連結支援陥凹236と協働する連結支援突起240を含んでいてもよい。
【0052】
潤滑カートリッジ102を、ステム104からの切り離しを引き起こしかねない偶発的な衝突や破壊から保護するために、ステム104はキックガード242と下支持体244を含んでいてもよい。キックガード242は、ステム104から伸びている輪郭の付いた左右の翼242a及び242bを含んでいてもよい。下支持体244は、ステム141の部分とキックガード242の輪郭の付いた左右の翼242a及び242bそれぞれの間を各々に伸びている左右の添え骨244a及び244bを含んでいてもよい。或る実施形態では、下支持体244には保護遮蔽材としての機能しかない。或る実施形態では、下支持体244は、潤滑カートリッジ102の固定を助ける摩擦係合装置として機能することができ、その場合は、例えば、タブ、戻り止め、及び/又は当技術で知られている他の固定のための各種特徴を含んでいてもよい。或る実施形態では、キックガード242及び下支持体244は相互一体化されていて、ステム104に脱着可能に取り付けることのできるものであってもよい。或る実施形態では、キックガード242及び下支持体244は、ステム104から分離されていて、且つ互いから分離されていてもよい。或る実施形態では、キックガード242と下支持体244は、ステム104及び/又は潤滑システム100から欠けていてもよい。
【0053】
図6c、
図6d、及び
図6eは、潤滑システム100の組み立てを説明するために、潤滑カートリッジ102のステム104に対する様々な連結向きを示している。
図6cを参照すると、潤滑カートリッジ102とステム104は初期連結向きに在ることが示されており、ステム104はその軸Lに沿って概ね整列し、カートリッジ102は、潤滑カートリッジ102とステム104が初期連結向きに在るときには軸Lに略垂直となっている軸Cに沿って概ね整列している。初期連結向きでは、潤滑カートリッジ102とステム104を、ステム継手108の軸Aとカートリッジ継手106側の軸B(
図6aに図示)が概ね同一線上になるように位置付ける。次いで、カートリッジ継手106がステム継手108に係合するように潤滑カートリッジ102をステム104に対してP方向に動かす。カートリッジ継手106がステム継手108に係合したとき、カートリッジ継手106側の外側環状壁200はステム継手108側の外側環状壁180に滑動式に接触し、中心環状壁176の穿孔カニューレが、シールガスケット210によって画定されている中央に設けられた開口212を通り抜けてシール208を穿刺し、穿孔ピン190がシールガスケット210によって画定されている中間開口部214を通過してシール208を穿刺する。こうして、中心環状壁176の穿孔カニューレは潤滑カートリッジ102の第2通路142をステム104の吸引タップ134に開き、穿孔ピン190はステム104側の第1通路140と潤滑カートリッジ102側の高圧タップ136の間の高圧区域188及び197を開く。
【0054】
次に
図6dを参照すると、潤滑システム100は、潤滑カートリッジ102とステム104が中間連結向きに在る状態で示されている。カートリッジ継手106とステム継手108を上述のように係合させた後、示されている様に、潤滑カートリッジ102をステム104に対してR方向に回転させた。潤滑カートリッジ102をステム104に対してR方向に回転させてゆくと、潤滑カートリッジ102側の係止タブ220がステム104側に画定されている溝228に進入し、カートリッジ継手106とステム継手108が外れてしまうのを防止する。加えて、潤滑カートリッジ102をステム104に対してR方向に回転させてゆくと、穿孔ピン190がシールガスケット210によって画定されている中間開口部214を通って進み、シール208の半円形開口部を破り、それにより、更に、高圧区域188及び197を跨ぐ流体連通が提供される。或る実施形態では、係止タブ220及び/又は溝228の何れか又は両方の幅のテーパ付けは、係止タブ220の先導縁220aが溝228の第1端228aへ進入するのをやり易くしており、幅のテーパ付けは、カートリッジ継手106とステム継手108を係合させ続ける連結力を増加させるように、及び/又はカートリッジ102がステム104に対して外れる方向に回転するのに抵抗するための摩擦嵌めを提供するように設計することができる。
【0055】
次に
図6eを参照すると、潤滑システム100は、潤滑カートリッジ102とステム104が最終連結向きに在る状態で示されている。示されている様に、潤滑カートリッジ102を
図6dに示されているR方向に一杯まで回転させた結果、カートリッジはステム104側に装着され、潤滑システム100は使える状態である。この最終連結向きでは、軸L及び軸Cは互いに概ね平行になっている。こうして、潤滑カートリッジ102をステム104に固定するために潤滑カートリッジ102をステム104に対して大凡90度回転させる4分の1回転連結潤滑システム100が提供されている。潤滑カートリッジ102を最終連結向きへと回転させてゆく際、上述の様々な特徴が協働し、潤滑カートリッジ102のステム104への固定を更に強固にする。例えば、潤滑カートリッジ102側の固定タブ234は、潤滑カートリッジ102とステム104の連結中、ステム104によって画定されている戻り止め238に納まる前に僅かに弾性変形することになる。或る実施形態では、固定タブ234は、潤滑カートリッジ102がステム104に一杯に係合し固定されていることの聴覚的及び/又は触覚的なフィードバックを使用者に提供することができる。中間環状壁178と198及び中心環状壁176と196の間のシールガスケット210を更にそしてより均一に圧縮するために、
図6hに示されている様に、ステム104側の連結支援突起240は潤滑カートリッジ102によって画定されている連結支援陥凹236に係合することができる。或る実施形態では、
図6fに示されている様に、潤滑カートリッジ102がステム104に一杯に固定されていることが分かるように、潤滑カートリッジ102側の係止タブ220の係止窪み224が保定部材226の開口区間230を通して使用者に覗き見えるようになっている。係止タブ220が保定部材226に納まっていることと、連結支援突起240と連結支援陥凹236が係合していることは、内部加圧中の潤滑カートリッジのステム104への軸方向の保定に役立つであろう。
【0056】
或る実施形態では、クリップ又は他の突起物が、開口区間230を通して係止窪み224に物理的に係合されてもよい。その様なクリップ又は突起物は、ステム104に調節可能に連結されるものでもよいし、又は継手118で受け入れることのできる同軸供給ライン継手から伸びていてもよい。
【0057】
ここに記載されている他の有益性に加え、潤滑システム100は、更に、従来型潤滑システムに勝る、人間工学的及び安全上の利点を提供することができる。
図6c、
図6d、及び
図6eを参照して、カートリッジ継手106とステム継手108を係合させるにはP方向への比較的小さい力しか要求されないであろう。その後、R方向への回転力は、使用者の掌だけで供給することができるであろう。こうして、使用者による比較的大きな把持力と繰り返される手首の回転とを要する押圧とねじ込みが組み合わさった運動を、最小限に抑えるか又は回避することができる。4分の1回転連結潤滑システム100は、更に、例えば手袋をした手が手術室の諸条件のせいで濡れていたり滑り易くなっているために、取り付けられるべき或いは取り外されるべきカートリッジへの使用者による把持力が簡単に得られない状況ではより安全である。
【0058】
次に
図2c、
図2d、
図2e、
図4a、
図4b、
図4c、
図4d、
図5a、
図6a、及び
図6bを参照しながら、潤滑カートリッジ102の排出部112の様々な特徴及び作動を、以下に更に説明してゆく。排出部112は、概して、カートリッジ継手106側の排出区域199と半円形開口部204a及び204bを通して流体連通している低速プレナム246(
図2e及び
図6aに図示)を備えることができる。或る実施形態では、排出部112には、フィルタ248(
図2c、
図2d、
図4d、及び
図6bに図示)が収納されていてもよい。或る実施形態では、フィルタ248は、セルロースフィルタ材料又は他の適したフィルタ媒体、例えばフォーム、ウール、フェルト、多孔質プラスチック、多孔質金属、及び/又は当技術で知られている他の各種フィルタ材料などを含んでいてもよい。プレナム246は、概して、カートリッジ102内部の、潤滑部110によって占められていない様々な体積を占めている。排出部112は、バッフル壁250と複数の羽根252を含んでおり、複数の排出孔254を画定していてもよい。バッフル壁250は、潤滑カートリッジ102の底壁255から垂直方向上向けにプレナム246の中へ伸びており、羽根252は、潤滑カートリッジ102の上壁257から垂直方向下向きにプレナム246の中へ伸びている。排出孔254は、潤滑カートリッジ102の底壁255によって画定されていて、排出流体流れの、バッフル壁250の下流に設けられている。
【0059】
作動時、減圧排出流体はステム104に進入し、外側ボア122を通って進んでゆく。排出流体は、次に、排出通路138及び三日月形状のボイド194を通過して、ステム104と潤滑カートリッジ102それぞれの側の外側環状壁180及び200と中間環状壁178及び198の間に設けられている減圧排出区域192及び199に到達する。排出流体は、次に、潤滑カートリッジ102の排出部112のプレナム246に、半円形開口部204a及び204bを通って進入する。
【0060】
図6aの流れ矢印によって示されている様に、半円形開口部204a及び204bを通ってプレナム246に進入してくる排出流体は、潤滑カートリッジ102の後壁256によって下向きに偏向される。排出部112の排出流の方向が急変する度に、排出流によって運ばれている潤滑剤(例えば、油霧及び滴)は排出流体から脱落し、一方で、流れ区域の相対的な増加は排出流体の速度の低下を引き起こし、排出流体からの潤滑剤の脱落をいっそう助長する。排出流体の速度の低下は、更に、排出ノイズを下げ、濾過効率を上げる。排出流体は、その流れ方向が潤滑カートリッジ102の底壁255によってそして次に再度バッフル壁250によって急減に変化することを余儀なくされるまで後壁256に隣接して流れる。排出流体は、有効に方向転換するよう強いられるので、バッフル壁250より上流では排出流体中に運ばれているより多くの潤滑剤が排出流体から脱落する。加えて、排出フィルタ248(以上に
図4bに関連付けて説明)は、バッフル壁250によって方向決めされた排出流体が排出フィルタ248の少なくとも一部分を通過するように、スリット258(
図4dに図示)のところがバッフル壁250を跨いでいる。
【0061】
排出流体は、次に、排出孔254を通って潤滑カートリッジ102を出てゆく前に、羽根252に沿ってフィルタ248の中へ方向が決め直される。潤滑カートリッジ102の排出部112を通る排出流体の運動は、排出流体の手術室環境内への放出に先立って潤滑剤を排出流体から分離するための効率的且つ広汎な技法を提供している。或る実施形態では、羽根252は、排出流体を濾過の効率がより高くなるよう方向決めしたり分割したりするように設計され配置されていてもよい。
図2c及び
図2dに示されている様に、羽根252の間に画定されていて、フィルタ248の上方に設けられているヘッドスペース260は、排出流体にとって抵抗のより少ない流れ経路を提供する機能を果たすことができる。バッフル壁250をフィルタ248側のスリット258の中へ伸ばしたことにより、排出流体は、フィルタ248を、バッフル壁250の上流側で1回とバッフル壁250の下流側で1回の2回通過するように方向決めされることになる。
【0062】
或る実施形態では、潤滑カートリッジ102の様な潤滑システム100の一部又は全ては、単回使用の使い捨て部材として設計されていてもよい。潤滑カートリッジ102が1回しか使用されない設計である限りにおいて、係止タブ220、可撓性固定タブ234、及び/又は固定のための他の特徴は、脆弱な保定具として設計し、使用後に潤滑カートリッジ102をステム104から切り離す際に、脆弱な保定具が破断分離されるか又は他のやり方で機能が弱められて、潤滑カートリッジ102を使用不能にさせるようになっていてもよい。或る実施形態では、ステム104は、再使用可能な資産的構成要素として設計されていてもよい。
【0063】
潤滑カートリッジ102は、リサイクルされた材料を含んでいてもよく、またカートリッジ自体がリサイクル可能であってもよい。或る実施形態では、ステム104も使い捨て設計とすることができる。こうして、潤滑システム100は、ステム104、潤滑カートリッジ102、及び/又は他の構成要素を備えることができ、それらは再使用可能であってもよいし使い捨て式であってもよい。或る実施形態では、潤滑カートリッジ102は再使用可能であるが、計量インサート152は使い捨て式であり、使用者による取替式であってもよい。
【0064】
或る実施形態では、ステム継手108とカートリッジ継手106のうち一方は、異なった供給業者からのステム又は潤滑カートリッジとインターフェースできるようにする自在継手を備えていてもよい。加えて、適合性のないステムを、ここに開示されている実施形態に従って構成されている継手を有する潤滑カートリッジと共に使用するために後付けすることのできるアダプタが、別体としてか又はシステムの一部として提供されていてもよい。
【0065】
本開示の教示により、潤滑剤計量を、従来型システムで実践されていた組立体の高価で再使用可能な部品から潤滑システム100の使い捨て式部品へ移行することにより更なる有益性が手に入る。典型的な単オリフィス式又は多オリフィス式の計量装置は、オリフィスを有効とされ得る狭い許容範囲内で精密に機械加工することが求められる。その様な微細で精緻なオリフィスは、詰まりを来し易く、費用の掛かる工具損傷や外科処置の遅れにつながる恐れがある。焼結金属計量インサートは、単オリフィス式又は多オリフィス式の計量装置を加工する費用を有意に節約できるようにすると共に、使用中の信頼性を高めることができる。こうして、再使用可能な資産型のステム又はステム組立体の典型的に高価な構成要素である単オリフィス式又は多オリフィス式の計量装置を排除することができるのは経済的である。計量機能をここに記載されている計量インサートを使用する使い捨てカートリッジへ移行させることで、信頼性の高い潤滑剤計量を得るために必要な保守管理も低減される。
【0066】
以上に記載されている新奇性のある装置の或る特定の製造容易設計態様を通して、更なる費用上の有益性がもたらされることであろう。或る実施形態では、ステム104は、標準的な供給ライン接合金具が連結される単体構成要素である。ステム104は、本体を有しており、本体は、一般的には鋳造によって生産されていて、追加の機械加工を要する場合もあればそうでない場合もあろう。中心環状壁176の穿孔カニューレと穿孔ピン190は、単体構成要素ステム本体の一部であってもよいし、又は組み立て中に加えられるインサートであってもよい。加えて、中心環状壁176の穿孔カニューレ又は穿孔ピン190は、ステム104の本体とは別に取替可能とされる消耗構成要素を表していてもよい。
【0067】
次に
図4dを参照して、潤滑カートリッジ102は、本体部262とキャップ部264を含むことができる。組み立て中、第1送達管150、排出フィルタ248、及び計量インサート152は、本体部262の各々の場所へ押し入れられる。突合接合(図示せず)を含んでいてもよいとされるキャップ部264は、本体部262に、例えば超音波溶着されてもよい。
【0068】
キャップ部264の取り付け前でも後でもよいが、潤滑剤が潤滑カートリッジ102に加えられる。加えて、潤滑剤が潤滑カートリッジ102に加えられる前でも後でもよいが、ガスケット210及びシール208が、ステム104への装着より前に潤滑剤が漏れるのを防止するべく潤滑カートリッジ102に加えられる。他の実施形態では、潤滑カートリッジ102は、潤滑剤を入れずに完全に組み立てられ、そうして潤滑剤は、シール208の取り付け前か又は後に、(例えば針により)シール式のポート(図示せず)を通して充填されてもよい。
【0069】
或る実施形態では、潤滑カートリッジ102は、上述の内部通路及び特徴の幾つか又は全てを含むようにモールド成形されてもよい。他の製造プロセス、例えば、鋳造、ステレオリソグラフィ、及び/又は当技術で知られている他の各種製造プロセスを使用することもできる。本体部262及びキャップ部264は、強度、溶着性、及び成形性を根拠に選択されたポリカーボネートを含むことができる。第1送達管150は、ポリプロピレンを含んでいてもよい。このシステムに含まれている部品及び特徴の1つ又は全てについては、他にも適した材料、例えば、ステンレス鋼、チタン、形状記憶合金、ポリマー、炭素繊維、多孔質材料、及び/又は当技術で知られている他の各種材料などが考えられる。加えて、潤滑システム100に含まれている部品及び特徴の1つ又は全てについては、他にも適した接合方法、製造方法、及び組み立て順序が考えられる。
【0070】
シール208が穿刺された後の偶発的な潤滑剤のこぼれを制限するために、開示されている実施形態及びそれらの等価物は、設計上の特徴としてこぼれ防止特徴を含んでいてもよい。例えば、潤滑カートリッジ102が垂直方向又は水平方向の何れかに配置されたときのこぼれを低減するために水平方向通路と垂直方向通路の組合せが配設されていてもよい。或る実施形態では、潤滑カートリッジ102の第1拡張区域164、第2拡張区域166、及び第3拡張区域168は、潤滑カートリッジ102が横向けになった場合を想定して潤滑剤の使用分量を収容するように設計され配設されていてもよい。第1通路140及び第2通路142は、潤滑カートリッジ102が横倒しになった場合又は第1送達管150及び第2送達管156が誤って水平の向きになった場合でも、実質的に垂直になるような向きに配置されていてもよい。高圧区域197と流体連通している収容管172及び減圧排出区域192と流体連通している収容区域266(
図2c及び
図4aに図示)は、更に、潤滑剤を収容しこぼれを低減するように設計され配設されていてもよい。加えて、潤滑剤のこぼれを低減又は防止するために、逆止弁、フラッパ、パイロット制御弁、浮動弁、及び他の流体制御装置も考えられる。
【0071】
以上、本発明の例示としての実施形態をほんの数例について詳細に説明してきたが、当業者には、例示としての実施形態では、本発明の新奇性のある教示及び利点から実質的に逸脱することなく多くの修正が実施可能であることが容易に理解されるであろう。また、以上に幾つかの実施形態に関して示され論じられている特徴は、以上に他の実施形態に関して示され論じられている特徴と組み合わせることもできよう。従って、全てのその様な修正は、本発明の範囲内に含まれるものとする。